JP5825910B2 - 防眩フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、防眩フィルム、及び防眩フィルムの製造方法に関する。
近年、ディスプレイ装置は家庭で使用され、一般ユーザーの取り扱いに対してもタフネスが要求されるようになってきている。例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、SED(Surface-Conduction Electron-emitter Display)などのような様々な画像表示装置においては、その表面に用いられる光学フィルムには、高い物理強度(耐擦傷性など)、透明性、耐薬品性、耐候性(耐湿熱性、耐光性など)が要求される。また、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、防眩性能や反射防止性能が要求されている。
また、ディスプレイ装置の薄型化に伴い、各部材への薄型化要求が強く、防眩フィルムに対しては70μm以下のフィルムが強く求められている。しかし、防眩フィルムを70μm以下にした際には、物理強度が悪化してしまう問題があった。
物理強度確保のため、高い硬度を示す材料として、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)やPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)といった(メタ)アクリレート系の樹脂を用いた硬化層をフィルムの支持体上に設けることが知られているが、このような硬化層を設けた光学フィルムは、カールが強いことが原因で、製造、加工での取り扱い性が難しくなったり、他の部材と貼り合わせ後に剥がれ現象が生じたりすることがある。これらを改良するために、硬化層の膜厚を低減したり(例えば特許文献1参照)、変性アクリレート系化合物(例えば、特許文献2及び3参照)、ウレタンアクリレート系化合物(例えば、特許文献4参照)、性質の異なるアクリレート系化合物(例えば、特許文献5及び6参照)等を使用したりする発明が開示されている。
特開2006−276839号公報 特開2005−181996号公報 特開2005−275391号公報 特開2007−256844号公報 特開2005−103979号公報 特開2003−335983号公報
しかしながら、上記特許文献1〜6に記載の発明では、カール改良効果、脆性等の改良が認められるものの、フィルム表面硬度自体が低下してしまい、表面硬度とこれらの性質を両立することが困難であった。
また、黒締りのある画像表示を得るためには防眩フィルムは低ヘイズであることが求められるが、低ヘイズの防眩フィルムにおいては、防眩層の硬化収縮により透明支持体が変形して発生する反射光の散乱ムラ(硬化ムラ)が大きいことが課題であった。この硬化ムラは防眩性を有さないクリアフィルム(ヘイズがほぼ0%)や、ヘイズ10%以上の高ヘイズの防眩フィルムでは殆ど視認されない。一方、低ヘイズの防眩フィルムでは、硬化ムラの視認性が上がり品質が低下していた。また、パネルの薄型化とともに、防眩フィルムへも薄層化が望まれていたが、透明支持体の厚みが薄くなると基材が変形しやすくなり、ムラが悪化するため、改良が望まれていた。
本発明の目的は、防眩性に優れ、画像表示装置に用いた際に黒締りがある画像表示が得られ、高硬度で、硬化ムラが抑制されて面状が良好で、取り扱い性に優れる防眩フィルム及びその製造方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、該防眩フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記の構成とすることにより、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の構成である。
<1>
厚み30〜65μmの透明支持体上に膜厚2.0〜5.0μmの防眩層を有する防眩フィルムの製造方法であって、
下記(A)〜(D)を含み、固形分比20〜40質量%の硬化性組成物を前記透明支持体上に15〜25cc/m塗布し塗膜を形成後、該塗膜に紫外線を照射し硬化させて前記防眩層を形成する方法であり、
前記紫外線の照射過程において、前記透明支持体を直径400mm以下のバックアップロールに巻きかけて該透明支持体の搬送方向にかかる張力を400N/m以上とし、かつ前記塗膜の膜面温度を25℃以下とした状態で、少なくとも3灯以上の紫外線照射装置により紫外線照射し、第1灯目、第2灯目の紫外線照射のピーク照度がそれぞれ5〜50mW/cm、前記3灯以上の紫外線照射装置による紫外線の照射量の合計が100mJ/cm以上である防眩フィルムの製造方法。
(A)平均アクリル当量が100以下のアクリル化合物
(B)平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性粒子を、前記アクリル化合物100質量部に対して3〜15質量部
(C)α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を、前記アクリル化合物100質量部に対して0.5〜5質量部
但し、前記α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。
(D)有機溶剤
<2>
前記透明支持体が、フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を1個以上4個以下有する化合物のエステル化化合物を含むセルロースエステルフィルムである、<1>に記載の防眩フィルムの製造方法。
<3>
前記防眩層上に、更に前記防眩層よりも屈折率が低い低屈折率層を形成する工程を有する<1>又は<2>に記載の防眩フィルムの製造方法
なお、本発明は上記<1>〜<>に記載の構成を有するものであるが、以下その他についても参考のため記載した。
[1]
厚み30〜65μmの透明支持体上に、膜厚2.0〜5.0μmの防眩層を有する防眩フィルムであって、
該防眩性層が少なくとも平均アクリル当量が100以下のアクリル化合物が架橋した架橋アクリル樹脂、及び平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性粒子を有し、
該防眩フィルムのヘイズ値が0.5〜3.0%、25℃60%RH下における最大カールの曲率の絶対値が0〜18/mである、防眩フィルム。
[2]
前記防眩フィルムの25℃60%RH下における最大カールの曲率の絶対値が0〜8/mである[1]に記載の防眩フィルム。
[3]
前記透明支持体が、フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を1個以上4個以下有する化合物のエステル化化合物を含むセルロースエステルフィルムである[1]又は[2]に記載の防眩フィルム。
[4]
前記防眩層上に更に前記防眩層よりも屈折率が低い低屈折率層を有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
[5]
[1]〜[4]のいずれか一項に記載の防眩フィルムを、偏光膜の保護フィルムの少なくとも一方に用いた偏光板。
[6]
[1]〜[4]のいずれか一項に記載の防眩フィルム、又は[5]に記載の偏光板が画像表示面に配置された画像表示装置。
[7]
厚み30〜65μmの透明支持体上に膜厚2.0〜5.0μmの防眩層を有する防眩フィルムの製造方法であって、
下記(A)〜(D)を含み、固形分比20〜40質量%の硬化性組成物を前記透明支持体上に15〜25cc/m塗布し塗膜を形成後、該塗膜に紫外線を照射し硬化させて前記防眩層を形成する、防眩フィルムの製造方法。
(A)平均アクリル当量が100以下のアクリル化合物
(B)平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性粒子を、前記アクリル化合物100質量部に対して3〜15質量部
(C)α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を、前記アクリル化合物100質量部に対して0.5〜5質量部
(D)有機溶剤
[8]
前記(C)α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンである[7]に記載の防眩フィルムの製造方法。
[9]
前記紫外線の照射過程において、前記透明支持体を直径400mm以下のバックアップロールに巻きかけて該透明支持体の搬送方向にかかる張力を400N/m以上とし、かつ前記塗膜の膜面温度を25℃以下とした状態で、少なくとも3灯以上の紫外線照射装置により紫外線照射し、第1灯目、第2灯目の紫外線照射のピーク照度がそれぞれ5〜50mW/cm、前記3灯以上の紫外線照射装置による紫外線の照射量の合計が100mJ/cm以上である[8]に記載の防眩フィルムの製造方法。
本発明によれば、防眩性に優れ、画像表示装置に用いた際に黒締りがある画像表示が得られ、高硬度で、硬化ムラが抑制されて面状が良好で、取り扱い性に優れる防眩フィルムを得ることができる。
本発明の防眩フィルムの製造方法において、3灯以上の紫外線照射装置により紫外線照射する一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は、特に断りのない限り、「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
[防眩フィルム]
