JP5819358B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵用(操舵補助用)の電動モータを備えた車両用操舵装置に関する。
道路の幅方向(路肩方向)に傾斜がついたカント路を走行する際や横風の中を走行する際には、直進をしようとしても、カント路では重力により車両が傾斜方向の下側に流され、横風の中では風力により車両が風下側に流される。つまり車両の片流れが生じる。このため、車両の片流れに対抗して直進するには、運転者がステアリングハンドル(適宜「ハンドル」という)を傾斜方向上側や風上側に向けて切る必要がある。つまり、直進状態であっても、運転者はたえず流される方向(片流れの方向)とは逆向きに操舵力を与え続ける必要がある。
例えば、特許文献1では、車両挙動に影響を及ぼす外乱発生時(カント路走行時や横風走行時など…)に、その車両挙動に対する外乱の影響程度に対応する外乱影響値Dを求め、その外乱影響値Dに応じて操舵補助力Taを制御可能とした車両の操舵装置が開示されている。この特許文献1では、操舵トルクの中点を挟んで不感帯を設け、操舵トルクが不感帯を超える場合に操舵補助力を発生させ、外乱(カント路の傾斜や横風など)を打ち消すようにしている。
特開2001−1923号公報
しかし、片流れの方向(カント路の下り勾配の方向)とは逆向きに操舵力を与え続ける運転スタイルのほかに、カント路などに対する別の運転スタイルとして、カント路に対抗してちょっと大き目に短時間操舵し、その後、ハンドルから手を離し、車体が流れてきたら、またちょっと操舵して…、を繰り返すという運転スタイルがある(仮に「チョイ切り」という)。この運転スタイルの場合、従来の制御方法では、うまく片流れ対応制御を作動させることが困難である。
そこで、本発明は、カント路などにおけるこのような運転スタイルにも適切に対応可能な車両用操舵装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決した本発明の車両用操舵装置(1)は、操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車両挙動を検出する車両挙動検出手段と、を有し、前記操舵トルクに基づき、電動モータに与える電流値を制御して操舵系にアシストトルクを付与する車両用操舵装置(1)である。そして、この車両用操舵装置は、車両に生じる片流れを検出し(1206)、当該片流れを抑制するように前記電流値を補正する補正電流値を算出する片流れ対応制御手段(12)を備え、(a)前記検出された操舵トルクと車両挙動とに基づき、車両が第1の車両状態にあるか否かを判定し、(b)前記第1の車両状態にて、前記操舵トルクの絶対値が第1操舵トルク所定値以上となる操舵が行われたときから第1所定時間の間に、前記車両挙動が所定の条件を満たしたときに、(c)前記第1操舵トルク所定値を満たしたときの前記操舵トルクの方向と同方向に前記補正電流値を算出することを特徴とする。
この構成においては、車両の状態が第1の車両状態であれば「スタンバイ状態」になる。この状態は、例えば、ほぼ操舵されていない状態ともいえる。そして、この第1の車両状態(スタンバイ状態)にて、操舵トルクの絶対値が第1操舵トルク所定値以上となったとき(このときチョイ切りされている)から数えて第1所定時間の間に、車両挙動(例えばヨーレート)が所定の条件を満たしたとする(例えばこの所定の条件のときに片流れしている)。この車両挙動が所定の条件を満たしたときは、操舵トルクが第1操舵トルク所定値を満たしたとき(つまりチョイ切りされたとき)の操舵トルクの方向と同方向に補正電流値を算出する。
また、本発明の車両用操舵装置(2)では、前記第1の車両状態は、前記操舵トルクの絶対値が前記第1操舵トルク所定値よりも小さい第2操舵トルク所定値以下で、かつ、前記車両挙動の絶対値が第1車両挙動量所定値以下であることを特徴とする。
この構成において、後記する実施形態では、第1の車両状態は、操舵トルクの絶対値<10Nm、かつ、ヨーレートの絶対値<1deg/秒であり、ほぼ操舵されていない状態とも思われる値である。
ちなみに、後記する実施形態では、第1操舵トルク所定値はチョイ切りであるので20Nm以上であり、第2操舵トルク所定値は片流れしている状態であるので10Nm未満である。また、第1車両挙動量所定値は1deg/秒である。
また、本発明の車両用操舵装置(3)では、前記車両挙動における前記所定の条件は、前記車両挙動の絶対値が第2車両挙動量所定値から第3車両挙動量所定値までの範囲をとる時間が第2所定時間以上であることを特徴とする。
この構成において、後記する実施形態では、第2車両挙動量所定値は2deg/秒であり、第3車両挙動量所定値は10deg/秒である。そして、所定の条件は、2〜10deg/秒である。チョイ切り後に、このような小さなヨーレートが500m秒(第2所定時間)以上検出されることは、片流れしていることを示す。
また、本発明の車両用操舵装置(4)では、操舵トルクセンサの検出値及び/又は舵角センサの検出値から、パルス状の操舵が、同じ方向に、かつ、所定の間隔で複数回検出されるか否かを判定し、検出される際には、検出されるパルス状の操舵と同じ方向に操舵用の電動モータを駆動する補正電流を生成させることを特徴とする。
カント路では、パルス状の操舵が繰り返されることから、このことを検出して片流れ対応制御を行う。ちなみに、パルス状の操舵の間の所定の間隔での操舵トルクや舵角は、パルス状の操舵の部分におけるものよりも小さく、ほぼ操舵されていないと思われる値である。
本発明によれば、カント路などにおけるこのような運転スタイルにも適切に対応可能な車両用操舵装置を提供することができる。
本発明の第1実施形態における車両用操舵装置を搭載した車両の全体構成を模式的に示す図である。 図1の車両におけるEPS_ECUやFI_ECUの概略構成と、両者の連携を示すブロック図である。 図2の片流れ対応制御部の内部構成を示すブロック図である。 運転者が、車両を運転して道路を走行している状況での、車体の傾斜、操舵トルクなどを示す図であり、左側の図が平坦路の場合を、中央の図がカント路において片流れ対応制御なしの場合(片流れ対応制御に入る前の場合)を、右側の図がカント路において片流れ対応制御ありの場合(片流れ対応制御に入った場合)をそれぞれ示している。 チョイ切りの運転スタイルを検出して、片流れ対応制御を開始するフローチャートである。 本実施形態でのクルーズコントロールと片流れ対応制御との連携を示す概略的なフローチャートである。 第2実施形態における連携を示すブロック図である。 第3実施形態の一例として、図3の電流値設定部における舵角と電流値との対応関係の情報を調整することで片流れ対応制御の制御量を減少する例を示す図である。
