JP5843294B2 - 伸縮性経編地の製造方法 - Google Patents
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Description
このような伸縮性経編地は、その用途に合わせて、タテヨコそれぞれの方向の伸度や、身体に対する緊迫力その他の特性を適当な条件に設定しなければならない。しかし、弾性糸が1本だけの伸縮性経編地では、前記のような用途に必要とされるタテヨコそれぞれの方向の伸縮性や十分な緊迫力を持たせることができなかった。
特許文献1の伸縮性経編地では、ナイロン等の合成繊維糸条を数コースごとに両隣または片隣のウェールに交互に編込み編成して経編地組織を形成し、この経編地組織の内側(裏側)に、第1の伸縮性糸条を同一ウェールにおいて1コースごとにジグザグ状に繰り返して挿入するとともに、第2の伸縮性糸条をそれぞれ同じ数コースごとに片隣りのそれぞれ同じ数ウェールにわたる振り幅で繰り返し挿入することで、編目を形成するようにしている。また、特許文献2の伸縮性経編地では、非弾性糸と2種類の弾性糸から構成され、非弾性糸は全ての編目でループを形成し、第1の弾性糸は全ウェールにわたり1コース毎に1〜2針の振り幅で挿入され、第2の弾性糸は全ウェールにわたり1コース毎に1〜3針の振り幅で挿入されて、編目形成がなされている。
そこで、本発明の課題は、弾性糸による編目を有する伸縮性経編地における上記風合いの微妙なバラツキを解消することにある。
非弾性糸の太さが、長繊維糸では20〜75デニール、短繊維糸では35〜54デニールであり、第1の弾性糸の太さが40〜560デニール、第2の弾性糸の太さが20〜105デニールで、第1の弾性糸の太さが第2の弾性糸と同じかより太く、第1の弾性糸の給糸量が95mm/R(整経ストレッチ75%)を超え130mm/R(整経ストレッチ75%)以下であり、第2の弾性糸のウェール方向に移動する亘り角度が0〜25°であり、各糸の太さと単位編目当たり重量が下記(1)式〜(3)式の関係を満足するようにするとともに、
0.21A<=X<=0.29A …(1)
0.55B<=Y<=0.69B …(2)
4.5C+0.04A−35<=Z<=5.5C+0.05A−43 …(3)
ここで、A:第1の弾性糸の太さ(デニール)
B:第2の弾性糸の太さ(デニール)
C:非弾性糸の太さ(デニール)
X:第1の弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
Y:第2の弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
Z:非弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
編目形成時の単位編目数(α)と染色仕上げ後の単位編目数目標値(β)との間に下記の式で表される関係が成り立っている、ことを特徴とする。
T−13.4≦β≦T+13.4
ただし、T=−0.0373×α2 +5.4316×α
なお、以下では、「染色仕上げ後の単位編目数目標値(β)」なる文言につき、その文言中の「目標値」なる文言を外して、単に、「染色仕上げ後の単位編目数(β)」と言うことがある。
弾性糸同士による編目形成がなされている伸縮性経編地において、上述のごとく、編目形成時の単位編目数(α)と染色仕上げ後の単位編目数(β)との間に上記の式で表される関係が成り立つようにすれば、伸縮性に優れるだけでなく、編地として必要な基本的性能をも十分に備えた実用性の高い伸縮性経編地において、風合い(生地の柔らかさ、硬さ、手触りと肌触り、腰などの張り等)において商品間で微妙なバラツキが生じることを避けることができるのである。
本発明において、伸縮性経編地の基本的な編成構造自体、すなわち、非弾性糸と弾性糸を用いるとともに弾性糸同士による編目形成をするようにする点は、従来技術と同様であってよい。
経編機も、通常のラッシェル機などの経編機が使用できる。ただし、経編機として、複数の筬を備えたものを用い、それらのうち、手前側の1列または複数列の筬に、それぞれ、非弾性糸をフルセットで通糸し、その後側に第1弾性糸および第2弾性糸をそれぞれフルセットで通糸して編成を行うのが好ましい。第1弾性糸と第2弾性糸の筬配置は、いずれが前になってもよい。