本発明の防眩フィルムは、厚み30〜65μmの透明支持体上に、膜厚2.0〜5.0μmの防眩層を有する防眩フィルムであって、該防眩性層が少なくとも平均アクリル当量が100以下の架橋性アクリル化合物が架橋した架橋アクリル樹脂、及び平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性樹脂粒子を有し、該防眩フィルムのヘイズ値が0.5〜3%、25℃60%RH下における最大カールの曲率の絶対値が0〜18/mであることを特徴とする。このような構成により、防眩性に優れ、黒締り性が良好で(画像表示装置に用いた際に黒締りのある画像表示が得られ)、高硬度で、硬化ムラがなく面状が良好な防眩フィルムを得ることができる。
高硬度の防眩層を実現するためには、防眩層の膜の架橋密度を上げる、膜厚を上げることが効果的である事が一般に知られている。しかしながら、これらの方法によって防眩層高硬度化を目指すと、膜硬化時の硬化収縮により透明支持体が変形し、カールが生じたり、硬化ムラが生じて面状が悪化したりする問題があった。
これに対して、本発明では、防眩層の厚みを2.0〜5.0μmに設計し、平均アクリル当量が100以下の架橋性アクリル化合物が架橋した架橋アクリル樹脂を用いることによって、高硬度で面状が良好な防眩フィルムが得られることを見出した。好ましくは、前記架橋性アクリル化合物を架橋させる際に、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を用いることで、防眩層内において透明支持体から遠い側での重合率を高く、透明支持体に近い側での重合率を低く設計することができる。この様な重合率分布を防眩層が有することで、硬化収縮応力が透明支持体へ伝達するのが抑制され、高硬度と良好な面状を両立でき、更にカールも小さくすることができる。
本発明の防眩フィルムにおいて、防眩層の膜厚は2.0〜5.0μmであり、2.5〜4.5μmが好ましい。防眩層の膜厚をこの範囲に設定することによって、面状が良好で、乾燥等の負荷が少なく、高い生産性を保持することができる。
本発明の防眩フィルムにおいて、25℃60%RH下における最大カールの曲率の絶対値は0〜18/mであり、0〜8/mが好ましい。この値が小さいほど、カールが小さいことを意味する。該最大カールの曲率の絶対値は小さい方が好ましいが、この範囲に設計することによって、製造や加工での取り扱い性が容易になる。
最大カールの絶対値は、JIS−K7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板法により実施した。
測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間5時間であり、カールを下記の数式で表したときの値である。
(数式) カール=1/R Rは曲率半径(m)
本発明の防眩フィルムにおいて、ヘイズ値(全ヘイズ値)は0.5〜3%であり、0.7〜2%が好ましい。ヘイズ値をこの範囲にすることによって、画像表示装置に適用した際に、優れた防眩性と黒締り性を両立する事ができる。
ここで、防眩フィルムの全ヘイズ値の測定は以下のようにして行うことができる。
即ち、JIS−K7136に準じて、得られた防眩フィルムの全ヘイズ値(H)を測定する。測定装置としては、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH2000を用いることができる。
以下、防眩層を構成する各成分、及び該防眩層を形成するのに用いる硬化性組成物に用いる各成分等について説明する。
(A)架橋アクリル樹脂
本発明の防眩フィルムにおける防眩層は、高硬度を実現するために、平均アクリル当量が100以下のアクリル化合物が架橋した架橋アクリル樹脂を含む。
ここで、「アクリル当量」とは、化合物における(メタ)アクリロイル基1個当たりの分子量を意味する。「平均アクリル当量」とは、アクリル当量の質量平均値を意味する。
架橋アクリル樹脂は、アクリル当量が100以下のアクリル化合物を単独で架橋させた樹脂であってもよいし、複数種のアクリル化合物から得られる樹脂であってもよい。複数種のアクリル化合物を用いる場合、アクリル当量が100以下のアクリル化合物と100を超えるアクリル化合物とを混合して用いてもよく、その場合にはアクリル当量の質量平均値を100以下とする。
平均アクリル当量が100以下のアクリル化合物を用いることにすることによって、防眩層の架橋密度が上がり、高硬度を実現することができる。本発明に用いるアクリル化合物の平均アクリル当量は、99以下が好ましく、97以下がより好ましい。下限値としては85以上が好ましい。
アクリル当量が100以下のアクリル化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。中でも透明支持体への染み込み性が少なくし硬度を向上させる観点から、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましく用いられる。
上記アクリル化合物と併用できるアクリル当量が100を超えるアクリル化合物としては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが好ましい。該モノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンアクリレート}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)等が挙げられる。中でも、硬度とカールのバランスから、ポリウレタンアクリレートが好ましい。ポリウレタンアクリレート化合物類は市販されているものを用いることもでき、UV7640B(日本合成化学製)、UV1700B(日本合成化学製)、UA306H(共栄社化学製)、UA306I(共栄社化学製)、U−4HA(新中村化学製)等が好ましく用いられる。
本発明においては、防眩層は、上記のアクリル当量が100以下のアクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化させて形成する(即ち、該アクリル化合物を架橋させて架橋アクリル樹脂とする)ことが好ましい。
硬化性組成物におけるアクリル当量が100以下のアクリル化合物の含有量は、特に限定されないが、組成物全体を100質量部としたときに、75〜95質量部が好ましく、80〜92質量部がより好ましい。
(B)透光性粒子
本発明の防眩フィルムにおける防眩層は、平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性粒子を少なくとも1種含有する。透光性粒子の平均粒径は好ましくは1.5μm〜2.5μmである。透光性粒子の平均粒径を1μm以上にすることによって優れた防眩性を得ることができる。また、平均粒径を3μm以下にすることによって膜厚2.0〜5.0μmの薄膜系の防眩層においても、面のザラツキ感を抑制し、画像表示装置に適用した際に黒締りのある表示画像を得ることができる。
膜厚を平均粒径で除した値は1.2〜3.5が好ましく、1.5〜2.8が更に好ましい。膜厚/平均粒径をこの範囲の値とすることによって、防眩性や面のザラツキ感に優れ、且つ粒子合成過程で発生する粗大粒子による欠陥を低減することが可能である。
透光性粒子は有機粒子(樹脂粒子)、無機粒子のどちらでも良く、両者を組み合わせて用いることもできるが、屈折率の制御が容易であり、凹凸微細化の観点でも有機粒子が好ましい。
表面形状を調整する手段として、平均粒径が互いに異なる2種以上の粒子を使用することや、屈折率が互いに異なる2種以上の粒子を使用することも好ましい。
透光性粒子の粒径の測定方法は、粒子の粒径を測る測定方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、粒子の粒度分布をコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算して得られた粒子分布から算出する方法や、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法がある。
なお、本発明において平均粒径はコールターカウンター法によって得られた値を用いる。
無機粒子としては、凝集状の金属酸化物粒子等を挙げることができる。また、使用に際しては、1種又は2種以上混合して用いることができる。凝集状の金属酸化物粒子は、特に凝集状のシリカ粒子と凝集状のアルミナ粒子が好適であり、なかでも、一次粒子径が数十nmの粒子が凝集体を形成した凝集状のシリカが、適度な表面凹凸を安定に形成できる点で好ましい。凝集状のシリカは、例えば、珪酸ナトリウムと硫酸の中和反応により合成された、いわゆる湿式法により得ることができるがこれに限らない。湿式法にはさらに沈降法、ゲル化法に大別されるが、本発明はどちらの方法であってもよい。
透光性粒子が樹脂粒子の場合(以下、透光性樹脂粒子ともいう)、その屈折率は、ヨウ化メチレン、1,2−ジブロモプロパン、n−ヘキサンから選ばれる任意の屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性樹脂粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
透光性樹脂粒子はまた、バインダー(例えば、架橋アクリル樹脂)との屈折率差を制御することで内部散乱性を付与することができる。但し、屈折率差を大きくしすぎるとコントラストの低下を伴ってしまうため、透光性樹脂粒子を除く防眩層の屈折率との差を0.050以下に設計することが好ましく、更に好ましくは0.020以下であり、最も好ましいのは0.010以下である。この領域内に設計することで、高いコントラストを得ることができる。なお、本発明において2種以上の透光性樹脂粒子を用いる場合、屈折率は同じであっても、異なっていても良い。