次に、本発明を実施するための一形態(実施形態)について、添付の図面を参照し、詳細に説明する。
以下の説明において、「第1の車両状態(スタンバイ状態)」は、操舵トルクの絶対値<10Nm(第2操舵トルク所定値)、かつ、ヨーレートの絶対値<1deg/秒(第1車両挙動量所定値)である。つまり、運転者による操舵がほぼされていないとも思われるような操舵状態である。
また、以下の実施形態では、「第1操舵トルク所定値」は、操舵トルクの絶対値が20Nm以上であり、「第1所定時間」は1秒であり、「第2所定時間」は500m秒である。また、「所定の条件」は、ヨーレートが2(第2車両挙動量所定値)〜10(第3車両挙動量所定値)deg/秒である。なお、これらの値は一例である。
≪第1実施形態≫
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態における車両用操舵装置Sを搭載した車両Cの全体構成を模式的に示す図である。この図1に示すように、車両Cは、車輪Wを4つ備える四輪車である(符号WFは転舵輪を示す)。そして、この車両Cは、車両用操舵装置Sの要部として、EPS_ECU1や転舵用のモータ3をはじめとした、電動パワーステアリング装置の構成を備えている。この電動パワーステアリング装置は、ステアリングハンドル(ハンドル)Hから入力される運転者の操舵力を、モータ3を作動させることで軽減する周知の装置である。このため、電動パワーステアリング装置の詳細な説明は省略する。また、車両Cは、FI_ECU2を備えるが、これも周知のものであるので、その詳細な説明を省略する。
なお、EPSは、Electric Power Steering(電動パワーステアリング)の略である。また、FIは、Fuel Injectionの略である。また、ECUは、Electronic Control Unitの略である。
また、図1において、符号41は、舵角センサ(舵角検出手段)であり、本実施形態では、モータ3の角度を計測する角度センサで代用する。この舵角センサ3により、舵角のほか、モータ3の回転速度(モータ回転速度(=操舵速度))を検出する。また、符号42は、操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段、図1では「トルクセンサ」と記載)であり、運転者がハンドルHを介して入力する操舵トルク(手動操舵力)を検出する。また、符号43は、ヨーレートセンサであり、車両Cのヨーレート(旋回角度)を検出する。また、符号44は、車輪Wの回転速度(車輪速パルス)を検出する車輪速センサであり、この図1では、1つの車輪Wにのみ記載しているが、実際は4つの車輪Wに備わっている。ちなみに、車速は、4つの車輪Wに備わっている車輪速センサ44の検出値の平均値などや、従動輪となる車輪Wに備わっている車輪速センサ44の検出値の平均値などである。
なお、符号41の舵角センサ〜符号44の車輪速センサまでの各センサを総称するときは、センサ4と記載する。
また、図1において、符号SWは、クルーズコントロールスイッチ(以下クルコンスイッチ)であり(図1では「CCスイッチ」と記載)、ハンドルHに設置又はハンドルHの近傍に設置されて、高速道路などをクルーズコントロールで走行する際に、運転者によりON(オン)されるものである。以下の説明では、このクルコンスイッチSWはハンドルHに設置されているものとする。
ちなみに、このクルコンスイッチSWは、運転者によりOFFされる以外に、ブレーキペダルが踏み込まれるなど、所定の条件のときに自動的に解除(OFF)される。
また、図1において、EPS_ECU1、FI_ECU2、各センサ4、クルコンスイッチSWなどは、CAN(Control Area Network)のような通信線Nにより接続されている。
図2は、図1の車両におけるEPS_ECU1とFI_ECU2の概略構成と、両者の連携を示すブロック図である。
(EPS_ECU)
図2に示されるように、EPS_ECU1は、EPS制御部11、片流れ対応制御部(片流れ対応制御手段)12、ゼロ電流値出力部13、切替器14、リミッタ15、加算器16、モータ駆動手段17を備え、EPS用のモータ3の駆動を制御する駆動制御手段である。ちなみに、EPS_ECU1のうち、保舵支制御部12、ゼロ電流値出力部13、切替器14、リミッタ15、及び、加算器16が、本実施形態の特徴部分である。つまり、EPS制御部11やモータ駆動手段17は公知のものであり、このため、これらの具体的な説明は省略する。
片流れ対応制御部12は、詳細は図3を参照して後記するが、カント路などの片流れが生じる状況での片流れを打ち消すための目標電流値(片流れ対応)を、後段の切替器14に出力する機能を有する機能部であり、「片流れ対応制御」をつかさどる。
なお、目標電流値(片流れ対応)は、「補正電流値」に相当する。また、この目標電流値(片流れは)、電動モータ3に供給される実電流のうちの補正電流分に相当する。
ゼロ電流値出力部13は、加算器16に供給する電流値(0)を、後段の切替器14に出力する機能を有する機能部である。
切替器14は、クルーズコントロール制御部(以下「クルコン制御部」という)21からの信号(クルコン制御中フラグ(CC制御中フラグ))に基づき、クルコンスイッチSWがONのときに、片流れ対応制御部12からの目標電流値(片流れ対応)を後段のリミッタ15に出力し、一方、クルコンスイッチSWがOFFのときに、ゼロ電値流出力部13からのゼロ電流値を後段のリミッタ15に出力する機能を有する機能部である。
リミッタ15は、切替器14から出力される電流値の絶対値が、例えば所定の制限値を超えるような場合に、リミットをかける構成を有する機能部である。例えば、クルコンスイッチSWがONのときに、片流れ対応制御部12から出力される目標電流値(片流れ対応)の絶対値が所定の制限値を超えた場合に、その絶対値が制限値を超えないようにする。
加算器16は、EPS制御部11が出力する目標電流値にリミッタ15が出力する電流値(片流れ対応)を加算するものである。クルコンスイッチSWがONの場合は、EPS制御部11が出力する目標電流値に、片流れ対応制御部12が出力する目標電流値(片流れ対応)を加算してモータ駆動手段17に出力する機能を有する機能部である。
