WO2024106373A1 - 炭化水素の製造方法及び炭化ケイ素の製造方法 - Google Patents

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Abstract

水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量が低い高純度の炭化水素の製造方法を提供する。炭化水素の製造方法は、炭素数が1以上4以下である炭化水素と水素ガスとを含有する粗製炭化水素から水素ガスを除去して、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である低水素量炭化水素を得る水素ガス除去工程と、低水素量炭化水素を吸着剤に接触させて、水素ガスの含有量が80体積ppm以下、窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量が5体積ppm以下、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が250質量ppb以下である高純度炭化水素を得る吸着工程と、を備える。吸着剤は、細孔径が0.3nm超過3.5nm以下の細孔を有する結晶を有し、結晶の結晶形はモルデナイト型ではない。

Description

炭化水素の製造方法及び炭化ケイ素の製造方法
 本発明は、炭化水素の製造方法及び炭化ケイ素の製造方法に関する。
 単結晶炭化ケイ素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて、バンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が10倍という優れた電気特性を有するため、パワー半導体の材料として有用である。単結晶炭化ケイ素を製造するための原料には、高純度の炭化水素が用いられる。例えば特許文献1には、低純度のプロパン(C38)から不純物を除去して高純度化するプロパンの精製方法が開示されている。特許文献1に開示の技術によれば、純度99.99体積%以上という高純度のプロパンを得ることができ、このような高純度のプロパンは単結晶炭化ケイ素の原料として有用である。
 特許文献1では、低純度のプロパンから除去する不純物として、エタン(C26)、プロピレン(C36)、n-ブタン(C410)、イソブタン(C410)、水(H2O)、窒素ガス(N2)、酸素ガス(O2)、及び二酸化炭素(CO2)が示されている。しかしながら、低純度のプロパンには、これら以外の不純物が含有されている場合がある。
日本国特許公報 第5822299号 国際公開第2016/121622号
 例えば、水素ガス(H2)は、プロピレンからプロパンを合成する際の原料として使用されるため、得られたプロパンの中に多量に含有されるおそれがある(特許文献2を参照)。水素ガスがプロパン中に含有されていると、窒素ガスや酸素ガスがプロパンから除去されにくくなるおそれがある。
 また、窒素(N)、酸素(O)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、リン(P)、硫黄(S)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)等の元素が単結晶炭化ケイ素中に含有されていると、これらの元素がドーパントとなったり、これらの元素の酸化物が炭化ケイ素を酸化したりするおそれがある。その結果、炭化ケイ素の電気特性が変化するため、半導体の品質に悪影響が出るおそれがある。
 したがって、単結晶炭化ケイ素を製造するための原料として用いられる炭化水素は、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量が低いことが望ましい。
 本発明は、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量が低い高純度の炭化水素を製造することができる炭化水素の製造方法、及び、優れた電気特性を有する炭化ケイ素を製造することができる炭化ケイ素の製造方法を提供することを課題とする。
 前記課題を解決するため、本発明の一態様は以下の[1]~[8]の通りである。
[1] 炭素数が1以上4以下である炭化水素と水素ガスとを含有する粗製炭化水素から前記水素ガスを除去して、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である低水素量炭化水素を得る水素ガス除去工程と、
 前記低水素量炭化水素を吸着剤に接触させて、水素ガスの含有量が80体積ppm以下、窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量が5体積ppm以下、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が250質量ppb以下である高純度炭化水素を得る吸着工程と、
を備え、
 前記吸着剤は、細孔径が0.3nm超過3.5nm以下の細孔を有する結晶を有し、前記結晶の結晶形はモルデナイト型ではない炭化水素の製造方法。
[2] 前記炭化水素がメタン、エタン、エチレン、プロパン、n-ブタン、及びイソブタンのうちの少なくとも1種である[1]に記載の炭化水素の製造方法。
[3] 前記炭化水素がプロパン及びエチレンの少なくとも一方である[1]に記載の炭化水素の製造方法。
[4] 前記吸着工程は、前記低水素量炭化水素から前記窒素ガス及び前記酸素ガスの少なくとも一方を前記吸着剤で吸着する工程である[1]に記載の炭化水素の製造方法。
[5] 前記吸着工程は、前記低水素量炭化水素からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を前記吸着剤で吸着する工程である[1]に記載の炭化水素の製造方法。
[6] 前記水素ガス除去工程は、分離膜で前記粗製炭化水素から前記水素ガスを除去する工程である[1]に記載の炭化水素の製造方法。
[7] 前記粗製炭化水素、前記低水素量炭化水素、又は前記高純度炭化水素を濾材に通して、前記粗製炭化水素、前記低水素量炭化水素、又は前記高純度炭化水素からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を除去する濾過工程をさらに備え、
 前記濾材は、メンブレンフィルター、焼結金属フィルター、及び金属ハロゲン化物製ペレットを複数有するフィルターのうちの少なくとも1つのフィルターである[1]に記載の炭化水素の製造方法。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載の炭化水素の製造方法で製造した高純度炭化水素を原料として用いて炭化ケイ素を製造する炭化ケイ素の製造方法。
 本発明に係る炭化水素の製造方法によれば、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量が低い高純度の炭化水素を製造することができる。また、本発明に係る炭化ケイ素の製造方法によれば、優れた電気特性を有する炭化ケイ素を製造することができる。
水素ガス除去工程に使用する膜分離装置の一例を説明する模式図である。 吸着工程に使用する吸着装置の一例を説明する模式図である。 濾過工程に使用する濾過装置の一例を説明する模式図である。 分析用試料を調製する調製装置の一例を説明する模式図である。 水素ガス除去工程、吸着工程、及び濾過工程を連続して行う炭化水素の製造装置の一例を説明する模式図である。
 本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
 本実施形態に係る炭化水素の製造方法は、炭素数が1以上4以下である炭化水素と水素ガスとを含有する粗製炭化水素から水素ガスを除去して、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である低水素量炭化水素を得る水素ガス除去工程と、低水素量炭化水素を吸着剤に接触させて、水素ガスの含有量が80体積ppm以下、窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量が5体積ppm以下、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が250質量ppb以下である高純度炭化水素を得る吸着工程と、を備える。
