JP4780513B2 - 硬質被覆層が高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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この発明は、特に各種の鋼や鋳鉄などの被削材の切削加工を、高速切削条件で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
一般に、被覆サーメット工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
上記の被覆サーメット工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.70を示す)、
を満足するTiとAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層、
(b)上部層が、1〜10μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることも良く知られるところである。
また、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するAl23層が、格子点にAlおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造、すなわち図2にAl23の単位格子の原子配列が模式図[(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図]で示される結晶構造を有する結晶粒で構成されることも知られている。
さらに、上記の被覆サーメット工具が、
(a)例えば図8(a)に概略平面図、同(b)に概略正面図で示される蒸着装置、すなわち、中央部に回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、カソード電極(蒸発源)として硬質被覆層を構成する下部層形成用Ti−Al合金を設けたアークイオンプレーティング装置(以下、AIP装置で示す)と、同じくカソード電極(蒸発源)として上部層形成用金属Alを設けたスパッタリング装置(以下、SP装置で示す)を配置した蒸着装置を用い、
(b)上記回転テーブル上に上記の工具基体を装着し、
(c)まず、ヒーターで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、真空雰囲気下で、上記AIP装置のカソード電極である下部層形成用Ti−Al合金とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、上記工具基体表面をボンバード洗浄し、
(d)ついで、上記蒸着装置内の雰囲気を窒素ガス雰囲気とした状態で、さらに上記カソード電極であるTi−Al合金とアノード電極との間のアーク放電を行い、上記工具基体の表面に、
組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.70を示す)、
を満足する(Ti,Al)N層からなる下部層を1〜10μmの平均層厚で形成し、
(e)引き続いて、上記蒸着装置内の反応雰囲気を、酸素ガスとArガスの酸化性混合ガス雰囲気とした状態で、上記上部層形成用SP装置のカソード電極である金属Alに印加して、Alをイオン化放出させ、前記反応雰囲気中で前記スパッタ放出したAlと前記反応雰囲気中の酸素と反応させて、Al層からなる上部層を1〜10μmの平均層厚を形成する、
以上(a)〜(e)の工程で製造されることも知られている。
特許第2742049号 特許第3159572号
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを高速切削加工に用いた場合には、硬質被覆層を構成するAl23層が十分な高温強度を具備するものでないために、前記硬質被覆層にチッピング(微少欠け)が発生し易くなり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記のAl23層が硬質被覆層の上部層を構成する被覆サーメット工具に着目し、特に前記Al23層の高温強度向上を図るべく研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する下部層である(Ti,Al)N層をAIP装置を用いて形成した後で、カソード電極(蒸発源)として金属Crを設けたSP装置を用いて、酸化クロム(以下、Crで示す)層を0.1〜2μmの平均層厚で蒸着形成すると共に、この上に同じくSP装置を用いて、上部層として、
組成式:(Al1−ZCr、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.04)、
を満足するAlとCrの複合酸化物[以下、(Al,Cr)23で示す)層を蒸着形成すると、この結果の(Al,Cr)23層は、これに原子比で0.01〜0.04の割合で含有させたCr成分と前記中間層として形成したCr層による共存作用で結晶配向および組織に強い影響を受け、材質的に改質されて、高温強度が一段と向上するようになることから、硬質被覆層の上部層が前記中間層として形成したCr層上に蒸着形成された(Al,Cr)23層(以下、「改質(Al,Cr)23層」という)、下部層が上記(Ti,Al)N層で構成された被覆サーメット工具は、特に高い高温強度が要求される高速切削加工でも、前記硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
(b)上記(a)の改質(Al,Cr)23層も単位格子の原子配列が図1の模式図[(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図]で示される通り、従来Al23層と同様に、格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有するものであること。
(c)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成するAl23層(以下、「従来Al23層」という)と上記(a)の改質(Al,Cr)23層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図3(a),(b)に概略説明図で例示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角[図3aには前記結晶面の傾斜角がいずれも0度の場合、同(b)には同傾斜角がいずれも45度の場合を示しているが、これらの角度を含めて前記結晶粒個々のすべての傾斜角]を測定し、この場合前記結晶粒は、上記の通り格子点にAlおよび酸素、またはAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出すると共に、前記構成原子共有格子点間に存在する構成原子を共有しない格子点の数:N(この場合、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上、分布頻度の点から28を上限として、2、6、10、12、16、18、20、22、および28となる)毎に定めたΣN+1で表される構成原子共有格子点形態(単位形態)のそれぞれの分布割合を算出し、Σ3〜Σ29のそれぞれの単位形態の分布割合を、前記Σ3〜Σ29の単位形態全体の合計分布割合に占める割合で示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した場合、上記従来Al23層は、図6に例示される通り、Σ3の分布割合が25%以下の相対的に低い構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、前記改質(Al,Cr)23層は、図5に例示される通り、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3の分布割合が前記単位形態全体の合計分布割合の51〜69%を占める構成原子共有格子点分布グラフを示し、この高いΣ3の分布割合は、前記改質(Al,Cr)23層のCr含有割合および上記中間層であるCr層の平均層厚によって変化すること。
