JP5833986B2 - ガス分離複合膜、その製造方法、それを用いたガス分離モジュール、及びガス分離装置、並びにガス分離方法 - Google Patents

ガス分離複合膜、その製造方法、それを用いたガス分離モジュール、及びガス分離装置、並びにガス分離方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガス分離複合膜、その製造方法、それを用いたガス分離モジュール、及びガス分離装置、並びにガス分離方法に関する。
高分子化合物からなる素材には、その素材ごとに特有の気体透過性がある。その性質に基づき、特定の高分子化合物から構成された膜によって、所望の気体成分を選択的に透過させて分離することができる。この気体分離膜の産業上の利用態様として、地球温暖化の問題と関連し、火力発電所やセメントプラント、製鉄所高炉等において、大規模な二酸化炭素発生源からこれを分離回収することが検討されている。そして、この膜分離技術は、比較的小さなエネルギーで達成できる環境問題の解決手段として着目されている。一方、天然ガスやバイオガス(生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス)は主としてメタンと二酸化炭素を含む混合ガスであり、その二酸化炭素等の不純物を除去する手段として膜分離方法が検討されている(特許文献1)。
天然ガスの膜分離方法による精製では、膜分離方法に用いる膜の素材としてセルロースやポリイミドが検討されてきた。しかし、実際のプラントにおける高圧条件や天然ガス中に存在する不純物の影響等によって膜が可塑化し、これによる分離選択性の低下が問題となっていた(非特許文献1の313−322頁および非特許文献2、3)。この膜の可塑化を抑制するために、膜を構成する高分子化合物に架橋構造や分岐構造を導入することが有効であることが知られており、ポリイミド樹脂を用いた分離膜においてその研究がなされている(非特許文献1の3−27頁、特許文献2、3)。例えば、特許文献3には、有機−無機ハイブリッド膜としてハイパーブランチポリイミド(Hyperbranched Polyimide)膜が開示されており、このハイパーブランチポリイミド膜の製造では、アミン化合物として3官能性のトリス(4−アミノフェニル)アミン(TAPA)を用いて、分子中に多数の分岐構造を導入している。
特開2007−297605号公報 米国特許第,724,7191号明細書 米国特許出願公開第2010/0326273号明細書
Yuri Yampolskii,Benny Freeman,Membrane Gas Separation,2010,Johns Wiley & Sons Ltd. Industriall & Engineering Chemistry Research,2008,47,2109 Industrial & Engineering Chemistry Research,2002,41,1393
ところで、実用的なガス分離膜とするためには、ガス分離層を薄層にすることで、十分なガス透過性と分離性を確保しなければならない。従来は単一素材を非対称膜とすることで、分離に寄与する部分をスキン層と呼ばれる薄層にして、高いガス透過性と分離選択性、さらには機械強度を満足させることが検討されていた。しかし、これらのすべてを単一素材で実現することは難しい。そのため、分離機能と機械強度を付与するための機能を異なる素材に担わせる複合膜も検討されてきているが、その性能は未だ十分とはいえない。
ガス分離複合膜では、十分なガス透過性を確保するため、分離機能担う膜を上記スキン層と同様に薄膜状に成膜する必要がある。しかし、一般に、機械的強度を満足させるべく合成原料に多官能成分(重合性基を3つ以上有する化合物)を用いて、高分子化合物に多数の多分岐構造を導入すると、ゲル化しやすく、得られる高分子化合物は溶剤に対する溶解性に劣り、塗布成膜性に劣るものとなる。したがって、例えば特許文献3に記載のハイパーブランチポリイミドでは、これを塗布し成膜しても、均一で十分なガス透過性を示す薄膜状に成膜することは困難である。それ故、多数の多分岐構造を有する高分子化合物を用いた分離膜は、ガス透過性能において制約がある。
本発明は、分岐構造を有しながらも溶解性ないし塗布成膜性に優れたポリイミド樹脂を用いたガス分離複合膜であって、機械的強度に優れ、高圧かつ可塑化不純物存在下においても可塑化しにくく、ガス透過性とガス分離選択性の劣化がより抑えられたガス分離複合膜、その製造方法、それを用いたガス分離モジュール、及びガス分離装置、ガス分離方法の提供を課題とする。
上記の点を考慮し、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の多分岐構造を極少量導入した特定構造のポリイミド樹脂が、その合成時にゲル化が生じにくく、溶解性ないし塗布成膜性に優れる一方で、当該ポリイミド樹脂を用いて製造したガス分離膜は、意外なことに可塑化に対しても十分な耐性を有し、ガス透過性とガス分離選択性の劣化がより少ないことを見い出した。本発明は、これらの知見に基づき完成させるに至ったものである。
上記の課題は以下の手段により達成された。
<1>ポリイミド樹脂を含有してなるガス分離層をガス透過性の支持層上側に有するガス分離複合膜であって、
前記ポリイミド樹脂が、式(I)で表される繰り返し単位と、式(II−a)又は(II−b)で表される繰り返し単位と、式(III−a)又は(III−b)で表される繰り返し単位と、式(IV−a)、(IV−b)、(V−a)又は(V−b)で表される3分岐以上の多分岐構造単位とを含み、
前記ポリイミド樹脂中の前記多分岐構造単位のモル数(NA)の、式(I)で表される繰り返し単位のモル数(NB)に対する比(NA/NB)が、0.003/100〜8.000/100である、ガス分離複合膜。
Figure 0005833986
式中、Rは下記式(I−a)〜(I−h)のいずれかで表される構造の基を示す。ここで、Xは単結合又は2価の連結基を、Lは−CH=H−又は−CH−を、R及びRは水素原子又は置換基を示し、*はカルボニル基との結合部位を示す。

Figure 0005833986
Figure 0005833986
式中、Rはアルキル基又はハロゲン原子を示す。R及びRはアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、又は互いに連結してXと共に環を形成する基を示す。l1、m1及びn1は0〜4の整数を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
Figure 0005833986
式中、R、R及びRは置換基を示す。Jは単結合又は2価の連結基を示す。l2、m2及びn2は0〜3の整数を示す。Aは−COOH、−OH、−SH、−S(=O)R’及び−S(=O)OHから選ばれる基を示す。R’はアルキル基を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す
Figure 0005833986
式中、R〜R11は置換基を示す。l3及びm3は0〜3の整数を示す。n3は0〜4の整数を示す。aは0〜3の整数を示し、bは0〜6の整数を示すが、2a+bは3〜6の整数である。Xはa+b価の連結基を示す。
Figure 0005833986
式中、R12及びR13は置換基を示す。l4は0又は1を示す。m4は0〜3の整数を示す。cは0〜3の整数を示し、dは0〜6の整数を示すが、2c+dは3〜6の整数である。Xはc+d価の連結基を示す
<2>分離処理されるガスが二酸化炭素とメタンの混合ガスである場合において、40℃、40気圧における二酸化炭素の透過速度が20GPU超であり、二酸化炭素とメタンとの透過速度比(RCO2/RCH4)が15以上である、<1>に記載のガス分離複合膜。