 吸着剤は、細孔径が0.3nm超過3.5nm以下の細孔を有する結晶を有し、この結晶の結晶形はモルデナイト型ではない。
 本実施形態に係る炭化水素の製造方法によれば、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量が低い高純度の炭化水素を製造することができる。以下に詳述する。
 炭素数が1以上4以下である炭化水素は、不純物として水素ガス、窒素ガス、及び酸素ガスを含有している場合がある。炭化水素が水素ガスを含有していると、炭化水素から窒素ガス及び酸素ガスが除去されにくいので、水素ガスの含有量を低減した後に窒素ガス及び酸素ガスを除去する処理を行うと、炭化水素から窒素ガス及び酸素ガスが除去されやすい。
 本実施形態に係る炭化水素の製造方法は、粗製炭化水素から水素ガスを除去して低水素量炭化水素を得る水素ガス除去工程を実施した後に吸着工程を実施するので、炭化水素中の窒素ガス及び酸素ガスが吸着剤によって効果的に吸着されて、高純度炭化水素を得ることができる。
 得られた高純度炭化水素は、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量が低いので、炭化ケイ素を製造するための原料として好適であり、特に、パワー半導体の材料として有用である単結晶炭化ケイ素を製造するための原料として好適である。
 また、得られた高純度炭化水素は、酸素ガスの含有量が低いので、発火や爆発が生じにくい。さらに、得られた高純度炭化水素は、水素ガスの含有量が低いので、金属の水素脆化を生じさせにくい。例えば、高純度炭化水素を保管する容器を形成する金属や高純度炭化水素を送気するための配管を形成する金属に水素脆化が生じにくいので、保管容器や配管が劣化しにくい。
 また、本実施形態に係る炭化ケイ素の製造方法は、本実施形態に係る炭化水素の製造方法で製造した高純度炭化水素を原料として用いて炭化ケイ素を製造する方法である。高純度炭化水素は、上記のように各種不純物の含有量が低いので、本実施形態に係る炭化水素の製造方法で製造した高純度炭化水素を原料として用いて炭化ケイ素を製造すれば、上記元素(水素、窒素、酸素、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデン)の含有量が低い炭化ケイ素を製造することができる。よって、本実施形態に係る炭化ケイ素の製造方法によって製造した炭化ケイ素は、優れた電気特性を有するので、この炭化ケイ素を用いれば、優れた特性を有する半導体を製造することができる。
〔炭化水素の種類〕
 炭化水素の種類は、炭素数が1以上4以下であれば特に限定されるものではないが、蒸気圧が高く供給が容易であることから、炭素数が1以上4以下であるアルカンや、炭素数が2以上4以下であるアルケン、アルキンが好ましい。
 アルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、及びイソブタンが挙げられる。アルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン(シス体、トランス体を含む)、及びイソブテンが挙げられる。アルキンとしては、例えば、アセチレン、プロピン、1-ブチン、及び2-ブチンが挙げられる。
 これらの炭化水素は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの炭化水素の中では、入手が容易であるという観点から、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、エチレンが好ましい。
〔不純物〕
 炭化水素中に含有される不純物としては、例えば、周期表の第1周期~第5周期の元素で構成される化合物(炭素数が1以上4以下である炭化水素を除く)又は単体が挙げられる。特に、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス等の気体状の不純物や、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を分子内に有する化合物又は単体などの固体状の不純物が、炭化水素中に混入しやすい。これらの元素を分子内に有する化合物の例としては、酸化物、窒化物、ハロゲン化物、水素化物、水酸化物等が挙げられる。これらの化合物は、粒子状、クラスター状、錯体状等の形態で存在し得る。
 これらの不純物のうち水素ガスが炭化水素中に含有されていると、炭化水素の保管容器や配管の劣化の原因となり得る。また、これらの不純物が炭化水素中に含有されていると、炭化水素を用いて半導体を製造する際の炭化ケイ素やダイヤモンドウエハの成膜工程など、炭化水素に高純度が求められる場合に、生成物の特性劣化の原因となり得る。そのため、精製により、炭化水素から不純物を可能な限り除去することが望ましい。一方で、過度の精製は炭化水素の製造コストの増大につながるため、少量の不純物であれば含有されていても差し支えない。炭化水素中の不純物は、ガスクロマトグラフィーや誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)等の手法を用いて定量することができる。
〔粗製炭化水素〕
 粗製炭化水素は、炭素数が1以上4以下である炭化水素と水素ガスとを含有する。粗製炭化水素には、水素ガス以外に上記の不純物が含有されている場合がある。粗製炭化水素の例としては、プロピレンに水素ガスを反応させて合成した粗製プロパンが挙げられ、この粗製プロパンには多量の水素ガスが含有されているおそれがある。
 粗製炭化水素中の水素ガスの含有量が100体積ppm超過である場合には、水素ガスの含有量を100体積ppm以下とするために、粗製炭化水素に対して水素ガス除去工程を実施する。
 なお、粗製炭化水素の水素ガスの含有量が100体積ppm超過である場合は、水素ガス除去工程を実施して水素ガスの含有量を100体積ppm以下にする必要があるが、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である場合は水素ガス除去工程を実施しなくてもよい。すなわち、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である場合は、粗製炭化水素は低水素量炭化水素であると言えるので、水素ガス除去工程の実施を省略して、粗製炭化水素に対して吸着工程を実施してもよい。
〔低水素量炭化水素〕
 低水素量炭化水素は、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である炭化水素である。粗製炭化水素に対して水素ガス除去工程を実施し、粗製炭化水素から水素ガスを除去して、低水素量炭化水素を得ることができる。
〔高純度炭化水素〕
 高純度炭化水素は、水素ガスの含有量が80体積ppm以下、窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量が5体積ppm以下、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が250質量ppb以下である炭化水素である。低水素量炭化水素を吸着剤に接触させることにより吸着工程を実施し、低水素量炭化水素から不純物を除去して、高純度炭化水素を得ることができる。
 高純度炭化水素の水素ガスの含有量は、80体積ppm以下である必要があるが、5体積ppm以上80体積ppm以下であることが好ましく、40体積ppm以上74体積ppm以下であることがより好ましい。
 また、高純度炭化水素の窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量は、5体積ppm以下である必要があるが、0.2体積ppm以上3体積ppm以下であることが好ましく、0.3体積ppm以上2体積ppm以下であることがより好ましく、0.4体積ppm以上1体積ppm以下であることがさらに好ましい。
