JP6517404B2 - イオン交換膜 - Google Patents

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Description

本発明は、多数の微細な細孔が貫通している多孔質オレフィン系樹脂フィルムを基材として有しており、該フィルムの細孔内にイオン交換樹脂が充填された構造のイオン交換膜及びその製造する方法に関する。
イオン交換膜は、製塩や食品分野における脱塩工程などで利用される電気透析用膜や燃料電池の電解質膜として、また、鉄鋼業などで発生する金属イオンを含んだ酸からの酸回収に用いられる拡散透析用膜など多くの分野で工業的に利用されている。このようなイオン交換膜は、補強材としての機能を有する基材フィルムが芯材としてイオン交換樹脂中に設けられた構造を有しており、これにより一定の膜強度や膜の形状安定性が付与されている。もし芯材がないとイオン交換樹脂は、イオン交換基を多く持っているため、電解質水溶液に浸漬させると容易に膨潤してしまい、イオン交換膜は強度低下や形態変化が生じてしまう。
従来、上記の基材フィルムとして多孔性の熱可塑性樹脂フィルムを使用することが知られており、実際に使用されている。このような多孔性フィルムを基材とするイオン交換膜は、基材である多孔性フィルム中の細孔内にイオン交換樹脂が充填されており、この結果、膜の電気抵抗(以下、膜抵抗と呼ぶ)が低いという利点を有している。例えば、特許文献1には、多孔性の延伸ポリエチレンフィルム(旭化成株式会社製ハイポアや東燃化学那須株式会社製セティーラ等)を基材フィルムとして含む製塩用陽イオン交換膜が開示されている。
ところで、イオン交換膜の用途は様々であり、しかも、実施規模なども異なっており、従って、イオン交換膜の大きさも種々異なり、その大きさによっては、強度、寸法安定性及び形態安定性などを高めることが必要である。このため、イオン交換膜中の多孔質基材フィルムについては、その厚みを厚くすることが必要となる。この多孔質フィルムは、多数の細孔が設けられているため、このような細孔が設けられていないフィルムに比して低強度であり、また腰が無いため、これを厚くすることが、イオン交換膜の高強度化や、寸法安定性、形態安定性の向上をもたらすからである。
しかしながら、市販されている多孔質フィルムは、厚みが限られており、おおよそ数十μm程度の厚みのものがほとんどである。イオン交換膜の用途や大きさなどに応じて適正な厚みの多孔質フィルムを製造していたのでは少量生産となり、工業的メリットが損なわれてしまうからである。
そこで、市販されている限られた厚みの多孔質フィルムを積層し、この積層フィルムを基材フィルムとしてイオン交換膜を製造することが行われているが、この場合には、多孔質フィルム同士の積層手段が問題となる。
例えば、特許文献2には、2枚の多孔質樹脂シートを積層し、融点以上の温度での熱融着により接合した多孔質膜を基材フィルムとして含むイオン交換膜が開示されているが、融点以上の温度での熱融着により接合しているため、多孔質フィルムに形成されている細孔が閉塞されてしまうという問題がある。即ち、このような基材フィルムは、透気度が高く、これを用いて形成されるイオン交換膜では、電気抵抗が高くなってしまう。従って、特許文献2では、積層する多孔質樹脂シートとして繊維状のもの(具体的にはフィブリル状のシート)を用い、その気孔率(空隙率)を大きくすることにより、熱融着による細孔の閉塞に由来する透気度の上昇やイオン交換膜の高電気抵抗化を抑制している。
しかるに、基材フィルムとして繊維状のものを使用した場合には、気孔率が大きくなりすぎ、当然、機械的強度の低下が否めず、必要以上の基材フィルムの厚みを厚くしなければならないなどの問題を生じてしまう。従って、この手段では、一般的なオレフィン系樹脂製のものは使用できず、このために、特許文献2では、ポリテトラフルオロエチレン製のものを使用しており、結果として、著しく高コストとなってしまう。
また、特許文献3では、本出願人により、接合せずに、重ね合わされた複数枚の多孔質樹脂シート(積層シート)の空隙部にイオン交換樹脂形成用の単量体組成物を充填し、この状態で該単量体組成物を重合させてイオン交換樹脂とすることにより、イオン交換膜を製造する方法が提案されている。
この方法では、多孔質樹脂シート同士が直接接合されておらず、空隙部(細孔)に充填されているイオン交換樹脂によって接合された形態となっているため、多孔質樹脂シート同士の接合による細孔の閉塞という問題を完全に回避でき、イオン交換膜の高電気抵抗化を確実に防止することができ、しかも、多孔質樹脂シートの材質としてポリテトラフルオロエチレンのような高価な格別の樹脂を使用する必要もなく、コスト的なメリットも大きい。しかしながら、この方法では、多孔質樹脂シート同士が接合されていないため、多孔質樹脂シート同士の間で界面剥離を生じ易いという問題があり、さらなる改良が必要である。
特開2009−96923号公報 特開2008−4500号公報 特開2012−21099号公報
従って、本発明の目的は、基材フィルムが互いに接合された多孔性樹脂フィルムでありながら、透気度が低く、従って、基材シートの積層化による高電気抵抗化が有効に抑制されたイオン交換膜を提供することにある。
本発明によれば、多孔質基材フィルムの空隙部にイオン交換樹脂が充填されているイオン交換膜において、
前記多孔質基材フィルムは、少なくとも2層の多孔質オレフィン系樹脂層が100gf/cm以上、700gf/cm未満の接合強度で積層された構造を有しており、該多孔質基材フィルムの膜厚が40〜250μmであり且つ100μm厚さ換算の透気度が500sec/100ml以下であると共に、
