JP5833784B1 - クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物、及び化粧料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 合成界面活性剤を含有せず、離水しにくく安定性に優れ、さらには優れた使用感を併せ持つクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物、及び化粧料を提供する。【解決手段】 水、油性成分、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩を含有し、粘度が500〜100,000mPa・sのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物であって、該組成物全体中、合成界面活性剤を実質的に含有せず、脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸を含み、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含有量が3〜11重量%であり、脂肪酸中のベヘン酸/ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が15〜65/5〜85/0〜80であり、脂肪酸アルカリ塩がC12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩であり、該組成物に含有される脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して脂肪酸アルカリ塩を20〜45重量%含有する。【選択図】 図4

Description

本発明は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物、及び化粧料に関する。
乳化組成物は、油性成分と水溶性成分を混合し、均一に乳化させて得られるものであり、化粧用途においては、主にクリームや乳液などのスキンケア製品に利用されている。これらのスキンケア製品は、水分及び油分を効果的に補うことを目的としているが、当然ながら優れた使用感を実現することが求められる。一方で、製造後に経時的に水分が分離する場合があり、このような離水の発生は、乳化組成物の品質に悪影響を及ぼすことが懸念される。このため、乳化組成物には、使用感とともに、乳化の経時安定性(以下、乳化安定性)が求められ、いわゆる両親媒性物質を乳化剤として組成物内に含有させることが必須であり、特に、乳化剤としての効果が高く、安価に製造できる合成界面活性剤を使用することで乳化安定性を向上させることが一般的に行われている。
一方、合成界面活性剤には、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、肌荒れの原因が指摘されるものも存在する。このため、特に皮膚に用いることの多い化粧料用乳化組成物においては、合成界面活性剤を含有することなく、優れた乳化安定性及び使用感を有する製品を求める消費者も少なくない。
合成界面活性剤を含有させることなく、化粧料用乳化組成物を製造する技術としては、例えば特許文献1,2に記載のように、高級アルコールを含有させる方法がある。このように化粧料用乳化組成物を高級アルコールを含有させて製造することで、その乳化安定性を向上させることが可能である。
また、常温で液状を呈する化粧用油成分と、常温で固形状を呈する化粧用油成分の両者を用い、これらの油成分を、カルボキシビニルポリマーのアルカリ中和塩水溶液(水性ゲル)により加温条件下で高速撹拌することにより、合成界面活性剤を含有させることなく、化粧料用乳化組成物を製造することも提案されている(特許文献3参照)。
さらに、カラギーナンなどの水溶性高分子を含有させることによって、合成界面活性剤を含有させることなく、化粧料用乳化組成物を製造することも提案されている(特許文献4参照)。
特開平6−271421号公報 特開平7−267814号公報 特開2004−224722号公報 特開平8−245363号公報 特許第5658845号公報 特開昭59−139920号公報 特開2014−125428号公報
しかしながら、高級アルコールによる乳化組成物の安定化には、比較的多量の高級アルコールを含有させる必要があるため、その組成によっては、被膜感や粉っぽさなどの使用感の低下をもたらす場合がある。このため、高級アルコールを用いることなく、乳化組成物の安定性を向上させることができればより好ましい。
また、常温で液状を呈する化粧用油成分と常温で固形状を呈する化粧用油成分を水性ゲルにより加温条件下で高速撹拌する方法では、水性ゲルの調整が必要であるため製造工程がやや煩雑になる。また、乳化組成物に水性ゲルが多量に含まれると、使用感の調整が難しくなるという問題もあった。
さらに、水溶性高分子を使用すると、経時的に乳化物の粘度や硬度が変化し、保存上の問題を生じることがある上に、水相、油相共に溶解しづらく、膨潤してダマを生じやすいため、グリセリンなどの多価アルコールに事前に溶解させたり、ホモジナイザー等の機械的な力を加えるなどの処理が必要となるため、工程が煩雑になるという問題があった。
そこで、本発明者らは鋭意研究し、乳化組成物における脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩として、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸並びに、これら3種類の脂肪酸アルカリ塩を含有させることにより、合成界面活性剤を用いることなく、優れた乳化安定性を実現することに成功して発明を完成させ、当該発明について既に特許を得ている(特許文献5参照)。
なお、特許文献6には、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸などの直鎖飽和脂肪酸の少なくとも1種と室温で液状の脂肪酸の少なくとも1種とを含む合計3種以上の脂肪酸を塩にして、合計で0.5〜5wt%含む水中油型乳化物を乳液、クリーム、ファンデーションなどの化粧品に用いる技術が記載されている。しかしながら、当該技術では、合成界面活性剤を使用していたり、高級アルコールを多量に含んでいたりして、肌荒れや使用感への問題があった。
また、特許文献7には、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸及びこれらのアルカリ塩を含む水中油型乳化物を睫用化粧料に用いる旨が記載されている。しかし、当該技術では、合成界面活性剤を使用していたり、アルカリ塩としてトリエタノールアミン塩を使用しており、特許文献5に係る発明とは実質的に組成が異なるものである。
