JP5823770B2 - ショートアーク高圧放電ランプ - Google Patents

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Description

本発明は、1kWよりも大きい公称電力で点灯するショートアーク高圧放電ランプに関する。
この種のランプは一般に、映画館の映写機(プロジェクタ)に使用されたり、半導体および液晶ディスプレイの製造におけるリソグラフィ技術に使用される。このようなショートアーク高圧放電ランプは、放電容器内に設けられた陽極と陰極を含む。この放電容器には、一般に、希ガス、または希ガスの混合気、一般に、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、および/またはキセノン(Xe)を含む封入物が入っている。多くの場合に、この封入物はさらに、一般に1mg/cmから81mg/cmの量の水銀(Hg)も含む。このようなショートアーク高圧放電ランプ内の陽極は一般に、タングステン系材料から形成される。
ショートアーク高圧放電ランプでは、電子が陽極に衝突することにより、陽極は、高温(一般に、2000℃から3000℃の間)まで加熱される。その結果、陽極材料は蒸発して、放電容器の内壁に被着するようになる。この被着した陽極材料は、放電容器を曇らせるか、または黒ずませ、さらに、それにより、この放電ランプからの光束の一部が吸収されて、実用光束が減らされるようになる。このような影響は一般に、放電ランプの耐用期間中、ますます顕著になる。したがって、この放電ランプの動作時間が増すと、陽極材料が蒸発することにより、実用光束は減らされるようになる。
上述の影響に加えて、このショートアーク高圧放電ランプの総耐用期間を短くし、かつ、その実用光束を減らしかねないさらなる影響もある。例えば、陰極の品質は、動作期間とともに絶えず劣化する。特に、陰極はすり減り、また、陰極の前部先端はさらに広くなる。しかしながら、特に、水銀を含む封入物を持つショートアーク高圧放電ランプでは、陽極材料の蒸発は、この放電ランプの総耐用期間に関して決定的要因である。
特に封入圧力が3バールよりも高い場合に、この陽極の材料の蒸発は、封入圧力が増すとともに、さらに顕著になる。このように高い希ガスまたは希ガス混合気(一般に、Arおよび/またはKrおよび/またはXeを含む)の封入圧力は、アークの幅を短くするために、利用される。このようにして、この放電ランプが光学システムに使用されるときに、実用放射光が増し、この放電ランプは、さらに高い輝度を持つ(高輝度ランプ)。その結果、陽極材料にもたらされる高い熱負荷により、熱で生じる応力が大きくなることもあり、さらに、それにより、機能面領域(functional surface region)が局部的に変形することもある。
一般に、上述の種類のショートアーク高圧放電ランプは、直流および定電力(ワット)で動作させるようにしてある。しかしながら、いくつかの用途では、この電力を周期的に変調することが有利である。このように電力を変調して動作させても、陽極材料の蒸発が増すこともある。
上述の問題を解決するために、特に、陽極材料の蒸発を減らし、陽極の機能面領域の局部変形の出現を減らすために、異なる試みが行われてきた。特に、熱放射により、陽極から離れた所で熱流束を増やすために、陽極の直径を大きくしてきた。さらに、陽極にコーティングし、かつ/または陽極を構造化する異なる方法が提案されてきた。例えば、陽極の機能面領域用のコーティング材料として、粗粒タングステンまたは樹枝状レニウムが使用されてきた。しかしながら、低温封入圧力が或る値を超えるような高い封入圧力を持つショートアーク高圧放電ランプでは、これらの対策は、陽極材料の蒸発を許容値以下に抑えておくのに充分ではない。
さらに、添加剤としてカリウムを含むタングステン系材料から陽極が形成されている放電ランプが述べられてきた。不溶性カリウム粒子は、非常に高い温度にて進行する転位(dislocation)に対して充分な耐久力を与え、それにより、優れた形状安定性をもたらす。優れた形状安定性にもかかわらず、カリウムをドープさせたタングステン材料は、2500℃を超える高温で使用されると、結晶粒界に沿って過度の結晶成長を示す場合もあることが判明した。このような結晶成長は、高い多孔度をもたらして、熱伝導率を下げる。
特許文献1は、1.5kWよりも大きい公称電力でのDC点灯用高圧水銀放電ランプ(陽極を含む)を記載している。この陽極の少なくとも一部の領域は、少なくとも若干のタングステンを含有する材料から形成されている。この材料は、1mm当たり200粒よりも多くの結晶粒数と、19.05g/cmよりも大きい密度を持っている。この材料にはカリウムをドープさせている。その場合、カリウムの量は、50ppmよりも少ない。