該イオン交換膜は、厚さ1cm換算の膜抵抗が50〜300Ω・cm /cmであり、厚さ1cm換算の破裂強度が30〜70MPa/cmであることを特徴とするイオン交換膜が提供される。
本発明の上記イオン交換膜は、
少なくとも2枚の多孔質オレフィン系樹脂フィルムを用意する工程;
前記複数枚の多孔質オレフィン系樹脂フィルムを重ね合わせ、融点−20℃以上、融点未満の温度に加熱して延伸成形することにより積層構造を有する前記多孔質基材フィルムを作製する工程;
前記多孔質基材フィルムをイオン交換樹脂形成用の重合性組成物に浸漬して、該フィルムの空隙に該重合性組成物が充填されたイオン交換膜前駆体を作製する工程;
前記イオン交換膜前駆体内の前記重合性組成物を重合せしめる工程;
を含む方法によって製造される。
上記の製造方法においては、
(1)前記複数枚の多孔質オレフィン系樹脂フィルムは、何れも20〜60%の空隙率を有していること、
が好適であり、さらに、
(2)前記イオン交換樹脂形成用の重合性組成物として、イオン交換基を有する単量体を含有しているものを使用し、前記重合により、イオン交換樹脂が形成されること、
或いは、
(3)前記イオン交換樹脂形成用の重合性組成物として、イオン交換基を導入し得る官能基を有する単量体を含有するものを使用し、前記重合後に、イオン交換基の導入を行うこと、
という手段を採用することができる。
本発明のイオン交換膜は、基材フィルムとして、少なくとも2枚の多孔質オレフィン系樹脂フィルムが重ね合わされた積層構造を有するものが使用されているものであるが、この基材フィルムにおいて、互いに対面する多孔質オレフィン系樹脂フィルム層の接合強度が100gf/cm以上と高く、しかも、このような高い積層構造を有していながら、その透気度は100μm厚さ換算で500sec/100ml以下と極めて低い。即ち、このような低い透気度を示すということは、この積層構造は、多孔質オレフィン系樹脂フィルムを熱融着により接合することにより形成されたものではなく、該フィルム中の細孔の閉塞が有効に回避されていることを示している。
従って、本発明のイオン交換膜では、高い接合強度での基材フィルムの積層構造により、強度が向上し、しかも、積層による基材フィルム中の細孔の閉塞が有効に回避されていることから、積層による高電気抵抗化が有効に抑制されている。
本発明において、基材フィルムが有する上記積層構造、即ち、低い透気度を有しながら高い接合強度を示すという積層構造は、多孔質オレフィン系樹脂フィルムを重ねわせて融点に近い温度(融点−20℃以上、融点未満の温度)で延伸成形を行うことにより実現される。即ち、互いに対面する多孔質オレフィン系樹脂フィルムの界面において、延伸操作によりオレフィン系樹脂の長鎖分子同士の絡み合いが生じ、この結果、上記のような高い接合強度で多孔質オレフィン系樹脂フィルムが積層されることとなる。また、このようにして得られた積層フィルムでは、同じ厚さの単層の多孔質フィルムに比べて破裂強度が向上する特徴を有する。しかも、延伸操作は、融点に近い温度ではあるが、融点未満であるため、熱融着による接合と異なり、多孔質オレフィン系樹脂中の微細な細孔の閉塞が有効に回避され、従って低い透気度を確保することが可能となるわけである。
このような本発明において、最大の利点は、製造や入手が容易な限られた厚みの未延伸多孔質オレフィン系樹脂フィルムを使用し、これを上述した方法での延伸操作によって積層し、積層枚数を適宜の枚数に設定して、その厚みを増大させて高強度の基材フィルムとすることができるということである。即ち、本発明で用いる基材フィルムと同等の単層の厚い多孔質フィルムを公知の方法で製造することは可能である。しかしながら、目的とする強度に応じて、その都度、そのような厚みの多孔質フィルムを製造することは実現性に乏しい。即ち、用途が著しく限定されてしまうため、工業ベースでの量産はできないし、少量生産とするのでは採算が合わないからである。
しかるに、本発明では、製造や入手が容易な厚みが限定されている多孔質オレフィン系樹脂フィルムを使用し、これを積層し、その透気度を上昇させることなく接合強度が高く且つ厚みの厚い多孔質積層フィルムを作製できるため、これを基材フィルムとしてイオン交換膜を製造することができる。即ち、用途が限定されて量産には適していない厚みの基材フィルムであっても、製造や入手が容易な厚みのフィルムを用いて容易に作製することができるので、本発明は、工業的に極めて有用である。
本発明のイオン交換膜の作成に用いる多孔質基材フィルムの概略断面図である。
<多孔質基材フィルム>
図1を参照して説明する。本発明で用いる多孔質基材フィルム(全体として1で示されている)は、2つの多孔質オレフィン系樹脂層3,3が積層された積層構造を有する。この積層界面は5で示されている。
尚、図1では2層構造となっているが、積層数は2つに限定されるものではなく、各層が多孔質オレフィン系樹脂で形成されており且つ重ね合せた状態での延伸操作が可能である限り、その積層数は3であってもよいし、それ以上の数であってもよい。即ち、この積層数は、多孔質基材フィルム1に要求する強度或いは厚みに応じて、適宜の数に設定することができる。
多孔質オレフィン系樹脂層3には、表面から裏面に貫通する微細な細孔(引照数字は省略)が多数形成されている。例えば、イオン交換膜の基材フィルムとして使用されるものでは、適宜の交換膜特性が得られるように、細孔の平均孔径(表面もしくは裏面で観察)は0.01〜2.0μm、特に0.015〜0.4μm程度に設定される。
また、本発明においては、このような大きさの細孔が占める体積割合、即ち空隙率は、20〜65%、特に30〜60%の範囲にあることが好ましい。即ち、この空隙率が過度に大きく、例えばこの樹脂層3が不織布シートなどの繊維質で形成されるような場合には、該層3の強度がかなり低くなってしまい、積層による強度向上効果が損なわれてしまったり、また寸法安定性も損なわれてしまうおそれがある。また、この空隙率が低すぎると、この基材フィルム1を用いてイオン交換膜を製造したとき、高電気抵抗となってしまい、イオン交換膜特性が損なわれてしまうおそれがある。
