JP2011131347A - ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】工具基体表面に対し、すぐれた密着性を有し、CFRP、Al合金等の難削材の高速切削加工で、すぐれた耐剥離性、耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具を提供する。
【解決手段】超硬合金からなる工具基体表面に、WC層からなる下地層とダイヤモンド層からなる上部層とを蒸着形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、下地層、上部層の各結晶粒の(111)面の法線が基体表面の法線に対してなす傾斜角を測定し、傾斜角度数分布グラフを作成した場合、WC層については、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在し、かつ、該角度範囲内に存在する度数の合計が、度数全体の70%以上の割合を占め、また、ダイヤモンド層については、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在し、かつ、該角度範囲内に存在する度数の合計が、度数全体の80%以上の割合を占める。
【選択図】 図1

Description

この発明は、炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体表面に、ダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具に関し、特に、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics.炭素繊維強化プラスチック)あるいは溶着性の高いAl合金等の難削材の切削に際し、ダイヤモンド皮膜の密着性に優れ、すぐれた耐摩耗性を長期の使用に亘って発揮するダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(以下、ダイヤモンド被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン基(WC基)超硬合金などの工具基体に、ダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具が知られており、例えば、特許文献1に示されるように、工具基体表面に、金属タングステンを被覆した後、これを炭化させた炭化タングステン(以下、従来WCで示す)からなる下地層を形成し、この下地層上に気相合成法でダイヤモンド皮膜を形成したダイヤモンド被覆工具(以下、従来被覆工具1という)が知られており、この従来被覆工具1では、工具基体に対するダイヤモンド皮膜の密着性が向上するとともに、Al合金の旋削加工ですぐれた切削性能を発揮することが知られている。
また、特許文献2に示されるように、結晶面が(111)を主体とするダイヤモンド皮膜は耐摩耗性に優れるが、その反面、工具基体との密着性に劣ることから、これを改善するため、工具基体と、結晶面が(111)を主体とするダイヤモンド皮膜との間に、結晶面が(100)あるいは(110)を主体とするダイヤモンド皮膜を介在形成したダイヤモンド被覆工具(以下、従来被覆工具2という)が知られており、この従来被覆工具2では、工具基体に対するダイヤモンド皮膜の密着性が向上するとともに、Al合金の切削加工ですぐれた耐剥離性、耐摩耗性を発揮することが知られている。
特開平6−57428号公報 特開平5−57508号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴って、切削条件はますます高速化している。上記の従来被覆工具1,2では、これを通常条件での切削加工に用いた場合には特段の問題は生じないが、例えばこれを、一般の金属材料に比して、比強度、比剛性が高いCFRPの高速切削あるいは軟質で溶着性の高いAl合金等の高速切削に用いた場合には、ダイヤモンド皮膜の工具基体への密着性が十分であるとは言えず、また、CFRPは炭素繊維とエポキシ系樹脂の複合材であるため工具摩耗が激しいばかりか欠損が生じやすく、さらに、Al合金は切削時の高熱発生により、溶着性の高い切粉の切刃への溶着により、シャープな切刃を維持することが困難となるばかりか、欠損が生じやすくなるという問題点があった。
したがって、CFRP、Al合金等の高速切削加工にダイヤモンド被覆工具を用いた場合、ダイヤモンド皮膜の密着性が十分でないためチッピング、欠損、剥離等が発生しやすく、工具寿命が短命化するという問題点があった。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、難削材であるCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削加工において、特に、ダイヤモンド皮膜の密着性を改善し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具を開発すべく鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
上記従来被覆工具1は、金属タングステンを被覆した後、これを炭化させた従来WC層からなる下地層を、工具基体とダイヤモンド層間に介在させることによって、ダイヤモンド皮膜の密着性の改善を図っていたが、このダイヤモンド層として、上記従来被覆工具2で用いられている結晶面が(111)を主体とするダイヤモンド層を蒸着形成すると、耐摩耗性の改善がみられる。
しかし、これをCFRP、Al合金等の高速切削に用いたような場合には、ダイヤモンド皮膜の密着性が依然として十分でないため、ダイヤモンド皮膜の剥離が生じるが、これは、WC層からなる下地層とダイヤモンド皮膜との密着性が十分でないことに原因があることを突き止めた。
そこで、WC層からなる下地層とダイヤモンド皮膜との密着性改善について、さらに研究を進めたところ、下地層として、(111)面の配向性が高いWC層(以下、改質WC層という)を形成し、この上に、(111)面の配向性が高いダイヤモンド層を上部層として蒸着形成すると、上記改質WC層表面でのダイヤモンドの核生成が増加し、下地層直上のダイヤモンド膜が微細結晶化する。
その結果、切削加工時に上部層(ダイヤモンド層)作用する外部応力が均一化し、局部的な応力集中の発生を抑制できることから、工具基体に対する上部層(ダイヤモンド層)の密着性が一段と向上する。
