JP5835125B2 - 金属光沢を有する金属表面の穿孔方法、この方法で外周面に微細孔が設けられたキャンロール及びその製造方法、並びに該キャンロールを備えたロールツーロール表面処理装置 - Google Patents

金属光沢を有する金属表面の穿孔方法、この方法で外周面に微細孔が設けられたキャンロール及びその製造方法、並びに該キャンロールを備えたロールツーロール表面処理装置 Download PDF

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本発明は、金属光沢を有する金属表面の穿孔方法、この穿孔方法で外周面に微細孔が設けられたキャンロール及びその製造方法、並びに該キャンロールを備えたスパッタリング装置などのロールツーロール表面処理装置に関する。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、耐熱性樹脂フィルム上に配線パターンが形成されたフレキシブル配線基板が用いられている。このフレキシブル配線基板は、耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付耐熱性樹脂フィルムにパターニング処理を施すことによって作製されるが、近年は配線パターンがますます繊細化、高密度化する傾向にあり、これに伴って金属膜付耐熱性樹脂フィルムにはシワ等のない平滑なものが求められている。
この種の金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造方法として、従来から、金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法単独で、又は真空成膜法と湿式めっき法との併用で金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法に用いる真空成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
メタライジング法について、特許文献1には、ポリイミド絶縁層上にクロム層をスパッタリングした後、銅をスパッタリングして導体層を形成する方法が記載されている。また、特許文献2には、銅ニッケル合金をターゲットとするスパッタリングによる第一の金属薄膜と、銅をターゲットとするスパッタリングによる第二の金属薄膜とがポリイミドフィルム上に成膜されたフレキシブル回路基板用材料が開示されている。これらスパッタリング法による成膜は、一般に密着力に優れる反面、真空蒸着法に比べて基材としての耐熱性樹脂フィルムに与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷がかかると、フィルムにシワが発生し易くなることも知られている。
そこで、上記ポリイミドフィルムなどの耐熱性樹脂フィルムに対して真空成膜法により成膜を行って金属膜付耐熱性樹脂フィルムを作製する工程では、キャンロールを備えたスパッタリングウェブコータが一般的に使用されている。この装置は、内部に冷媒を循環させたキャンロールにロールツーロールで搬送される長尺の耐熱性樹脂フィルムを巻き付けながらスパッタリングを行うものであり、表面側の成膜により耐熱性樹脂フィルムに生じる熱を裏面側から直ぐに冷却することができるため、成膜の際の熱負荷の悪影響を抑えることができ、よってシワの発生を効果的に防ぐことができる。
例えば特許文献3には、スパッタリングウェブコータの一例である巻出巻取式(ロールツーロール方式)の真空スパッタリング装置が開示されている。この巻出巻取式の真空スパッタリング装置には、キャンロールの役割を担うクーリングロールが具備されている。更に、クーリングロールの少なくともフィルム送入れ側若しくは送出し側にサブロールが設けられており、これにより耐熱性樹脂フィルムをクーリングロールに密着する制御が行われている。
ところで、非特許文献1に記載されているように、キャンロールの外周面はミクロ的に見て平坦ではないため、キャンロールの外周面と、そこに接触して搬送される耐熱性樹脂フィルムとの間には真空空間を介して離間する隙間(ギャップ部)が存在している。このため、成膜の際に生じる耐熱性樹脂フィルムの熱はキャンロールに効率よく伝熱されているとはいえず、これがフィルムのシワ発生の原因になることがあった。
この問題を解決するため、キャンロールの外周面と耐熱性樹脂フィルムとの間のギャップ部にキャンロール側からガスを導入する技術が提案されている。例えば特許文献4には、キャンロールの外周面に多数の微細な孔を設けてガスを放出させ、これによりギャップ部の熱伝導率を真空に比べて高くして成膜中の耐熱性樹脂フィルムの熱負荷を低減させ、よってシワの発生を効果的に抑制する技術が開示されている。なお、非特許文献2によれば、導入ガスがアルゴンガスで導入ガス圧力が500Paの場合、キャンロールの外周面と耐熱性樹脂フィルムとのギャップ部の距離が約40μm以下の分子流領域では、ギャップ部の熱伝導率(熱コンダクタンス)は250(W/m・K)になる。
特開平2−98994号公報 特許第3447070号公報 特開昭62−247073号公報 国際公開第2005/001157号パンフレット
"Vacuum Heat Transfer Models for Web Substrates: Review of Theory and Experimental Heat Transfer Data," 2000 Society of Vacuum Coaters, 43rd. Annual Technical Conference Proceeding, Denver, April 15‐20, 2000, p.335 "Improvement of Web Condition by the Deposition Drum Design," 2000 Society of Vacuum Coaters, 50th. Annual Technical Conference Proceeding(2007), p.749