国際公開第2008/077832A1号パンフレット
本発明の目的は、陽極の形状安定性と耐蒸発性を向上させ、同時に、製造中、陽極材料に高温加工を受けさせた後でも陽極の優れた加工性を提供するような、1kWよりも大きい公称電力での直流点灯用のショートアーク高圧放電ランプを提供することにある。
この目的は、請求項1に記載の1kWよりも大きい公称電力での直流点灯用のショートアーク高圧放電ランプによって解決される。従属クレームには、さらなる展開が定義されている。
このショートアーク高圧放電ランプは、低温封入圧力が0.5バール以上であり、かつ少なくとも1つの希ガスと随意に水銀を含む封入物が入っている放電容器、5ppm〜80ppmのカリウムを含むタングステン系材料から形成された陽極、および、陰極を含む。この陽極と陰極は、放電容器内に設けられる。陽極は、直径d(ただし、10mm<d<70mm)を持ち、しかも、陽極とアークが相互作用する機能面領域と、この機能面領域に隣接するバルク領域とを含む。この機能面領域は、陽極の縦軸線に垂直な平面内で測定された結晶粒域が2mmよりも広い、少なくとも1粒の結晶粒を含む。上記バルク領域内のタングステン系材料の結晶粒数は、1mm当たり100粒よりも多い。その場合、この結晶粒数は、陽極の縦軸線に垂直な第2の平面内で測定され、しかも、この第2の平面は、上記機能面領域の表面まで軸方向の距離s(ただし、sはdよりも大きい)を持っている。陽極の縦軸線に平行な方向の機能面領域とバルク領域との間で、陽極のタングステン系材料の結晶粒度に急変化が存在する。
この機能面領域内の少なくとも1粒の結晶粒の結晶粒域は、光学顕微鏡により、例えば、この機能面領域の研磨面上で決定でき、上記バルク領域内のタングステン系材料の結晶粒数は、ASTM E 112により定義されている。陽極の直径dは、陽極の最大直径として定められる。陽極が円筒形部分と隣接円錐部分を含む代表的な事例では、この円筒形部分の直径は、陽極の直径dを定める。低温封入圧力という用語は、室温での放電容器の封入圧力と解されることになっている。さらに、5ppm〜80ppmのカリウム含有量に対して、陽極のタングステン系材料はまた、酸化物の形式で添加できるさらなる添加剤、特にシリコン(Si)とアルミニウム(Al)も含むことがある。陽極の縦軸線は、アークが広がる軸線に対応する。上記機能面領域は、例えば、好ましくはタングステン系材料のただ1粒の結晶粒によって形成されるか、あるいは、2粒以上の限られた量の結晶粒によって形成されることもある。好ましくは、機能面領域に2粒以上の結晶粒が含まれている場合には、この機能面領域内のタングステン系材料のすべての結晶粒は、2mmよりも広い結晶粒域を持つ。上記バルク領域内の結晶粒数は、1mm当たり100粒よりも多く、すなわち、このバルク領域は微細粒構造から成り、また、この機能面領域内の結晶粒域が2mmよりも広く、それは、比べると極めて大きな結晶粒度に対応するから、結晶粒度の点で、この機能面領域とバルク領域との間には極端な差がある。このバルク領域は、機能面領域に隣接しており、したがって、この機能面領域とバルク領域との間で、結晶粒度に急変化がある。特に、このような結晶粒度の急変化(これは、二次再結晶中の、不連続な結晶粒成長の徴候である)、陽極のタングステン系材料中の定められた量のカリウム、この機能面領域内の大きい結晶粒度、および、微細結晶粒度を組み合わせると、特に高水準の形状安定性と、好ましくない結晶成長の低リスクを実現できることがわかっている。これにより、ショートアーク高圧放電ランプの耐用期間にわたって、このショートアーク高圧放電ランプの光束が向上する。特に、陽極材料の蒸発に起因する実用光束の減少を、とりわけ効率的に小さくすることができる。バルク領域が機能面領域に隣接しているから、機能面領域とバルク領域との間には、中間結晶粒度を含む領域はまったくない。この直流動作向けショートアーク高圧放電ランプは、例えば、定電力での直流動作向けに、あるいは、変調した電力での直流動作向けに特定的に適合させることができる。この陽極は、例えばほぼ円筒形の形状(例えば、機能面領域内に、または機能面領域の近くに、丸い形状または円錐形状を含む)を持つこともある。このような場合、縦軸線は、この円柱中心線に一致する。