0.55B<=Y<=0.69B …(2)
4.5C+0.04A−35<=Z<=5.5C+0.05A−43 …(3)
ここで、A:第1の弾性糸の太さ(デニール)
B:第2の弾性糸の太さ(デニール)
C:非弾性糸の太さ(デニール)
X:第1の弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
Y:第2の弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
Z:非弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
編地を構成する糸の太さと単位編目当たり重量との関係を規定することによって、前記した編目形成の伸縮性編成組織による諸特性の向上を果たすだけでなく、編地としての基本的な機能や性能にも優れた商品価値の高い伸縮性経編地を提供することができる。具体的には、経編地としての伸度が大きいため、衣料に用いたときに、着脱が容易であり、着用時に身体の動きに追随できて、圧迫感や窮屈感がない。また、タテヨコ両方向、特にヨコ方向において、伸張力すなわちロードパワーと緊迫力すなわちアンロードパワーとの差が少なく、完全な弾性体に近い特性を示すので、生地が身体の複雑な動きにも容易に追随して伸び、しかも、瞬時に回復することになり、非常にフィット性の良いものとなる。さらに、本発明の前記条件式を満足する範囲で、各糸の太さや組み合わせを変更すれば、パワーや伸長率および伸長回復率などが、それぞれの用途や要求される機能に適した諸特性の値を示す伸縮性経編地が容易に得られることになり、この種の伸縮性経編地の用途拡大および需要の増大に、きわめて大きな貢献を果たすことができる。
まず、第2弾性糸がウェール方向に移動する亘り角度が0〜25°になるようにする。前記編成組織で、第2弾性糸は、ひとつのコースから隣のコースへとウェール方向に移動しながら編み込まれる。このとき、第2弾性糸が、コース間をウェール方向に亘る部分が、各コース方向の直交方向として規定されるウェール方向に対してなす角度を、前記亘り角度と呼ぶ。この亘り角度を、前記角度範囲に規定する。亘り角度は、編地の組織を観察すれば測定できるが、編地を酸などで処理して、非弾性糸を除去し弾性糸のみを残すようにすると、測定が行い易い。
単位編目当たり重量は、一定編目数の編地を分解して、各構成糸の重量を測定すれば求められる。ここで測定される重量は、生機時における油剤などの脱落や染色整理後における仕上剤の付着なども含んだ値である。編地の各構成糸の単位編目当たり重量は、編地の単位編目数に含まれる糸の太さと長さによって変わる。糸の太さが同じであれば、編成時における各構成糸の給糸量を調整することで、編地における単位編目当たり重量が変更できる。本発明では、編成時に、非弾性糸および弾性糸の給糸量を調整して、単位編目当たり重量X〜Zが前記(1)〜(3)式を満足するようにするのが好ましい。
つぎに、伸縮性経編地における染色仕上げ工程とその前後工程における生地の伸縮について述べる。これらの伸縮が、本発明で規定している単位編目数の関係式を満たすか否かに関わる2つの単位編目数の大小に影響を与える因子となる。
精錬・リラックス工程:繊維に付着している不純物や汚れを除いて清浄な状態とすると同時に、糸や編成組織の収縮因子を発現させて安定した状態とする工程である。以上の結果、この工程では、生地を弛緩させ、生地が縮む。
中間セット工程:仕上げ密度や物性を想定して生地を引っ張り、熱を掛けて仮固定する工程である。以上のとおり、この工程では、生地を引っ張るため、生地が少し伸びる。
仕上げセット工程:目標とする密度に合わせるよう、生地を少し引っ張った上で固定する工程である。この工程では、染色工程で収縮している分を考慮して少し引っ張るため、生地は少し伸びる。
本発明の実施においては、上で述べた各工程での伸縮を考慮し、中間セット工程において目標に合わせたセットを実現するよう配慮すれば、生地間でのブレが小さくなり、安定した仕上品を得ることができる。
