JP2017208540A - めっき転写フィルム - Google Patents

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博 落合
達也 中辻
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Koichi Kajiwara
康一 梶原
克弘 中村
Katsuhiro Nakamura
克弘 中村
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Abstract

【課題】 本発明は、高周波通信装置に使用される高周波回路基板を作成する際に、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することを目的とする。本発明は、そのめっき転写フィルムを用いて、各種転写技術を利用することで、プラスチック等の触媒活性の無い非導電性基材に対して、めっき皮膜を形成することを目的とする。【解決手段】 離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層が順に積層されてなるめっき転写フィルムであって、前記触媒層が(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、前記転写がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写である、高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルム。【選択図】なし

Description

本発明はめっき転写フィルムに関する。
絵柄が組み込まれた転写フィルムを用いて、物品の表面に加飾する技術がしられている。物品の表面に加飾する転写技術として、例えば熱転写加工、インモールド転写加工等が知られている。
それら表面に加飾する物品として、プラスチック等の非導電性基材がある。しかしながら、非導電性基材は無電解めっきに対する触媒活性が無い。そこで、非導電性基材に対しては、例えば金属パラジウム(Pd)等の触媒物質を付着させ、次いで無電解めっきを行って、無電解めっき皮膜を形成させる技術がある。
本出願人は、非導電性基材(被めっき物)に対して無電解めっき皮膜を形成することができる無電解めっき用塗料組成物を提供している(特許文献1〜3)。また、本出願人は、表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して、無電解めっきを施すための塗料組成物を提供している(特許文献4)。これらの技術により、非導電性基材に対して、密着性及び外観皮膜に優れた無電解めっき皮膜を形成させることができる。
また、本出願人は、非導電性基材に対して無電解めっきを行う際に、転写フィルムを用いて、非導電性基材に触媒物質(触媒組成物)を付着させる転写技術を提供している(特許文献5)。この転写技術により、無電解めっきを行うことで、非導電性基材に対して、無電解めっき皮膜を良好に形成させることができる。
この転写フィルムを用いると、プラスチック等の平面から円筒物等の3次曲面状の表面に無電解めっき用皮膜(触媒層)を良好に形成させたり、金型の中で成型と同時に基材に無電解めっき用皮膜(触媒層)を良好に形成させたりすることができる。この技術によれば、その触媒層に対して表面が滑らかな無電解めっき皮膜を形成させることができる。
特許文献6〜8は、全面めっき可能な基材に対してレジスト方式で回路を形成し、その後、印刷によりパターンめっきの転写を行う技術であり、回路は樹脂中に一体となっている。
特許文献6には、導電性基材の片面又は両面に、レジスト方式で多層プリント配線板を製造する技術が開示されている。この技術では、絶縁基材が使われ、導電性基材のエッチングが必要である。
特許文献7には、樹脂テープ等の支持体に対して、フォトレジスト方式により、回路パターンを形成する技術が開示されている。この技術は、銅めっき層のみを転写する技術であり、銅めっき層の粗化が必要である。
特許文献8には、無電解めっき層付きシートが開示されている。この技術では、膨潤性の水性樹脂に金属及び金属化合物の微粒子が分散されてなる無電解めっき用下地層が形成される。その金属化合物は、無電解めっき用下地層中に存在するが、無電解めっきの進行と共に無電解めっき浴中の還元剤により還元される。
この技術は、また、基板上に形成された金属パターンの表面の平滑性若しくは光沢性を持たせるために、その表面をソフトエッチング処理する技術である。
特許文献9には、紫外線硬化型の接着剤が塗布されており、紫外線を照射することで、シートに電子部品を固定し、樹脂を成形し、剥離後、AgやCu等の導電ペーストをスクリーン印刷により配線している。
特許文献10には、転写基板上に接着剤を塗布し、或いは、両面テープ等を用いて電子部品を位置決め固定し、樹脂を被覆し、剥離後、メッキ(スパッタ)している。
これらの技術は、部品を転写後、導電ペースト、インクで接続する。
特許第5674561号 特許第5422812号 特許第5458366号 特許第5819020号 特許第5843992号 特開昭63-187695号公報 特開平2-122691号公報 特開平9-209162号公報 特開2010-272756号公報 特開2001-53413号公報
本発明は、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、そのめっき転写フィルムを用いて、各種転写技術を利用することで、プラスチック等の触媒活性の無い非導電性基材に対して、めっき皮膜を形成することを目的とする。
本発明は、高周波通信装置に使用される高周波回路基板を作製する際に、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することを目的とする。
従来技術に、非導電性基材に対して、直接的にめっき皮膜を形成できる転写フィルムはなかった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、めっき転写フィルムを開発し、そのめっき転写フィルムを用いると、直接的に非導電性基材に対してめっき皮膜を良好に転写(形成)できることを見出した。そのめっき転写フィルムにより転写されためっき皮膜は、表面が滑らかなめっき皮膜であった。
そのめっき皮膜は、無電解めっき又は電解めっきにより形成されるめっき皮膜であることが好ましい。本発明者らは、これらの技術が優れた無電解めっき技術又は電解めっき技術に繋がることを見出した。
本発明は、次のめっき転写フィルム、めっき転写フィルムの製造方法、めっき物の製造方法等である。
第一発明
項1.
離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層が順に積層されてなる高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルムであって、
前記触媒層が(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、
前記接着層が、アクリル系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、EVA樹脂系エマルジョン及びアクリル樹脂系エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種の接着剤からなる接着層であり、
前記転写がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写である、
高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルム。
項2.
前記触媒組成物の分散剤が、ポリカルボン酸系高分子分散剤、ヒドロキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤及びカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤である、前記項1に記載のめっき転写フィルム。
項3.