さらに多孔質オレフィン系樹脂層3の厚みは、20〜150μm程度である。
また、かかる多孔質オレフィン系樹脂層3を形成するオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の含塩素系オレフィン系樹脂などが代表的である。
尚、オレフィン系樹脂には、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂もあるが、このような含フッ素系樹脂は、非繊維質での細孔の形成が困難であり、また、後述する延伸による接合も困難であることから(おそらく、分子が伸縮しにくいためと思われる)上記で例示して非フッ素系のオレフィン系樹脂、特に高、中或いは低密度ポリエチレンが好ましく、なかでも極限粘度[η]が1.5dl/gを超える高密度ポリエチレンが最適である。
上述した多孔質オレフィン系樹脂層3,3は延伸されていることが必要であり、延伸方向はフィルムの倦回方向(フィルムの長さ方向、若しくは製膜時の原料樹脂吐出方向と同意。以下「MD」と略記することがある)とその垂直方向(フィルムの幅方向と同意。以下、「TD」と略記することがある。)に1軸或いは2軸延伸の何れであってもよいが、MD方向に少なくとも1.2倍以上、特に1.4倍以上の延伸倍率で延伸されていることが好ましく、TD方向には少なくとも1.2倍以上、特に1.5倍以上の延伸倍率で延伸されていることが好ましく、総延伸倍率は10倍以下が好ましい。延伸倍率が小さいと、後述する接合強度が低くなってしまうからである。
上述した多孔質オレフィン系樹脂層3,3から成り且つ延伸された積層構造の多孔質基材フィルム1は、例えば、フィルム成形用の前述したオレフィン系樹脂に細孔形成用の添加材(パラフィンや無機粉末など)が配合された樹脂組成物を用い、押出成形等により所定厚みのフィルムを成形し、次いでフィルムに配合されている添加材を、有機溶剤による抽出、酸またはアルカリによる溶解などによって除去した後、得られた未延伸の多孔質オレフィン系樹脂フィルムの所定枚数(図1では2枚)を重ね合わせて延伸することにより作製される。
上記において、延伸操作は、所定枚数の未延伸多孔質オレフィン系樹脂フィルムを重ね合わせた状態で行われ、ロールやテンター等を使い1軸方向或いは2軸方向に、所定の延伸倍率で延伸されるのに加えて、耐熱収縮性向上のため、熱固定又は、熱緩和等の熱処理を行うことが好ましい。
また、延伸及び熱固定又は、熱緩和等の熱処理は、当然融点未満の温度で行われるが、本発明においては、融点に近い温度領域で行うことが必要であり、特に融点−20℃以上、特に融点−15℃〜融点−1℃の温度範囲で行われるのが、良好な接合強度を得る上で好ましい。当該温度の選択によって良好な接合強度が得られる理由は明らかではないが以下の様に考えられる。即ち、このように融点に近い状態で重ね合わされることで多孔質オレフィン系樹脂フィルムの界面5でオレフィン系樹脂の分子が相互に界面内部に侵入する。ついで延伸操作によりオレフィン系樹脂の分子が引き延ばされ、絡み合いが生ずる。その後の冷却により、この絡み合いが固定され、高い接合強度で多孔質オレフィン系樹脂フィルム同士が接合し、前述した多孔質オレフィン系樹脂層3,3から成る積層構造の多孔質基材フィルム1が形成されることとなる。
本発明の多孔質基材フィルム1の膜厚は40〜250μmの範囲にあるが、厚いイオン交換膜を自在に得るという観点からは、80〜250μmであるのが好ましい。
このようにして形成される多孔質基材フィルム1において、多孔質オレフィン系樹脂層3,3の接合強度は、100gf/cm以上、700gf/cm未満、特に150〜550gf/cmと極めて高い。なお、本特許ではgf/cmの単位を用いるが、SI単位系を用いる場合はgf/cm=0.0098N/cmで換算を行う。
驚くべきことに、接合強度が100gf/cm以上、700gf/cm未満の範囲にあることによって、良好な単位厚さ当たりの破裂強度と膜抵抗を得ることが出来る。接合強度が上記の範囲で良好な単位厚さ当たりの破裂強度と膜抵抗を得られることは明らかではないが、以下のように考えられる。多孔質オレフィン系樹脂フィルムを面内に垂直な方向に加圧(プレス)することなく、融点に近い温度で重ね合わせ、延伸されることによって、多孔質オレフィン系樹脂フィルムの透気度を低く維持することが出来る。また、延伸を行う際に前述した界面部分での分子の絡み合いが生じることで、膜表面部分に比べ界面部分の孔径は緻密化し、それによって単位厚さ当たりの破膜強度も改善すると考えられる。結果的に面内に垂直な方向に加圧して積層した微多孔膜に比較して良好な破裂強度と膜抵抗を得ることが出来ると考えられる。また、多孔質オレフィン系樹脂層3,3の積層及び接合に際しては、融点以上に加熱されていないため、前述した多孔質オレフィン系樹脂フィルムに形成されている微細な細孔を閉塞されておらず、従って、この基材フィルム1の透気度は低く、100μm換算の透気度で500sec/100ml以下、特に100〜300sec/100mlの範囲にある。
<イオン交換膜>
本発明のイオン交換膜は、上記のようにして形成された多孔質基材フィルム1の空隙部(即ち、閉塞されていない細孔)にイオン交換樹脂が充填された構造を有するものであり、多孔質基材フィルム1の積層構造により高強度化がもたらされ、さらに、積層による高電気抵抗化に由来する膜特性の低下が有効に回避されている。
イオン交換樹脂;