なお、上記の改質(Al,Cr)23層および従来Al23層において、相互に隣接する結晶粒の界面における構成原子共有格子点形態のうちのΣ3、Σ7、およびΣ11の単位形態を模式図で例示すると図4(a)〜(c)に示される通りとなる。
(d)上記の改質(Al,Cr)23層は、Al23層が具備する高温硬さと耐熱性に相当するすぐれた高温硬さと耐熱性を有すると共に、上記従来Al23層に比して一段と高い高温強度を具備するようになるので、これを硬質被覆層の上部層として蒸着形成してなる被覆サーメット工具は、同下部層である(Ti,Al)N層の有するすぐれた高温硬さおよび高温強度と相俟って、特に高速切削加工に用いた場合にも、同じく前記従来Al23層を上部層として蒸着形成してなる従来被覆サーメット工具に比して、硬質被覆層が一段とすぐれた耐チッピング性を発揮すること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、中央部に回転テーブルを設け、前記回転テーブルの外周に沿って、カソード電極(蒸発源)として硬質被覆層を構成する下部層形成用Ti−Al合金を設けたAIP装置、カソード電極として同中間層形成用金属Crを設けたSP装置、およびカソード電極(蒸発源)として同上部層形成用Al−Cr合金を設けたSP装置を配置した蒸着装置を用い、前記蒸着装置内の回転テーブル上に回転自在に装着されたWC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、上記下部層形成用AIP装置にて、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.70を示す)、
を満足する(Ti,Al)N層、
(b)中間層として、上記中間層形成用SP装置にて、0.1〜2μmの平均層厚を有するCr層、
(c)上部層として、上記上部層形成用SP装置にて、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Al1−ZCr、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.04)、
を満足すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出すると共に、前記構成原子共有格子点間に存在する構成原子を共有しない格子点の数:N(この場合、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上、分布頻度の点から28を上限として、2、6、10、12、16、18、20、22、および28となる)毎に定めたΣN+1で表される構成原子共有格子点形態(単位形態)のそれぞれの分布割合を算出し、Σ3〜Σ29のそれぞれの単位形態の分布割合を、前記Σ3〜Σ29の単位形態全体の合計分布割合に占める割合で示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3の分布割合が前記単位形態全体の合計分布割合の51〜69%を占める構成原子共有格子点分布グラフを示す改質(Al,Cr)23層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層において、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層の(Ti,Al)N層
(Ti,Al)N層におけるAl成分には高温硬さと耐熱性を向上させ、一方同Ti成分には高温強度を向上させる作用があるが、Alの割合を示すX値がTiとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.35未満になると、相対的にTiの割合が多くなり過ぎて、すぐれた高温硬さと耐熱性を確保することができず、摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示すX値が同0.70を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、チッピングが発生し易くなることから、X値を0.35〜0.70と定めた。
また、その平均層厚が1μm未満では、自身のもつ上記のすぐれた特性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その平均層厚が10μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜10μmと定めた。
(b)中間層のCr
Cr層は、上記の通り上部層である改質(Al,Cr)23層の蒸着時の結晶配向および組織に、これに含有するCr成分との共存作用で影響を及ぼし、その平均層厚を調整することによって前記改質(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフにおけるΣ3の分布割合を51〜69%とする作用を有するが、その平均層厚が0.1μm未満では、前記改質(Al,Cr)23層におけるCr成分の含有割合が原子比で0.01〜0.04を満足しても前記Σ3の分布割合を51%以上にすることができない場合が生じ、この場合は所望のすぐれた高温強度を前記改質(Al,Cr)23層に確保することができず、一方、その平均層厚を2μmを越えて厚くしても、前記Σ3の分布割合が飽和し、これを69%以上にすることが困難となり、むしろ2μmを越えて厚くなり過ぎると、Cr層自身相対的に高温強度の高いものでないため、硬質被覆層全体の高温強度に低下傾向が現れるようになることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
(c)上部層の改質(Al,Cr)23
上記の改質(Al,Cr)23層において、これの構成成分であるAlは層の高温硬さおよび耐熱性を向上させ、同Cr成分にはこれ自体の結晶配向および組織を上記中間層のCr層との共存において変化させ、もって高温強度を向上させる作用を有するが、Crの含有割合を示すZ値が原子比で0.01未満では前記Cr層の平均層厚が0.1〜2μmであっても前記作用に所望の向上効果を確保することができず、一方同Z値が0.04を越えると層自体の高温強度に低下傾向が現れるようになることから、前記Z値を0.01〜0.04と定めた。
また、上記の改質(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフにおけるΣ3の分布割合は、上記の通りこれに自体に含有するCr成分の含有割合と中間層であるCr層の平均層厚を調整することによって51〜69%とすることができるが、この場合Σ3の分布割合が51%未満では、高速切削加工で、硬質被覆層にチッピングが発生しない、すぐれた高温強度を確保することができない場合が生じ、したがってΣ3の分布割合は高ければ高いほど望ましいが、Σ3の分布割合を69%を越えて高くすることは特に中間層であるCr層の作用が飽和し、困難であることから、Σ3の分布割合を51〜69%と定めた。
さらに、上記改質(Al,Cr)23層は、上記の通りAl23層自体のもつ高温硬さと耐熱性に相当するすぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、さらに一段とすぐれた高温強度を有するようになるが、その平均層厚が1μm未満では前記改質(Al,Cr)23層の有する前記の特性を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層厚が10μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を1〜10μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有する窒化チタン(TiN)層を、必要に応じて硬質被覆層の最表面層として蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高速切削条件で行うのに用いた場合にも、硬質被覆層の上部層を構成する改質(Al,Cr)23層が、従来Al23層のもつ高温硬さと耐熱性に相当するすぐれた高温硬さと耐熱性を有すると共に、さらに一段とすぐれた高温強度を具備することから、すぐれた耐チッピング性を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで48時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1,A−2,A−4,A−8,A−9,A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの範囲内の所定の平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメットの工具基体B−2,B−3,B−6を形成した。