上記特許文献4に示すガス放出キャンロールは、シワの発生を抑制すべく、当該キャンロールの外周面と樹脂フィルムとの間のギャップ部にガスを導入して成膜中の樹脂フィルムの熱負荷を低減する手段として非常に有効である。かかるガス放出キャンロールは、例えば図1(a)〜(c)に示す方法で作製することができる。
すなわち、先ず図1(a)の部分拡大斜視図に示すようなシームレスパイプや鋳造パイプなどのロール材100を用意する。その肉厚部に片側若しくは両側からガンドリルを用いて穿孔し、図1(b)に示すようなロール材100の中心軸に対して平行に延在する複数のガス導入路5を、ロール材100の全周に亘って略等間隔に設ける。次に、ロール材100の外周面側からガス導入路5に向かって当該ガス導入路5の延在方向に沿って一定の間隔おきにレーザーを照射する。これにより、図1(c)に示すような、各ガス導入路5に対してその延在方向に沿って外周面側に開口する複数のガス放出孔6が形成される。
ところで、上記レーザー加工によって、ガス放出孔の開口部周辺には蒸発した金属カスが付着することがある。そこで、ガス放出孔をレーザー加工した後に外周面を研磨加工することが行われている。具体的には、図2に示すように、ロール材100にガンドリル加工によりガス導入路5を形成し(ガンドリル加工工程)、次にレーザー加工によって複数のガス放出孔6を形成した後(レーザー穴開け加工工程)、外周面を研磨する(研磨加工工程)。
次に、外周面の平滑性と硬度を上げるため、外周面にハードクロムめっきを施し(ハードクロムめっき工程)、鏡面にするために再度研磨加工を行う(研磨鏡面加工工程)。しかしながら、この工程順では、図3(a)に示すように、ロール材100の外周面に垂直に開口するガス放出孔6の開口部6Aが、ハードクロムめっき101によって閉塞してしまうことがあった。また、図3(b)に示すように、ロール材100の外周面に対して斜め方向に開口するガス放出孔16であっても、当該ガス放出孔16の開口部16Aがハードクロムめっき111により閉塞してしまうことがあった。
金属製のキャンロールの場合、平滑性と硬度を向上させるためには約50μm以上のめっき厚が必要であり、上記したようなハードクロムめっきによるガス放出孔の閉塞あるいは小径化は避けることができなかった。このガス放出孔の小径化が均一であれば、最初に大きめのガス放出孔を加工しておいて、ハードクロムめっきにより均一に小径化させることも考えられるが、キャンロールのような大型の装置をハードクロムめっきする場合は、小物部品のハードクロムめっきとは異なり均一な膜厚でめっきを形成することは極めて困難であり、よって閉塞あるいは小径化の程度を均一にすることは実質的に不可能であった。
めっきによる開口部の閉塞を避けるため、ハードクロムめっきをあらかじめ施してからキャンロールの表面にレーザーでガス放出孔を開口することも考えられる。しかし、ハードクロムめっきが施されていると、特に図3(b)のように外周面に斜め方向に開口させる場合は、レーザーはめっきされた外周面で反射し、ガス放出孔を開けることができなかった。
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、めっきによる金属光沢を有する金属表面をレーザー加工により穿孔する方法を提供することを目的としており、更にはこの穿孔方法をキャンロールの加工に活用してハードクロムめっきされたキャンロールの外周面に細くて均一なガス放出孔を形成する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明が提供する金属光沢を有する金属表面の穿孔方法は、めっきによる金属光沢を有する金属表面をブラスト処理して粗面化する工程と、前記粗面化された金属表面をレーザー加工により貫通孔を穿孔する工程と、前記穿孔された金属表面を研磨して鏡面加工する工程とからなる金属表面の穿孔方法であって、前記レーザー加工の際にレーザーが散乱するように前記ブラスト処理により中心線平均粗さ(Ra)で0.1〜0.3μmに粗面化することを特徴としている。
本発明によれば、めっきによる金属光沢を有する金属表面にレーザーで微細な孔を穿孔することが可能となるので、例えばハードクロムめっきされたキャンロールの外周面のような金属光沢を有する外筒部の肉厚部に細くて均一なガス放出孔を簡易に形成することができる。このようにして作製されたガス放出キャンロールをロールツーロールで搬送される長尺樹脂フィルム基板の表面処理装置に使用することにより、その外周面と長尺樹脂フィルム基板との間に形成されるギャップ部に良好にガスを導入することが可能となる。よって、シワのない高品質の金属膜付耐熱性樹脂フィルムを高い歩留まりで作製することが可能となる。
ガス放出キャンロールの外筒部の作製方法の一具体例を示す部分拡大斜視図である。 ガス放出キャンロールの従来の製造工程を示す斜視図である。 図2の製造方法で形成したガス放出孔の開口部の様子を模式的に示す断面図である。 本発明に係る穿孔方法を用いたガス放出キャンロールの製造工程を示す斜視図である。 ハードクロムめっき表面を精密ブラスト加工した表面の中心線平均粗さと、該表面における波長1.06μmのレーザーの5°正反射率との関係を示すグラフである。 ガス放出キャンロールの外筒部の作製方法の他の具体例を示す部分拡大斜視図である。 図6(c)の円筒部の部分拡大断面正面図である。 ガスロータリージョイントを備えたガス放出キャンロールを示す断面図である。 ロールツーロール方式による長尺樹脂フィルム基板の表面処理装置の一具体例を示す模式図である。 実施例で作製したガス放出孔の開口部の様子を模式的に示す断面図である。
