JP5249375B2 - 積層フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は積層フィルムの製造方法に関し、特に、有機溶剤を含む塗布液を重層塗布することにより支持体上に機能層を積層する積層フィルムの製造方法に関する。
近年、画像表示装置は大画面化が進み、例えば防眩性フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルムが液晶表示装置に配置される。例えば、防眩性フィルム、反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止する。
上述の光学フィルムは、一般的に、連続走行する長尺の支持体上に複数の機能層を設けることにより製造される。支持体上に性質の異なる塗布液を1層ずつ塗布・乾燥し、それを複数回繰り返すことで、複数の機能層が支持体上に形成される。しかし、生産性の観点から、一回の塗布工程で複数の塗布液を塗布する重層塗布を用いることが望ましい。
ところが、重層塗布では、隣接する塗布液同士が混合する問題がある。塗布液同士の混合を防止するため、特許文献1は、水系の塗布液を使用する場合において、1組の隣接する2層の間にゼラチンをバインダーとする中間層を設けることを開示する。同時重層塗布した後、冷却等することでバインダーをゲル化し、塗布液同士の混合を抑制できる。
しかしながら、防眩性フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルムを製造するとき、通常、溶媒に有機溶剤が使用される。水系の塗布液で慣用されるゼラチンをバインダーとして有機溶剤に添加すると、溶解せずに凝集する問題がある。凝集が酷いと、塗膜の透明性が悪化したり、点欠陥故障が生じたり、光学フィルムにとって致命的な欠陥となる。
有機溶剤を含む塗布液同士の混合を防止するため、特許文献2は、有機溶剤を含む塗布液を重層塗布する系において、下層を形成する塗工液に、真溶剤と他の溶剤の混合比率をゲル化開始比率以上とした塗工液を使用することを提案している。同時重層塗布した後の乾燥過程で、下層塗工液中の真溶剤の濃度が低下し、隣接する塗布液層との間にゲル化層が形成される。このゲル化層により塗布液同士の混合を防止する。
しかし、この方式は、乾燥が進まなければゲル化が始まらないので、塗布直後からゲル化層が充分形成されるまでの間に時間がかかり、上層と下層の混合が進んでしまう問題がある。
特開2003−94826号公報 特開2003−62517号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、有機溶剤を含む塗布液を重層塗布した場合においても、上層と下層の混合を抑制できる積層フィルムの製造方法を提供する。
本発明の積層フィルムの製造方法は、第1の電荷を有する粒子を分散させた第1の有機溶剤を含む第1の塗布液と、前記第1の電荷と反対の第2の電荷を有するバインダーを溶解した第2の有機溶剤を含む第2の塗布液とを準備する第1工程と、走行する支持体に、前記支持体の一方面に前記第2の塗布液と前記第1の塗布液とをウェットオンウェット重層塗布することで第2の塗膜と第1の塗膜とを形成し、電荷中和により前記粒子と前記バインダーとをゲル化させる第2工程と、を有する。
本発明によれば、第1の塗布液と第2の塗布液とをウェットオンウェット重層塗布することにより、第1の塗布液と第2の塗布液との接触面で、第1の電荷を有する粒子と第2の電荷を有するバインダーとを電荷中和によりゲル化させる。ゲル化により、第1の塗布液と第2の塗布液との接触面の粘度が上昇し、これにより塗布液同士の混合を防止することができる。第1の塗布液と第2の塗布液との接触によりゲル化が開始されるので、重層塗布した後の初期段階から塗布液同士の混合を防止することができる。
本発明の他の態様による積層フィルムの製造方法は、好ましくは、前記第2の塗布液は、極性有機溶媒を含む。
本発明の他の態様による積層フィルムの製造方法は、好ましくは、前記第1の電荷を有する粒子は、5nm以上100nm以下の粒子径を有する。
本発明の他の態様による積層フィルムの製造方法は、好ましくは、積層フィルムのヘイズが1.0以下である。第1の塗布液と第2の塗布液の混合を抑制しつつ、ヘイズも低く抑えられるので、透明感・高級感がある高品位の反射防止フィルムを高速生産することが可能になる。
本発明の他の態様による積層フィルムの製造方法は、好ましくは、前記第2の塗布液と前記第1の塗布液とはエクストルージョン方式で前記支持体に塗布され、前記第1の塗膜と前記第2の塗膜とは、それぞれ30μm以下のウェット膜厚を有する。
本発明の積層フィルムの製造方法によれば、有機溶剤を含む塗布液同士の混合を防止することができる。
防眩性フィルムを模式的に示す断面図。 重層塗布を示す概念図。 層間混合の防止を示す概念図。 試験1の積層フィルムの断面方向のTEM写真。 試験2の積層フィルムの断面方向のTEM写真。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
<構造>
図1は、積層フィルムの一つである反射防止フィルムの基本構造の断面図を示す。図1に示す積層フィルム10は、支持体3と、支持体3上に設けられたハードコート層2と、ハードコート層2上に設けられた低屈折率層1とを含んでいる。低屈折率層1は、樹脂層1bと樹脂層1b中に分散された粒子1aとを含んでいる。ハードコート層2は樹脂層2bと樹脂層2b中にバインダー2aを含んでいる。
