JP5626684B2 - 一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、いずれの方法も、膜の機械的強度を向上させることは可能であるが、膜の濃縮性能については満足のいく成果は見られなかった。
(1)超高分子量ポリエチレンフィルムに電離放射線を照射することにより、超高分子量ポリエチレンにラジカルを発生させ、陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体単独、又は該重合性単量体及び架橋性単量体の重合性混合物を用いてグラフト重合を行うことにより得られた、グラフト重合超高分子量ポリエチレンフィルムを、前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と2か所以上で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させて、フィルムに前記化合物による架橋構造部分を有しせしめた後、さらに前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と1か所で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させることにより、一価陰イオン選択透過性を付与させたことを特徴とする一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
(2)前記2か所以上で反応可能な化合物が、2か所以上のアミノ基を有する有機化合物であることを特徴とする前記(1)記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
(3)前記2か所以上で反応可能な化合物が、2か所以上の3級アミノ基を有する有機化合物であることを特徴とする前記(1)記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
(4)前記の超高分子量ポリエチレンフィルムが、超高分子量ポリエチレンフィルムを融点付近まで加温し一部溶融させ、前記加温条件下で前記フィルムが収縮しない程度に厚み方向に加圧することにより得られるフィルムであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
(5)前記の加圧条件下で加熱処理を、130〜160℃の温度で、1000kPa以上の圧力で行ったことを特徴とする前記(4)記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
(6)超高分子量ポリエチレンフィルムに電離放射線を照射することにより、超高分子量ポリエチレンにラジカルを発生させ、陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体単独、又は該重合性単量体及び架橋性単量体の重合性混合物を用いてグラフト重合を行うことにより得られた、グラフト重合超高分子量ポリエチレンフィルムを、前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と2か所以上で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させて、フィルムに前記化合物による架橋構造部分を有しせしめた後、さらに前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と1か所で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させることにより、一価陰イオン選択透過性を付与させることを特徴とする一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
(7)前記2か所以上で反応可能な化合物として、2か所以上のアミノ基を有する有機化合物を用いることを特徴とする前記(6)記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
(8)前記2か所以上で反応可能な化合物として、2か所以上の3級アミノ基を有する有機化合物を用いることを特徴とする前記(6)記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
(9)前記の超高分子量ポリエチレンフィルムとして、超高分子量ポリエチレンフィルムを融点付近まで加温し一部溶融させ、前記加温条件下で前記フィルムが収縮しない程度に厚み方向に加圧することにより得られるフィルムを用いることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか1項記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
(10)前記の加圧条件下で加熱処理を、130〜160℃の温度で、1000kPa以上の圧力で行うことを特徴とする前記(9)記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
本発明で使用できる、高分子フィルム基材としては、得られるイオン交換膜の耐久性が向上し、膨潤性も抑制される、分子量が30万以上である超高分子量ポリエチレンを使用することができ、特に分子量が100万〜630万であり、厚みが20〜100μmのものを用いるのが好ましい。
高分子基材の形態は、製塩用のイオン交換膜としての利用面からの要請から、膜(フィルム)の形態であって、その大きさ、厚さは適宜決定することができる。
また、超高分子量ポリエチレンを、厚み方向に対して加圧条件とした後、融点付近まで加温し一部溶融させ、冷却することにより製造されるフィルムを用いてもよい。
加熱加圧処理は、超高分子量ポリエチレンを、厚み方向に対して加圧条件とした後、融点付近まで加温し一部溶融させ、冷却することにより、フィルムの結晶構造を一部変化させることを特徴とする。前記超高分子量ポリエチレンのフィルムをその一部が溶融するように加温する加熱条件としては、前記超高分子量ポリエチレンの性状により変わるが、120〜170℃、好ましくは130℃〜160℃の範囲である。