透光性樹脂粒子の具体例としては、例えば架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋ポリエチルメタアクリレート粒子、架橋ポリブチルメタアクリレート粒子、架橋ポリプロピルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アクリレート−スチレン共重合粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋ポリエチルメタアクリレート粒子、架橋ポリブチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子等が好ましい。さらにはこれらの樹脂粒子の表面にフッ素原子、シリコン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、燐酸基等を含む化合物を化学結合させた表面修飾粒子やシリカやジルコニアなどのナノサイズの無機微粒子を表面に結合した粒子も例に挙げられる。
本発明において用いられる透光性粒子は1種でも2種以上でもよい。
また、本発明では、防眩層を形成するのに用いられる硬化性組成物に、上記の平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性粒子を少なくとも1種含有させる。該硬化性組成物における透光性粒子の含有量は、防眩性と黒締り性を両立する観点から、前記アクリル化合物100質量部に対して3〜15質量部であることが好ましく、5〜12質量部であることがより好ましい。
(C)重合開始剤
本発明における前記アクリル化合物の重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、前記アクリル化合物、透光性粒子、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、有機溶剤、及び、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤等を含有する硬化性組成物(塗布液)を調製し、該組成物を透明支持体上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して防眩層を形成することが好ましい。より好ましくは、硬化性組成物がラジカル重合開始剤、紫外線の照射により該組成物を硬化させて防眩層を形成する。
また、電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。光及び熱ラジカル重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。光重合開始剤は2種以上を併用することもできる。
光ラジカル重合開始剤は、硬度確保と硬化ムラ抑制の観点から、防眩層を形成するための硬化性組成物における前記アクリル化合物100質量部に対して、総量として0.5〜5質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜4質量部の範囲で使用することがより好ましい。
本発明においては、光ラジカル重合開始剤として、少なくともα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含有することが好ましい。α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は非常に高い反応性を有し、塗布膜の表面硬化性が高いため、塗布膜内において透明支持体から遠い側での重合率を高く、透明支持体に近い側での重合率を低く設計することができる。このため、膜硬化時に発生する収縮応力が透明支持体へ伝わり難くなり、硬化ムラを低減することができる。また、優れた表面硬度を得ることができる。
α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。なかでも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましい。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、BASF製のイルガキュア(Irgacure)907、369、379など、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。なかでも、イルガキュア907が好ましい。
本発明において用いられるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は1種でも2種以上でもよい。
[有機高分子増粘剤]
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物は、有機高分子増粘剤を含むことができる。
ここでいう増粘剤とは、それを添加することにより組成物の粘度が増大するものを意味し、添加することにより組成物の粘度が上昇する大きさとしては、好ましくは0.5〜50mPa・sであり、更に好ましくは1〜5mPa・sである。
本発明では有機高分子増粘剤としてセルロースエステルが好ましい。中でも、セルロースアセテートブチレートが特に好ましい。これらを含め、有機高分子増粘剤の例としては以下のものが挙げられる。
ポリ−ε−カプロラクトン
ポリ−ε−カプロラクトン ジオール
ポリ−ε−カプロラクトン トリオール
ポリビニルアセテート
ポリ(エチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン グルタレート)
ポリ(1,4−ブチレン スクシネート)
ポリ(1,4−ブチレン テレフタレート)
ポリ(エチレンテレフタレート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレン グルタレート)
ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)
ポリ(ネオペンチルグリコール セバケート)
ポリ(1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(1,3−プロピレン グルタレート)
ポリビニルブチラール
ポリビニルホルマール
ポリビニルアセタール
ポリビニルプロパナール
ポリビニルヘキサナール
ポリビニルピロリドン
ポリアクリル酸エステル
ポリメタクリル酸エステル
セルロースアセテート
セルロースプロピオネート
セルロースアセテートブチレート
有機高分子増粘剤の分子量は数平均分子量で0.3万〜40万が好ましく、0.4万〜30万がより好ましく、0.5万〜20万が特に好ましい。
有機高分子増粘剤の添加量は、防眩層を形成するための硬化性組成物の全固形分に対して0.2〜10質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましい。
[界面活性剤]
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物には、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いることができる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることができる。
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(以下、「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられる。
該フッ素系ポリマーとしては、
下記(i)のモノマーに由来する繰り返し単位を含む、アクリル樹脂若しくはメタアクリル樹脂、又は該繰り返し単位とこれに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体、あるいは、
下記(i)のモノマーに由来する繰り返し単位と、更に下記(ii)のモノマーに由来する繰り返し単位とを含む、アクリル樹脂若しくはメタアクリル樹脂、又はこれら繰り返し単位に共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体
が挙げられる。
(i)下記一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式イ
Figure 0005825910
一般式イにおいてR11は水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子又は−N(R12)−を表し、mは1〜6の整数、nは2〜4の整数を表す。R12は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
(ii)前記(i)と共重合可能な下記一般式ロで示されるモノマー
一般式ロ
Figure 0005825910
一般式ロにおいて、R13は水素原子又はメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子又は−N(R15)−を表し、R15は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、又は−N(CH)−が好ましい。
14は置換基を有してもよい炭素数4以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等が挙げられるが、この限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーに用いられるこれらの一般式イで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの各単量体に基づいて10モル%以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、硬化性組成物100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲であり、より好ましくは0.005〜3質量部の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。フッ素系ポリマーの添加量が0.001質量部以上であればフッ素系ポリマーを添加した効果が充分得られ、また5質量部以下であれば、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)に悪影響を及ぼしたり、といった問題が生じない。
