JP2017131856A - ガス分離膜、ガス分離モジュール、ガス分離装置、及びガス分離方法 - Google Patents

ガス分離膜、ガス分離モジュール、ガス分離装置、及びガス分離方法 Download PDF

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祥平 片岡
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Asae Seno
麻慧 妹尾
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壮太郎 猪股
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Abstract

【課題】高圧条件下においても優れたガス透過性と優れたガス分離選択性の両立が可能で、高速、高選択性のガス分離を可能とするガス分離膜、それを用いたガス分離モジュール、ガス分離装置及びガス分離方法の提供。
【解決手段】ポリイミド化合物が下記式(I)又は(II)で表される繰り返し単位を含み、臭素原子及びヨウ素原子の含有量が合計で5質量%以上であるポリイミド化合物を含有してなるガス分離層を有するガス分離膜。
Figure 2017131856

(Xはハロゲン;n及びmは1〜4の整数;Rは水素原子H、又はハロゲン原子以外の置換基;Lは2価の連結基Rは特定構造の母核)
【選択図】図1

Description

本発明は、ガス分離膜、ガス分離モジュール、ガス分離装置、及びガス分離方法に関する。
高分子化合物からなる素材には、その素材ごとに特有の気体透過性がある。その性質に基づき、特定の高分子化合物から構成された膜によって、所望の気体成分を選択的に透過させて分離することができる。この気体分離膜の産業上の利用態様として、地球温暖化の問題と関連し、火力発電所やセメントプラント、製鉄所高炉等において、大規模な二酸化炭素発生源からこれを分離回収することが検討されている。そして、この膜分離技術は、比較的小さなエネルギーで達成できる環境問題の解決手段として着目されている。一方、天然ガスやバイオガス(生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス)は主としてメタンと二酸化炭素を含む混合ガスであり、その二酸化炭素等の不純物を除去してメタンガスを回収する手段として膜分離方法が検討されている。
膜分離方法を用いた天然ガスの精製では、より効率的にガスを分離するために、優れたガス透過性とガス分離選択性が求められる。これを実現するために種々の膜素材が検討されており、その一環としてポリイミド化合物を用いたガス分離膜の検討が行われてきた。例えば、特許文献1には、ハロゲン原子等の極性基を有するポリイミド化合物を架橋してなる架橋ポリイミド樹脂が成膜特性に優れ、この樹脂を、ガス分離複合膜のガス分離層として用いることにより、ガス透過性とガス分離選択性が良好で、耐久性にも優れたガス分離複合膜が得られたことが記載されている。
実用的なガス分離膜とするためには、ガス分離層を薄層にして十分なガス透過性を確保した上で、さらに高度なガス分離選択性も実現しなければならない。ガス分離層を薄層化する手法としては、ポリイミド化合物等の高分子化合物を相分離法により非対称膜とし、分離に寄与する部分を緻密層あるいはスキン層と呼ばれる薄層にする方法がある。この非対称膜では、緻密層以外の部分を膜の機械的強度を担う支持層として機能させる。
また、上記非対称膜の他に、ガス分離機能を担うガス分離層と機械強度を担う支持層とを別素材とし、ガス透過性の支持層上に、ガス分離能を有するガス分離層を薄層に形成する複合膜の形態も知られている。
特開2013−46903号公報
一般に、ガス透過性とガス分離選択性は互いにいわゆるトレードオフの関係にある。したがって、ガス分離層に用いるポリイミド化合物の共重合成分を調整することにより、ガス分離層のガス透過性あるいはガス分離選択性のいずれかを改善することはできても、両特性を高いレベルで両立するのは困難とされる。
また、天然ガス中にはメタンガスの他、プロパン、トルエン等、種々の高次炭化水素ガスが存在する。したがって、ガス分離膜にはメタンの分離性能だけでなく、炭化水素ガス全般について効率的に分離できる性能が求められるようになってきている。
本発明は、高圧条件下においても優れたガス透過性と優れたガス分離選択性の両立を高度なレベルで実現することができ、高速、高選択性のガス分離を可能とするガス分離膜を提供することを課題とする。特に本発明は、炭化水素ガスと二酸化炭素とを含む混合ガスから、炭化水素ガスを高効率に分離、回収することを可能とするガス分離膜を提供することを課題とする。また本発明は、上記ガス分離膜を用いたガス分離モジュール、ガス分離装置、及びガス分離方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ポリイミド化合物のジアミン成分として臭素原子及び/又はヨウ素原子を置換基として有する特定の構造を採用し、これによりポリイミド化合物中に組み込まれた臭素原子とヨウ素原子の含有量の合計を特定量以上に高め、かかるポリイミド化合物をガス分離膜のガス分離層として用いた場合に、このガス分離膜のガス透過性を大きく高めることができ、且つ、高圧条件下でも優れたガス分離選択性を示すことを見い出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ね完成させるに至ったものである。
上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
ポリイミド化合物を含有してなるガス分離層を有するガス分離膜であって、
上記ポリイミド化合物が下記式(I)又は(II)で表される繰り返し単位を含み、上記ポリイミド化合物中、このポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量が合計で5質量%以上である、ガス分離膜。
Figure 2017131856

式(I)及び(II)中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を示し、n及びmは1〜4の整数である。Rは水素原子を示すか、又はハロゲン原子以外の置換基を示す。Lは2価の連結基を示す。Rは下記式(I−1)〜(I−28)のいずれかで表される4価の基を示す。ここでX〜Xは単結合又は2価の連結基を、Lは−CH=CH−又は−CH−を、R及びRは水素原子又は置換基を示し、*は連結部位を示す。
Figure 2017131856
〔2〕
上記式(I)で表される繰り返し単位が下記式(III)で表される繰り返し単位であり、上記式(II)で表される繰り返し単位が下記式(IV)で表される繰り返し単位である、〔1〕に記載のガス分離膜。
Figure 2017131856
式(III)及び(IV)中、X、R、L及びRは、それぞれ上記式(II)におけるX、R、L及びRと同義である。n及びmは1〜3の整数を示す。
〔3〕
上記ポリイミド化合物中、このポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量が合計で10質量%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載のガス分離膜。
〔4〕
上記ポリイミド化合物が下記式(V)で表される繰り返し単位を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のガス分離膜。
Figure 2017131856
式(V)中、Lは単結合又は2価の連結基を示す。kは2以上の整数である。Lは(k+1)価の連結基を示す。
〔5〕
上記ガス分離膜が、上記ガス分離層をガス透過性の支持層上側に有するガス分離複合膜である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のガス分離膜。
〔6〕
上記支持層が、ガス分離層側の多孔質層と、その逆側の不織布層とからなる、〔5〕に記載のガス分離膜。
〔7〕
二酸化炭素及び炭化水素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に透過させるために用いられる、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のガス分離膜。
〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のガス分離膜を具備するガス分離モジュール。
〔9〕
〔8〕に記載のガス分離モジュールを備えたガス分離装置。
〔10〕
〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のガス分離膜を用いたガス分離方法。
