JP5822446B2 - ホログラムシート材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、紙や樹脂フィルムなどのシート状基材の表面にホログラムを形成するホログラムシート材の製造方法関するものである。
近年、雑誌や書籍の表紙、パッケージ、包装紙、あるいはカード等の偽造防止などにホログラムが広く使用されている。紙やフィルムなどの基材にホログラムを形成してホログラムシート材を製造する方法は種々提案されている。例えば、ホログラムシート材の一種であるホログラム金属蒸着積層体を製造する方法としては、基材としての紙の表面に、エチレンとエチレン系不飽和カルボン酸からなる共重合体樹脂などのホログラム形成樹脂層を形成し、このホログラム形成樹脂層上に、レリーフ型ホログラムスタンパによりホログラムを形成し、ホログラムが形成されたホログラム形成樹脂層上に、アルミニウム等の金属を蒸着させて金属蒸着層を形成する(特許文献1)。
特開平10−160936号公報
ところで、前記した従来のホログラム金属蒸着積層体は、ホログラム形成樹脂層を構成する樹脂がエチレンとエチレン系不飽和カルボン酸からなる共重合体樹脂が熱可塑性であるために、表面にホログラムを形成する際にも220℃以上に加熱しなければならない。したがって、製造の各工程で温度による影響を受け易く、前記樹脂上にレリーフ型ホログラムスタンパによりホログラムを形成する際にも、ホログラムスタンパの微細な凹凸形状を高い精度で転写するには温度管理が難しく、ホログラム形成後の冷却時には収縮することが回避できないこともあり、凹凸の端部にシャープさが不足するダレが生じ易い。そして、ホログラムの微細凹凸にダレが生じると、光の反射方向に予期し得ない乱れを生じるので、蒸着層により輝度を確保したとしてもホログラムの色彩が混濁したり像が不鮮明になるなどの不都合が生じる。また、製造工程における温度管理を厳密に行うためには、加熱に長い時間を要するばかりでなく、冷却にも時間がかかってしまい、生産効率を高めることが困難である。さらに、熱可塑性樹脂の場合には、熱で溶かした流動状態で転写するので、溶かした状態で流動性があって尚且つ切れない程度の厚みを確保しなければならない。即ち、厚く塗布しないとホログラムの微細凹凸を転写することができない。
さらに、金属蒸着は真空室内で行うので、熱可塑性樹脂の場合には残留している溶剤が真空室内に蒸発して樹脂が収縮する樹脂やせが発生することも前記したダレの一因であると推測できる。また、真空室内に溶剤が蒸発すると、溶剤分子が蒸着の邪魔になり、仕上がりにムラを生じ易い。
本発明は、前記した事情に鑑み提案されたものであり、その目的は、ホログラムの微細凹凸を高い精度で形成することができ、しかも効率良く生産することができるホログラムシート材の製造方法提供しようとするものである。
本発明は、前記した目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のホログラムシート材の製造方法は、シート状基材上に、厚さが1〜10ミクロンとなる量の光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成する光硬化樹脂層形成工程と、
前記した光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に加圧して密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、
該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、
前記基材の光硬化樹脂層側の面に光輝性を有する物質を少なくともホログラム微細凹凸の部分に蒸着させて光輝層を微細凹凸の凹凸に沿って形成する光輝層形成工程と、
を経て処理することを特徴とする。
請求項2に記載のホログラムシート材の製造方法は、光輝性を有する前記物質が、前記光硬化樹脂よりも屈折率の高い物質であることを特徴とする。
請求項3に記載のホログラムシート材の製造方法は、光輝性を有する前記物質が、空気との境界面における垂直方向の反射率が前記光硬化樹脂よりも高い物質であることを特徴とする。
請求項4に記載のホログラムシート材の製造方法は、前記基材が紙であって、前記光輝層形成工程の前に前記紙を乾燥して湿度を低下させる除湿工程を行うことを特徴とする。