[有機溶剤]
本発明の防眩フィルムの各層を形成するための硬化性組成物に用いられる有機溶剤としては、各成分を溶解または分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。
本発明の防眩層を形成するための硬化性組成物においては、透明支持体と塗布膜の密着性を確保するため、沸点80℃以下の溶剤を硬化性組成物の全溶剤中の5〜50質量%含有することが好ましく、10〜30質量%含有することが更に好ましい。沸点80℃以下の溶剤量で染み込みをコントロールすることができる。透明支持体への樹脂成分の染み込みをコントロールすることで、良好な密着性と硬度の両立を図ることができる。
その他の溶剤として、乾燥速度の調整のために沸点が100℃超の溶剤を含有することが好ましい。
沸点が80℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、などのアルコール類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃を超える溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
また、透光性粒子の凝集性をコントロールするために、SP値が23以上の溶剤を全溶剤中の20〜80質量%含有することが好ましい。SP値をこの範囲にすることによって、透光性粒子の凝集を促進し、優れた防眩性と黒締まり性を実現することができる。SP値が23以上の溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等を上げる事ができる。なかでも、2−プロパノールが好ましい。
防眩層を形成するための硬化性組成物において、有機溶剤の含有量は、該組成物100質量部に対して、150〜400質量部であることが好ましく、200〜350質量部であることがより好ましい。
[無機フィラー]
本発明の防眩層には、上記の透光性粒子に加えて、屈折率の調整、膜強度の調整、硬化収縮減少、さらに低屈折率層を設けた場合の反射率低減の目的に応じて、無機フィラー使用することもできる。例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物からなり、一次粒子の平均粒子径が、一般に0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下1nm以上である微細な高屈折率無機フィラーを含有することも好ましい。
透光性粒子との屈折率差を調整するために、マトリックスの屈折率を低くする必要が生じた場合は、無機フィラーとして、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等の微細な低屈折率無機フィラーを用いることができる。好ましい粒径は、前記の微細な高屈折率無機フィラーと同じである。
無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
無機フィラーの添加量は、防眩層の全固形分中の5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜20質量%である。なお、無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分短いために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
[防眩フィルムの構成]
本発明の防眩フィルムは、一般に、最も単純な構成では、透明支持体上に防眩層を塗設した構成である。
本発明の防眩フィルムの好ましい層構成の例を下記に示すが、特にこれらの層構成のみに限定されるわけではない。
・支持体/防眩層
・支持体/ハードコート層/防眩層
・支持体/防眩層/ハードコート層
・支持体/防眩層/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・支持体/防眩層/ハードコート層/低屈折率層
[低屈折率層]
本発明では、防眩層の上に低屈折率層を形成することもできる。低屈折率層は防眩層よりも低い屈折率を有することが好ましい。低屈折率層の厚さは50〜200nmであることが好ましく、70〜150nmであることが更に好ましく、80〜120nmであることが最も好ましい。
低屈折率層の屈折率は、直下の層の屈折率より低く、1.20〜1.55であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.40であることが特に好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は低屈折率層形成用の硬化性組成物を硬化して得ることが好ましい。
好ましい低屈折率層の硬化性物組成の態様としては、
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物を含有する組成物、
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物、
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと無機微粒子(特に中空構造を有する無機微粒子が好ましい。)を含有する組成物、
などが挙げられる。
(1)及び(2)に関しても、無機微粒子を含有することが好ましく、さらに屈折率の低い中空構造を有する無機微粒子用いると、低屈折率化や無機微粒子添加量と屈折率の調整などの観点で特に好ましい。
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物
架橋性または重合性の官能基を有する含フッ素化合物としては、含フッ素モノマーと架橋性または重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。これら含フッ素ポリマーの具体例は、特開2003−222702号公報、特開2003−183322号公報等に記載されている。
上記のポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、上記の防眩層の硬化性樹脂化合物として説明した2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物
含フッ素のオルガノシラン化合物の加水分解縮合物を主成分とする組成物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高く好ましい。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、特許317152号公報に記載されている。
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
更に別の好ましい態様として、低屈折率の粒子とバインダーからなる低屈折率層が挙げられる。低屈折率粒子としては、有機でも無機でも良いが、内部に空孔を有する粒子が好ましい。中空粒子の具体例は、特開2002−79616号公報に記載のシリカ系粒子に記載されている。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30が更に好ましい。バインダーとしては、上記防眩層の頁で述べた二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。
本発明に用いられる低屈折率層用の組成物には、前述の光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合性化合物を含有する場合には、該化合物に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の重合開始剤を使用できる。
本発明に用いられる低屈折率層には、無機粒子を併用することができる。耐擦傷性を付与するために、低屈折率層の厚みの15%〜150%、好ましくは30%〜100%、更に好ましくは45%〜60%の粒径を有する微粒子を使用することができる。
本発明において、低屈折率層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のポリシロキサン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“ KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”,“X−22−164B”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−167B”,“X−22−161AS” (商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;、「サイラプレーンFM0725」,「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833、オプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300、MCF−323 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらのポリシロキサンフッ素系化合物やポリシロキサン構造を有する化合物は低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
