JP5088469B2 - 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法 - Google Patents

重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5088469B2
JP5088469B2 JP2007155122A JP2007155122A JP5088469B2 JP 5088469 B2 JP5088469 B2 JP 5088469B2 JP 2007155122 A JP2007155122 A JP 2007155122A JP 2007155122 A JP2007155122 A JP 2007155122A JP 5088469 B2 JP5088469 B2 JP 5088469B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
crystal
cutting
constituent
tool
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007155122A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008307615A (ja
Inventor
誠 五十嵐
秀充 高岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2007155122A priority Critical patent/JP5088469B2/ja
Publication of JP2008307615A publication Critical patent/JP2008307615A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5088469B2 publication Critical patent/JP5088469B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

この発明は、特に、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる鋼や鋳鉄の重切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)とその製造方法に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメット、または立方晶窒化ほう素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結材料で構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
組成式:(Ti1−XAl)N(ただし、原子比で、Xは0.4〜0.6を示す)、
を満足するTiとAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られており、かつ前記被覆工具の硬質被覆層である(Ti,Al)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度を具備するようになることから、これを各種の一般鋼や普通鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
特許第2644710号明細書 特開平9−291353号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、特にこれを切削条件の厳しい重切削加工に用いた場合は、硬質被覆層を構成する(Ti,Al)N層の高温強度が不十分なため、刃先の境界部分に異常損傷(以下、境界異常損傷という)を生じ、欠損を発生しやすいため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記被覆工具の耐欠損性の向上を図るべく、これの硬質被覆層である(Ti,Al)N層、すなわち図2に模式図で示される通り、格子点にTi、Al、および窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有する(Ti,Al)N層に着目し、鋭意研究を行った結果、
(a)従来被覆工具の硬質被覆層を構成する従来(Ti,Al)N層は、例えば、図1に示される通常の物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に工具基体を装入し、ヒータで装置内を例えば300〜500℃に加熱した状態で、所定組成のTi−Al合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に例えば60〜100Aのアーク放電電流を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば1〜6Paの反応雰囲気とし、一方工具基体には例えばバイアス電源から−50〜−100Vの直流バイアス電圧を印加するという条件下で成膜される(以下、通常成膜条件という)が、
その蒸着条件を変更し、例えば、ヒータで装置内を850℃に加熱して成膜温度を高くし、さらに、工具基体にバイアス電源からバイポーラパルスバイアスを印加してアークイオンプレーティングを行う(以下、改質成膜条件という)と、この条件で蒸着形成された(Ti,Al)N層(以下、改質(Ti,Al)N層という)は、通常成膜条件で形成された(Ti,Al)N層に比べ、結晶粒の粒界強度が強化され、その結果、硬質被覆層の高温強度が一段と向上するため、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる重切削加工であっても、前記硬質被覆層はすぐれた耐欠損性を発揮し、長期にわたってすぐれた耐摩耗性を示すこと。
(b)上記の従来被覆工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Al)N層(以下、従来(Ti,Al)N層という)と上記(a)の改質(Ti,Al)N層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成すると、例えば、図3に示されるように、30〜40度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜40度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すこと。
(c)また、上記従来(Ti,Al)N層と上記改質(Ti,Al)N層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、上記の通り格子点にTi、Al、窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表し、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した場合、いずれのTiAlN層もΣ3に最高ピークが存在するが、前記従来(Ti,Al)N層は、図6に例示される通り、Σ3の分布割合が30%以下の相対的に低い構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、前記改質(Ti,Al)N層は、図5に例示される通り、Σ3の分布割合が50%以上のきわめて高い構成原子共有格子点分布グラフを示すこと。