一実施例により、上記バルク領域内のタングステン系材料は、実質的に位置に左右されない結晶粒数を有する。言い替えれば、このような場合、結晶粒数は、バルク領域の容積にわたって、ほぼ一定である。この場合には、全バルク領域は微細結晶粒度を有し、また、バルク領域と機能面領域との間で、結晶粒度にとりわけ急な変化がもたらされる。このような場合、このバルク領域は、とりわけ優れた加工性を有する。
一実施例により、この陽極のタングステン系材料は、19.05g/cmよりも大きい密度を含む。このような場合、この陽極は、陽極に高い熱伝導度が存在するように、とりわけ密なやり方で実現される。このようにして、このショートアーク高圧放電ランプの動作中、陽極に熱で生じる応力を、効率的に抑制することができる。
一実施例により、上記機能面領域は、縦軸線に平行な方向に厚さtを持っている。その場合、d/20<t<d/5であり、とりわけd/10<t<d/5である。この機能面領域の上記厚さから、このショートアーク高圧放電ランプのとりわけ有利な性質がもたらされることがわかっている。
一実施例により、上記機能面領域は、5mmよりも広い、とりわけ、10mmよりも広い結晶粒域を持つ少なくとも1粒の結晶粒を含む。機能面領域が2粒以上の結晶粒を含む場合には、好ましくは、この機能面領域のすべての結晶粒は、このように広い結晶粒域を持つ。特に、このように広い結晶粒域により、陽極材料の蒸発が効率的に抑制され、したがって、この放電ランプの耐用期間が長くなる。
一実施例により、上記機能面領域は、ただ1粒の結晶粒から成っている。このような場合、結晶粒界は、この機能面領域から排除され、したがって、どんな結晶粒界も、アークとは相互作用しない。このことから、陽極がとりわけ安定的に実現される。
一実施例により、上記バルク領域内の陽極のタングステン系材料は、1mm当たり200粒よりも多くの、とりわけ、1mm当たり350粒以上の結晶粒数を含む。このような場合、バルク領域内の結晶粒度はさらに細かく、したがって、陽極の加工性がさらに向上する。さらに、バルク領域と機能面領域との間で、結晶粒度の変化が急であることが、さらに顕著になる。このようにして、形状安定性と耐蒸発性がさらに向上する。
一実施例により、陽極のタングステン系材料中のカリウムの量は50ppmよりも少なく、とりわけ8ppmから45ppm、とりわけ10ppmから40ppmである。これらのカリウム量の数値は、転位の進行による陽極の変形をとりわけ効率的に防止する。このような場合、カリウムで満たされた結晶が吸引性の相互作用を転位に及ぼすことにより、この陽極材料は、高いクリープ抵抗を持つ。
一実施例により、陽極のタングステン系材料はまた、Alおよび/またはSiも含む。Alおよび/またはSiは、例えば、陽極の粉末冶金製造プロセスにおいて、対応する酸化物を添加することで提供できる。AlとSiは、有利には、陽極の粉末冶金製造プロセス中、陽極のタングステン系材料中のカリウム含有量を安定させて、陽極の高安定性が達成され、かつ、転位の進行が効率的に防止されるようにしている。
一実施例により、このショートアーク高圧放電ランプは、4kWよりも大きい公称電力、好ましくは5kWよりも大きい公称電力を持っている。一実施例により、この封入物は、1mg/cmから50mg/cmの水銀を含む。特にこれらの場合には、陽極材料の蒸発は、さらに多く発生しがちであり、効率的に防止しなければならない。
一実施例により、この低温封入圧力は、0.5バール以上、とりわけ1.5バール以上であり、また、このショートアーク高圧放電ランプは、定電力での動作向けに適合させる。他の実施例により、この低温封入圧力は、0.5バール以上、とりわけ1.5バール以上であり、また、このショートアーク高圧放電ランプは、変調した電力での動作向けに適合させる。特に、このショートアーク高圧放電ランプをこのようなやり方で適合させる場合には、陽極材料の蒸発を効率的に抑制する必要がある。
さらなる展開および利点は、次の図面を参照して、一実施形態の下記説明から明らかになろう。
ショートアーク高圧放電ランプを略図で示す。 一実施形態によるショートアーク高圧放電ランプの陽極の顕微鏡写真を示す。 この実施形態によるショートアーク高圧放電ランプに対して、また2つの比較例に対して、動作時間の関数として、相対ルーメン維持率を示すグラフである。 図2の顕微鏡写真から決定されたバルク領域と機能面領域との間の結晶粒度の差を略図で示す。
次に、これらの図面を参照して、一実施形態を説明する。図1にショートアーク高圧放電ランプ1が示されている。ショートアーク高圧放電ランプ1は、放電容器2を含む。放電容器2の内部には、陰極3と陽極4が設けられている。図1に見られるように、陽極4は、陰極3に面する側が、テーパ付き端縁を持つほぼ円筒形の形状を呈している。陰極3は、円錐形の先端部分を含む。ショートアーク高圧放電ランプ1の動作では、陰極3の円錐形先端部分と陽極4との間にアークが形成される。このアークは、陽極4の縦軸線Zにほぼ平行な方向に広がる。図示される実施形態では、陽極4の縦軸線Zは、陽極4の円筒形部分の円柱中心線に一致する。