本発明によれば、シート状基材上に、厚さが1〜10ミクロンとなる量の光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成し、この層の上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に加圧して密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するので、光硬化樹脂を加熱する必要がなく、また、光照射するだけでホログラムの微細凹凸を転写することができるので、冷却に要する時間も不要であり、熱可塑性樹脂を用いる従来に比較して、熱操作に要する時間が不要となる分だけ作業時間の短縮化を図ることができ、しかも微細な凹凸を高い精度で転写することができ、光の方向が設計通りの鮮明なホログラムを期待することができる。そして、常温で流動性を有する光硬化樹脂を使用するので、加熱することにより流動性を生じさせる従来に比較して、ホログラムを形成する樹脂層の厚さを従来よりも薄くでき、樹脂使用量の節約ばかりでなく、廃棄する場合に燃えるゴミとして処理し易い。
また、本発明は、いわゆる反応タイプといわれる光硬化樹脂を使用するので、熱可塑性樹脂と比較して輝度の経年低下が少ない。さらに、光硬化樹脂は、熱可塑性ではないので、耐熱性があり、例えば、準レトルト食品用の包装袋に使用した場合に、熱湯に入れてもホログラムが消えることがなく、熱湯に入れるとホログラムが消えたり薄くなってしまう熱可塑性樹脂上のホログラムの場合とは大きく異なる点である。
また、光輝性を有する前記物質が、前記光硬化樹脂よりも屈折率の高い物質であると、ホログラム微細凹凸に手の脂や水などが付着した場合に、ホログラム微細凹凸の表面を被覆している物質の屈折率と手の脂などの屈折率との間にも差があるので、入射光が手の脂などを透過してもホログラム微細凹凸に応じた光の屈折と反射が確保されて、これによりホログラムが消えてしまう不都合を回避することができる。
そして、光輝性を有する前記物質が、空気との境界面における垂直方向の反射率が前記光硬化樹脂よりも高い物質であると、ホログラム微細凹凸に手の脂や水などが付着した場合に、入射光が手の脂などを透過してもホログラム微細凹凸の表面の光輝性物質に依存した反射となり、光硬化樹脂での反射に依存しないので、反射した光の方向の乱れを顕著に抑制することができ、これによりホログラムが消えてしまう不都合を回避することができる。
基材に光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成する光硬化樹脂層形成工程の概略説明図である。 光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを密着させる直前の状態を示すホログラム微細凹凸転写工程の概略説明図である。 光硬化樹脂層上に、表面に版フィルムを密着する状態で被せ、この状態で版フィルム側から光照射してホログラム微細凹凸を光硬化樹脂層に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程の概略説明図である。 版フィルムを剥離する剥離工程の剥離後の概略説明図である。 基材の光硬化樹脂層側の面に光輝性を有する物質を蒸着させて光輝層を形成する光輝層形成工程の概略説明図である。 ホログラム微細凹凸の拡大断面図である。 光硬化樹脂層のホログラム微細凹凸の上に印刷を施した他の実施形態の概略説明図である。 光硬化樹脂層を形成する前に基材に印刷を施した他の実施形態の概略説明図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、基材1に光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層2を形成した状態を示す光硬化樹脂層形成工程の概略説明図である。
基材1は、ホログラムシート材3の用途に適したもの、例えば、枚葉紙、フィルムなどを適宜選択することができる。なお、図面に示す実施形態では所定の大きさに裁断した枚葉紙を示すが、ロール紙や長尺フィルムなどの長尺なシート材でもよい。
この基材1に塗布する光硬化樹脂は、光照射により硬化する樹脂であれば適宜選択して用いることができるが、本実施形態では紫外線硬化樹脂を用いている。この紫外線硬化樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル/スチレン、アクリルウレタン、アクリルポリエステル等といったラジカル重合系やカチオン系等を挙げることができる。