本明細書において「〜」で表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、式中に同一の表示で表された複数の部分構造の繰り返しがある場合は、各部分構造ないし繰り返し単位は同一でも異なっていてもよい。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が近接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本明細書において化合物ないし基の表示については、化合物ないし基そのもののほか、それらの塩、それらのイオンを含む意味に用いる。また、目的の効果を奏する範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。
本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、所望の効果を奏する範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。
本明細書において置換基というときには、特に断らない限り、後記置換基群Zをその好ましい範囲とする。
本発明のガス分離膜、ガス分離モジュール及びガス分離装置は、優れたガス透過性と優れたガス分離選択性の両立を高度なレベルで実現することができ、高速、高選択性のガス分離を可能とする。例えば、本発明のガス分離膜、ガス分離モジュール及びガス分離装置は、種々の炭化水素ガスと二酸化炭素とを含む混合ガスから、炭化水素ガスを優れた分離選択性で、高効率に分離することができる。
本発明のガス分離方法によれば、高圧条件下においても、優れたガス透過性で、且つ、優れたガス分離選択性でガスを分離することができ、高速、高選択性のガス分離が可能となる。
本発明のガス分離複合膜の一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のガス分離複合膜の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明のガス分離膜は、ガス分離層に特定のポリイミド化合物を含む。
[ポリイミド化合物]
本発明に用いるポリイミド化合物は、下記式(I)又は(II)で表される繰り返し単位を含む。すなわち本発明に用いるポリイミド化合物は、下記式(I)で表される繰り返し単位及び/又は下記式(II)で表される繰り返し単位を含む。本発明に用いるポリイミド化合物中(このポリイミド化合物を100質量%としたとき)、このポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量は、合計で5質量%以上である。
Figure 2017131856
式(I)及び(II)中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を示す。安定性の観点からXは臭素原子が好ましい。Xの数を示すn及びmは1〜4の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。
式(I)及び(II)中、Rは水素原子であるか、又は、ハロゲン原子以外の置換基を示す。このハロゲン原子以外の置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、アルキル基はその鎖中にヘテロ原子(好ましくは酸素原子又は硫黄原子)を有していてもよい。好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。);カルボキシ基;ヒドロキシ基;アルキルアミノ基(ジアルキルアミノ基を含む。以下同様。好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキルアミノ基であり、なかでも炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10のジアルキルアミノ基であることが好ましい。アルキルアミノ基のアルキル基はその鎖中にヘテロ原子(好ましくは酸素原子又は硫黄原子)を有していてもよい。また、ジアルキルアミノ基の2つのアルキル基は互いに連結して環を形成してもよい。好ましい例として、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基が挙げられる。);アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールアミノ基であり、ジアリールアミノ基であることも好ましい。好ましい例としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。);アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜15、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、ジアシルアミノ基であることも好ましい。好ましい例としては、アセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基が挙げられる。);アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基であり、好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。);アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルキルチオ基であり、好ましい例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基が挙げられる。);アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数2〜5のアシルオキシ基であり、好ましい例としては、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基が挙げられる。);アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基であり、好ましい例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。);イミダゾール基;トリアゾール基;テトラゾール基;シアノ基;スルホ基;スルファモイル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、更に好ましくは炭素数1〜3のスルファモイル基であり、さらに好ましくは−SONHである。);アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルキルスルホニル基であり、好ましい例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が挙げられる。);カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、更に好ましくは炭素数1〜3のカルバモイル基であり、さらに好ましくは−C(=O)NHである。);及びメルカプト基が挙げられる。
なかでもRは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基又はメルカプト基であることが好ましい。
式(II)中、Lは2価の連結基を示す。Lとして採り得る2価の連結基の好ましい例として、アルキレン基(直鎖でも分岐を有していてもよい。このアルキレン基の好ましい炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基、さらに好ましくはフェニレン基)、カルボニル基、スルホニル基、−O−、−S−もしくは−NR−(Rは水素原子又は置換基を示し、この置換基の好ましい例としてはアルキル基、アシル基及びアリール基が挙げられる。)、又はこれらの基を組合せてなる2価の連結基を挙げることができる。
なかでもLはアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基又は−O−が好ましく、アルキレン基又は−O−がより好ましい。
なお、Lが2価の連結基ではなく単結合の形態であると、ガス透過性を所望のレベルまで高めることが難しくなる。その理由は定かではないが、分子の平面性が高まり、ポリマーの密度が高まってしまっていることがその一因と推定される。
式(I)及び(II)中、Rは下記式(I−1)〜(I−28)のいずれかで表される構造の基を示す。*は式(I)又は(II)中のカルボニル基との結合部位を示す。Rは式(I−1)、(I−2)又は(I−4)で表される基であることが好ましく、(I−1)又は(I−4)で表される基であることがより好ましく、(I−1)で表される基であることが特に好ましい。
Figure 2017131856
上記式(I−1)、(I−9)及び(I−18)中、X〜Xは、単結合又は2価の連結基を示す。この2価の連結基としては、−C(R−(Rは水素原子又は置換基を示す。Rが置換基の場合、互いに連結して環を形成してもよい)、−O−、−SO−、−C(=O)−、−S−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基(好ましくはメチル基又はエチル基)又はアリール基(好ましくはフェニル基))、−C−(フェニレン基)、又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合又は−C(R−がより好ましい。Rが置換基を示すとき、その具体例としては、後記置換基群Zから選ばれる基が挙げられ、なかでもアルキル基(好ましい範囲は後記置換基群Zに示されたアルキル基と同義である)が好ましく、ハロゲン原子を置換基として有するアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチルが特に好ましい。なお、式(I−18)は、Xが、その左側に記載された2つの炭素原子のいずれか一方、及び、その右側に記載された2つの炭素原子のうちいずれか一方と連結していることを意味する。