本発明に係る金属光沢を有する金属表面の穿孔方法は、めっきによる金属光沢を有する金属表面をブラスト処理して粗面化する工程と、この粗面化された金属表面をレーザー加工によって穿孔する工程と、この穿孔された金属表面を研磨して鏡面加工する工程とからなる。以下、本発明の穿孔方法を、キャンロールの外周面とそこに巻き付けられる長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部にガスを導入すべく、当該キャンロールの外周面にガス放出孔を形成する場合を例に挙げて説明する。図4に、この本発明の一具体例のガス放出キャンロールの製作方法が各工程に分けて示されている。
具体的に説明すると、先ず熱伝導性と加工性に優れた、好適にはアルミ、銅、ステンレスからなる円筒状のロール材100をキャンロールの外筒部用部材として用意する。このロール材100の肉厚部に、ガンドリル加工によりロール材100の中心軸方向に延在する複数のガス導入路5を全周に亘って等間隔に形成する(ガンドリル加工工程)。なお、加工を容易にするため、ロール材100の回転軸部分に、図4に示すように仮軸200を取り付けてもよい。また、ガス導入路5をロール材100の片側から加工するのが困難な場合は、両側から加工してもよい。
次に、ロール材100の外周部分を円筒切削した上、ロール材100の外周面を研磨加工する(研磨加工工程)。このように外周部分を円筒切削することにより、後述するガス放出孔の深さが浅くなるので、その加工時間を短くすることができる上、細いガス放出孔をより簡単に形成することが可能となる。なお、ガンドリルによる孔開け加工は、肉厚の薄い方向に曲がっていく特性があるので、ロール材100の外周面付近にガス導入路5を開けた場合は、円筒切削する前にロール材100の幅方向略中央部にガス放出孔を開けてガス導入路5の深さを確認するのが望ましい。
次に、外周面の平滑性と硬度を上げるためにハードクロムめっきを施す(ハードクロムめっき工程)。このようにハードクロムめっきを施して外周面の硬度を高めることにより、キャンロールをロールツーロール表面処理装置に使用した時に、当該キャンロールの外周面が搬送される長尺樹脂フィルムとの接触の際に摩耗するのを防ぐことができる。なお、このハードクロムめっきにより成膜されるめっきの膜厚は、後述する粗面化させる工程及び鏡面加工する工程を行っても除去しきれない膜厚、具体的には100μm程度の膜厚にすることが好ましい。
ところで、ハードクロムめっきすることにより表面には金属光沢が生じるが、かかる金属光沢を有する表面にレーザーで加工すると、レーザーは当該表面で反射してレーザー照射のために設けられた光学系を損傷させる恐れがある。そこで、レーザー加工する前に、ハードクロムめっきを施したロール材100の外周面を精密ブラスト加工によって粗くする(精密ブラスト加工工程)。これにより、レーザーを散乱させることができ、光学系の損傷を防止することができる。更に、レーザーの反射が低減して吸収を増加させることができるので、穴開け加工時の効率を向上させることができる。なお、精密ブラスト加工する前にハードクロムめっき表面を研磨加工してもよく、これにより、めっき厚のバラツキを無くすことができ、かつ、精密ブラストも均一に行うことができる。
精密ブラスト加工では、ハードクロムめっき表面を極端に粗くしてしまうと、レーザー穴開け加工後に行う研磨が困難になり、逆に、ハードクロムめっき表面をあまり粗さないと、レーザー穴開け加工の際に上記効果が期待できない。このため、ハードクロムめっき表面の精密ブラスト加工では、中心線平均粗さ(Ra)を0.1〜0.3μmとするのが好ましい。また、精密ブラスト加工工程に使用する研磨剤には、粒径20〜100μmの研磨剤(例えば、株式会社不二製作所製ホワイトアランダム(高純度アルミナ)のブラスト粒番号600〜120)が適している。かかる研磨剤粒径と精密ブラストの加工時間とを適宜調整することにより中心線平均粗さ(Ra)を0.1〜0.3μmに加工することができる。
図5には、ハードクロムめっき表面を精密ブラスト加工したときの中心線平均粗さと、ガス放出孔の加工に用いる波長1.06μmのレーザーにおける5°正反射率との関係が示されている。中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満では、レーザー波長1.06μmにおける5°正反射率が2%を超えるので、反射したレーザーがレーザー照射の光学系を損傷させる恐れがある。一方、中心線平均粗さRaが0.3μmを超えてもレーザー波長1.06μmにおける5°正反射率は変化しないので、0.3μmを超えて粗くする必要は無く、後工程の研磨鏡面加工に必要な手間が増加するので好ましくない。
再度図4に戻ると、精密ブラスト加工工程の次は、ロール材100の外周面側から各ガス導入路5に向かってレーザーを照射し、各ガス導入路5に回転軸方向に沿って開口する複数のガス放出孔6を連通させる(レーザー穴開け加工工程)。複数のガス放出孔6は、図1(c)のように各ガス導入路5に対してその延在方向に1列だけ並ぶように形成してもよいし、膨大な加工時間を要するガンドリル加工で形成するガス導入路5の本数を減らすため、ガス導入路5の延在方向に2列以上が並ぶように形成してもよい。
図6(a)〜(c)には、ガス導入路群の列を2列形成した例が示されている。すなわち、図6(a)に示すロール材200を用意し、その肉厚部に図6(b)に示すように周方向のピッチを上記図1(b)の2倍にしてガンドリルを用いてガス導入路15を形成する。次に、外周面を円筒切削した後、図6(c)に示すように、ガス導入路15の延在方向に沿って一定の間隔ごとに外周面側からガス導入路15に向けてレーザー加工を行う。その際、ガス導入路15が延在する方向に直交する方向からレーザーを照射する。更に、ロール材200の中心軸方向から見たときに、各ガス導入路15の直近における外周面の法線に関して右斜め方向と左斜め方向から好適にはこれらが当該法線に関して線対称となるようにレーザー加工を行う。