多孔質基材フィルム1の細孔内に充填されるイオン交換樹脂は、公知のものでよく、例えば、炭化水素系又はフッ素系の樹脂に、イオン交換能を発現させるイオン交換基、具体的には、陽イオン交換基或いは陰イオン交換基を導入したものである。
前記炭化水素系の樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が、また、フッ素系の材質としては、パーフルオロカーボン系樹脂等が挙げられる。
また、イオン交換基は、水溶液中で負又は正の電荷となり得る官能基であり、陽イオン交換基の場合には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が好適である。また、陰イオン交換基の場合には、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に、強塩基性である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。
上記のようなイオン交換基を有するイオン交換樹脂は、前述した多孔質基材フィルム1の空隙率や該イオン交換樹脂に導入されているイオン交換基の量に応じて適宜のイオン交換容量(例えば、0.1乃至4.0meq/g程度)となるような量でイオン交換膜中に存在する。
<イオン交換膜の製造>
本発明において、上述した多孔質基材フィルム1を有するイオン交換膜は、イオン交換樹脂を形成するための重合性組成物を用意し(重合性組成物調製)、このような重合性組成物中に、多孔質基材フィルム1を浸漬することにより、該フィルム1中の細孔内に重合性組成物を充填し(重合性組成物の充填)、次いで、細孔内に充填された重合性組成物を重合し、更に必要に応じて、重合工程で得られた重合体(イオン交換樹脂前駆体)にイオン交換基を導入すること(イオン交換基導入工程)により製造される。
1.重合性組成物調製;
イオン交換基を形成するための重合性組成物は、上述したイオン交換基を導入し得る官能基(交換基導入用官能基)を有する単量体又はイオン交換基を有する単量体(以下、これらの単量体を「基本単量体成分」と呼ぶことがある)、架橋単量体及び重合開始剤を含有するものであり、これらの成分を混合することにより調製される。
交換基導入用官能基を有する単量体及びイオン交換基を有する単量体は、イオン交換樹脂を製造するために、従来から使用されているもので良い。
例えば、陽イオン交換基導入用官能基を有する単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等を挙げることができる。
陰イオン交換基導入用官能基を有する単量体としては、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
陽イオン交換基を有する単量体としては、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体、ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩類およびエステル類等を挙げることができる。
また、陰イオン交換基を有する単量体としては、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体、それらの塩類及びエステル類を挙げることができる。
尚、上記のような単量体として、イオン交換基を有する単量体を用いた場合には、後述する重合工程が完了した段階で目的とするイオン交換膜が得られるが、イオン交換基導入用官能基を有する単量体を用いた場合には、重合工程後にイオン交換基導入工程を実施することにより、目的とするイオン交換膜を得ることができる。
また、架橋性単量体は、イオン交換樹脂を緻密化し、膨潤抑止性や膜強度等を高めるために使用されるものであり、特に制限されるものでは無いが、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタリン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物が挙げられる。
このような架橋性単量体は、一般に、前述した基本単量体成分100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜40重量部である。
更に、上述した交換基導入用官能基を有する単量体、イオン交換基を有する単量体及び架橋性単量体の他に、必要に応じて、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を添加しても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。
重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限されること無く使用される。具体的には、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパ−オキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が用いられる。
このような重合開始剤は、基本単量体成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量部である。
上述した各種成分を含有する重合性組成物には、粘度を調整するために、必要に応じてマトリックス樹脂を配合することもできる。
このようなマトリックス樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、α,β,β´−トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を共重合させたものなどを使用することができる。
