JP5488873B2 - 耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具 - Google Patents

耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具 Download PDF

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この発明は、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体にダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具に関し、特に、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics。炭素繊維強化プラスチック)あるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削に際し、長期の使用に亘って、シャープな切刃が維持されるとともにバリ発生が少なく、すぐれた耐欠損性とすぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具に関するものである。
従来、炭化タングステン基(WC基)超硬合金または炭窒化チタン基(TiCN基)サーメットなどの工具基体に、ダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具が広く知られているが、単層膜のダイヤモンド皮膜を被覆した場合には、結晶性が高く高硬度であるという利点はあるものの、切削時に皮膜にクラックが入った際には、柱状晶の結晶粒間でクラックの伝播・進展を止めることが難しいため、耐欠損性に劣るという問題がある。
そこで、ダイヤモンド皮膜の耐欠損性を改善することを目的として、例えば、ダイヤモンド皮膜最表面の結晶粒を微細化し、ダイヤモンド皮膜自体にクラックが入らないようにしたダイヤモンド被覆工具(特許文献1)が知られており、また、ダイヤモンド皮膜を、ダイヤモンド結晶層とダイヤモンド状炭素層との交互積層構造として構成することにより、ダイヤモンド皮膜中のクラックの伝播・進展を防止するようにしたダイヤモンド被覆工具(特許文献2)も知られている。
さらに、ラマン分光分析によるダイヤモンドのピーク強度Iに対する非ダイヤモンド炭素のピーク強度Iの強度比I/Iを特定の値に規定したダイヤモンド結晶層とダイヤモンド状炭素層との交互積層構造によりダイヤモンド皮膜を構成した耐欠損性を改善したダイヤモンド被覆工具(特許文献3)も提案されている。
特開平9−71498号公報 特許第3260986号明細書 特開平6−297207号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴って、切削条件はますます高速化、高効率化している。上記の従来被覆工具は、これを通常条件での切削加工に用いた場合には特段の問題は生じないが、これを、一般の金属材料に比して、比強度、比剛性にすぐれるCFRPの高速切削に用いた場合には、CFRPは炭素繊維とエポキシ系樹脂の複合材であるため工具摩耗が激しいばかりか欠損が生じやすく、工具寿命が短命であるという問題点があった。
また、従来被覆工具を、軟質で溶着性の高いAl合金等の高速切削に用いた場合には、切削時の高熱発生により、溶着性の高い被削材(Al合金)の切粉が、工具切刃へ溶着することにより、シャープな切刃を維持することが困難であるばかりか、欠損が生じやすくなるという問題点があった。
この結果、CFRP、Al合金等の高速切削加工に用いた場合には、ダイヤモンド被覆工具の寿命は短いばかりか、さらに、被削材のバリ発生のために仕上げ面精度が粗くなり、寸法精度も劣るという問題点があった。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に難削材であるCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削加工で、ダイヤモンド皮膜が本来備える高硬度特性を十分に発揮させるとともに、同時に、耐欠損性を向上させ、シャープな切刃を維持しつつ、バリの発生を抑制し、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するダイヤモンド被覆工具を開発すべく鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
即ち、図1には、本発明のダイヤモンド被覆工具の側断面の概略図を示すが、図1において、工具基体1の表面に、例えば、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、アークプラズマCVD法等のダイヤモンド気相合成法によって、所定条件で所定膜厚の柱状晶組織からなる結晶粒を成長させつつ、該柱状結晶粒の成長途中段階にて成膜条件を変更し、その変更した成膜条件で成長途中の結晶粒内に微細な柱状晶ダイヤモンドが生成された領域(以下、微細領域という)を形成し、この微細領域を柱状結晶の成長方向に複数段数形成した場合には、ダイヤモンド皮膜は、本来の耐摩耗性を維持したままこれを低下せしめることなく、同時に、耐欠損性、クラック耐性を向上させることができ、その結果、このダイヤモンド被覆工具は、シャープな切刃を維持しつつ、バリの発生が少なく、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するようになることを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体表面に5〜30μmの膜厚のダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆工具において、