発明者らは、引き続き合成界面活性剤を含有せず、優れた乳化安定性を示す乳化組成物について鋭意研究した結果、乳化安定性に強い影響を及ぼしているのは、乳化組成物における脂肪酸アルカリ塩の組成よりもむしろ、脂肪酸の組成であることを見いだした。
すなわち、このような乳化組成物においては脂肪酸アルカリ塩が乳化剤としての役割を果たすため、脂肪酸アルカリ塩の組成が脂肪酸の組成よりも乳化安定性に強い影響を及ぼすことが推定される。しかしながら、驚くべきことに、実際にはその反対に脂肪酸の組成が脂肪酸アルカリ塩の組成よりも乳化安定性に強い影響を及ぼすという知見が得られた。
そして、本発明者らは、乳化組成物におけるベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸を特定の割合で含有させることで、幅広い範囲の脂肪酸アルカリ塩を用いて乳化安定性が飛躍的に向上したクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を得ることに成功した。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、合成界面活性剤を実質的に含有せず、その上で離水しにくく安定性に優れ、さらには優れた使用感を併せ持つクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物、及び化粧料の提供を目的とする。
この目的を達成するため、本発明のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、水、油性成分、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩を含有し、粘度が500〜100,000mPa・sのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物であって、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物全体中、合成界面活性剤を実質的に含有せず、前記脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸を含み、前記脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含有量が3〜11重量%であり、前記脂肪酸中のベヘン酸/ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が15〜65/5〜85/0〜80であり、脂肪酸アルカリ塩がC12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩であり、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される前記脂肪酸及び前記脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して、前記脂肪酸アルカリ塩を20〜45重量%含有するものとしてある。
また、本発明のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を除く油性成分を、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物全体中2〜20重量%含有するものとすることが好ましく、前記脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸のみを含むものとすることが好ましい。
また、本発明のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、前記脂肪酸アルカリ塩を含む水相に前記脂肪酸を含む油相を添加し、乳化して得られるものとすることが好ましい。
さらに、本発明の化粧料は、上記のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を含有するものとしてある。
本発明によれば、合成界面活性剤を実質的に含有せず、その上で離水しにくく安定性に優れ、さらには優れた使用感を併せ持つクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物、及び化粧料の提供が可能となる。
本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸アルカリ塩の組成の乳化安定性への影響を確認するための試験1の結果を示す図である。 本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸の好適な含有割合を特定するための試験2の結果(脂肪酸組成P1〜P9)を示す図である。 本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸の好適な含有割合を特定するための試験2の結果(脂肪酸組成P10〜P18)を示す図である。 本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸の好適な含有割合を示す三角図である。 本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の好適な合計含量を特定するための試験3の結果を示す図である。 本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸アルカリ塩の好適な含有割合を特定するための試験4の結果を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、水、油性成分、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩を含有し、粘度が500〜100,000mPa・sのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物であって、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物全体中、合成界面活性剤を実質的に含有せず、脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸を含み、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含有量が3〜11重量%であり、脂肪酸中のベヘン酸/ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が15〜65/5〜85/0〜80であり、脂肪酸アルカリ塩がC12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩であり、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して、脂肪酸アルカリ塩を20〜45重量%含有することを特徴とする。