モータ駆動手段17は、演算装置やインバータなどを備え、加算器16から出力される加算処理後の目標電流値に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、このPWM信号によりインバータを駆動してモータ3に供給する三相交流電流を生成し、モータ3をPWM駆動させる機能を有する機能部である。
(FI_ECU)
図2に示す、FI_ECU2は、エンジンECUとも言われ、点火時期や燃料噴射量などの制御を司るECUである。本実施形態の車両CのFI_ECU2は、クルコン制御部21を備えている。クルコン制御部21はハンドルHに設置されているクルコンスイッチSWがONのときに切替器14に信号(CC制御中フラグ)を出力して、片流れ対応制御部12が出力する目標電流値(片流れ対応)を後段のリミッタ15に出力させるようにする。
また、このクルコンスイッチSWがONされたときは、クルコン制御部21は、DBW(Drive By Wire)弁5を介してエンジン(原動機)の出力をコントロールし、一定車速で車両Cを走行させる。この機能を用いれば、例えば、信号機などがない長い直進路において、運転者が足でアクセルコントロールをすることなく(アクセルペダルから足を離しても)、車両Cを一定車速で走行させることができる。
ちなみに、クルコン制御部21と切替器14の連携構成について、クルコンスイッチSWがONであれば、片流れ対応制御を行う場面が生じる可能性が高いとの想定で、切替器14を片流れ対応制御部12の側に切り替え、片流れ対応制御を有効なものとする。また、クルコンスイッチSWがONの状態であれば、大きな操舵もなく、片流れ対応制御が運転者の快適性の支障になる場面が生じる可能性が低いとの想定で、切替器14を片流れ対応制御部12の側に切り替え、片流れ対応制御を有効なものとする。
(片流れ対応制御部)
次に、片流れ対応制御部12の詳細を、その内部構成を示すブロック図である図3を主に参照して説明する。
図3に示すように、片流れ対応制御部12は、中点移動制御部120、減算部121、電流値設定部122、ローパスフィルタ(LPF)123、第1レシオ出力部124、乗算部125、ダンパ電流値設定部126、第2レシオ出力部127、乗算部128、加算部129などを備える。
ちなみに、この実施形態での片流れ対応制御部12は、カント路や横風などのように車両Cに片流れ(片流れ)を生じさせる力に対抗して、モータ3自身の動きを抑制するような目標電流値(片流れ対応)を出力する機能を有する機能部である。
中点移動制御部120は、ヨーレートと操舵トルクを入力して、例えば、後記する図5のフローチャートで片流れを判定して、片流れ対応舵角値を出力する構成を備える。この中点移動制御部120については、後で詳細に説明する。
ちなみに、本実施形態では、片流れ対応舵角値の初期値は0deg、若しくはその時のハンドルHの操舵角に設定される。片流れ対応制御のときには、片流れ対応舵角値を初期値(片流れ対応制御開始時の実操舵角、若しくは0deg)から片流れに対応するように可変し、これを中点移動制御部120の出力として、減算部121に出力する。
減算部121は、初期値である0deg、若しくは舵角センサ41から入力される現在の舵角を基準として中点移動制御部120が出力する片流れ対応舵角値を減算する機能を有する機能部である。
電流値設定部122は、減算部121が出力する値を入力して、片流れ対応舵角値と電流値との対応関係の情報に基づき、入力した片流れ対応舵角値を電流値(ベース電流値)に変換する機能を有する機能部である。なお、ここでの対応関係の情報は、舵角の絶対値が大きくなるほどベース電流値の絶対値が大きくなるように設定されている。これは、片流れの傾向が大きくなるほど運転者は舵角を大きくして保舵する(チョイ切りの運転スタイルにおいては頻繁に若しくは大きくチョイ切りする)からである。
補足すると、カント路などにおける車両Cを片流れさせようとする力に対抗して、モータ3の動きを抑制するような電流をモータ3に供給するように、対応関係の情報は設定されている。ちなみに、モータ3の動きが抑制されれば、自ずとハンドルHの動きも抑制され、結果、ハンドルHを保舵する運転者の負担が軽減される。
ちなみに、図3の電流値設定部122の枠内のグラフは、グラフの中央から右への舵角を(+)、左への舵角を(−)で示しており、例えば、右側への舵角の場合は、電流値は(−)の値に設定される。
なお、電流値設定部122における前記の対応関係は、片流れ対応舵角値の前記した初期値を境に、電流を立ち上げたり立下げたりしている。これは、片流れ対応舵角値の初期値(ここでは0deg)で電流を立ち上げたり立下げたりすることで、センタ感を演出するためである。
ちなみに、説明を省略しているが、EPS制御部11にもベース電流値やダンパ電流値が存在する。しかし、この片流れ対応制御部12におけるベース電流値と後記するダンパ電流値は、片流れ対応制御(保舵支援)のためのものであり、基本的に、EPS制御部11におけるものとは別物である。
ローパスフィルタ123は、例えば、電流値設定部122が出力するベース電流値の移動平均をとるなどして、ベース電流値をなます機能を有する機能部である。なお、電流値設定部122をチューニングすることで、このローパスフィルタ123を省略することも可能である。
第1レシオ出力部は、操舵トルクセンサ42が出力する操舵トルクを入力して、操舵トルクと第1レシオの対応関係の情報に基づき、入力した操舵トルクを第1レシオに変換する機能を有する機能部である。なお、ここでの対応関係の情報は、車線変更などを容易にするため、概ね、操舵トルクの値が大きくなるほど第1レシオの値が小さくなるように設定されている。
乗算部125は、ローパスフィルタ123が出力するベース電流値に第1レシオ出力部124が出力する第1レシオを乗算して、ベース電流値を補正する機能を有する機能部である。
ダンパ電流値設定部126は、入力されるモータ回転速度、すなわち、この実施形態では、舵角の時間微分値を入力して、モータ回転速度と電流との対応関係の情報に基づき、入力したモータ回転速度を電流値(ダンパ電流値)に変換する機能を有する機能部である。ちなみに、ここでの対応関係の情報は、モータ回転速度が速くなれば、その動きを制止するようにモータ3に電流を供給すべく、ダンパ電流値を設定するものである。
なお、このダンパ電流値設定部126は、EPS制御部11における周知のダンパ制御のものとは異なる。EPS制御部11におけるダンパ制御は、車両Cの高速走行中において、ハンドルHがふらつくことを防止してどっしりとした安定感のある操舵フィールを運転者に与えるものであるが、このダンパ電流値設定部126におけるダンパ電流値は、片流れに対抗するものである。