[透明支持体]
本発明における透明支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートやなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムが更に好ましい。
透明支持体の厚さは、薄膜化のため、30〜65μmであり、好ましくは35〜60μmであり、40〜60μmがより好ましい。
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。更にセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
また、前記透明支持体には、下記に記載する糖エステル化合物を含有する事が好ましい。糖エステル化合物を含有することによって、透明支持体から防眩層への可塑剤の泣き出しが低減され、高硬度を得ることができる。
(糖エステル化合物)
−糖残基−
前記糖エステル化合物とは、該化合物を構成する多糖中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物のことを言う。すなわち、ここで言う糖エステル化合物には広義の糖誘導体類も含まれ、例えばグルコン酸のような糖残基を構造として含む化合物も含まれる。すなわち、前記糖エステル化合物には、グルコースとカルボン酸のエステル体も、グルコン酸とアルコールのエステル体も含まれる。
前記糖エステル化合物を構成する多糖中の置換可能な基は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中には、糖エステル化合物を構成する多糖由来の構造(以下、糖残基とも言う)が含まれる。前記糖残基の単糖当たりの構造を、糖エステル化合物の構造単位と言う。前記糖エステル化合物の構造単位は、ピラノース構造単位又はフラノース構造単位を含むことが好ましく、全ての糖残基がピラノース構造単位又はフラノース構造単位であることがより好ましい。また、前記糖エステルが多糖から構成される場合は、ピラノース構造単位又はフラノース構造単位をともに含むことが好ましい。
前記糖エステル化合物の糖残基は、5単糖由来であっても6単糖由来であってもよいが、6単糖由来であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中に含まれる構造単位の数は、1〜4であることが好ましい。即ち、前記糖エステル化合物は、フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を1個以上4個以下有する化合物のエステル化化合物であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中に含まれる構造単位の数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。すなわち、前記糖エステル化合物を構成する糖が2糖類〜4糖類であることが好ましく、2糖類〜3糖類であることがより好ましく、2糖類であることが特に好ましい。
前記糖エステル化合物はヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を2〜4個含む糖エステル化合物であることがより好ましく、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を2個含む糖エステル化合物であることがより好ましい。
前記単糖または2〜4個の単糖単位を含む糖類の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロースであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
前記糖エステル化合物の置換基の好ましい例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。その中でも、アルキル基またはアシル基がより好ましく、メチル基、アセチル基、ベンゾイル基がより好ましく、ベンゾイル基およびアセチル基のうち少なくとも一方であることが特に好ましく、ベンゾイル基がより特に好ましい。
前記糖エステルの中でも、下記一般式(1)で表される芳香族糖エステル化合物と下記一般式(2)で表される脂肪族糖エステル化合物を含有することが好ましい。
一般式(1) (HO)m−G−(L−R1)n
一般式(2) (HO)t−G’−(L’−R2)r
(一般式(1)及び(2)中、GおよびG’はそれぞれ独立に単糖残基または二糖残基を表す。R1はそれぞれ独立に脂肪族基または芳香族基を表し、少なくとも1つは芳香族
基を表す。R2はそれぞれ独立に脂肪族基を表す。LおよびL’はそれぞれ独立に2価の
連結基を表す。m、n、rおよびtは0以上の整数を表す。但し、m+nおよびr+tはそれぞれ前記Gが残基ではなく同じ骨格の環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しい。)
本発明に用いることができる前記一般式(1)又は(2)で表される前記糖エステル化合物は、フラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物であることが好ましい。
なお、前記m+nおよびr+tの上限値は、前記GまたはG’の種類によって定まる値を採用することができ、GまたはG’が単糖残基であれば5、二糖残基であれば8となる。
前記一般式(1)又は(2)で表される前記糖エステル化合物は、フラノース構造もしくはピラノース構造を1個有する前記GまたはG’が単糖残基である化合物(A)中の、又は、フラノース構造もしくはピラノース構造の少なくとも1種を2個結合した前記GまたはG’が二糖残基である化合物(B)中の、OH基の全て又は一部をエステル化したエステル化化合物であるのが好ましい。
化合物(A)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
化合物(B)の例としては、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストースが挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられが、これらに限定されるものではない。
これらの化合物(A)及び化合物(B)の中で、特にフラノース構造とピラノース構造の双方を有する化合物が好ましい。例としては、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フクラトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。また、化合物(B)において、フラノース構造もしくはピラノース構造の少なくとも1種を2個結合した化合物であることも、好ましい態様の1つである。
化合物(A)及び化合物(B)中のOH基の全てもしくは一部をエステル化するのに用いられる置換基としては、特に制限はない。その中でも、モノカルボン酸を用いることが好ましい。すなわち、前記一般式(1)中の前記R1、および前記一般式(2)中の前記
2が、それぞれ独立にアシル基を表すことが好ましい。
前記モノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種類以上の混合であってもよい。前記R1または前記R2が複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一方、前記一般式(1)中の前記L、および前記一般式(2)中の前記L’が、それぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−NR11−(R11は1価の置換基を表す)のいずれか一つを表すことが好ましく、また、前記L1または前記L’が複数ある場合は、互いに
同一であっても異なっていてもよい。その中でも、前記L1または前記L’が−O−を表
すことが、前記R1およびR2としてアシル基で容易に置換できる観点から好ましい。
本発明では、透明支持体として、ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性及び耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。透明支持体とその上に設けられる防眩層との密着強度をより向上させるため、ポリエチレンテレフタレートフィルムは易接着処理が施されたされたものであることが更に好ましい。市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
[防眩フィルムの製造方法]
本発明の防眩フィルムの製造方法においては、前記硬化性組成物を透明支持体上に塗布し塗膜(塗布膜)を形成後、該塗膜に電離放射線(好ましくは紫外線)を照射し硬化させて防眩層を形成する。
ここで、硬化性組成物の固形分比は、20〜40質量%であり、25〜30質量%であることが好ましい。また、硬化性組成物の透明支持体上への塗布量は、15〜25cc/mであり、17〜20cc/mであることがより好ましい。固形分比、塗布量をこの範囲に設定する事によって、塗布性に優れ、良好な面状を得ることができる。
[塗布方式]
本発明の防眩フィルムの各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(特開2003−164788号公報参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