これにより、ガス導入路15の紙面左側に等間隔で一列に並ぶガス放出孔群16aと、ガス導入路15の紙面右側に等間隔で一列に並ぶガス放出孔群16bとをガス導入路15に連通させることができ、且つそれらを構成する各ガス放出孔の延在方向をガス導入路15の延在方向に直交させると共に外周面に対して斜めに開けることができる。なお、外周面に対して斜めに開ける角度を適宜調整することによって、円周方向におけるガス放出孔の開口部のピッチを、上記図1(c)の場合と同等にすることができる。
ガス放出孔を外周面に対して斜めに開ける加工は、マイクロドリルでは刃先が入り込ますに非常に難しい。これに対してレーザーであれば、容易に外周面に対して斜めにガス放出孔を開けることが可能である。しかし、図7に示すように、ロール材200の中心軸方向から見たとき、ガス放出孔群16a、16bを構成する各ガス放出孔の延在方向L1とそれが連通するガス導入路15の直近の外周面の法線L2とのなす角度αが60°を超えると、ガス放出孔の開口部の形状が極端に横に広がった楕円に成るばかりか、開口部の周辺部においてガス放出孔の延在方向と外周面とが鋭角に交わる部分がレーザーで溶けてしまい、開口部の孔径が大きくなるので好ましくない。
ガス放出孔の開口部が大きくなると、キャンロールと耐熱性樹脂フィルムとが離間する距離が他の場所に比べて大きくなるので、熱伝導効率が局所的に低下するからである。なお、レーザーによる穿孔には、パルスYAGレーザーなどの公知のレーザーを用いた孔あけ加工機を用いることができる。
再度図4に戻ると、レーザー穴開け加工工程の次は、ロール材100の外周面を研磨鏡面加工して、外周面を中心線平均粗さ(Ra)で0.05μm以下にする(研磨鏡面加工工程)。この中心線平均粗さ(Ra)が0.05μmを超えると、耐熱性樹脂フィルムに傷が付きやすくなる。この研磨鏡面加工は、公知のバーチカル研磨により行うことができる。これによりガス導入路とこれに連通し外周面で開口するガス放出孔を有するキャンロールの外筒部が得られる。この外筒部に内筒部及び側面部を組み込んで2重管構造のジャケットロールとし、更にガスロータリージョイントを取り付けることにより図8に示すガス放出キャンロールが完成する。
すなわち、この図8に示すガス放出キャンロールは、外筒部1と、その内側に同心軸状に設けられて冷媒循環路4を形成する内筒部2と、それらの両端部に取り付けられた側面部3a、3bとからなる2重管構造のジャケットロール構造体であり、その一端部にガスロータリージョイント7を有している。このガス放出キャンロールを、長尺樹脂フィルム基板に対して熱負荷がかかる表面処理を行う装置に装着することによって、長尺樹脂フィルム基板に対する熱的ダメージが抑えられた表面処理が可能となる。
次に、この表面処理装置の例として、図9に示すような、減圧容器内においてロールツーロール方式で連続的に搬送される長尺樹脂フィルムFにスパッタリングにより成膜を行う真空成膜装置を取り上げて具体的に説明する。この成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50は、真空チャンバー51内で巻出ロール52から巻き出された長尺樹脂フィルムFを、前記したガス放出キャンロール56に巻き付けて冷却しながら所定の成膜処理を施した後、巻取ロール64で巻き取るようになっている。
真空チャンバー51内は、図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置が具備されており、これら装置により到達圧力10−4Pa程度まで減圧された後、スパッタリングガスを導入して0.1〜10Pa程度に圧力調整される。このスパッタリングガスにはアルゴンなど公知のガスが使用され、目的に応じて更に酸素などのガスが添加される。真空チャンバー51の形状や材質については、減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく、種々のものを使用することができる。
巻出ロール52からキャンロール56までの搬送経路には、長尺樹脂フィルムFを案内するフリーロール53と、長尺樹脂フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール54が配置されている。また、張力センサロール54から送り出されてキャンロール56に向かう長尺樹脂フィルムFは、キャンロール56の近傍に設けられたモータ駆動のフィードロール55によって、モータで回転駆動されるキャンロール56の周速度に対する調整が行われ、これによりキャンロール56の外周面に長尺樹脂フィルム51を密着させて搬送することができる。
キャンロール56から巻取ロール64までの搬送経路にも、上記と同様に、キャンロール56の周速度に対する調整を行うモータ駆動のフィードロール61、長尺樹脂フィルムFの張力測定を行う張力センサロール62、及び長尺樹脂フィルムFを案内するフリーロール63がこの順に配置されている。
上記巻出ロール52及び巻取ロール64では、パウダークラッチ等によるトルク制御によって、長尺樹脂フィルムFの張力バランスが保たれている。また、キャンロール56の回転と、これに連動して回転するモータ駆動のフィードロール55、61により、巻出ロール52から長尺樹脂フィルムFが巻き出されて巻取ロール64に巻き取られるようになっている。