ちなみに、前記の電流値設定部122と同様、枠内のグラフは、グラフの中央から右へのモータ回転速度を(+)、左へのモータ回転速度を(−)で示しており、例えば、右側への回転の場合は、ダンパ電流値は(−)の値に設定される。
第2レシオ出力部127は、操舵トルクセンサ42が出力する操舵トルクを入力して、操舵トルクと第2レシオの対応関係の情報に基づき、入力した操舵トルクを第2レシオに変換する機能を有する機能部である。なお、ここでの対応関係の情報は、前記の第1レシオと同様に、概ね、操舵トルクの値が大きくなるほど第2レシオの値が小さくなるように設定されている。これは、第1レシオと同様、車線変更などを容易にするためである。
乗算部128は、ダンパ電流値設定部126が出力するダンパ電流値に第2レシオ出力部127が出力する第2レシオを乗算して、ダンパ電流値を補正する機能を有する機能部である。第2レシオによるここでの補正は、前記のとおり、車線変更などを容易にするためである。
加算部129は、乗算部125が出力する電流値(ベース電流値)と乗算部128が出力する電流値(ダンパ電流値)とを加算して、目標電流値(片流れ対応)として出力するものである。本実施形態では、図2に示されるように、この目標電流値(片流れ対応)は、クルコン制御がONの場合に加算器16でEPS制御部11が出力する目標電流値(EPS制御における目標電流値)と加算される。そして、モータ3は、その加算後の目標電流値に応じて、不図示のバッテリから供給される実電流に基づいて駆動される。
(動作1)
以上では、車両Cの全体構成から、各部の具体的な構成を説明したが、次は、その動作を具体的に説明する。
図4は、運転者が、車両Cを運転して道路を走行している状況での、車体の傾斜、操舵トルク、運転者のハンドル操作負担などを示す図であり、左側の図が平坦路の場合を、中央の図がカント路における一般的な運転スタイルを、右側の図がカント路におけるチョイ切りの運転スタイルをそれぞれ示している。
[平坦路]
図4の左側の図に示すように、直進(直線)の平坦路では、車両Cの車体は水平であり、ハンドルHもほぼ中央であり、操舵トルクもゼロを中心にして左右ほぼ均等に周期的に振動している状況となる(微小舵)。この状況では、運転者の腕の筋肉(上腕二頭筋や上腕三頭筋など)は微小舵を繰り返す際に多少伸縮される程度である。
なお、ここでの平坦路とは、路肩方向に目立った傾斜がないこと(つまりカント路ではないこと)を意味し、道路の進行方向に存在する上下のうねり(高低差)は問わない。
[カント路(一般的な運転スタイル)]
図4の中央の図に示すように、道路の路肩方向に傾斜がついたカント路では、重力により車体流れ(車両Cに片流れ)が生じる。この図4の中央の図のように左側の路肩に向かって下る傾斜がついたカント路では、左側に向けて片流れ(車体流れ)が生じる。このため、運転者はハンドルHを右方向に傾けて保舵を行う。
ところで、本実施形態の車両用操舵装置Sのように電動パワーステアリング装置(EPS)が備わっていれば、操舵トルクに応じてEPS(EPS制御部11)が操舵トルクなどに見合う目標電流値を設定して、運転者の操舵力を補助する操舵補助力をモータ3に生じさせる。しかし、EPSは、交差点、曲線路、駐車場などにおける操舵を踏まえて作成されているため、カント路での片流れ対応、すなわち、さほど大きくない一方向の操舵トルクが長時間続く場合の対応が取れているとはいえない。つまり、さほど大きくない操舵トルクの場合は、操舵トルクの不感帯の関係などから、モータによる操舵補助力がほとんど発生されない。例えば、米国などには、道路の水はけを良くするために、延々とカント路が続く場所があり、このような場所においては、通常のEPSでは運転者に大きな負担がかかり、快適性を損なってしまう。
なお、カント路におけるこのような一般的な運転スタイルを支援するための片流れ対応制御を備える車両用操舵装置も知られているが、しかし、チョイ切りのような運転スタイルに対応しているとはいえない。すなわち、前記した特許文献1では、舵角一定の定常走行の場合を前提としており(特許文献1の段落0017など参照)、チョイ切りのような運転スタイルの場合は舵角一定の定常走行状態とはいえず、カント路での走行と認識することができない。車両起因の片流れではあるが、片流れに対応した他の特許文献として、特開2007−62712号公報が知られているが、これも直進状態における操舵履歴に基づくものであり、チョイ切りの運転スタイルには対応していない。
[カント路(チョイ切りの運転スタイル)]
図4の右側の図に示すように、同じカント路でも、一定の舵角で保舵するのとは異なる運転スタイルとして、前記のチョイ切りの運転スタイルがある。この運転スタイルは、車両Cが路肩方向に流されてくると、少しハンドルHを切って(チョイ切り)車両Cが進行する向きを変えて直ぐに手離しし(ハンドルHを握る力を緩め)、再度片流れして路肩方向に流されると、再度チョイ切りするものである。この運転スタイルでは、パルス状の操舵(パルス状の操舵トルクや舵角)が、同じ方向に、かつ、所定の間隔で複数回検出される。パルス状の操舵(操トルクや舵角)が検出される所定の間隔は、車速が早くなれば短くなる傾向にある。また、この所定の間隔は、車体流れ(片流れ)の力が大きくなるほど(つまりカント路の勾配が大きくなるほど)、短くなる傾向がある。また、チョイ切りは、その名の通りごく短い操舵であるので、チョイ切りによる操舵(操舵トルクや舵角)のパルスの幅に比べて、所定の間隔はかなり長い時間であるといえる。
詳細は後記するが、本実施形態では、図3に示す片流れ対応制御部12の中点移動制御部120が、操舵トルクとヨーレートとにより、運転スタイルが、片流れに対応したチョイ切りか否かを判定して、舵角の中点を移動させる。そして、図3に示すように、EPS_ECU1は、片流れ対応制御部12が出力する移動後の中点に基づく出力電流値(目標電流値(片流れ対応))をEPS制御部11が出力する目標電流値に加算(加算器16)し、モータ3に供給する実電流を生成する(モータ駆動手段17)。
この詳細は後記するが、この片流れ対応制御により、片流れ(車体流れ)が生じる状況においても、運転者が操舵する負担が大幅に軽減され、平坦路レベルの操舵負担を実現可能である。
(動作2)
次に、同じ図4を参照して、本実施形態の車両Cが、平坦路からカント路に侵入して片流れ対応制御が開始されるまでを時系列で説明する(適宜図2や図3など参照)。
[平坦路]