 さらに、高純度炭化水素のホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量は、250質量ppb以下である必要があるが、1質量ppb以上100質量ppb以下であることが好ましく、3質量ppb以上50質量ppb以下であることがより好ましく、4質量ppb以上15質量ppb以下であることがさらに好ましい。
 これらの不純物の含有量が上記の数値範囲内であれば、製造コストを過剰とすることなく高純度の炭化水素を製造することができる。
 粗製炭化水素から前記不純物を除去して精製する手法としては、膜分離法、吸着法、濾過法、蒸留法などが適用可能であるが、本実施形態に係る炭化水素の製造方法では、粗製炭化水素から水素ガスを除去して低水素量炭化水素を得る水素ガス除去工程と、低水素量炭化水素を吸着剤に接触させる吸着工程とによって、高純度炭化水素を得る。水素ガス除去工程、吸着工程以外の精製工程をさらに組み合わせてもよく、除去したい不純物の種類及び量、炭化水素の生産能力などによって、任意の精製方法を用いた精製工程を選択することができる。
〔水素ガス除去工程〕
 水素ガス除去工程は、粗製炭化水素から水素ガスを除去して、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である低水素量炭化水素を得る工程である。水素ガス除去工程において粗製炭化水素から水素ガスを除去する方法は特に限定されるものではないが、例えば、粗製炭化水素を分離膜に通す膜分離法や、粗製炭化水素を蒸留する蒸留法を用いることができる。
 膜分離法について、以下に詳細に説明する。粗製炭化水素を分離膜に通すことによって、粗製炭化水素から水素ガスを分離することができる。また、窒素ガスと酸素ガスも分離することができる場合もある。使用する分離膜の材質、形状、孔径等は、炭化水素と不純物の透過速度に差をつけることができれば特に限定されるものではない。
 分離膜の材質の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ポリイミド、アルミナ、ムライト、チタニア等が挙げられる。これらの材質の中では、入手容易性の観点からポリイミドが好ましい。
 分離膜の形状の例としては、中空糸状、円筒状、ひだ状等が挙げられる。これらの形状の中では、入手容易性の観点から中空糸状が好ましい。
 一般的には、炭化水素が分離膜を透過する透過速度は低く、水素ガス等の気体状の不純物が分離膜を透過する透過速度は高いので、不純物が除去された低水素量炭化水素は、分離膜の非透過ガス出口から捕集することができる。すなわち、粗製炭化水素のうち分離膜を透過していないガスが、低水素量炭化水素となる。
 分離膜を用いる精製方法は、いずれの不純物の除去にも適用可能であるが、分離膜を透過する速度が速いという観点から、水素ガス、窒素ガス、酸素ガスの除去に有効であり、水素ガスの除去に特に有効である。
 温度、圧力等の膜分離法の条件は、炭化水素と不純物の分離が可能であり、且つ、分離膜の使用可能な温度条件、圧力条件を満たしていれば、任意に設定することができる。
 温度条件は、例えば、-20℃以上200℃以下であることが好ましく、0℃以上150℃以下であることがより好ましく、5℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましい。
 また、圧力条件は、0.1MPa以上5MPa以下であることが好ましく、0.15MPa以上4MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以上3MPa以下であることがさらに好ましい。
〔吸着工程〕
 吸着工程は、低水素量炭化水素を吸着剤に接触させて、水素ガスの含有量が80体積ppm以下、窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量が5体積ppm以下、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が250質量ppb以下である高純度炭化水素を得る工程である。吸着工程において使用する吸着剤は、細孔径が0.3nm超過3.5nm以下の細孔を有する結晶を有している。そして、吸着剤が有する該結晶の結晶形はモルデナイト型ではない。
 吸着工程においては、低水素量炭化水素から窒素ガス及び酸素ガスの少なくとも一方を吸着剤で吸着してもよいし、低水素量炭化水素からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を吸着剤で吸着してもよい。あるいは、低水素量炭化水素から窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの全てを吸着剤で吸着してもよい。
 吸着剤の種類は、上記の不純物を吸着することができるならば特に限定されるものではないが、吸着剤が有する細孔の細孔径(平均細孔径)が小さすぎると、窒素ガス及び酸素ガスの脱着が起こりやすくなる。一方、吸着剤が有する細孔の細孔径(平均細孔径)が大きすぎると、炭化水素が過剰に吸着されるため高純度炭化水素の生産性が低下するおそれがあることに加えて、窒素ガス及び酸素ガスの吸着力が不十分となるおそれがある。
 そのため、吸着剤が有する細孔の細孔径(平均細孔径)は、0.3nm超過3.5nm以下である必要があり、0.4nm以上2.5nm以下であることが好ましく、0.5nm以上1nm以下であることがより好ましい。このような吸着剤を用いれば、低水素量炭化水素中に含有される窒素ガス及び酸素ガスが十分に吸着される。なお、細孔の細孔径(平均細孔径)は、ガス吸着法(例えばBET吸着法)によって測定することができる。
 吸着剤を形成する材質は特に限定されるものではないが、経済性や入手容易性の観点から、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナが好ましく、活性炭及びゼオライトがより好ましい。活性炭としては、ヤシ殻活性炭が好ましい。
 また、ゼオライトとしては、結晶形がA型、X型、Y型、L型、又はフェリエライト型の結晶を有するものを用いることができ、結晶形はA型及びX型が好ましい。一方、結晶形がモルデナイト型である結晶を有するゼオライトは、細孔の細孔径(平均細孔径)が0.3nm超過3.5nm以下であっても、窒素ガス及び酸素ガスの吸着能力が十分でないため好ましくない。
 温度、圧力等の吸着条件は、不純物の吸着が可能であれば特に限定されるものではないが、温度が低く圧力が高い方が、窒素ガス及び酸素ガスが吸着剤に吸着されやすくなり、炭化水素も吸着剤に吸着されやすくなる。温度が高すぎると、窒素ガス及び酸素ガスが吸着剤から脱着するおそれがある。
 そのため、温度条件は、例えば、-20℃以上200℃以下であることが好ましく、0℃以上150℃以下であることがより好ましく、5℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましい。
 また、圧力条件は、0.1MPa以上5MPa以下であることが好ましく、0.15MPa以上4MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以上3MPa以下であることがさらに好ましい。圧力が前記範囲内であれば、低水素量炭化水素中に含有される窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンが吸着剤に吸着されやすく、これら不純物の含有量が十分に低減されやすい。
〔濾過工程〕
 本実施形態に係る炭化水素の製造方法は、炭化水素を濾材に通して固体状の不純物を濾過し除去する濾過工程をさらに備えていてもよい。すなわち、粗製炭化水素、低水素量炭化水素、又は高純度炭化水素を濾材に通して、粗製炭化水素、低水素量炭化水素、又は高純度炭化水素からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を除去する濾過工程をさらに備えていてもよい。
 濾過工程を実施することによって、炭化水素中に含有されているホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を、さらに低減することができる。