キャンロール56の外周面に対向する位置には、長尺樹脂フィルムFの搬送経路に沿って板状のマグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60が設けられており、これにより長尺樹脂フィルムFの表面上に金属膜のスパッタリング成膜が施される。なお、板状ターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがあるので、これが問題になる場合には、ノジュールの発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用してもよい。また、成膜装置50で施される熱負荷のかかる処理がスパッタリング処理以外の例えばCVD(化学蒸着)や真空蒸着などの真空成膜処理である場合は、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60に代えて他の真空成膜手段が設けられる。
上記キャンロール56に図8に示すガス放出キャンロールが用いられている。キャンロールの冷媒循環路4には、真空チャンバー51の外部に設けられた冷媒冷却装置(図示せず)との間で冷媒の循環が行われ、これによりキャンロールの外筒部1が温度調節される。また、真空チャンバー51の外部からガス供給ライン8を介して導入されるガスは、ガスロータリージョイント7で各ガス導入路5に分配された後、ガス導入路5に連通する複数のガス放出孔6から外筒部1の外周面と長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部に放出される。
なお、キャンロールの外周面と長尺樹脂フィルム基板とのギャップ部が40μm程度であれば、当該ギャップ部に導入するガスは前述した真空成膜装置が備えるドライポンプなどの真空ポンプで排気可能である。一般的には、ギャップ部に導入するガスをスパッタリング雰囲気のガスと同じにすることによって、スパッタリング雰囲気の汚染を防ぐことができ、この場合、熱伝導も比較的良いアルゴンが特に望ましい。
これらガス導入路5の本数や、複数のガス放出孔6の数は、図9に示すように、長尺樹脂フィルムFがキャンロール56の外周面に巻き付けられる角度範囲A(以降、この角度を抱き角Aと称することもある)、長尺樹脂フィルムFの張力、ガス放出孔からのガスの放出量等に応じて適宜定められる。各ガス放出孔の内径は、キャンロール56の外周面と長尺樹脂フィルムFとの間のギャップ部内に良好にガスを導入できる大きさであれば特に限定されない。しかし、ガス放出孔の内径が1000μmを超えるとその箇所において冷却効率が局所的に低下する原因となるため、一般的には内径30〜1000μm程度が好ましい。
上記のような小さな内径を有するガス放出孔を狭ピッチにして多数配置することが外筒部1の外周面全面に亘って熱伝導性を均一化できるという点において好ましいが、小さな内径のガス放出孔を狭ピッチで多数設ける加工技術は困難を伴うので、現実的には内径100〜500μm程度のガス放出孔を5〜10mmのピッチで配置することが好ましい。
キャンロールの回転により、外筒部1に設けられた複数のガス導入路5の一部が前述した抱き角Aの範囲外に位置したときは、その一部のガス導入路5にはガスを供給しないのが望ましい。従って、ガスロータリージョイント7には、抱き角Aの範囲内に位置しているガス導入路5には真空チャンバー51の外部から供給されるガスを供給し、抱き角Aの範囲外に位置しているガス導入路5には真空チャンバー51の外部から供給されるガスを供給しないような電磁弁や機械式開閉機構などのガス供給制御手段が備わっていることが好ましい。
これにより、ガス供給ライン8から供給されるガスのほとんどをキャンロール56の外周面とそこに巻き付けられる長尺樹脂フィルムFとの間に形成されるギャップ部に導入することができ、長尺樹脂フィルムFが巻き付いていない領域から無駄にガスを放出することがなくなる。よって、当該ギャップ部の間隔をほぼ一定に維持するためのガス流量制御が容易になる上、キャンロール56の外周面と長尺樹脂フィルムFとの間のギャップ部の熱コンダクタンスを抱き角Aの範囲内の全領域に亘って均一にすることが可能となる。
上記した本発明の穿孔方法に従って作製したガス放出キャンロールを備えた成膜装置(スパッタリングウェブコータ)を用いて金属膜をスパッタリング成膜することによって、シワのない高品質の金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムが得られる。例えば、耐熱性樹脂フィルムの表面にNi系合金等からなる膜とCu膜とが積層されたシワのない高品質な金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムを作製することができる。さらに、本発明の穿孔方法に従って作製したガス放出キャンロールを備えた成膜装置では、スパッタリングの熱負荷を低減することができるので、シワが発生しない最大スパッタリング電力を高めることが可能となる。よって、同じ膜厚を得るためのフィルム搬送速度を速くすることができるので、生産性が向上しコストダウンが可能となる。
ここでNi合金等からなる膜はシード層と呼ばれ、Ni−Cr合金又はインコネル、コンズタンタンやモネル等の各種公知の合金を用いることができるが、その組成は金属膜付耐熱性樹脂フィルムの電気絶縁性や耐マイグレーション性等の所望の特性に応じて選択される。スパッタリング成膜で得られる金属膜を更に厚くしたい場合は、湿式めっき法を用いて金属膜を更に積層することができる。なお、湿式めっき法を用いるときは、電気めっき処理のみで金属膜を形成する場合と、一次めっきとしての無電解めっき処理及び二次めっきとしての電解めっき処理等のように湿式めっき法を組み合わせて行う場合とがある。かかる湿式めっき処理には、一般的な湿式めっき法の諸条件を採用することができる。