図4の左側の図に示す平坦路において、運転者がハンドルHに設置されているクルコンスイッチSWをONしたとする。すると、FI_ECU2の制御のもと、DBW弁5を制御して、定速走行を行う。これにより、運転者は、定速走行のためにアクセルペダルを操作する労力が省かれる。さらに、クルコンスイッチSWがONされたことにより、FI_ECU2では、クルコン制御部21が切替器14にクルコンスイッチSWがONされた旨の信号を出力する。この信号をトリガにして、切替器14が切り替わり、片流れ対応制御部12から出力されている目標電流値を後段のリミッタ15へと通過させる。一方、切替器14は、ゼロ電流値出力部13が出力する0の電流値を遮断する。
クルコンスイッチSWがONされることにより、見かけ上、片流れ対応制御部12が出力する目標電流値(片流れ対応)は、加算器16において、EPS制御部11が出力する目標電流値に加算される。
但し、図4の左側の図に示されるように、操舵トルクの値は、0を中心に左右にほぼ均等である。ちなみに、直進路の微小舵であることから、検出される操舵トルクの範囲は、EPS制御部11における操舵トルクの不感帯の範囲内のため、まだモータ3は作動していない。
つまり、平坦路の微小舵では、中点移動制御部120からは、片流れ対応舵角値は初期値が出力される。このため(図3参照)、電流値設定部122では、中点を移動されることのない舵角をそのまま用いての制御を行う。さらに、前記のとおり直進の平坦路であることから、操舵トルク、舵角、モータ回転速度(舵角速度)はいずれも小さく(モータ3は回るとしても外力により回される)、このため、片流れ対応制御部12から出力される目標電流値(片流れ対応)は0か0に近い値である。
したがって、運転者によりクルコンスイッチSWがONされることでEPS制御部11が出力する目標電流値に片流れ対応制御部12が出力する目標電流値(片流れ対応)が加算されても、平坦路では、前記のとおり目標電流値(片流れ対応)は0か0に近い値であるので、モータ3による消費電力が上昇するようなことはない。
なお、図3、図4により理解されるように、本実施形態の車両Cでは、常に片流れ対応制御部12の各機能は作動していて、目標電流値(片流れ対応)を出力している。この点について、クルコンスイッチSWがONにされたことをトリガに、休止などしていた片流れ対応制御部12の各機能が動作するようにしてもよい。
[カント路(チョイ切り)]
次に、車両Cが平坦路から図4の右側の図に示すカント路に侵入したとする。クルコンスイッチSWは、既に平坦路でONされているものとする。
運転者は、片流れに対応するため、チョイ切りの運転スタイルを行う。
ここで、特許文献1などの従来の片流れ対応制御では、前記のように舵角が一定である定常走行状態を前提に片流れを判定するため、チョイ切りの運転スタイルでは、片流れが車両Cに生じていても、片流れとは検出できない。このため、片流れに対応する制御を行うことができない。
しかし、図4の右側の図のように、ごく短いパルス状の操舵が行われることで、中点移動制御部120は、車両Cがカント路上を走行していることを検出する。これにより片流れ対応制御が開始する。この点を、チョイ切りの運転スタイルを検出して片流れ対応制御を開始するフローチャートである図5を参照して説明する。
このフローチャートの動作主体は、中点移動制御部120である。
まず、ステップS1では、操舵トルクセンサ42で検出される操舵トルクの絶対値が10Nm(第2操舵トルク所定値)以下、かつ、ヨーレートセンサ43で検出されるヨーレートの絶対値が1deg/秒(第1車両挙動量所定値)以下、という条件を満たすか否かを判定する。すなわち、車両Cが第1の車両状態(スタンバイ状態)にあるか否かを判定する。このスタンバイ状態は、運転者が、ほぼ操舵していない状態といえる。
この条件を満たす場合は(S1→Yes)、スタンバイ状態であるとして、次のステップS2に移行する。一方、この条件を満たさない場合は(S1→No)、ステップS1に戻る(このルーチンを飛び出してもよい)。
カント路では、スタンバイ状態での走行をすれば片流れを起こす。このため、運転者は、ハンドルHのチョイ切りを行う。
ステップS2では、検出される操舵トルクの絶対値が20Nm(第1操舵トルク所定値)を超えたか否か(第1操舵トルク所定値を満たしたか否か)を判定する。ちなみに、第1操舵トルク所定値は、チョイ切りされたか否かを判定するための閾値である。この第1操舵トルク所定値は、車種、路面ミュー、車速、タイヤの種類、カント路の傾斜などにより値が異なることがあり、数値は一例である。ちなみに、チョイ切りのときに検出される操舵トルクは、旋回、急なレーンチェンジ、回避行動によるものよりも、一般的には小さい値といえる。
操舵トルクが第1操舵トルク所定値超えて(第1操舵トルク所定値を満たして)いれば(S2→Yes)、運転者によりここでチョイ切りされた可能性があるため、次のステップS3に移行する。一方、超えていなければ(S2→No)、チョイ切りされた可能性は低いので、ステップS1に戻る(このルーチンを飛び出してもよい)。
ステップS3では、チョイ切りの運転スタイルかどうかを判定するための判定カウンタを起動する。そして、次のステップS4では、判定カウンタが1秒(第1所定時間)カウントするまでの間に、検出されたヨーレートの絶対値が、10(第3車両挙動量所定値)〜2(第2車両挙動量所定値)deg/秒という範囲の値を500m秒(第2所定時間)満たしかを判定する。換言すると、検出されたヨーレートが「車両挙動における所定の条件」を満たしたか否か、具体的には、車両挙動(ヨーレート)の絶対値が第2車両挙動量所定値から第3車両挙動量所定値までの範囲をとる時間が第2所定時間以上であるか否かを判定する。つまり、ここでは、車両Cが片流れしているかどうかを判定する。すなわち、ステップS2で比較的大きな操舵トルクを検出しているが、その後、10〜2deg/秒(所定の条件)というさほど大きくないヨーレートを少なくとも500m秒の間検出していれば(S4→Yes)、それは、片流れと判定できる。
一方、2deg/秒(第2車両挙動量所定値)以下のヨーレートであれば(S4→No)、それは、直進していて片流れしていないと判定できる。また、10deg/秒(第3車両挙動量所定値)以上のヨーレートを検出すれば、それは、旋回と判定できる。
つまり、判定カウンタが起動している間のヨーレートの値がステップS4の条件を満たす場合は(S4→Yes)、車両Cは、片流れをしていると判定できるため、ステップS5に移行する。一方、ヨーレートの値がステップS4の条件を満たさない場合は(S4→No)、車両Cは、旋回(第3車両挙動量所定値以上)か直進(第2車両挙動量所定値以下)であるので、片流れ対応制御を実行する必要がなく、ステップS1に戻る(このルーチンを飛び出してもよい)。
