JP5838858B2 - 耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル - Google Patents
耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル Download PDFInfo
- Publication number
- JP5838858B2 JP5838858B2 JP2012041668A JP2012041668A JP5838858B2 JP 5838858 B2 JP5838858 B2 JP 5838858B2 JP 2012041668 A JP2012041668 A JP 2012041668A JP 2012041668 A JP2012041668 A JP 2012041668A JP 5838858 B2 JP5838858 B2 JP 5838858B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- drill
- diamond
- value
- cemented carbide
- coated
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Description
また、例えば、上記特許文献1に示されるダイヤモンド被覆ドリルにおいては、逃げ面側のダイヤモンド被覆厚を厚くし、すくい面側の被覆厚を薄くしているため、エッジの鋭利さの確保という点での利点はあるものの、チゼルエッジ部の層厚が厚いために、その部分において溶着を発生し、穴精度確保が不十分であり、これが問題となっていた。
そこで、この発明は、エッジ部の鋭利さを保ち、溶着の発生を抑制し、穴精度確保や切れ刃の耐欠損性に優れたダイヤモンド被覆ドリルを提供することを目的とする。
それにより、チゼルエッジ部と切刃外周部とのダイヤモンド膜の膜厚差を大きくすることができ、さらに、成膜されるダイヤモンドの膜質差を大きくすることができる。
本発明者らは、上記の方法でダイヤモンドを成膜することによって、チゼルエッジ部ではダイヤモンドの膜厚を薄くするとともに、ダイヤモンドの結晶性を低下せしめることによって、被削材との溶着発生を抑制し得るとともに、チゼルエッジ部の鋭利さを保つことができるため、アルミ合金の切削においても食いつきよく加工することが可能であることを見出した。
一方、切刃外周部においては、ダイヤモンドの膜厚を厚くし、しかも、結晶性を高くすることができるから、耐摩耗性を向上し得ることを見出したのである。
つまり、チゼルエッジ部と切刃外周部のダイヤモンド膜の膜厚、結晶性を異ならしめることによって、穴位置精度を確保すると同時に、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆ドリルを得られることを見出したのである。
「(1) 炭化タングステンとコバルトを主成分とし、かつ、3〜15質量%のコバルトを含有する炭化タングステン基超硬合金をドリル基体とし、該ドリル基体の先端の外周部上に平均膜厚5〜30μmのダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルにおいて、
上記ドリルの切刃外周部の膜厚をh1とし、チゼルエッジ部の膜厚をh2とした時に、h1/h2の値が1.2以上2.0以下であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル。
(2) 上記ドリルの切刃外周部とチゼルエッジ部をラマン分光測定した場合、ダイヤモンド由来の1333cm−1を中心とするピークの半価幅を、それぞれw1、w2とした時に、w2の値が15cm-1〜25cm−1であり、かつw1/w2の値が0.5以上0.9以下であることを特徴とする前記(1)に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル。
(3) 上記ドリルの切刃外周部とチゼルエッジ部の圧縮残留応力の値を、それぞれσ1、σ2とした時に、σ2の値が1.8GPa以下であり、かつσ2/σ1の値が0.6以上0.9以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル。」
を特徴とするものである。
Co成分には、結合相を形成して基体の強度および靭性を向上させる作用があるが、WC基超硬合金中のCo含有量が3質量%未満では、特に靭性の向上が望めず、一方、Co含有量が15質量%を越えると、塑性変形が起り易くなって、偏摩耗の進行が促進されるようになることから、WC基超硬合金中のCo含有量は3〜15質量%と定める。
即ち、後記する成膜法によって、チゼルエッジ部ではダイヤモンドの膜厚を相対的に薄く成膜することによって、チゼルエッジ部の鋭利さを保つことができるため、アルミ合金切削時の食いつきを確保することができる。
ただ、h1/h2の値が1.2未満の場合には、アルミ合金切削時の食いつきの確保は可能となる場合はあるが、その反面、工具寿命延長効果が小さくなり、また、h1/h2の値が2.0を超えると、チゼルエッジ部付近の切れ刃の摩耗量が大きくなり早期に寿命に達することから、h1/h2の値は、1.2以上2.0以下と定めた。
切刃外周部、チゼルエッジ部におけるダイヤモンド膜厚の測定は、切れ刃部を切断してSEM観察を行い、対象部分の膜厚の3点測定を行い、その平均値をそれぞれの膜厚とする。
なお、本発明でいう「チゼルエッジ部」とは、「ドリルの中央先端部から100μmの範囲内」を指し、「切刃外周部」とは、「ドリルの外周部の肩部から100μmの範囲内」を指す。
これは、チゼルエッジ部のダイヤモンド膜の結晶性をある程度低下させておくこととと、切刃外周部の結晶性に比して相対的に低下させておくことにより、チゼルエッジ部における被削材との溶着発生を抑制するとともに、切刃外周部においては、耐摩耗性を確保するという理由による。
即ち、w2の値が15cm-1未満の場合には、被削材との溶着発生抑制効果が少なくなり、一方、25cm-1を超える場合には、耐摩耗性低下が顕著となるため、w2の値は15cm-1以上25cm-1以下であることが望ましい。また、w1/w2の値が0.5未満の場合には、チゼルエッジ部付近における耐摩耗性低下が顕著となり、一方、w1/w2の値が0.9を超える場合には、被削材との溶着発生抑制効果が少なくなるため、w1/w2の値は0.5以上0.9以下であることが望ましい。
このようなw2の値およびw1/w2の値は、ダイヤモンド膜の後記する成膜法によって、形成することができる。
これは、σ2の値が1.8GPaを超えると被削材の溶着等に起因して膜剥離などを発生しやすくなるためである。σ2の下限値は技術的な意味からは特に設定はしないが、上記のw2の値が25cm−1程度である場合、製法上、1.2〜1.4GPaあたりが下限値となる。また、σ2/σ1の値が0.6未満であるとチゼルエッジ部における摩耗が進行し易く、一方、この値が0.9を超えると、被削材の溶着等に起因するチッピングを発生しやすくなるからである。