>前記支持層が、ガス分離層側の多孔質層と、その逆側の不織布層とからなる、<1>又は<2>に記載のガス分離複合膜。
>前記多孔質層の分画分子量が100,000以下である、<3>に記載のガス分離複合膜。
>二酸化炭素及びメタンを含むガスから二酸化炭素を選択的に透過させるために用いられる、<1>〜<>のいずれか1項に記載のガス分離複合膜。
><1>〜<>のいずれか1項に記載のガス分離複合膜を具備するガス分離モジュール。
><>に記載のガス分離モジュールを備えたガス分離装置。
><1>〜<>のいずれか1項に記載のガス分離複合膜を用いて、二酸化炭素及びメタンを含むガスから二酸化炭素を選択的に透過させるガス分離方法。
>下記工程(A)及び(B)を含む方法でポリイミド樹脂を合成し、得られたポリイミド樹脂を用いてガス透過性の支持層上側にガス分離層を形成することを含む、<1>〜<>のいずれか1項に記載のガス分離複合膜の製造方法:
(A)少なくとも式(VI)で表される化合物と、式(VII−a)又は(VII−b)で表される化合物と、式(VIII−a)又は(VIII−b)で表される化合物とを溶媒中に共存させて重合反応を行う工程、及び
(B)重合反応中の反応液と、式(IX−a)、(IX−b)、(X−a)又は(X−b)で表される化合物の少なくとも1種とを混合し、さらに重合反応させる工程。
Figure 0005833986
式中、Rは下記式(I−a)〜(I−h)のいずれかで表される構造の基を示す。ここで、Xは単結合又は2価の連結基を、Lは−CH=H−又は−CH−を、R及びRは水素原子又は置換基を示し、*はカルボニル基との結合部位を示す。
Figure 0005833986
Figure 0005833986
式中、Rはアルキル基又はハロゲン原子を示す。R及びRはアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、又は互いに連結してXと共に環を形成する基を示す。l1、m1及びn1は0〜4の整数を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
Figure 0005833986
式中、R、R及びRは置換基を示す。Jは単結合又は2価の連結基を示す。l2、m2及びn2は0〜3の整数を示す。Aは−COOH、−OH、−SH、−S(=O)R’及び−S(=O)OHから選ばれる基を示す。R’はアルキル基を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
Figure 0005833986
式中、R、R10及びR11は置換基を示す。l3及びm3は0〜3の整数を示す。n3は0〜4の整数を示す。aは0〜3の整数を示し、bは0〜6の整数を示すが、2a+bは3〜6の整数である。Xはa+b価の連結基を示す。
Figure 0005833986
式中、R12及びR13は置換基を示す。l4は0又は1を示す。m4は0〜3の整数を示す。cは0〜3の整数を示し、dは0〜6の整数を示すが、2c+dは3〜6の整数である。Xはc+d価の連結基を示す。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が近接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本明細書において化合物(樹脂を含む)の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、所望の効果を奏する範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。
本明細書において置換基というときには、特に断らない限り、後記置換基群Zをその好ましい範囲とする。
本発明のガス分離複合膜、ガス分離モジュール及びガス分離装置は、ガス分離複合膜においてガス分離機能を担うポリイミド膜が十分に均一で薄く、しかも、このポリイミド膜は機械的強度に優れると共に、高圧かつ可塑化不純物の存在下においても可塑化しにくいために、優れたガス透過性と高いガス分離選択性を示すと同時にその劣化も抑制される。 また、本発明のガス分離複合膜の製造方法によれば、上記性能を発揮するガス分離複合膜を製造することができる。さらに、本発明のガス分離方法によれば、使用するガス分離膜の機械的強度が高く、可塑化しにくいため、長期にわたり、例えば、二酸化炭炭素とメタンを含む混合ガスから二酸化炭素を高い透過性と選択性で透過・分離し続けることができる。
本発明のガス分離複合膜の一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のガス分離複合膜の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
[複合膜]
本発明のガス分離複合膜(以下、「本発明の複合膜」ともいう。)は、ガス透過性の支持層の上側に、特定のポリイミド樹脂を含有してなるガス分離層が形成されている。この複合膜は、多孔質の支持体の少なくとも表面に、上記のガス分離層をなす塗布液(ドープ)を塗布(本明細書において塗布とは浸漬により表面に付着される態様を含む意味である。)することにより形成することが好ましい。
図1は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜10を模式的に示す縦断面図である。1はガス分離層、2は多孔質層からなる支持層である。図2は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜20を模式的に示す断面図である。この実施形態では、ガス分離層1及び多孔質層2に加え、支持層として不織布層3が追加されている。
本明細書において「支持層上側」とは、支持層とガス分離層との間に他の層が介在してもよい意味である。また、上下の表現については、特に断らない限り、分離対象となるガスが供給される方向を「上」とし、分離されたガスが出される方向を「下」とする。
本発明のガス分離複合膜は、多孔質性の支持体(支持層)の表面ないし内面にガス分離層を形成・配置するようにしてもよく、少なくとも表面に形成して簡便に複合膜とすることができる。多孔質性の支持体の少なくとも表面にガス分離層を形成することで、高分離選択性と高ガス透過性、更には機械的強度を兼ね備えるという利点を有する複合膜とすることができる。分離層の膜厚としては機械的強度、分離選択性を維持しつつ高ガス透過性を付与する条件において可能な限り薄膜であることが好ましい。
本発明のガス分離複合膜において、ガス分離層の厚さは特に限定されないが、0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.05〜2.0μmであることがより好ましい。
支持層に好ましく適用される多孔質支持体(多孔質層)は、機械的強度及び高気体透過性の付与に合致する目的のものであれば、特に限定されるものではなく有機、無機どちらの素材であっても構わないが、好ましくは有機高分子の多孔質膜であり、その厚さは1〜3000μm、好ましくは5〜500μmであり、より好ましくは5〜150μmである。この多孔質膜の細孔構造は、通常平均細孔直径が10μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下であり、空孔率は好ましくは20〜90%であり、より好ましくは30〜80%である。また、多孔質層の分画分子量が100,000以下であることが好ましく、さらに、その気体透過率は二酸化炭素透過速度で3×10−5cm(STP)/cm・cm・sec・cmHg(30GPU)以上であることが好ましい。多孔質膜の素材としては、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を挙げることができる。多孔質膜の形状としては、平板状、スパイラル状、管状、中空糸状などいずれの形状をとることもできる。