すなわち、化粧料用乳化組成物において、合成界面活性剤を使用しなかったり、高級アルコールの使用量を減らしたりすると、その乳化安定性が極端に低下するが、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物によれば、脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸を特定の組成で使用すると共に、脂肪酸アルカリ塩としてC12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を使用することで、外相中に液晶の形成を促進し、乳化性及び安定性を大幅に向上させると共に、乳化物に硬度(粘度上昇)が生じ、外相の流動性が抑制されることで乳化の不安定化を抑制できる。
また、従来、合成界面活性剤を使用しない乳化安定化のアプローチとして知られている高級アルコールの併用では、高級アルコールが比較的多量(1%以上)必要となることで、被膜感や粉っぽさといった使用感の低下が起こりやすい。これに対し、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物によれば、高級アルコール無添加の状態でも十分な乳化安定性を得ることができるため、乳化安定性と使用感の両面で優れた乳化物を得ることが可能となる。
本実施形態に係る「クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物」には、化粧又は美容のために用いられる乳化組成物が広く含まれる。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物からなる製品としては、例えばモイスチャークリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、バニシングクリーム、ナリシングクリーム、ファンデーションクリーム、ひげそり用クリーム、ヘアクリーム、ハンドクリーム、ボディークリーム、シャンプー、コンディショナー、乳液等を挙げることができる。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、「脂肪酸」として、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸の3種類を含有する。
また、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、「脂肪酸アルカリ塩」として、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等のC12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を含有する。
これらの脂肪酸アルカリ塩は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造にあたり、系内で脂肪酸とアルカリとを反応させることにより、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有させることができる。
また、予め調製された脂肪酸アルカリ塩を配合することにより、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有させることもできる。
さらに、系内での脂肪酸とアルカリとの反応、及び予め調製された脂肪酸アルカリ塩の配合を併用することにより、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有させることも可能である。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、脂肪酸アルカリ塩を含む水相に脂肪酸を含む油相を添加し、乳化して得られるものとすることが好ましく、例えば以下のように製造することが好ましい。
まず、油性成分として、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を含むA相を準備する。
また、アルカリと反応させて脂肪酸アルカリ塩を得るためのC12〜C22の飽和脂肪酸を含むB相を準備する。
B相における飽和脂肪酸としては、1種類のみを含有させても、2種類以上を含有させても良い。
また、B相における飽和脂肪酸を、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸からなるものとした場合、これらの含有割合は、A相における脂肪酸のベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸の含有割合と異なるものとしても良い。
すなわち、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸アルカリ塩として、ベヘン酸アルカリ塩、ステアリン酸アルカリ塩、及びパルミチン酸アルカリ塩が含有される場合、ベヘン酸アルカリ塩/ステアリン酸アルカリ塩/パルミチン酸アルカリ塩の重量比が、脂肪酸中のベヘン酸/ステアリン酸/パルミチン酸の重量比と異なっていてもよい。
さらに、水溶性成分として、B相の飽和脂肪酸と等量のアルカリを含むC相を準備する。
そして、C相にB相の飽和脂肪酸を添加して混合撹拌し、脂肪酸アルカリ塩を含む混合物を調製した後、得られた混合物にA相を添加し、乳化機を用いて均一に乳化することにより、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を製造することができる。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される脂肪酸アルカリ塩は、C12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を用いることができ、カリウム塩であることが特に好ましい。
脂肪酸アルカリ塩の組成をこのようにすると、得られるクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を離水しにくく、使用感に優れ、粘度も適切なものとすることができるためである。
このような観点から、脂肪酸アルカリ塩の組成を、C12〜C18の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩とすることがより好ましく、C14〜C18の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩とすることがさらに好ましい。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、脂肪酸の合計100重量%に対して、ベヘン酸を15〜65重量%、ステアリン酸を5〜85重量%、及びパルミチン酸を0〜80重量%含有する。