上記ダイヤモンド皮膜は、アスペクト比が2以上の柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒を含み、該ダイヤモンド結晶粒内には、0.05〜0.5μmの平均厚さの微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域がその膜厚方向に平均段数で1〜10段形成され、さらに、ラマン分光分析によるダイヤモンドピーク強度I1に対する非ダイヤモンド炭素ピーク強度I2の強度比が、上記柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒の上記微細領域では0.5<I1/I2<1であり、一方、上記微細領域以外の上記柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒ではI1/I2>1.5であることを特徴とするダイヤモンド被覆工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具の被覆層について、詳細に説明する。
本発明では、WC超硬合金あるいはTiCN基サーメットからなる工具基体の上に、まず、アスペクト比が2以上の柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒(好ましくは、平均長径3〜10μm、平均短径0.5〜4μm)を生成・成膜する。
このような柱状晶ダイヤモンド結晶粒の生成・成膜は、例えば、通常の熱フィラメント法による化学蒸着装置を用い、
フィラメント温度 2250〜2600℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基板温度 750〜1050℃、
反応圧力 2.5〜13.3kPa、
反応ガス CH:2.4〜4.7vol%,H:残り、
という条件の化学蒸着で成膜することができ、結晶性を調整するために2vol%以下の微量のO,Nを添加してもよい。このダイヤモンド皮膜は、通常、(110)面あるいは(111)面配向性を有している。
アスペクト比が2未満のダイヤモンド結晶粒で形成されたダイヤモンド皮膜は、ほぼ粒状ダイヤモンド結晶粒組織となるが、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性向上を図るためには、ダイヤモンド皮膜は柱状晶組織として構成することが望ましいという理由から、本発明では、柱状晶組織のダイヤモンド結晶粒のアスペクト比を2以上と定めた。そして、ダイヤモンド結晶粒の粗大化を抑えると同時に、良好な耐摩耗性を付与し、アスペクト比2以上の柱状晶組織を得るためには、ダイヤモンド結晶粒の平均長径は5〜10μm以下、また、平均短径は1〜3μm以下とすることが望ましい。
そして、上記柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒を成膜するプロセスの途中で、以下の方法によって、結晶粒の成長方向に、平均厚さ0.05〜0.5μmの微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域を複数段数形成する。
上記柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒を成長・成膜するプロセスと、上記微細領域の形成プロセスを、成膜過程で繰り返し行うことにより、柱状晶組織のダイヤモンド結晶粒一つ当たり、膜厚方向に平均段数で1〜10段の微細領域を形成する。
微細領域は、例えば、通常の熱フィラメント法による、
フィラメント温度 2150〜2500℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基板温度 750〜1050℃、
反応圧力 1.3〜2.0kPa、
反応ガス CH:2.4〜4.7vol%,H:残り、
という化学蒸着条件で成膜することができ、結晶性を調整するために2vol%以下の微量のO,Nを添加してもよい。
本発明では、上記微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域を、柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒の成長方向に、0.05〜0.5μmの平均厚さで所定段数(1〜10段)形成しているが、その厚さが0.05μm未満の場合または形成段数が少ない(例えば、1段未満)場合には、耐欠損性、クラック耐性の改善効果が少なく、一方、その厚さが0.5μmを超える場合または形成段数が多すぎる(例えば、11段以上)場合には、柱状晶ダイヤモンド結晶粒の配向性を乱すことになるばかりか、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性が低下傾向を示すようになることから、微細領域の平均厚さおよび微細領域の平均段数は、それぞれ、0.05〜0.5μm、1〜10段とする。
好ましくは、微細領域の平均厚さおよび微細領域の平均形成段数を、それぞれ、0.1〜0.3μm、2〜7段とする
また、本発明では、ダイヤモンド皮膜の膜厚を、5〜30μmとしているが、ダイヤモンド皮膜の膜厚が5μm未満では長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができないばかりか、厚膜化されていないために長寿命化を図ることもできず、一方、膜厚が30μmを超えると、ダイヤモンド皮膜の強度が低下するとともに、皮膜表面の平滑性も低下するため、切刃の欠損や切削時のバリが発生しやすくなることから、ダイヤモンド皮膜の膜厚を、5〜30μmと定めた。