上記式(I−4)、(I−15)、(I−17)、(I−20)、(I−21)及び(I−23)中、Lは−CH=CH−又は−CH−を示す。
上記式(I−7)中、R及びRは水素原子又は置換基を示す。かかる置換基としては、後述する置換基群Zから選ばれる基が挙げられる。R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。
及びRは水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
式(I−1)〜(I−28)中に示された炭素原子はさらに置換基を有していてもよい。この置換基の具体例としては、後記置換基群Zから選ばれる基が挙げられ、なかでもアルキル基又はアリール基が好ましい。
式(I)中に示されたフェニレン基(ジアミン成分を構成するフェニレン基)がポリイミド鎖中に組み込まれるための2つ連結部位は、互いにメタ位又はパラ位の位置関係にあることが好ましく、互いにメタ位の位置関係にあることがより好ましい。
また、式(II)中に示された2つのフェニレン基(ジアミン成分を構成する2つのフェニレン基)がポリイミド鎖中に組み込まれるための2つの連結部位は、Lの連結部位に対してメタ位又はパラ位が好ましく、メタ位がより好ましい。
上記式(I)で表される繰り返し単位は、下記式(III)で表されることが好ましい。また、上記式(II)で表される繰り返し単位は、下記式(IV)で表されることが好ましい。
Figure 2017131856
式(III)及び(IV)中、X、R、L及びRは、それぞれ上記式(II)において説明したX、R、L及びRと同義である。n及びmは1〜3の整数を示す。
式(III)中に示されたフェニレン基(ジアミン成分を構成するフェニレン基)がポリイミド鎖中に組み込まれるための2つ連結部位は、互いにメタ位又はパラ位の位置関係にあることが好ましく、互いにメタ位の位置関係にあることがより好ましい。
また、式(IV)中に示された2つのフェニレン基(ジアミン成分を構成する2つのフェニレン基)がポリイミド鎖中に組み込まれるための2つの連結部位は、Lの連結部位に対してメタ位又はパラ位が好ましく、メタ位がより好ましい。
本発明に用いるポリイミド化合物中、このポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量(すなわちポリイミド化合物中に置換基として組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量)は、上述の通り合計で5質量%以上である。ポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量を5質量%以上とすることにより、例えば、炭化水素と二酸化炭素を含む混合ガスを分離対象とした場合に、ガス透過性を大きく高めることができ、且つ優れたガス分離選択性も実現することができる。この理由は定かではないが、a)重元素である臭素原子ないしヨウ素原子を置換基として一定量以上含有することにより、適度な立体障害が生じてガス透過性が向上すること、b)芳香族環にハロゲン原子である臭素原子ないしヨウ素原子が置換基として存在することにより電荷移動相互作用が抑制され、ガス透過率が向上すること、c)臭素原子ないしヨウ素原子の極性によりポリマーの運動性が低下し、分離選択性も良化しうること、等がその原因と推定される。
本発明に用いるポリイミド化合物中、このポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量は10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
また、本発明に用いるポリイミド化合物中、このポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量の上限は、50質量%以下とするのが実際的であり、40質量%以下とするのがより好ましい。
ポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量は、高温で灰化処理した後、イオンクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明に用いるポリイミド化合物は、上記式(I)の繰り返し単位及び/又は上記式(II)の繰り返し単位の加え、下記式(V)で表される繰り返し単位を含むことも好ましい。ポリイミド化合物が下記(V)で表される繰り返し単位を含むことにより、ガス分離層を形成する際の成膜性が向上しうる。
Figure 2017131856
式(V)中、Rは上記式(I)におけるRと同義であり、好ましい形態も同じである。
式(V)中、Lは単結合又は2価の連結基を示す。ここで、式(V)中に示されたすべてのLは同じ構造を採る。Lはアリーレン基(好ましくはフェニレン基又はナフチレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。)、ヘテロアリーレン基(好ましくは5員環又は6員環のヘテロアリーレン基である。)又はアルキレン基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基である。)であることが好ましく、アリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。
kは2以上の整数であり、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜4がさらに好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。
は(k+1)価の連結基である。Lはその分子量が10〜1000が好ましく、10〜600がより好ましい。
の構造とLの構造の好ましい組み合わせを以下に示す。なお、「L−L−(L−)」の構造によってはLが単結合として解釈でき、且つ、2価の連結基としても解釈できる構造がある。この場合、Lは2価の連結基として解釈するものとする。すなわち、Lは採り得る構造のうち最も分子量の大きな構造とする。下記式中、*は連結部位を示す。
Figure 2017131856
本発明に用いるポリイミド化合物は、上記式(I)で表される繰り返し単位に加えて、あるいは上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(V)で表される繰り返し単位に加えて、下記式(1−a)又は(1−b)で表される繰り返し単位を有してもよい。
Figure 2017131856
Figure 2017131856
上記式(1−a)及び(1−b)中、Rは式(I)中のRと同義であり、好ましい形態も同じである。R〜Rは臭素原子以外で且つヨウ素原子以外の置換基を示す。かかる置換基としては、後述する置換基群Zから選ばれる基のうち、臭素原子とヨウ素原子を除いた基が挙げられる。
はアルキル基又はカルボキシ基であることが好ましい。Rの数を示すp1は0〜4の整数である。Rがアルキル基の場合、p1は1〜4であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、より好ましくは3又は4である。Rがカルボキシ基の場合、p1は1〜2であることが好ましく、より好ましくは1である。Rがアルキル基である場合、このアルキル基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル又はトリフルオロメチルである。
式(1−a)において、ジアミン成分(すなわちRを有しうるフェニレン基)のポリイミド化合物に組み込まれるための2つの連結部位は、互いにメタ位又はパラ位に位置することが好ましく、互いにパラ位に位置することがより好ましい。
及びRはアルキル基を示すか、又は互いに連結してXと共に環を形成する基を示すことが好ましい。また、2つのRが連結して環を形成している形態や、2つのRが連結して環を形成している形態も好ましい。RとRが連結した構造に特に制限はないが、単結合、−O−又は−S−が好ましい。R及びRの数を示すr1及びq1は0〜4の整数であるが、1〜4であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、より好ましくは3又は4である。R及びRがアルキル基である場合、このアルキル基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル又はトリフルオロメチルである。
は上記式(I−1)におけるXと同義であり、好ましい形態も同じである。