次のステップS5では、操舵トルクの絶対値が10Nm(第2操舵トルク所定値)未満かを判定する。それ以下であれば(S5→Yes)、チョイ切りの運転スタイルでカント路を走行しているとみなせるので、片流れ対応制御を実行するため、ステップS6に移行する。一方、それ以上であれば(S5→No)、チョイ切りではない(保舵している)とみなせるので、ステップS1に戻る(このルーチンを飛び出してもよい)。
そして、ステップS6では、片流れ対応舵角値を初期値(例えば0deg)から所定値に設定して、減算部121に出力する。
このように、このフローチャートでは、ステップS1〜S5を繰り返さなくとも、一巡で片流れを判定できる。ちなみに、ここでの所定値の他、前記の各所定値は、実験やシミュレーションなどにより適宜設定される。初期値も同様である。
この結果、電流値設定部122では、移動後の中点により電流値が設定される。この電流値設定部122が設定(出力)する電流値は、いわば目標電流値(片流れ対応)のベースとなる電流値(ベース電流値)である。前記のとおり、電流値設定部122における舵角と電流値(ベース電流値)のマップ(つまり舵角と電流値との対応関係の情報)は、前記のように、センタ感を演出するようにしている。
また、本実施形態では、電流値設定部122が出力し、ローパスフィルタ123による処理がなされたベース電流値には、第1レシオ出力部124が出力する第1レシオが乗算部125で乗算される。この第1レシオは、操舵トルクが小さい場合よりも大きい場合の方が、その値が小さくなるように設定されている。これは、右左折や車線変更や回避行動などの際に、片流れ対応制御部12が出力する目標電流値(片流れ対応)が支障とならないように、目標電流値(片流れ対応)を小さくするためである。
また、第1レシオが乗算された後のベース電流値には、ダンパ制御部126が出力するダンパ電流値が加算部129で加算される。このダンパ電流値は、モータ回転速度が0のときに絶対値が最少となるように設定されている。そして、このダンパ電流値には、第2レシオ出力部が出力する第2レシオが乗算部128で乗算される。乗算後のダンパ電流値は、速い操舵に対しては大きな値になるように、力強い操舵(右左折や車線変更や回避行動など)に対しては小さな値になるようにされ、加算部129においてベース電流値に加算される。
なお、前記のとおり、片流れ対応制御部12は、カント路や横風などの外力(さらには運転者の不意な軽い力の操舵)によってモータ3が回されないようにする電流を、換言すると運転者が保舵するハンドルHの位置が外力により動かされないようする電流を、モータ3に供給する制御を行うものである。
乗算部125により第1レシオが乗算され、かつ、加算部129によりダンパ電流値が加算されたベース電流値は、目標電流値(片流れ対応)として、片流れ対応制御部12から出力される。そして、出力された目標電流値(片流れ対応)は、クルコンスイッチSWがONであることから、切替器14で選択されてリミッタ15を通過し、加算器16で加算される。
この片流れ対応制御により、本実施形態の車両Cでは、カント路や横風が吹く状況においても、運転者が決めたハンドルHの角度(切れ角)からの変位を、モータ3の力で抑制するようにされ、運転者の負担が、平坦路レベルにまで大幅に軽減される。
また、この片流れ対応制御が始まると、車両C直進時の操舵トルクが減少し、チョイ切りが不要に、又は、チョイ切りしながら運転するとしても、チョイ切りとチョイ切りの間隔が長くなり、その分、運転者の負担が軽減される。
なお、片流れ対応舵角値により中点が移動されていることから、この例では、運転者は、ハンドルHのセンタ感が中央よりも若干右側に移動したと感じる。
ちなみに、片流れ対応制御は、運転者のクルコンスイッチSWの操作により又は運転者のアクセルペダルの操作などによって、クルコンスイッチSWがOFFされたときに無効化される。
なお、片流れ対応制御中に、運転者が、旋回や車線変更などによりハンドルHを操舵したときなどについて、例えば、中点移動制御部120が、(1)ヨーレートが所定の閾値を超えたかや、(2)モータ回転速度(舵角速度)が所定の閾値を超えたかを監視して、いずれかが超えた場合は、片流れ対応制御のキャンセル条件が成立したとして、片流れ対応舵角値を初期値(例えば0deg)にする。つまり、舵角中点を元に戻す。よって、クルコンスイッチSWがONされてEPS制御部11の目標電流値に片流れ対応制御部12の目標電流値(片流れ対応)が加算されても、セルフアライメントトルクによるハンドルHの戻りを大きく阻害することはない。
[クルコン連携のフローチャート]
図6は、本実施形態でのクルーズコントロールと片流れ対応制御との連携を示す概略的なフローチャートである。
図6のフローチャートでは、EPS_ECU1が、クルコン(クルーズコントロール)制御中であるかどうか、つまりCC制御中フラグがクルコン制御部21から出力されているか否かを判定する(ステップS11)。運転者によりクルコンスイッチSWがONされていれば、クルコン制御中であり(ステップS11→Yes)、EPS_ECU1は、片流れ対応制御をONにする(ステップS12)。つまり、EPS_ECU1の切替器14が、片流れ対応制御部12が出力する目標電流値(片流れ対応)を選択するように切り替わる。これにより、片流れ対応制御が有効化(ON)される。
一方、クルコンスイッチSWが運転者によりOFFされた場合やアクセル操作などがされたためにOFFされた場合は(ステップS11→No)、クルコン制御部21からはCC制御中フラグが出力されないので、切替器14が、ゼロ電流値出力部13が出力するゼロ電流値を選択するように切り替わる。これにより、片流れ対応制御が無効化(OFF)される(ステップS13)。
ちなみに、本実施形態では、CC制御中フラグが出力されていなくても、図2、図3に示されるように、片流れ対応制御部12の各部は機能している。このため、ステップS13は、片流れ対応制御の「システムON」かつ「システム・インアクティブ(INACTIVE)」の表示をインパネ(インストルメント・パネル)などに行い、一方、ステップS12では片流れ対応制御の「システムON」かつ「システム・アクティブ(ACTIVE)」などの表示をインパネなどに行うようにしてもよい。
(第1実施形態のまとめ)