前記触媒組成物の溶媒が、水;非プロトン性極性溶媒として、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド及びγ-ブチロラクトンからなる群から選ばれる非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール及びイソブチルアルコールからなる群から選ばれるアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノンからなる群から選ばれるケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選ばれるグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル及びサリチル酸メチルからなる群から選ばれる芳香族カルボン酸エステル類;トルエン及びキシレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン及びミネラルスピリットからなる群から選ばれる脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート及びブチルカルビトールアセテートからなる群から選ばれるグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル及び酢酸ブチルからなる群から選ばれるアルカノールエステル類;2-フェノキシエタノール、からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、前記項1又は2に記載のめっき転写フィルム。
項4.
前記触媒組成物のバインダーが、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体及びオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダーである、前記項1〜3のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
項5.
前記離型性を有する基材が、メラミン樹脂系剥離剤、シリコーン系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、セルロース樹脂系剥離剤、尿素樹脂系剥離剤、ポリオレフィン樹脂系剥離剤、パラフィン系剥離剤及びアクリル樹脂系剥離剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の剥離剤からなる剥離層を含む基材である、前記項1〜4のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
項6.
前記項1〜5のいずれかに記載の高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルムを製造する方法であって、
(1)基材上に剥離層を形成する工程、
(2)前記基材の剥離層側に、触媒組成物を塗布し、触媒層を設ける工程、
(3)前記触媒層に対して、めっきを行い、めっき皮膜を形成する工程、及び
(4)前記形成しためっき皮膜上に、接着層を設ける工程を含む、
めっき転写フィルムの製造方法。
項7.
前記項1〜5のいずれかに記載の高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルムを用いてめっき物を製造する方法であって、
前記めっき転写フィルムは、離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層が順に積層されてなり、
(1)前記めっき転写フィルムの接着層を素地に貼り付ける工程、及び
(2)前記工程によって得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜、及び接着層を残し、前記素地から基材を剥離する工程を含み、
前記工程(1)及び(2)がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写により行われる、
めっき物の製造方法。
第二発明
項1.
離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層又は粘着層が順に積層されてなるめっき転写フィルムであって、
前記触媒層が(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、
前記転写がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写である、
めっき転写フィルム。
項2.
前記触媒組成物の分散剤が、ポリカルボン酸系高分子分散剤、ヒドロキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤及びカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤である、前記項1に記載のめっき転写フィルム。
項3.
前記触媒組成物の溶媒が、水;非プロトン性極性溶媒として、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド及びγ-ブチロラクトンからなる群から選ばれる非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール及びイソブチルアルコールからなる群から選ばれるアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノンからなる群から選ばれるケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選ばれるグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル及びサリチル酸メチルからなる群から選ばれる芳香族カルボン酸エステル類;トルエン及びキシレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン及びミネラルスピリットからなる群から選ばれる脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート及びブチルカルビトールアセテートからなる群から選ばれるグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル及び酢酸ブチルからなる群から選ばれるアルカノールエステル類;2-フェノキシエタノール、からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、前記項1又は2に記載のめっき転写フィルム。
項4.
前記触媒組成物のバインダーが、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体及びオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダーである、前記項1〜3のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
項5.
前記離型性を有する基材が、メラミン樹脂系剥離剤、シリコーン系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、セルロース樹脂系剥離剤、尿素樹脂系剥離剤、ポリオレフィン樹脂系剥離剤、パラフィン系剥離剤及びアクリル樹脂系剥離剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の剥離剤からなる剥離層を含む基材である、前記項1〜4のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
項6.
前記接着層が、アクリル系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、EVA樹脂系エマルジョン及びアクリル樹脂系エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種の接着剤からなる接着層であり、又は
前記粘着層が、アクリル系粘着剤、ポリスチレン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びゴム系粘着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の粘着剤からなる粘着層である、前記項1〜5のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
項7.
前記項1〜6のいずれかに記載のめっき転写フィルムを製造する方法であって、
(1)基材上に剥離層を形成する工程、
(2)前記基材の剥離層側に、触媒組成物を塗布し、触媒層を設ける工程、
(3)前記触媒層に対して、めっきを行い、めっき皮膜を形成する工程、及び
(4)前記形成しためっき皮膜上に、接着層又は粘着層を設ける工程を含み、
前記触媒層は(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物から形成され、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、
前記転写がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写である、
めっき転写フィルムの製造方法。
項8.
前記項1〜6のいずれかに記載のめっき転写フィルムを用いてめっき物を製造する方法であって、
前記めっき転写フィルムは、離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層又は粘着層が順に積層されてなり、前記触媒層は(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物から形成されるものであり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、
(1)前記めっき転写フィルムの接着層又は粘着層を素地に貼り付ける工程、及び
(2)前記工程によって得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜、及び接着層又は粘着層を残し、前記素地から基材を剥離する工程を含み、
前記工程(1)及び(2)がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写により行われる、
めっき物の製造方法。
本発明のめっき転写フィルムを用い、各種転写技術により、素地に対してめっき皮膜を良好に形成させることができる。
転写フィルムにめっき皮膜が形成されていることから、各種転写技術により、素地に対して、一気にめっき皮膜を形成させることが可能である。
本発明の態様を表す概略図である。 本発明の態様を表す概略図である。 本発明の態様を表す概略図である。 本発明の態様を表す概略図である。 本発明の実施態様(実施例2)の結果である。 本発明の実施態様(実施例10)の結果である。 本発明のメタロイド法による回路形成法を示す図である。 本発明のメタロイド転写方式による高周波両面フレキ基板の作製方法を示す図である。 本発明の金属めっき転写方式による高周波用基板の作製方法1を示す図である。 本発明の金属めっき転写方式による高周波用基板の作製方法2を示す図である。 高周波用基板、ML-MTRFを示す図である。各金属の周波数ごとの表皮深さを示す。
以下に本発明を詳細に説明する。但し、この実施の形態は、発明の趣旨をよく理解させため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
(1) 発明の説明
本発明は、プラスチック等の触媒活性の無い非導電性基材に対してめっきを行う技術において、各種転写技術により、めっき皮膜を良好に形成させることができる。
これは、各種転写技術に用いる転写フィルムに、めっき皮膜を形成させるからである。そのめっき皮膜は無電解めっき又は無電解めっきに続く電解めっき(以下、合わせて「めっき」とも記す)により形成されるめっき皮膜であることが好ましい。
転写フィルムに対して、例えば金属パラジウム(Pd)等の触媒物質(触媒組成物)を付着させることで触媒層を形成させ、次いでめっきを行ってめっき皮膜を形成させる。このめっき転写フィルムを用いて、各種転写技術で利用して、非導電性基材に対してめっき皮膜を良好に形成(転写)させる。
本発明は、高周波通信装置に使用される高周波回路基板を作製する際に、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、高周波回路基板の中でも、フレキシブル回路基板(FPC)を作製する際に、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することを目的とする。
本発明のインモールド転写法又は熱ロール転写法では、熱転写時の熱により、転写フィルムの接着層(接着剤)が溶融し、素地と接着層とが密着する(図1〜3)。
本発明は、その転写フィルムを用いて、プラスチック等の平面から円筒物等の3次曲面状の表面にめっき皮膜を良好に形成させたり、金型の中で成型と同時に基材にめっき皮膜を良好に形成させたりすることができる。
例えば3次元筐体へのめっき皮膜の形成(転写)が可能である。つまり、平面材料の他に、インモールド転写技術により、3次元筐体へのめっき皮膜の形成(転写)が可能である。
本発明のめっき転写フィルムには、めっき皮膜そのものが形成されており、転写及びめっき技術に含まれる工程を簡素化することができる。本発明のめっき転写フィルムを用いると、非導電性基材に対して表面が滑らかなめっき皮膜を形成できる。
本発明は、めっき技術において、筐体製造現場では有機溶剤を使わずに済み、防爆設備等が不要となる。めっき転写フィルムがめっきによるめっき皮膜を形成されたものでれば、このめっき転写フィルムには有害な六価クロムを使用しない処理であり、環境負荷が小さい。
本発明のめっきは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)等の汎用樹脂、これらの樹脂の組み合わせ(PC/ABS等)であるプラスチック製品に適用できる。
本発明のめっき転写フィルムには、パターンめっき又は部分めっきされためっき皮膜が形成されている。このめっき転写フィルムを素地(非導電性基材、プラスチック(樹脂)等)に転写することで(貼り付けることで)、パターンめっき又は部分めっきされためっき皮膜を形成することができる。めっき皮膜を載せた成形品(被めっき物)は、めっき皮膜の密着性に優れる。
めっき皮膜を載せた成形品は、例えば、携帯電話、パソコン、冷蔵庫等の電化製品の筐体、エンブレム、スイッチベース、ラジエータグリル、ドアハンドル、ホイールカバー等の自動車用部品等に使用することができる。
本発明のめっき転写フィルムでは、パターンめっき等のめっきの反応性が高く、素地に対して、クロムめっきとの優れた密着性と装飾用めっきの優れた平滑性を発現することができる。そのめっきでは、パターンの拡がりを抑え、良好に部分めっきをすることが可能である。
本発明のめっき転写フィルムを用いると、めっきの反応性を向上させる目的で、めっきにおける還元剤の濃度を高める必要が無く、まためっきの反応温度を上げる必要もない。更に、また有害な物質によるエッチング工程、煩雑な触媒付与工程等を必要としない。
めっきの反応性及び密着性向上のメカニズムを説明する(図4)。
転写フィルム上に形成された触媒組成物(触媒層)のめっきの触媒作用を持つ金属粒子(Pd粒子)と、めっき液とが接触する。この現象により、触媒層(触媒膜)の表面から膜内部の深いところに存在する金属粒子(Pd粒子等)によりめっき液中の金属イオンが還元され、還元された金属が根をはうように膜内部から析出するため、触媒層(触媒膜)とめっき皮膜との高い密着性が得られる。
これにより、触媒層を通して、めっき皮膜が表れる。これにより、めっき転写フィルムを素地(非導電性基材)に貼り付けると、触媒層及びめっき皮膜が転写されて(貼り付けられて)、素地表面にめっき皮膜が表れる。このめっき皮膜により、素地に対して、触媒層を介して、導通が生じる。
本発明のめっき転写フィルムは、特にABS等の素地(非導電性基材、プラスチック等)を対象とする時に、転写フィルム上で無電解めっきの反応性が高く、めっきまでの多層めっきに耐え得る良好な密着性を実現できる。
ABS等の素地と触媒組成物(触媒層)との密着メカニズムを説明する。
触媒組成物に含まれる溶媒(溶剤)成分により、素地表面が浸食され、触媒組成物のバインダー成分が基材に入り込み、素地と相溶し混成層を形成する。ABS樹脂に含まれるブタジエンゴムが溶解し、膨潤するので、触媒組成物のバインダー成分が基材に入り込む。
ABS等の素地に、それら触媒組成物によりなる触媒層及びめっき皮膜が形成されるので、ABS等の素地からめっき皮膜まで導通が生じる。
無電解めっき層形成用シートにおける本発明の無電解めっき用下地層は、表面が親水性で、且つ膨潤性があるため、無電解めっき層形成用シートを無電解めっき液に浸漬した場合に、めっき液が無電解めっき用下地層の内部深くまで浸透する。
そして、その無電解めっき用下地層の内部に分散している金属の微粒子を核として無電解めっきがなされるため、その下地層の表面に形成される無電解めっき層は、その下地層と強固に接合した状態となる。
これにより、基材(プラスチックフィルム支持体等)上に、その後の処理を進めるのに充分な強度を有する無電解めっき層が形成されることになる。本発明では、めっき触媒層にも導電性があり、また基材の平滑性が転写することから、その表面をソフトエッチング処理することを必要としない。
本発明のめっき転写フィルムにはめっき皮膜が形成されていることから、各種転写技術により、素地に対して、一気にめっき皮膜を形成させることが可能である。
本発明のめっき転写フィルムには厚みの均一性が優れためっき皮膜を形成させることができるので、このめっき転写フィルムを用いて、物品基材(素地)にめっき皮膜を形成させると、物品基材(素地)に対しても厚みの均一性が優れためっき皮膜を形成させることができる。
本発明のめっき転写フィルムを用いて、各種転写技術により、通常、めっき浴に耐えられない基材やめっき浴に向かない基材に対しても、簡単に導電性の回路を転写することができる。
本発明は、回路の中でも、高周波通信装置に使用される高周波回路基板、特にフレキシブル回路基板(フレキシブルプリント基板、Flexible Printed Circuits:FPC)を作製する際に、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することに優れている。
FPCは、柔軟性があり、弱い力で繰り返し変形させることが可能であり、変形した場合にもその電気的特性を維持する特性を持つ。
回路基板を作製する際に、本発明のめっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを用いることで、レジストが不要となり、銅廃液を無くすことも可能である。また、本発明のめっき転写フィルムを用いることで、薄膜回路を作製することも可能である。
本発明のめっき転写フィルムを用いることで、高周波用積層フレキシブル基板を作製することが可能となる。
(2) 転写技術
図1〜3に本発明の態様の概略図を表す。
本発明のめっき転写フィルムを用いる転写技術を説明する。
本発明のめっき転写フィルムは、離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層又は粘着層が順に積層されてなり、前記触媒層が(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であることを特徴とする。
本発明のめっき転写フィルムを用いる転写技術により、めっき皮膜(無電解めっき等)を非導電性基材(素地、成形品)に貼り付け、その非導電性基材を加飾することができる。特に、電子機器のプリント配線板の製造では、本発明のめっき転写フィルムを用いる転写技術により、金属配線回路(高周波通信装置に使用される高周波回路基板、フレキシブル回路基板(FPC))を形成することができる。
本発明の転写技術として、主に熱ロール転写技術、インモールド転写技術又は粘着剤転写である。
熱ロール転写技術(図1及び3)
本発明のめっき転写フィルムを熱ロール転写技術に適用することにより、プラスチック等の非導電性基材(成形品)の平面から円筒物等の3次曲面状の表面に、絵柄、金属調、パール、マット調等のデザイン(めっき)を付与する(加飾する)ことができる。熱ロール転写技術は、成形品に対する印刷、塗装等の技術と比べて、熱ロール転写技術は有機溶剤による環境負荷の少ない加飾工法である。
インモールド転写技術(図2及び3)
本発明のめっき転写フィルムをインモールド転写技術に適用することにより、プラスチック等の非導電性基材(素地となるもの)を金型の中で成型すると同時に、その3次曲面を有する成型品の表面に、三次曲面状の表面に様々な意匠性の高いデザイン(めっき)を、位置精度良く施す(加飾する)ことができる。成形品に対する印刷、塗装等の技術と比べて、インモールド転写技術は有機溶剤による環境負荷が少ない加飾工法であり、且つ、省スペース、コストダウンを図ることができる。
粘着剤転写技術(図3)
本発明のめっき転写フィルムを粘着剤転写技術に適用することにより、プラスチック等の非導電性基材(素地、成形品)の平面から円筒物等の3次曲面状の表面に、絵柄、金属調、パール、マット調等のデザイン(めっき)を付与する(加飾する)ことができる。成形品に対する印刷、塗装等の技術と比べて、粘着剤転写技術は有機溶剤による環境負荷の少ない加飾工法である。
(3) めっき転写フィルム
本発明のめっき転写フィルムは、離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜(無電解めっき又は無電解めっきに続く電解めっき(以下、合わせて「めっき」とも記す)により形成されるめっき皮膜)、及び接着層又は粘着層が順に積層されてなり、
前記触媒層が(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、
前記転写がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写であることを特徴とする。
本発明のめっき転写フィルムは、非導電性基材(成形品)の加飾を行う転写技術に適用できる。本発明のめっき転写フィルムを用いて、非導電性基材(成形品)にめっき皮膜を形成(露出)させることができる。
電子機器のプリント配線板の製造では、本発明のめっき転写フィルムを用いて、金属配線回路(高周波通信装置に使用される高周波回路基板、フレキシブル回路基板(FPC))の形成を行うことができる。
(3-1) 離型性を有する基材
めっき転写フィルムは基材を有する。
基材(基材シート)の材料は、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA、ナイロン)、ポリイミド(PI)、酢酸セルロース、アイオノマー等の樹脂フィルム等を用いた基材を使用することが好ましい。
また、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等のシートを用いることが好ましい。
これらは単独で使用することができ、また任意に組み合わせた積層体とすることも可能である。これらの中でも、薄膜化可能で安価な汎用性プラスチックであるポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
基材の厚みは、めっき転写フィルムの転写様式に合わせて適宜調整することができる。めっき転写フィルムの強度維持することができること、素地(非導電性基材)への形状追従性が良く触媒層及びめっき皮膜を良好に転写することができること等の理由から、10〜60μm程度が好ましく、15〜50μm程度がより好ましく、20〜40μm程度が更に好ましい。
例えば、ハンドリング、コスト等の点で、一般的に38μm程度の厚みを有するPETが好ましい。
離型性を有する基材は、離型性を示す剥離層を含むことで、基材に離型性を付与することができる。
剥離層は、本発明のめっき転写フィルムを用いて無電解めっき物を製造する方法において、熱ロール転写、インモールド転写等の転写技術により、前記めっき転写フィルムの接着層を素地に貼り付け、次いで得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜及び接着層を残し、前記素地から基材及び剥離層を剥離する際の、境界の層である。
剥離層は、素地に接着層及び触媒層が貼り付けられた状態で、基材(基材シート)を触媒層から容易に剥離するため層である。剥離層は、基材を剥離する際に、基材側に残る。
剥離層を設けることで、本発明のめっき転写フィルムから触媒層を確実且つ容易に素地(非導電性基材)へ転写させ、触媒層及びめっき皮膜が貼り付けられた素地から、基材及び剥離層を有する基材部分を確実に剥離することができる。
剥離層に用いられる剥離剤として、メラミン樹脂系剥離剤、シリコーン系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、セルロース樹脂系剥離剤、尿素樹脂系剥離剤、ポリオレフィン樹脂系剥離剤、パラフィン系剥離剤、アクリル樹脂系剥離剤等を用いることが好ましい。
これらは単独で使用することができ、また任意に組み合わせた複合型剥離剤とすることも可能である。これらの中で、メラミン樹脂系剥離剤、シリコーン系剥離剤等を用いることがより好ましい。
基材に剥離層を形成するには、前記剥離剤に必要な添加剤を加えたものを、適当な溶剤に溶解又は分散させて調製した剥離組成物を用いることが好ましい。剥離層は、樹脂、添加剤等を更に含むことができる。剥離層の形成に用いる樹脂として、熱可塑性樹脂を用いて形成するのがよい。
例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィン樹脂等を用いることが好ましい。
この剥離組成物を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、基材上に、塗布・乾燥させて、剥離層を形成することができる。
剥離層の厚みは、0.1〜5μm程度が好ましく、0.2〜3μm程度がより好ましい。
(3-2) 触媒層
めっき転写フィルムは触媒層を有する。
触媒層は、(1)金属粒子と分散剤との複合体(金属複合体)、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子はパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であることを特徴とする。
(3-2-1) 触媒組成物の組成
金属粒子と分散剤との複合体(1)
触媒組成物は、金属粒子と分散剤との複合体を含む。
複合体として、パラジウム粒子(Pd粒子)を含むパラジウム複合体(Pd複合体)が好ましい。Pd複合体は、例えばポリカルボン酸系高分子等の分散剤の存在下、塩化パラジウム(塩化Pd)等のパラジウム化合物(Pd化合物)から供給されるパラジウムイオン(Pdイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得ることができる。
分散剤
前記分散剤として、ポリカルボン酸系分散剤、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤等を用いることが好ましい。分散剤は、市販品を使用することもできる。
ポリカルボン酸系高分子分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸トリエチルアミン塩、ポリカルボン酸トリエタノールアミン塩等を使用することが好ましい。
例えば、サンノプコ(株)製ノプコサントK,R,RFA、ノプコスパース44-C、SNディスパーサント5020, 5027, 5029, 5034, 5045, 5468、花王(株)製デモールP,EP,ポイズ520, 521, 530, 532A等を使用することができる。
ヒドロキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルヒドロキシエーテルカルボン酸塩等を使用することが好ましい。例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製DISPERBYK190, 2010等を使用することができる。
カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤として、アクリル酸−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルホン酸共重合体等を使用することが好ましい。例えば、ビックケミー・ジャパン(株) DISPERBYK180, 187, 191, 194、(株)日本触媒製アクアリックTL, GL, LSを使用することができる。
分散剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。分散剤の中でも、カルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤が好ましい。
金属粒子
金属粒子は、無電解めっき触媒として機能するものであり、パラジウム粒子(Pd粒子)、金粒子(Au粒子)、銀粒子(Ag粒子)、白金粒子(Pt粒子)等の貴金属の超微粒子である。金属粒子として、特にPd粒子が好ましい。
Pd粒子
Pd粒子は、分散剤の存在下、Pd化合物から供給されるPdイオンを、還元剤を用いて還元することによって得ることができる(液相還元法)。
Pdイオンを供給するPd化合物として、塩化パラジウム(塩化Pd)、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、安息香酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、パラトルエンスルホン酸パラジウム、過塩素酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム等を用いることが好ましい。
Pd化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
還元剤として、ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)、水素化ホウ素ナトリウム、N,Nジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の1級、2級又は3級アミン類、アスコルビン酸、2,3-ジヒドロキシマレイン酸等のエンジオール類を用いることが好ましい。
還元剤としては、N,N-ジアルキルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン系化合物類;N,N-ジアルキルヒドラジン等のヒドラジン系化合物類;ハイドロキノン、アミノフェノール等のフェノール類、及びフェニレンジアミン類;2-ヒドロキシアセトン、2-ヒドロキシヘキサン-1,3-ジオン、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシケトン類やヒドロキシカルボン酸類;等を用いることが好ましい。