(a)ついで、図7に示される蒸着装置、すなわち、中央部に回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にカソード電極(蒸発源)として種々の成分組成を有する下部層形成用Ti−Al合金を備えたAIP装置、他方側にカソード電極(蒸発源)として種々の成分組成を有するAl−Cr合金を備えた上部層形成用SP装置を対向配置し、さらにこれらの装置からそれぞれ90度離れた位置に、カソード電極として金属Crを備えた中間層形成用SP装置を配置した蒸着装置を用い、上記の各種の工具基体のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、前記蒸着装置内の回転テーブル上に、中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って装着し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流パルスバイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記下部層形成用Ti−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)上記の下部層形成用Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を一旦停止し、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流パルスバイアス電圧を印加し、再びカソード電極の前記Ti−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層を下部層として蒸着形成し、
(d)ついで、上記の下部層形成用Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を停止し、工具基体への直流パルスバイアス電圧を−50Vに下げ、蒸着装置内の雰囲気を、窒素雰囲気に代って、酸素ガスとArガスを導入して、酸素ガス:15容量%を含有し、残りがArガスからなる3Paの酸化性混合ガス雰囲気とし、同時に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置した金属Crにスパッタ出力:3kWの条件で印可し、スパッタリングを開始して、Cr層を同じく表3に示される目標層厚で中間層として蒸着形成し、
(e)上記金属Crとアノード電極とのスパッタを停止し、一方前記の蒸着装置内の雰囲気は、酸素ガスとArガスからなる3Paの酸化性混合ガス雰囲気を保持しながら、同時に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置した種々の成分組成を有するAl−Cr合金に、スパッタ出力:3kWの条件で印可して、スパッタリングを開始し、同じく表3に示される目標組成および目標層厚の改質(Al,Cr)23層を上部層として蒸着形成することにより、本発明被覆サーメット工具としての表面被覆サーメット製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、
(a)図8に示される蒸着装置、すなわち、中央部に回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にカソード電極(蒸発源)として種々の成分組成を有する下部層形成用Ti−Al合金を備えたAIP装置、他方側にカソード電極(蒸発源)として金属Alを備えた上部層形成用SP装置を配置した蒸着装置を用い、上記の工具基体A−1,A−2,A−4,A−8,A−9,A−10およびB−2,B−3,B−6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、前記装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流パルスバイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記下部層形成用Ti−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加するパルスバイアス電圧を−100Vに下げて、前記Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記工具基体のそれぞれの表面に、表4に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層を下部層として蒸着形成し、
(d)ついで、上記の下部層形成用Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を停止し、工具基体への直流パルスバイアス電圧を−50Vに下げ、蒸着装置内の雰囲気を、窒素雰囲気に代って、酸素ガスとArガスを導入して、酸素ガス:15容量%を含有し、残りがArガスからなる3Paの酸化性混合ガス雰囲気とし、同時に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置した金属Alにスパッタ出力:3kWの条件で印可し、スパッタリングを開始して、従来Al層を上部層として同じく表4に示される目標層厚で蒸着形成することにより従来被覆サーメット工具としての従来表面被覆サーメット製スローアウエイチップ(以下、従来被覆チップと云う)1〜をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の本発明被覆チップ1〜および従来被覆チップ1〜について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・S35Cの丸棒、
切削速度:320m/min、
切り込み:3mm、
送り:0.4mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は160m/min)、
被削材:JIS・FC250の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:3mm、
送り:0.4mm/rev、
切削時間:12分、
の条件(切削条件Bという)での鋳鉄の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は230m/min)、さらに、
被削材:JIS・SCM435の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:310m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.35mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Cという)での合金鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は160m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
Figure 0004780513
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原料粉末として、平均粒径:0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.9μmのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、および同1.0μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表6に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で30時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の工具基体形成用丸棒焼結体C−2,C−6,C−7,C−8を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表6に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製のエンドミル工具基体D−2,D−6,D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらのエンドミル工具基体D−2,D−6,D−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図7に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表7に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる下部層、同じく表7に示される目標層厚のCr層からなる中間層、および表7に示される目標組成および目標層厚の改質(Al,Cr)23層からなる上部層を蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具としての本発明表面被覆サーメット製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記のエンドミル工具基体D−2,D−6,D−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図8に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、同じく表7に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる下部層、同じく表7に示される目標層厚の従来Al層からなる上部層を蒸着形成することにより従来被覆サーメット工具としての従来表面被覆サーメット製エンドミル(以下、従来被覆エンドミルと云う)1〜をそれぞれ製造した。
つぎに、この結果得られた本発明被覆エンドミル1〜および従来被覆エンドミル1〜のうち、本発明被覆エンドミルおよび従来被覆エンドミルについては、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SCM440の板材、
切削速度:240m/min.、
溝深さ(切り込み):2.5mm、
テーブル送り:950mm/分、
の条件での合金鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は110m/min.)、本発明被覆エンドミルおよび従来被覆エンドミルについては、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・S45Cの板材、
切削速度:260m/min.、
溝深さ(切り込み):4mm、
テーブル送り:1000mm/分、
の条件での炭素鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は110m/min.)、本発明被覆エンドミルおよび従来被覆エンドミルについては、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SNCM439の板材、
切削速度:205m/min.、
溝深さ(切り込み):8mm、
テーブル送り:480mm/分、
の条件での合金鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は100m/min.)をそれぞれ行い、いずれの高速溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
Figure 0004780513
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上記の実施例2で製造した直径が8mm(C−2)、13mm(C−6)、および26mm(C−7,C−8)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表6に示される組み合わせで、いずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもち、かつ溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mmのドリル工具基体(E−2)、8mm×22mmのドリル工具基体(E−6)、および16mm×45mmのドリル工具基体(E−7,E−8)をそれぞれ製造した。
ついで、これらのドリル工具基体E−2,E−6,E−7,E−8の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図7に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表8に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる下部層、同じく表8に示される目標層厚のCr層からなる中間層、および表8に示される目標組成および目標層厚の改質(Al,Cr)23層からなる上部層を蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具としての本発明表面被覆サーメット製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記のドリル工具基体E−2,E−6,E−7,E−8の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図8に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表8に示される目標組成および目標層厚を有する(Ti,Al)N層からなる下部層、同じく表8に示される目標層厚の従来Al層からなる上部層を蒸着形成することにより従来被覆サーメット工具としての従来表面被覆サーメット製ドリル(以下、従来被覆ドリルと云う)1〜をそれぞれ製造した。
つぎに、この結果得られた上記本発明被覆ドリル1〜および従来被覆ドリル1〜のうち、本発明被覆ドリルおよび従来被覆ドリルについては、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SCM440の板材、
切削速度:100m/min.、
送り:0.25mm/rev.、
穴深さ:8mm、
の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は45m/min.)、本発明被覆ドリルおよび従来被覆ドリルについては、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・S45Cの板材、
切削速度:130m/min.、
送り:0.33mm/rev、
穴深さ:16mm、
の条件での炭素鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は65m/min.)、本発明被覆ドリル3,4および従来被覆ドリル3,4については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SNCM415の板材、
切削速度:120m/min.、
送り:0.3mm/rev、
穴深さ:32mm、
の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は55m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Figure 0004780513
ついで、上記の各種の本発明被覆サーメット工具および従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する改質(Al,Cr)23層および従来Al23層のそれぞれについて、電界放出型走査電子顕微鏡および電子後方散乱回折像装置を用いて、構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記構成原子共有格子点分布グラフは、上記の改質(Al,Cr)23層および従来Al23層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面における、Σ3、Σ7、Σ11、Σ13、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、およびΣ29のそれぞれの単位形態の分布割合を、前記単位形態全体の合計分布割合に占める割合で示すことにより作成した。