これらのマトリックス樹脂は、重合性組成物が、垂れ等を生じることなく、多孔質基材フィルム1の細孔内に速やかに充填保持し得るような粘度となるような量で使用される。
2.重合性組成物の充填;
多孔質基材フィルム1の細孔内への充填は、例えば、前述した重合性組成物が充填された槽内に、該フィルム1を浸漬することで行われる。この浸漬によって、重合性組成物が多孔質基材フィルム1の細孔内に充填されたイオン交換膜前駆体が得られる。
勿論、浸漬の代わりに、スプレー塗布などによって重合性組成物の充填を行うこともできる。
3.重合;
上記のようにして、多孔質基材フィルム1の細孔内に重合性組成物が充填されたイオン交換膜前駆体は、加熱オーブン等の重合装置内で加熱されて重合される。
基本単量体成分としてイオン交換基を有する単量体が使用されている場合には、この工程の完了により目的とするイオン交換膜が得られる。また、基本成分として、交換基導入用官能基を有する単量体を用いた場合には、この工程の完了後に、イオン交換基の導入が必要となる。
この重合工程では、一般に、重合性組成物が充填されたイオン交換膜前駆体をポリエステル等のフィルムに挟んで加圧下で常温から昇温する方法が採用される。加圧は、一般に0.1乃至1.0MPa程度の圧力で、窒素等の不活性ガスやロール等による加圧によって行われる。この加圧によって、フィルム1の外側界面に存在している余剰の重合性組成物が該フィルムの細孔内に押し込まれた状態で重合が行われ、樹脂溜りの発生などを効果的に防止することができる。
また、重合条件は、重合開始剤の種類、単量体の種類等によって左右されるものであ
り、公知の条件より適宜選択して決定すればよい。
重合温度は、多孔質基材フィルム1を形成するオレフィン系樹脂の融点よりも低い温度とすればよく、一般に、ポリエチレンのフィルムの場合で40乃至130℃程度の範囲である。
尚、重合時間は、重合温度等によっても異なるが、一般には、3乃至20時間程度である。
4.イオン交換基導入;
先に述べたように、重合組成物中の基本単量体成分として、イオン交換基を有する単量体を用いた場合には、上記の重合工程によりイオン交換樹脂が形成され、この段階で目的とするイオン交換膜が得られるが、基本単量体成分として、交換基導入用官能基を有する単量体を用いた場合には、上記の重合工程で得られる樹脂にはイオン交換基を有していないため、重合工程後にイオン交換基の導入を行う必要がある。
イオン交換基の導入は、それ自体公知の方法で行われ、例えば、陽イオン交換膜を製造する場合には、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理により行われ、陰イオン交換膜を製造する場合には、アミノ化、アルキル化等の処理により行われる。
以上により得られる本発明のイオン交換膜は、膜抵抗が同じであっても高い破裂強度を有すという特徴を有しており、厚さ1cm換算の膜抵抗で50〜300Ω・cm/cmを示し、厚さ1cm換算の破裂強度は30〜70MPa/cmである。
このようにして形成されたイオン交換膜は、適宜、適当な大きさに裁断されて、使用或いは販売に供される。
かかるイオン交換膜は、多孔質基材フィルム1の積層数に応じて強度が高く、しかも、該フィルム1の細孔の閉塞が有効に回避され、該基材フィルム1は高い透気度を示すため、この細孔内に充填されたイオン交換樹脂は、該基材フィルム1の表面から裏面に効果的に連続している部分を有しているため、その電気抵抗も低く、積層による高電気抵抗が抑制され、イオン交換特性も良好である。
本発明を、次の実験例で説明する。
尚、多孔質基材フィルムやイオン交換膜についての各種特性は、次の方法により測定した。
1.多孔質基材フィルムの膜厚
東洋精機製の微少測厚器(タイプKBN(商標)、端子径Φ5mm、測定圧62.47kPa)を用いて、雰囲気温度23±2℃で測定する。
2.多孔質基材フィルムの膜融点
セイコー電子工業(株)製DSC−220Cを使用し測定した。多孔質基材フィルムを直径5mmの円形に打ち抜き、数枚重ね合わせて3mgとしたものを測定サンプルとして用いた。これを直径5mmのアルミ製オープンサンプルパンに敷き詰め、クランピングカバーを乗せサンプルシーラーでアルミパン内に固定した。窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで30℃から180℃までを測定し、融解吸熱曲線の極大となる温度を膜融点とした。融解曲線のピークが複数存在する場合はピーク面積が最も大きいピークの温度を膜融点とした。
3.多孔質基材フィルムの接合強度
25°C、65%相対湿度においてに幅15mm、長さ150mmで、予め接合面の一部を剥がしたサンプルを作成し、引張試験機(島津製作所製オートグラフAGS−X)にチャック間距離75mmでT状態にセットして500mm/分の速度で接合力を測定した。測定した接合力から以下の式により接合強度を求めた。
接合強度(gf/cm)=接合力(gf)/サンプル幅(cm)
4.多孔質基材フィルムの透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計を用いて測定した。なお、本明細書では透気抵抗度を透気度として表記している。この測定値を元に100μm厚みに換算し、透気度とする。
透気度(sec/100ml)=測定透気度(sec/100ml)×100(μm)/膜厚(μm)
5.多孔質基材フィルムの空隙率
Xcm×Ycmの矩形のサンプルを切り出し、下記(1)式により算出した。
空隙率(%)={1−(10000×M/ρ)/(X×Y×T)}×100 (1)
(1)式中、T:サンプル厚み(μm)、M:サンプル重量(g)、