本発明の複合膜においては、ガス分離層を形成する支持層の下部にさらに機械的強度を付与するために支持体が形成されていることが好ましい。このような支持体としては、織布、不織布、ネット等が挙げられるが、製膜性およびコスト面から不織布が好適に用いられる。不織布としてはポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリアミド等からなる繊維を単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよい。不織布は、例えば、水に均一に分散した主体繊維とバインダー繊維を円網や長網等で抄造し、ドライヤーで乾燥することにより製造できる。また、毛羽を除去したり機械的性質を向上させたり等の目的で、不織布を2本のロール挟んで圧熱加工を施すことも好ましい。
本発明の複合膜は、ガス分離回収法、ガス分離精製法として好適に用いることができる。例えば、水素、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、酸素、窒素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、メタン、エタンなどの炭化水素、プロピレンなどの不飽和炭化水素、テトラフルオロエタンなどのパーフルオロ化合物などのガスを含有する気体混合物から特定の気体を効率よく分離し得るガス分離膜とすることができる。特に二酸化炭素/炭化水素(メタン)を含む気体混合物から二酸化炭素を選択分離するガス分離膜とすることが好ましい。
とりわけ、分離処理されるガスが二酸化炭素とメタンとの混合ガスである場合においては、40℃、40気圧における二酸化炭素の透過速度が20GPU超であることが好ましく、20〜300GPUであることがより好ましい。二酸化炭素とメタンとの透過速度比(RCO2/RCH4)は15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、20〜50であることが特に好ましい。
なお、1GPUは1×10−6cm(STP)/cm・sec・cmHgである。
上記選択的なガス透過には膜への溶解・拡散機構が関与すると考えられる。このような観点を活かし、ポリエチレンオキシ(PEO)組成を含む分離膜が検討されている(Journal of Membrane Science,1999,160,87−99参照)。これは二酸化炭素がポリエチレンオキシ組成との相互作用が強いことに起因する。このポリエチレンオキシ膜はガラス転移温度の低い柔軟なゴム状のポリマー膜であるため、ガス種による拡散係数の差は小さく、分離選択性は溶解度の差の効果によるものが主である。これに対し、本発明の複合膜では、そこに適用されるポリイミド樹脂のガラス転移温度が高く、上記溶解・拡散作用を発揮させながら、膜の熱的な耐久性という観点でも大幅に改善することができる。
<ポリイミド樹脂>
本発明に用いるポリイミド樹脂について以下に詳しく説明する。
本発明に用いるポリイミド樹脂は、より具体的に説明すれば、下記式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、下記式(II−a)又は(II−b)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、下記式(III−a)又は(III−b)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、3分岐以上の多分岐構造単位の少なくとも1種とを含む。
本発明に用いるポリイミド樹脂は、上記各繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むことができるが、そのモル数は、上記各式で表される各繰り返し単位のモル数の和を100としたときに、20以下であることが好ましく、0〜10であることがより好ましい。本発明に用いるポリイミド樹脂は、上記各式で表される各繰り返し単位のみからなることが特に好ましい。
Figure 0005833986
式(I)において、Rは、下記式(1−a)〜(1−h)のいずれかで表される構造の基を示す。下記式(1−a)〜(1−h)において、*は式(I)のカルボニル基との結合部位を示す。式(I)におけるRを母核と呼ぶことがあるが、この母核Rは式(1−a)、(1−b)または(1−d)で表される基であることが好ましく、(1−a)または(1−d)で表される基であることがより好ましく、(1−a)で表される基であることが特に好ましい。
Figure 0005833986
Figure 0005833986
Figure 0005833986
・X、X、X
、X、Xは、単結合又は2価の連結基を示す。当該2価の連結基としては、−C(R−(Rは水素原子又は置換基を示す。Rが置換基の場合、互いに連結して環を形成してもよい)、−O−、−SO−、−C(=O)−、−S−、−NR−(Rは水素原子、アルキレン基(好ましくはメチレン基又はエチレン基)又はアリーレン基(好ましくはフェニレン基))、又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合又は−C(R−がより好ましい。Rが置換基を示すとき、その具体例としては、後記置換基群Zが挙げられ、なかでもアルキル基(好ましい範囲は後記置換基群Zと同義である)が好ましく、ハロゲン原子を置換基として有するアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチルが特に好ましい。なお、本明細書において「互いに連結して環を形成してもよい」というときには、単結合、二重結合等により結合して環状構造を形成するものであってもよく、また、縮合して縮環構造を形成するものであってもよい。
・L
Lは−CH=H−又は−CH−を示し、好ましくは−CH=H−である。
・R、R
、Rは水素原子又は置換基を示す。その置換基としては、下記に示される置換基群Zより選ばれるいずれか1つを用いることができる。RおよびRは互いに結合して環を形成していてもよい。
、Rは水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
・R
はアルキル基又はハロゲン原子を示す。当該アルキル基及びハロゲン原子の好ましいものは、後記置換基群Zで規定したアルキル基及びハロゲン原子の好ましい範囲と同義である。Rの数を示すl1は0〜4の整数であるが、1〜4が好ましく、3〜4がより好ましい。Rはアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
・R、R
、Rはアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、又は互いに連結してXと共に環を形成する基を示す。当該アルキル基及びハロゲン原子の好ましいものは、後記置換基群Zで規定したアルキル基及びハロゲン原子の好ましい範囲と同義である。R、Rが連結した構造に特に制限はないが、単結合、−O−又は−S−が好ましい。R、Rの数を示すm1、n1は0〜4の整数であるが、1〜4が好ましく、3〜4がより好ましい。
、Rはアルキル基である場合、メチル基又はエチル基であることが好ましく、トリフルオロメチルも好ましい。
・R、R、R