この発明のダイヤモンド被覆工具は、そのダイヤモンド皮膜が、アスペクト比が2以上の柱状晶組織を有する結晶粒から構成され、また、該結晶粒の成長方向には、0.05〜0.5μmの平均厚さの微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域が平均段数で1〜10段形成されていることにより、ダイヤモンド皮膜が高硬度、クラック耐性を有し、その結果、厚膜化を行った場合でも、ダイヤモンド皮膜の剥離、欠落が生じることはなく、ダイヤモンド皮膜が本来有するすぐれた耐摩耗性を十分に発揮することができる。
したがって、この発明のダイヤモンド被覆工具を、CFRP、Al合金等の高速切削加工に用いた場合であっても、シャープな切刃を維持したまま、バリを発生することもなく、すぐれた耐欠損性および耐摩耗性を長期の使用に亘って発揮するものである。
本発明のダイヤモンド被覆工具の側断面の概略図を示す。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具を実施例により具体的に説明する。
ここでは、ダイヤモンド被覆工具を、エンドミルに適用した場合について述べるが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の切削工具に適用することが可能である。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が13mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
(a)ついで、これらの工具基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、酸溶液によるエッチングおよび/またはアルカリ溶液によるエッチング処理を行い、さらに、ダイヤモンド粉末スラリー液を用いて超音波洗浄器で超音波処理を行なった後、
(b)まず、
フィラメント温度 2400℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 800℃、
反応圧力 4.0kPa、
反応ガス CH:3.4vol%,H:残り、
という条件で蒸着し、工具基体の表面に、柱状晶のダイヤモンド結晶を生成・成長させ、
(c)ついで、成膜条件を変更し、
フィラメント温度 2200℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 780℃、
反応圧力 1.5kPa、
反応ガス CH:3.8vol%,H:残り、
という条件で、微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域を形成し、
(d)上記(b)、(c)の成膜工程を繰り返し行うことにより、
(e)表2に示されるアスペクト比、平均結晶粒径を有する柱状晶のダイヤモンド結晶粒と、該結晶粒に形成された同じく表2に示される平均厚さと平均段数の微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域を備える、同じく表2に示される目標膜厚のダイヤモンド皮膜を被覆することにより、本発明のダイヤモンド被覆エンドミル(以下、本発明エンドミルという)1〜8をそれぞれ製造した。
ここで、柱状晶のダイヤモンド結晶粒に、前記(c)の条件で微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域が形成されるのは、この領域の形成に際し、低圧(1.5kPa)かつ高CH濃度(CH:3.8vol%)の雰囲気とすることで、フィラメント近傍で生成した活性種の平均自由工程が(b)の条件に比して伸び、柱状晶の成長条件よりも多量の炭素源が成膜面に供給されて柱状晶表面に微細なダイヤモンドの核が発生する。そして、この微細柱状晶ダイヤモンドの微細領域形成条件(前記(c))での保持時間を、柱状晶形成条件(前記(b))での保持時間に比して相対的に短時間とし、微細領域の形成と柱状晶の形成とを繰り返し行うことにより、結晶質の柱状晶内に微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域を配したダイヤモンド皮膜を形成することができる。
但し、CH濃度が適正範囲(2.4〜4.7vol%)を外れると、この領域に生成するダイヤモンドは柱状結晶ではなくなるため期待する性能の向上が得られない。
比較の目的で、上記(a)の超音波処理を行なった上記工具基体(エンドミル)C−1〜C−8に、前記特許文献3に記載のものと同一層構造のダイヤモンド皮膜が形成されるように、
(b’)まず、
フィラメント温度 2200℃、
フィラメント−基板間隔 6mm、
基板温度 800℃、
反応圧力 13.3kPa、
反応ガス(エタノール濃度) 2.0vol%、
混合ガス流量 100sccm、
という条件で蒸着し、工具基体の表面に、ダイヤモンド結晶を生成・成長させ、
(c’)ついで、成膜条件を変更し、
フィラメント温度 1970℃、
フィラメント−基板間隔 6mm、
基板温度 800℃、
反応圧力 13.3kPa、
反応ガス(エタノール濃度) 3.5vol%、
混合ガス流量 100sccm、
という条件で、ダイヤモンド状炭素を形成し、
(d’)上記(b’)、(c’)の成膜工程を繰り返し行うことにより、
表3に示されるダイヤモンド結晶層とダイヤモンド状炭素層との交互積層からなるダイヤモンド皮膜を被覆することにより、比較例のダイヤモンド被覆エンドミル(以下、比較例エンドミルという)1〜8をそれぞれ製造した。