なお、切刃外周部、チゼルエッジ部におけるダイヤモンド膜の圧縮残留応力は、Coを管球とするX線回折による2θ−sin2φ法によって求めることができる。
まず、WCとCoを主成分とし、Coを3〜15質量%含有する超硬合金焼結体からなるWC基超硬合金ドリル基体を作製した後、該超硬合金ドリル基体の表面近傍のCoを化学的なエッチング(硫酸+過酸化水素+水)によって除去し、その後、熱フィラメントCVD装置に装入し、ドリル基体のシャンク部を水冷治具で冷却支持し、フィラメントをドリル外周部の近傍にセットし、フィラメントの位置を成膜するダイヤモンドの膜厚に応じて調整しながらダイヤモンドを成膜することによって製造することができる。
なお、ドリル径によってフィラメントの位置を調節することも必要であり、例えば、ドリル径が6mmより細い場合には、フィラメント位置を下側に移動させ、また、ドリル径が10mmより太い場合には、フィラメント位置を上側に移動させて、所望の膜厚になるように調整することが必要である。
このようなダイヤモンド膜の成膜法により、ドリルの切刃外周部の膜厚とチゼルエッジ部の膜厚の比の値h1/h2が1.2以上2.0以下、また、ラマン分光測定における1333cm−1を中心とするピークの半価幅の比の値w1/w2が0.5以上0.9以下、さらに、圧縮残留応力の比の値σ2/σ1が0.6以上0.9以下である本発明のダイヤモンド被覆ドリルを製造することができる。
ついで、上記WC基超硬合金焼結体1〜5を、溝形成部の外径寸法が8mmとなるように研削加工することにより、WC基超硬合金製ドリル基体(以下、単に「ドリル基体」という)1〜5を製造した。
なお、比較例ドリル1〜10の製法においては、ドリル基体を冷却する機構がないこと、そのため、ドリルとフィラメント間の距離は基板温度を適正に保つために、10〜15mmの範囲としていること、の点で本発明の製法とは異なっている。
表2、3に、h1,h2,h1/h2の値を示す。
表2、3に、w1を切刃外周部,w2チゼルエッジ部,w1/w2の値を示す。
即ち、X線回折装置にて、40mA、200kVの電流と電圧にてCo管球を用いて、X線を発生させ、ダイヤモンドの(311)のピークに関し、2θ−sin2ψ法により、ψ角を0から39度まで変化させることで、測定を行った。
表2、3に、σ1,σ2,σ2/σ1の値を示す。
切削速度: 110 m/min,
送り: 0.12 mm/rev.,
穴深さ: 20 mm(貫通穴),
上記の切削試験において、正常摩耗の場合は切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が、0.3mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、チッピング、ドリル折損等が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表4にこれらの測定結果を示す。
つまり、h1/h2,w1/w2,σ2/σ1のいずれもが請求項1〜3記載の所定数値範囲内である本発明ドリル1,3,5,6,9については、摩耗形態は正常摩耗であって、しかも、穴あけ加工数も全て156穴以上であって、工具寿命が非常に長い。
また、w1/w2,σ2/σ1のいずれか一方あるいは両方が、請求項2,3記載の所定数値範囲外となったものは、チッピング発生によって工具寿命となるものの、穴あけ加工数は100個前後であって、耐摩耗性に優れることがわかる。
これに対して、比較例ドリル1〜10は、本発明ドリルに比して、穴あけ加工数が少ない(最大でも31個)ばかりか、溶着などが原因で切削の早期に切れ刃にチッピング等の異常損傷を発生し、工具寿命も非常に短いことが明らかである。
Claims (3)
- 炭化タングステンとコバルトを主成分とし、かつ、3〜15質量%のコバルトを含有する炭化タングステン基超硬合金をドリル基体とし、該ドリル基体の先端の外周部上に平均膜厚5〜30μmのダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルにおいて、
上記ドリルの切刃外周部の膜厚をh1とし、チゼルエッジ部の膜厚をh2とした時に、h1/h2の値が1.2以上2.0以下であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル。 - 上記ドリルの切刃外周部とチゼルエッジ部をラマン分光測定した場合、ダイヤモンド由来の1333cm−1を中心とするピークの半価幅を、それぞれw1、w2とした時に、w2の値が15cm−1以上25cm-1以下であり、かつw1/w2の値が0.5以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル。
- 上記ドリルの切刃外周部とチゼルエッジ部の圧縮残留応力の値を、それぞれσ1、σ2とした時に、σ2の値が1.8GPa以下であり、かつσ2/σ1の値が0.6以上0.9以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012041668A JP5838858B2 (ja) | 2012-02-28 | 2012-02-28 | 耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012041668A JP5838858B2 (ja) | 2012-02-28 | 2012-02-28 | 耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013176817A JP2013176817A (ja) | 2013-09-09 |
JP5838858B2 true JP5838858B2 (ja) | 2016-01-06 |
Family
ID=49269026
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012041668A Expired - Fee Related JP5838858B2 (ja) | 2012-02-28 | 2012-02-28 | 耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5838858B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20160042049A (ko) * | 2013-09-30 | 2016-04-18 | 쿄세라 코포레이션 | 절삭 공구 및 절삭 가공물의 제조 방법 |
CN109699176B (zh) * | 2017-08-22 | 2020-06-26 | 住友电工硬质合金株式会社 | 旋转切削工具及其制造方法 |
Family Cites Families (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2592761B2 (ja) * | 1993-04-28 | 1997-03-19 | 大阪ダイヤモンド工業株式会社 | 回転切削工具及びその製造方法 |