 濾過工程は、上記の通り、粗製炭化水素、低水素量炭化水素、又は高純度炭化水素に対して実施することができるが、これら3種の炭化水素のうちいずれか1つに対して実施してもよいし、2つに対して実施してもよいし、3つ全てに対して実施してもよい。例えば、吸着工程の後のみに濾過工程を実施してもよいし、水素ガス除去工程の前後と吸着工程の後に合計3回の濾過工程を実施してもよい。
 濾材の種類は、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を除去することができるならば、特に限定されるものではないが、例えば、不純物と濾材の接触面積を大きくとることができるフィルター、粉末、ペレット等を濾材として用いることができる。
 これらの中では、圧力損失の低いフィルター形状の濾材を用いることが好ましく、メンブレンフィルター(例えば樹脂製のメンブレンフィルター)、焼結金属フィルター、金属ハロゲン化物製ペレットを複数有するフィルターのうちの少なくとも1つのフィルターを用いることがより好ましい。
 メンブレンフィルターを形成する樹脂の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。
 焼結金属フィルターを形成する金属の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金等が挙げられる。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼等が挙げられるが、入手容易なオーステナイト系ステンレス鋼が好ましく、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等がより好ましい。ニッケル基合金としては、ニッケル、モネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)等が挙げられるが、入手容易なニッケルが好ましい。
 金属ハロゲン化物製ペレットを複数有するフィルターは、固体状の不純物を濾過し除去することができるならば、その構成は特に限定されるものではない。
 金属ハロゲン化物製ペレットを複数有するフィルターのペレットを形成する金属ハロゲン化物の種類は特に限定されるものではないが、例えば、金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物が挙げられ、これらの中では金属フッ化物が好ましい。金属ハロゲン化物に含まれる金属種としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム等が挙げられるが、入手容易なナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
 温度、圧力等の濾過条件は、不純物の濾過が可能であれば特に限定されるものではないが、温度条件は、例えば、-20℃以上200℃以下であることが好ましく、0℃以上150℃以下であることがより好ましく、5℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましい。
 また、圧力条件は、0.1MPa以上5MPa以下であることが好ましく、0.15MPa以上4MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以上3MPa以下であることがさらに好ましい。
 温度条件及び圧力条件が前記範囲内であれば、過大な労力を要することなく炭化水素から固体状の不純物を除去しやすい。
 次に、本実施形態に係る炭化ケイ素の製造方法について説明する。一例として、本実施形態に係る炭化水素の製造方法で製造した高純度炭化水素を原料として用いて、炭化ケイ素エピタキシャルウエハを製造する方法について説明する。以下に説明する炭化ケイ素エピタキシャルウエハの製造方法は、研磨工程、清浄化(ガスエッチング)工程、成膜(エピタキシャル成長)工程、及び降温工程を備えている。これら工程について説明する。
〔研磨工程〕
 まず、六方晶炭化ケイ素単結晶基板を用意し、その表面の格子乱れ層の厚さが3nm以下となるまで、化学的機械研磨等の研磨法で研磨する。なお、「格子乱れ層」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて得た格子像(格子が確認できる像)において、炭化ケイ素単結晶の原子層(格子)に対応する縞状構造又はその縞の一部が明瞭になっていない層をいう。
 研磨において使用される研磨液に含有される砥粒の種類は特に限定されるものではないが、研磨液のpH領域において溶解せず分散する粒子を用いることが好ましい。研磨液のpHは2未満であることが好ましく、その場合は、ダイヤモンド、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素等の粒子を砥粒として使用することができる。
 砥粒の平均粒子径は特に限定されるものではないが、1nm以上400nm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましく、10nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。
 良好な最終仕上げ面を得るためには、平均粒子径の小さなものが安価に市販されている点でシリカ製の砥粒が好ましく、コロイダルシリカ製の砥粒がより好ましい。コロイダルシリカ製の砥粒の平均粒子径は、加工速度、表面粗さ等の加工特性に応じて適宜選択することができる。
 より高い研磨速度を要求する場合は、平均粒子径が大きい砥粒を使用するとよい。小さい表面粗さ、すなわち高度に平滑な面を必要とする場合は、平均粒子径が小さい砥粒を使用するとよい。平均粒子径が400nmを超える砥粒は、高価である割には研磨速度が高くなく不経済である。平均粒子径が1nm未満のような極端に小さいものは、研磨速度が著しく低下する。
 研磨液中の砥粒の含有量は特に限定されるものではないが、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。研磨液中の砥粒の含有量が上記の数値範囲内であれば、砥粒が乾燥しにくいのでスクラッチが生じにくい、経済的である、加工速度が高い等のメリットがある。
 研磨液は、水系のスラリーであってもよく、その20℃におけるpHは2.0未満であることが好ましく、1.5未満であることがより好ましく、1.2未満であることがさらに好ましい。研磨液のpHが上記の数値範囲内であれば、十分な研磨速度が得られる。また、研磨液のpHが上記の数値範囲内であれば、通常の室内環境下においても炭化ケイ素に対する化学的反応性が著しく増加するので、超精密研磨が可能となる。
 炭化ケイ素は、研磨液中にある酸化物粒子等の砥粒の機械的作用によって直接的に除去されて研磨されるのではなく、研磨液が炭化ケイ素単結晶表面を化学反応させて酸化ケイ素を生成させ、生成した酸化ケイ素が砥粒によって機械的に除去されるという機構で研磨されると考えられる。したがって、研磨液の液性を炭化ケイ素が反応しやすいようにすること、すなわちpHを2未満にすることと、適度な硬度を持つ粒子(例えば酸化物粒子)を砥粒として選定することは、スクラッチ傷や加工変質層のない平滑な面を得るために重要である。
 研磨液のpHは、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸等の酸を用いて調整するとよい。使用する酸は1種類でもよいが、2種類以上用いることが好ましい。複数種の酸を用いることが有効であることの原因は不明であるが、実験で確かめられており、複数種の酸が相互に作用して、効果を高めている可能性がある。
 研磨液中の酸の含有量は、例えば、塩酸の場合は0.5質量%以上5質量%以下、硝酸の場合は0.5質量%以上5質量%以下、燐酸の場合は0.5質量%以上5質量%以下、硫酸の場合は0.5質量%以上5質量%以下とするとよい。上記の範囲内で酸の種類と含有量を決定し、pHが2未満となるようにするとよい。
 なお、無機酸が有効であるのは、有機酸に比べ強酸であるため、研磨液の液性を強酸性に調整することが容易であるからである。有機酸を用いて研磨液の液性を強酸性に調整することは、容易ではない。