図1に、上記(a)〜(e)により製造した本発明エンドミルの一例として、本発明エンドミル3に被覆形成されたダイヤモンド皮膜の模式図を示す。
図1(a)は、ダイヤモンド皮膜の膜厚方向の断面図、図1(b)は、ダイヤモンド皮膜内の柱状晶ダイヤモンド結晶粒の部分拡大図を示し、また、図1(c)は、柱状晶ダイヤモンド結晶粒に形成された微細領域の部分拡大図を示すが、走査型電子顕微鏡の反射電子検出器で得た反射像から、微細領域には微細柱状晶ダイヤモンドが存在することを確認した(図1(c)参照)。
また、同エンドミルの膜断面方向からラマン分光分析法により、柱状晶ダイヤモンド結晶粒とその結晶粒内に存在する微細柱状晶ダイヤモンドについて測定したところ、ラマン分光分析において、1333cm−1に現れるピーク(ダイヤモンドピーク強度I1)はダイヤモンド(sp3成分)を示し、1400〜1600cm−1に現れるブロードなピーク(非ダイヤモンド炭素ピーク強度I2)は非ダイヤモンド炭素(sp2成分)を示すが、ダイヤモンドピーク強度I1に対する非ダイヤモンド炭素ピーク強度I2の強度比が、柱状晶ダイヤモンド結晶粒の微細領域(微細柱状晶ダイヤモンドの領域)以外の領域ではI1/I2>1.5,一方、柱状晶ダイヤモンド結晶粒の微細領域(微細柱状晶ダイヤモンドの領域)では、0.5<I1/I2<1であることが確認された。
表2に、本発明エンドミル1〜8のダイヤモンド皮膜について、皮膜断面を走査型電子顕微鏡で観察し、膜断面内、例えば、任意の30μm□視野内に含まれる結晶質の柱状粒子を選び、柱状晶ダイヤモンド結晶粒のアスペクト比、平均粒径(長径、短径)を決定した。さらに、表3には、比較エンドミル1〜8のダイヤモンド皮膜について、同様に算出したダイヤモンド結晶粒のアスペクト比、平均粒径(長径、短径)を示す。
つぎに、上記本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8について、
《切削条件A》
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 200 m/min.、
切断加工:(5mm)、
テーブル送り: 1000 mm/min、
エアブロー、
の条件での上記CFRPの乾式高速切断加工試験、
《切削条件B》
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・ADC12の板材、
切削速度: 400 m/min.、
切り込み:径方向(ae)2.5mm,軸方向(ap)8mm、
テーブル送り: 1000 mm/min、
エアーブロー、
の条件での上記Al合金の乾式高速側面切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの切削加工試験でも切刃部に欠損が発生するまでの切削長、あるいは、被削材にバリが発生するまでの切削長を測定した。
これらの測定結果を表4にそれぞれ示した。
Figure 0005488873
Figure 0005488873
Figure 0005488873
Figure 0005488873
表2〜4に示される結果から、本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明エンドミル1〜8は、柱状晶のダイヤモンド結晶粒がすぐれた高硬度を備えるとともに、該柱状晶ダイヤモンド結晶粒の成長方向複数段に形成された微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域が優れたクラック耐性を示すことから、ダイヤモンド皮膜全体としての耐摩耗性、耐欠損性が向上し、しかも、厚膜化が可能であり、その結果、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削に際し、長期の使用に亘って、シャープな切刃が維持されるとともにバリ発生が少なく、すぐれた切削性能を発揮する。
これに対して、ダイヤモンド結晶層とダイヤモンド状炭素層との交互積層からなる比較例エンドミル1〜8においては、切刃の劣化、バリの発生等が生じるとともに、欠損の発生、耐摩耗性の劣化により工具寿命が短命なものであった。
上述のように、この発明のダイヤモンド被覆工具は、通常条件での切削加工は勿論のこと、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削においても、切刃の劣化、バリの発生を防止し、長期の使用に亘って、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体表面に5〜30μmの膜厚のダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆工具において、
    上記ダイヤモンド皮膜は、アスペクト比が2以上の柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒を含み、該ダイヤモンド結晶粒内には、0.05〜0.5μmの平均厚さの微細柱状晶ダイヤモンドからなる微細領域がその膜厚方向に平均段数で1〜10段形成され、さらに、ラマン分光分析によるダイヤモンドピーク強度I1に対する非ダイヤモンド炭素ピーク強度I2の強度比が、上記柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒の上記微細領域では0.5<I1/I2<1であり、一方、上記微細領域以外の上記柱状晶組織を有するダイヤモンド結晶粒ではI1/I2>1.5であることを特徴とするダイヤモンド被覆工具。
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