本発明にもちいるポリイミド化合物は、その構造中、上記式(I)で表される繰り返し単位と、上記式(II)で表される繰り返し単位と、上記式(V)で表される繰り返し単位と、上記式(1−a)で表される繰り返し単位と、上記式(1−b)で表される繰り返し単位の総モル量中に占める、式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位のモル量の合計の割合が10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%がより好ましく、50〜100モル%がより好ましく、70〜100モル%がさらに好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、90〜100モル%が特に好ましい。なお、上記式(I)で表される繰り返し単位と、上記式(II)で表される繰り返し単位と、上記式(V)で表される繰り返し単位と、上記式(1−a)で表される繰り返し単位と、上記式(1−b)で表される繰り返し単位の総モル量中に占める、式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位のモル量の合計の割合が100モル%であるとは、ポリイミド化合物が、上記式(V)で表される繰り返し単位と、上記式(1−a)で表される繰り返し単位と、上記式(1−b)で表される繰り返し単位のいずれも有しないことを意味する。
本発明に用いるポリイミド化合物は、上記式(I)で表される繰り返し単位及び/もしくは上記式(II)で表される繰り返し単位からなるか、又は、上記式(I)で表される繰り返し単位以外で且つ上記式(II)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有する場合には、上記式(I)で表される繰り返し単位以外で且つ上記式(II)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位が、上記式(V)、上記式(1−a)又は上記式(1−b)で表される繰り返し単位の少なくとも1種からなることが好ましい。
置換基群Z:
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは3〜7員環のヘテロ環基で、芳香族ヘテロ環でも芳香族でないヘテロ環であってもよく、ヘテロ環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。炭素数は0〜30が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は、更に上記置換基群Zより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
なお、本発明において、1つの構造部位に複数の置換基があるときには、それらの置換基は互いに連結して環を形成していたり、上記構造部位の一部又は全部と縮環して芳香族環もしくは不飽和複素環を形成していたりしてもよい。
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
本明細書において、単に置換基としてしか記載されていないものは、特に断わりのない限りこの置換基群Zを参照するものであり、また、各々の基の名称が記載されているだけのとき(例えば、「アルキル基」と記載されているだけのとき)は、この置換基群Zの対応する基における好ましい範囲、具体例が適用される。
本発明に用いるポリイミド化合物の分子量は、重量平均分子量として10,000〜1000,000であることが好ましく、より好ましくは15,000〜500,000であり、さらに好ましくは20,000〜200,000である。
本明細書において分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
〔ポリイミド化合物の合成〕
本発明に用いるポリイミド化合物は、特定構造の2官能酸無水物(テトラカルボン酸二無水物)と特定構造のジアミン化合物(ここでいう「ジアミン化合物」は、アミノ基を3つ以上有する多価アミン化合物を含む意味である。)とを縮合重合させることで合成することができる。その方法としては一般的な成書(例えば、今井淑夫、横田力男編著、「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」、株式会社エヌ・ティー・エス、2010年8月25日、p.3〜49、など)に記載の手法を適宜参照して実施することができる。
本発明に用いるポリイミド化合物の合成において、一方の原料であるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種は、下記式(VI)で表される。原料とするテトラカルボン酸二無水物のすべてが下記式(VI)で表されることが好ましい。
Figure 2017131856
式(VI)中、Rは上記式(I)におけるRと同義であり、好ましい形態も同じである。
本発明に用いうるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
Figure 2017131856
Figure 2017131856
本発明に用いうるポリイミド化合物の合成において、他方の原料であるジアミン化合物の少なくとも1種は、下記式(VII)又は(VIII)で表される。
Figure 2017131856
式(VII)及び(VIII)中、X、R、L、n及びmは、それぞれ上記式(I)ないし(II)において説明したX、R、L、n及びmと同義であり、好ましい形態も同じである。
上記式(VII)で表されるジアミン化合物は、下記式(IX)で表されることが好ましい。また、上記式(VIII)で表されるジアミン化合物は、下記式(XI)で表されることが好ましい。
Figure 2017131856
式(IX)及び(XI)中、X、R、L、n及びmは、それぞれ上記式(III)ないし(IV)において説明したX、R、L、n及びmと同義であり、好ましい形態も同じである。
式(VII)又は(VIII)で表されるジアミン化合物の好ましい具体例としては、例えば下記に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2017131856
Figure 2017131856
また、本発明に用いうるポリイミド化合物の合成において、原料とするジアミン化合物として、上記式(VII)で表されるジアミン化合物及び/又は上記式(VIII)で表されるジアミン化合物に加えて、下記式(XII)で表される多価アミン化合物を用いてもよい。
Figure 2017131856
上記式(XII)中、L、L及びkは、それぞれ上記式(V)におけるL、L及びkと同義であり、好ましい形態も同じである。
上記式(XII)で表される多価アミン化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2017131856
また、本発明に用いうるポリイミド化合物の合成において、原料とするジアミン化合物として、上記式(VII)又は(VIII)で表されるジアミン化合物に加えて、あるいは上記式(VII)又は(VIII)で表されるジアミン化合物と上記式(XII)で表される多価アミン化合物に加えて、下記式(2−a)又は下記式(2−b)で表されるジアミン化合物を用いてもよい。
Figure 2017131856
Figure 2017131856
式(2−a)中、R及びp1は、それぞれ上記式(1−a)におけるR及びp1と同義であり、好ましい形態も同じである。
式(2−b)中、R、R、X、r1及びq1は、それぞれ上記式(1−b)におけるR、R、X、r1及びq1と同義であり、好ましい形態も同じである。
式(2−a)又は(2−b)で表されるジアミンとして、例えば下記に示すものを用いることができる。
Figure 2017131856
Figure 2017131856
上記式(VI)で表されるモノマーと、上記式(VII)、(VIII)、(2−a)又は(2−b)で表されるモノマーは、予めオリゴマー又はプレポリマーとして用いてもよい。本発明に用いるポリイミド化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
本発明に用いるポリイミド化合物は、上記各原料を溶媒中に混合して、上記のように通常の方法で縮合重合させて得ることができる。
上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系有機溶剤、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系有機溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は反応基質であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、反応中間体であるポリアミック酸、さらに最終生成物であるポリイミド化合物を溶解させることを可能とする範囲で適切に選択されるものであるが、好ましくは、エステル系(好ましくは酢酸ブチル)、脂肪族ケトン(好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル系(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル)、アミド系(好ましくはN−メチルピロリドン)、含硫黄系(ジメチルスルホキシド、スルホラン)が好ましい。また、これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合反応温度に特に制限はなくポリイミド化合物の合成において通常採用されうる温度を採用することができる。具体的には−40〜60℃であることが好ましく、より好ましくは−30〜50℃である。