すなわち、図4において、以下の4点:(B=65,S=35,P=0);(B=65,S=5,P=30);(B=15,S=5,P=80);及び(B=15,S=85,P=0)で囲まれる範囲内の重量比で脂肪酸を含有する。
ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸の含有割合をこのようにすると、得られるクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を離水しにくく、使用感に優れ、粘度も適切なものとすることができる。
このような観点から、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、脂肪酸の合計100重量%に対して、ベヘン酸を20〜60重量%、ステアリン酸を10〜80重量%、及びパルミチン酸を0〜70重量%含有することがより好ましい。
すなわち、図4において、以下の4点:(B=60,S=40,P=0);(B=60,S=10,P=30);(B=20,S=10,P=70);及び(B=20,S=80,P=0)で囲まれる範囲内の重量比で脂肪酸を含有することがより好ましい。
また、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、脂肪酸の合計100重量%に対して、ベヘン酸を20〜60重量%、ステアリン酸を20〜50重量%、及びパルミチン酸を10〜60重量%含有することがより好ましい。
すなわち、図4において、以下の5点:(B=60,S=30,P=10);(B=60,S=20,P=20);(B=20,S=20,P=60);(B=20,S=50,P=30);及び(B=40,S=50,P=10)で囲まれる範囲内の重量比で脂肪酸を含有することがさらに好ましい。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物において、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量を、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の全量に対して、3〜11重量%とすることが好ましい。
脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量をこのようにすると、得られるクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を離水しにくく、使用感に優れ、粘度も適切なものにすることができるためである。
このような観点から、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量を、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の全量に対して、4〜11重量%とすることがより好ましく、5〜11重量%とすることがさらに好ましく、8〜10重量%とすることがより一層好ましい。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、その粘度に応じた硬さを有するものとして製造され、粘度が500〜100,000mPa・sの場合に、特に好適に用いることが可能である。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物において、脂肪酸アルカリ塩は、乳化剤としての役割を果たす。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物において、脂肪酸アルカリ塩の含量を、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して、20〜45重量%とすることが好ましい。
脂肪酸アルカリ塩の含量をこのようにすると、得られるクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を離水しにくく、使用感に優れ、粘度も適切なものとすることができるためである。
このような観点から、脂肪酸アルカリ塩の含量を、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して、20〜42重量%とすることがより好ましく、20〜40重量%とすることがさらに好ましい。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造にあたり、脂肪酸アルカリ塩を、脂肪酸とアルカリとを反応させることによりクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有させる場合、アルカリは脂肪酸アルカリ塩を得るためのC12〜C22の飽和脂肪酸と等量を用いる。
また、アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を用いることができ、水酸化カリウムを用いることが好ましい。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の原料となるベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を除く油性成分は、通常の水中油型乳化組成物に配合される油分であれば特に制限はなく、例えば、オリーブ油、アーモンド油、ゴマ油、アボガド油、ヒマシ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ククイナッツ油、ローズヒップ油、杏仁油、ナタネ油、バオバブ油、アルガニアスピノサ核油、ヒマワリ油、コメヌカ油、アマニ油、コーン油、ブドウ種子油、小麦胚芽油、米胚芽油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、ミンク油、卵黄油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、シア脂、カカオ脂、牛脂、羊脂、豚脂、馬脂等のアシルグリセロール及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油、ホホバ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、モクロウ、ホホバロウ、綿ロウ、ヒマワリワックス、ライスワックス、ラノリン等のロウ類、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油、ホホバアルコール、硬化ホホバアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等を適宜含有させることができる。