、R、Rは置換基を示す。ここでRとRが互いに結合して環を形成してもよい。当該置換基の数を示すl2、m2、n2は0〜4の整数であるが、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
・J
は単結合又は2価の連結基を表す。連結基としては*−COO−**(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基を示し、その好ましい範囲は後記置換基群Zで説明するものと同義である。)、*−SO −**(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基を示し、その好ましい範囲は後記置換基群Zで説明するものと同義である。)、アルキレン基、又はアリーレン基を表す。*はフェニレン基側の結合部位、**はその逆の結合部位を表す。Jは、単結合、メチレン基、フェニレン基であることが好ましく、単結合が特に好ましい。
・A
は−COOH、−OH、−SH、−S(=O)R’及び−S(=O)OHから選ばれる基を示し、R’はアルキル基を示す。当該アルキル基の好ましい範囲は、後記置換基Zで説明するアルキル基の好ましい範囲と同義である。Aは好ましくは−COOH又は−OHである。
前記3分岐以上の多分岐構造単位は、3官能以上のアミン化合物(アミノ基を3つ以上有する化合物)、又は3官能以上の酸無水物(酸無水物構造を3つ以上有する化合物)に由来することが好ましい。当該多分岐構造単位は好ましくは下記式(IV−a)、(IV−b)、(V−a)又は(V−b)で表される少なくとも1種である。
Figure 0005833986
・R、R10、R11
、R10及びR11は水素原子又は置換基を示す。ここでR10とR11が互いに結合して環を形成してもよい。置換基としてはアルキル基、ハロゲン原子、又はヒドロキシル基が好ましく、当該アルキル基及びハロゲン原子の好ましい範囲は後記置換基群Zで規定する好ましい範囲と同義である。R及びR10の数を示すl3及びm3は0〜3の整数を示す。R11の数を示すn3は0〜4の整数を示す。aは0〜3の整数を示し、bは0〜6の整数を示すが、2a+bは3〜6の整数である。2a+bは3〜5の整数が好ましく、より好ましくは3又は4である。
・X
はa+b価の連結基を示す。
Figure 0005833986
・R12、R13
12及びR13は水素原子又は置換基を示す。置換基としてはアルキル基、又はカルボキシル基が好ましく、当該アルキル基の好ましい範囲は後記置換基Zで規定する好ましい範囲と同義である。R12の数を示すl4は0又は1を示す。R13の数を示すm4は0〜3の整数を示す。cは0〜3の整数を示し、dは0〜6の整数を示すが、2c+dは3〜6の整数である。2c+dは3〜5の整数が好ましく、より好ましくは3又は4である。
・X
はc+d価の連結基を示す。
上記連結基X及びXの例としては、下記の構造が挙げられる。下記構造中*は連結部位を示す。
Figure 0005833986
置換基群Z:
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは3〜7員環のヘテロ環基で、芳香族ヘテロ環でも芳香族でないヘテロ環であってもよく、ヘテロ環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。炭素数は0〜30が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は、更に上記置換基群Zより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
なお、本発明において、1つの構造部位に複数の置換基があるときには、それらの置換基は互いに連結して環を形成していたり、上記構造部位の一部又は全部と縮環して芳香族環もしくは不飽和複素環を形成していたりしてもよい。
本発明に用いるポリイミド樹脂中、前記式(I)で表される繰り返し単位のモル数(NB)に対する前記3分岐以上の多分岐構造単位のモル数(NA)の比(NA/NB)は、0.003/100〜8.000/100であり、好ましくは0.005/100〜5.000/100、より好ましくは0.01/100〜3.000/100である。
この場合において、ポリイミド樹脂中の2官能酸無水物(テトラカルボン酸二無水物)に由来する繰り返し単位のすべてが式(I)で表されることが好ましい。
このように、多分岐構造単位の割合を他の構造単位に比して大幅に低くすることで、合成時のゲル化を抑制することができ、溶解性と塗布成膜性に優れたポリイミド樹脂を得ることができる一方で、意外にも、当該ポリイミド樹脂を用いた分離膜は機械的強度に優れると共に、高圧かつ可塑化不純物の存在下においても可塑化が生じにくく劣化が抑制され、さらにガス透過性とガス分離選択性のいずれにも優れる。
本発明に用いうるポリイミド樹脂において、前記式(I)、(II−a)、(II−b)、(III−a)、(III−b)で表される各繰り返し単位の比率は、特に制限されるものではなく、ガス分離の目的(回収率、純度など)に応じガス透過性と分離選択性を考慮して適宜に調整される。
本発明に用いうるポリイミド樹脂中、式(II−a)及び(II−b)の各繰り返し単位の総モル数(EII)に対する式(III−a)及び(III−b)の各繰り返し単位の総モル数(EIII)の比(EII/EIII)は、5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜80/20であることがより好ましく、20/80〜60/40であることがさらに好ましい。
本発明に用いるポリイミド化合物の分子量は、好ましくは重量平均分子量として10000〜1000,000であることが好ましく、より好ましくは15,000〜500,000であり、さらに好ましくは20,000〜200,000である。
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
<ポリイミド樹脂の合成>
本発明に用いるポリイミド樹脂は、特定の2官能酸無水物と、特定の3官能以上の酸無水物と、特定のジアミンと、特定の3官能以上のアミン化合物とを特定の比率(配合しない場合も含む)で用いて縮合重合により合成することができる。その方法としては一般的な書籍(例えば、株式会社エヌ・ティー・エス発行、今井淑夫、横田力男編著、最新ポリイミド〜基礎と応用〜、3〜49頁など)で記載の手法を適宜選択することができる。
本発明に用いうるポリイミド樹脂の合成において、原料とする2官能酸無水物の少なくとも1種は、下記式(VI)で表される。原料とする2官能酸無水物のすべてが下記式(VI)で表されることが好ましい。
Figure 0005833986
式(VI)中、Rは上記式(I)と同義である。
本発明に用いうる2官能酸無水物の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
Figure 0005833986
本発明に用いうるポリイミド樹脂の合成において、原料とするジアミン化合物の少なくとも1種は、下記式(VII−a)又は(VII−b)で表され、少なくとも1種は、下記式(VIII−a)又は(VIII−b)で表される。原料とするジアミン化合物のすべてが下記式下記式(VII−a)、(VII−b)、(VIII−a)及び(VIII−b)のいずれかで表されることが好ましい。
Figure 0005833986
Figure 0005833986
式(VII−a)及び(VII−b)における各符号は、それぞれ前記式(II−a)及び(II−b)と同義である。また、式(VIII−a)及び(VIII−b)における各符号は、それぞれ前記式(III−a)及び(III−b)と同義である。