[乾燥、硬化条件]
本発明における防眩層など塗布により層形成する場合の、乾燥、硬化方法に関して、好ましい例を以下に述べる。
本発明では、電離放射線による照射と、照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理とを組み合わせることにより、硬化することが有効である。
以下に、いくつかの製造工程のパターンを示すが、これらに限定されるものではない。(以下の表で、「−」は熱処理を行っていないことを示す。)
Figure 0005825910
その他、電離放射線硬化時に同時に熱処理を行う工程も好ましい。
本発明においては、上記のとおり、電離放射線による照射と組み合わせて熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、防眩フィルムの透明支持体、防眩層を含めた構成層を損なうものでなければ特に制限はないが、好ましくは40〜150℃、更に好ましくは50〜130℃、最も好ましくは60〜110℃である。これにより、塗布後20秒以内に塗膜中の固形分濃度を70質量%以上にすることが好ましく、80質量%以上にすることが更に好ましい。
熱処理に要する時間は、使用成分の分子量、その他成分との相互作用、粘度などにより異なるが、15秒〜1時間、好ましくは20秒〜30分、最も好ましくは30秒〜5分である。
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましい。紫外線ランプ等により、好ましくは100mJ/cm〜1000mJ/cm、より好ましくは150〜500mJ/cmのエネルギー照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。
本発明の防眩層の形成において、照射の際には、前記エネルギー照射量を一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。硬化ムラを良化させるという観点から、少なくとも3回以上に分割して照射することが好ましい。分割回数は、3〜10回が好ましく、3〜5回がより好ましい。
1回目及び2回目の照射では、最大照度が5〜50mW/cmが好ましく、5〜20mW/cmがより好ましい。照射量は10〜100mJ/cmが好ましく、20〜50mJ/cmがより好ましい。
3回目以降の照射では、最大照度は20〜1000mW/cmが好ましく50〜500mW/cmが更に好ましい。照射量は、分割して照射する照射量の合計が100mJ/cm以上となっていれば良く、好ましくは照射量の合計が100〜1000mJ/cm、より好ましくは150〜500mJ/cmである。
1回目及び2回目の照射の最大照度は、3回目以降の照射の最大照度より小さい方が好ましい。
硬化初期となる1回目及び2回目の照射の際の最大照度を5〜50mW/cmと低照度とすることにより、硬化収縮応力が緩和され、硬化ムラが低減することができる。また、3回目以降の照射により層全体の重合率を上げることができ、十分な硬度を確保することができる。
また、複数回の照射の間(例えば、1回目の照射と2回目の照射の間や2回目の照射と3回目の照射の間)に、紫外線を未照射とする時間を設けてもよい。ここで、未照射とは、実質的に光が照射されないことをいい、例えば、照度1mW/cm以下の環境下、好ましくは0.2mW/cm以下の環境下に置くことをいう。このような未照射な時間を設けることにより、硬化収縮応力の緩和を進め、硬化ムラを更に低減することができる。
前記分割照射は、同一の照射源(紫外線照射装置)により、照度及び照射量を変えて行っても、分割回数に応じた複数の照射源により行ってもよい。
好ましくは、フィルムの搬送方向の異なる場所に紫外線照射装置を3灯以上設置し、それぞれの照射装置で照度、照射量を調整することが好ましい。
図1に、4灯の紫外線照射装置により分割照射する一例を模式的に示す。図1に示すようにフィルム10の搬送方向の異なる場所に紫外線照射装置11〜14を設置してそれぞれの紫外線照射装置によりフィルム10を照射する。
この際、第1灯目と第2灯目の最大照度は5〜50mW/cmが好ましく、5〜20mW/cmがより好ましい。また、第3灯目以降の最大照度は20〜1000mW/cmが好ましく50〜500mW/cmがより好ましい。紫外線照射装置の設置灯数は、3〜10灯が好ましく、3〜5灯がより好ましい。紫外線照射装置間の距離は特に制限はないが、好ましくは装置間に紫外線が未照射な領域ができることが好ましく、例えば、未照射な時間が好ましくは2秒〜60秒であり、より好ましくは10〜20秒となるような距離を保つことが好ましい。
第1灯目と第2灯目の最大照度を5mW/cm以上にすることで硬化を促進させ、50mW/cm以下にすることによって硬化ムラを低減することができる。この様に硬化初期を低照度で照射することによって、硬化収縮応力が緩和され、硬化ムラが低減すると推定している。第3灯目以降の最大照度は20〜1000mW/cmにすることによって、膜全体の重合率を上げることが好ましい。
また、紫外線の照射過程において、透明支持体を直径400mm以下のバックアップロール(図1におけるロール15及び16)に巻きかけて該透明支持体の搬送方向にかかる張力を400N/m以上とし、かつ前記塗膜の膜面温度を25℃以下とした状態で、上記分割照射することがより好ましい。
搬送方向にかかる張力を400N/m以上、バックアップロールの直径を400mm以下にすることによって、塗膜の硬化収縮に対する保持力が増し、硬化ムラを抑制することができる。従来は、硬化によるクニックが発生する等の問題があったため、バックアップロールの直径は400mmより大きいものを用いることが一般的であったが、本発明では、防眩層の硬化を分割照射により行うことによって、直径400mm以下のバックアップロールを用いることが可能となり、よりいっそう、硬化ムラを低減することができる。
上記搬送方向にかかる張力は、好ましくは500N/m以上、より好ましくは600N/m以上である。上限としては700N/m以下が好ましい。また、バックアップロールの直径は好ましくは350mm以下、より好ましくは300mm以下であり、クニック等の故障を発生させることなくフィルムを搬送するために200mm以上であることが好ましく、250mm以上であることがより好ましい。
塗膜の膜面温度を25℃以下とすることで、透明支持体の弾性率が向上し、硬化ムラを低減する事ができる。該膜面温度は、20℃以下であることが好ましく、18℃以下であることがより好ましい。結露を防止する観点から10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。
[偏光板]
本発明の防眩フィルムは、偏光膜とその両側に配置された保護フィルムとを含む偏光板の、その保護フィルムの一方又は両方に使用して、防眩性を有する偏光板とすることができる。
一方の保護フィルムとして本発明の防眩フィルムを用い、他方の保護フィルムには、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよいが、その他方の保護フィルムには、溶液製膜法で製造され、かつ10〜100%の延伸倍率でロールフィルム形態における幅方向に延伸したセルロースアセテートフィルムを用いることが好ましい。
また、偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、本発明の防眩フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい態様である。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
また偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70°に傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落番号0020〜0030に詳しい記載がある。
[画像表示装置]
本発明の防眩フィルム又は偏光板は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に用いることができる。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例101〜117、201及び202は「参考例」に読み替えるものとする。
[実施例101〜117及び比較例101〜112]
(粒子分散液の調製)
以下の表2に示す組成の透光性樹脂粒子の分散液D101〜D106は、攪拌しているMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液中に透光性樹脂粒子を分散液の固形分濃度が30質量%になるまで徐々に加え、30分間攪拌して作製した。分散液D107は、攪拌しているMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液中に、透光性樹脂粒子とDisperbyk−166を分散液の固形分濃度が45質量%になるまで徐々に加え、30分間攪拌して作製した。表2中の数値は、各成分の「質量部」を表す。
Figure 0005825910
表2中記載の透光性樹脂粒子は、以下の粒子である。
A:平均粒径1.5μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子(屈折率1.525)
B:平均粒径2.0μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子(屈折率1.525)