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物において、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を除く油性成分の含量は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の全量に対して、例えば2〜20重量%とすることが好ましい。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の原料となる水溶性成分は、水のみに限定されず、保湿剤等のその他の成分を含めることができる。保湿剤としては、例えばグリセリン、プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、トレハロース、グルコシルトレハロース、ベタイン、グルコース、マルトース、マルチトール、D-マンニット、スクロース、フルクトース、ラフィノース、ヒアルロン酸ナトリウム、グルコシルセラミド、澱粉分解糖、澱粉分解還元アルコール等が挙げられる。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物において、保湿剤の含量は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の全量に対して、例えば2〜25重量%とすることができる。
また、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物において、多様な薬効を有する各種の抽出物を、水溶性成分のその他の成分として含有させることができる。例えば、アロエエキス、ウイキョウエキス、カミツレエキス、カワラヨモギエキス、クマザサエキス、チンピエキス、シラカバエキス、ビワエキス、シソエキス、ヒバマタエキス、ボタンピエキス、ヘチマエキス、ムクロジエキス、ジオウエキス、スイカズラエキス、ジュウヤクエキス、ジユエキス、緑茶エキス、オウバクエキス、セージエキス、ローズマリーエキス、チョウジエキス、カンゾウエキス、クインスシードエキス、柿葉エキス、ペパーミントエキス、ヨクイニンエキス、セイヨウサンザシエキス、ノバラエキス、ビルベリーエキス、ザクロエキス、コメヌカエキス、オタネニンジンエキス、ニンジンエキス、トマトエキス、ソウハクヒエキス、シャクヤクエキス、ユキノシタエキス、ユーカリエキス、プラセンタエキス、シルク抽出液等を含有させることができる。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、合成界面活性剤を含有させることなく製造することができる。この「合成界面活性剤」とは、一個の分子中に親水基と親油基を同時に持ち合わせており、且つ乳化力、可溶化力、分散力等を持つ成分のうち天然に存在しない成分のことである。
具体的には、例えばショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE−ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、POE−アルキルエーテル、POE−アルキルフェニルエーテル、POE・POP−グリコール、POE・POP−アルキルエーテル、及びそれらの誘導体等が挙げられる(POEはポリオキシエチレン鎖、POPはポリオキシプロピレン鎖を表す)。
なお、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される脂肪酸アルカリ塩は、界面活性剤の一種であるが、家庭用品品質表示法において「純石けん分」として合成界面活性剤とは明確に区別されており、合成界面活性剤とは別種のものである。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造にあたり、水は他の成分を除いた残量分が配合される。
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における水の含量は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の全量に対して、例えば、50〜90重量%とすることができる。
なお、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に、その他に一般的に使用されている酸化防止剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤、無機鉱物、美白剤、香料、色素等を含有させても良い。
以下、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に適する脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の組成を特定するために行った試験等について詳細に説明するが、本発明は、以下の構成に限定されるものではない。
[試験1]
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸アルカリ塩の組成の乳化安定性への影響を確認するために、各種脂肪酸アルカリ塩の組成毎にクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を製造し、それぞれの乳化安定性、粘度及び使用感についての評価を行った。
具体的には、図1に示すように、脂肪酸アルカリ塩としてベヘン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、及びパルミチン酸カリウムを含有し、脂肪酸としてステアリン酸を含有する組成(M1)と、脂肪酸アルカリ塩としてM1と同じものを含有し、脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を含有する組成(M2)と、脂肪酸アルカリ塩としてステアリン酸カリウムを含有し、脂肪酸としてM2と同じものを含有する組成(M3)について試験を行った。
また、脂肪酸アルカリ塩としてラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ベヘン酸カリウム、オレイン酸カリウムをそれぞれ含有し、残留脂肪酸としてM2と同じものを含有する組成(M4〜M8)について試験を行った。
なお、図1において、「ベヘン酸(K)」、「ステアリン酸(K)」、「パルミチン酸(K)」、「ミリスチン酸(K)」、「ラウリン酸(K)」、「オレイン酸(K)」は、それぞれ水酸化カリウムと反応させて脂肪酸アルカリ塩を得るために配合される脂肪酸の量を示している。
クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造は、次のように行った。