本発明に用いうるジアミン化合物の具体例としては以下のようなものが挙げられる。
Figure 0005833986
Figure 0005833986
本発明に用いうるポリイミド樹脂の合成において、原料とする3官能以上のアミン化合物の少なくとも1種は、下記式(IX−a)又は(IX−b)で表される。3官能以上のアミン化合物のすべてが下記式(IX−a)又は(IX−b)で表されることが好ましい。
Figure 0005833986
式(IX−a)及び(IX−b)における各符号は、それぞれ前記式(IV−a)及び(IV−b)と同義である。
前記3官能以上のアミン化合物の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
Figure 0005833986
本発明に用いうるポリイミド樹脂の合成において、原料とする3官能以上の酸無水物の少なくとも1種は、下記式(X−a)又は(X−b)で表される。3官能以上の酸無水物のすべてが下記式(X−a)又は(X−b)で表されることが好ましい。
Figure 0005833986
式(X−b)における各符号は、前記式(V−b)と同義である。
前記3官能以上の酸無水物の具体例としては以下のようなものが挙げられる。
Figure 0005833986
本発明に用いうるポリイミド樹脂として好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限るものではない。
Figure 0005833986
Figure 0005833986
前記式(VI)、(VII−a)、(VII−b)、(VIII−a)、(VIII−b)で表されるモノマーとしては、オリゴマー、プレポリマーとしたものを用いてもよい。高分子化合物を得る上での重合体については、ブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体などのいずれの形態を有する共重合体でも良いが、特にブロック共重合体やグラフト共重合体を用いる場合には、粘度、相溶性の観点で好ましい。
本発明に用いるポリイミド樹脂は、上記各原料を混合して、通常の方法で縮合重合させて得ることができる。好ましくは、3分岐以上の多分岐構造を形成するための、3官能以上のアミン化合物又は酸無水物を、重合反応進行中に後添加して得ることが好ましい。こうして得られたポリイミド樹脂を用いると、機械的強度、耐可塑性、ガス透過性、ガス分離選択性により優れた膜が得られうる。
すなわち、本発明においてポリイミド樹脂は、下記工程(A)及び(B)を含む方法で得られたものを好適に用いることができる。
(A)少なくとも前記式(VI)で表される化合物と、前記式(VII−a)又は(VII−b)で表される化合物と、前記式(VIII−a)又は(VIII−b)で表される化合物とを溶媒中に共存させて重合反応を行う工程、及び
(B)重合反応中の反応液と、前記式(IX−a)、(IX−b)、(X−a)又は(X−b)で表される化合物の少なくとも1種とを混合し、さらに重合反応させる工程。
上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系有機溶剤、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系有機溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は反応基質であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、反応中間体であるポリアミック酸、さらに最終生成物であるポリイミド化合物を溶解させることを可能とする範囲で適切に選択されるものであるが、好ましくは、エステル系(好ましくは酢酸ブチル)、脂肪族ケトン(好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル系(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル)、アミド系、含硫黄系(ジメチルスルホキシド、スルホラン)が好ましい。また、これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記工程(A)における重合反応温度に特に制限はなくポリイミド樹脂の合成において通常採用されうる温度を採用することができる。具体的には−40〜60℃であることが好ましく、より好ましくは−30〜50℃である。
また、前記工程(A)において重合反応が開始してから、この反応液と、前記工程(B)において前記式(IX−a)、(IX−b)、(X−a)又は(X−b)で表される化合物の少なくとも1種とを混合するまでの時間に特に制限はないが、10〜120分であることが好ましく、15〜60分であることがより好ましい。
前記工程(B)における重合反応温度に特に制限はないが、−40〜60℃であることが好ましく、より好ましくは−30〜50℃である。
また、前記工程(B)における重合反応時間に特に制限はないが、10〜120分であることが好ましく、15〜60分であることがより好ましい。
上記の重合反応により生成したポリアミック酸を分子内で脱水閉環反応させることによりイミド化することで、ポリイミド樹脂が得られる。脱水閉環させる方法としては、一般的な書籍(例えば、株式会社エヌ・ティー・エス発行,今井淑夫、横田力男編著,最新ポリイミド〜基礎と応用〜,3〜49頁など)に記載の方法を参考とすることができる。例えば、120℃〜200℃に加熱して、副生する水を系外に除去しながら反応させる熱イミド化法や、ピリジンやトリエチルアミン、DBUのような塩基性触媒共存下で、無水酢酸やジシクロヘキシルカルボジイミド、亜リン酸トリフェニルのような脱水縮合剤を用いるいわゆる化学イミド化等の手法が好適に用いられる。
<濃度>
本発明において、ポリイミド樹脂の重合反応液中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総濃度は特に限定されるものではないが、5〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%である。
[ガス分離複合膜の製造方法]
本発明の複合膜の製造方法は、好ましくは、上記ポリイミド樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布してガス分離層を形成することを含む製造方法が好ましい。塗布液中のポリイミド樹脂の含有量は特に限定されないが、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。ポリイミド樹脂の含有量が低すぎると、多孔質支持体上に製膜した際に、容易に下層に浸透してしまうがために分離に寄与する表層に欠陥が生じる可能性が高くなる。また、ポリイミド樹脂の含有量が高すぎると、多孔質支持体上に製膜した際に孔内に高濃度に充填されてしまい、透過性が低くなる可能性がある。本発明のガス分離膜は、分離層のポリマーの分子量、構造、組成さらには溶液粘度を調整することで適切に製造することができる。
<有機溶剤>
塗布液の媒体とする有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの有機溶剤は支持体を浸蝕するなどの悪影響を及ぼさない範囲で適切に選択されるものであるが、好ましくは、エステル系(好ましくは酢酸ブチル)、アルコール系(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール)、脂肪族ケトン(好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル系(エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル)が好ましく、さらに好ましくは脂肪族ケトン系、アルコール系、エーテル系である。またこれらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<その他の成分等>