C:平均粒径2.5μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子(屈折率1.525)
D:平均粒径3.0μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子(屈折率1.525)
E:平均粒径6.0μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子(屈折率1.525)
F:平均粒径0.7μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子(屈折率1.525)
また、Disperbyk−166(商品名)(アミン価20KOH/g)は、ビックケミー製の高分子化合物である。
(防眩層用塗布液の調製)
以下の表3に示す組成で各成分を添加し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液A101〜A113、及びB101〜B110を調製した。表3中の数値は、各成分の「質量部」を表す。
Figure 0005825910
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製)アクリル当量96
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]アクリル当量88
ビスコート360:トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製〕アクリル当量150
UV1700B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製 アクリル当量112
CAB:セルロースアセテートブチレート 531−1[イーストマン・コダック製]
Irgacure 819: ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド[ホスフィンオキサイド系光重合開始剤、BASF製]
Irgacure 369: 2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1 [α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、BASF製]
Irgacure 907: 2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン[α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、BASF製]
Irgacure 184: 1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン[アルキルフェノン系光重合開始剤、BASF製]
SP−13:以下のフッ素系界面活性剤
Figure 0005825910
(防眩層の塗設)
60μm、40μm又は35μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルムをロール形態で巻き出して、防眩層用塗布液A101〜A113、B101〜B110を使用し、防眩フィルム試料を作製した。具体的には、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で各塗布液を塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度150mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させて防眩層を形成した後、巻き取った。この際、塗膜の膜面温度は18℃、支持体の搬送方向張力が350N/m、直径500mmのバックアップロールを用いて、防眩フィルムを作成した。
(防眩フィルムの鹸化処理)
得られた防眩フィルムを次の条件で鹸化処理・乾燥した。
アルカリ浴:1.5mol/dm3水酸化ナトリウム水溶液、55℃で120秒。
第1水洗浴:水道水、60秒。
中和浴:0.05mol/dm3硫酸、30℃−20秒。
第2水洗浴:水道水、60秒。
乾燥:120℃、60秒。
(フロント用偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗したトリアセチルセルロースフィルムと、防眩フィルムにおける鹸化処理済みの各々のフィルムとを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させて延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護してフロント用偏光板を作製した。このとき、トリアセチルセルロースフィルムの膜厚は対応する防眩フィルムと同じものを使用した。
(リア用偏光板の作製)
防眩フィルムを下記に示す光学補償フィルムに変更したこと以外は、前記フロント用偏光板と同様にして、リア用偏光板を作製した。
(光学補償フィルムの作製)
下記の組成の内層用及び外層用ドープをそれぞれ調製した。
内層用ドープの組成:
セルロースアセテートC−1 100質量部
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000)
下記レターデーション発現剤 7質量部
Figure 0005825910
下記の重合体P−2 9.0質量部
下記染料(ブルーイング染料) 0.000078質量部
Figure 0005825910
ジクロロメタン 423.9質量部
メタノール 63.3質量部
外層用ドープの組成:
セルロースアセテートC−1 100質量部
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000)
前記レターデーション発現剤 7質量部
下記の重合体P−2 9.0質量部
前記染料(ブルーイング染料) 0.000078質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子 0.14質量部
(「AEROSIL R972」日本アエロジル(株)製)
ジクロロメタン 424.5質量部
メタノール 63.4質量部
重合体P−2:TPA/PA/SA/AA(=45/5/30/20(モル%))のジカルボン酸残基と、エチレングリコール(100モル%)のジオール残基とからなる重縮合体であって、両末端がアセチルエステル残基で封止されている、数平均分子量が900の重縮合体(ここで、TPAはテレフタル酸、PAはフタル酸、SAはセバシン酸、AAはアジピン酸である。)
上記組成の外層及び内層ドープ液をバンド流延装置を用い、支持体面側外層、内層、空気界面側外層の3層構造となるように、2000mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に同時積層共流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が40質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、ついで、テンターで両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.22倍となるように、45%/分の速度で横方向に延伸(横延伸)した。延伸開始時の残留溶剤量は30質量%であった。延伸後に搬送しながら115℃の乾燥ゾーンで35分間乾燥させた。乾燥後に1340mm幅にスリットし、各層の膜厚比が支持体面側外層:内層:空気界面側外層=3:94:3で、総膜厚60μm、40μm、35μmのセルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムをそれぞれ得た。
(液晶表示装置の作製)
VA型液晶表示装置(LC−32DZ3 シャープ社(製))に設けられているフロント、及びリアの偏光板及び位相差膜を剥がし、代わりに上記で作製したそれぞれの偏光板を、フロントはトリアセチルセルロースフィルムが、リアは光学補償フィルムが液晶セル側になるように配置し、透過軸が製品に貼られていた偏光板と一致するように貼り付けて、防眩フィルムを有する液晶表示装置を作製した。なお、リアの偏光板は、フロントの防眩フィルムで使用したトリアセチルセルロースフィルムの膜厚と同じ膜厚の光学補償フィルムを用いたものを使用した。
(防眩フィルム及び液晶表示装置の評価)
得られた防眩フィルム及び液晶表示装置に対して、以下の評価を行った。
<1>鉛筆硬度
得られた防眩フィルムを、JIS―K5400に従う鉛筆硬度試験で評価した。
本発明では、2H以上を合格(○)、不合格を×とした。また、表3には合格となる鉛筆硬度と、( )内には2Hで5回削った際に傷のつかなかった回数(回/5)を記載した。
<2>防眩性
作製した防眩フィルムを、液晶テレビ(LC−32DZ3 シャープ社(製))に実装し、黒表示における物体の写り込み程度を下記基準で目視評価した。
写り込みが全く気にならない : ◎
写り込みがほぼ気にならない : ○〜◎
写り込みが若干気になる : ○
写り込みが非常に気になる : ×
<3>面状(硬化ムラ)
作製した防眩フィルムを、液晶テレビ(LC−32DZ3 シャープ社(製))に実装し、明室環境下で黒表示における面状を下記基準で目視評価した。ここで、硬化ムラは、防眩フィルムを作成した際の搬送方向と略並行に発生し、スジ状に観察されるムラである。
ムラが全く気にならない : ◎
ムラがほぼ気にならない : ○〜◎
ムラが若干気になる : ○
ムラが非常に気になる : ×
<4>ザラツキ感
作製した防眩フィルムを、液晶テレビ(LC−32DZ3 シャープ社(製))に実装し、明室環境下で、黒表示した液晶テレビ表面のザラツキ感を下記基準で目視評価した。ザラツキ感が良いほど黒締りのある表示画像が得られる。