ρ:樹脂の密度(g/cm
6.多孔質基材フィルムの平均細孔径
ASTM−F316−86に準拠し、ハーフドライ法にて測定した。
7.極限粘度[η]
[η]はASTM−D4020に基づき、溶剤としてデカリンを用い、測定温度135℃で測定した。
8.イオン交換膜のイオン交換容量および含水率
イオン交換膜を1mol/l−HCl水溶液に10時間以上浸漬する。
その後、陽イオン交換膜の場合には、1mol/l−NaCl水溶液でイオン交換基の対イオンを水素イオンからナトリウムイオンに置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。一方、陰イオン交換膜の場合には、1mol/l−NaNO水溶液で対イオンを塩化物イオンから硝酸イオンに置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。
次に、同じイオン交換膜を1mol/l−NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した。その後ティッシュペーパーで表面の水分を拭き取り、湿潤時の膜の質量(Wg)を測定した。さらに、60℃で5時間減圧乾燥して乾燥時の重さ(Dg)を測定した。上記測定値に基づいて、イオン交換膜のイオン交換容量および含水率を次式により求めた。
イオン交換容量=A×1000/D[meq/g−乾燥質量]
含水率=100×(W−D)/D[%]
9.イオン交換膜の厚さ
イオン交換膜を0.5mol/L−NaCl溶液に4時間以上浸漬した後、ティッシュペーパーで膜の表面の水分を拭き取り、マイクロモメ−タ
MED−25PJ(株式会社ミツトヨ社製)を用いて測定した。
10.イオン交換膜の単位厚さ当たり破裂強度:
イオン交換膜を0.5mol/L−NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した。次いで、膜を乾燥させることなく、ミューレン破裂試験機(東洋精機製)により、JIS−P8112に準拠して破裂強度を測定した。得られた測定値およびイオン交換膜の厚さから次式により単位厚さ当たり破裂強度を算出した。
単位厚さ当たり破裂強度(MPa/cm)=測定破裂強度(MPa)/膜厚(cm)
11.イオン交換膜の単位厚さ当たり膜抵抗
白金黒電極を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、イオン交換膜の両側に0.5mol/L−NaCl水溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗とイオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により膜抵抗を求めた。なお、上記測定に使用するイオン交換膜は、予め0.5mol/LNaCl水溶液中で平衡にしたものを用いた。
得られた膜抵抗およびイオン交換膜の厚さから次式により単位厚さ当たり膜抵抗を算出した。
単位厚さ当たり膜抵抗(Ω・cm/cm)=膜抵抗(Ω・cm)/膜の厚さ(cm)
<製造例1>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ195μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で1.4倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に1.9倍延伸し、最後に131℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例2>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ170μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で1.4倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に1.9倍延伸し、最後に129℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例3>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ190μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し、単層の多孔質基材フィルムを得た。得られた多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例4>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ210μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し、次いで、120℃でTD方向に1.9倍延伸し、最後に132℃にて熱処理して単層の多孔質基材フィルムを得た。得られた多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例5>
製造例4で作成した単層の多孔質基材フィルムを2枚重ね、120℃で8.2kg/cmの圧力で5分間熱プレスした。得られた多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例6>
製造例4で作成した単層の多孔質基材フィルムを2枚重ね、135℃で8.2kg/cmの圧力で5分間熱プレスした。得られた多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例7>