図1に示されるように、陽極4は好ましくは、陰極3に面する側に、テーパ付きの形状を含むこともある。陰極3に面する側では、陽極4は、アークが陽極4と相互作用する機能面領域4aを含む。陽極4は、陰極3から遠ざかる方向に機能面領域4aのすぐ隣りに、バルク領域4bを含む。機能面領域4aとバルク領域4bは両方とも、添加剤として5ppm〜80ppmのカリウムを含むタングステン系材料から形成される。好ましくは、カリウムの量は、50ppmよりも少なく、さらに好ましくは8ppmから45ppm、もっと好ましくは10ppmから40ppmである。機能面領域4aとバルク領域4bは両方とも、同一材料から形成されて、ほぼ同一の密度を含む。しかしながら、以下でさらに詳しく説明されるように、機能面領域4a内の結晶粒度は、バルク領域4b内の結晶粒度とは著しく異なっている。例えば、陽極4の材料は、添加剤として上述の量のカリウムが与えられたタングステンであってもよい。しかしながら、さらに他の添加剤も与えられることもある。例えば、さらに他の添加剤として、少量のアルミニウム(Al)および/またはシリコン(Si)が添加されることがある。例えば、これらの添加剤は、酸化物の形式で添加されることもある。好ましくは、上記の少量のアルミニウムおよび/またはシリコンは、カリウムの量と同程度である。
上記円筒形部分では、陽極4は、10mmから70mmの範囲内の直径を持っている。さらに、陽極のタングステン系材料は、19.05g/cmよりも大きい密度を持っている。このようにして、ショートアーク高圧放電ランプ1の動作中に、熱伝導および熱放射により、熱を、機能面領域4aから効率的に運び去ることができる。
バルク領域4bでは、このタングステン系材料は、1mm当たり100粒よりも多くの結晶粒数、好ましくは1mm当たり200粒よりも多くの結晶粒数、さらに好ましくは、1mm当たり350粒よりも多くの結晶粒数を持つ微細結晶粒度を含む。この結晶粒数は、ASTM E 112にしたがって、陽極4の縦軸線に垂直な平面内で測定される。例えば、この結晶粒数は、機能面領域4aの表面から距離sだけ離れた所で測定される。ただし、距離sは、上に定められた直径dよりも大きい。この結晶粒数は、陽極4の全バルク領域4bにわたって、ほぼ一定である。言い替えれば、この結晶粒数は、バルク領域4b内で、実質的に位置に左右されない。
機能面領域4aは、陽極4のうち陰極3に面する面から、バルク領域4bまで広がっている。すなわち、機能面領域4aとバルク領域4bとの間には、他の領域(中間結晶粒度/結晶粒数を持つ)はまったく介在してない。機能面領域4aは,バルク領域4b内の結晶粒度とは極めて異なる結晶粒度を含む。機能面領域4aは、ただ1粒の結晶粒から成っているか、あるいは、少数の結晶粒を含むことがある。好ましくは、機能面領域4aは、ただ1粒の結晶粒によって形成される。機能面領域4aは、2mmよりも広い結晶粒域、好ましくは5mmよりも広い結晶粒域、さらに好ましくは10mmよりも広い結晶粒域を持つ少なくとも1粒の結晶粒を含む。この結晶粒域は、機能面領域4aの顕微鏡写真から測定される。機能面領域4a内にいくつかの結晶粒が含まれている場合には、これらすべての結晶粒は好ましくは、上に定められた広い結晶粒域を含む。半径方向において、機能面領域4aは、陽極4のうち縦軸線Zと交差する表面部分に少なくとも形成される。縦軸線Zに平行な方向において、機能面領域4aは、d/20からd/5の厚さt、好ましくはd/10からd/5の厚さtを持っている。ここで、dは、上に定められた陽極4の直径である。
機能面領域4a内の結晶粒域が広く、また、バルク領域4b(機能面領域4aのすぐ隣りにある)内の結晶粒数が多いことにより、機能面領域4aとバルク領域4bとの間の境界において、結晶粒度に顕著な急変化が存在する。特に、このような結晶粒度の急変化、すなわち、中間結晶粒度の領域がないことは、陽極4の特性に有利な影響を及ぼすことがわかっている。機能面領域4aとバルク領域4bとの間のこのような結晶粒度の急変化は、機能面領域4a内の不連続な結晶粒成長によるものと考えられる。
上述の陽極4の特性は、微粉末の形を取るタングステン系材料から陽極4を形成し、このように形成された大きな変形前の陽極材料に、やや低い温度(例えば、1300℃よりも低い)にて、大きな変形(例えば、具体的な変形度ΔA/A>66%)を加えて、高変形度のエネルギーがその大きな変形前の陽極に取り入れられるようにすれば、達成できる。その結果、再結晶中に発生する大きな力が得られて、高速での結晶粒界の成長がもたらされようになり、また、これらの結晶粒の内部にカリウム結晶がもたらされる。それにより、それらの結晶粒界に沿っての望まれない結晶成長が抑制される。