したがって、上記下地層((111)面の配向性が高い改質WC層)および上記上部層((111)面の配向性が高いダイヤモンド層)を蒸着形成したダイヤモンド被覆工具は、一段と優れた密着性を備えるようになるため、CFRP、Al合金等の高速切削に用いた場合でも、ダイヤモンド層の剥離を生じることなく、長期の使用に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、炭化タングステン層からなる下地層とダイヤモンド層からなる上部層とを蒸着形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
(a)下地層は、0.2〜2μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在するWC結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記WC結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の70%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す炭化タングステン層、
(b)上部層は、2.5〜30μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在するダイヤモンド結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記ダイヤモンド結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すダイヤモンド層、
からなることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具の被覆層について、詳細に説明する。
下地層:
本発明のダイヤモンド被覆工具における改質WC層からなる下地層は、WC基超硬合金からなる工具基体表面上に、通常のPVD装置(物理蒸着装置)にて、例えば、
バイアス電圧:200〜500V
雰囲気ガス:Ar
雰囲気ガス流量:300〜600sccm
の条件のWCスパッタリングで蒸着することにより、
(111)面の配向性が高い改質WC層を形成することができる。
そして、上記の(111)面の配向性が高い改質WC層は、工具基体に対して優れた密着性を有するものであった。
ただ、上記改質WC層の層厚は、その平均層厚が0.2μm未満では、ダイヤモンド層(上部層)の成膜に際し、ダイヤモンドの核生成を増加させ、改質WC層直上のダイヤモンド膜を微細結晶化する作用を十分に発揮することができず、一方、前記作用は2μmまでの平均層厚で十分であることから、その平均層厚を0.2〜2μmと定めた。
上記PVDにより成膜した改質WC層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成したところ、上記WC層では、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の70%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示した。
比較のために、従来被覆工具1におけるWC層(即ち、金属タングステンを被覆した後、これを炭化させた従来WC層。)について、上記と同様にして傾斜角度数分布グラフを作成したところ、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークは存在せず、また、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計は、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の30%未満という小さな割合を占めるに過ぎなかった。
上部層:
本発明のダイヤモンド被覆工具における上部層のダイヤモンドは、上記改質WC層上に、通常の熱フィラメント法により、例えば、
成膜圧力:2×10−2〜9×10−2Pa、
流量:2000〜4000mln、
CH流量:20〜50mln、
フィラメント電流値:150〜200A、
成膜温度:600〜900℃、
という条件で成膜することができる。
上記で得られたダイヤモンド層は、改質WC層直上に多数のダイヤモンド核が生成し、これらが成長することにより、改質WC層上には、微細結晶化したダイヤモンド膜が形成される。
そして、この微細結晶化したダイヤモンド層は、その層厚が2.5μm未満では長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができないばかりか、厚膜化されていないために長寿命化を図ることもできず、一方、その層厚が30μmを超えると、ダイヤモンド皮膜の強度が低下するとともに、皮膜表面の平滑性も低下するため、切刃のチッピング、欠損等が発生しやすくなることから、ダイヤモンド層の層厚は、2.5〜30μmと定めた。
上部層を構成する上記ダイヤモンド層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成したところ、上記ダイヤモンド層では、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示したことから、このダイヤモンド層は(111)面の配向性が高いことがわかる。
この発明のダイヤモンド被覆工具は、WC基超硬合金からなる工具基体表面に、上記改質WC層(下地層)を介して(111)面配向性の高いダイヤモンド層を蒸着形成していることから、工具基体に対するダイヤモンド層の密着性が一段と優れ、皮膜の剥離チッピング、欠損等が生じることはない。
したがって、上記本発明のダイヤモンド被覆工具は、CFRP、Al合金等の難削材の高速切削加工に用いた場合でも、すぐれた耐剥離性を示し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
本発明エンドミル1の改質WC層のWC結晶粒の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示す。 比較エンドミル1の従来WC層のWC結晶粒の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示す。 本発明エンドミル1のダイヤモンド層のダイヤモンド結晶粒の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示す。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が13mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)A−1〜A−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(エンドミル)A−1〜A−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、酸溶液によるエッチングおよび/またはアルカリ溶液によるエッチング処理を行い、さらに、ダイヤモンド粉末スラリー液を用いて超音波洗浄器で超音波処理を行なった。