粒子1aとして、シリカ、中空シリカ、コロイダルシリカ、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化アルミナ等を使用することができる。これらの粒子の内、シリカ、中空シリカ、コロイダルシリカは溶媒中で負の電荷を帯びている。一方、酸化アルミナは正の電荷を帯びている。また、それぞれの粒子に反対の電荷を持つポリマーや界面活性剤を吸着させて粒子単独とは反対の電荷を持たせた粒子も使用することができる。
バインダー2aは粒子1aと反対の第2の電荷を帯びている。バインダー2aとしてカチオン性ポリマー(オリゴマー)、アニオン性ポリマー(オリゴマー)を使用することができる。カチオン性ポリマー(オリゴマー)は正の電荷を帯びている。カチオン性ポリマー(オリゴマー)としては、アミン塩型ポリマー(オリゴマー)、またはアンモニウム塩型ポリマー(オリゴマー)を挙げることができる。アミン塩型ポリマー(オリゴマー)として、第1級〜第3級アミン塩型ポリマー(オリゴマー)を、アンモニウム塩型ポリマー(オリゴマー)として、第2級〜第4級アンモニウム塩型ポリマー(オリゴマー)を挙げることができる。
アニオン性ポリマー(オリゴマー)は負の電荷を帯びている。アニオン性ポリマー(オリゴマー)として、カルボン酸塩型、リン酸塩型、スルホン酸塩型ポリマー、セッケン(石けん・石鹸)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS, LAS)、高級アルコール硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、α−スルホ脂肪酸エステル(α−SF)、α−オレフィンスルホン酸塩、、モノアルキルリン酸エステル塩(MAP)、アルカンスルホン酸塩(SAS)等を挙げることができる。
本実施の形態では、第1の電荷を有する粒子1aと、第1の電荷と反対の電荷を有するバインダー2aとの電荷中和により、ゲル化層を形成する。その結果、製造過程において、ハードコート層2と低屈折率層1とが混合するのを抑制できる。
積層フィルム10は、支持体3上に、1層のハードコート層2と、ハードコート槽に隣接する1層の低屈折率層1とを少なくとも備えている。目的に応じてその他の機能層を単独又は複数層設けることができる。
図1に示すように、支持体3上にハードコート層2及び低屈折率層1を積層すると、反射防止フィルムとして好適に用いることができる。ハードコート層2の上に光の波長の1/4前後の膜厚で低屈折率層1を形成することにより、薄膜干渉の原理により表面反射を低減することができる。
本形態の製造方法を利用できる層構成の例を下記に示す。
・支持体/ハードコート層/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/帯電防止層
・支持体/ハードコート層/帯電防止層 兼 中屈折率層
・支持体/ハードコート層/帯電防止層 兼 高屈折率層
・支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折層
<支持体>
支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、特に限定はない。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度のものを用いることができるが、好ましくは25μm〜250μmであり、30μm〜90μmであることがより好ましい。
支持体の幅は任意のものを使うことができるが、ハンドリング、得率、生産性の点から通常は100〜5000mmのものが用いられ、800〜3000mmであることが好ましく、1000〜2000mmであることがさらに好ましい。
支持体の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.0001〜0.5μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることがさらに好ましい。
(セルロースアシレートフィルム)
上記各種フィルムの中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましい。
セルロースアシレートフィルムについては力学特性、透明性、平面性などを改良する目的のため、種々の改良技術が知られており、公開技報2001−1745に記載された技術は公知のものとして本発明のフィルムに用いることができる。
セルロースアシレートフィルムの中でもセルローストリアセテートフィルムが特に好ましく、セルロースアシレートフィルムに酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多い方が好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、さらには33%以上、特に34%以上であることが好ましい。さらにセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性及び耐湿性に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。