一実施形態によるショートアーク高圧放電ランプ1を、2つの比較サンプルと比較している。この比較の結果は図3に示されている。図3では、この実施形態によるショートアーク高圧放電ランプ1に対して、また、2つの比較サンプルに対して、動作時間(時間で表す)の関数として相対ルーメン維持率(パーセントで表す)が描かれている。この相対ルーメン維持率は、初期光束と比較した光束の変化を与える。この実施形態に対する測定値は円で描かれているが、第1の比較例に対する測定値は、黒の三角形で描かれ、また、第2の比較例に対する測定値は、黒の正方形で描かれている。
この実施形態と、これらの比較例では、それぞれの陽極は、カリウム(K)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)を添加したタングステンから形成されている。この陽極材料の密度は、3つすべての事例において、19.1g/cmであった。
この実施形態では、カリウムの量は25ppmであり、また、アルミニウムの量は18ppmであり、さらに、シリコンの量は6ppmであった。
第1の比較例では、カリウムの量は26ppmであり、また、アルミニウムの量は18ppmであり、さらに、シリコンの量は7ppmであった。
第2の比較例では、カリウムの量は24ppmであり、また、アルミニウムの量は17ppmであり、さらに、シリコンの量は7ppmであった。
この実施形態では、バルク領域4bは、約350粒の結晶粒数/mmを含み、また、機能面領域4aは、約12mmの結晶粒度を持つただ1粒の結晶粒から成っていた。図2には、この実施形態によるショートアーク高圧放電ランプの陽極の一部の顕微鏡写真が示されている。図2では、機能面領域4aは、ただ1粒の結晶粒によって形成されていることと、バルク領域4bは微細粒を含んでいることが明確に理解できる。したがって、機能面領域4aとバルク領域4bとの間の境界において、結晶粒度に急変化が存在する。これは、図4に略図で示されている。この実施形態における陽極4の構造は、所望の組成を持ち、かつ平均結晶粒度が3.5μmであるタングステン系粉末から陽極材料を形成することで、得られた。「大きな変形前の(raw)」陽極は、約2000バールにて冷間等方圧加圧を受けて、2200℃よりも高い温度にて焼結した。陽極4(あるいは、もっと適切に言えば、この段階では陽極材料)は、1300℃よりも低い温度にて66%よりも高い具体的な変形度ΔA/Aまで変形した。このように形成された陽極4は、2200℃にて、180分間、焼きなまされた。ショートアーク高圧放電ランプ1に陽極4を取り付けた後で、陽極4を、約3000°Cの最高動作温度まで加熱した。その場合、加熱は、約60分の時間間隔にわたって連続的に行われた。
上記の2つの比較例において、バルク領域4bと機能面領域4aは両方とも、約350粒のほぼ同一の結晶粒数/mmを含んでいた。
この実施形態およびこれらの比較例の陽極はすべて、粉末冶金製造プロセスにおいて形成された。その結果得られる陽極の形状は、打ち延ばし、研削、フライス削り、洗浄、焼き戻しなどの周知の技法により実現された。この実施形態の陽極4と対照的に、これらの比較例の陽極には、やや低い温度での大きな変形を受けさせなかった。
図3から見られるように、この実施形態によるショートアーク高圧放電ランプの相対ルーメン維持率は、動作時間の関数として著しく向上した挙動を示している。すなわち、この光束は、これらの比較例と比較して、時間とともに、減衰程度が抑えられる。
したがって、本発明によるショートアーク高圧放電ランプの陽極の安定性は、従来の実施例と比較して、実質的に向上していることが示されている。本発明により、実質的に、どんな結晶粒界もアークとは相互作用しないことが達成される。ある程度まで、これは、二次再結晶中の不連続な結晶粒成長によるものと考えられる。不連続な結晶粒成長は高速で行われた。それにより、結晶粒は、結晶粒界から実質的に影響を受けないままであり、これらの結晶粒界に沿って合体によるさらなる結晶粒の粗大化が回避される。カリウムで満たされた結晶が吸引性の相互作用を転位に及ぼすことにより、陽極材料が高いクリープ抵抗を持つから、転位の進行による変形は回避される。さらに、本発明によるショートアーク高圧放電ランプの動作中に、バルク領域4b内の細かく粒状にされた結晶粒のさらなる成長が防止されることがわかっている。