本発明のガス分離膜には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる
界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤及びその誘導体から適宜選ぶことができる。
高分子分散剤として、具体的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンを用いることも好ましい。
本発明のガス分離膜を形成する条件に特に制限はないが、温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましく、5〜50℃が特に好ましい。
本発明においては、膜を形成時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが望ましい。
[ガス混合物の分離方法]
本発明のガス分離方法では、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に透過させることを含む方法である。ガス分離の際の圧力は10〜100気圧であることが好ましく、20〜70気圧であることがより好ましい。また、ガス分離温度は、−30〜90℃であることが好ましく、15〜70℃であることがさらに好ましい。
[ガス分離モジュール・ガス分離装置]
本発明のガス分離膜は多孔質支持体と組み合わせた複合膜であり、更にはこれを用いてガス分離膜モジュールを調製することができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型などが挙げられる。
また、本発明のガス分離複合膜又はガス分離膜モジュールを用いて、ガスを分離回収又は分離精製させるための手段を有する気体分離装置を得ることができる。本発明のガス分離複合膜は、例えば、特開2007−297605号公報に記載のような吸収液と併用した膜・吸収ハイブリッド法としての気体分離回収装置に適用してもよい。
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に示さない限り質量基準とする。
[合成例]
<ポリマー(P−101)の合成(3官能性アミン化合物の同時添加)>
1Lの三口フラスコにN−メチルピロリドン300ml、6FDA(東京化成工業株式会社製、製品番号:H0771)44.42g(0.1mol)を加え40℃にて溶解させ、窒素気流下で攪拌しているところに、2,3,5,6−テトラメチルフェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製、製品番号:T1457)1.64g(0.01mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(和光純薬工業株式会社製、製品番号:321−55433)13.54g(0.089mol)、トリス(4−アミノフェニル)アミン(東京化成工業株式会社製、製品番号:T2332)0.29g(0.001mol)のN−メチルピロリドン157ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で2.5時間攪拌した後、さらに180℃で3時間攪拌した。その後、反応液にアセトン676.6mLを加え、希釈した。5Lステンレス容器にメタノール1.15L、アセトン230mLを加えて攪拌しているところに、反応液のアセトン希釈液を滴下した。析出したポリマーを吸引ろ過し、60℃で送風乾燥させて52.1gのポリマー(P−101)を得た。
<ポリマー(P−103)の合成(3官能性アミン化合物の後添加)>
1Lの三口フラスコにN−メチルピロリドン300ml、6FDA(東京化成工業株式会社製、製品番号:H0771)44.42g(0.1mol)を加え40℃にて溶解させ、窒素気流下で攪拌しているところに、2,3,5,6−テトラメチルフェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製、製品番号:T1457)4.93g(0.03mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(和光純薬工業株式会社製、製品番号:321−55433)7.76g(0.051mol)のN−メチルピロリドン80ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で0.5時間攪拌した後、トリス(4−アミノフェニル)アミン(東京化成工業株式会社製、製品番号:T2332)1.74g(0.006mol)のN−メチルピロリドン77ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で2.5時間攪拌した後、さらに180℃で3時間攪拌した。その後、反応液にアセトン676.6mLを加え、希釈した。5Lステンレス容器にメタノール1.15L、アセトン230mLを加えて攪拌しているところに、反応液のアセトン希釈液を滴下した。析出したポリマーを吸引ろ過し、60℃で送風乾燥させて51.2gのポリマー(P−103)を得た。
<ポリマー(P−807)の合成(3官能性アミン化合物と3官能性酸無水物の後添加)>
1Lの三口フラスコにN−メチルピロリドン300ml、6FDA(東京化成工業株式会社製、製品番号:H0771)44.42g(0.1mol)を加え40℃にて溶解させ、窒素気流下で攪拌しているところに、2,3,5,6−テトラメチルフェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製、製品番号:T1457)3.44g(0.021mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(和光純薬工業株式会社製、製品番号:321−55433)12.03g(0.079mol)のN−メチルピロリドン80ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で0.5時間攪拌した後、トリス(4−アミノフェニル)アミン(東京化成工業株式会社製、製品番号:T2332)0.9121g(0.003mol)のN−メチルピロリドン77ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。さらに反応液を40℃で0.5時間攪拌した後、メリト酸無水物(Advanced Technology & Industrial Co.,Ltd.、CAS No.:4253−24−1)0.9051g(0.003mol)のN−メチルピロリドン77ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で2.5時間攪拌した後、さらに180℃で3時間攪拌した。その後、反応液にアセトン676.6mLを加え、希釈した。5Lステンレス容器にメタノール1.15L、アセトン230mLを加えて攪拌しているところに、反応液のアセトン希釈液を滴下した。析出したポリマーを吸引ろ過し、60℃で送風乾燥させて54.1gのポリマー(P−807)を得た。