その後、工具基体(エンドミル)A−1〜A−8の表面には、
バイアス電圧:300V、
雰囲気ガス:Ar、
Arガス流量:400sccm、
の条件下のWCスパッタリング法により、表2に示される目標層厚になるように、改質WC層を物理蒸着で形成した後、
成膜圧力:5×10−2Pa、
流量:3000mln、
CH流量:40mln、
フィラメント電流値:185A、
成膜温度:700℃、
の条件下で、同じく表2に示される目標層厚になるようにダイヤモンド層を形成して、本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、本発明エンドミルという)1〜8をそれぞれ製造した。
比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)A−1〜A−8に、特許文献1(特開平6−57428号公報)に示される成膜法で下地層としての従来WC層を形成し、本発明エンドミル1〜8と同じ条件でダイヤモンド層を形成することにより、表3に示される比較ダイヤモンド被覆工具としての比較ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、比較エンドミルという)1〜8をそれぞれ製造した。
上記比較エンドミル1〜8における従来WC層の成膜法は、以下の通り。
(イ)工具基体(エンドミル)A−1〜A−8の表面に、直接、1〜2μmの厚さの金属Wをアークイオンプレーティング(AIP)で形成し、
(ロ)ダイヤモンド粉末スラリー液を用いて超音波洗浄器で超音波処理を行なった後、
(ハ)マイクロ波プラズマCVD法により、ガス雰囲気CH2vol%、H残分中で、室温から800℃まで40分かけて昇温することで、金属Wを炭化して、従来WC層を形成した。
つぎに、上記本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8の改質WC層、従来WC層、ダイヤモンド層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した。
図1には、一例として、本発明エンドミル1の改質WC層のWC結晶粒の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、本発明エンドミル1〜8の改質WC層の(111)面の傾斜角度数分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示し、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の70%の割合を占めた。
図2には、一例として、比較エンドミル1の従来WC層のWC結晶粒の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、比較エンドミル1〜8の従来WC層の(111)面の傾斜角度数分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示しし、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在せず、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の70%未満である5〜20%の割合を占めた。
図3に、一例として、本発明エンドミル のダイヤモンド層のダイヤモンド結晶粒の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、本発明エンドミル1〜8および比較エンドミル1〜8のいずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示し、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%の割合を占めた。
表2、表3に、本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8の改質WC層、従来WC層、ダイヤモンド層についてについて測定された最高ピークが存在する傾斜角区分、0〜10度の範囲内に存在する度数割合を示す。
ついで、上記本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8のダイヤモンド層については、ダイヤモンド結晶粒の平均粒子サイズ(μm)を測定した。
表2、表3にその値を示した。
なお、本発明でいう上記「平均粒子サイズ」とは、ダイヤモンド層断面について透過型電子顕微鏡を用い倍率2万〜20万倍の暗視野法による観察、写真撮影を行い、測定領域内にランダムに6本の線を引き、線と交わった結晶粒界の数(n)を数え、上記ランダムに引いた線の全長(L)を上記結晶粒界の数(n)で除した値(L/n)をである。
表2、表3から分かるように、本発明エンドミル1〜8のダイヤモンド層の平均粒子サイズは、0.5〜1.5μmと微細であったが、比較エンドミル1〜8のダイヤモンド層の平均粒子サイズは、2.5〜3.5μmと相対的に粗粒が形成されていた。
つぎに、上記本発明エンドミル1〜4および上記比較エンドミル1〜4について、
(a)切削条件A
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 250 m/min.、
切断加工:(5 mm)、
テーブル送り: 1650 mm/分、
エアーブロー、
の条件での上記CFRPの乾式高速切断加工試験を行った。
また、上記本発明エンドミル5〜8および上記比較エンドミル5〜8について、
(b)切削条件B
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・ADC12の板材、
切削速度: 460 m/min.、
溝深さ(切り込み):径方向(ae)2.0mm,軸方向(ap)8mm、
テーブル送り: 1530 mm/分、
エアーブロー、
の条件での上記Al合金の乾式高速側面切削加工試験を行った。