本発明の伸縮性経編地は、従来、伸縮性経編地が利用されていた各種用途に用いることができ、例えば、ガードル、ボディースーツなどのインナーウェアや、水着、レオタードなどのスポーツウェアその他に好適である。
以下では、編目形成時の単位編目数(α)と染色仕上げ後の単位編目数(β)との関係が本発明で規定している範囲内である実施例1〜3と、範囲外である比較例1、2を示して、風合いバラツキの程度を、密度のバラツキの程度で見るようにした。
なお、これらの実施例と比較例は、いずれも、その糸使いや編み組織、使用装置はすべて同じであって以下のとおりであり、本発明で好ましいとしている前記(1)式〜(3)式の関係を満たすものである。
<経編機>
カールマイヤー社製ラッシェル機タイプRE4N、130インチ幅、56GG
<糸使い>
フロント:非弾性糸 ナイロン66 44T−20Br異形(東レ社製)
ミドル :第1弾性糸 ライクラ235T−127C(東レオペロンテックス社製)
バック :第2弾性糸 ライクラ44T−127C(東レオペロンテックス社製)
<筬への引込配列>
フロント、ミドル、バックそれぞれフルセット
<編組織>
フロント:42/24/20/24/42/46//
ミドル:22/00//
バック:22/00/66/44/66/00//
図1に具象的な編成組織図を、図2に各糸に分解した状態の模式的編成組織図を示している。図中、経編地は、非弾性糸10と、第1弾性糸20および第2弾性糸30で構成されている。
<給糸量>
前述した単位編目当たりの重量の関係式を満たすよう、適宜に給糸量を調整した。
以上の条件で編成を行って、実施例1〜3と比較例1、2の生地である、伸縮性経編地を製造した。
つぎに、得られた伸縮性経編地に対して、以下に述べる染色仕上げを施した。
なお、下記の染色仕上げは一例であって、他の染色仕上げ条件を実施したとしても、本発明の意図する効果に変わりはないのである。
<染色仕上げ>
伸縮性経編地を拡布状の連続リラクサーに通して精錬・リラックス処理したのち、190℃でプレセットし、その後、液流染色機に投入して95℃・3時間の染色処理を行い、160℃で仕上げセットを行った。
上のようにして得られた伸縮性経編地について、その第2弾性糸の亘り角度と諸物性を以下のようにして測定した。
<第2弾性糸の亘り角度>
約5cm2にカットされた試料を、濃度20%の塩酸溶液を入れたフラスコの中で十分に攪拌した。試料中の非弾性糸を構成するナイロンが溶け、ポリウレタンからなる第1、第2弾性糸が、編成状態のまま交差した形で接触融着して残った。なお、編地を構成する糸の組み合わせが異なる場合にも、弾性糸は溶解せず非弾性糸のみを溶解できるような溶剤を用いて、同様の操作を行えばよい。
<物性>
経編地のタテヨコ両方向について、負荷および除荷を繰り返して、伸縮性評価試験を行い、その試験結果から、パワー、伸長回復率、伸度を算出した。試験条件は、試料幅2.5cm、つかみ間距離10cm、引張速度300mm/minであった。パワーの値は、3サイクル目で15〜80%のそれぞれの伸長率での値を示す。伸長率15〜50%の場合は、負荷過程/除荷過程の値をそれぞれ示した。伸長回復率は、1サイクル目/3サイクル目の値を示している。伸度は、1サイクル目の値である。
<耐伸縮疲労性>
試験装置:伸縮疲労度試験機
試料の調整:
(未縫製試験)弾性糸の入った方向に17cm×9cmの試験片を取る。
(縫製試験)弾性糸の入った方向に9.5cm×9cmの試験片を2枚作り、1枚は編始め方向、1枚は編終り方向を縫い合わせる。縫目は2針オーバー、針目は13針/インチ、縫糸はウーリーナイロン210d、針は#11、縫代は7mmとする。
試験の操作:
(乾燥試験=D)未縫製試料を用いる。引張間隔7cm(両端つかみ代5cm)、引張速度200rpm 、回数7500回で測定する。
(湿潤試験=W)縫製試料を用いる。試験片を合成洗剤0.13%溶液に十分に浸漬する以外は、前記乾燥試験と同様の条件で測定する。