まず、油性成分として、M1〜M8のそれぞれについて、脂肪酸を7.5重量%、その他の油性成分として、ハイオレイックヒマワリ油、ホホバ油、オリーブスクワランからなる液体油を8重量%、防腐剤を0.12重量%、及び酸化防止剤を0.05重量%処方し、これらの油性成分を混合してA相とした。
また、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対する脂肪酸アルカリ塩の含量が29重量%となるように、アルカリと反応させてM1〜M8の脂肪酸アルカリ塩を得るための脂肪酸約2.5重量%を含むB相を準備した。
さらに、水溶性成分として、グリセリンを18重量%、エキス成分を0.1重量%、B相の脂肪酸と等量の48%KOH水溶液を処方し、全体の残量を水として、これらの水溶性成分を混合し、C相とした。
そして、B相、C相をそれぞれ75℃に加温してC相にB相を加え、真空乳化機(PVQ−3UN,みづほ工業株式会社製)を用いて30分間混合、撹拌した。次いで、得られた混合物に70℃に加温したA相を加えて、均一に乳化した。その後、得られた乳化組成物を撹拌、混合しながら室温まで冷却し、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を得た。
クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の乳化安定性の評価は、次の方法により行った。
すなわち、製造後1日経過したクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を、チャック付きスタンドパック袋 ラミジップLZ−9(株式会社生産日本社製)の底部に40g入れ、ある程度袋を膨らませた状態でチャックをして、熱シールで密封した。これを10℃の恒温槽に入れて3時間以上放置した。次に加圧棒が固定されたレオメーター用昇降テーブルを恒温槽に入れ、上記の袋をテーブルに両面テープで固定した。テーブルを稼働させて加圧棒が袋の底部におけるクリームを十分に押圧できるように調整した。そして、この加圧装置を用いて、毎分24回、24時間加圧を行った。加圧終了後、クリームを底部に寄せて逆さにし、そのまま10℃の恒温槽で離水するまで保存した。
クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の乳化安定性の評価基準を、保存開始日から離水の確認された日までの期間(図中の離水までの期間)にもとづいて、以下のように規定した。
・加圧中 :非常に低い(図中の×)
・1〜3日 :比較的低い(図中の△)
・4〜9日 :比較的高い(図中の○)
・10〜29日 :高い (図中の◎)
・30日以上 :極めて高い(図中の☆)
本試験では、乳化安定性を加圧試験によって評価しているが、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、加圧試験における離水までの期間が4日以上であれば、製品として用いるにあたっての十分な乳化安定性を有している。
また、この加圧試験における離水までの期間は、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の乳化安定性を加速的に評価したものであり、加圧試験で長期間離水しないものは、極めて長期間の保管に適するなど、乳化安定性に関する優れた効果を奏するものである。
クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の粘度の評価は、製造の翌日のクリームについて、VISCOMETER(BROOKFIELD社製)及び3号又は4号ローターを使用して粘度[mPa・s]を測定することにより行った。
クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の使用感の評価は、製造の翌日のクリームを肌に塗布した際の使用感について、パネラー5名による官能評価をすることにより行った。具体的には、外観、伸び、白残り、被膜感、保湿感の各指標について各パネラーによる5段階評価の平均値にもとづき、以下の基準に従って評価した。
・3.1以上 :良い (図中の◎)
・2.6〜3.0:普通 (図中の○)
・2〜2.5 :やや悪い(図中の△)
・1.9以下 :悪い (図中の×)
その結果、図1に示すように、脂肪酸アルカリ塩としてベヘン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、及びパルミチン酸カリウムを含有し、脂肪酸としてステアリン酸を含有する組成(M1)のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示しているが、乳化安定性が非常に低いものであった。
これに対して、脂肪酸アルカリ塩としてM1と同じものを含有し、脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を含有する組成(M2)のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示し、乳化安定性が極めて高いものであった。
また、脂肪酸アルカリ塩としてステアリン酸カリウムを含有し、脂肪酸としてM2と同じものを含有する組成(M3)のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物も、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示し、乳化安定性が極めて高いものであった。
すなわち、M1と、M2及びM3とを比較すると、M2及びM3では脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を含有させることによって、乳化安定性が飛躍的に向上している。
一方、M2とM3とを比較すると、脂肪酸アルカリ塩の組成による大きな影響は見られず、M2とM3の乳化安定性は、ほぼ同等である結果となっている。
これらのことから、乳化剤である脂肪酸アルカリ塩の組成よりも、脂肪酸の組成が乳化安定性により強く影響していることが分かる。
また、脂肪酸アルカリ塩として飽和脂肪酸のアルカリ塩であるラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ベヘン酸カリウムをそれぞれ含有し、脂肪酸としてM2と同じものを含有する組成(M4〜M7)のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示し、乳化安定性が極めて高いか又は高いものであった。
一方、脂肪酸アルカリ塩として不飽和脂肪酸のアルカリ塩であるオレイン酸カリウムを含有し、脂肪酸としてM2と同じものを含有する組成(M8)のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示しているが、乳化安定性が非常に低いものであった。