上記合成例に準じて、表2に記載の各ポリマーを合成した。なお、表2中、P−100番台のポリマーの基本骨格はいずれも前記P−100に示す構造を有し、同様に、P−200〜900番台のポリマーの基本骨格は、それぞれ前記P−100〜900に示す構造を有する。各ポリマーに含まれる各構造単位のモル比(共重合比、v〜z)も併せて表2に示した。
[実施例1] 複合膜の作製
30ml褐色バイアル瓶に、ポリマー(P−101)を1.4g、メチルエチルケトン8.6gを混合して30分攪拌したのち、更に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Aldrich社製、製品番号:40,561−2)を28mg加えて、更に30分攪拌した。10cm四方の清浄なガラス板上に、ポリアクリロニトリル多孔質膜(GMT社製)を静置し、アプリケータを用いて前記ポリマー液を多孔質支持膜表面にキャストさせ、複合膜101を得た。ポリマー(P−101)層の厚さは約1μmであり、ポリアクリロニトリル多孔質膜の厚さは不織布を含めて約180μmであった。
なお、これらのポリアクリロニトリル多孔質膜の分画分子量は100,000以下のものを使用した。
[実施例2〜29] 複合膜の作製
前記複合膜101において、ポリマーを表2に記載のとおりに変更することで、表2に示す実施例2〜29の複合膜を作製した。
[比較例1〜6] 複合膜の作製
前記複合膜101において、ポリマーを表2に記載のとおりに変更することで、表2に示す比較例1〜6の複合膜を作製した。
[比較例7] 複合膜の作製
1Lの三口フラスコにN−メチルピロリドン100ml、6FDA(東京化成株式会社製、製品番号:H0771)12.0g(0.027mol)を加えて40℃で溶解させ、窒素気流下で攪拌しているところに、2,4−ジアミノメシチレン(東京化成株式会社製、製品番号:T1275)3.25g(0.0216mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(東京化成株式会社製、製品番号:D0294)0.82g(0.0054mol)のN−メチルピロリドン65ml溶液を30分かけて系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で2.5時間攪拌した後、ピリジン0.64g(0.0081mol)、無水酢酸6.89g(0.068mol)をそれぞれ加えて、さらに80℃で3時間攪拌した。その後、反応液にアセトン150mLを加え、希釈した。5Lステンレス容器にメタノール1.5Lを加えて攪拌しているところに、反応液のアセトン希釈液を滴下した。得られたポリマー結晶を吸引ろ過し、60℃で送風乾燥させて8.3gのポリマー(A)を得た。このポリマー(A)にエチレングリコールを3,5−ジアミノ安息香酸の等量分加えて、米国特許第7,247,191B2号明細書に記載の方法と同様の方法で、ポリアクリロニトリルの多孔質支持膜上に実施例1と同様にアプリケータを用いて架橋複合膜c11を調製した。
Figure 0005833986
[比較例8]
European Polymer Journal,vol33,No.10−12,1717−1721(1997)を参照して、光硬化架橋ポリイミド−ポリフェニレンオキシド(PPO)複合膜c12を作製した。
Figure 0005833986
[比較例9]
米国特許出願公開第2010/0326273A1号明細書に記載の方法と同様の方法で、下記構造のポリマーを合成し、これを用いてセルロース系架橋有機−無機ハイブリッド膜c13を作製した。
Figure 0005833986
[比較例10]
Polymer Bulletin,2005,53,139−146記載の方法と同様の手法を用いて、下記構造のポリマーを合成し、これを用いてハイパーブランチポリイミド架橋有機−無機ハイブリッド膜c14を作製した。
Figure 0005833986
[試験例1] 成膜性の評価
<溶解性の評価>
ガス分離膜の分離層を塗布・成膜する工程においては、低沸点溶剤に対するポリマーの溶解性が重要となる。そこで、塗布・成膜する際に汎用されるメチルエチルケトン(MEK)を用いてポリマーを溶解し、その溶解性を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
A:MEK中のポリマーの濃度を10質量%超としても完全に溶解する。
B:MEK中のポリマーの濃度が2〜10質量%範囲であれば溶解するが、10質量%超であると完全には溶解しない。
C:MEK中のポリマーの濃度を2質量%以上とすると完全には溶解しない。
<膜厚の評価>
ガス分離膜の分離層を薄層に成膜して形成することができれば、高いガス透過性能が得られる。分離層の薄層化の度合を調べるため、ガス分離膜を構成する分離層において、無作為に膜厚測定部位を10箇所選抜し、当該部位において膜厚測定を行い、膜厚分布を評価した。
(評価基準)
A:10箇所の膜厚がいずれも0〜2μmである。
B:上記A評価には該当しないが、10箇所の膜厚がいずれも0〜5μmである。
C:上記A及びBに該当しない。
[試験例2] サンプルエラー率
前記実施例、比較例に記載のガス分離膜を各々50サンプル作製し、その折の水素の透過率を測定し、水素ガス透過率値が1,000,000GPU(1×10cm/cm・sec・cmHg)を越えたサンプルをピンホール有りの膜(サンプルエラー)として判断し、下記式によりサンプルエラー率〔サンプルエラー率=(ピンホール有りの膜数/50)×100〕を求めた。
A:エラー率5%以下
B:エラー率5〜10%未満
C:エラー率10%以上
[試験例3] ガス透過率の測定
<ガス分離性能の評価>
得られた非対称膜あるいは複合膜において、高圧耐性のあるSUS316製ステンレスセル(DENISSEN社製)を用いて、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)の体積比が1:1となるようにマスフローコントローラーを用いて、40℃、ガス供給側の全圧力を40気圧(CO、CHの分圧:20気圧)としてCO、CHのそれぞれのガスの透過性をTCD検知式ガスクロマトグラフィーにより測定した。膜のガス透過性は、ガス透過率(Permeance)としてガス透過速度を算出することにより比較した。ガス透過率(ガス透過速度)の単位はGPU(ジーピーユー)単位〔1GPU=1×10−6cm(STP)/cm・sec・cmHg〕で表した。
<湿熱経時試験>
実施例および比較例において作製したガス分離複合膜を80℃、90%湿度条件下(いすゞ製作所低温恒温恒湿器、水晶)で24時間保存した後、前記と同様にガス分離性能を評価した。
<トルエン暴露試験>
トルエン溶媒を張った蓋のできるガラス製容器内に、100mlビーカーを静置し、さらに実施例および比較例において作製したガス分離複合膜をビーカーの中に入れ、ガラス製の蓋を施し、密閉系とした。その後、40℃条件下で24時間保存した後、前記と同様にガス分離性能を評価した。
[試験例4] 折り曲げ試験
本発明のガス分離膜はモジュール又はエレメントと呼ばれる膜が充填されたパッケージとして使用することが望ましい。ガス分離膜をモジュールとして使用する場合は膜表面積を大きくするために高密度に充填される。平膜ではスパイラル状に折り曲げて充填するため、十分な折曲げ強度が付与されていなければならない。本性能を確認するために得られた複合膜を180度折り曲げては戻す操作を50回実施した後、再度ガス透過率を測定した。
(評価基準)
A:折り曲げ前後においてメタンガスの透過率がほとんど変化しなかった
B:折り曲げ後にメタンガスの透過率が明らかに上昇した。
上記の各試験例の結果を下記表2に示す。
Figure 0005833986