ザラツキ感が全く気にならない : ◎
ザラツキ感がほぼ気にならない : ○〜◎
ザラツキ感が若干気になる : ○
ザラツキ感が非常に気になる : ×
<5>ヘイズ
JIS−K7136に準じて、得られた光拡散フィルムの全ヘイズ値(H)を測定した。装置には日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH2000を用いた。
<6>カール
JIS−K7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板法により実施した。
測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間5時間であり、カールを下記の数式で表したときの値である。
(数式 カール=1/R Rは曲率半径(m)
以下の表4に、防眩フィルム、該防眩フィルムを用いた偏光板および画像表示装置の評価結果を記載する。
Figure 0005825910
表4に示す様に、本発明の防眩フィルムは、硬化ムラが抑制され、硬度やザラツキ感、防眩性に優れる。
[実施例201〜206]
(防眩層の塗設)
実施例201〜206の防眩フィルムを作製においては、実施例101〜115の製造方法から、紫外線硬化時の膜面温度、搬送方向張力、バックアップロール径、UV照射パターン(UV1〜UV5の照度)を下記表4の様に変更して防眩フィルムを作製した。
UV1とUV2の間には、未照射(照度0.2mW/cm以下)を設けず、UV2とUV3の間には未照射時間を3秒設けた。また、UV1〜UV5のトータルでの照射量300J/cmとした。
作製した防眩フィルムを用いて、実施例101〜115と同様に、偏光板を作製して画像表示装置に装着し、評価した。評価結果を表5に示す。
Figure 0005825910
表5に示す様に、搬送張力を上げる、バックアップロール径を下げる、分割照射することによって、カール値を低減し、硬化ムラを改良できることが分かった。
[実施例301〜302]
フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を1個以上4個以下有する化合物のエステル化化合物を含むセルロースエステルフィルムを下記方法によって作製した。得られたセルロースエステルフィルムに透明支持体を変更した以外は、実施例206と同様にして防眩フィルム301〜302を作製した。作製した防眩フィルムを用いて、実施例101〜115と同様に、偏光板を作製して画像表示装置に装着し、評価した。評価結果を表6に示す。
Figure 0005825910
<セルロースエステルフィルムの作製方法>
(セルロースアシレートの調製)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(コア層用ドープの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層用ドープとしてセルロースアシレート溶液を調製した。各セルロースアシレート溶液の固形分濃度が23.5質量%となるように溶剤(塩化メチレン/メタノール/ブタノール=84/15/1)の量は適宜調整した。
・セルロースアシレート(アセチル置換度2.85) 100.0質量部
・糖エステル(下記化合物1) 11.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV−1) 2.0質量部
・溶剤 365.5質量部
(化合物1)
Figure 0005825910
(表層用ドープの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、表層用ドープとしてセルロースアシレート溶液を調製した。各セルロースアシレート溶液の固形分濃度が18.0質量%となるように溶剤(塩化メチレン/メタノール/ブタノール=84/15/1)の量は適宜調整した。
・セルロースアシレート(アセチル置換度2.81) 100.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV−1) 1.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV−2) 1.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV−3) 1.0質量部
Figure 0005825910
(セルロースエステルフィルムの作製)
−10℃に冷却された金属バンド支持体上に接するように前記コア層用ドープを膜厚55μmのコア層になるように、コア層用ドープの上に前記表層用ドープを膜厚5μmの表層になるように、支持体上にコア層用ドープが接するように、ダイから共流延した。得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、30〜40℃で搬送しながら乾燥させた後、枠張りして130℃で20分間後乾燥させた。また、実施例302では、コア層の厚みを35μmに変更した以外は、同様にしてフィルムを作成した。
<反射防止フィルムの作製>
[低屈折率層の塗設]
(無機粒子分散液(B−1)の調製)
特開2002−79616号公報の調製例4から調製時の条件を変更して、内部に空洞を有するシリカ微粒子を作製した。これを水分散液状態からメタノールに溶媒置換した。最終的に固形分濃度が20質量%になるように調節して、平均粒子径45nm、シェル厚み約7nm、シリカ粒子の屈折率1.30の粒子が得られた。これを分散液(B)とする。
前記分散液(B)の500質量部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン15質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水を9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加した。さらに総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換し、最終的に固形分濃度が20質量%になるように調節して分散液(B−1)を調製した。
(低屈折率層用塗布液の調製)
含フッ素ポリマー(P−12:含フッ素共重合体、特開2007−293325号公報の例示化合物)を7.6g、DPHAを1.4g、分散液(B−1)を2.4g、光重合開始剤(イルガキュア907)0.46g、メチルエチルケトン190g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート48gを添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
(低屈折率層の塗設)
実施例101〜115、201〜206、301〜302の防眩フィルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液を前記のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、90℃で75秒間乾燥の後、窒素パージ下酸素濃度0.01〜0.1%で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量240mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、低屈折率層を有する防眩フィルムを作製した。低屈折率層の屈折率は1.36であった。低屈折率層を塗設した防眩フィルムは黒締り性が更に良化し、品質の高い反射防止機能付き防眩フィルムを得ることができた。
10 フィルム
11〜14 紫外線照射装置
15、16 ロール

Claims (3)

  1. 厚み30〜65μmの透明支持体上に膜厚2.0〜5.0μmの防眩層を有する防眩フィルムの製造方法であって、
    下記(A)〜(D)を含み、固形分比20〜40質量%の硬化性組成物を前記透明支持体上に15〜25cc/m塗布し塗膜を形成後、該塗膜に紫外線を照射し硬化させて前記防眩層を形成する方法であり、
    前記紫外線の照射過程において、前記透明支持体を直径400mm以下のバックアップロールに巻きかけて該透明支持体の搬送方向にかかる張力を400N/m以上とし、かつ前記塗膜の膜面温度を25℃以下とした状態で、少なくとも3灯以上の紫外線照射装置により紫外線照射し、第1灯目、第2灯目の紫外線照射のピーク照度がそれぞれ5〜50mW/cm、前記3灯以上の紫外線照射装置による紫外線の照射量の合計が100mJ/cm以上である防眩フィルムの製造方法。
    (A)平均アクリル当量が100以下のアクリル化合物
    (B)平均粒径が1.0〜3.0μmの透光性粒子を、前記アクリル化合物100質量部に対して3〜15質量部
    (C)α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を、前記アクリル化合物100質量部に対して0.5〜5質量部
    但し、前記α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。
    (D)有機溶剤
  2. 前記透明支持体が、フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を1個以上4個以下有する化合物のエステル化化合物を含むセルロースエステルフィルムである、請求項1に記載の防眩フィルムの製造方法。
  3. 前記防眩層上に、更に前記防眩層よりも屈折率が低い低屈折率層を形成する工程を有する請求項1又は2に記載の防眩フィルムの製造方法。
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