上記の重合反応により生成したポリアミック酸を分子内で脱水閉環反応させることによりイミド化することで、ポリイミド化合物が得られる。脱水閉環させる方法としては、一般的な成書(例えば、今井淑夫、横田力男編著、「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」、株式会社エヌ・ティー・エス、2010年8月25日、p.3〜49、など)に記載の方法を参考とすることができる。例えば、120℃〜200℃に加熱して、副生する水を系外に除去しながら反応させる熱イミド化法や、ピリジンやトリエチルアミン、DBUのような塩基性触媒共存下で、無水酢酸やジシクロヘキシルカルボジイミド、亜リン酸トリフェニルのような脱水縮合剤を用いるいわゆる化学イミド化等の手法が好適に用いられる。
本発明において、ポリイミド化合物の重合反応液中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総濃度は特に限定されるものではないが、5〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%である。
[ガス分離膜]
〔ガス分離複合膜〕
本発明のガス分離膜の好ましい態様であるガス分離複合膜は、ガス透過性の支持層の上側に、特定のポリイミド化合物を含有してなるガス分離層が形成されている。この複合膜は、多孔質の支持体の少なくとも表面に、上記のガス分離層をなす塗布液(ドープ)を塗布(本明細書において塗布とは浸漬により表面に付着される態様を含む意味である。)することにより形成することが好ましい。
図1は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜10を模式的に示す縦断面図である。1はガス分離層、2は多孔質層からなる支持層である。図2は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜20を模式的に示す断面図である。この実施形態では、ガス分離層1及び多孔質層2に加え、支持層として不織布層3が追加されている。
図1及び2は、二酸化炭素とメタンの混合ガスから二酸化炭素を選択的に透過させることにより、透過ガスを二酸化炭素リッチにした態様を示す。
本明細書において「支持層上側」とは、支持層とガス分離層との間に他の層が介在してもよい意味である。また、上下の表現については、特に断らない限り、分離対象となるガスが供給される側を「上」とし、分離されたガスが出される側を「下」とする。
本発明のガス分離複合膜は、多孔質性の支持体(支持層)の表面ないし内面にガス分離層を形成・配置するようにしてもよく、少なくとも表面に形成して簡便に複合膜とすることができる。多孔質性の支持体の少なくとも表面にガス分離層を形成することで、高分離選択性と高ガス透過性、更には機械的強度を兼ね備えるという利点を有する複合膜とすることができる。分離層の膜厚としては機械的強度、分離選択性を維持しつつ高ガス透過性を付与する条件において可能な限り薄膜であることが好ましい。
本発明のガス分離複合膜において、ガス分離層の厚さは特に限定されないが、0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.05〜2.0μmであることがより好ましい。
支持層に好ましく適用される多孔質支持体(多孔質層)は、機械的強度及び高気体透過性の付与に合致する目的のものであれば、特に限定されるものではなく有機、無機どちらの素材であっても構わない。好ましくは有機高分子の多孔質膜であり、その厚さは1〜3000μm、好ましくは5〜500μmであり、より好ましくは5〜150μmである。この多孔質膜の細孔構造は、通常平均細孔直径が10μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。空孔率は好ましくは20〜90%であり、より好ましくは30〜80%である。
ここで、支持層が「ガス透過性」を有するとは、支持層(支持層のみからなる膜)に対して、40℃の温度下、ガス供給側の全圧力を4MPaにして二酸化炭素を供給した際に、二酸化炭素の透過速度が1×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg(10GPU)以上であることを意味する。さらに、支持層のガス透過性は、40℃の温度下、ガス供給側の全圧力を4MPaにして二酸化炭素を供給した際に、二酸化炭素透過速度が3×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg(30GPU)以上であることが好ましく、100GPU以上であることがより好ましく、200GPU以上であることがさらに好ましい。多孔質膜の素材としては、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を挙げることができる。多孔質膜の形状としては、平板状、スパイラル状、管状、中空糸状などいずれの形状をとることもできる。
本発明のガス分離複合膜においては、ガス分離層を形成する支持層の下部にさらに機械的強度を付与するために支持体が形成されていることが好ましい。このような支持体としては、織布、不織布、ネット等が挙げられるが、製膜性及びコスト面から不織布が好適に用いられる。不織布としてはポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリアミド等からなる繊維を単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよい。不織布は、例えば、水に均一に分散した主体繊維とバインダー繊維を円網や長網等で抄造し、ドライヤーで乾燥することにより製造できる。また、毛羽を除去したり機械的性質を向上させたり等の目的で、不織布を2本のロール挟んで圧熱加工を施すことも好ましい。
<ガス分離複合膜の製造方法>
本発明の複合膜の製造方法は、好ましくは、上記ポリイミド化合物を含有する塗布液を支持体上に塗布してガス分離層を形成することを含む製造方法が好ましい。塗布液中のポリイミド化合物の含有量は特に限定されないが、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。ポリイミド化合物の含有量が低すぎると、多孔質支持体上に製膜した際に、容易に下層に浸透してしまうがために分離に寄与する表層に欠陥が生じる可能性が高くなる。また、ポリイミド化合物の含有量が高すぎると、多孔質支持体上に製膜した際に孔内に高濃度に充填されてしまい、透過性が低くなる可能性がある。本発明のガス分離膜は、分離層のポリマーの分子量、構造、組成さらには溶液粘度を調整することで適切に製造することができる。
塗布液の媒体とする有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの有機溶剤は支持体を浸蝕するなどの悪影響を及ぼさない範囲で適切に選択されるものであるが、好ましくは、エステル系(好ましくは酢酸ブチル)、アルコール系(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール)、脂肪族ケトン(好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル系(エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル)が好ましく、さらに好ましくは脂肪族ケトン系、アルコール系、エーテル系である。またこれらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(支持層とガス分離層の間の他の層)
本発明のガス分離複合膜において、支持層とガス分離層との間には他の層が存在していてもよい。他の層の好ましい例として、シロキサン化合物層が挙げられる。シロキサン化合物層を設けることで、支持体最表面の凹凸を平滑化することができ、分離層の薄層化が容易になる。シロキサン化合物層を形成するシロキサン化合物としては、主鎖がポリシロキサンからなるものと、主鎖にシロキサン構造と非シロキサン構造を有する化合物とが挙げられる。
本明細書において「シロキサン化合物」という場合、特に断りのない限り、オルガノポリシロキサン化合物を意味する。
−主鎖がポリシロキサンからなるシロキサン化合物−
シロキサン化合物層に用いうる、主鎖がポリシロキサンからなるシロキサン化合物としては、下記式(1)もしくは(2)で表されるポリオルガノシロキサンの1種又は2種以上が挙げられる。また、これらのポリオルガノシロキサンは架橋反応物を形成していてもよい。この架橋反応物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が、下記式(1)の反応性基Xと反応して連結する基を両末端に有するポリシロキサン化合物により架橋された形態の化合物が挙げられる。