透明プラスチックフィルムとその上に設けられる機能層との密着強度をより向上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであることがさらに好ましい。市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
<ハードコート層>
フィルムに物理的強度を付与するために、支持体3の一方の面にハードコート層2が設けられる。ハードコート層2は、光学的機能の観点から、1.48〜2.00の範囲の屈折率を有する。ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(ハードコート層形成用の塗布液:第2の塗布液)
第2の塗布液に用いられる第2の有機溶剤としては、各成分を溶解または分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶剤は2種類以上のものを混合して用いることができる。特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、メチルエチルケトン(79.6℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中ではメチルエチルケトン、2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃を以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、または、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリール基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)
アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
モノマーバインダーとしては、各層の屈折率を制御するために、屈折率の異なるモノマーを用いることができる。特に高屈折率モノマーの例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
また、例えば特開2005−76005号、同2005−36105号に記載されたデンドリマーや、例えば特開2005−60425号記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
電荷を帯びたバインダーを使用するときにはアルコール(極性有機溶媒)を併用することが好ましい。バインダーを溶解するためアルコールが用いられる。アルコールとして、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく使用される。
<低屈折率層>
積層フィルムの反射率を低減するため、低屈折率層が用いられる。
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、光学フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90度以上であることが好ましい。さらに好ましくは95度以上であり、特に好ましくは100度以上である。
前記硬化性組成物は、(A)前記含フッ素ポリマー、(B)粒子、(C)オルガノシラン化合物を含有してなるのが好ましい。
低屈折率層には、本発明の微粒子を分散・固定するためにバインダーが用いられる。バインダーとしては、前述したハードコート層で述べたバインダーを用いることができるが、バインダー自身の屈折率の低い含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル素材などを用いることが好ましい。含フッ素ポリマーあるいは含フッ素ゾルゲルとしては、熱または電離放射線により架橋し、形成される低屈折率層表面の動摩擦係数0.03〜0.30であり、水に対する接触角85〜120°となる素材が好ましい。
(低屈折率層形成用の塗布液:第1の塗布液)
第1の塗布液に用いられる第1の有機溶剤としては、第2の塗布液に使用される第2の有機溶剤を使用することができる。
本発明にはポリマーのバインダーのうち、特に低屈折率層には含フッ素共重合体化合物を(含フッ素ポリマ−バインダー)好ましく用いることができる。
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やR−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
架橋反応性付与のための構成単位としては主として以下の(A)、(B)、(C)で示される単位が挙げられる。
(A):グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、
(B):カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、
(C):分子内に上記(A)、(B)の官能基と反応する基とそれとは別に架橋性官能基を有する化合物を、上記(A)、(B)の構成単位と反応させて得られる構成単位、(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で合成できる構成単位)が挙げられる。