加圧条件に特に制限はないが、加圧が不十分である場合、加熱時に膜が収縮し、フィルムの形状を維持することが出来なくなる。そのため、少なくとも、膜が収縮しない程度の圧力をかける必要がある。ロール法による場合には、ロールの周囲から加圧型で全面的に加圧する手段を用いなくとも、粘着性テープあるいはベルトを用い、フィルムを巻きつけたロールの上に巻いて締めれば、ロールの周囲からフィルムの厚み方向に全面的に加圧することができる。
なお、加圧方法としてホットプレスを採用した場合、同時に加熱することが可能である。
加熱時間に特に制限はないが、少なくとも1時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上とするのがよい。実用的には12〜72時間が好ましい。
超高分子量ポリエチレンフィルム(例えば、作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルム イノベート(製品名))を保護フィルムと共にロールに巻き取る。巻取り速度に特に制限は無く、接触圧は少なくとも熱処理時に膜が収縮しない程度であればよい。保護フィルムに特に制限は無いが、保護フィルムとしては加熱温度において形状変化を生じず、表面平滑性が高く、処理後超高分子量ポリエチレンフィルムとの剥離が容易であることが好ましく、特にPETフィルム(例えば、東レ株式会社製、ルミラー(製品名))を用いるのが好ましい。また、巻取りに使用するロールの芯としては特に制限は無いが、処理温度において形状変化を起こさない物質であり、接触圧による形状変化も起こさず、表面平滑性が高いことが好ましく、特に鉄等の金属を用いるのが好ましい。ロールに巻き取られたフィルムは接触圧を維持したまま、熱処理機に入れ加熱する。熱処理機の温度は145〜160℃とし、12〜72時間加熱した後、熱処理機よりロールを取り出し、自然冷却をした。
まず、高分子基材を酸素不透過性ポリ袋中に挿入後、この袋内を窒素置換し、袋内酸素を除去する。次いでこの基材を含む袋に電離放射線の一つである電子線を、−10〜80℃、好ましくは室温付近で、20〜400kGy照射する。電子線の照射量は、好ましくは50〜100kGyである。次いで、照射済み基材を大気中で取り出し、ガラス容器に移し替えた後、容器内にモノマー液又はモノマー溶液(溶媒希釈液)を充填する。モノマー液又はモノマー溶液は、酸素の存在しない不活性ガスによるバブリングや凍結脱気などで予め酸素ガスを除いたものを使用する。照射済み基材にポリマーのグラフト鎖を導入するためのグラフト重合は、通常、室温〜80℃、好ましくは、25〜70℃、特に好ましくは40〜50℃で実施する。
前記化合物としては、理論的には、前記の基は1か所のものであっても、グラフト重合された超高分子量ポリエチレンフィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と2か所以上で反応可能な物質であってもよいことになる。そのような化合物としては、1級アミンであるメチルアミンや2級アミンであるジメチルアミン等が挙げられる。前記化合物が前記フィルムの有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と1か所でしか結合しないのであれば、陰イオン交換基を導入した公知の陰イオン交換膜と違わないことになる。トリメチルアミンは、2か所以上で反応することができず、架橋した構造が得られないために使用には適していない。一方、メチルアミンやジメチルアミンは、2か所以上で反応することができ、架橋した構造が得られるが、その反応をそのまま続行すると、抵抗が著しく大きい膜が生成するので、その反応は選択処理では部分的で止め、その後は陰イオン交換基付与のために、架橋構造を形成せず、陰イオン交換基の付与が可能であるトリメチルアミンなどで処理することが好ましい。
これらの化合物のうち、2か所以上のアミノ基を有する有機化合物としては、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンのように他のアミノ基が一方のアミノ基が結合している炭素鎖の位置から離れた炭素鎖の位置に結合している構造となるような化合物であることが好ましい。これは、得られた架橋構造を形成する2か所のアミノ基間の距離が選択透過性に大きく影響を与えるためである。特に、2か所のアミノ基の構造が同一であり、間に挟まれる炭素数が異なるN,N,N´,N´−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンを比較すると、炭素数が6であるN,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンが最も適切であることがわかる。
この残りの官能基への残りの官能基へ陰イオン交換基の導入のための反応は、従来行われている広範な方法が何の制限もなく使用できる。一般的には、強塩基性イオン交換基を導入可能なトリメチルアミン、ジメチルアミンエタノール、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
分子量160万、膜厚50μmの超高分子量ポリエチレンフィルム(作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルム イノベート(製品名))厚み60μm×縦50m×横60cmを、PETフィルム(膜厚120μm)と共に鉄製ロール(直径100mm)の芯を用いたロールに巻き取る。サンプル巻取り後、その上からPETフィルムを5m程度巻き接触圧を増加させ、さらに粘着性テープ等で巻き締めることにより、内部の接触圧が維持されるようにした。巻き取り速度は100cm/minとし、サンプルにかかる接触圧はいずれの部分も1000kPa以上とした。また、対象フィルム巻き取り後、153℃とした熱処理機に入れ、72時間加熱した後、熱処理機よりロールを取り出し、自然冷却した。