上記表2の結果から、本発明の複合膜は塗布溶剤に対して高い溶解性を有することが分かる。さらに、粘度も低いために、より均一な薄膜が得られた。また、この手法にて得られた膜はピンホールの発生が抑えられており、膜強度にも優れていた。
ポリマーの合成において、3官能以上のモノマーの添加量が多くなると、得られるポリマーが網目状の高分子量となり、若干ゲル化する傾向がある。しかし、3官能以上のモノマーの添加量がある程度多くなっても、当該モノマーを当初から添加するのではなく、二官能モノマー同士にてプレポリマーが形成された後に添加することで、分子量の増加が抑制され、塗布・成膜性がより向上することがわかった(実施例2と3、10と11、15と16、19と20、26と27、28と29を比較)。
また、上記表2の結果から、本発明のガス分離複合膜は高圧条件においても優れたガス透過性とガス分離選択性を示すことがわかる。すなわち、二酸化炭素の選択的な透過性に優れ、二酸化炭素/メタンの分離膜として好適である。さらに、湿熱経時やトルエン共存下での安定性に優れ、長期間にわたって安定した性能を発揮できる。
以上の結果から、本発明のガス分離複合膜により、優れた気体分離方法、ガス分離モジュール、該ガス分離モジュールを備えたガス分離装置およびガス分離複合膜の製造方法を提供することができることが分かった。
1 ガス分離層
2 多孔質層
3 不織布層
10、20 ガス分離複合膜

Claims (9)

  1. ポリイミド樹脂を含有してなるガス分離層をガス透過性の支持層上側に有するガス分離複合膜であって、
    前記ポリイミド樹脂が、式(I)で表される繰り返し単位と、式(II−a)又は(II−b)で表される繰り返し単位と、式(III−a)又は(III−b)で表される繰り返し単位と、式(IV−a)、(IV−b)、(V−a)又は(V−b)で表される3分岐以上の多分岐構造単位とを含み、
    前記ポリイミド樹脂中の前記多分岐構造単位のモル数(NA)の、式(I)で表される繰り返し単位のモル数(NB)に対する比(NA/NB)が、0.003/100〜8.000/100である、ガス分離複合膜。
    Figure 0005833986
    式中、Rは下記式(I−a)〜(I−h)のいずれかで表される構造の基を示す。ここで、Xは単結合又は2価の連結基を、Lは−CH=H−又は−CH−を、R及びRは水素原子又は置換基を示し、*はカルボニル基との結合部位を示す。
    Figure 0005833986
    Figure 0005833986
    式中、Rはアルキル基又はハロゲン原子を示す。R及びRはアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、又は互いに連結してXと共に環を形成する基を示す。l1、m1及びn1は0〜4の整数を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
    Figure 0005833986
    式中、R、R及びRは置換基を示す。Jは単結合又は2価の連結基を示す。l2、m2及びn2は0〜3の整数を示す。Aは−COOH、−OH、−SH、−S(=O)R’及び−S(=O)OHから選ばれる基を示す。R’はアルキル基を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
    Figure 0005833986
    式中、R 〜R 11 は置換基を示す。l3及びm3は0〜3の整数を示す。n3は0〜4の整数を示す。aは0〜3の整数を示し、bは0〜6の整数を示すが、2a+bは3〜6の整数である。X はa+b価の連結基を示す。
    Figure 0005833986
    式中、R 12 及びR 13 は置換基を示す。l4は0又は1を示す。m4は0〜3の整数を示す。cは0〜3の整数を示し、dは0〜6の整数を示すが、2c+dは3〜6の整数である。X はc+d価の連結基を示す。
  2. 分離処理されるガスが二酸化炭素とメタンの混合ガスである場合において、40℃、40気圧における二酸化炭素の透過速度が20GPU超であり、二酸化炭素とメタンとの透過速度比(RCO2/RCH4)が15以上である、請求項に記載のガス分離複合膜。
  3. 前記支持層が、ガス分離層側の多孔質層と、その逆側の不織布層とからなる、請求項1又は2に記載のガス分離複合膜。
  4. 前記多孔質層の分画分子量が100,000以下である、請求項に記載のガス分離複合膜。
  5. 二酸化炭素及びメタンを含むガスから二酸化炭素を選択的に透過させるために用いられる、請求項1〜のいずれか1項に記載のガス分離複合膜。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のガス分離複合膜を具備するガス分離モジュール。
  7. 請求項に記載のガス分離モジュールを備えたガス分離装置。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のガス分離複合膜を用いて、二酸化炭素及びメタンを含むガスから二酸化炭素を選択的に透過させるガス分離方法。
  9. 下記工程(A)及び(B)を含む方法でポリイミド樹脂を合成し、得られたポリイミド樹脂を用いてガス透過性の支持層上側にガス分離層を形成することを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のガス分離複合膜の製造方法:
    (A)少なくとも式(VI)で表される化合物と、式(VII−a)又は(VII−b)で表される化合物と、式(VIII−a)又は(VIII−b)で表される化合物とを溶媒中に共存させて重合反応を行う工程、及び
    (B)重合反応中の反応液と、式(IX−a)、(IX−b)、(X−a)又は(X−b)で表される化合物の少なくとも1種とを混合し、さらに重合反応させる工程。
    Figure 0005833986
    式中、Rは下記式(I−a)〜(I−h)のいずれかで表される構造の基を示す。ここで、Xは単結合又は2価の連結基を、Lは−CH=H−又は−CH−を、R及びRは水素原子又は置換基を示し、*はカルボニル基との結合部位を示す。
    Figure 0005833986
    Figure 0005833986
    式中、Rはアルキル基又はハロゲン原子を示す。R及びRはアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、又は互いに連結してXと共に環を形成する基を示す。l1、m1及びn1は0〜4の整数を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
    Figure 0005833986
    式中、R、R及びRは置換基を示す。Jは単結合又は2価の連結基を示す。l2、m2及びn2は0〜3の整数を示す。Aは−COOH、−OH、−SH、−S(=O)R’及び−S(=O)OHから選ばれる基を示す。R’はアルキル基を示す。Xは単結合又は2価の連結基を示す。
    Figure 0005833986
    式中、R〜R11は置換基を示す。l3及びm3は0〜3の整数を示す。n3は0〜4の整数を示す。aは0〜3の整数を示し、bは0〜6の整数を示すが、2a+bは3〜6の整数である。Xはa+b価の連結基を示す。
    Figure 0005833986
    式中、R12及びR13は置換基を示す。l4は0又は1を示す。m4は0〜3の整数を示す。cは0〜3の整数を示し、dは0〜6の整数を示すが、2c+dは3〜6の整数である。Xはc+d価の連結基を示す。
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