Figure 2017131856
式(1)中、Rは非反応性基であって、アルキル基(好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜15、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基、さらに好ましくはフェニル)であることが好ましい。
は反応性基であって、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、ヒドロキシル基、及び置換アルキル基(好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)から選ばれる基であることが好ましい。
及びZは上記R又はXである。
mは1以上の数であり、好ましくは1〜100,000である。
nは0以上の数であり、好ましくは0〜100,000である。
Figure 2017131856
式(2)中、X、Y、Z、R、m及びnは、それぞれ式(1)のX、Y、Z、R、m及びnと同義である。
上記式(1)及び(2)において、非反応性基Rがアルキル基である場合、このアルキル基の例としては、メチル、エチル、へキシル、オクチル、デシル、及びオクタデシルを挙げることができる。また、非反応性基Rがフルオロアルキル基である場合、このフルオロアルキル基としては、例えば、−CHCHCF、−CHCH13が挙げられる。
上記式(1)及び(2)において、反応性基Xが置換アルキル基である場合、このアルキル基の例としては、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18のアミノアルキル基、炭素数1〜18のカルボキシアルキル基、炭素数1〜18のクロロアルキル基、炭素数1〜18のグリシドキシアルキル基、グリシジル基、炭素数7〜16のエポキシシクロへキシルアルキル基、炭素数4〜18の(1−オキサシクロブタン−3−イル)アルキル基、メタクリロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキル基を構成するアルキル基の炭素数は1〜10の整数であることが好ましく、例えば、−CHCHCHOHが挙げられる。
上記アミノアルキル基を構成するアルキル基の好ましい炭素数は1〜10の整数であることが好ましく、例えば、−CHCHCHNHが挙げられる。
上記カルボキシアルキル基を構成するアルキル基の好ましい炭素数は1〜10の整数であることが好ましく、例えば、−CHCHCHCOOHが挙げられる。
上記クロロアルキル基を構成するアルキル基の好ましい炭素数は1〜10の整数であることが好ましく、好ましい例としては−CHClが挙げられる。
上記グリシドキシアルキル基を構成するアルキル基の好ましい炭素数は1〜10の整数であり、好ましい例としては、3−グリシジルオキシプロピルが挙げられる。
上記炭素数7〜16のエポキシシクロへキシルアルキル基の好ましい炭素数は8〜12の整数である。
炭素数4〜18の(1−オキサシクロブタン−3−イル)アルキル基の好ましい炭素数は4〜10の整数である。
上記メタクリロキシアルキル基を構成するアルキル基の好ましい炭素数は1〜10の整数であり、例えば、−CHCHCH−OOC−C(CH)=CHが挙げられる。
上記メルカプトアルキル基を構成するアルキル基の好ましい炭素数は1〜10の整数であり、例えば、−CHCHCHSHが挙げられる。
m及びnは、化合物の分子量が5,000〜1000,000になる数であることが好ましい。
上記式(1)及び(2)において、反応性基含有シロキサン単位(式中、その数がnで表される構成単位)と反応性基を有さないシロキサン単位(式中、その数がmで表される構成単位)の分布に特に制限はない。すなわち、式(1)及び(2)中、(Si(R)(R)−O)単位と(Si(R)(X)−O)単位はランダムに分布していてもよい。
−主鎖にシロキサン構造と非シロキサン構造を有する化合物−
シロキサン化合物層に用いうる、主鎖にシロキサン構造と非シロキサン構造を有する化合物としては、例えば、下記式(3)〜(7)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2017131856
式(3)中、R、m及びnは、それぞれ式(1)のR、m及びnと同義である。Rは−O−又は−CH−であり、RS1は水素原子又はメチルである。式(3)の両末端はアミノ基、水酸基、カルボキシ基、トリメチルシリル基、エポキシ基、ビニル基、水素原子、置換アルキル基であることが好ましい。
Figure 2017131856
式(4)中、m及びnは、それぞれ式(1)におけるm及びnと同義である。
Figure 2017131856
式(5)中、m及びnは、それぞれ式(1)におけるm及びnと同義である。
Figure 2017131856
式(6)中、m及びnは、それぞれ式(1)におけるm及びnと同義である。式(6)の両末端はアミノ基、水酸基、カルボキシ基、トリメチルシリル基、エポキシ基、ビニル基、水素原子、又は置換アルキル基が結合していることが好ましい。
Figure 2017131856
式(7)中、m及びnは、それぞれ式(1)におけるm及びnと同義である。式(7)の両末端はアミノ基、水酸基、カルボキシ基、トリメチルシリル基、エポキシ、ビニル基、水素原子、又は置換アルキル基が結合していることが好ましい。
上記式(3)〜(7)において、シロキサン構造単位と非シロキサン構造単位とは、ランダムに分布していてもよい。
主鎖にシロキサン構造と非シロキサン構造を有する化合物は、全繰り返し構造単位の合計モル数に対して、シロキサン構造単位を50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがさらに好ましい。
シロキサン化合物層に用いるシロキサン化合物の重量平均分子量は、薄膜化と耐久性の両立の観点から、5,000〜1000,000であることが好ましい。重量平均分子量の測定方法は上述したとおりである。
さらに、シロキサン化合物層を構成するシロキサン化合物の好ましい例を以下に列挙する。
ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリスルホン−ポリヒドロキシスチレン−ポリジメチルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体末端ビニル、ポリジメチルシロキサン末端ビニル、ポリジメチルシロキサン末端H、及びジメチルシロキサン−メチルハイドロシロキサン共重合体から選ばれる1種又は2種以上。なお、これらは架橋反応物を形成している形態も含まれる。
本発明の複合膜において、シロキサン化合物層の厚さは、平滑性及びガス透過性の観点から、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがより好ましい。
また、シロキサン化合物層の40℃、4MPaにおける気体透過率は二酸化炭素透過速度で100GPU以上であることが好ましく、300GPU以上であることがより好ましく、1000GPU以上であることがさらに好ましい。
〔ガス分離非対称膜〕
本発明のガス分離膜は、非対称膜であってもよい。非対称膜は、ポリイミド化合物を含む溶液を用いて相転換法によって形成することができる。相転換法は、ポリマー溶液を凝固液と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法であり、本発明ではいわゆる乾湿式法が好適に用いられる。乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶液を蒸発させて薄い緻密層を形成し、ついで凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層を形成させる方法であり、ロブ・スリラージャンらの提案(例えば、米国特許第3,133,132号明細書)したものである。
本発明のガス分離非対称膜において、緻密層あるいはスキン層と呼ばれるガス分離に寄与する表層の厚さは特に限定されないが、実用的なガス透過性を付与する観点から、0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.05〜1.0μmであることがより好ましい。一方、緻密層より下部の多孔質層はガス透過性の抵抗を下げると同時に機械強度の付与の役割を担うものであり、その厚さは非対称膜としての自立性が付与される限りにおいては特に限定されるものではないが5〜500μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましく、5〜100μmであることがさらに好ましい。
本発明のガス分離非対称膜は、平膜であってもあるいは中空糸膜であってもよい。非対称中空糸膜は乾湿式紡糸法により製造することができる。乾湿式紡糸法は、乾湿式法を紡糸ノズルから吐出して中空糸状の目的形状としたポリマー溶液に適用して非対称中空糸膜を製造する方法である。より詳しくは、ポリマー溶液をノズルから中空糸状の目的形状に吐出させ、吐出直後に空気又は窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマーを実質的には溶解せず且つポリマー溶液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して非対称構造を形成し、その後乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。