上記(C)の構成単位は該架橋性官能基が光重合性基であることが好ましい。ここに、光重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シンナモイル基、シンナミリデンアセチル基、ベンザルアセトフェノン基、スチリルピリジン基、α−フェニルマレイミド基、フェニルアジド基、スルフォニルアジド基、カルボニルアジド基、ジアゾ基、o−キノンジアジド基、フリルアクリロイル基、クマリン基、ピロン基、アントラセン基、ベンゾフェノン基、スチルベン基、ジチオカルバメート基、キサンテート基、1,2,3−チアジアゾール基、シクロプロペン基、アザジオキサビシクロ基などを挙げることができ、これらは1種のみでなく2種以上であってもよい。これらのうち、(メタ)アクリロイル基及びシンナモイル基が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
光重合性基含有共重合体を調製するための具体的な方法としては、下記の方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
a.水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸クロリドを反応させてエステル化する方法、
b.水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させてウレタン化する方法、
c.エポキシ基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化する方法、
d.カルボキシル基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、エポキシ基を含有する含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化する方法。
なお、上記光重合性基の導入量は任意に調節することができ、塗膜面状安定性・無機粒子共存時の面状故障低下・膜強度向上などの点からカルボキシル基やヒドロキシル基等を一定量残すことも好ましい。
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N、N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N、N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。好ましいポリマーについては、特開2002−243907号、特開2002−372601号、特開2003−26732号、特開2003−222702号、特開2003−294911号、特開2003−329804号、特開2004−4444、特開2004−45462号に記載のものを挙げることができる。
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平6−93100号、特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平11−189621号の実施例1、2、及び3のポリマー、または特開平2−251555号の共重合体A−2及びA−3を挙げることができる。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
本発明に好ましく用いることのできるポリマーの好ましい分子量は、質量平均分子量が5000以上、好ましくは10000〜500000、最も好ましくは15000〜200000である。平均分子量の異なるポリマーを併用することで塗膜面状の改良や耐傷性の改良を行うこともできる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号公報及び特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、前記ハードコート層で述べた多官能モノマーを挙げることができる。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
第1の塗布液中に、オルガノシラン化合物の加水分解物及び/またはその部分縮合物の少なくとも一種の成分、いわゆるゾル成分(以降このように称する場合もある)を含有することが耐擦傷性の点で好ましい。
特に、反射防止フィルムにおいては反射防止能と耐擦傷性を両立させるために、低屈折率層と機能層の共にゾル成分を含有することが特に好ましい。このゾル成分は、塗布液を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成し上記層のバインダーの一部となる。また、該硬化物が重合性不飽和結合を有する場合、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
オルガノシラン化合物は、下記一般式1で表されるものが好ましい。
一般式1:(R−Si(X)4−m
上記一般式1において、R1は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Xは、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びRCOO(Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。例えばCHCOO、CCOO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。mは1〜3の整数を表し、好ましくは1〜2である。