 炭化ケイ素の研磨は、強酸性の研磨液によって炭化ケイ素の表面に生成した酸化膜が砥粒によって除去されることで行われるが、この表面酸化を加速するために、研磨液に酸化剤を添加してもよい。酸化剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、過塩素酸、重クロム酸カリウム、過硫酸アンモニウムサルフェート等が挙げられる。例えば過酸化水素水を用いる場合であれば、研磨液中の含有量を0.5質量%以上5質量%以下、好ましくは1.5質量%以上4質量%以下とすることにより、研磨速度が向上する。
 研磨液には、砥粒のゲル化を抑制するためにゲル化防止剤を添加してもよい。ゲル化防止剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリエチレンホスホン酸等のリン酸エステル系のキレート剤が好適に用いられる。研磨液中のゲル化防止剤の含有量は特に限定されるものではないが、0.01質量%以上6質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
〔清浄化工程〕
 清浄化工程では、水素ガス雰囲気下で、前記研磨後の六方晶炭化ケイ素単結晶基板を高温に保持して、その表面を清浄化(ガスエッチング)する。清浄化工程の一例について、以下に説明する。
 前記研磨工程によって研磨した六方晶炭化ケイ素単結晶基板を洗浄した後に、エピタキシャル成長装置(例えば、量産型の複数枚プラネタリー型CVD装置)内に設置する。エピタキシャル成長装置に水素ガスを導入して、エピタキシャル成長装置内の圧力を100mbar以上250mbar以下に調整する。水素ガスの流量は、40slm以上120slm以下である。
 エピタキシャル成長装置内の温度を上昇させ、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の温度を1400℃以上1600℃以下、好ましくは1480℃以上1600℃以下にして、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面を水素ガスによって清浄化する。処理時間は5分以上30分以下である。この条件で清浄化を行った場合は、エッチング量は0.05μm以上0.4μm以下である。
〔成膜工程〕
 成膜工程では、前記清浄化工程によって清浄化した六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面に、炭化ケイ素のエピタキシャル成長に必要とされる量のシラン(SiH4)ガスとプロパンガスとを供給して、炭化ケイ素をエピタキシャル成長させる。
 成膜工程の条件は、所望の膜厚と膜の成長速度に応じて決定すればよいが、例えば、シランガスの流量は15sccm以上150sccm以下、プロパンガスの流量は3.5sccm以上60sccm以下、圧力は80mbar以上250mbar以下、基板温度は1400℃以上1600℃以下とすればよい。
 炭化ケイ素のエピタキシャル膜の成長中のステップバンチングを抑制する方法として、成長表面におけるケイ素原子のマイグレーションを増やすために、供給する原料ガスの量比を制御する方法が知られている。本実施形態においては、シランガスとプロパンガスの供給量の比を、プロパンが有する炭素原子とシランが有するケイ素原子のモル比C/Siが0.7以上1.2以下となるように制御することが好ましい。
 また、炭化ケイ素のエピタキシャル膜の成長速度は3μm/h以上20μm/h以下としてもよい。通常、成長させる炭化ケイ素のエピタキシャル膜の膜厚は5μm以上20μm以下である。
〔降温工程〕
 成膜工程においてはエピタキシャル成長装置内にシランガスとプロパンガスを供給していたが、炭化ケイ素のエピタキシャル膜の成膜が終了したら、シランガスとプロパンガスの供給を同時に停止するとともに、ドーピングガスとして導入していた窒素ガスの供給も停止する。
 そして、エピタキシャル成長装置内からのシランガスとプロパンガスの排気が完了するまで、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の温度を保持し、排気が完了したら六方晶炭化ケイ素単結晶基板の温度を降温する(降温工程)。
 ただし、この降温工程の際にも、炭化ケイ素のエピタキシャル膜の表面ではガスエッチングが生じて、表面のモフォロジーが悪化し得る。この表面のモフォロジーの悪化を抑制するためには、シランガスとプロパンガスの供給を停止するタイミングと、降温のタイミングとが重要である。
 シランガスとプロパンガスの供給を同時に停止した後に、供給したシランガスとプロパンガスが六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面から無くなるまで成長温度を保持し、その後に平均50℃/min程度の速度で常温まで降温すれば、炭化ケイ素のエピタキシャル膜の表面のモフォロジーの悪化を抑制することができる。
 以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。
〔実施例1-1〕
 図1に示す膜分離装置を用いて、粗製炭化水素であるプロパン(1)を精製した。プロパン(1)が充填されたシリンダー1(容量47L、マンガン鋼製)が、SUS316製の配管100を介して、分離膜モジュール10(UBE株式会社製のCO-B01)のガス入口11に接続されている。配管100には、圧力制御装置101及びマスフローコントローラー102が、上流側から下流側に向かってこの記載順に直列に設けられている。
 分離膜モジュール10は、分離膜(図示せず)と、分離膜を透過しなかったガスが排出される非透過ガス出口12と、分離膜を透過したガスが排出される透過ガス出口13と、を有している。透過ガス出口13は、排気配管14を介して燃焼除害装置(図示せず)に接続されている。非透過ガス出口12は、SUS316製の捕集用配管16を介して、シリンダー2(容量47L、マンガン鋼製)に接続されている。捕集用配管16には、流量計130が設けられている。
 捕集用配管16のうち分離膜モジュール10と流量計130の間の部分からは、枝管が二股に分岐して延びており、該枝管の先は圧力計15に接続されている。また、捕集用配管16のうち流量計130とシリンダー2の間の部分からは、SUS316製の真空引き配管18が二股に分岐して延びており、この真空引き配管18には、真空ポンプ接続バルブ17及び真空ポンプ19が、上流側から下流側に向かってこの記載順に直列に設けられている。
 流量計130によって、非透過ガス出口12から流出したガスの流量を測定できるようになっている。真空ポンプ19の排気口は、局所排気設備(図示せず)に接続されている。シリンダー2は、冷却槽(図示せず)によって任意の温度に冷却できるようになっている。
 シリンダー1に充填されたプロパン(1)を、温度30℃、圧力0.4MPaG、流量1000mL/minの条件で、分離膜モジュール10に流通した。非透過ガス出口12から排出されたガスを、冷却槽(図示せず)で-78℃に冷却され内圧が1kPa以下に減圧されたシリンダー2に7kg充填し、プロパン(2)とした。このプロパン(2)は、プロパン(1)を分離膜で精製した低水素量炭化水素である。
 なお、非透過ガス出口12から流出したガスの流量は、710mL/minであった。透過ガス出口13から排出されたガスは、排気配管14を介して、燃焼除害装置(図示せず)で処理して排気した。
 次に、図2に示す吸着装置を用いて、プロパン(2)を精製した。図2の吸着装置の構成は、シリンダー1をシリンダー2に代えた点と、シリンダー2をシリンダー3に代えた点と、分離膜モジュール10を吸着塔30に代えた点以外は、図1の膜分離装置と略同一の構成である。
 シリンダー2に充填されたプロパン(2)を、温度30℃、圧力0.4MPaG、流量1000mL/minの条件で、吸着剤が充填された吸着塔30に流通した。そして、吸着塔30を通過したガスを、冷却槽(図示せず)で-78℃に冷却され内圧が1kPa以下に減圧されたシリンダー3(容量47L、マンガン鋼製)に2kg充填し、プロパン(3)とした。このプロパン(3)は、プロパン(2)を吸着剤で精製した高純度炭化水素である。