そして、この紫外線硬化樹脂を基材1の表面に塗布するには、図示しないが、フレキソコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーターなど適宜な塗布装置を用いて常温で塗布することができ、加熱する必要はない。また、基材1の全面に塗布するばかりでなく、部分的に塗布することもできる。例えば、塗布する部分のみ凸に形成した版ロールをバックアップロールの周囲にセットしたロールコーターを使用し、基材1の一部にのみ紫外線硬化樹脂を塗布することもできる(図1)。また、紫外線硬化樹脂を塗布する量については、厚さ1〜10ミクロン程度塗布すれば良い。この紫外線硬化樹脂の塗布量は、熱可塑性樹脂の場合には数十ミクロンの厚さが必要であることと比較すると、少量であってもホログラムを形成する上での支障はない。具体的には、フラットな光輝タイプであれば1〜2ミクロン程度塗布すれば良く、ホログラム凹凸の場合にはこれよりも少し厚く数ミクロンでよい。そして、塗布する樹脂の量が少ないと、廃棄する際に燃えるゴミとして処理し易い。
光硬化樹脂層形成工程が終了したならば、次にはホログラム微細凹凸転写工程に移行する。このホログラム微細凹凸転写工程は、図2に示すように、光硬化樹脂層2上に、表面(図2中では下面)にホログラムの微細凹凸4が形成された透光性の版フィルム5を該微細凹凸4が光硬化樹脂層2に向けた状態とし、この版フィルム5をローラーにより加圧するなどして光硬化樹脂層2に密着させる。そして、図3に示すように、前記した密着状態で版フィルム5を挟んで基材1とは反対側に設置された光照射装置(本実施形態では紫外線照射ランプ)6から版フィルム5を通して光照射(紫外線照射)することにより前記ホログラムの微細凹凸4を前記光硬化樹脂層2の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層2を硬化させる。前記した版フィルム5は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなど紫外線透過性のあるフィルムをベースフィルムとし、このベースフィルムの一方の表面にホログラムの微細凹凸4を一様に形成したものである。したがって、この版フィルム5を未硬化状態の光硬化樹脂層2に密着させると、光硬化樹脂の表面部分がホログラムの微細凹凸4の形状に応じた反転形状に変形し、この状態で版フィルム5を透過させて紫外線を照射すると、紫外線硬化樹脂が版フィルム5のホログラム微細凹凸4に対応した形状に硬化する。なお、ホログラム微細凹凸4は、広く装飾シート材のマット、エンボス等の凹凸でもよい。また、フラットにすると光輝く面となる。
そして、版フィルム5を剥離すると(剥離工程)、光硬化樹脂層(紫外線硬化樹脂層)2の表面に耐熱性を有し、熱収縮のないホログラム微細凹凸4´が高い精度で転写される。この様にして、硬化樹脂層の表面にホログラム微細凹凸4´が高精度で転写されたならば、次に、光輝性を有する物質を蒸着させて光輝層7を形成する光輝層形成工程に移行する。
なお、ホログラム微細凹凸4´と光輝層7との密着性を高めるために、光輝層形成工程の前に、コロナ処理を行うことが望ましい。
光輝層形成工程は、前記基材1の光硬化樹脂層2側の面に光輝性を有する物質を少なくともホログラム微細凹凸4´の部分に蒸着させて光輝層7を微細凹凸4´の凹凸に沿って形成するものであり、真空室中にて光輝性物質を蒸発させて行う。この光輝層形成工程を行う場合、特に基材1が紙の場合には、本工程の前に予め基材1を乾燥して除湿する調湿(除湿工程)を行うことが望ましい。
光輝性を有する前記物質としては、前記光硬化樹脂よりも屈折率の高い物質、例えばガラスを挙げることができる。また、空気との境界面における垂直方向の反射率が前記光硬化樹脂よりも高い物質、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、銀、亜鉛などの金属を用いることもできる。なお、媒質(光硬化性樹脂)の屈折率n0、反射する面(光輝層)の屈折率n1とすると、光がその面に対して垂直に入射するときの反射率Rは次式で表される。
R=(n0−n1)2 /(n0+n1)2
前記したいずれの光輝性物質を蒸着しても、この物質の分子の大きさは、ホログラム微細凹凸4の大きさに比較すれば遥かに小さなものである。したがって、図6に示すように、光硬化樹脂層2の表面に蒸着により形成された光輝層7は、ホログラムの微細凹凸4の凹凸に沿って形成される。このため、光の反射率が高く、明るいホログラムができる。また、前記したように、微細凹凸4の転写精度が高いので、設計した通りの方向に光が反射することとなり、混濁が少なく鮮明なホログラムとなる。さらに、反射率が高いので、封筒や葉書の内容物や記載事項を外部から見えなくする遮蔽シートとしても使用することができる。