(d)上記の改質(Ti,Al)N層は、従来(Ti,Al)N層自体が具備する高温硬さと高温強度に加えて、上記従来(Ti,Al)N層に比して一段と高い高温強度を有するので、これを硬質被覆層として蒸着形成してなる被覆工具は、切刃に対して特に大きな機械的負荷がかかる重切削加工に用いた場合にも、前記従来(Ti,Al)N層を蒸着形成してなる被覆工具に比して、硬質被覆層が一段とすぐれた耐欠損性を発揮するようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) WC基超硬合金、TiCN基サーメット、またはcBN基超高圧焼結材料で構成された工具基体の表面に、1〜10μmの平均層厚を有する(Ti,Al)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具(被覆工具)において、
前記(Ti,Al)N層は、
組成式:(Ti1−XAl)Nで表したときに、
0.4≦X≦0.6(ただし、Xは原子比を示す)を満足し、かつ、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、30〜40度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜40度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、
同じく、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にTi、Al、窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が50%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示す改質(Ti,Al)N層、
であることを特徴とする表面被覆切削工具(被覆工具)。
(2) アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上に工具基体を配設し、カソード電極としてTi−Al合金を配置し、
前記装置内の回転テーブル上に配設された工具基体をArガス雰囲気中でArイオンによってボンバード洗浄した後、
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して1〜6Paの反応雰囲気とすると共に、装置内を加熱し、工具基体温度を750〜850℃に保持した状態で、回転テーブル上の工具基体に、印加電圧0〜−100(v)×印加時間2000〜20000(ns)の負バイアスおよび印加電圧+32〜+42(v)×印加時間100〜5000(ns)の正バイアスからなるバイポーラパルスバイアスを印加し、かつ前記Ti−Al合金からなるカソード電極とアノード電極との間に60〜200Aの電流を流してアーク放電を発生させて、工具基体表面に、組成式:(Ti1−XAl)Nで表したときに、0.4≦X≦0.6(ただし、Xは原子比を示す)を満足する改質(Ti,Al)N層を蒸着形成する、
ことを特徴とする前記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)の製造方法。」
に特徴を有するものである。
まず、この発明の改質(Ti,Al)N層について、詳細に説明する。
(a)組成式(Ti1−XAl)N
組成式(Ti1−XAl)Nで表される成分組成の硬質被覆層におけるTi成分は高温強度の維持、Al成分は高温硬さと耐熱性の向上に寄与することから、硬質被覆層は、所定の高温強度、高温硬さおよび耐熱性を具備する層であるが、Alの含有割合Xが60原子%を超えると、硬質被覆層の高温硬さと耐熱性は向上するものの、Ti含有割合の相対的な減少によって、高温強度が低下し欠損を発生しやすくなり、一方、Alの含有割合Xが40原子%未満になると、高温硬さと耐熱性が低下し、その結果、耐摩耗性の低下がみられるようになることから、Alの含有割合Xの値を0.40〜0.60と定めた。
(b)結晶面の配向割合
上記の改質(Ti,Al)N層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成したところ、図3に示すように、30〜40度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在し、しかも、30〜40度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すことから、改質(Ti,Al)N層は、表面研磨面の法線方向に対して{112}面が強配向していることがわかり、このような結晶配向性によって、通常成膜条件で形成した従来(Ti,Al)N層に比して、結晶粒の粒界強度が一段と向上し、その結果、硬質被覆層として改質(Ti,Al)N層を備えた被覆工具は、重切削加工条件下でも耐欠損性が一段と向上する。
(c)Σ3の分布割合
さらに、上記の改質(Ti,Al)N層について、同じく、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、上記の通り格子点にTi、Al、窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表し、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成したところ、前記改質(Ti,Al)N層は、図5に例示される通り、Σ3に最高ピークが存在するとともに、Σ3の分布割合が50%以上のきわめて高い構成原子共有格子点分布グラフを示すことから、この点からも、改質(Ti,Al)N層は、結晶粒の粒界強度が一段と向上し、その結果、耐欠損性が一段と向上していることがわかる。
なお、図6に例示される通り、従来(Ti,Al)N層もΣ3に最高ピークが存在するものの、Σ3の分布割合は30%以下に過ぎず、改質(Ti,Al)N層に比べ、相対的に低い構成原子共有格子点分布グラフを示している。
以上のとおり、改質(Ti,Al)N層は、{112}面の配向性が高く、また、Σ3の分布割合も高いため、従来(Ti,Al)N層のもつ高温硬さと高温強度と耐熱性に加えて、さらに一段とすぐれた高温強度を有するようになる。
(d)平均層厚
改質(Ti,Al)N層の平均層厚が1μm未満では、自身のもつ耐熱性、高温硬さおよび高温強度をに長期に亘って維持することができず、工具寿命短命の原因となり、一方その平均層厚が10μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜10μmと定めた。