 なお、吸着塔30の出口ガスの流量は、310mL/minであった。吸着塔30の寸法は、内径100mm、長さ2000mmである。吸着剤は、ユニオン昭和株式会社製のモレキュラーシーブ13X(X型ゼオライト、平均細孔径1nm)であり、吸着塔30への吸着剤の充填量は7kgである。
 吸着剤の平均細孔径は、以下のようにして測定した。
   測定機器   :Nikkiso社製のBelsorp max
   吸着質          :窒素ガス
   測定温度   :77K
   サンプル前処理:真空条件にて300℃で6h加熱乾燥した。
   サンプル量  :0.10g
 次に、図3に示す濾過装置を用いて、プロパン(3)を精製した。図3の濾過装置の構成は、シリンダー1をシリンダー3に代えた点と、シリンダー2をシリンダー4に代えた点と、分離膜モジュール10をガスフィルター40に代えた点以外は、図1の膜分離装置と略同一の構成である。
 シリンダー3に充填されたプロパン(3)を、温度30℃、圧力0.4MPaG、流量1000mL/minの条件で、ガスフィルター40に流通した。そして、ガスフィルター40を通過したガスを、冷却槽(図示せず)で-78℃に冷却され内圧が1kPa以下に減圧されたシリンダー4(容量47L、マンガン鋼製)に1kg充填し、プロパン(4)とした。このプロパン(4)は、プロパン(3)を濾材で濾過して精製したプロパンガスである。
 なお、ガスフィルター40の出口ガスの流量は、1000mL/minであった。ガスフィルター40は、PTFE製のメンブレンフィルターであり、インテグリス社製のWafergard(登録商標)である。
 次に、プロパン(1)~(4)の分析を行い、水素ガスの含有量を測定した。結果を表1に示す。測定条件は下記のとおりである。
   分析機器:ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製Tracera)
   検出器 :TCD
   検出器の温度:150℃
   検出器の電流値:180mA
   試料の注入量:1.0mL
   カラム :Micropacked ST
   カラムの温度:200℃
   キャリアガス:アルゴン
   キャリアガスの流量:20mL/min
 プロパン(1)~(4)の分析を行い、窒素ガスの含有量と酸素ガスの含有量を測定した。結果を表1に示す。測定条件は下記のとおりである。
   分析機器:ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製Tracera)
   検出器 :BID
   検出器の温度:250℃
   試料の注入量:1.0mL
   カラム :Micropacked ST
   カラムの温度:200℃
   キャリアガス:ヘリウム
   キャリアガスの流量:9.0mL/min
 プロパン(1)~(4)の分析を行い、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。測定方法を、プロパン(1)の場合を例に説明するが、プロパン(2)~(4)の場合もほぼ同様である。
 図1の膜分離装置からシリンダー1を取り外し、図4の調製装置に装着した。すなわち、シリンダー1のバルブ50は、配管51を介して圧力制御装置101に接続されており、圧力制御装置101は接続配管52を介してマスフローコントローラー102に接続されている。そして、マスフローコントローラー102は、接続配管54を介して硝酸容器60に接続されている。硝酸容器60には濃度1質量%の硝酸水溶液61が100g収容されており、接続配管54の先端が硝酸水溶液61中に配されている。また、硝酸容器60には排気口70が設けられている。
 シリンダー(1)内の液相プロパンを20℃で気化させながら、シリンダー(1)内の気相部からプロパンガスを抜き出し、硝酸容器60内の硝酸水溶液61に100mL/minの流量で流通し、バブリングした。プロパンガスと硝酸水溶液61を接触させることにより、プロパンガス中のホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンを硝酸水溶液61に吸収させた。
 プロパンガス流通後の硝酸水溶液61の質量(M1)は96gであった。プロパンガス流通前後のシリンダー1の質量差(M2)は10gであった。硝酸水溶液61を100g(M3)になるように超純水で希釈した後に、希釈した硝酸水溶液を採取して、誘導結合プラズマ質量分析計を用いて金属の分析を行い、希釈した硝酸水溶液に含有されているホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの信号強度(y)をそれぞれ計測した。
 そして、検量線を用いて信号強度(y)からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量(M)をそれぞれ算出し、それらを合計してホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量の総和を求めた。
 プロパン(1)中のホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量(M)は、下記式によって算出することができる。
       M=[{(y-b)/a}×(M3/M1)]/M2
 上記式中のaは検量線の傾きであり、bは検量線の切片である。使用した検量線は、下記のようにして作成した。すなわち、上記各不純物の含有量が0質量ppb(不純物を含有しない)、10質量ppb、100質量ppb、300質量ppb、及び700質量ppbの硝酸標準溶液をそれぞれ製造し、誘導結合プラズマ質量分析計を用いて分析を行った。そして、横軸に硝酸標準溶液中の不純物の含有量、縦軸に信号強度をプロットした検量線を作成し、その傾き(a)と切片(b)を求めた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
〔実施例1-2〕
 PTFE製のメンブレンフィルターに代えて、フッ化ナトリウム製ペレット(森田化学工業株式会社製、直径3mm×長さ5mmの円柱状ペレット)を70g充填した濾過筒(内径22.9mm、長さ100mm)をガスフィルター40として用いた点を除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(5)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(5)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例1-3〕
 PTFE製のメンブレンフィルターに代えてニッケル製のメンブレンフィルター(インテグリス社製のWafergard III)をガスフィルター40として用いた点を除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(6)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(6)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例1-4〕
 吸着塔30に充填する吸着剤としてユニオン昭和株式会社製のモレキュラーシーブ4A(A型ゼオライト、平均細孔径0.4nm)用いた点と、ガスフィルター40を用いた濾過を行わなかった点とを除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(7)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(7)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例1-5〕
 吸着塔30に充填する吸着剤として大阪ガスケミカル株式会社製のヤシ殻活性炭(平均細孔径2.5nm)用いた点と、ガスフィルター40を用いた濾過を行わなかった点とを除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(8)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(8)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例1-6〕