粒子として、シリカ、中空シリカ、コロイダルシリカ、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化アルミナ等を使用することができる。粒子は、溶媒中で正または負の電荷を帯びている。中空シリカの製造方法は、例えば特開2001−233611や特開2002−79616に記載されている。特にシェルの内部に空洞を有している粒子で、そのシェルの細孔が閉塞されている粒子が特に好ましい。なお、これら中空シリカ粒子の屈折率は特開2002−79616に記載の方法で算出することができる。
例えば、シリカ、中空シリカ、及びコロイダルシリカは溶媒中で負の電荷を帯びている。
粒子は、好ましくは、5nm以上100nm以下の粒子径を有し、より好ましくは、50nm以下の粒子径を有する。粒子径が大きいほど、隣層に拡散しにくい。一方、粒子径が100nmより大きいと、粒子の頭が膜面から飛び出して剥落する場合がある。また、膜面に凹凸が形成されて膜が白化しやすくなり、低ヘイズが必要な用途に適さなくなる場合がある。
<積層フィルムの製造方法>
第1の電荷を有する粒子を分散させた第1の有機溶剤を含む第1の塗布液が調製される。第2の電荷を有するバインダー溶解した第2の有機溶剤を含む第2の塗布液が調製される。
粒子とバインダーとの組合せとして、負の電荷を帯びる粒子とカチオン性ポリマー(オリゴマー)からなるバインダーとの組合せ、または正の電荷を帯びる粒子とアニオン性ポリマー(オリゴマー)からなるバインダーの組合せ、いずれの組合せでもよい。
また、効率良くゲル化するには塗布液濃度が高い方が良い。例えば、第1の塗布液は98重量%以下の第1の有機溶剤を含有し、かつ第2の塗布液は、98重量%以下の第2の有機溶剤を含有することが好ましい。
図2は、第1の塗布液と第2の塗布液とをエクストルージョン型のダイコータにより、支持体上に重層塗布する状態を示す概念図である。図2に示すように、第1の塗布液11と第2の塗布液12とが、エクストルージョン型のダイコータ40から走行する支持体3に向けて供給される。ダイコータ40は、3つのダイブロック41,42,43で構成される。3つダイブロック41,42、43を組み合わせることにより、内部に2つのポケット44、45及びポケット44、45からダイコータ40の先端部に延在するスロット46、47が形成される。このように、ダイコータ40を多ブロック構造とすることにより、ダイコータ30の製造精度を高め、洗浄などの後処理を容易に行うことができる。
第2の塗布液12がスロット47から吐出され、支持体3上に供給される。第1の塗布液11がスロット46から吐出され、第2の塗布液12上に供給される。これにより、第1の塗布液11と第2の塗布液12とが支持体3上に重層塗布される。これにより、支持体3上にウェットオンウェット重層塗布により第2の塗膜14と第1の塗膜13とが形成される。
第1の塗布液11には第1の電荷を有する粒子1aが分散され、第2の塗布液12には第2の電荷を有するバインダーが溶解されている。
図2は、エクストルージョン型のダイコータ40による重層塗布を示している。しかしながら、これに限定されずスライド型のダイコータを使用することができる。
なお、鋭意検討の結果、各層のウェット膜厚が30μm以下の薄膜を塗布する場合は、エクストルージョン型のダイコータが適していることが分かっている。
図3は、第1の塗布液11と第2の塗布液12とを重層塗布したときの状態を示す。第1の電荷を帯びた粒子1aが第1の塗布液11に分散される。一方、第1の電荷と反対の第2の電荷を帯びたバインダー2aが第2の塗布液12に分散される。第1の塗布液11と第2の塗布液12との界面において、第1の電荷を帯びた粒子1aと第2の電荷を帯びたバインダー2aとの電荷中和によりゲル化が起こる。粒子1aとバインダー2aとによりゲル化層50が形成される。ここでゲル化とは、粒子1aとバインダー2aとが架橋構造を形成する状態を意味する。ゲル化により、第1の塗布液11と第2の塗布液12との接触面の粘度が上昇する。これにより第1の塗布液11(第1の塗膜13)と第2の塗布液12(第2の塗膜14)との混合を防止することができる。
重層塗布した後、支持体3を走行しながら、第1の塗布液11と第2の塗布液12とを乾燥する。乾燥することにより、第1の塗布液11に含まれる第1の有機溶剤と第2の塗布液12に含まれる第2の有機溶剤とが蒸発される。
第1の塗布液11と第2の塗布液12とを乾燥した後、硬化され、支持体3がロール状に巻き取られる。
[実施例]
以下、実施例と比較例とを挙げ、本発明を、より詳細に説明する。ただし、これらに限定されるものではない。
<支持体>
トリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製、厚み80μm)
<第1の塗布液の調製>
以下の方法で調製した液を第1の塗布液(塗布液1)として用いた。
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2%の分散液を得た。得られた中空シリカ粒子分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