次に、この発明の改質(Ti,Al)N層の成膜条件について、詳細に説明する。
硬質被覆層として、アークイオンプレーティングで蒸着形成した改質(Ti,Al)N層を備えた被覆工具を製造するにあたり、
アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上に工具基体を配設し、カソード電極としてTi−Al合金を配置し、
前記装置内の回転テーブル上に配設された工具基体をArガス雰囲気中でArイオンによってボンバード洗浄した後、
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して1〜6Paの反応雰囲気とすると共に、装置内を加熱し、工具基体温度を750〜850℃に保持した状態で、回転テーブル上の工具基体に、印加電圧0〜−100(v)×印加時間2000〜20000(ns)の負バイアスおよび印加電圧+32〜+42(v)×印加時間100〜5000(ns)の正バイアスからなるバイポーラパルスバイアスを印加し、かつ前記Ti−Al合金からなるカソード電極とアノード電極との間に60〜200Aの電流を流してアーク放電を発生させて、工具基体表面に、組成式:(Ti1−XAl)Nで表したときに、0.4≦X≦0.6(ただし、Xは原子比を示す)を満足する改質(Ti,Al)N層を蒸着形成するが、上記蒸着条件のうちでは、特に、工具基体温度および工具基体へのバイアス付加条件が重要である。
まず、工具基体温度(蒸着時の装置内加熱温度)が750℃未満の場合には、{112}面への配向率が極めて小さくなり、目的とする皮膜が得られず、粒界強度が不足し、一方、工具基体温度が850℃を超える場合には、B1構造の(Ti,Al)Nが成膜されず、TiNとAlNが分離した構造となってしまうから、工具基体温度(装置内加熱温度)は、750〜850℃とする必要がある。
つぎに、バイポーラパルスバイアスについては、印加電圧0〜−100(v)×印加時間2000〜20000(ns)の負バイアスおよび印加電圧+32〜+42(v)×印加時間100〜5000(ns)の正バイアスからなるバイポーラパルスバイアスを印加することが必要であり、負バイアス、正バイアスの印加電圧及び印加時間が上記数値範囲から外れた場合には、目的としている{112}面の強配向性の皮膜とならないため、成膜時の工具基体へのバイアス付加条件を上記の通りに定めた。
この発明の被覆工具およびその製造方法によれば、切刃に対してきわめて大きな機械的負荷がかかる鋼や鋳鉄などの重切削加工でも、硬質被覆層である改質(Ti,Al)N層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐欠損性を発揮する被覆工具を提供することができ、そして、この被覆工具は、硬質被覆層に欠損が発生することはなく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体G〜Lを形成した。
さらに、原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有する立方晶窒化硼素(cBN)粉末、窒化チタン(TiN)粉末、Al粉末、酸化アルミニウム(Al)粉末を用意し、これら原料粉末を表3に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびCIS規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正三角形)をもったWC基超硬合金製チップ本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ni:2.5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のチップ形状をもった工具基体M〜Rをそれぞれ製造した。
つぎに、これらの工具基体A〜F、G〜LおよびM〜Rのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、カソード電極(蒸発源)として、表5〜7に示される目標組成に対応した成分組成をもった改質(Ti,Al)N層形成用のTi−Al合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を400℃に加熱した後、Arガスを導入して、2.0Paの雰囲気とすると共に、前記テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2Paの反応雰囲気とすると共に、装置内を加熱し、工具基体温度を表4に示される温度に保持し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に、バイアス電源から、同じく表4に示される条件のバイポーラパルスバイアスを印加し、かつ前記カソード電極(改質(Ti,Al)N層形成用のTi−Al合金)とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表5〜7に示される目標組成および目標層厚の改質(Ti,Al)N層を蒸着形成することにより、本発明被覆工具1〜18をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、蒸着形成時の条件を、表4に示される工具基体温度、同じく表4に示される印加バイアス条件とした以外は、本発明被覆工具1〜18の製造の場合と全く同じ条件で従来(Ti,Al)N層を蒸着形成することにより、従来被覆工具1〜18をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆工具と従来被覆工具の硬質被覆層を構成する改質(Ti,Al)N層および従来(Ti,Al)N層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフおよび構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ作成した。
まず、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質(Ti,Al)N層および従来(Ti,Al)N層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
また、上記構成原子共有格子点分布グラフは、上記の改質(Ti,Al)N層および従来(Ti,Al)N層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を求めることにより作成した。
この結果得られた各種の改質(Ti,Al)N層および従来(Ti,Al)N層の傾斜角度数分布グラフにおいて、30〜40度の測定傾斜角区分内に存在する度数を表5〜7にそれぞれ示し、また、改質(Ti,Al)N層および従来(Ti,Al)N層の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、ΣN+1全体(Nは2〜28の範囲内のすべての偶数)に占めるΣ3の分布割合を表5〜7にそれぞれ示した。