以上説明した第1実施形態によれば、クルコン(クルーズコントロール)と連携して、従来のEPSでは適切に支援されなかったカント路や横風など、車両Cに片流れを生じさせる外力が生じている状況でも、チョイ切りという運転スタイルに適合した適切な運転支援が行われ、運転者の負担を大幅に軽減できる。
ちなみに、本実施形態では、片流れ対応制御をクルコンスイッチSWと連携して、クルコンスイッチSWがONになったときに、切替器14を片流れ対応制御部12の側に切り替えて片流れ対応制御を有効にしていたが、これに替えて、片流れ対応制御を有効にするスイッチを設け、このスイッチがONされたときに切替器14を片流れ対応制御部12の側に切り替えるようにしてもよい。
しかし、この片流れ対応制御を使用する場面とクルーズコントロールを使用する場面は、似通っており、そのため、本第1実施形態では、片流れ対応制御を有効にするスイッチを独立して設けず、クルコンスイッチSWと兼用することとした。これにより、部品点数が削減されるとともに、運転者の操作が簡略化される。
なお、図5のフローチャートは、ステップS1〜S5を一巡した際のステップS5がYesの場合に、片流れ対応制御を開始する構成としていた。つまり一巡で迅速に片流れを判定できるようにしていた。これを、例えば、ステップS4がYesの場合(又はステップS5がYesの場合)、再度ステップS1に戻り、二巡させ、二巡目のステップS4がYes又はステップS5がYesの場合に、中点を移動して片流れ対応制御を開始するようにしてもよい。つまり、二巡以上とすることで、カント路走行であることがより確実になり、適切な片流れ対応制御を行うことができる。
また、本実施形態では、クルコンスイッチSWがONされていない場合は、切替器14がゼロ電流値出力部13の側であることから、ステップS5がYesとなっても、クルコンスイッチSWがOFFであれば、片流れ対応制御部12が出力する補正電流値である目標電流値(片流れ対応)は、モータ3の駆動に反映されないものであった(無効化されている)。
しかし、切替器14を廃止したり、ステップS5がYesであることで、切替器14が片流れ対応制御部12の側に切り替わるような構成としてもよい。
また、チョイ切りの運転スタイルの判定は、図5のフローチャートに限定されるものではなく、操舵トルクセンサ42の検出値及び/又は舵角センサ41の検出値から、パルス状の操舵が、同じ方向に、かつ、所定の間隔で複数回検出されるか否かを判定することによって、チョイ切りの運転スタイルか否かを判定してもよい。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図7は、第2実施形態における連携を示す図である。
前記した第1実施形態における(図2など参照)、FI_ECU2のクルコン制御部21とEPS_ECU2との連携は、クルコンスイッチSWがONのときは、片流れ対応制御を行う場面が生じる可能性が高く、かつ、クルコンスイッチSWがONのときは、大きく操舵することが少なく、片流れ対応制御が運転者の快適性の支障になる場面が生じる可能性が低いとの想定のもと、クルコンスイッチSWのONをトリガにして、切替器14を片流れ対応制御部12の側に切り替えて、片流れ対応制御を有効にしていた。
しかし、この第2実施形態では、第1実施形態のような連携は行っていない一方、ナビゲーションシステムのECU(NAVI_ECU6)との連携を行っている。この連携は、NAVI_ECU6が、車両Cは直進路上にいると判定したときはその旨の信号(フラグ)を出力して、切替器14を片流れ対応制御部12の側に切り替え、直線路上にいないと判定したときはその旨の信号(フラグ)を出力して、切替器14をゼロ電流値出力部13の側に切り替えるというものである。その理由は、第1実施形態でのクルコン制御部21との連携と同様であるのでその説明は省略する。
また、ナビゲーションシステムは周知であるので、NAVI_ECU6の説明も省略する。
なお、この第2実施形態は、第1実施形態とは異なる意味で、FI_ECU2のクルコン制御部21とEPS_ECU2が連携を行っている。以下、この第2実施形態でのクルコン制御部21との別の連携を説明する。
運転者によりクルコンスイッチSWがONされている状況は、運転者の操舵意思が低い状況といえる。このため、ハンドルHを握る力などが弱まっている可能性が高い。したがって、第2実施形態では、片流れ対応制御部12が、クルコン制御部21との連携で、クルコン制御部21からCC制御中フラグ(第1実施形態で説明済み)が出力されていることを検出すると、片流れ対応制御の制御量(目標電流値(片流れ対応))を増大させるようにする(増大の仕方については後記する第3実施形態の逆の手法をとることで実現できる)。
このようにすることで、片流れ対応制御中にクルコンスイッチSWが運転者によりONされ、運転者がハンドルHを把持する力を弱めるなどしても、適切に保舵することができる。
なお、図7の符号SWのスイッチをクルコンスイッチとして説明しているが、この符号SWのスイッチをクルコンスイッチではなく、運転者がハンドルHを把持しているか否か(手離しをしているか否か)を検出するする手離し検出センサとして置き換え、この手離し検出センサSWの信号を片流れ対応制御部12で使用して、手離しのときなどには、片流れ対応制御の制御量を上げるようにしてもよい(つまりここでの符号SWは手離し検出センサである)。ちなみに、符号SWが、クルコンスイッチ又は手離し検出センサであると説明したが、両者は排他的な関係ではなく、両者が併存してもよいことはいうまでもない。また、手離しは、把持力を測定するセンサによっても検出可能である。
この第2実施形態では、運転者の保舵力が弱まる状況に対して、適切な片流れ対応制御を行うことができる。
≪第3実施形態≫
前記した第2実施形態は、運転者のハンドルHの把持力が弱まることに対応して、片流れ対応制御の制御量を増大する実施形態を説明したが、この第3実施形態では、逆に、片流れ対応制御の制御量(目標電流値(片流れ対応)=補正電流値)を減少させたり、片流れ対応制御を停止させたりする実施形態を説明する。
図8は、第3実施形態の一例として、図3の電流値設定部122における舵角と電流値との対応関係の情報を調整することで片流れ対応制御の制御量を減少する例を示す図である。
(極低車速時など)
極低車速時や停車時では、カント路の影響を比較的受けにくい。したがって、車輪速センサ44に基づく車速が例えば10Km/h以下の極低車速や、車速0の停車時は、片流れ対応制御の制御量(目標電流値(片流れ対応))を減少又は片流れ対応制御を停止するようにする。