やや特定的な実施形態が説明されてきたが、これを、特許請求の範囲の範囲を限定するものと見なしてはならないものとする。
1 ショートアーク高圧放電ランプ
2 放電容器
3 陰極
4 陽極
4a 機能面領域
4b バルク領域
Z 縦軸線

Claims (13)

  1. 低温封入圧力が0.5バール以上であり、かつ少なくとも1つの希ガスと、水銀を含む封入物が入っている放電容器(2)と、
    5ppm〜80ppmのカリウムを含むタングステン系材料から形成された陽極(4)と、
    陰極(3)と、
    を備え、
    前記陽極(4)と前記陰極(3)が前記放電容器(2)内に設けられ、また、前記陽極(4)が、直径d(ただし、10mm<d<70mm)を持ち、しかも、前記陽極(4)とアークが相互作用する機能面領域(4a)と、前記機能面領域(4a)に隣接するバルク領域(4b)とを含む、1kWよりも大きい公称電力での直流動作向けショートアーク高圧放電ランプ(1)であって、
    前記機能面領域(4a)が、前記陽極(4)の縦軸線(Z)に垂直な平面内で測定された結晶粒域が2mmよりも広い少なくとも1粒の結晶粒を含み、
    前記バルク領域(4b)内の前記タングステン系材料の結晶粒数が、1mm当たり100粒よりも多く、その場合、前記結晶粒数が、前記陽極(4)の前記縦軸線(Z)に垂直な第2の平面内で測定され、しかも、前記第2の平面が、前記機能面領域の表面まで軸方向の距離s(ただし、sはdよりも大きい)を持っており、
    前記機能面領域(4a)と前記バルク領域(4b)との間で、前記陽極(4)の前記タングステン系材料の結晶粒度に急変化が存在することを特徴とするショートアーク高圧放電ランプ。
  2. 前記バルク領域(4b)内の前記タングステン系材料が、実質的に位置に左右されない1mm 当たりの結晶粒数を含むことを特徴とする請求項1に記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  3. 前記陽極(4)の前記タングステン系材料が、19.05g/cmよりも大きい密度を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  4. 前記機能面領域(4a)が、前記縦軸線(Z)に平行な方向に厚さtを持っており、その場合、d/20<t<d/5であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  5. 前記機能面領域(4a)が、5mmよりも広い結晶粒域を持つ少なくとも1粒の結晶粒を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  6. 前記機能面領域(4a)が、ただ1粒の結晶粒から成っていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  7. 前記バルク領域(4b)内の前記陽極(4)の前記タングステン系材料が、1mm当たり200粒よりも多くの結晶粒数を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  8. 前記陽極(4)の前記タングステン系材料中のカリウムの量が50ppmよりも少ないことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  9. 前記陽極(4)の前記タングステン系材料が、Alおよび/またはSiも含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  10. 4kWよりも大きい公称電力を持っていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  11. 前記封入物が、1mg/cmから50mg/cmの水銀を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  12. 前記低温封入圧力が、0.5バール以上であって、また定電力での動作向けに適合させることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
  13. 前記低温封入圧力が、0.5バール以上であり、また、変調した電力での動作向けに適合させることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載のショートアーク高圧放電ランプ。
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