そして、ホログラムの微細凹凸4´に手の脂や水分などが付着した場合、特に凹部が手の脂等により埋められた場合、ホログラムの微細凹凸4´を構成している紫外線硬化樹脂の屈折率(1.47)よりもできるだけ屈折率の高い種類のガラスなどを選んで光輝層7を構成し、すなわち、代表的なガラスであってもその種類によって屈折率に幅がある(1.43〜2.14)ので、本発明の実施にあたっては紫外線硬化樹脂よりも高いガラスを選択する。この様にすると、埋められた凹部の表面(ガラス)と手の脂等(通常は殆どが水分であるので、屈折率1.33)との間にも屈折率の差があるので、ホログラム微細凹凸4´に応じた光の屈折と反射が確保されて、これによりホログラムが消えてしまう不都合を回避することができる。要するに、屈折率に差があるために、光反射が確保されることでホログラムを視認できる。
また、光輝性を有する前記物質がアルミニウム等の金属の場合には、金属は、空気との境界面における垂直方向の反射率が前記光硬化樹脂よりも高いので、ホログラム微細凹凸4´に手の脂や水などが付着した場合に、入射光が手の脂などを透過してもホログラム微細凹凸4´の表面の光輝性物質に依存した反射となって、光硬化樹脂での反射に依存しないので、反射した光の方向の乱れを顕著に抑制することができる。したがって、光輝層7が金属蒸着層である場合も、ホログラムが消えてしまう不都合を回避することができる。
本発明におけるホログラムシート材3は、その用途は様々であり、ホログラムのみならず印刷もできる。例えば、図7に示す他の実施形態は、ホログラム微細凹凸4´を形成した光硬化樹脂層2の表面にインク8による印刷を施してもよい。また、図8に示す他の実施形態は、基材1の表面に予めインク8´による印刷を施し、その印刷の上に光硬化樹脂層2を形成するとともにその表面にホログラム微細凹凸4を転写したものである。
この様に、印刷を施すと、ホログラムと印刷がいっしょになった特異な美観を生じさせることができ、これにより装飾性が向上して、ポスターなどにも使用することができ、基材1のホログラム微細凹凸4´とは反対側の面に印刷してもそれぞれ反対側の面が透けて見えることが防止できる(裏映りがなくなる)。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲において適宜設計変更することができる。
1 基材
2 光硬化樹脂層
3 ホログラムシート材
4 版フィルムに形成されたホログラムの微細凹凸
4´ 光硬化樹脂層の表面に転写されたホログラムの微細凹凸
5 版フィルム
6 光照射装置
7 光輝層
8,8´ 印刷のインク

Claims (4)

  1. シート状基材上に、厚さが1〜10ミクロンとなる量の光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成する光硬化樹脂層形成工程と、
    前記した光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に加圧して密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、
    該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、
    前記基材の光硬化樹脂層側の面に光輝性を有する物質を少なくともホログラム微細凹凸の部分に蒸着させて光輝層を微細凹凸の凹凸に沿って形成する光輝層形成工程と、
    を経て処理することを特徴とするホログラムシート材の製造方法。
  2. 光輝性を有する前記物質が、前記光硬化樹脂よりも屈折率の高い物質であることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート材の製造方法。
  3. 光輝性を有する前記物質が、空気との境界面における垂直方向の反射率が前記光硬化樹脂よりも高い物質であることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート材の製造方法。
  4. 前記基材が紙であって、前記光輝層形成工程の前に前記紙を乾燥して湿度を低下させる除湿工程を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラムシート材の製造方法。
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