製造例1において、延伸温度を137℃にし、最終熱処理温度を140℃にした以外は同様にして積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの剥離強度を測定したところ、積層フィルム間は剥離せずフィルムが破断した。物性を表1に示す。
<製造例8>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で1.1倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に1.1倍延伸し、最後に130℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例9>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ290μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で2倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に2倍延伸し、最後に132℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例10>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ460μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で2.5倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に2.5倍延伸し、最後に133℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例11>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ660μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で3倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に3倍延伸し、最後に134℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<製造例12>
極限粘度[η]が7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン19.2重量%、極限粘度[η]が2.8dl/gの高密度ポリエチレン12.8重量%、フタル酸ジオクチル(D
OP)48重量%、微粉シリカ20重量%を混合造粒した後、先端にTダイを装着した2軸押出機にて溶融混練した後に押出し、両側から加熱したロールで圧延し、厚さ850μmのシート状に成形した。該成形物からDOP、微粉シリカを抽出除去し微多孔膜を作製した。該微多孔膜を2枚重ねて120℃で3.4倍MD方向に延伸した後、120℃でTD方向に3.4倍延伸し、最後に136℃にて熱処理して積層多孔質基材フィルムを得た。得られた積層多孔質基材フィルムの物性を表1に示す。
<実施例1>
下記処方により、各成分を混合して重合性組成物を調製した。
スチレン 73.5質量部
p−クロルメチルスチレン 16.5質量部
アクリロニトリル 10.0質量部
アセチルクエン酸トリブチル 2.5質量部
スチレンオキサイド 2.9質量部
カヤブチルD
(ジ−t−ブチルパーオキシド、化薬アクゾ株式会社製) 1.9質量部
この重合性組成物の組成は、表2に示した。
この重合性組成物500gを1000mlのガラス容器に入れ、ここに基材シートとして前記製造例1で作製された多孔質基材フィルムを浸漬して、該フィルムの空隙部に重合体組成物を充填した。
上記の重合体組成物を充填した多孔質基材フィルムを取り出し、厚さ100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質基材フィルムの両側を被覆した後、0.4MPaの窒素加圧下、120℃で6.8時間加熱重合した。
得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1(重量比)の混合物中に40℃で60分浸漬した。その後、膜状物を90%硫酸、60%硫酸、イ
オン交換水に順次浸漬し、さらに4mol/L−NaOH水溶液に12時間浸漬し、水洗することによりスルホン酸型陽イオン交換膜を得た。得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<実施例2、3>
表2に示す基材シート、重合性組成物を用い、実施例1と同様にして本発明の陽イオン交換膜を作成した。得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<実施例4>
下記処方により、各成分を混合して重合性組成物を調製した。
p−クロロメチルスチレン 86.0質量部
ジビニルベンゼン(純度57%) 14.0質量部
スチレンオキサイド 4.0質量部
カヤブチルD
(ジ−t−ブチルパーオキシド、化薬アクゾ株式会社製) 4.0質量部
この重合性組成物の組成は表2に示した。
この重合性組成物500gを1000mlのガラス容器に入れ、ここに基材シートとして製造例1で作製された多孔質基材フィルムを浸漬して、該シートの空隙部に重合体組成物を充填した。
上記の重合体組成物を充填した多孔質基材フィルムを取り出し、厚さ100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質基材フィルムの両側を被覆した後、0.4MPaの窒素加圧下、80℃で5時間、さらにその後90℃で2時間加熱重合した。