JP3477183B2 (ja) * | 2001-06-15 | 2003-12-10 | オーエスジー株式会社 | ダイヤモンド被覆切削工具 |
JP2003080413A (ja) * | 2001-09-10 | 2003-03-18 | Mitsubishi Materials Corp | 高速穴あけ加工で先端切刃面がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製ミニチュアドリル |
JP2004160581A (ja) * | 2002-11-12 | 2004-06-10 | Mitsubishi Materials Kobe Tools Corp | ダイヤモンドコーティング工具の製造方法およびダイヤモンドコーティング工具 |
US20080019787A1 (en) * | 2006-07-24 | 2008-01-24 | Karthikeyan Sampath | Drill for machining fiber reinforced composite material |
JP5124790B2 (ja) * | 2009-11-10 | 2013-01-23 | 住友電工ハードメタル株式会社 | ダイヤモンド被覆切削工具 |
GB2492583A (en) * | 2011-07-06 | 2013-01-09 | Sandvik Intellectual Property | Twist drill for composite materials |
-
2012
- 2012-02-28 JP JP2012041668A patent/JP5838858B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013176817A (ja) | 2013-09-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10556273B2 (en) | Surface-coated cutting tool having excellent chipping resistance and wear resistance | |
JP6548071B2 (ja) | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 | |
JP5838769B2 (ja) | 表面被覆切削工具 | |
JP2015231662A (ja) | 表面被覆切削工具 | |
JP2009220238A (ja) | 非晶質炭素被覆工具 | |
EP2772330A1 (en) | Diamond-coated tool | |
WO2015080237A1 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具及びその製造方法 | |
JP6399349B2 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 | |
JP5488873B2 (ja) | 耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具 | |
JP5838858B2 (ja) | 耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル | |
JP2017159409A (ja) | すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 | |
JP6195068B2 (ja) | 刃先強度を向上させたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 | |
JP5850396B2 (ja) | 靭性と耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 | |
JP5163879B2 (ja) | 耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具 | |
JP5196122B2 (ja) | 表面被覆切削工具 | |
JP5590326B2 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル | |
JP6102613B2 (ja) | 刃先強度を向上させたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 | |
JP6040698B2 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル | |
JP2017064840A (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 | |
EP3519609B1 (en) | Method of machining ti, ti-alloys and ni-based alloys | |
JP6330999B2 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 | |
JP2011031318A (ja) | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 | |
JP7313604B2 (ja) | ダイヤモンド被覆切削工具 | |
JP7216915B2 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製工具 | |
JP7216916B2 (ja) | ダイヤモンド被覆超硬合金製工具 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20140926 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20150709 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20150724 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20150917 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20151013 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20151026 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5838858 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |