JP5835531B2 - 極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、橋梁や建築部材等に使用される極厚鋼板を製造するための素材として用いる鋳片の連続鋳造方法に関する。
極厚鋼板の製造においては、連続鋳造スラブ鋳片を素材として圧延する場合、圧延比(鋳造完了後鋳片厚さ/鋼板圧延仕上げ厚さ。以下において「圧下比」とも称する。)を大きくとることができない。そのため、鋳片の厚さ中心付近に鋳造欠陥である小さな空孔(以下、「ポロシティ」という。)が十分圧着されずに残り、製品欠陥になるという問題がある。圧下比を大きくとるために大断面の鋳片の連続鋳造を想定した場合、機長限界から低速鋳造が必要となり、能率が非常に悪くなる。また、連続鋳造ではなく、通常の造塊法で大径の鋳塊を鋳造する方法も考えられるが、連続鋳造法に較べて能率がさらに悪くなる。
本発明者らは、特許文献1で、上記問題を解決すべく鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上、1.0未満の範囲において、未凝固部を含む鋳片の幅中央部を一対の圧下ロールにより3〜15mm圧下することにより鋳造された鋳片を素材として、仕上げ圧延までの圧下比rが1.5〜4.0の条件で熱間圧延して、中心ポロシティ体積が低減された極厚鋼板の製造法を提案した。この方法を適用することにより、極厚鋼板のポロシティは、元の、圧下を行わずに鋳造された鋳片を素材として用いた場合のポロシティレベルの1/4〜1/3へと大きく低減した。
しかし、前掲の特許文献1に記載の方法を適用しても、極厚鋼板用鋳片にはまだかなりのポロシティが残存している。そのため、今後、益々厳しくなることが予想されるポロシティ低減への要求、あるいは、さらに薄肉の鋳片を高速で鋳造して圧延時の圧下比を低く抑え、鋼板に仕上げることが望ましいとする傾向等々を考えると、前掲の文献に記載の方法は、ポロシティの低減対策としては不十分であると言わざるを得ない。
一方、特許文献2および特許文献3には、ロール径が400mmを超える大径で、軸方向に一体的に形成された複数のロール対を配置した鋼の連続鋳造設備が記載されている。このように複数のロール対で鋳片を圧下することは、ポロシティ低減には非常に有効であると考えられるが、以下の問題の生起が予想される。
すなわち、このような大径のロールを複数対配置すると、中心部が未凝固の状態にあるスラブ鋳片がこのロール群を通過する際に、複数回のロール間バルジングを生じ、これにより鋳片の中心部における炭素、硫黄、燐などの成分の偏析(中心偏析)の悪化や、凝固界面における割れ(内部割れ)の発生等を招く。また、この大径のロール間を、完全凝固後の鋳片を通過させて凝固時に発生したポロシティを圧着させるべく多段の大径ロールで圧下を試みたとしても、連続するロール間での圧下で加工硬化が進み、圧下がそれ程進まないという問題がある。
前述のとおり、連続鋳造された鋳片を素材として極厚鋼板を製造する場合、圧延比を大きくとれないために、鋳片の厚さ中心付近にポロシティが残り、製品欠陥になるという問題がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、極厚鋼板を製造するための素材として用いる鋳片であって、厚さ中心付近に残存するポロシティが著しく低減された鋳片を、中心偏析の悪化や内部割れの発生を招くことなく、また加工硬化により圧下が妨げられることなく、製造することができる極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、伝熱解析や種々の試験を繰り返し行った結果、ポロシティの低減には以下の方法が効果的であり、しかも、中心偏析の悪化や内部割れ等、他の欠陥発生の問題がないことを見出した。
(a)鋳片の圧下には、2対の圧下ロールを用いる。ロール径は450mm以上とすることが望ましい。
(b)2対の圧下ロールを、3m以上7mまでの範囲内の間隔をあけて配置(離散配置)し、その2対の圧下ロールの間には、通常ロール間隔(330mm以下)のサポートロールを配する。圧下ロールと隣接するサポートロールの間隔は330mmを超えてもよいが、極力短くする。
(c)最初の(1段目の)圧下ロールで、中心部の固相率が0.8以上1未満の範囲で未凝固部を含む鋳片を、ロールに作用する反力(以下、「圧下反力」ともいう。)が最大となるまで圧下する。
(d)さらに、2段目の圧下ロールで完全凝固後の鋳片を圧下反力が最大となるまで圧下する。
(a)鋳片の圧下には、2対の圧下ロールを用いる。ロール径は450mm以上とすることが望ましい。
(b)2対の圧下ロールを、3m以上7mまでの範囲内の間隔をあけて配置(離散配置)し、その2対の圧下ロールの間には、通常ロール間隔(330mm以下)のサポートロールを配する。圧下ロールと隣接するサポートロールの間隔は330mmを超えてもよいが、極力短くする。
(c)最初の(1段目の)圧下ロールで、中心部の固相率が0.8以上1未満の範囲で未凝固部を含む鋳片を、ロールに作用する反力(以下、「圧下反力」ともいう。)が最大となるまで圧下する。
(d)さらに、2段目の圧下ロールで完全凝固後の鋳片を圧下反力が最大となるまで圧下する。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記の連続鋳造方法を要旨としている。
すなわち、極厚鋼板を熱間圧延により製造するための素材として用いる鋳片を連続鋳造する方法であって、ロール間隔が3m以上7mまでの範囲で離散配置され、その間にサポートロールが配置された2対の圧下ロールを用い、1段目の圧下ロールで、鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上1未満の鋳片を3〜15mm圧下し、さらに、2段目の圧下ロールで、完全凝固後の鋳片を圧下することを特徴とする極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法である。
すなわち、極厚鋼板を熱間圧延により製造するための素材として用いる鋳片を連続鋳造する方法であって、ロール間隔が3m以上7mまでの範囲で離散配置され、その間にサポートロールが配置された2対の圧下ロールを用い、1段目の圧下ロールで、鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上1未満の鋳片を3〜15mm圧下し、さらに、2段目の圧下ロールで、完全凝固後の鋳片を圧下することを特徴とする極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法である。
本発明の連続鋳造方法において、前記2対のロール直径を450mm以上とすることにより、ポロシティが存在する鋳片中心部への圧下浸透性を高めることができるので望ましい。
また、本発明の連続鋳造方法において、2対の圧下ロールの間に複数のサポートロールが配置され、隣接するサポートロールの間隔を330mm以下とすることが好ましい。これにより、ロール間バルジングを抑制しやすくなるので、内部割れの発生や中心偏析の悪化を抑制しやすくなる。
本発明でいう「極厚鋼板」とは、連続鋳造方法で鋳造された鋳片を圧延して得られる板厚80mm以上の鋼板を意味する。
本発明の連続鋳造方法によれば、極厚鋼板を熱間圧延により製造するための素材として用いる鋳片であって、鋳片の厚さ中心近傍に残存するポロシティが著しく低減された鋳片を、中心偏析の悪化や内部割れの発生等を招くことなく製造することができる。
本発明は、前述のとおり、極厚鋼板を熱間圧延により製造するための素材として用いる鋳片を連続鋳造する方法であって、ロール間隔が3m以上7mまでの範囲で離散配置され、その間にサポートロールが配置された2対の圧下ロールを用い、1段目の圧下ロールで、鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上1未満の範囲において、未凝固部を含む鋳片を3〜15mm圧下し、さらに、2段目の圧下ロールで、完全凝固後の鋳片を圧下することを特徴とする極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法である。
以下、図面を参照して本発明の連続鋳造方法について説明する。
以下、図面を参照して本発明の連続鋳造方法について説明する。
図1は、連続鋳造試験に用いた垂直曲げ型の連続鋳造機の概略構成を示す図である。タンディッシュ(図示せず)から浸漬ノズル1を経て鋳型3に注入された溶鋼4は、鋳型3およびその下方の二次冷却スプレーノズル群(図示せず)から噴射されるスプレー水によって冷却され、凝固シェル5が形成されて鋳片8となる。鋳片8は、その内部に未凝固部を保持したまま、サポートロール6群を経てピンチロール(図示せず)により引き抜かれる。
極厚鋼板を製造するための素材として用いる鋳片を連続鋳造の対象としないのは、前述したように、連続鋳造スラブ鋳片を熱間圧延して極厚鋼板を製造する場合、圧延比を大きくとることができないため、鋳片の厚さ中心付近に存在するポロシティが熱間圧延後においても残存し、製品欠陥になるという問題があるからである。この問題を解決するため、本発明では、熱間圧延後の鋼板にポロシティが残存しないように、鋳片の段階でポロシティが著しく低減された極厚鋼板用のスラブ鋳片を製造する。
本発明において、離散配置された(すなわち、所定の間隔を設けて配置された)2対の圧下ロールを用いるのは、以下に述べるように、ポロシティが著しく低減された鋳片を得るためである。
ロール間隔が3m以上7mまでの範囲で離散配置された2対の圧下ロールを用いる理由の第1は、ロール間バルジングの発生を抑えるためである。
ロール間隔は、通常いくらかの許容幅をもたせながらも予め定められているので、圧下ロールの間隔を3mよりも小さくすると、圧下ロールとサポートロール、あるいはサポートロール同士のロール間隔の大きい部分が鋳造長手方向に複数箇所発生する。また、圧下ロールの間隔をさらに小さくすると、2対の圧下ロール間にサポートロールを配置するスペースがなく、圧下ロール自体を連続的に配置することとなり、同じくロール間隔の大きい部分が複数箇所発生することとなる。ロール間隔が大きいと、ロール間バルジングがロール間隔のべき乗で増加することが知られており、そのような箇所が鋳造方向の短い範囲で複数存在することによって、内部割れの発生の危険性が増大し、また中心偏析の悪化を招く原因になる。このような観点から、離散配置された2対の圧下ロールと隣接するサポートロールの間隔は330mm以下とすることが好ましい。
前記離散配置された2対の圧下ロールを用いる理由の第2は、1段目の圧下ロールと2段目の圧下ロールを短い区間に配置した場合、1段目の圧下による鋳片表面の加工硬化により2段目の圧下があまり進まなくなるからである。本発明者らは、2対の圧下ロールを配置する際に少なくとも3mの距離を開けることによって、1段目の圧下から2段目の圧下までの間に応力緩和が進み、2段目の圧下の際に、両圧下ロールの距離が短い場合に較べてより大きな圧下量を確保できることを見出した。鋳片がまだ高温であるため、このような応力緩和が進行し得ると考えられる。
2対の圧下ロールの間にサポートロールが配置されていることとするのは、当該2対のロール間を通過する鋳片を保持するためである。また、ロール間バルジングを抑制しやすくすることにより、内部割れの発生や中心偏析の悪化を抑制しやすくする観点から、2対の圧下ロールの間に配置される隣接するサポートロールの間隔は330mm以下とすることが好ましい。なお、サポートロールの間隔の下限値は特に規定しないが、サポートロール間の2次冷却用スプレー配管の設置を考えると、少なくとも、サポートロールの直径+30mmよりも広くすることが望ましい。
1段目の圧下ロールと2段目の圧下ロールの間隔の最大限を7mとするのは、2対の圧下ロールの間隔がこれより大きくなると、鋳片の温度低下が大きくなり、鋳片の変形抵抗が大きくなって、2段目の圧下ロールによる圧下があまり進まなくなるからである。また、鋳片の中心と表面の温度差が小さくなり、鋳片中心部の圧下浸透度が低下すると推察される。
本発明においては、前述の2対の圧下ロールを用い、1段目の圧下ロールで、鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上1未満の範囲において、未凝固部を含む鋳片を3〜15mm圧下し、さらに、2段目の圧下ロールで、完全凝固後の鋳片を圧下する。
鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上、1未満の範囲においては、僅かではあるが中心部に未凝固の溶鋼が残っており、まだ中心部の温度が非常に高温で変形抵抗も小さく、中心部への大きな圧下浸透を図ることができる。また、この温度区間(前記固相率が0.8以上1未満となる温度区間)ではポロシティの形成がほぼ完了しつつあることから、1段目の圧下ロールで未凝固部を含む鋳片を圧下するのは、ポロシティの低減にとって極めて効果的である。
ポロシティの低減に必要な圧下量は少なくとも3mmであり、圧下量を大きくとればとるほどポロシティの低減には有効である。しかし、この時点(つまり、前記固相率が0.8以上1未満となる時点)で一段のロールでとれる圧下量は最大でも15mm程度である。これより大きな圧下量を確保するには過大な装置構成が必要となり、圧下ロール径も大きくなることから、先に述べたバルジングの発生や、それに伴う中心偏析の悪化、内部割れの発生等の問題も生じやすくなる。
続いて、2段目の圧下ロールで、完全凝固後の鋳片を圧下する。1段目の圧下ロールに対して距離を置くことにより鋳片の冷却は進むが、前述の3m以上7mまでの距離(その距離の通過に要する時間間隔)では、鋳片の変形抵抗の増大はそれほど大きくはない。2段目の圧下ロールによる圧下量は、1段目の圧下ロールによる圧下量よりは低下するが、1段目と同じロール径、圧下能力であれば、1段目の約50〜70%の圧下量が得られることが判明した。
また、鋳片の中心部と表面の内外変形抵抗比(表層部の変形抵抗/中心部の変形抵抗)が大きければ大きい程、中心部への圧下浸透が増大する。1段目の圧下時における鋳片の内外変形抵抗比は鋳片に適切な冷却調整を施すことで5〜7であるのに対し、2段目の圧下時における鋳片の内外変形抵抗比はまだ4〜5程度であり、それ程の差が生じないことが解析により判明した。これは、1段目の圧下から2段目の圧下に移行する間に、鋳片中心部の温度がそれ程低下していないことによるものである。
すなわち、1段目の圧下時における鋳片中心部の温度が「固相線温度+50℃」であるとすると、2段目の圧下時における鋳片中心部の温度の低下はそれより100〜150℃程度で、鋳片中心部は、鋳片表面の温度に較べてまだ十分に高温を維持していることが凝固伝熱解析により推定された。
後述する実施例における試験結果を参照すると、ポロシティ体積は、1段目の圧下により、圧下を行わない場合の30〜40%に低減する。また、2段目の圧下によって、ポロシティ体積は、2段目の圧下前のポロシティ体積の40〜60%に低減する。1段目および2段目の圧下を連続して行うことにより、ポロシティ体積は、圧下を行わない場合に較べて12〜24%となり、著しいポロシティ低減効果が得られる。
本発明において、前記2対の圧下ロールの直径を450mm以上とすることにより、ポロシティが存在する鋳片中心部への圧下浸透性を高めることができるので望ましい。
圧下ロールの望ましい直径を450mm以上とするのは、ロール変形を抑えるとともに、ポロシティが存在する鋳片中心部への圧下浸透性を高めるためである。凝固末期にポロシティを低減するために鋳片を圧下する際、鋳片の変形強度(変形抵抗)が高く、ロール径が450mmより小さいと、圧下ロール自身が変形し易くなる。また、ロール径が小さいと圧下による変形が鋳片の表面近傍で吸収され、内部への圧下浸透効果が小さくなる。
圧下ロールの直径の上限は特に規定しないが、600mmとするのが望ましい。ロール径が600mmより大きいと、圧下反力が増大し、これを支えるためのフレーム構造等も大型化するため、連続鋳造機内に設置できない場合も起こり、現実的ではない。
本発明の効果を確認するため、厚さ300mm、幅1800mmの0.6%C鋼の鋳片を連続鋳造し、得られた鋳片についてポロシティ調査を行った。
使用した連続鋳造機は前記図1に示した概略構成を有する垂直曲げ型の連続鋳造機である。1段目および2段目の圧下ロール7はそれぞれ直径470mmであり、圧下力は最大で5.88×103kN(600ton)である。圧下ロール7周辺のサポートロール6径は210mmである。
1段目の圧下ロール7は、鋳型3内の溶鋼メニスカス2より21m下流の位置に配した。2段目の圧下ロール7は、メニスカス2より24m下流(ケースI)、または27m下流(ケースII)の位置に配した。圧下ロール7とその直前のサポートロール6との間隔は380mmとし、圧下ロール7とその直後のサポートロール6との間隔は255mm、サポートロール6同士の間隔は245mmとした。
浸漬ノズル1を経て鋳型3に注入された溶鋼4は、鋳型3及びその下方の二次冷却スプレーノズル群(図示せず)から噴射されるスプレー水によって冷却され、凝固シェル5が形成されて鋳片8となる。二次冷却水量は0.85L(リットル)/Kg−Steelとした。鋳片の内部に未凝固部を保持したまま、鋳片はサポートロール群を経てピンチロール(図示せず)により引き抜かれる。
表1に、鋳片の連続鋳造における試験条件および試験結果を示す。
圧下直前の鋳片の厚さ中心の固相率(fs)は、非定常伝熱解析により厚さ方向の温度分布を計算して決定した。
得られた鋳片のポロシティ調査は、圧下を実施した場合および実施しない場合の単位質量当たりのポロシティ体積の変化を求めることにより行った。
具体的には、連続鋳造により得られた鋳片の定常部の鋳片横断面ブロックより幅方向に均等に15点を定め、それぞれの厚さ方向中心部から試料(サンプル)を採取し、その密度を測定して平均値をとり、厚さ中心の密度(ρv)とした。サンプルの大きさは鋳片の横断面に平行な面を30mm×30mmとし、厚さを20mmとした。同様に、鋳片の幅方向中央の1/4厚み位置からサンプルを採取し、その密度を測定した。1/4厚み位置では、通常、ポロシティはほとんど存在しないので、これを基準密度(ρ)とした。
なお、密度はそれぞれの質量と体積から算出した。体積は水中にサンプルを浸漬し、水中での質量を測定することにより浮力を求め、水の密度とから算出した。
前記1/4厚み位置での基準密度(ρ)と厚さ中心の密度(ρv)から、下記の(1)式で定義する単位質量当たりのポロシティ体積(V)を求めた。
V=1/ρv−1/ρ ・・・(1)
V=1/ρv−1/ρ ・・・(1)
圧下処理を行わずに連続鋳造した鋳片についても、上記と同様にサンプルを採取して単位質量当たりのポロシティ体積を求め、これを基準のポロシティ体積(V0)とした。
表1に示した「V/V0(%)」は、鋳造速度(Vc)がそれぞれ同一条件のもとにおいて、ポロシティ体積の変化を、圧下なしの連続鋳造時におけるポロシティ体積(V0)に対する圧下実施時のポロシティ体積(V)の比(百分率)で表示したものである。
表1において、実施例のケースI(鋳造速度に応じて、ケースI−1〜I−3)は2段目の圧下ロールをメニスカスより24m下流の位置に、ケースII(ケースII−1〜II−3)は同じく27m下流の位置に配した場合である。また、比較例は、1段目の圧下ロールのみで圧下した場合(比較例1〜3)と、圧下なしの場合(比較例4〜6)である。
鋳造速度(Vc)は、1段目のロール圧下のメニスカスからの位置により選定される。本実施例の場合、メニスカスより21m下流に配した1段目の圧下ロール位置において、表1に示したように、0.55〜0.58m/minの範囲で変更した。
圧下を実施したチャージのいずれの圧下ロールにおいても、圧下反力が最大の5.88×103kN(600ton)となるまで押し切った。
表1に示したように、1段目および2段目のロール圧下を行った場合(実施例I−1〜I−3および実施例II−1〜II−3)、いずれの条件でも、1段目の圧下量に較べて2段目の圧下量は低下するが、最終的なポロシティ体積は、元の(基準とした比較例4〜6の)ポロシティ体積の12.4〜23.8%と、極めて効果的に低下した。一方、1段目のロール圧下のみの場合(比較例1〜3)は、ポロシティ体積は基準のポロシティ体積の30.4〜38.9%で、1段目および2段目のロール圧下を行った場合に較べ、ポロシティの低減はあまり進まなかった。
また、得られた鋳片における中心偏析については、実施例I−1〜I−3および実施例II−1〜II−3、ならびに比較例1〜3のいずれにおいても、圧下処理を行わない従来の連続鋳造(比較例4〜6)のレベルを維持しており、内部割れの発生も確認されなかった。これは、圧下ロール、サポートロールとも、上述したように適正に配置することにより、ロール間バルジングの影響を従来並みに抑制できたことによるものである。
なお、表示していないが、2対の圧下ロールの間隔を3m未満とした場合は、2段目の圧下があまり進まなくなり、V/V0(%)も1段目のロール圧下のみを行った比較例1〜3におけるV/V0(%)とそれほど差がなかった。これは、1段目のロール圧下による鋳片表面の加工硬化によるものと推察される。
2対の圧下ロールの間隔を7m超えとした場合も、あまり圧下が進まくなり、V/V0(%)も1段目のロール圧下のみの比較例1〜3におけるV/V0(%)と大差はなかった。この場合は、鋳片の温度低下による変形抵抗の増大、並びに、鋳片の中心と表面の温度差が小さくなることにより鋳片中心部への圧下浸透度が低下したことによるものと推察される。
以上の試験結果から、所定の条件のもとに配置された2対の圧下ロールを用いて鋳片を圧下する本発明の連続鋳造方法の効果を確認できた。
本発明の連続鋳造方法によれば、鋳片の厚さ中心近傍に残存するポロシティが著しく低減された極厚鋼板用鋳片を、中心偏析の悪化や内部割れの発生を招くことなく製造することができる。したがって、本発明は、橋梁や建築部材等に使用される極厚鋼板を製造するための素材として用いる鋳片の製造に有効に利用することができる。
1:浸漬ノズル、 2:溶鋼メニカス、 3:銅鋳型、 4:溶鋼、 5:凝固シェル、 6:サポートロール、 7:圧下ロール、 8:鋳片
Claims (3)
- 極厚鋼板を熱間圧延により製造するための素材として用いる鋳片を連続鋳造する方法であって、
ロール間隔が3m以上7mまでの範囲で離散配置され、その間にサポートロールが配置された2対の圧下ロールを用い、
1段目の圧下ロールで、鋳片の厚さ中心部の固相率が0.8以上1未満の鋳片を3〜15mm圧下し、
さらに、2段目の圧下ロールで、完全凝固後の鋳片を圧下することを特徴とする極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法。
- 前記2対の圧下ロールの直径を450mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法。
- 前記2対の圧下ロールの間に複数の前記サポートロールが配置され、隣接する前記サポートロールの間隔を330mm以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の極厚鋼板用鋳片の連続鋳造方法。
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