したがって、脂肪酸アルカリ塩としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などのC12〜C22の飽和脂肪酸のアルカリ塩を用いることが好ましいことが明らかとなった。
[試験2]
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に脂肪酸として含有させるベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸の3成分の好適な割合の範囲を特定するための試験を行った。
具体的には、以下のP1〜P18までの18通りの脂肪酸組成について、脂肪酸アルカリ塩としてパルミチン酸カリウムを用いると共に、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量を9.3重量%、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対する脂肪酸アルカリ塩の含量を29重量%として、各クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を製造し、乳化安定性、粘度、使用感についての評価を行った。
なお、本試験のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造方法、並びに乳化安定性、粘度、及び使用感についての評価方法は、試験1と同様である。
以下、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に脂肪酸として含有させるベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸の合計100重量%に対する、ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸の割合を、(ベヘン酸(重量%):ステアリン酸(重量%):パルミチン酸(重量%))の形式で示す。P1〜P18の脂肪酸組成は、次の通りである。
P1(80:10:10)
P2(10:80:10)
P3(10:10:80)
P4(45:45:10)
P5(10:45:45)
P6(45:10:45)
P7(33:33:33)
P8(56:22:22)
P9(22:56:22)
P10(22:22:56)
P11(20:70:10)
P12(70:20:10)
P13(70:10:20)
P14(20:10:70)
P15(60:30:10)
P16(20:80:10)
P17(50:50:0)
P18(50:0:50)
P1〜P18についてのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の乳化安定性、粘度、及び使用感の評価結果を図2及び図3に示す。
これらの図において、P4(45:45:10)(実施例7)、P6(45:10:45)(実施例8)、P7(33:33:33)(実施例9)、P8(56:22:22)(実施例10)、P9(22:56:22)(実施例11)、P10(22:22:56)(実施例12)、P11(20:70:10)(実施例13)、P14(20:10:70)(実施例14)、P15(60:30:10)(実施例15)、P16(20:80:0)(実施例16)、及びP17(50:50:0)(実施例17)の脂肪酸組成のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示し、極めて高いか、又は高い安定性を示していた。
(乳化安定範囲の特定)
試験2により優れた乳化安定性、粘度及び使用感を示すことが確認された脂肪酸の組成を、三角図に表した。その結果を図4に示す。
図4の三角図において、(B)は、ベヘン酸を、(S)は、ステアリン酸を、(P)は、パルミチン酸を示し、右斜辺がベヘン酸の重量%を、左斜辺がステアリン酸の重量%を、底辺がパルミチン酸の重量%をそれぞれ示している。三角図内の任意の点により、これら3種類の脂肪酸の合計が100重量%となる脂肪酸組成を表すことができる。
優れた乳化安定性、粘度及び使用感を示すことが確認された脂肪酸組成は、以下の4点:(B=65,S=35,P=0);(B=65,S=5,P=30);(B=15,S=5,P=80);及び(B=15,S=85,P=0)で囲まれる重量比の範囲、すなわち、ベヘン酸15〜65重量%、ステアリン酸5〜85重量%、及びパルミチン酸0〜80重量%の範囲に存在していることがわかる。
また乳化安定性が高いものは、以下の4点:(B=60,S=40,P=0);(B=60,S=10,P=30);(B=20,S=10,P=70);及び(B=20,S=80,P=0)で囲まれる重量比の範囲、すなわちベヘン酸20〜60重量%、ステアリン酸10〜80重量%、及びパルミチン酸0〜70重量%の範囲に存在している。
さらに、乳化安定性が極めて高いものは、以下の5点:(B=60,S=30,P=10);(B=60,S=20,P=20);(B=20,S=20,P=60);(B=20,S=50,P=30);及び(B=40,S=50,P=10)で囲まれる重量比の範囲、すなわちベヘン酸20〜60重量%、ステアリン酸20〜50重量%、及びパルミチン酸10〜60重量%の範囲に集中していることがわかる。
このように、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、上記の脂肪酸の含有割合の範囲において、好適な乳化安定性、優れた粘度及び使用感を示すことが明らかとなった。
[試験3]
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の好適な合計含量を特定するための試験を行った。
具体的には、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量が2.1重量%、4.2重量%、8.4重量%、9.2重量%、10.5重量%、12.6重量%である場合のそれぞれについて、脂肪酸アルカリ塩としてステアリン酸カリウムを用いると共に、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対する脂肪酸アルカリ塩の含量を29重量%、脂肪酸組成を(B=33,S=33,P=33)として、各クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を製造し、それぞれの乳化安定性、粘度及び使用感についての評価を行った。本試験のその他の点についてのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造方法、並びに乳化安定性、粘度、及び使用感についての評価方法は、試験1と同様である。その結果を図5に示す。