このようにして得られた金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムに対して、サブトラクティブ法等を用いてパターンニングすることによって、液晶テレビ、携帯電話等に使用されるフレキシブル配線基板が得られる。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば、上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法である。
以上、スパッタリングウエブコータを例に挙げて長尺耐熱性樹脂フィルムにNi-Cr合金やCu等の金属膜を積層する場合について説明したが、本発明の穿孔方法で作製されるキャンロールはかかる金属膜付耐熱性樹脂フィルムの作製の用途に限定されるものでなく、金属膜以外に酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の成膜にも好適に用いることができる。
また、本発明の穿孔方法で作製されるキャンロールは、上述した成膜処理のほか、プラズマ処理やイオンビーム処理にも好適に使用することができる。これらプラズマ処理やイオンビーム処理は、長尺樹脂フィルム基板の表面改質を目的として、真空チャンバー内の減圧雰囲気下で長尺樹脂フィルム基板に熱負荷をかける処理であるため、成膜処理と同様にシワの発生が問題となる。従って、これらの処理装置においても上記ガス放出キャンロールを使用することにより、キャンロールの外周面とそこに巻き付けられる長尺樹脂フィルムとの間のギャップ部の間隔をほぼ一定に維持すると共に、その熱コンダクタンスを容易に均一にすることができるので、シワの発生を抑えることが可能となる。
なお、プラズマ処理とは、例えばアルゴンと酸素の混合ガス又はアルゴンと窒素の混合ガスからなる減圧雰囲気下において放電を行うことにより、酸素プラズマ又は窒素プラズマを発生させて長尺樹脂フィルム基板の表面を処理する方法である。また、イオンビーム処理とは、公知のイオンビーム源を用い、強い磁場を印加した磁場ギャップでプラズマ放電を発生させ、プラズマ中の陽イオンを陽極による電解でイオンビームとして照射することにより、長尺樹脂フィルム基板の表面を処理する方法である。
上記ロールツーロールの表面処理装置で使用される長尺樹脂フィルム基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような樹脂フィルムや、ポリイミドフィルムのような耐熱性樹脂フィルムが挙げられる。特に、金属膜付耐熱性樹脂フィルムに用いる耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルム等が挙げられる。これらの耐熱性樹脂フィルムは、金属膜付フレキシブル基板としての柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性を有する点から好ましい。
[実施例1]
図9に示すような成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50のキャンロール56にガス放出キャンロールを使用し、基板としての長尺樹脂フィルムF上にシード層であるNi−Cr膜を成膜し、その上にCu膜を成膜して金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムを作製した。なお、長尺樹脂フィルムFには、幅500mm、長さ800m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。
ガス放出キャンロールは図4の製造工程に従って作製した。具体的に説明すると、ガス放出キャンロールが完成した時の外筒部の寸法が外径800mm、幅750mmとなるように、ロール材100として外径806mm、厚さ15mmのステンレスのシームレスパイプを用い、その厚み方向の中央部に角度1°毎に360本の直径5mmのガス導入路5をガンドリルにより両端側から形成した。
次に、ロール材100の外周面を深さ3mmだけ円筒切削して、外径800mmに仕上げた。ガンドリルは肉厚が薄い方向に向かって曲がっていく特性があるため、初めからガンドリルによるガス導入路5を外周面付近に開けることは難しい、このため、厚み方向の中央部にガンドリルでガス導入路5を形成した後に外周面を円筒切削した。
次に、バーチカル研磨を行ってから、100μm厚のハードクロムめっきを施し、再度バーチカル研磨を行ってハードクロムめっき厚を60μmまで薄くして、鏡面に仕上げた。この状態での表面粗さは、Ra0.05μmであった。そして、ブラスト粒番号400番(平均粒子径:30±2μm)を用いた精密ブラスト処理により、ロール材100のハードクロムめっき面(鏡面)を表面粗さRa0.15μmにした。
表面を精密ブラスト処理により粗くしたことにより、後述するガス放出孔の加工に用いるレーザー波長1.06μmにおける5°正反射率を2%以下に低下させることができるため、当該レーザー加工でガス放出孔を穿孔する際、レーザーの反射によりレーザー照射光学系が損傷しないようにレーザーを散乱させることができた。また、レーザーの反射が低減するので吸収が増加し、穴開け加工の効率を向上させることがでた。
ガス放出孔6の穿孔には、波長1.06μm、出力100WのパルスYAGレーザーを用いた。図1(c)に示すように、ロール材100の外周面に対して垂直な方向からガス導入路5の中心部に向かうようにレーザヘッドをセットして、ガス導入路5の延在方向に対して7mmピッチでレーザーを照射し、内径200μmのガス放出孔6を穿孔した。ただし、ロール材100の外周面の両端部からそれぞれ20mmの領域にはガス放出孔6を形成しなかった。連通させる各ガス導入路5に直近の外周面に対して垂直方向からガス放出孔6を穿孔したので、ロール材100の円周方向におけるガス放出孔6のピッチも7mmになった。