(未縫製ネジリ試験)未縫製試料を用い、純水に十分浸漬させたのち、試料を三つ折りにし、360°ひねって試験機に装着する。試験操作は、前記乾燥試験および湿潤試験と同じ要領で行うが、回数は2500回とする。ヨコ方向7500回未縫製試験は、前記乾燥試験を、第1弾性糸の方向と直角方向について行う。
<破裂強度、引裂強力、カール> 下記により測定を行う。
(破裂強度)JIS L−1018 A法(ミューレン形法)に準じて行う。但し、生地の伸びが大きいため、試験布を全方位に50%伸長させて測定を行う。
(引裂力度)JIS L−1018 シングルタング法に準じて行う。数値の読みは、引裂きの荷重曲線より極大値の最小値3個の平均値で表す。
(カール)10cm×10cmの試験片を、温度20±2℃、湿度65±2%RHの雰囲気中に4時間放置し、生地のメクレを見る。生地のタテ・ヨコいずれかの方向の先端が360°以上カールしたものを不良と判定した。
実施例と比較例に用いられている伸縮性経編地について、上のようにして測定された諸物性等は、下記表1に記載のとおりである。
編目形成時の単位編目数(α)が「78.0(c/in)」、染色仕上げ後の単位編目数(β)が「195.0(c/in)」であって本発明で規定している関係を満たす場合(実施例1)、編目形成時の単位編目数(α)が「75.2(c/in)」、染色仕上げ後の単位編目数(β)が「207.0(c/in)」であって本発明で規定している関係を満たす場合(実施例2)、および、編目形成時の単位編目数(α)が「90.2(c/in)」、染色仕上げ後の単位編目数(β)が「174.0(c/in)」であって本発明で規定している関係を満たす場合(実施例3)の風合い測定結果は、下記表2〜4に見る通りであって、いずれも、密度のバラツキ(目標との差)から見た風合いのバラツキが極めて小さいのに対し、編目形成時の単位編目数(α)が「67.3(c/in)」、染色仕上げ後の単位編目数(β)が「168.0(c/in)」であって本発明で規定している関係を満たさない場合(比較例1)、および、編目形成時の単位編目数(α)が「85.6(c/in)」、染色仕上げ後の単位編目数(β)が「210.0(c/in)」であって本発明で規定している関係を満たさない場合(比較例2)の各風合い測定結果は、下記表5、6に見るとおりであって、いずれも、密度のバラツキ(目標との差)から見た風合いのバラツキの大きいことが分かる。
20・・・第1弾性糸
30・・・第2弾性糸
Claims (1)
- ナイロン非弾性糸と2種類のポリウレタン弾性糸が用いられ弾性糸同士による編目形成がなされているとともに染色仕上げもなされている伸縮性経編地をラッシェル機を用いて製造する方法であって、
非弾性糸の太さが、長繊維糸では20〜75デニール、短繊維糸では35〜54デニールであり、第1の弾性糸の太さが40〜560デニール、第2の弾性糸の太さが20〜105デニールで、第1の弾性糸の太さが第2の弾性糸と同じかより太く、第1の弾性糸の給糸量が95mm/R(整経ストレッチ75%)を超え130mm/R(整経ストレッチ75%)以下であり、第2の弾性糸のウェール方向に移動する亘り角度が0〜25°であり、各糸の太さと単位編目当たり重量が下記(1)式〜(3)式の関係を満足するようにするとともに、
0.21A<=X<=0.29A …(1)
0.55B<=Y<=0.69B …(2)
4.5C+0.04A−35<=Z<=5.5C+0.05A−43 …(3)
ここで、A:第1の弾性糸の太さ(デニール)
B:第2の弾性糸の太さ(デニール)
C:非弾性糸の太さ(デニール)
X:第1の弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
Y:第2の弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
Z:非弾性糸の単位編目当たり重量(g/3636本/10R)
編目形成時の単位編目数(α)と染色仕上げ後の単位編目数目標値(β)との間に下記の式で表される関係が成り立っている、ことを特徴とする、伸縮性経編地の製造方法。
T−13.4≦β≦T+13.4
ただし、T=−0.0373×α2 +5.4316×α
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