 実施例1-1で得たプロパン(3)に対して、図2の吸着装置を用いた精製を再度行って、プロパン(9)を得た。すなわち、実施例1-1で用いた吸着塔30にプロパン(3)を流通して、プロパン(3)を精製した。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(9)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例1-7〕
 図5に示す炭化水素の製造装置を用いてプロパン(1)の精製を行って、シリンダー200に充填されたプロパン(10)を得た。図5の製造装置は、図1~3の各装置が直列に連結した装置であり、実施例1-1と全く同様の膜分離、吸着、及び濾過を連続して行うことができるものである(すなわち、各工程で精製したプロパンをシリンダーに充填して次の工程に供するという操作が必要ない)。図1の装置と図2の装置が配管115で連結されており、図2の装置と図3の装置が配管120で連結されている。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(10)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔比較例1-1〕
 吸着塔30に充填する吸着剤としてユニオン昭和株式会社製のモレキュラーシーブ3A(A型ゼオライト、平均細孔径0.3nm)を用いた点と、ガスフィルター40を用いた濾過を行わなかった点とを除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(11)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(11)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔比較例1-2〕
 吸着塔30に充填する吸着剤として大阪ガスケミカル株式会社製の石炭活性炭(平均細孔径3.7nm)を用いた点と、ガスフィルター40を用いた濾過を行わなかった点とを除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(12)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(12)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔比較例1-3〕
 分離膜モジュール10を用いた膜分離を行わなかった点と、ガスフィルター40を用いた濾過を行わなかった点とを除いては、実施例1-1と同様にしてプロパン(1)の精製を行い、プロパン(13)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、プロパン(13)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例2~6〕
 プロパンに代えてエチレン、メタン、エタン、n-ブタン、又はイソブタンをそれぞれ用いた点を除いては、実施例1-1と同様にして精製を行い、精製された上記各炭化水素を製造した。そして、実施例1-1と同様にして、精製された上記各炭化水素中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表2~6に示す。
 なお、表2に記載のエチレン(1)は、実施例1-1のプロパン(1)に対応するものであり、粗製炭化水素であるエチレンである。また、表2に記載のエチレン(2)は、実施例1-1のプロパン(2)に対応するものであり、分離膜モジュール10を用いた膜分離をエチレン(1)に対して行って精製して得た、低水素量炭化水素であるエチレンである。表2に記載のエチレン(3)は、実施例1-1のプロパン(3)に対応するものであり、吸着塔30を用いた吸着をエチレン(2)に対して行って精製して得た、高純度炭化水素であるエチレンである。表2に記載のエチレン(4)は、実施例1-1のプロパン(4)に対応するものであり、ガスフィルター40を用いた濾過をエチレン(3)に対して行って精製して得たエチレンである。メタン、エタン、n-ブタン、及びイソブタンについても同様である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
〔比較例2〕
 炭化水素がメタンである点と、吸着塔30に充填する吸着剤として富士フィルム和光純薬株式会社製の合成ゼオライトHS-642(カチオン種:ナトリウム、モルデナイト型ゼオライト、平均細孔径0.7nm)を用いた点と、ガスフィルター40を用いた濾過を行わなかった点とを除いては、実施例1-1と同様にしてメタン(2)の精製を行い、メタン(5)を得た。
 そして、実施例1-1と同様にして、メタン(5)中の水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量を測定した。結果を表3に示す。
 実施例1-1の結果から、以下のことが分かる。すなわち、膜分離工程(水素ガス除去工程)、吸着工程、濾過工程を組み合わせることにより、プロパン中から水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンを除去することができる。
 水素ガス、窒素ガス、酸素ガスは膜分離工程及び吸着工程により除去することができ、水素ガスは膜分離工程による除去がより効果的であり、窒素ガス及び酸素ガスは吸着工程による除去がより効果的であった。
 一方、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンは、膜分離工程、吸着工程、濾過工程のいずれを用いても除去することができた。ただし、濾過工程を用いてホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの除去を行った場合は、膜分離工程及び吸着工程よりも前記不純物をより低濃度まで低減することができた。さらに、供給したプロパンの入口流量と出口流量が等しいことから、つまり定量的にプロパンが精製されたことから、生産性及び前記不純物の除去効率の観点で濾過工程による除去がより効果的であることが分かる。
 実施例1-2、1-3の結果から以下のことが分かる。すなわち、濾材として金属フッ化物、金属製メンブレンフィルターを用いて濾過することにより、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンを除去することができた。特に、金属製メンブレンフィルターを用いると、プロパン中のホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量をより低減することができた。
 実施例1-4、1-5の結果から以下のことが分かる。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xを用いた場合だけでなく、モレキュラーシーブ4Aやヤシ殻活性炭を用いた場合でも、前記不純物のさらなる低減を図ることができた。
 実施例1-6の結果から以下のことが分かる。すなわち、吸着剤による精製を一度行った炭化水素をさらに吸着剤へ流通することにより、水素ガス、窒素ガス、酸素ガスの含有量をさらに低減することができた。また、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの含有量も、ある程度低減することができた。
 実施例1-7の結果から、以下のことが分かる。すなわち、膜分離工程、吸着工程、濾過工程を連続して実施しても、プロパンの高純度化は問題なく達成することができた。
 比較例1-1、1-2の結果から、吸着剤の平均細孔径が小さすぎる又は大きすぎる場合は、プロパン中の窒素ガス、酸素ガスの含有量が増加することが示唆された。この結果は、吸着剤に吸着されていた窒素ガス、酸素ガスが、プロパンを流通することによって吸着剤から放出されることを示唆している。また、吸着剤の平均細孔径が大きい場合は、流通したプロパンが過大に吸着されるため、プロパンの生産性が低下することが示唆された。以上より、プロパンの精製に用いることができる吸着剤の平均細孔径には適切なサイズがあることが示唆された。