そして、ハードクロムめっき面に再度バーチカル研磨を行い、ハードクロムめっき厚を50μmまで薄くして、鏡面に仕上げ完成させた。この状態での表面粗さは、Ra0.03μmであった。任意に選んだ100個のガス放出孔6の内径を調べたところ、すべて200μm±20μm以内であり、ほぼ均一なガス放出孔を得ることができた。また、ガス放出孔6の開口部6Aは、図10(a)に示すようにハードクロムめっき101によって閉塞されることなく開口していた。
このようにして得た外筒部に、内筒部等を組み込んで2重筒構造のジャケットロール構造のガス放出キャンロールを完成させ、図9に示す成膜装置50にキャンロール56として取り付けた。この成膜装置では、キャンロール56に長尺樹脂フィルムFを巻き付けて搬送するとき、長尺樹脂フィルムFが接触しない角度(フィルム抱き角A以外の角度)は約30°であり、この角度範囲に存在するガス導入路は15本であった。従って、ガスロータリージョイント7には、ガス導入路にそれぞれ連通する内部流路が抱き角Aの範囲内に位置するか否かに応じて開閉する機構を備えたものを使用した。すなわち、上記角度範囲の約30°に位置するガス導入路にはガスが放出されないようにした。
長尺樹脂フィルムFとしての耐熱性ポリイミドフィルムに、シード層であるNi−Cr膜を成膜してからCu膜を積層して成膜するため、マグネトロンスパッタターゲット57にはNi−Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタターゲット58〜60にはCuターゲットを使用した。また、アルゴンガスを300sccm導入し、各カソードへの印加電力は5kWとした。更に、巻出ロール52と巻取ロール64の張力は80Nとし、ガス放出キャンロール56は冷媒に水を用い20℃に温度制御した。
そして、巻出ロール52に上記耐熱性ポリイミドフィルムをセットし、その先端部をキャンロール56を経由して巻取ロール64に取り付けた。また、真空チャンバー51を複数台のドライポンプで5Paまで排気した後、更に複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10−3Paまで排気した。次に、耐熱性ポリイミドフィルムの搬送速度を4m/分にした後、各マグネトロンスパッタカソードにアルゴンガスを導入して電力を印加し、キャンロール56にはガス放出のためのアルゴンガスを1000sccm導入して、Ni−Cr膜及びその上にCu膜の成膜を開始した。
この成膜の際、マグネトロンスパッタカソードの間に設置したレーザー変位計により、耐熱性ポリイミドフィルムの表面形状を測定したところ、耐熱性ポリイミドフィルムは、キャンロール56の外周面からほぼ均一に約40μm離れていることが確認された。なお、耐熱性ポリイミドフィルムの離れるギャップ量は、耐熱性ポリイミドフィルムの種類や厚さ、フィルム搬送張力、ガス導入量等により異なる。
そして、成膜中におけるキャンロール56上の耐熱性ポリイミドフィルム表面の観察が可能な観察窓から観察しながら、各カソードへの印加電力を徐々に増加していき、スパッタリングの熱負荷によるシワが発生しない最大スパッタリング電力(4台の合計)を調べた結果、80kWであった。次に、ガス放出キャンロール56のアルゴンガス導入を停止して、同様にしてスパッタリングの熱負荷によるシワが発生しない最大スパッタリング電力(4台の合計)を調べた結果、40kWであった。
[実施例2]
外筒部用部材であるロール材200の厚み方向中央部に、角度2°毎に180本の直径5mmのガス導入路15をガンドリルにより両端側から形成し、ガス放出孔は、図6(c)に示すように、各ガス導入路15に対してその延在方向に2列のガス放出孔群16a、16bを形成した以外は実施例1と同様にして外筒部を作製した。
すなわち、ガス導入路15の延在方向に垂直な面上にガス放出孔群16a、16bを構成する各ガス放出孔が延在するように、且つ該面上においてガス導入路15の直近の外周面の法線とのなす角が31°となる右斜め方向と左斜め方向から内径200μmのガス放出孔が延在するようにレーザヘッドをセットして、ガス導入路15の延在方向に対して7mmピッチでレーザーを照射して複数のガス放出孔を形成した。なお、上記法線に対して左右それぞれ31°の角度からガス放出孔を形成したので、円周方向のガス放出孔のピッチも7mmになった。
任意に選んだ100個のガス放出孔の短軸方向(外周面に対して斜めに穿孔したので開口部は楕円形となる)の径を調べてみたところ、すべて200μm±20μm以内であり、ほぼ均一なガス放出孔を得ることができた。また、ガス放出孔群16a、16bを構成する各ガス放出孔16の外周面上の開口部16Aは、図10(b)に示すようにハードクロムめっき201によって閉塞されることなく開口していた。
[比較例1]
比較のため、精密ブラスト処理を行わずガス放出孔をレーザーで加工した以外は実施例1と同様にしてガス放出キャンロールを作製した。ガス放出孔の加工に用いるレーザー波長1.06μmにおける5°正反射率は約70%であった。外周面に対して垂直方向からガス放出孔をレーザーで加工する際、レーザーの反射によりレーザー照射光学系が損傷してしまいガス放出孔を加工することができなかった。
[比較例2]
比較例のため、精密ブラスト処理を行わずガス放出孔をレーザーで加工した以外は実施例2と同様にしてガス放出キャンロールを作製した。ガス放出孔の加工に用いるレーザー波長1.06μmにおける5°正反射率は約70%であった。外周面の法線に対して31°傾斜する角度からガス放出孔をレーザーで加工する際、レーザーの反射によりレーザー照射光学系が損傷してしまいガス放出孔を加工することができなかった。
[比較例3]
図2に示す従来のガス放出キャンロールの製作方法に従って、図1(c)のようにガス放出孔を連通させたガス放出キャンロールを作製した。すなわち、実施例1と同様にしてガンドリル加工及び円筒切削して得た外径800mm、幅750mmの外筒部に対して、そのまま波長1.06μm、出力100WのパルスYAGレーザーを用いてガス放出孔を穿孔した。