ノズルから吐出させるポリイミド化合物を含む溶液の溶液粘度は、吐出温度(例えば10℃)で2〜17000Pa・s、好ましくは10〜1500Pa・s、特に20〜1000Pa・sであることが、中空糸状などの吐出後の形状を安定に得ることができるので好ましい。凝固液への浸漬は、一次凝固液に浸漬して中空糸状等の膜の形状が保持出来る程度に凝固させた後、案内ロールに巻き取り、ついで二次凝固液に浸漬して膜全体を十分に凝固させることが好ましい。凝固した膜の乾燥は、凝固液を炭化水素などの溶媒に置換してから行うのが効率的である。乾燥のための加熱処理は、用いたポリイミド化合物の軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施することが好ましい。
〔ガス分離膜の用途と特性〕
本発明のガス分離膜(複合膜及び非対称膜)は、ガス分離回収法、ガス分離精製法として好適に用いることができる。例えば、水素、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、酸素、窒素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、メタン、エタン、トルエンなどの炭化水素、プロピレンなどの不飽和炭化水素、テトラフルオロエタンなどのパーフルオロ化合物などのガスを含有する気体混合物から特定の気体を効率よく分離し得るガス分離膜とすることができる。特に二酸化炭素/炭化水素(メタン、トルエン等)を含む気体混合物から二酸化炭素を選択的に透過させるガス分離膜とすることが好ましい。
とりわけ、分離処理されるガスが二酸化炭素と炭化水素(好ましくはメタン及び/又はプロパンを含む炭化水素混合物)との混合ガスである場合においては、40℃、5MPaにおける二酸化炭素の透過速度が20GPU超であることが好ましく、30GPU超であることがより好ましく、50GPU超であることがより好ましく、60〜500GPUであることがより好ましい。二酸化炭素とメタンとの透過速度比(RCO2/RCH4)は15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、23以上であることがさらに好ましく、25〜50であることが特に好ましい。RCO2は二酸化炭素の透過速度、RCH4はメタンの透過速度を示す。
なお、1GPUは1×10−6cm(STP)/cm・sec・cmHgである。
〔その他の成分等〕
本発明のガス分離膜のガス分離層には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。
界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤及びその誘導体から適宜選ぶことができる。
また、高分子分散剤を含んでいてもよく、この高分子分散剤として、具体的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。
本発明のガス分離膜を形成する条件に特に制限はないが、温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましく、5〜50℃が特に好ましい。
本発明においては、膜の形成時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが望ましい。
本発明のガス分離膜において、ガス分離層中のポリイミド化合物の含有量は、所望のガス分離性能が得られれば特に制限はない。ガス分離性能をより向上させる観点から、ガス分離層中のポリイミド化合物の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、ガス分離層中のポリイミド化合物の含有量は、100質量%であってもよいが、通常は99質量%以下である。
〔ガス混合物の分離方法〕
本発明のガス分離方法は、二酸化炭素及び炭化水素ガスを含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に透過させることを含む方法である。ガス分離の際の圧力は0.5〜10MPaであることが好ましく、1〜10MPaであることがより好ましく、2〜7MPaであることがさらに好ましい。また、ガス分離温度は、−30〜90℃であることが好ましく、15〜70℃であることがさらに好ましい。二酸化炭素と炭化水素ガスとを含む混合ガスにおいて、二酸化炭素と炭化水素ガスの混合比に特に制限はないが、二酸化炭素:炭化水素ガス=1:99〜99:1(体積比)であることが好ましく、二酸化炭素:炭化水素ガス=5:95〜90:10であることがより好ましい。
[ガス分離モジュール・ガス分離装置]
本発明のガス分離膜を用いてガス分離膜モジュールを調製することができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型などが挙げられる。
また、本発明のガス分離複合膜又はガス分離膜モジュールを用いて、ガスを分離回収又は分離精製させるための手段を有する気体分離装置を得ることができる。本発明のガス分離複合膜は、例えば、特開2007−297605号公報に記載のような吸収液と併用した膜・吸収ハイブリッド法としての気体分離回収装置に適用してもよい。
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[合成例]
<ポリイミド(P−1)の合成>
3,5−ジアミノ−2,4,6−トリブロモ安息香酸を欧州特許出願第1186305号明細書に記載の方法で合成した。得られた粉体をシリカゲルカラムで精製した後、真空乾燥機を用いて80℃で8時間減圧乾燥した。
上記で得られた3,5−ジアミノ−2,4,6−トリブロモ安息香酸12.44g(32mmol)、N−メチルピロリドン75gを300ml3つ口フラスコに入れ、さらに2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミンを入れ、窒素雰囲気下、攪拌した。そこに6−FDA(東京化成工業製)14.22g、N−メチルピロリドン25g、トルエン49.4gを加え、15分室温で攪拌した。その後、外接180℃に設定し、還流条件で5時間反応を行った。室温に冷却した後、アセトンを213ml加えつつ3Lビーカーに移し、30分攪拌した。その後メタノール1712mlを30分かけて滴下し、滴下後30分室温で攪拌し、粉体を析出させた。吸引ろ過して得られた粉体に対し、メタノール856mlを用いたリスラリー洗浄を4回繰り返し、N−メチルピロリドンを0.1%以下まで除去した後、送風乾燥機で40℃、12時間乾燥し、下記に示す構造のポリイミド(P−1)22.41g(収率88%)を得た。
<ポリイミド(P−2)〜(P−12)及び比較ポリイミド(CP−1)〜(CP−4)の合成>
上記のポリイミド(P−1)の合成法に準じて、ポリイミド(P−2)〜(P−12)及び比較ポリイミド(CP−1)〜(CP−4)を得た。
上記で合成した各ポリイミド化合物の構造を以下に示す。下記ポリイミド化合物はランダムポリマーである。また、各繰り返し単位に付された数値はモル比を示す。
Figure 2017131856
Figure 2017131856
Figure 2017131856
上記各ポリイミド化合物の重量平均分子量(Mw)及び分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))を下表に示す。
Figure 2017131856
[実施例1] 複合膜の作製
<平滑層付PAN多孔質膜の作製>
(ジアルキルシロキサン基を有する放射線硬化性ポリマーの調製)
150mLの3口フラスコにUV9300(Momentive社製)39g、X−22−162C(信越化学工業社製)10g、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)0.007gを加え、n−ヘプタン50gに溶解させた。これを95℃で168時間維持させて、ポリ(シロキサン)基を有する放射線硬化性ポリマー溶液(25℃で粘度22.8mPa・s)を得た。
(重合性の放射線硬化性組成物の調製)
上記放射線硬化性ポリマー溶液5gを20℃まで冷却し、n−ヘプタン95gで希釈した。得られた溶液に対し、光重合開始剤であるUV9380C(Momentive社製)0.5g及びオルガチックスTA−10(マツモトファインケミカル社製)0.1gを添加し、重合性の放射線硬化性組成物を調製した。
(重合性の放射線硬化性組成物の多孔質支持体への塗布、平滑層の形成)
PAN(ポリアクリロニトリル)多孔質膜(不織布上にポリアクリロニトリル多孔質膜が存在、不織布を含め、膜厚は約180μm)を支持体として上記の重合性の放射線硬化性組成物をスピンコートした後、UV強度24kW/m、処理時間10秒のUV処理条件でUV処理(Fusion UV System社製、Light Hammer 10、D−バルブ)を行った後、乾燥させた。このようにして、多孔質支持体上にジアルキルシロキサン基を有する厚み1μmの平滑層を形成した。