それぞれの試験で切削長(m)を測定した。
なお、比較エンドミル1〜8については、剥離、チッピング、欠損の発生、あるいは、バリ発生等を原因とした寿命に至るまで切削長(m)を測定した。
これらの測定結果を表2、表3にそれぞれ示した。
Figure 2011131347
Figure 2011131347
Figure 2011131347
上記の実施例1で製造した直径が13mmの丸棒焼結体を用い、この丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度のWC基超硬合金製の工具基体(ドリル)B−1〜B−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(ドリル)B−1〜B−8の切刃に、ホーニングを施し、上記実施例1と同様のコーティング前処理を施した後、上記実施例1と同一の条件で、工具基体(ドリル)B−1〜B−8の表面に、表4に示される改質WC層(下地層、)とダイヤモンド層を形成した本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆ドリル(以下、本発明ドリルという)1〜8をそれぞれ製造した。
また、上記工具基体(ドリル)B−1〜B−8の切刃に、ホーニングを施し、上記実施例1と同様のコーティング前処理を施した後、上記実施例1の比較エンドミル1〜8と同一の条件で、工具基体(ドリル)B−1〜B−8の表面に、表5に示される従来WC層(下地層、)とダイヤモンド層を形成した比較ダイヤモンド被覆工具としての比較ダイヤモンド被覆ドリル(以下、比較ドリルという)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明ドリル1〜4および比較ドリル1〜4について、
(c)切削条件C
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:8mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 180 m/min.、
送り: 0.09 mm/rev、
貫通穴:(8 mm)、
エアーブロー、
の条件での上記CFRPの乾式高速穴あけ切削加工試験を行った。
つぎに、上記本発明ドリル5〜8および比較ドリル5〜8について、
(d)切削条件D
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:15mmの、JIS・ADC12の板材
切削速度: 230 m/min.、
送り: 0.1 mm/rev、
貫通穴:(15 mm)、
エアーブロー、
の条件での上記Al合金の乾式高速穴あけ切削加工試験を行った。
それぞれの試験で穴あけ加工数を測定した。
なお、比較エンドミル1〜8については、剥離、チッピング、欠損の発生、あるいは、バリ発生等を原因とした寿命に至るまで穴あけ加工数を測定した。
この測定結果を表4、表5にそれぞれ示した。
Figure 2011131347
Figure 2011131347
表2〜5に示される結果から、本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明エンドミル1〜8、本発明ドリル1〜8は、工具基体表面に(111)面配向性の高い改質WC層からなる下地層が形成され、上部層として(111)面配向性の高いダイヤモンド層が蒸着形成されていることにより、ダイヤモンド層の工具基体に対する密着性が一段と向上することにより、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の難削材の高速切削に際し、すぐれた耐剥離性、耐チッピング性、耐欠損性を備え、また、バリ等の発生も防止され、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、従来WC層からなる下地層を有する比較エンドミル1〜8、比較ドリル1〜8においては、工具基体に対するダイヤモンド層の密着性が十分でないため、切刃部に剥離、チッピング、欠損等が発生し、さらに、バリの発生等により、耐摩耗性も劣り工具寿命が短命であった。
上述のように、この発明のダイヤモンド被覆工具は、通常条件での切削加工は勿論のこと、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の難削材の高速切削においても、長期の使用に亘って、すぐれた耐剥離性、耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、炭化タングステン層からなる下地層とダイヤモンド層からなる上部層とを蒸着形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
    (a)下地層は、0.2〜2μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在するWC結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記WC結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の70%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す炭化タングステン層、
    (b)上部層は、2.5〜30μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在するダイヤモンド結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記ダイヤモンド結晶粒の結晶面である(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すダイヤモンド層、
    からなることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015048296A (ja) * 2013-09-04 2015-03-16 株式会社福田結晶技術研究所 単結晶の育成装置及び育成方法
CN105764637A (zh) * 2013-11-29 2016-07-13 三菱综合材料株式会社 金刚石包覆硬质合金制切削工具及其制造方法
CN111300537A (zh) * 2019-12-30 2020-06-19 北京航星机器制造有限公司 一种无机酚醛气凝胶热防护层的加工方法

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