第1の塗布液の組成
DPHA 1.0質量部
P−1 1.6質量部
中空シリカ粒子分散液(18.2%) 28.7質量部
イルガキュア907 0.3質量部
MEK 168.4質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
「P−1」:特開2004−45462号公報に記載の含フッ素共重合体P−3(重量平均分子量約50000)
イルガキュア907:重合開始剤(BASF JAPAN(株)製)
<第2の塗布液の調製>
以下の方法で調製した液を第2の塗布液(塗布液2)として用いた。
第2の塗布液の組成
PET−30 20.0質量部
DPHA 15.0質量部
1SX−1055 10.0質量部
イルガキュア127 2.0質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 13.0質量部
メタノール 10.0質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
1SX−1055:カチオン性のアクリル樹脂[大成ファインケミカル(株)製]
イルガキュア127:重合開始剤[BASF JAPAN(株)製]
<第3の塗布液の調製>
以下の方法で調製した液を第3の塗布液(塗布液3)として用いた。
第3の塗布液の組成
PET−30 20.0質量部
DPHA 15.0質量部
イルガキュア127 2.0質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 13.0質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
1SX−1055:カチオン性のアクリル樹脂[大成ファインケミカル(株)製]
イルガキュア127:重合開始剤[BASF JAPAN(株)製]
なお、比較例では実施例の第2の塗布液に代えて、第3の塗布液を使用した。
<塗布条件>
支持体の上に、塗布液1と塗布液2とを、塗布液1と塗布液3とをエクストルージョン型のダイコータを用いて重層塗布した。搬送速度30m/分の条件で塗布し、30℃で15秒間、60℃で30秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させた。
<積層フィルムの評価>
図4は、試験1について、積層フィルム10の断面方向のTEM写真を示す。図5は、試験2ついて、積層フィルム100の断面方向のTEM写真を示す。図4によれば、試験1の積層フィルム10では、ゲル化層50により反射防止層1とハードコート層2とが分離されており、塗布液1と塗布液2との混合が防止されていた。
一方、図5によれば、試験2の積層フィルム100では、反射防止層とハードコート層とが分離されておらず、塗布液1と塗布液3との間で混合が起きていた。
1…低屈折率層、1a…粒子、1b…樹脂層、2…ハードコート層、2a…バインダー、2b…樹脂層、3…支持体、10,100…積層フィルム、11…第1の塗布液、12…第2の塗布液、40…ダイコータ、50…ゲル化層

Claims (11)

  1. 第1の電荷を有する粒子を分散させた第1の有機溶剤を含む第1の塗布液と、前記第1の電荷と反対の第2の電荷を有するバインダーを溶解した第2の有機溶剤を含む第2の塗布液とを準備する第1工程と、
    走行する支持体に、前記支持体の一方面に前記第2の塗布液と前記第1の塗布液とをウェットオンウェット重層塗布することで第2の塗膜と第1の塗膜とを形成し、電荷中和により前記粒子と前記バインダーとをゲル化させる第2工程と、を有する積層フィルムの製造方法。
  2. 前記第2の塗布液は、極性有機溶媒を含む請求項1記載の積層フィルムの製造方法。
  3. 前記第1の電荷を有する粒子は、5nm以上100nm以下の粒子径を有する請求項1又は2に記載の積層フィルムの製造方法。
  4. 積層フィルムのヘイズが1.0以下である請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
  5. 記第1の塗膜と前記第2の塗膜とは、それぞれ30μm以下のウェット膜厚を有する請求項1から4のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
  6. 前記第2の塗布液と前記第1の塗布液とはエクストルージョン方式で前記支持体に塗布される請求項1から5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれか記載の積層フィルムは反射防止フィルムである積層フィルムの製造方法。
  8. 前記第2の塗布液がハードコート層形成用の塗布液である請求項1から7のいずれか記載の積層フィルムの製造方法。
  9. 前記第2の塗布液が電離放射線硬化性化合物を含む請求項1から8のいずれか記載の積層フィルムの製造方法。
  10. 前記第1の塗布液が紫外線硬化性化合物を含む請求項1から9のいずれか記載の積層フィルムの製造方法。
  11. 前記ウェットオンウェット重層塗布がウェットオンウェット同時重層塗布である請求項1から10のいずれか記載の積層フィルムの製造方法。
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