上記の各種の傾斜角度数分布グラフおよび構成原子共有格子点分布グラフにおいて、表5〜7にそれぞれ示される通り、本発明被覆工具の改質(Ti,Al)N層は、{112}面の配向割合が非常に高く(傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合)、また、Σ3の分布割合も非常に高い(構成原子共有格子点分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合)のに対して、従来被覆工具の従来(Ti,Al)N層は、{112}面の配向割合およびΣ3の分布割合のいずれもが低いものであった。
なお、図3は、本発明被覆工具1の改質(Ti,Al)N層の傾斜角度数分布グラフ、図4は、従来被覆工具1の従来(Ti,Al)N層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示し、また、図5は、本発明被覆工具1の改質(Ti,Al)N層の構成原子共有格子点分布グラフ、図6は、従来被覆工具1の従来(Ti,Al)N層の構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ示す。
さらに、上記の本発明被覆工具1〜18および従来被覆工具1〜18について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有する(Ti,Al)N層からなることが確認された。また、これらの被覆工具の硬質被覆層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具1〜18および従来被覆工具1〜18について、以下のような切削試験を行った。
本発明被覆工具1〜6および従来被覆工具1〜6について、
切削条件(A−1);
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入丸棒、
切削速度: 200 m/min、
切り込み: 3.0 mm、
送り: 0.35 mm/rev、
切削時間: 3 分、
の条件での合金鋼の乾式断続重切削試験(通常の切込みおよび送りは、それぞれ、1.5mm、0.2mm/rev )、
切削条件(B−1);
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入丸棒、
切削速度: 270 m/min、
切り込み: 3.0 mm、
送り: 0.35 mm/rev、
切削時間: 3 分、
の条件での炭素鋼の乾式断続重切削試験(通常の切込みおよび送りは、それぞれ、1.5mm、0.2mm/rev)、
切削条件(C−1);
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度: 180 m/min、
切り込み: 2.4 mm、
送り: 0.30 mm/rev、
切削時間: 3 分、
の条件でのステンレス鋼の乾式連続重切削試験(通常の切込みおよび送りは、それぞれ、1.2mm、0.15mm/rev)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
また、本発明被覆工具7〜12および従来被覆工具7〜12について、
切削条件(A−2);
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入丸棒、
切削速度: 200 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.15 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での合金鋼の乾式断続重切削試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、150m/min、0.10mm/rev )、
切削条件(B−2);
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度: 200 m/min、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.12 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での合金鋼の乾式高速高切込み連続切削試験(通常の切削速度および切り込みは、それぞれ、150m/min、1.5mm)、
切削条件(C−2);
被削材:JIS・S50Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 200 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.25 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での炭素鋼の乾式高送り断続切削試験(通常の送りは0.15mm/rev)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表9に示した。
また、本発明被覆工具13〜18および従来被覆工具13〜18について、
切削条件(A−3);
被削材:JIS・SCr420H(HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 165 m/min、
切り込み: 0.2 mm、
送り: 0.25 mm/rev、
切削時間: 8 分、
の条件でのクロム鋼の乾式高速高送り断続切削試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、120m/min、0.15mm/rev )、
切削条件(B−3);
被削材:JIS・SUJ2の焼入れ材(HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 175 m/min、
切り込み: 0.3 mm、
送り: 0.15 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件での軸受鋼の焼入れ材の乾式高速高切込み断続切削試験(通常の切削速度および切り込みは、それぞれ、120m/min、0.2mm)、
切削条件(C−3);
被削材:JIS・SUJ2の焼入れ材(HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 150 m/min、
切り込み: 0.1 mm、
送り: 0.2 mm/rev、
切削時間: 4 分、
の条件での軸受鋼の焼入れ材の乾式高送り断続切削試験(通常の送りは0.1mm/rev)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表10に示した。
Figure 0005088469
Figure 0005088469
Figure 0005088469
Figure 0005088469
Figure 0005088469
Figure 0005088469
Figure 0005088469