 比較例1-3の結果から、平均細孔径が0.3nm超過3.5nm以下である吸着剤でプロパンを処理するのみでは、窒素ガスと酸素ガスの合計の含有量、並びに、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が十分に低減されないことが分かる。このことから、炭化水素中に水素ガスが過大に含有されている場合は、吸着工程の効率が低下することが示唆された。
 実施例2~6の結果から、以下のことが分かる。すなわち、膜分離工程、吸着工程、濾過工程によって、エチレン、メタン、エタン、n-ブタン、イソブタンから水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンを問題なく除去することができた。
 比較例2の結果から、以下のことが分かる。すなわち、吸着剤としてモルデナイト型ゼオライトを用いた場合は、膜分離工程によって炭化水素中の水素ガスの含有量を100体積ppm以下に低減しても、炭化水素からの窒素ガス及び酸素ガスの吸着が十分に行われなかった。
〔実施例7〕
 プロパン(4)を用いて炭化ケイ素膜を成膜する方法について説明する。以下の工程を実施して、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面に炭化ケイ素膜を成膜した。
 まず、研磨工程を実施して、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面を研磨した。この研磨工程は2段階で行った。1段階目の研磨は機械研磨であり、直径5μm以下の砥粒を用いて、350g/cm2の加工圧力で研磨した。2段階目の研磨は化学的機械研磨であり、スラリー状の研磨液を用いて30分間研磨を行い、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面粗さRaを0.5nm未満にした。研磨液に含有されている砥粒は、平均粒子径が10~150nmであるシリカ粒子である。また、研磨液は硫酸を含有しており、20℃におけるpHが1.9である。
 次に、研磨した六方晶炭化ケイ素単結晶基板をRCA洗浄した後に、エピタキシャル成長装置内に設置した。なお、RCA洗浄とは、シリコンウエハに対して一般的に用いられている湿式洗浄方法であり、硫酸と過酸化水素水を混合した溶液、アンモニアと過酸化水素水を混合した溶液、塩酸と過酸化水素水を混合した溶液、及びフッ化水素酸水溶液を用いて、基板の表面の有機物、重金属、パーティクルを除去する洗浄方法である。
 続いて、エピタキシャル成長装置内で清浄化(ガスエッチング)工程を実施した。清浄化工程は、水素ガスの流量90slm、リアクタ内の圧力200mbar、基板温度1550℃という条件で10分間行った。
 清浄化工程が終了したら炭化ケイ素エピタキシャル成長工程を実施した。炭化ケイ素エピタキシャル成長工程におけるシランガスの流量は48sccm、プロパン(4)ガスの流量は17.6sccmであり、プロパンが有する炭素原子とシランが有するケイ素原子のモル比C/Siは1.1である。リアクタ内の圧力を200mbar、基板の温度を1550℃として、炭化ケイ素エピタキシャル成長工程を2時間実施して、厚さ10μmの炭化ケイ素エピタキシャル膜を成膜した。
 なお、エピタキシャル成長装置としては、量産型の複数枚プラネタリー型CVD装置であるアイクストロン社製Hot Wall SiC CVDを用いた。そして、六方晶炭化ケイ素単結晶の(0001)面に対して<11-20>軸方向へ4°傾けたケイ素面に、炭化ケイ素エピタキシャル膜を成長させた。その後、シランガス及びプロパン(4)の供給を止め、両ガスを排気した後に、基板温度を1分間に50℃ずつ降温させて、常温まで低下させた。
 上記手順で得られた炭化ケイ素エピタキシャル膜に含有される窒素、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの元素濃度を、二次イオン質量分析法(CAMECA社製のIMS 7f-Auto)を用いて定量した。結果を表7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
〔比較例3〕
 プロパン(4)に代えてプロパン(1)を用いた点以外は実施例7と同様にして、六方晶炭化ケイ素単結晶基板の表面上に炭化ケイ素エピタキシャル膜を成膜した。そして、炭化ケイ素エピタキシャル膜中の窒素、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの元素濃度を定量した。結果を表7に示す。
 実施例7及び比較例3の結果から、以下のことが分かる。すなわち、プロパン中に含有されている不純物の含有量を低減すると、炭化ケイ素エピタキシャル膜中の窒素、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの元素濃度を低減することができる。
   1~4・・・シリンダー
  10・・・分離膜モジュール
  12・・・非透過ガス出口
  13・・・透過ガス出口
  30・・・吸着塔
  40・・・ガスフィルター
 200・・・シリンダー

Claims (8)

  1.  炭素数が1以上4以下である炭化水素と水素ガスとを含有する粗製炭化水素から前記水素ガスを除去して、水素ガスの含有量が100体積ppm以下である低水素量炭化水素を得る水素ガス除去工程と、
     前記低水素量炭化水素を吸着剤に接触させて、水素ガスの含有量が80体積ppm以下、窒素ガス及び酸素ガスの合計の含有量が5体積ppm以下、ホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンの合計の含有量が250質量ppb以下である高純度炭化水素を得る吸着工程と、
    を備え、
     前記吸着剤は、細孔径が0.3nm超過3.5nm以下の細孔を有する結晶を有し、前記結晶の結晶形はモルデナイト型ではない炭化水素の製造方法。
  2.  前記炭化水素がメタン、エタン、エチレン、プロパン、n-ブタン、及びイソブタンのうちの少なくとも1種である請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
  3.  前記炭化水素がプロパン及びエチレンの少なくとも一方である請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
  4.  前記吸着工程は、前記低水素量炭化水素から前記窒素ガス及び前記酸素ガスの少なくとも一方を前記吸着剤で吸着する工程である請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
  5.  前記吸着工程は、前記低水素量炭化水素からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を前記吸着剤で吸着する工程である請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
  6.  前記水素ガス除去工程は、分離膜で前記粗製炭化水素から前記水素ガスを除去する工程である請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
  7.  前記粗製炭化水素、前記低水素量炭化水素、又は前記高純度炭化水素を濾材に通して、前記粗製炭化水素、前記低水素量炭化水素、又は前記高純度炭化水素からホウ素、アルミニウム、リン、硫黄、チタン、バナジウム、クロム、及びモリブデンのうちの少なくとも1種を除去する濾過工程をさらに備え、
     前記濾材は、メンブレンフィルター、焼結金属フィルター、及び金属ハロゲン化物製ペレットを複数有するフィルターのうちの少なくとも1種のフィルターである請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
  8.  請求項1~7のいずれか一項に記載の炭化水素の製造方法で製造した高純度炭化水素を原料として用いて炭化ケイ素を製造する炭化ケイ素の製造方法。
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