<複合膜の作製>
図2に示すガス分離複合膜を作製した(図2には平滑層は図示していない)。
30ml褐色バイアル瓶に、ポリイミド(P−1)を0.1g、テトラヒドロフラン9.9gを混合して溶解させた後、平滑層を付与したPAN多孔質膜上にスピンコートし、複合膜(実施例1)を得た。ポリイミド(P−1)層の厚さは約1μmであり、ポリアクリロニトリル多孔質膜の厚さは不織布を含めて約180μmであった。
なお、上記PAN多孔質膜の分画分子量は100,000以下のものを使用した。また、この多孔質膜の40℃、5MPaにおける二酸化炭素の透過性は、25000GPUであった。
[実施例2〜12] 複合膜の作製
上記実施例1において、ポリイミド(P−1)をポリイミド(P−2)〜(P−12)に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜12の複合膜を作製した。
[比較例1〜4] 複合膜の作製
上記実施例1において、ポリイミド(P−1)を比較ポリイミド(CP−1)〜(CP−4)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1〜4の複合膜を作製した。
[実施例13] 非対称膜の作製
上記と同様に調製したポリイミド(P−1)の0.5gに対してメチルエチルケトン2.5g、N,N−ジメチルホルムアミド2.5g、n−ブタノール0.6gの混合溶液を加えて溶解させたのち、孔径5.0μmのPTFE製精密濾過膜でろ過し、これをドープ液とした。清浄なガラス板の上にポリエステル製不織布(阿波製紙製、膜厚:95μm)を敷き、さらに上記ドープ液を室温(20℃)の環境で展開し、30秒静置したのち、一次凝固液(0℃、75重量%メタノール水溶液)に1時間浸漬した。次いで二次凝固液(0℃、75重量%メタノール水溶液)に1時間浸漬することで非対称膜を作製した。得られた非対称膜をメタノールで洗浄した後、イソオクタンでメタノールを置換し、更に50℃で8時間、110℃で6時間加熱してイソオクタンを蒸発乾燥させることで緻密なスキン層が0.1μm以下、ポリイミドを含む層の総厚が40μmの非対称膜(実施例13)を得た。
[試験例1] ガス分離膜のCO透過速度及びガス分離選択性の評価
上記各実施例及び比較例のガス分離膜を用いて、ガス分離性能を以下のように評価した。
上記複合膜及び非対称膜を直径47mmに切り取り(複合膜は多孔質支持体ごと切り取り)、透過試験サンプルを作製した。GTRテック株式会社製ガス透過率測定装置を用い、二酸化炭素(CO):メタン(CH):プロパン(C):トルエン=20:75:4.9:0.1(体積比)の混合ガスをガス供給側の全圧力が5MPa(COの分圧:1MPa)、流量500mL/min、40℃となるように調整し供給した。透過してきたガスをガスクロマトグラフィーにより分析した。膜のガス透過性は、ガス透過率(Permeance)としてガス透過速度を算出することにより比較した。ガス透過率(ガス透過速度)の単位はGPU(ジーピーユー)単位〔1GPU=1×10−6cm(STP)/cm・sec・cmHg〕で表した。ガス分離性(すなわち、分離選択性)は、ガス透過速度の比の値として計算した。
結果を下表に示す。
[試験例2] 製膜性評価
30ml褐色バイアル瓶に、上記で合成したポリイミド1.4g、メチルエチルケトン8.6gを混合して30分攪拌した後、更に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Aldrich社製)を28mg加えて、更に30分攪拌した。10cm四方の清浄なガラス板上に、上記、平滑層を付与したPAN多孔質膜(支持膜)を静置し、アプリケータを用いて上記ポリマー液を支持膜表面にキャストさせた。このキャスト法で欠陥の無い均質なポリイミド膜が得られたものを評価Aとし、このキャスト法では欠陥の無い均質なポリイミド膜が得られず、上記の複合膜の作製で用いたスピンコート法でのみ欠陥の無い均質なポリイミド膜が得られたものを評価Bとした。
結果を下表に示す。
Figure 2017131856
表1に示されるように、ポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれた臭素原子とヨウ素原子の合計含有量が本発明で規定するよりも少ない場合、二酸化炭素の透過速度に劣る結果となり、ガス透過性を分離選択性の両立を所望のレベルまで高めることができなかった(比較例1〜3)。
また、式(II)におけるLを単結合に置き換えた構造の繰り返し単位を有するポリイミド化合物を用いた場合には、ポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれた臭素原子とヨウ素原子の合計含有量が本発明で規定する範囲内にあっても、二酸化炭素の透過速度に劣る結果となり、やはりガス透過性を分離選択性の両立を所望のレベルまで高めることができなかった(比較例4)。
これに対し、本発明で規定するポリイミド化合物をガス分離層に有するガス分離膜は、ガス透過性が大きく高められ、且つガス分離選択性にも優れていた(実施例1〜13)。
また、上記表1の結果から、ポリイミド化合物が式(V)で表される分岐構造を有する場合には、かかるポリイミド化合物を用いてガス分離層を形成する際の成膜性に優れることもわかる。
以上の結果から、本発明のガス分離膜を用いると、優れた気体分離方法、ガス分離モジュール、このガス分離モジュールを備えたガス分離装置を提供できることが分かる。
1 ガス分離層
2 多孔質層
3 不織布層
10、20 ガス分離複合膜

Claims (10)

  1. ポリイミド化合物を含有してなるガス分離層を有するガス分離膜であって、
    上記ポリイミド化合物が下記式(I)又は(II)で表される繰り返し単位を含み、上記ポリイミド化合物中、該ポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量が合計で5質量%以上である、ガス分離膜。
    Figure 2017131856

    式(I)及び(II)中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を示し、n及びmは1〜4の整数である。Rは水素原子を示すか、又はハロゲン原子以外の置換基を示す。Lは2価の連結基を示す。Rは下記式(I−1)〜(I−28)のいずれかで表される4価の基を示す。ここでX〜Xは単結合又は2価の連結基を、Lは−CH=CH−又は−CH−を、R及びRは水素原子又は置換基を示し、*は連結部位を示す。
    Figure 2017131856
  2. 上記式(I)で表される繰り返し単位が下記式(III)で表される繰り返し単位であり、上記式(II)で表される繰り返し単位が下記式(IV)で表される繰り返し単位である、請求項1に記載のガス分離膜。
    Figure 2017131856
    式(III)及び(IV)中、X、R、L及びRは、それぞれ上記式(II)におけるX、R、L及びRと同義である。n及びmは1〜3の整数を示す。
  3. 上記ポリイミド化合物中、上記該ポリイミド化合物中に共有結合で組み込まれている臭素原子及びヨウ素原子の含有量が合計で10質量%以上である、請求項1又は2に記載のガス分離膜。
  4. 上記ポリイミド化合物が下記式(V)で表される繰り返し単位を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分離膜。
    Figure 2017131856
    式(V)中、Lは単結合又は2価の連結基を示す。kは2以上の整数である。Lは(k+1)価の連結基を示す。
  5. 上記ガス分離膜が、上記ガス分離層をガス透過性の支持層上側に有するガス分離複合膜である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分離膜。
  6. 上記支持層が、ガス分離層側の多孔質層と、その逆側の不織布層とからなる、請求項5に記載のガス分離膜。
  7. 二酸化炭素及び炭化水素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に透過させるために用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分離膜。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス分離膜を具備するガス分離モジュール。
  9. 請求項8に記載のガス分離モジュールを備えたガス分離装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のガス分離膜を用いたガス分離方法。
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WO2024106373A1 (ja) * 2022-11-16 2024-05-23 株式会社レゾナック 炭化水素の製造方法及び炭化ケイ素の製造方法

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