この結果得られた各種の改質(Al,Cr)23層および従来Al23層の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3、Σ7、Σ11、Σ13、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、およびΣ29のそれぞれの分布割合の合計に占めるΣ3の分布割合をそれぞれ表5,7,および8にそれぞれ示した。
上記の各種の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、表5,7,および8にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の改質(Al,Cr)23層は、いずれもΣ3の占める分布割合が51〜69%である構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具の従来Al23層は、いずれもΣ3の分布割合が25%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示すものであった。
なお、図5は、本発明被覆チップ2の改質(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフ、図6は、従来被覆チップ2の従来Al23層の構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ示すものである。
また、この結果得られた本発明被覆サーメット工具および従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Al)N層、改質(Al,Cr)23層、および従来Al23層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのオージェ電子分光法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
さらに、上記の硬質被覆層の構成層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて縦断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表3〜8に示される結果から、本発明被覆サーメット工具は、いずれも硬質被覆層の上部層が、Σ3の分布割合が51〜69%の構成原子共有格子点分布グラフを示す改質(Al,Cr)23層で構成され、高い高温強度が要求される鋼や鋳鉄の高速切削加工でも、前記改質(Al,Cr)23層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層のチッピング発生がなくなり、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の上部層が、Σ3の分布割合が25%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示す従来Al23層で構成された従来被覆サーメット工具においては、いずれも高速切削加工では硬質被覆層の高温強度が不十分であるために、硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削加工や断続切削加工は勿論のこと、特に高い高温強度が要求される高速切削加工でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
本発明被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する改質(Al,Cr)23層が有するコランダム型六方最密晶の単位格子の原子配列を示す模式図にして、(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図である。 従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する従来Al23層が有するコランダム型六方最密晶の単位格子の原子配列を示す模式図にして、(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図である。 改質(Al,Cr)23層および従来Al23層における結晶粒の(0001)面および(10-10)面の傾斜角の測定態様を示す概略説明図である。 相互に隣接する結晶粒の界面における構成原子共有格子点形態の単位形態を示す模式図にして、(a)はΣ3、(b)はΣ7(c)はΣ11の単位形態をそれぞれ示す図である。 本発明被覆チップ2の上部層である改質(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフである。 従来被覆チップ2の上部層である従来Al23層の構成原子共有格子点分布グラフである。 本発明被覆サーメット工具の硬質被覆層の形成に用いた蒸着装置を示し、(a)に概略平面図、同(b)に概略正面図である。 従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の形成に用いた蒸着装置を示し、(a)に概略平面図、同(b)に概略正面図である。

Claims (1)

  1. 中央部に回転テーブルを設け、前記回転テーブルの外周に沿って、カソード電極(蒸発源)として硬質被覆層を構成する下部層形成用Ti−Al合金を設けたアークイオンプレーティング装置、カソード電極として同中間層形成用金属Crを設けたスパッタリング装置、およびカソード電極(蒸発源)として同上部層形成用Al−Cr合金を設けたスパッタリング装置を配置した蒸着装置を用い、前記蒸着装置内の回転テーブル上に回転自在に装着された、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層として、上記下部層形成用アークイオンプレーティング装置にて、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.70を示す)、
    を満足するTiとAlの複合窒化物層、
    (b)中間層として、上記中間層形成用スパッタリング装置にて、0.1〜2μmの平均層厚を有する酸化クロム層、
    (c)上部層として、上記上部層形成用スパッタリング装置にて、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Al1−ZCr、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.04)、
    を満足すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出すると共に、前記構成原子共有格子点間に存在する構成原子を共有しない格子点の数:N(この場合、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上、分布頻度の点から28を上限として、2、6、10、12、16、18、20、22、および28となる)毎に定めたΣN+1で表される構成原子共有格子点形態(単位形態)のそれぞれの分布割合を算出し、Σ3〜Σ29のそれぞれの単位形態の分布割合を、前記Σ3〜Σ29の単位形態全体の合計分布割合に占める割合で示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3の分布割合が前記単位形態全体の合計分布割合の51〜69%を占める構成原子共有格子点分布グラフを示すAlとCrの複合酸化物層、
    以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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