Figure 0005088469
Figure 0005088469

Figure 0005088469
表5〜10に示される結果から、本発明被覆工具1〜18は、{112}面の配向割合が非常に高く(傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合)、また、Σ3の分布割合も非常に高い(構成原子共有格子点分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合)改質(Ti,Al)N層で硬質被覆層が構成され、機械的負荷がきわめて大きい鋼や鋳鉄の重切削加工でも、前記改質(Ti,Al)N層が一段とすぐれた高温強度を有することから、すぐれた耐欠損性を示すと同時にすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、{112}面の配向割合およびΣ3の分布割合のいずれもが低い従来(Ti,Al)N層で硬質被覆層が構成された従来被覆工具1〜18においては、いずれも高速断続切削では硬質被覆層の高温強度が不十分であるために、重切削加工では硬質被覆層に欠損が発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高い高温強度が要求される重切削加工でも硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。 硬質被覆層を構成する(Ti,Al)N層が有するNaCl型面心立方晶の結晶構造を示す模式図である。 本発明被覆工具1の硬質被覆層を構成する改質(Ti,Al)N層の傾斜角度数分布グラフである。 従来被覆工具1の硬質被覆層を構成する従来(Ti,Al)N層の傾斜角度数分布グラフである。 本発明被覆工具1の硬質被覆層を構成する改質(Ti,Al)N層の構成原子共有格子点分布グラフである。 従来被覆工具1の硬質被覆層を構成する従来(Ti,Al)N層の構成原子共有格子点分布グラフである。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、または立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料で構成された工具基体の表面に、1〜10μmの平均層厚を有するTiとAlの複合窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具において、
    前記TiとAlの複合窒化物層は、
    組成式:(Ti1−XAl)Nで表したときに、
    0.4≦X≦0.6(ただし、Xは原子比を示す)を満足し、かつ、
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、30〜40度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜40度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、
    同じく、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にTi、Al、窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が50%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示すTiとAlの複合窒化物層、
    であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上に工具基体を配設し、カソード電極としてTi−Al合金を配置し、
    前記装置内の回転テーブル上に配設された工具基体をArガス雰囲気中でArイオンによってボンバード洗浄した後、
    装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して1〜6Paの反応雰囲気とすると共に、装置内を加熱し、工具基体温度を750〜850℃に保持した状態で、回転テーブル上の工具基体に、印加電圧0〜−100(v)×印加時間2000〜20000(ns)の負バイアスおよび印加電圧+32〜+42(v)×印加時間100〜5000(ns)の正バイアスからなるバイポーラパルスバイアスを印加し、かつ前記Ti−Al合金からなるカソード電極とアノード電極との間に60〜200Aの電流を流してアーク放電を発生させて、工具基体表面に、組成式:(Ti1−XAl)Nで表したときに、0.4≦X≦0.6(ただし、Xは原子比を示す)を満足するTiとAlの複合窒化物層を蒸着形成する、
    ことを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具の製造方法。
JP2007155122A 2007-06-12 2007-06-12 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法 Expired - Fee Related JP5088469B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007155122A JP5088469B2 (ja) 2007-06-12 2007-06-12 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007155122A JP5088469B2 (ja) 2007-06-12 2007-06-12 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008307615A JP2008307615A (ja) 2008-12-25
JP5088469B2 true JP5088469B2 (ja) 2012-12-05

Family

ID=40235696

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007155122A Expired - Fee Related JP5088469B2 (ja) 2007-06-12 2007-06-12 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5088469B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5402155B2 (ja) * 2009-03-30 2014-01-29 三菱マテリアル株式会社 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具
WO2015052761A1 (ja) * 2013-10-08 2015-04-16 Tpr株式会社 ピストンリングおよびターボチャージャー用シールリング
WO2015052762A1 (ja) * 2013-10-08 2015-04-16 Tpr株式会社 ピストンリングおよびターボチャージャー用シールリング
JP6973699B2 (ja) * 2016-04-14 2021-12-01 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP6045010B1 (ja) 2016-04-14 2016-12-14 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP6774649B2 (ja) * 2016-09-28 2020-10-28 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4811781B2 (ja) * 2005-06-02 2011-11-09 三菱マテリアル株式会社 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4716254B2 (ja) * 2005-06-07 2011-07-06 三菱マテリアル株式会社 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4730656B2 (ja) * 2005-10-04 2011-07-20 三菱マテリアル株式会社 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2008075178A (ja) * 2006-08-24 2008-04-03 Hitachi Tool Engineering Ltd 厚膜被覆部材及び厚膜被覆部材の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008307615A (ja) 2008-12-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5939508B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
WO2014163081A1 (ja) 表面被覆切削工具
WO2015147160A1 (ja) 表面被覆切削工具及びその製造方法
JP6548073B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP4748450B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5036338B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5287125B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5035956B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5344129B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5088469B2 (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法
JP2009056540A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP4780513B2 (ja) 硬質被覆層が高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP5152690B2 (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009090395A (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5207105B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP6296295B2 (ja) 耐摩耗性にすぐれた表面被覆切削工具
JP3928481B2 (ja) 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP5287124B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP2010017785A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP4725774B2 (ja) 硬質被覆層が高硬度鋼の断続重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具
JP5287123B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5287126B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP6102571B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5239324B2 (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009214196A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100330

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120418

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120424

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120815

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120828

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150921

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5088469

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees