JP5819020B1 - 密着性に優れる無電解めっきを施すための塗料組成物、及び無電解めっき物を製造する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する際には、その方法は簡便であって、環境に対する負荷が小さく、安全性が高いこと、そして、非導電性基材(樹脂成形品)とめっきとの間には密着性が高いこと。【解決手段】表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっきを施すための塗料組成物であって、(1)パラジウム粒子と分散剤との複合体、(2)カチオン性界面活性剤及び(3)水を含有する塗料組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、密着性に優れる無電解めっき用塗料組成物、及び無電解めっき物を製造する方法に関する。
例えばABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂)等からなる非導電性基材に対して金属めっき(以下、単に「めっき」とも記す)を形成する技術は、自動車の意匠性部品に広く適用されている。例えばABS樹脂等からなる樹脂成形品に対してめっきを形成する場合では、樹脂成形品とめっきとの間に優れた密着性が要求される。
非導電性基材は、めっきとの界面に金属結合を得ることができない。そのため、非導電性基材とめっきとの間に優れた密着性を得るためには、非導電性基材の表面に微細な凹凸を形成する(エッチングを行う又は粗化する)ことにより、アンカー効果(投錨効果)を付与する必要がある。しかし、このエッチングは工程が煩雑である上、クロム酸等の環境負荷の高い薬品を使用しなければならないという点で改善の余地がある。
また、ABS樹脂の代替として、PP(ポリプロピレン)からなる樹脂成形品に対しめっきを形成する方法も提案されている。しかし、PP成形品とめっきとの間における密着性には改善の余地があり、PP成形品に対し、クロム酸エッチング無しにめっきを形成する方法は未だ実用化には至っていない。
上記技術を改善すべく、例えば粗化(エッチング)工程を行うことなく、樹脂成形品とめっきとの間における密着性の改善が試みられている(特許文献1〜5)。特許文献1〜5では、樹脂成形品(非導電性基材)に対してクロム酸を使用せずにエッチングと同等の効果を狙った処理が施されている。そして、その樹脂成形品に対してめっきを形成する技術である。
図1及び2に従来技術を示す。
特許文献1では、基材に対してオゾン処理を行い、アンカー効果を付与し、カチオン性界面活性剤で処理する方法が記載されている。しかし、その方法では、エッチング工程の代替としてオゾン処理を行うので、基材の結合が切断されることを防ぐために、オゾン処理の時間を正確に制御する必要がある。また、そのオゾン処理により、基材の強度が劣化する。
特許文献2では、基材に無電解めっき触媒を有するインクを塗布し、無電解めっきの下地層を形成する方法が記載されている。しかし、その方法では、Pdと樹脂の複合体からなる塗膜を形成するため、Pdの使用量が多くなる。また、無電解めっきを施す前に、ホウ素系化合物による還元工程及びホウ素系化合物を除去する洗浄工程(活性化工程)を必要とする。その結果、無電解めっきを施すために工程が煩雑化し、その上ホウ素系化合物による環境負荷は大きくなる。
特許文献3には、基材に対して、アルカリ脱脂処理及びカチオン性界面活性剤による処理が記載されている。しかし、その処理は、非導電性基材とカチオン性界面活性剤の間に十分な結合が得られないため、基材に対して十分な密着性を有するめっきを得ることができない。
特許文献4には、基材に導電性高分子微粒子とバインダー樹脂との複合体を塗布し、界面活性剤、若しくはアルコールを含む脱ドープ処理液を用いて処理する方法が記載されている。しかし、その方法は、工程が多く煩雑である。
また、本出願人は、Pd粒子と分散剤との複合体、溶媒、及びSSPY(4-アルキル-3-カルボン酸エステルポリピロール)を含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて、基材に無電解めっきを施す方法を提案している(特許文献5)。この方法では、Pd粒子とSSPYの複合体からなる塗膜にアンカー効果を生じさせ、エッチングと同等の効果を得ることができる。
特開2010-13708号公報 特開2010-171045号公報 特開平11-207184号公報 特開2015-54976号公報 特開2013-001955号公報
従って、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する際には、その方法は簡便であって、環境に対する負荷が小さく、安全性が高いことが要求される。そして、非導電性基材(樹脂成形品)とめっきとの間には優れた密着性が要求される。
本発明は、簡便に、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、環境に対する負荷が小さく、安全に、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する方法で、非導電性基材(樹脂成形品)とめっきとの間で優れた密着性を示すめっき物になることを目的とする。
本発明は、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する方法で、良好な外観皮膜を形成するめっき物になることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特定の成分を含む塗料組成物を用いて、表面にアニオン性官能基をもつ非導電性基材に対して、無電解めっきを施すことで、上記目的を達成し得ることを見出した。
本発明者らは、また、特定の処理を含む工程を経て、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造することで、上記目的を達成し得ることを見出した。
即ち、本発明は、次の組成物及び製造方法である。
項1.
表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっきを施すための塗料組成物であって、(1)パラジウム粒子と分散剤との複合体、(2)カチオン性界面活性剤及び(3)水を含有する塗料組成物。
項2.
前記(1)複合体が、分散剤の存在下、パラジウムイオンを還元することによって得られる、前記項1に記載の塗料組成物。
項3.
前記分散剤が、カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤である、前記項1又は2に記載の塗料組成物。
項4.
前記非導電性基材の表面のアニオン化処理が、カルボキシル基によるアニオン化処理である、前記項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
項5.
パターンめっき用塗料組成物である、前記項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
項6.
前記項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物を用い、無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成する方法。
項7.
前記項6に記載の方法で形成した無電解めっき皮膜。
項8.
前記項7に記載の無電解めっき皮膜を載せた成形品。
項9.
非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する方法であって、
(1)非導電性基材の表面にアニオン化処理を行う工程、
(2)カチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させる工程、
(3)パラジウムコロイド水溶液に接触させる工程、及び
(4)無電解めっきを行う工程、
を順に含む無電解めっき物の製造方法。
項10.
前記非導電性基材の表面にアニオン化処理を行う工程が、非導電性基材の表面に酸変性樹脂を塗布することでアニオン化処理を行うものである、前記項9に記載の製造方法。
項11.
前記酸変性樹脂が、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂である、前記項10に記載の製造方法。
項12.
前記非導電性基材が、ポリオレフィン樹脂からなる基材である、前記項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、環境に対する負荷が小さく、安全に、非導電性基材(樹脂成形品等)に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造することができる。本願発明によれば、その無電解めっき物では非導電性基材とめっきとの間の密着性は優れている。また、その無電解めっき物は、良好な外観皮膜を形成するめっき物になる。
本発明では、無電解めっき物を製造する上で、エッチングが不要であり、Pd使用量が少ないことが利点である。本発明では、非導電性基材の表面がアニオン化処理されているので、乾燥工程を行わずとも、Pd粒子が基材に強固に吸着するため、湿式での処理が可能となり、無電解めっき物の製造方法においてその工程数を短縮できる。
従来の無電解めっき前処理方法と本発明との比較を示す図である。 従来の無電解めっき前処理方法を示す図である。 本発明の無電解めっき前処理方法を示す図である。
以下に本発明を詳細に説明する。但し、この実施の形態は、発明の趣旨をよく理解させため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
図1及び3に、本発明の一態様を示す。
[1]塗料組成物
本発明の塗料組成物は、表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっきを施すための塗料組成物であって、(1)パラジウム粒子(Pd粒子)と分散剤との複合体(Pd複合体)、(2)カチオン性界面活性剤及び(3)水を含有することを特徴とする。
前記(1)複合体は、分散剤の存在下、パラジウムイオン(Pdイオン)を還元することによって得られるものが好ましい。
前記分散剤は、カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤が好ましい。
前記非導電性基材の表面のアニオン化処理は、カルボキシル基によるアニオン化処理であることがこのましい。
本発明の塗料組成物は、パターンめっき用塗料組成物として適している。この塗料組成物を用いて、無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成することができる。この処理により、無電解めっき皮膜を形成することができる。その無電解めっき皮膜を成形品に形成することができる。
本発明の塗料組成物は、パターンめっき又は部分めっき処理をするために、無電解めっきの前処理で使用されることが好ましい。
(1) パラジウム粒子と分散剤との複合体
本発明の塗料組成物は、パラジウム粒子(以下「Pd粒子」とも記す)と分散剤との複合体(以下「パラジウム複合体」及び「Pd複合体」とも記す)を含む。
前記Pd複合体は、次の方法で製造することができる。
ポリカルボン酸系高分子等の分散剤の存在下、塩化パラジウム等のパラジウム化合物(以下「Pd化合物」とも記す)から供給されるパラジウムイオン(以下「Pdイオン」とも記す)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得ることができる。複合体は、分散剤の存在下、Pdイオンを還元することによって得られるものが好ましい。
分散剤
前記分散剤として、ポリカルボン酸系分散剤、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤等を用いることが好ましい。分散剤は、市販品を使用することもできる。
ポリカルボン酸系高分子分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸トリエチルアミン塩、ポリカルボン酸トリエタノールアミン塩等を使用することが好ましい。例えば、サンノプコ(株)製ノプコサントK,R,RFA、ノプコスパース44-C、SNディスパーサント5020, 5027, 5029, 5034, 5045, 5468、花王(株)製デモールP, EP, ポイズ520, 521, 530, 532A等を使用することができる。
ヒドロキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルヒドロキシエーテルカルボン酸塩等を使用することが好ましい。例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製DISPERBYK190, 2010等を使用することができる。
カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤として、アクリル酸−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルホン酸共重合体等を使用することが好ましい。例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製DISPERBYK180, 187, 191, 194、(株)日本触媒製アクアリックTL, GL, LSを使用することができる。
分散剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。分散剤の中でも、カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤が好ましい。分散剤は、カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤が好ましい。
Pd粒子
前記Pd粒子は、分散剤の存在下、Pd化合物から供給されるPdイオンを、還元剤を用いて還元することによって得ることができる。
前記Pdイオンを供給するPd化合物として、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、安息香酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、パラトルエンスルホン酸パラジウム、過塩素酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム等を用いることが好ましい。
Pd化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記還元剤として、ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)、水素化ホウ素ナトリウム、N,Nジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の2級又は3級アミン類を用いることが好ましい。
還元する際に使用される溶媒(分散剤及びPdイオンを存在させるための溶媒)は、次の(3)水、(4)溶媒を使用することができる。溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。溶媒としては特に(3)水が好ましい。Pdイオンを還元する方法としては、溶媒中に分散剤及びPdイオンを存在させた後、還元剤を前記溶媒中に加える方法が挙げられる。これによりPdイオンと還元剤とが接触し、Pdイオンを還元することができる。
Pd粒子の多くは、分散剤の外側に付着していると考えられる。例えば、Pd複合体の形状(分散剤全体の形状)が密集した球状である場合、Pd粒子の多くは当該球状の表面側(外側)に付着していると考えられる。
Pd複合体中のPd粒子と分散剤との重量比は、Pd粒子:分散剤=50:50〜95:5程度が好ましく、Pd粒子:分散剤=65:35〜85:15程度がより好ましい。
Pd粒子単独の平均粒子径は、特に限定されず、2〜10nm程度が好ましい。Pd粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定することが可能である。Pd粒子単独の平均粒子径は、Pd粒子をランダムに10点選択し、そのPd粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡で測定して、個数平均することで算出することができる(個数基準平均径)。
Pd複合体の平均粒子径は、特に限定されず、全体としては平均粒子径20〜300nm程度の球形状の構造を有していることが好ましい。Pd複合体の平均粒子径は、粒径アナライザー(大塚電子株式会社、FPAR-1000)で測定することが可能である(重量基準平均径)。
(2) カチオン性界面活性剤
アニオン化処理された非導電性基材にカチオン性界面活性剤を含有する水溶液を接触させることで、塗料組成物に含まれるPd粒子が基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
カチオン性界面活性剤としては、第1級〜第3級アミン塩系化合物、及び第4級アンモニウム塩系化合物のいずれであっても、好ましく使用することができる。例えば、N-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等を好ましく使用することができる。
カチオン性界面活性剤は、Pdコロイドの吸着力に優れているという点から、第4級アンモニウム塩系化合物が特に好ましい。
(3) 水
本発明の塗料組成物は、分散媒として水を含む。
水(分散媒)は、Pd複合体を分散させることができ、カチオン性界面活性剤との親和性に優れている。無電解めっきに用いる塗料組成物中のPd複合体の分散性を付与できるという観点から、水が好ましい。
水(溶媒)は、Pdイオンの還元反応後に変換することが可能である。例えば、溶媒を水からNMPに変換することが可能である。
溶媒は、更に、前記塗料組成物に含まれる(1)Pd粒子と分散剤との複合体の分散性、(2)カチオン性界面活性剤の溶解性及び(3)水との親和性等を考慮し、更に塗料組成物の粘度、塗料組成物と表面がアニオン化処理された非導電性基材(ABS樹脂、ガラス板等)との濡れ性、密着性の観点で選択することが好ましい。これらの観点を満足させるため、前記Pd複合体の分散を目的として使用した水(溶媒)の他に、更に別種の溶媒を追加して用いることができる。
(4) その他の成分
追加の溶媒(分散媒)
本発明の塗料組成物は、前記に水に加えて、分散媒として非プロトン性極性溶媒を含んでも良い。非プロトン性極性溶媒は、Pd複合体を分散させることができ、水やカチオン性界面活性剤との親和性に優れている。無電解めっきに用いる塗料組成物中のPd複合体の分散性を付与できるという観点から、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
非プロトン性極性溶媒として、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド;γ-ブチロラクトン等を用いることが好ましい。非プロトン性極性溶媒の中でも、NMP、DMF及びDMAcからなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましい。
本発明の塗料組成物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、1-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル、サリチル酸メチル等の芳香族カルボン酸エステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルカノールエステル類等を追加で用いても良い。
特に水との親和性が高く、基材の濡れ性向上に寄与するアルコール類、グリコールエーテル類の溶媒が好ましく、その中でもIPA、エチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
追加の溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤
本発明の塗料組成物は、基材への濡れ性向上のために、前記カチオン界面活性剤に加えて、それ以外の界面活性剤を追加で用いても良い。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤やアルカノールアミンがあげられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩などが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどが挙げられる。
(5) 塗料組成物の配合割合
塗料組成物中の各成分の含有量は、本発明の効果を満たす範囲で特に制限されない。
Pd複合体は、塗料組成物中に、0.005〜0.1重量%程度含まれることが好ましく、0.01〜0.05重量%程度含まれることがより好ましい。アニオン化処理された非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造することができる。
カチオン性界面活性剤は、塗料組成物中に、0.005〜0.1重量%程度含まれることが好ましく、0.01〜0.05重量%程度含まれることがより好ましい。アニオン化処理された非導電性基材にカチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させることで、塗料組成物に含まれるPd粒子が基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
水は、塗料組成物中に、99.8〜99.99重量%程度含まれることが好ましく、99.9〜99.98重量%程度含まれることがより好ましい。水は、Pd複合体を分散させることができ、カチオン性界面活性剤との親和性に優れている。
Pd複合体と水との配合比は、Pd複合体100重量部に対して、水は1×105〜1×107重量部程度が好ましく、2×105〜2×106重量部がより好ましく、5×105〜1×106重量部が更に好ましい。
カチオン性界面活性剤と水との配合比は、カチオン性界面活性剤100重量部に対して、水は1×105〜1×107重量部程度が好ましく、2×105〜2×106重量部程度がより好ましい。
Pd複合体と追加の溶媒(水以外の溶媒)との配合比は、Pd複合体100重量部に対して、追加の溶媒は1×104〜5×105重量部程度が好ましく、5×104〜2×105重量部程度加がより好ましい。
本発明の塗料組成物を用いて、表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっきを良好に施すことができる。
[2]塗料組成物の製造方法
本発明の前記(1)Pd粒子と分散剤との複合体(Pd複合体)、(2)カチオン性界面活性剤及び(3)水を含有する塗料組成物は次の方法で製造することができる。Pd粒子は、前述の通り、分散剤の存在下、Pd化合物から供給されるPdイオンを、還元剤を用いて還元することによって得ることができる。
即ち、本発明の塗料組成物は、
(i) (3)水中にPdイオンと分散剤とを存在させ、還元剤を用いてそのPdイオンを還元し、(1)Pd粒子と分散剤との複合体(Pd複合体)を作製する工程、
(ii) (3)水中に(2)カチオン性界面活性剤を分散させる工程、並びに、
(iii)前記工程(i)で得られた(3)水及び(1)Pd粒子と分散剤との複合体の混合物に、前記工程(ii)で得られたカチオン性界面活性剤を分散させた溶液を混合する工程、
を含む製造方法により製造することが好ましい。
工程(i)及び工程(ii)は、どちらが先の工程であっても良い。
前記製造方法によれば、パターンめっき又は部分めっき処理をするために、無電解めっきの前処理で使用される塗料組成物を製造することができる。
本発明の塗料組成物を用いると、無電解めっきの反応性が高く、装飾用めっきとの密着性が優れ、優れた平滑性を発現できる皮膜形成することが可能である。
本発明の塗料組成物を用いると、表面がアニオン化処理された非導電性基材上にパターンの拡がりを抑えつつ、部分めっきを形成することが可能である。
前記塗料組成物を用いると、無電解めっきの反応性を向上させる目的で、無電解めっきの還元剤濃度を高めたり、反応温度を上げたりする等の処理を必要としない。前記塗料組成物を用いると、更に、有害な物質によるエッチング工程、煩雑な触媒付与工程等を必要としない。
工程(i)
(3)水中に、Pdイオンと分散剤とを存在させ、還元剤を用いてそのPdイオンを還元し、(1)Pd粒子と分散剤との複合体(Pd複合体)を作製する。
先ず、Pdイオンと分散剤とを水(分散媒)中に存在させる。Pdイオンとして、供給源として前記Pdイオンを供給するPd化合物を使用することができる。
各成分の使用量(重量部)は「Pd化合物」基準とする。
分散剤として、前記分散剤を使用することができる。Pdイオンと分散剤との使用比率(重量比)は、Pd化合物100重量部に対して、分散剤を10〜200重量部程度使用することが好ましく、30〜150重量部程度がより好ましく、50〜100重量部程度が更に好ましい。
溶媒として、前記(3)水を使用することができる。水の使用量は、Pdイオンと分散剤を均一に存在させることができれば特に限定されず、Pd化合物100重量部に対して、1×104〜3×105重量部程度が好ましく、1×104〜1×105重量部程度がより好ましい。
次に、Pdイオンと還元剤とを反応させることにより、Pdイオンが還元剤によって還元される。即ち、Pdイオンの還元反応が生じ、結果として前記(1)Pd粒子と分散剤との複合体(Pd複合体)を得ることができる。その還元剤として、前記Pd複合体を作製するために使用される還元剤を使用することができる。還元剤の使用量は、特に限定されず、Pd化合物100重量部に対して、100〜800重量部程度が好ましく、200〜600重量部程度がより好ましい。
還元剤を用いる反応は、35〜45℃程度の温度で行うことが好ましく、50〜60℃程度まで昇温することが好ましい。反応時間は、特に限定されず、1〜5時間程度とすることが好ましい。
反応の際の圧力及び雰囲気は、特に限定されず、大気圧下又は大気(空気)雰囲気下で行うことが好ましい。反応はビーカー等の開放系で行うことができる。反応方法として、Pdイオン(Pd化合物)、分散剤及び還元剤を含有する溶液を羽根付き撹拌棒で撹拌することが好ましい。
水(溶媒)及びPd粒子と分散剤との複合体を含む混合物(Pd複合体含有液)を限外濾過し、Pd粒子と分散剤との複合体を分離することが好ましい。この操作により、Pd複合体含有液に含まれる無機塩や過剰の分散剤等を除去することができる。例えば、Pd複合体含有液に対して濾過処理を行い、水、NMP等の溶媒を補填することが可能である。この処理は、操作を繰り返すことができる。
Pdイオンの還元反応後に溶媒を変換することが可能である。例えば、前記溶媒として水を使用し、その後、前記水をNMP等(溶媒、分散媒)に変換することにより、(3)水、NMP等の溶媒及び(1)Pd粒子と分散剤との複合体の混合物を作製することが可能である。
工程(ii)
(3)水中に(2)カチオン性界面活性剤を分散させ、カチオン性界面活性剤を分散させた溶液を作製する。
前記(3)水、NMP等の溶媒を使用することができる。
前記(2)カチオン性界面活性剤を使用することができる。(2)カチオン性界面活性剤は、第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
溶媒の使用量は、カチオン性界面活性剤を均一に存在させることができれば特に限定されず、カチオン性界面活性剤100重量部に対して、1×105〜1×108重量部程度が好ましく、1×106〜1×107重量部程度がより好ましい。溶媒の使用量は、塗料組成物の粘度、塗料組成物と表面がアニオン化処理された非導電性基材(ABS樹脂、ガラス板等)との密着性、濡れ性等の観点を考慮する。
混合は、特に限定されず、大気圧下又は大気(空気)雰囲気下で行うことが好ましい。混合はビーカー等の開放系で行うことができる。混合方法として、水(溶媒)及びカチオン性界面活性剤を含有する混合物を羽根付き撹拌棒で撹拌することが好ましい。
工程(iii)
前記工程(i)で得られた(3)水及び(1)Pd粒子と分散剤との複合体の混合物に、前記工程(ii)で得られた(3)水及び(2)カチオン性界面活性剤の混合物を混合する。
混合された溶液には、濡れ性向上のために、前記カチオン界面活性剤以外の成分として、アニオン性界面活性剤やアルカノールアミンを添加してもよい。
本発明の塗料組成物は、パターンめっき用塗料組成物として適している。この塗料組成物を用いて、無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成することができる。この処理により、無電解めっき皮膜を形成することができる。その無電解めっき皮膜を成形品に形成することができる。
本発明の塗料組成物は、パターンめっき又は部分めっき処理をするために、無電解めっきの前処理で使用されることが好ましい。
[3]めっきを形成する方法
本発明の塗料組成物を用いて、表面がアニオン化処理された基材に無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成することができる。この処理により、成形品に無電解めっき皮膜を形成することができる。
本発明の無電解めっき物の製造する方法(1)は、
(1-1)非導電性基材の表面にアニオン化処理を行う工程、
(1-2)カチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させる工程、
(1-3)パラジウムコロイド水溶液(Pdコロイド水溶液)に接触させる工程、及び
(1-4)無電解めっきを行う工程、
を順に行うことで、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物の製造することができる。
上記工程(1-2)及び(1-3)により、表面がアニオン化処理された基材に、カチオン性界面活性剤を含有する水溶液を接触させ、次いでPdコロイド水溶液を接触させることになる。
本発明の無電解めっき物の製造する方法(2)は、
(2-1)非導電性基材の表面にアニオン化処理を行う工程、
(2-2)Pd複合体、カチオン性界面活性剤及び水を含有する塗料組成物に接触させる工程、
(2-3)無電解めっきを行う工程、
を順に行うことで、非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物の製造することができる。
上記工程(2-2)により、表面がアニオン化処理された基材に、塗料組成物を接触させることになる。
本発明の塗料組成物を用いたり、カチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液との混合物を用いたりすることで、良好にパターンめっきを施すことができる。本発明の塗料組成物やカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液との混合物は、パターンめっき又は部分めっき処理をするために、無電解めっきの前処理で使用されることが好ましい。
本発明の塗料組成物やカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液との混合物を用い、基材に対して、塗布処理、乾燥処理、及び無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成することができる。
方法(1)の工程(1-1)及び方法(2)の工程(2-1)
非導電性基材の表面にアニオン化処理を行う工程
非導電性基材(基材)の表面をアニオン化処理する。これにより、その後、Pdイオンが基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
基材の材料は、非導電性であり、特に限定されない。基材の材料として、プラスチック(樹脂)、ガラス、金属、セラミックス等を用いることが好ましい。
プラスチック(樹脂)として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等のポリオレフィン等を用いることが好ましい。
プラスチック(樹脂)として、また、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンの共重合合成樹脂)等を用いることが好ましい。
プラスチック(樹脂)として、更に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸エステル等のポリエステル;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリエーテルエーテルケトン;ノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン;ポリフェニレンスルファイド;液晶ポリマー;変性ポリフェニルエーテル;ポリスルホン;フェノール;ポリフタルアミド(PPA);ポリアリレート等を用いることが好ましい。
セラミックスとしては、ガラス、アルミナ等が挙げられる。また、基材として不織布を使用する場合、木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維等の不織布が挙げられる。
基材は、表面に極性基を持たないポリオレフィン樹脂からなる基材であることが好ましい。
基材の形状としては、特に限定されない。例えば、板状(又はフィルム状)、不織布状(又は織布状)、糸状、金型で成形された各種形状、等のいずれであってもよい。
またこれらの基材は、主成分以外の成分を含有していてもよい。主成分以外の成分としては、粘土鉱物(例えばタルク、マイカ等)、無機充填剤(例えばカーボン、炭酸カルシウム、酸化チタン等)、ゴム(例えばエチレン−プロピレン共重合体)等が挙げられる。
基材によって、塗料組成物に含まれる水等の溶媒、カチオン性界面活性剤等を適宜調整することができる。
基材上にパターンめっきを形成するには、
(i)基材の表面が、パターンでアニオン化処理をされていること、或いは
(ii)基材上に塗料組成物をパターン印刷すること
で可能である。
基材の表面をパターンでアニオン化処理するには、基材の表面をパターンで活性化処理するか、基材の表面を酸変性樹脂でパターン印刷することが好ましい。
基材の表面は、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、オゾン処理等の活性化処理により、アニオン化処理が施されていることが好ましい。
基材の表面は、酸変性樹脂(酸変性処理された塗料等)が塗布(印刷等)されることにより、アニオン化処理が施されていることが好ましい。
また、アニオン化処理として、予め易接着処理されたフィルムを使用することで、アニオン化処理の代替とすることも可能である。ここでいう易接着処理フィルムとは、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの官能基を有する塗膜層が表面に形成されたフィルムである。
易接着フィルムとしてはKEL-86(テイジン社製)、コスモシャインA4100(東洋紡社製)、ルミラーU48(東レ社製)等があげられる。
前記基材の表面にアニオン化処理を行う工程が、基材の表面に酸変性樹脂を塗布することでアニオン化処理を行うものであることが好ましい。
酸変性樹脂は、基材にアニオン性官能基を付与するという利点から、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン-スチレン共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が好ましい。酸変性樹脂が、アニオン性の強い官能基であるカルボキシル基を有し、非導電性基材への高い密着性を有するという利点から、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
前記アニオン化処理は、カルボキシル基によるアニオン化処理であることが好ましい。
本発明の塗料組成物を用い、表面がアニオン化処理された基材に対して、塗布処理、乾燥処理、及び無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成することができる。
基材の表面が、パターンの活性化処理や酸変性樹脂のパターン印刷により、パターンでアニオン化処理をされていれば、次いで、基材の全面に本発明の塗料組成物を塗布して、無電解めっきを施す。この方法では、基材上で、パターンでアニオン化処理が施されているので、パターン処理又はパターン印刷された部分に塗料組成物に含まれるPdイオン、或いはカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液との混合物に含まれるPdイオンが吸着し、めっきが析出するという利点が有る。パターン処理又はパターン印刷されていない部分は、塗料組成物が吸着せず、めっきが析出しない。この方法には、酸変性樹脂の配合自由度が高くなるため酸変性樹脂の濃度、粘度等を上げ易く、パターン印刷が容易になるという利点が有る。
本発明の塗料組成物を用い、(i)基材上に塗料組成物を塗布し、(ii)その塗料組成物に含まれる(3)水を揮発及び/又は乾燥させ、(iii)その基材を無電解めっきすることが好ましい。
方法(1)の工程(1-2)及び(1-3)
カチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させる工程
表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、カチオン性界面活性剤を含有する水溶液を接触させる。これにより、その後のPdコロイド水溶液に含まれるPd複合体が基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
水中にカチオン性界面活性剤を分散させ、カチオン性界面活性剤を分散させた溶液を作製する。カチオン性界面活性剤は、第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
溶媒の使用量は、カチオン性界面活性剤を均一に存在させることができれば特に限定されず、カチオン性界面活性剤100重量部に対して、1×105〜1×108重量部程度が好ましく、1×106〜1×107重量部程度がより好ましい。
水溶液中に、カチオン性界面活性剤が0.001〜0.1重量%程度含まれることが好ましい。アニオン化処理された非導電性基材にカチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させることで、塗料組成物に含まれるPd粒子が基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
アニオン化処理された基材を、カチオン性界面活性剤を分散させた溶液に浸漬することが好ましい。若しくは、カチオン性界面活性剤を分散させた溶液を、アニオン化処理された基材上に塗布することが好ましい。
液温は特に限定されないが、30〜60℃が好ましく、40〜50℃が更に好ましい。
溶液に浸漬する場合の時間は10秒〜10分が好ましく、30秒〜5分が更に好ましい。塗布する場合には、任意の温度で乾燥を行う。乾燥温度は60℃〜120℃が好ましく、80℃〜100℃が更に好ましい。乾燥時間は10秒〜10分が好ましく、1分〜5分が更に好ましい。
溶液には濡れ性向上のためにアニオン性界面活性剤やアルカノールアミンを添加してもよい。
パラジウムコロイド水溶液に接触させる工程(塗布処理)
カチオン性界面活性剤を含有する水溶液で処理された基材に対して、パラジウムコロイド水溶液(Pdコロイド水溶液)を接触させる。これにより、Pdコロイド水溶液に含まれるPdイオンが基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
Pdコロイド水溶液中に、Pd粒子が0.001〜0.1重量%程度含まれることが好ましい。アニオン化処理された非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造することができる。
基材にPdコロイド水溶液を塗布すればよい。塗布方法として、バーコーター、グラビア印刷機(グラビアオフセット)、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、リバースコーター、スクリーン印刷機等を用いる塗布方法がある。マスキングレスや生産効率の観点ではグラビアオフセット印刷やパッド印刷が好ましい。
基材の表面が、酸変性樹脂を用いてパターン印刷されていれば、つまりパターンでアニオン化処理をされていれば、基材の全面に本発明の塗料組成物を塗布することができる。その後、無電解めっきを施す。これにより、基材上で、酸変性樹脂がパターン印刷された部分は、めっきが析出し、パターン印刷されていない部分はめっきが析出しない。
塗料組成物をパターン印刷する場合は、インクジェット印刷若しくはフレキソ印刷が好ましい。
乾燥前の塗料組成物の膜厚は、使用用途によって適宜選択することができ、塗料組成物の粘度に依存する。その膜厚は、塗料組成物を良好に塗布できる観点から、1〜10μm程度が好ましい。
方法(2)の工程(2-2)
Pd複合体、カチオン性界面活性剤及び水を含有する塗料組成物に接触させる工程
基材にカチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させて、次いでPdコロイド水溶液)を接触させることは、基材に本発明の塗料組成物を接触させることで、代替することが可能である。
基材に本発明のPd複合体、カチオン性界面活性剤及び水を含有する塗料組成物を接触させることで、塗料組成物に含まれるPdイオンが基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
基材に塗料組成物を塗布すればよい。塗布方法は、前記Pdコロイド水溶液の塗布方法と同じで良い。
Pd複合体は、塗料組成物中に、0.001〜0.1重量%程度含まれることが好ましい。カチオン性界面活性剤は、塗料組成物中に、0.001〜0.1重量%程度含まれることが好ましい。塗料組成物に含まれるPdイオンが基材に十分に吸着し、めっきが十分に析出することができる。
硬化処理
基材にカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液とを塗布した後、又は塗料組成物を塗布した後、溶媒(水、溶剤等)を揮発及び/又は乾燥させ、次いで硬化処理を行う。
硬化処理により、カチオン性界面活性剤を含有する水溶液、Pdコロイド水溶液、又は塗料組成物がバインダーを含む場合、そのバインダーが硬化される。
基材にカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液とを塗布した後、又は塗料組成物を塗布した後、乾燥処理を行うことができる。乾燥処理によって、無電解めっきを行う際に不必要な溶媒(水等)を効率的に除去するとともに、塗膜と基材との密着性及び塗膜の表面強度を向上させることができる。乾燥処理の温度は、60〜400℃程度が好ましく、80〜110℃程度がより好ましい。乾燥処理の時間は、乾燥温度に合わせて、6秒〜60分程度が好ましく、30秒〜5分程度がより好ましい。
硬化処理の温度は適宜調整することができる。硬化処理の温度は40〜400℃程度が好ましい。また、基材としてプラスチックを用いる場合、プラスチック素材の軟化温度を考慮し、硬化処理の温度を40〜200℃程度に設定することが好ましい。
乾燥及び硬化後の塗料組成物の膜厚は、塗料組成物の固形分濃度に依存する。カチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液とを塗布した場合は、それらの合計の膜厚である。
その膜厚は、無電解めっきを効率良く行うことができ、十分なめっき密着性が発揮されるという点から、0.05〜20μm程度が好ましい。その膜厚が0.05μm未満であっても、無電解めっきの反応性を得ることができるが、めっき密着性については十分に発揮されない傾向がある。その膜厚が20μmを超えると、無電解めっきの反応速度が劣る傾向がある。
方法(1)の工程(1-4)及び方法(2)の工程(2-3)
無電解めっきを行う工程
塗料(組成物)膜を、水洗した後、無電解めっきを行うことで、基材の上にパターンめっきを形成することができる。
塗料膜が形成された基材は、金属を析出させるためのめっき液と接触し、これにより無電解めっき皮膜が形成される。本発明のカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液とを塗布した後、又は塗料組成物を塗布した後に形成された塗料膜は、無電解めっきの反応性がよく、得られた無電解めっき皮膜はむらがなく、密着性及び外観性に優れる。
めっき液は、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば特に限定されない。めっき液として、例えば、銅、金、銀、ニッケル、クロム等を用いることが好ましい。めっき液として、本発明のカチオン性界面活性剤を含有する水溶液、Pdコロイド水溶液又は塗料組成物によって形成された塗料膜との関係から、銅又はニッケルを含むめっき液を用いることが好ましい。
めっき条件は、常法に従うことができる。本発明の塗料膜は無電解めっきの反応性が非常に良好であるため、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。そのため、めっき液の寿命が長持ちするだけでなく、塗料のパターン通りにめっきが選択的に析出される。即ち、本発明のカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液とを塗布した後、又は塗料組成物を塗布した後に形成される塗料膜は、パターン形成能に優れる。
無電解めっき処理で、無電解銅めっき浴を用いる場合、その処理温度は25〜65℃程度が好ましく、その処理時間は10〜20分程度が好ましい。この無電解めっき処理により、0.3〜1.0μm程度の析出膜厚を形成することができる。
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン浴を用いる場合、その処理温度は55〜70℃程度が好ましく、その析出速度は5μm/hr(60℃)程度が好ましい。
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん浴を用いる場合、その処理温度は30〜95℃程度が好ましく、その析出速度は浴温30℃においては3μm/hr程度、90℃においては20μm/hr程度が好ましい。
本発明のカチオン性界面活性剤を含有する水溶液、Pdコロイド水溶液、又は塗料組成物を用いて基材上にめっきを形成する技術は、パターンめっきを対象とすることが好ましい。
本発明では、基材の表面が、酸変性樹脂を用いてパターン印刷れていれば、基材の全面に本発明の塗料組成物を塗布することができる。その後、無電解めっきを施す。これにより、基材の全面に本発明の塗料組成物を塗布しても、酸変性樹脂がパターン印刷された部分は、めっきが析出し、パターン印刷されていない部分はめっきが析出しない。
加飾を目的とする場合、無電解めっきの後、電解銅めっき、半光沢ニッケル、光沢ニッケル、クロムめっき等の一般的なプロセスを用いることが好ましい。
加飾処理で、電解銅(Cu)めっき浴を用いる場合、その処理温度は20〜60℃程度が好ましく、電流密度は1〜10A/m2程度が好ましく、処理時間は10〜60分程度が好ましい。この加飾処理により、5〜40μm程度の析出膜厚を形成することができる。
加飾処理で、半光沢ニッケル(Ni)めっき浴を用いる場合、その処理温度は45〜55℃程度が好ましく、電流密度は1〜10A/m2程度が好ましく、処理時間は10〜60分程度が好ましい。この加飾処理により、5〜20μm程度の析出膜厚となる。
加飾処理で、光沢ニッケル(Ni)めっき浴を用いる場合、その処理温度は45〜55℃程度が好ましく、電流密度は1〜10A/m2程度が好ましく、処理時間は10〜60分程度が好ましい。この加飾処理により、5〜20μm程度の析出膜厚となる。
加飾処理で、クロム(Cr)めっき浴を用いる場合、その処理温度は40〜60℃程度が好ましく、電流密度は10〜60A/m2程度が好ましく、処理時間は1〜5分程度が好ましい。この加飾処理により、0.1〜0.3μm程度の析出膜厚となる。
[3]無電解めっき皮膜及び前記皮膜を載せた成形品
表面がパターンでアニオン化処理された基材に、本発明の塗料組成物を塗布して、或いはカチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液とを塗布して、塗料膜を形成し、無電解めっきを行う。これにより、パターンめっき又は部分めっき処理をするために、無電解めっきの前処理で使用される無電解めっき皮膜を形成することができる。無電解めっき皮膜を載せた成形品(被めっき物)は、めっき皮膜の密着性に優れる。
無電解めっき皮膜を載せた成形品は、例えば、携帯電話、パソコン、冷蔵庫等の電化製品の筐体;エンブレム、スイッチベース、ラジエータグリル、ドアハンドル、ホイールカバー等の自動車用部品等に使用することができる。
基材にパターンめっきを施すために、無電解めっきにおいて、本発明の塗料組成物(カチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液との混合物)を用いる。基材(プラスチック(樹脂)等)上に、パターンめっきを行う無電解めっきにおいて、無電解めっきの反応性が高く、クロムめっきまでの多層めっきに耐え得る優れた密着性と装飾用めっきに耐え得る優れた平滑性を発現することができる。その無電解めっきでは、パターンの拡がりを抑え、良好に部分めっきをすることが可能である。
本発明の塗料組成物を用いると、無電解めっきの反応性を向上させる目的で、無電解めっきにおける還元剤の濃度を高める必要が無く、また無電解めっきの反応温度を上げる必要もない。更に、また有害な物質によるエッチング工程、煩雑な触媒付与工程等を必要としない。
本発明の塗料組成物が、無電解めっきの反応性が高く、クロムめっきまでの多層めっきに耐え得る良好な密着性を実現できる理由は、次の原理によるものと考えられる。
アニオン化された基材表面は、カチオン性界面活性剤、若しくは塗料組成物が吸着し易くなっており、多数のイオン結合を形成する。また、Pd-分散剤複合体は表面にカルボキシル基などのアニオン性官能基を有するため、このカチオン性界面活性剤と強固に結合する。
更に無電解めっき液中の金属イオンが還元された際、アニオン化処理された基材表面や、Pd-分散剤複合体表面には多数のカルボキシル基が存在し、これらは無電解めっきにより析出する金属と強固に結合すると考えられる。このように基材、Pd-分散剤複合体、めっき皮膜の間には多数のイオン結合が形成され、強固な密着性を付与していると考えられる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例及び比較例
(1) パラジウム粒子(Pd粒子)と分散剤との複合体の作製
3リットルフラスコにイオン交換水944.5gを入れ、次いでそのイオン交換水中に硝酸パラジウム5.0gを加えて、撹拌した。これにより、硝酸パラジウム(硫酸Pd)を水に溶解させ、硝酸Pd水溶液を作製した。
この水溶液に、更にカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤(DISPERBYK194、ビックケミー・ジャパン社製、不揮発分53wt%) 3.8gを加えて、水溶液中で溶解させた。
この溶液を42℃になるまで加熱した後、撹拌しながらヒドラジン1水和物10.0gを加えた。この後、この溶液を、室温下(23℃)で1時間撹拌した。溶液の温度は、ヒドラジン1水和物の添加後に53℃まで上昇したが、1時間撹拌した後の溶液の温度は40℃であった。
この操作により、水溶液中のパラジウムイオン(Pdイオン)が還元された。この溶液を限外濾過フィルターAHP-1010(旭化成株式会社製)を用いて、還元されたPd複合体含有液と、無機塩含有液とを分離して、Pd複合体(Pd粒子と分散剤との複合体)含有液を得た。
この操作により得られたPd複合体含有液に対して、上記分離した無機塩含有液(硝酸Pd水溶液)と同じ質量分のイオン交換水を加えて、再度限外濾過フィルターで分離操作を行った。このイオン交換水補填操作及び分離操作を5回繰り返した。
この操作後に得られたPd複合体含有液の電気伝導率(導電率)は、28μS・cm-1であった。即ち、電気伝導率は30μS・cm-1以下であったので、このPd複合体含有液から無機塩を除去できたことが確認できた。
得られたPd複合体含有液に関して、TG/DTA分析でPd複合体含有率を調べると、550℃での残固形分から、Pd複合体含有率は1.0wt%であることが確認できた。
Pd複合体含有液のPd粒子の平均粒子径は2〜10nmの範囲内であり、Pd複合体中のPd粒子と分散剤との質量比は、Pd粒子:分散剤=75:25であった。
(2) 非導電性基材(基材)のアニオン化処理
1.片面易接着処理PETフィルム(KEL-86、テイジン社製)をアニオン化処理基材Aとした。
2.片面易接着処理PETフィルム(KEL-86、テイジン社製)の易接着面にコロナ処理を行い、アニオン化処理基材Bとした。
3.ABS樹脂(3001M、UMGABS社製)の表面に対して、エポキシ樹脂(酸変性樹脂、商品名アロンマイティBX-60、固形分22wt%、東亞合成社製)をスプレー塗装により1μm塗布し、熱風乾燥炉にて80℃×30分乾燥を行い、アニオン化処理基材Cとした。
4.TSOP樹脂(非導電性基材)の表面に対して、コロナ処理を行い、アニオン化処理基材Dとした。
5. TSOP樹脂(非導電性基材)の表面に対して、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(酸変性樹脂、商品名スーパークロン930、固形分20wt%、日本製紙社製)をスプレー塗装により1μm塗布し、熱風乾燥炉にて90℃×10分乾燥を行い、アニオン化処理基材Eとした。
6.TSOP樹脂(非導電性基材)の表面に対して、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(酸変性樹脂)、1cm間隔でマスキングテープを貼り、商品名スーパークロン930(日本製紙社製、固形分20wt%)をスプレー塗装により1μm塗布し、熱風乾燥炉にて90℃×10分乾燥をおこない、アニオン化処理基材Fとした。
TSOP樹脂:日本ポリプロ製及びプライムポリマー製、トヨタスーパーオレフィンポリマーの略。従来の複合PP(ポリプロピレン)に比べてリサイクル性を向上させた熱可塑性樹脂。
上記アニオン化処理により、基材はその表面にアニオン性官能基を有する。
比較例としてアニオン化処理されていないTSOP樹脂を基材Gとした。
(3) 無電解めっきを施すための塗料組成物及び前処理液の作製
塗料組成物の各成分の使用量(重量部)は「Pd化合物」基準である。
Pd:0.001〜0.1重量%含む。
カチオン性界面活性剤:0.001〜0.1重量%含む。
塗料組成物1の作製方法
水97重量部に、カチオン性界面活性剤を含む水溶液(クリーナーコンディショナーXP2285、ロームアンドハース社製) 1重量部及び前記Pd粒子と分散剤との複合体2重量部とを加えた。これを振とう撹拌させ、塗料組成物1(無電解めっき前処理インキ組成物)を作製した。
塗料組成物2の作製方法
水97重量部に、カチオン性界面活性剤を含む水溶液(クリーナーコンディショナーXP2285、ロームアンドハース社製) 2重量部及び前記Pd粒子と分散剤との複合体1重量部を加えた。これを振とう撹拌させ、塗料組成物2(無電解めっき前処理インキ組成物)を作製した。
塗料組成物3の作製方法
水98重量部に、カチオン性界面活性剤を含む水溶液(スルカップMTE-1A、上村工業社製)1重量部及び前記Pd粒子と分散剤との複合体1重量部を加え、振とう撹拌させ、塗料組成物3(無電解めっき前処理インキ組成物)を作製した。
塗料組成物の使用方法
[実施例1,3,5,7,9,11〜16]
塗料組成物1〜3を使用するときは、先に表面がアニオン化処理された基材を塗料組成物1〜3に浸漬し、イオン交換水により水洗し、次いで無電解めっきを行った。
塗料組成物の液温は50℃で、浸漬時間は3分とした。
[実施例19]
塗料組成物1をインクジェット印刷によりパターン印刷し、100℃×1分乾燥させた。
製造方法のための前処理液1の作製方法
水19重量部に、カチオン性界面活性剤を含む水溶液(クリーナーコンディショナーXP2285、ロームアンドハース社製) 1重量部を加えた。これを振とう撹拌させ、無電解めっきのための前処理液1(カチオン性界面活性剤を含有する水溶液)を作製した。
その水溶液にアニオン化処理された基材を50℃×5分浸漬し、水洗した。
製造方法のための前処理液2の作製方法
水18重量部に、カチオン性界面活性剤を含む水溶液(クリーナーコンディショナーXP2285、ロームアンドハース社製) 2重量部を加えた。これを振とう撹拌させ、無電解めっきのための前処理液2(カチオン性界面活性剤を含有する水溶液)を作製した。
その水溶液にアニオン化処理された基材を50℃×5分浸漬し、水洗した。
製造方法のための前処理液3の作製方法
水99重量部に前記Pd粒子と分散剤との複合体1重量部を加えた。これを振とう撹拌させ、無電解めっきのための前処理液3(Pdコロイド水溶液)を作製した。
その水溶液に前記基材を30℃×1分浸漬し、水洗した。
製造方法のための前処理液4の作製方法
水98重量部に前記Pd粒子と分散剤との複合体2重量部を加えた。これを振とう撹拌させ、無電解めっきのための前処理液4(Pdコロイド水溶液)を作製した。
その水溶液に前記基材を30℃×1分浸漬し、水洗した。
前処理液の使用方法
[実施例2,4,6,8,10,17,18]
前処理液1〜4を使用するときは、先に表面がアニオン化処理された基材を、前処理液1若しくは2(カチオン性界面活性剤を含有する水溶液)に接触させて、イオン交換水にて水洗をおこない、次いで前処理液3若しくは4(Pdコロイド水溶液)に接触させて、イオン交換水にて水洗をおこない、次いで無電解めっきを行った。
[実施例20]
前処理液1をグラビア印刷により印刷し、100℃×1分乾燥させた。更にそのパターン上に前処理液3をグラビア印刷によりパターン印刷し、100℃×1分乾燥させた。
(4) 評価試験
評価試験1:無電解めっき反応性の評価
塗膜含有物品を無電解めっき浴に浸漬させることにより、無電解めっき性(無電解銅めっき性及び無電解ニッケルめっき性)を確認した。
無電解銅めっき浴は、上村工業株式会社製 スルカップPSY(浴容積 1000mL、33℃、15分)を使用した。
無電解ニッケルめっき浴は、奥野製薬工業製ICPニコロンFPF(浴容積 1000ml、75℃、3分)を使用した。
無電解めっき反応性の評価基準は次の通りである。
◎:所定のめっき時間で、アニオン化処理された箇所にめっき皮膜が得られ、且つ、剥離が見られなかった。また、アニオン化処理されていない箇所にはめっきが析出しなかった。
○:所定のめっき時間で、アニオン化処理された箇所にめっき皮膜が得られ、且つ、剥離が見られなかった。但し、アニオン化処理されていない箇所にもめっきが析出した。
△:めっき皮膜が得られたものの、めっき皮膜の剥離が見られた。
×:めっき皮膜が得られなかった。
「◎」、「○」評価が、製品として合格である。
評価試験2:密着性試験(クロスカット試験)
無電解めっき皮膜の密着性を確認した。
実施例及び比較例の各塗膜含有物品に対して上記評価試験2と同様にして、銅又はニッケルめっき皮膜を得た。
この銅又はニッケルめっき皮膜上に、JIS K 5600(クロスカット法)に基づいて1mm間隔で25マスの切込みを入れた。その上にセロハンテープ(セロテープ(登録商標)、ニチバン株式会社製)を貼り、テープを剥離したときの剥がれたマス目の数を測定した。
無電解めっき皮膜の密着性の評価基準は次の通りである。
○:剥がれたマス目の数が0であった。
×:剥がれたマス目の数が1以上であった。
「○」評価が、製品として合格である。
評価試験3:密着性試験(ピール強度試験)
無電解めっき処理の後、電解銅めっきを行い、25μmの厚膜化を行った。
電解銅めっきは、浴温25℃、電流密度4.0A/dm2を用いた。
乾燥後、90°剥離試験方法によりピール強度を評価した。
総合評価
○:無電解めっきにより、アニオン化処理された箇所にめっき皮膜が得られ、評価試験2で剥離が見られなかったもの。
×: 無電解めっきにより、めっき皮膜が得られなかったもの。もしくはめっき皮膜が得られたが、評価試験2にて剥離が見られたもの。
「○」評価が、製品として合格である。
(5) 評価結果
アニオン化処理された基材に対して、本発明の塗料組成物を接触させなかったり、本発明の前処理液1〜4を、カチオン性界面活性剤を含有する水溶液とPdコロイド水溶液との順で接触させなかったりすると、アニオン化処理された基材に対してPd触媒が十分に吸着せず、無電解めっきの析出は起こらなかった(比較例1〜3)。
基材がアニオン化処理されていないと、塗料組成物は十分に吸着せず、無電解めっきは反応しなかった(比較例4)。
基材がアニオン化処理されていない場合であっても、前処理液1及び2をこの順で接触させるとPd触媒の吸着が起こり、無電解めっきは反応した。しかし、密着性は弱く、無電解めっき液中で剥離や塗膜の膨れが見られた(比較例5)。
アニオン化処理された基材に対して、本発明の塗料組成物に接触させることにより、アニオン化処理された基材に対してPd触媒が十分に吸着し、無電解めっきの析出が良好であった。
また、アニオン化処理された基材に対して、本願発明の前処理液1〜4を、表面がアニオン化処理された基材を、先に前処理液1若しくは2(カチオン性界面活性剤を含有する水溶液)に接触させて、次いで前処理液3若しくは4(Pdコロイド水溶液)に接触させたりすることにより、アニオン化処理された基材に対してPd触媒が十分に吸着し、無電解めっきの析出が良好であった(実施例1〜20)。
アニオン化処理された基材に対して、本発明の塗料組成物や、前処理液1若しくは2(カチオン性界面活性剤を含有する水溶液)、及び前処理液3若しくは4(Pdコロイド水溶液)を用いると、その無電解めっき物では非導電性基材とめっきとの間の密着性は優れていた。また、その無電解めっき物は、良好な外観皮膜を形成するめっき物であった。
本発明の無電解めっき物の方法を採用すると、環境に対する負荷が小さく、安全に、非導電性基材(樹脂成形品等)に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造することができる。
本発明の塗料組成物を用いたり、本発明の無電解めっき物の方法を採用したりすれば、無電解めっき物を製造する上で、エッチングが不要であり、Pd使用量を少なくすることができた。また、本発明によれば、非導電性基材の表面がアニオン化処理されているので、乾燥工程を必要とせず、無電解めっき物の製造方法においてその工程数を短縮できる。
本発明の塗料組成物を用いて、無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成することができた。この処理により、成形品に無電解めっき皮膜を形成することができた。本発明の塗料組成物は、パターンめっき用塗料組成物として適している。本発明の塗料組成物は、パターンめっき又は部分めっき処理をするために、無電解めっきの前処理で使用されることが好ましい。

Claims (9)

  1. 表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっきを施すための塗料組成物であって、(1)パラジウム粒子と分散剤との複合体、(2)カチオン性界面活性剤及び(3)水を含有する塗料組成物。
  2. 前記(1)複合体が、分散剤の存在下、パラジウムイオンを還元することによって得られる、請求項1に記載の塗料組成物。
  3. 前記分散剤が、カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
  4. 前記非導電性基材の表面のアニオン化処理が、カルボキシル基によるアニオン化処理である、請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
  5. パターンめっき用塗料組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物を用い表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっき処理を行うことで、基材上にパターンめっきを形成する方法。
  7. 非導電性基材に対して無電解めっきを施し、無電解めっき物を製造する方法であって、
    (1)非導電性基材の表面に酸変性樹脂を塗布することでアニオン化処理を行う工程、
    (2)カチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させる工程、
    (3)パラジウムコロイド水溶液に接触させる工程、及び
    (4)無電解めっきを行う工程、
    を順に含む無電解めっき物の製造方法。
  8. 前記酸変性樹脂が、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂である、請求項に記載の製造方法。
  9. 前記非導電性基材が、ポリオレフィン樹脂からなる基材である、請求項7又は8に記載の製造方法。
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