その減少の仕方としては、(1) 図8に示すように、電流値設定部122(図3参照)における舵角と電流値(ベース電流値)との対応関係の情報(マップ)についての舵角に対応する電流値(絶対値)を、実線のものから破線のもののように引下げることが考えられる。また、(2) 別の減少の仕方として、片流れ対応制御部12(図3参照)で、片流れ対応舵角値を移動させていたが、この移動量を低減させることなど、種々の仕方で片流れ対応制御の制御量の低減を実現できる。
また、片流れ対応制御の停止は、例えば、切替器14をゼロ電流値出力部13の側に切り替えることで実現できる。
(夜間)
また、夜間は、視界が悪くなるため(認識可能な前方の距離が減少するため)、運転者の目視による直進判定が甘くなる。このため、昼間であれば、運転者はカント路に対応した舵角にすぐにハンドルHを合わせられるが、夜間ではその精度が悪化する。すると、夜間は、多少蛇行気味の運転になる。片流れ対応制御により舵角の中点の移動が行われ、かつ蛇行運転すると、蛇行の一方では、運転者の操舵の方向と逆になってしまい、運転者の操舵を阻害する場合がある。このため、夜間は、前記と同様の手法で、片流れ対応制御量を減少又は片流れ対応制御を停止するようにする。これにより、この違和感を抑制することができる。
なお、この減少・停止の制御は、ヘッドライトのスイッチと連動させたり車両が備える時計と連動させたりすることで実現できる。
(ウインカ操作など)
また、ウインカが操作されたときには、ウインカと連携して、片流れ対応制御の制御量を減少又は片流れ対応制御を停止する構成とする。
また、ABS(Anti Brake Lock System)やVSA(Vehicle Stability Assist、登録商標)が作動するときや、障害物回避支援装置(追突防止装置)が作動するときは、これらと連携して、片流れ対応制御の制御量を減少又は片流れ対応制御を停止する構成とする。なお、障害物回避装置などは、衝突余裕時間(Time To Collision;TTC)に応じて片流れ対応制御の制御量を可変させることができる。例えば、TTCが5秒のときよりも、TTCが2秒のときの方が、制御量(目標電流値(片流れ対応))が小さくなるようにする。
≪その他≫
以上、第1〜第3実施形態で説明した本発明は、以上の実施形態に限定されることなく実施することができる。例えば、ナビゲーションシステムによって、車両Cが曲線路上や市街路上などを走行していることが分かれば、切替器14をゼロ電流値出力部13の側に切り替えるようにしてもよい。
また、切替器14やゼロ電流値出力部13は必須の構成ではなく、省略することも可能である。
なお、本発明は、カント路(横風)かつ曲線路などにも対応可能である。
また、本発明は、エンジンを備える車両Cにのみ適用可能なものではなく、電気自動車や燃料電池車など、あらゆる車種にも当然適用できるものである。ちなみに、電気自動車や燃料電池車の場合、クルーズコントロールは、例えば、走行モータ用のインバータの駆動を制御して、一定車速での走行を実現させる。また、クルーズコントロールは、アクセルに加えてブレーキも自動操作して、車間距離を所定に保つアダプティブクルーズコントロール(ACC)でも同じである。
また、ステア・バイ・ワイヤ(Stair By Wire)にも適用できる。
さらには、船舶(小型船舶)などで、潮流や横風で船体が横方向に流されるような場合(片流れが生じる場合)においても、これに対応して船舶の舵取りハンドルを運転者が保舵するような状況にも適用することができる。すなわち、請求項の車両の語を船舶や乗り物に読み替えて適用することもできる。
1 EPS_ECU
11 EPS制御部
12 片流れ対応制御部(片流れ対応制御手段)
120 中点移動制御部
121 減算部
122 電流値設定部
13 ゼロ電流値出力部
14 切替器
15 リミッタ
16 加算器
17 モータ駆動手段
2 FI_ECU
21 クルコン制御部
3 モータ(電動モータ)
4 センサ
41 舵角センサ(操舵角検出手段)
42 操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
43 ヨーレートセンサ(車両挙動検出手段)
44 車輪速センサ
5 DBW
6 NAVI_ECU(ナビゲーション手段)
C 車両
S 車両用操舵装置
H ハンドル(ステアリングハンドル)
SW クルコンスイッチ、手離し検出手段

Claims (4)

  1. 操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    車両挙動を検出する車両挙動検出手段と、を有し、
    前記操舵トルクに基づき、電動モータに与える電流値を制御して操舵系にアシストトルクを付与する車両用操舵装置であって、
    車両に生じる片流れを検出し、当該片流れを抑制するように前記電流値を補正する補正電流値を算出する片流れ対応制御手段を備え、
    前記検出された操舵トルクと車両挙動とに基づき、車両が第1の車両状態にあるか否かを判定し、
    前記第1の車両状態にて、前記操舵トルクの絶対値が第1操舵トルク所定値以上となる操舵が行われたときから第1所定時間の間に、
    前記車両挙動が所定の条件を満たしたときに、
    前記第1操舵トルク所定値を満たしたときの前記操舵トルクの方向と同方向に前記補正電流値を算出する
    ことを特徴とする車両用操舵装置。
  2. 前記第1の車両状態は、
    前記操舵トルクの絶対値が前記第1操舵トルク所定値よりも小さい第2操舵トルク所定値以下で、
    かつ、前記車両挙動の絶対値が第1車両挙動量所定値以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用操舵装置。
  3. 前記車両挙動における前記所定の条件は、前記車両挙動の絶対値が第2車両挙動量所定値から第3車両挙動量所定値までの範囲をとる時間が第2所定時間以上である
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用操舵装置。
  4. 操舵トルクセンサの検出値及び/又は舵角センサの検出値から、パルス状の操舵が、同じ方向に、かつ、所定の間隔で複数回検出されるか否かを判定し、
    検出される際には、検出されるパルス状の操舵と同じ方向に操舵用の電動モータを駆動する補正電流を生成させる
    ことを特徴とする車両用操舵装置。
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