得られた膜状物を30%トリメチルアミン水溶液15重量部、水52.5重量部、アセ
トン22.5重量部の混合物中に30℃で16時間浸漬して、4級アンモニウム型陰イオ
ン交換膜を得た。得られた陰イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示した。
<実施例5、6、7>
表2に示す基材シート、重合性組成物を用い、実施例1と同様にして本発明の陽イオン交換膜を作成した。得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<比較例1>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例3の単層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成した。この陽イオン交換膜の作成に使用されている重合性組成物の組成を表2に示し、得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<比較例2>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例3の単層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例4と同様にして陰イオン交換膜を作成した。この陰イオン交換膜の作成に使用されている重合性組成物の組成を表2に示し、得られた陰イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<比較例3>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例4の単層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成した。この陽イオン交換膜の作成に使用されている重合性組成物の組成を表2に示し、得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<比較例4>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例5で作成した積層した多孔質基材フィルムを用い、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成したが、濃硫酸とクロロスルホン酸の混合物でスルホン化を実施した際に積層した多孔質基材フィルム同士が剥離し、所望の陽イオン交換膜を得ることができなかった。
<比較例5>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例6で作成した積層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成した。この陽イオン交換膜の作成に使用されている重合性組成物の組成を表2に示し、得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<比較例6>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例4で作成した単層多孔質基材フィルムを2枚重ねて基材シートとして用い、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成したが、濃硫酸とクロロスルホン酸の混合物でスルホン化を実施した際に重ねた多孔質基材フィルム同士が剥離し、所望の陽イオン交換膜を得ることができなかった。
<比較例7>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例7の積層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成した。この陽イオン交換膜の作成に使用されている重合性組成物の組成を表2に示し、得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
<比較例8>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例8の積層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成したが、濃硫酸とクロロスルホン酸の混合物でスルホン化を実施した際に重ねた多孔質基材フィルム同士が剥離し、所望の陽イオン交換膜を得ることができなかった。
<比較例9>
製造例1の積層多孔質基材フィルムの代わりに、製造例12の積層多孔質基材フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして陽イオン交換膜を作成した。この陽イオン交換膜の作成に使用されている重合性組成物の組成を表2に示し、得られた陽イオン交換膜の特性を評価した結果を表3に示す。
1:多孔質基材フィルム
3:多孔質オレフィン系樹脂層

Claims (1)

  1. 多孔質基材フィルムの空隙部にイオン交換樹脂が充填されているイオン交換膜において、
    前記多孔質基材フィルムは、少なくとも2層の多孔質オレフィン系樹脂層が100gf/cm以上、700gf/cm未満の接合強度で積層された構造を有しており、該多孔質基材フィルムの膜厚が40〜250μmであり且つ100μm厚さ換算の透気度が500sec/100ml以下であると共に、
    該イオン交換膜は、厚さ1cm換算の膜抵抗が50〜300Ω・cm /cmであり、厚さ1cm換算の破裂強度が30〜70MPa/cmであることを特徴とするイオン交換膜。
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