図5に示される通り、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量が2.1重量%のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、粘度が極端に低く、比較的低い安定性を示し、実用に適さないものであった(比較例10)。
一方、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量が4.2〜10.5重量%のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示し、極めて高いか又は比較的高い安定性を示した(実施例18〜21)。
また、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量が12.6重量%のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、極めて高い安定性を示したものの、粘度が極端に高く、実用に適さないものであった(比較例11)。
したがって、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量を3〜11重量%とすることが好適であることが分った。
[試験4]
本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物における脂肪酸アルカリ塩の好適な含有割合を特定するための試験を行った。
具体的には、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対する脂肪酸アルカリ塩の含量(石けん分割合)が17重量%、21重量%、29重量%、36重量%、43重量%、50重量%である場合のそれぞれについて、脂肪酸アルカリ塩としてステアリン酸カリウムを用いると共に、脂肪酸組成を(B=33,S=33,P=33)として、各クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物を製造し、それぞれの乳化安定性、粘度及び使用感についての評価を行った。本試験のその他の点についてのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の製造方法、並びに乳化安定性、粘度、及び使用感についての評価方法は、試験1と同様である。その結果を図6に示す。なお、図6におけるS3のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、図5におけるT4(実施例20)のものと同一である。
図6に示される通り、石けん分割合が17重量%のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物(比較例12)は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示しているが、安定性は比較的低いものであった。
一方、石けん分割合が21〜43重量%のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物(実施例22、20、23、24)は、使用感が概ね良好であり、粘度も適切な値を示し、極めて高いか、高いか、又は比較的高い安定性を示した。
また、石けん分割合が50重量%のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物(比較例13)は、粘度は適切な値であるものの、外観が悪く、比較的低い安定性を示した。
したがって、本実施形態に係るクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物は、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物に含有される脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して、脂肪酸アルカリ塩が20〜45重量%含有されることが好適であることが分った。
以上、本発明のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物の好ましい実施形態と実施例について説明したが、本発明のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、脂肪酸以外の油性成分として、実施例とは異なる他の液体油を含有させるなど適宜変更することが可能である。
本発明は、合成界面活性剤を含有させることなく、化粧料用の乳化組成物を製造する場合に、好適に利用することが可能である。

Claims (4)

  1. 水、油性成分、脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩を含有し、粘度が500〜100,000mPs・Sのクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物であって、
    クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物全体中、合成界面活性剤を実質的に含有せず、
    前記脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸を含み、前記脂肪酸及び前記脂肪酸アルカリ塩の合計含有量が3〜11重量%であり
    記脂肪酸及び脂肪酸アルカリ塩の合計含量に対して、前記脂肪酸アルカリ塩を20〜45%含有し、
    前記脂肪酸アルカリ塩としてC12〜C22の飽和脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を含む水相に、前記脂肪酸中のベヘン酸/ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が15〜65/5〜85/0〜80である脂肪酸を含む油相を添加し、乳化して得られる
    ことを特徴とするクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物。
  2. ベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を除く油性成分を、クリーム状化粧料用水中油型乳化組成物全体中2〜20重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物。
  3. 前記脂肪酸としてベヘン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸のみを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物。
  4. 請求項1〜の何れかに記載のクリーム状化粧料用水中油型乳化組成物からなる化粧料。
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