このガス放出孔の穿孔工程は、実施例1と同様にした。次に、外筒部に再度バーチカル研磨を行って、表面粗さRa0.05μmまで仕上げた後、80μm厚のハードクロムめっきを施した。そして、バーチカル研磨によりハードクロムめっき厚を50μmまで薄くして、鏡面に仕上げた。この状態での表面粗さは、Ra0.03μmであった。このようにして作製したキャンロールに対して任意に選んだ100個のガス放出孔の内径を調べたところ、ガス放出孔はハードクロムめっきにより埋まってしまっているものもあり、内径は30μm〜220μmであり、非常に不均一なガス放出孔になっていた。
このガス放出キャンロールを実施例1と同様に図9に示す成膜装置50に使用して長尺樹脂フィルムFに成膜した。成膜の際、マグネトロンスパッタカソードの間に設置したレーザー変位計により、耐熱性ポリイミドフィルムの表面形状を測定したところ、耐熱性ポリイミドフィルムは、キャンロール56の外周面から数μm(測定限界以下)〜50μm離れていて、測定位置により大きくばらつていた。この原因はハードクロムめっきで埋まってしまったガス放出孔サイズのばらつきに起因していると考えられる。
そして、成膜中におけるキャンロール上のポリイミドフィルム表面の観察が可能な観察窓から観察しながら、各カソードへの印加電力を徐々に増加していきスパッタリングの熱負荷によるシワが発生しない最大スパッタリング電力(4台の合計)を調べた結果、50kWであった。次に、ガス放出キャンロールのアルゴンガス導入を停止して、同様にしてスパッタリングの熱負荷によるシワが発生しない最大スパッタリング電力(4台の合計)を調べた結果、40kWであった。
実施例1のガス放出キャンロールと比較して、ほとんどスパッタリングの熱負荷の低減効果が現れないのは、ハードクロムめっきで埋まってしまったガス放出孔サイズのばらつきに起因していると考えられる。
[比較例4]
図2に示す従来のガス放出キャンロールの製作方法に従って、図6(c)のようにガス放出孔を連通させたガス放出キャンロールを作製した。すなわち、実施例2と同様にしてガンドリル加工及び円筒切削して得た外径800mm、幅750mmの外筒部に対して、そのまま波長1.06μm、出力100WのパルスYAGレーザーを用いてガス放出孔を穿孔した。
このガス放出孔の穿孔工程は、実施例2と同様にした。次に、外筒部に再度バーチカル研磨を行って、表面粗さRa0.05μmまで仕上げた後、80μm厚のハードクロムめっきを施した。そして、バーチカル研磨によりハードクロムめっき厚を50μmまで薄くして、鏡面に仕上げた。この状態での表面粗さは、Ra0.03μmであった。このようにして作製したキャンロールに対して任意に選んだ100個のガス放出孔の短軸方向(外周面に対して斜めに穿孔したので開口部は楕円形となる)の径を調べたところ、ガス放出孔はハードクロムめっきにより埋まってしまっているものもあり、径は30μm〜220μmであり、非常に不均一なガス放出孔になっていた。
このように、本発明の穿孔方法に従ってキャンロールを作製することにより、均一なガス放出孔を備えたガス放出キャンロールを製作することができ、このガス放出キャンロールを長尺樹脂フィルム基板の表面処理装置に使用することによって、シワのない高品質の金属膜付長尺耐熱性樹脂フィルムが得られた。
1 外筒部
2 内筒部
3a、3b 側面部
4 冷媒循環部
5 ガス導入路
6 ガス放出孔
7 ガスロータリージョイント
8 ガス供給ライン
50 成膜装置
51 真空チャンバー
52 巻出ロール
53、63 フリーロール
54、62 張力センサロール
55、61 フィードロール
56 キャンロール
57、58、59、60 マグネトロンスパッタリングカソード
64 巻取ロール
O 中心軸
F 長尺樹脂フィルム
A 抱き角

Claims (6)

  1. めっきによる金属光沢を有する金属表面をブラスト処理して粗面化する工程と、前記粗面化された金属表面にレーザー加工により貫通孔を穿孔する工程と、前記穿孔された金属表面を研磨して鏡面加工する工程とからなる金属表面の穿孔方法であって、
    前記ブラスト処理における前記粗面化が、前記レーザー加工の際にレーザーが散乱するように中心線平均粗さ(Ra)で0.1〜0.3μmに粗面化することを特徴とする金属光沢を有する金属表面の穿孔方法。
  2. 前記ブラスト処理が、粒径20〜100μmの研磨剤を用いて前記粗面化するものであることを特徴とする、請求項1に記載の金属光沢を有する金属表面の穿孔方法。
  3. 前記金属表面の研磨が、金属表面の中心線平均粗さ(Ra)で0.05μm以下に研磨加工するものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属光沢を有する金属表面の穿孔方法。
  4. 前記めっきの膜厚が、前記粗面化する工程及び前記鏡面加工する工程を行っても除去しきれない膜厚であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属光沢を有する金属表面の穿孔方法。
  5. 前記めっきされた金属光沢を有する金属表面が、硬質クロムめっきにより鏡面化された表面であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属光沢を有する金属表面の穿孔方法。
  6. 表面に硬質クロムめっきが施されたキャンロールの製造方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載の金属光沢を有する金属表面の穿孔方法で外周面に複数の貫通孔を設けることを特徴とするキャンロールの製造方法。
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