実施例1と異なる方法により製造した膜を実施例2〜21、実施例1と同じ方法により製造した膜でN,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンによる選択処理を実施していない膜を比較例1とし、実施例1とあわせ、合成条件及び膜特性を第1〜2表に示す。
選択透過係数は後述する(1)式に従い算出され、選択処理性能を示す指標として一般的に用いられる。
選択透過係数=(供給液塩化物イオン濃度/かん水塩化物イオン濃度)×(かん水硫酸イオン濃度/供給液硫酸イオン濃度)・・・(1)式
(1)式において得られる硫酸イオンの選択透過係数は、電気透析における塩化物イオンの透過性に対する硫酸イオンの透過性を示す値である。従って、本発明における「一価陰イオン選択透過性」の評価においては、数値が低いほど性能が高いことを示す。第1表によれば、選択透過係数は実施例1〜21では、0.0120〜0.0615の範囲にあり、比較例1における「0.1707」に比してかなり低い値となっているので、本発明は、「一価陰イオン選択透過性」において優れているといえる。
図2に示したとおり、本発明に従って製造したいずれの陰イオン交換膜についても、市販されている陰イオン交換膜と比較し高い濃縮性能を示した。なお、図2中に示した直線は、市販イオン交換膜と同等の濃縮性能を示す直線であり、直線より上部に示される膜性能はすべて市販膜より高い濃縮性能であるといえる。
Claims (10)
- 超高分子量ポリエチレンフィルムに電離放射線を照射することにより、超高分子量ポリエチレンにラジカルを発生させ、陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体単独、又は該重合性単量体及び架橋性単量体の重合性混合物を用いてグラフト重合を行うことにより得られた、グラフト重合超高分子量ポリエチレンフィルムを、前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と2か所以上で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させて、フィルムに前記化合物による架橋構造部分を有しせしめた後、さらに前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と1か所で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させることにより、一価陰イオン選択透過性を付与させたことを特徴とする一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
- 前記2か所以上で反応可能な化合物が、2か所以上のアミノ基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
- 前記2か所以上で反応可能な化合物が、2か所以上の3級アミノ基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
- 前記の超高分子量ポリエチレンフィルムが、超高分子量ポリエチレンフィルムを融点付近まで加温し一部溶融させ、前記加温条件下で前記フィルムが収縮しない程度に厚み方向に加圧することにより得られるフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
- 前記の加圧条件下で加熱処理を、120〜170℃の温度で、1000kPa以上の圧力で行ったことを特徴とする請求項4記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜。
- 超高分子量ポリエチレンフィルムに電離放射線を照射することにより、超高分子量ポリエチレンにラジカルを発生させ、陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体単独、又は該重合性単量体及び架橋性単量体の重合性混合物を用いてグラフト重合を行うことにより得られた、グラフト重合超高分子量ポリエチレンフィルムを、前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と2か所以上で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させて、フィルムに前記化合物による架橋構造部分を有しせしめた後、さらに前記フィルムが有する陰イオン交換基を導入可能な官能基と1か所で反応可能でかつ陰イオン交換基を形成しえる化合物と反応させることにより、一価陰イオン選択透過性を付与させることを特徴とする一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
- 前記2か所以上で反応可能な化合物として、2か所以上のアミノ基を有する有機化合物を用いることを特徴とする請求項6記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
- 前記2か所以上で反応可能な化合物として、2か所以上の3級アミノ基を有する有機化合物を用いることを特徴とする請求項6記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
- 前記の超高分子量ポリエチレンフィルムとして、超高分子量ポリエチレンフィルムを融点付近まで加温し一部溶融させ、前記加温条件下で前記フィルムが収縮しない程度に厚み方向に加圧することにより得られるフィルムを用いることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
- 前記の加圧条件下で加熱処理を、120〜170℃の温度で、1000kPa以上の圧力で行うことを特徴とする請求項9記載の一価陰イオン選択透過性製塩用陰イオン交換膜の製造方法。
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