還元剤としては、アスコルビン酸や2,3-ジヒドロキシマレイン酸等のエンジオール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール類;1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類等の各種アミン類;等を用いることが好ましい。
還元する際に使用される溶媒(分散剤及びPdイオンを存在させるための溶媒)は、次の(2)溶媒を使用することができる。溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Pdイオンを還元する方法としては、溶媒中に分散剤及びPdイオンを存在させた後、還元剤を前記溶媒中に加える方法が挙げられる。これによりPdイオンと還元剤とが接触し、Pdイオンを還元することができる。
Pd粒子の多くは、分散剤の外側に付着していると考えられる。例えば、Pd複合体の形状(分散剤全体の形状)が密集した球状である場合、Pd粒子の多くは当該球状の表面側(外側)に付着していると考えられる。
Pd複合体中のPd粒子と分散剤との重量比は、Pd粒子:分散剤=50:50〜95:5程度が好ましく、Pd粒子:分散剤=65:35〜85:15程度がより好ましい。
例えば、精製水(89重量部程度)に塩化Pd(1重量部程度)を溶解し、更にクエン酸三ナトリウム(10重量部程度)を溶解して均一に攪拌する。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(0.01重量部程度)を添加して、塩Pdを還元させることで、クエン酸で安定し、保護コロイド化されたパラジウムコロイド(Pdコロイド)を得ることができる。
その後、限外濾過により濃縮脱塩を行い、Pd(0.5重量部程度)を含有するPdコロイドを得ることができる。
Pd粒子単独の平均粒子径は、特に限定されず、2〜10nm程度が好ましい。Pd粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定することが可能である。Pd粒子単独の平均粒子径は、Pd粒子をランダムに10点選択し、そのPd粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡で測定して、個数平均することで算出することができる(個数基準平均径)。
Pd複合体の平均粒子径は、特に限定されず、全体としては平均粒子径20〜300nm程度の球形状の構造を有していることが好ましい。Pd複合体の平均粒子径は、粒径アナライザー(大塚電子株式会社、FPAR-1000)で測定することが可能である(重量基準平均径)。
その他の金属粒子
金属粒子として、その他、無電解めっき触媒として機能するものが好ましく、マイクロ波液中プラズマ法で製造される金属粒子、超音波法で製造される金属粒子、気相法(CVDレーザー等)で製造される金属粒子、貴金属担持微粒子等が好ましい。これらの金属粒子として、Pd粒子、Au粒子、Ag粒子、Pt粒子等の貴金属の超微粒子が好ましい。
金属粒子がPt粒子である場合、分散剤の存在下、塩化白金(IV)等の白金化合物(Pt化合物、貴金属化合物)から供給される白金イオン(Ptイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得ることができる。複合体は、分散剤の存在下、Ptイオンを還元することによって得られるものが好ましい。
Ptイオンを供給するPt化合物(貴金属化合物)として、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロリド白金(IV)酸、テトラクロリド白金(II)酸、ヘキサクロリド白金(IV)酸カリウム、テトラクロリド白金(II)酸カリウム、ヘキサクロリド白金(IV)酸アンモニウム、酸化白金(IV)、臭化白金(II)、臭化白金(IV)、水酸化白金(II)、フッ化白金(VI)等を用いることが好ましい。
その他の条件は、前記Pd粒子の場合と同じである。
金属粒子として、特にPd粒子が好ましい。
溶媒(2)
触媒組成物は溶媒を含む。
溶媒(分散媒)は、金属複合体(Pd複合体等)を分散させることができる。また、溶媒はバインダーとの親和性に優れている。
溶媒は、触媒組成物に含まれる(1)金属粒子と分散剤との複合体(金属複合体)の分散性、(3)バインダーの溶解性等を考慮し、更に触媒組成物の粘度、蒸発速度等の観点で選択することが好ましい。また、触媒組成物が、接着層を介して、非導電性基材(成形品、成型品(ABS樹脂等のプラスチック材料、ガラス板等)と良好に密着する点を満足させることが好ましい。
溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、1-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;等を(追加で)用いることが好ましい。
溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル、サリチル酸メチル等の芳香族カルボン酸エステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;等を(追加で)用いることが好ましい。
溶媒として、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルカノールエステル類;2-フェノキシエタノール(エチレングリコールフェニルエーテル);等を(追加で)用いることが好ましい。
特に、印刷性及び塗装性、印刷・塗装後のレベリング過程を考慮して、蒸発速度が遅い溶媒の使用が好ましい。
蒸発速度が遅い溶媒として、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート及び2-フェノキシエタノールが例示される。これらの溶媒を用いることが好ましい。
触媒組成物中の金属複合体(Pd複合体等)を良好に分散させることができるという観点から、水及びN-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
非プロトン性極性溶媒として、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性溶媒;ジメチルスルホキシド;γ-ブチロラクトン等を用いることが好ましい。非プロトン性極性溶媒の中でも、NMP、DMF及びDMAcからなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましい。
溶媒は、金属イオン(Pdイオン等)の還元反応後に変換することが可能である。例えば、溶媒を水からNMPに変換することが可能である。
溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
触媒組成物中の分散溶媒の含有量(2種以上の溶媒である時は合計量)は、特に限定されず、前記金属複合体(Pd複合体等)100重量部に対して、1×102〜1×106重量部程度が好ましい。前記金属複合体(Pd複合体等)が、分散溶媒中に1重量%程度含まれることが好ましい。
分散溶媒は、前記金属複合体(Pd複合体等)100重量部に対して、5×102〜3×105重量部程度がより好ましく、1×103〜2×105重量部程度が更に好ましく、5×103〜2×104重量部程度が特に好ましい。
バインダー(3)
触媒組成物はバインダーを含む。
バインダーは、触媒組成物の粘度、触媒組成物と非導電性基材(成形品、成型品(ABS樹脂等のプラスチック材料、ガラス板等))との密着性、硬化条件等の観点から、良好に無電解めっきの反応性が得られるものを選択することが好ましい。バインダーは、前記溶媒に分散又は溶解するものである。
具体的には、アセタール樹脂(POM)、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂(PA、ポリアミド、ナイロン)、イミド樹脂(ポリイミド)、アミドイミド樹脂(PAI、ポリアミドイミド)、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体(塩化ビニル・酢酸ビニル系変性樹脂)、オレフィン樹脂(ポリオレフィン)等を用いることが好ましい。
塩ビ-酢ビ共重合体(塩化ビニル・酢酸ビニル系変性樹脂)とは、塩化ビニルと酢酸ビニル等との共重合樹脂である。
アセタール樹脂(POM)は、ポリビニルアセタール等を用いることが好ましい。ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化した樹脂である。
アルデヒドとしてホルマリン(ホルムアルデヒド37%水溶液)を用いてアセタール化したものがポリビニルホルマールである。アルデヒドとしてブタノール(ブチルアルコール)でアセタール化したものがポリビニルブチラール(ブチラール樹脂、PVB)である。
アミド樹脂は、ナイロン6(ε-カプロラクタム)、ナイロン11(ウンデカンラクタム)、ナイロン12(ラウリルラクタム)等を用いることが好ましい。
アミド樹脂は、ナイロン66(ヘキサメチレンジアミン+アジピン酸)、ナイロン610(ヘキサメチレンジアミン+セバシン酸)、ナイロン6T(ヘキサメチレンジアミン+テレフタル酸)、ナイロン6I(ヘキサメチレンジアミン+イソフタル酸)、ナイロン9T(ノナンジアミン+テレフタル酸)、ナイロンM5T(メチルペンタジアミン+テレフタル酸)、ナイロン612(カプロラクタムとラウリルラクタムとのωアミノ酸同士の共縮重合体)等を用いることが好ましい。
アミドイミド樹脂とは、ポリイミド主鎖にアミド結合を導入した樹脂であり、無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応や無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応等で得られる樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を使用することにより、ABS樹脂等を含む物品上に無電解めっき用塗膜をより強固に密着させることができる。エポキシ樹脂は、無電解めっき用塗膜を構成する高分子母材(マトリックス樹脂)となる。
エポキシ樹脂は、1液性又は2液性エポキシ樹脂のいずれを用いることができる。エポキシ樹脂は、変性エポキシ樹脂を包含する。
1液性エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、ビフェニル型等を用いることが好ましい。
1液性エポキシ樹脂は、例えば、DIC(株)製EPICLON830, 830-S, 835, 840, 840-S, 850, 850-S, N-730A, N-740A, N-770, N-775;ナガセケムテックス(株)製XNR-3053, XNR3505, XN1244, XN1278;荒川化学工業(株)製アラキード9201N, 9203N, 9205, 9208、モデピクス301,302,401;東亞合成(株)製アロンマイティAP-0786, AS-60, BX-60, AS-315等の市販されている商品を使用することができる。
2液性エポキシ樹脂としては、前記エポキシ樹脂を本剤とする樹脂を使用することができる。本剤と共に使用する硬化剤として、ポリアミド、ポリアミン、ポリアミドアミン、ケチミン、イミダゾール、ジアミン、ジアミンジアミド、テトラヒドロフタル酸無水物等を用いることが好ましい。
2液性エポキシ樹脂の本剤は、例えば、三菱化学(株)製jER-806, 807, 825, 827, 828, 1256, 4250, 4275, W2821R70;(株)ADEKA製アデカレジンEP-4100HF, EP-4088S, EPR-4030;ナガセケムテックス(株)製AV138-HV998, XNR3106-XNH3103;東亞合成(株)製アロンマイティAP-400BD等の市販されている商品を使用することができる。
2液性エポキシ樹脂の硬化剤は、例えば、DIC(株)製ラッカマイド17-202, TD-961, TD-977, TD-992, WN-155, WN-170, WN-405, WN-505;三菱化学(株)製jERキュア-ST11, ST12, St13, ST14, LV11, DC11, RC11, FL11, QX11, H3, WD11M60;(株)ADEKA製アデカハードナーEH-3636AS, EH-5010S,EH-5015S; 日立化成(株)HN-2200, HN-2000, HN-5500;T&K TOKA(株)製トーマイド245, 275, 210, 241, フジキュア-5000, FXS-654, FXS-8077等の市販されている商品を使用することができる。
エポキシ樹脂として、作業性、経時安定性等の観点から、1液性エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ樹脂の硬化温度は、60〜200℃が好ましく、80℃〜150℃が更に好ましい。
アミド樹脂は、ナイロン6(ε-カプロラクタム)、ナイロン11(ウンデカンラクタム)、ナイロン12(ラウリルラクタム)等を用いることが好ましい。
アミド樹脂は、ナイロン66(ヘキサメチレンジアミン+アジピン酸)、ナイロン610(ヘキサメチレンジアミン+セバシン酸)、ナイロン6T(ヘキサメチレンジアミン+テレフタル酸)、ナイロン6I(ヘキサメチレンジアミン+イソフタル酸)、ナイロン9T(ノナンジアミン+テレフタル酸)、ナイロンM5T(メチルペンタジアミン+テレフタル酸)、ナイロン612(カプロラクタムとラウリルラクタムとのωアミノ酸同士の共縮重合体)等を用いることが好ましい。
アミドイミド樹脂とは、ポリイミド主鎖にアミド結合を導入した樹脂であり、無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応や無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応等で得られる樹脂を用いることが好ましい。
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルの重合体若しくはメタクリル酸エステルの重合体又はこれらをコモノマーとする共重合体であり、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等を用いることが好ましい。
バインダーは、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体及びオレフィン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。バインダーは、2種以上を組み合わせて使用することができる。
バインダーの含有量は、金属複合体(Pd複合体等)100重量部に対して、1〜1×105重量部程度が好ましく、50〜5×104重量部程度がより好ましい。
バインダーは、その固形分比は1〜50重量%程度であることが好ましい。
(3-2-2) 触媒組成物の製造方法
金属粒子(Pd粒子等)は、前述の通り、分散剤の存在下、金属化合物(Pd化合物等)から供給される金属イオン(Pdイオン等)を、還元剤を用いて還元することによって得ることができる。
触媒組成物は、
(i)(2)溶媒中に、金属イオン(Pdイオン等)と分散剤とを存在させ、還元剤を用いてその金属イオン(Pdイオン等)を還元し、(1)金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体を作製する工程、
(ii)(2)溶媒中に、(3)バインダーを混合して混合物を作製する工程、並びに、
(iii)前記工程(i)で得られた(2)溶媒及び(1)金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体の混合物に、前記工程(ii)で得られた(2)溶媒及び(3)バインダーの混合物を混合する工程、
を含む製造方法により製造することが好ましい。
工程(i)及び工程(ii)は、どちらが先の工程であっても良い。
前記製造方法によれば、転写技術で利用するめっき転写フィルムに適用できる触媒組成物を製造することができる。
このめっき転写フィルムを用いて、非導電性基材に触媒層(触媒組成物)及びめっき皮膜を形成(露出)させることができる。
本発明の触媒組成物は、めっき(無電解めっき又は電解めっき)の反応性が高く、めっきとの密着性が良好であり、良好な平滑性を発現できるめっき皮膜が形成することが可能である。
めっき転写フィルムにより、更に、非導電性基材(成形品、成型品(ABS樹脂等のプラスチック材料、ガラス板等)上にパターンの拡がりを抑えつつ、部分めっきを形成することが可能である。めっき転写フィルムを用いると、更に、有害な物質によるエッチング工程、煩雑な触媒付与工程等を必要としない。
工程(i)
(2)溶媒中に、金属イオン(Pdイオン等)と分散剤とを存在させ、還元剤を用いてそのPdイオンを還元し、(1)金属粒子(Pd粒子)と分散剤との複合体を作製する。
先ず、金属イオン(Pdイオン等)と分散剤とを溶媒(分散媒)中に存在させる。金属イオン(Pdイオン等)として、供給源として前記金属イオン(Pdイオン)を供給する金属化合物(Pd化合物等)を使用することができる。
各成分の使用量(重量部)は「金属化合物(Pd化合物等)」基準とする。
分散剤として、前記分散剤を使用することができる。金属イオン(Pdイオン等)と分散剤との使用比率(重量比)は、金属化合物(Pd化合物等)100重量部に対して、分散剤を10〜200重量部程度使用することが好ましく、30〜150重量部程度がより好ましく、50〜100重量部程度が更に好ましい。
溶媒として、前記(2)溶媒を使用することができる。溶媒の使用量は、金属イオン(Pdイオン等)と分散剤を均一に存在させることができれば特に限定されず、金属化合物(Pd化合物等)100重量部に対して、1×104〜3×105重量部程度が好ましく、1×104〜1×105重量部程度がより好ましい。
次に、金属イオン(Pdイオン等)と還元剤とを反応させることにより、金属イオン(Pdイオン等)が還元剤によって還元される。即ち、金属イオン(Pdイオン等)の還元反応が生じ、結果として前記(1)金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体(金属複合体(Pd複合体等))を得ることができる。
その還元剤として、前記金属複合体(Pd複合体等)を作製するために使用される還元剤を使用することができる。還元剤の使用量は、特に限定されず、金属化合物(Pd化合物等)100重量部に対して、100〜800重量部程度が好ましく、200〜600重量部程度がより好ましい。
還元剤を用いる反応は、35〜45℃程度の温度で行うことが好ましく、50〜60℃程度まで昇温することが好ましい。反応時間は、特に限定されず、1〜5時間程度とすることが好ましい。
反応の際の圧力及び雰囲気は、特に限定されず、大気圧下又は大気(空気)雰囲気下で行うことが好ましい。反応はビーカー等の開放系で行うことができる。反応方法として、金属イオン(Pdイオン等)(金属化合物(Pd化合物等))、分散剤及び還元剤を含有する溶液を羽根付き撹拌棒で撹拌することが好ましい。
溶媒及び金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体を含む混合物(金属複合体含有液(Pd複合体含有液等))を限外濾過し、金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体を分離することが好ましい。
この操作により、金属複合体含有液(Pd複合体含有液等)に含まれる無機塩や過剰の分散剤等を除去することができる。例えば、Pd複合体含有液に対して濾過処理を行い、分散溶媒を補填することが可能である。この処理は、操作を繰り返すことができる。
金属イオン(Pdイオン等)の還元反応後に溶媒を変換することが可能である。例えば、前記溶媒として水を使用し、その後、前記水をNMP等(溶媒、分散媒)に変換することにより、NMP((2)溶媒)及び(1)金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体の混合物を作製することが可能である。
工程(ii)
(2)溶媒中に、(3)バインダーを混合して混合物を作製する。
溶媒として、前記2-フェノキシエタノール、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の(2)溶媒を使用することができる。溶媒の使用量は特に限定されない。
バインダーとして、前記(3)バインダーを使用することができる。バインダーの使用量は、触媒組成物の粘度を考慮することがこのましい。また、接着層を介して、触媒組成物と非導電性基材(ABS樹脂、ガラス板等)との密着性、硬化条件等を考慮することが好ましい。
混合は、特に限定されず、大気圧下又は大気(空気)雰囲気下で行うことが好ましい。混合はビーカー等の開放系で行うことができる。混合方法として、溶媒及びバインダーを含有する混合物を羽根付き撹拌棒で撹拌することが好ましい。
工程(iii)
前記工程(i)で得られた(2)溶媒及び(1)金属粒子(Pd粒子等)と分散剤との複合体の混合物に、前記工程(ii)で得られた(2)溶媒及び(3)バインダーの混合物を混合する。
(3-2-3) 触媒層の形成
触媒層は、本発明のめっき転写フィルムを用いてめっき物を製造する方法において、熱ロール転写、インモールド転写等の転写技術により、前記めっき転写フィルムの接着層を素地(非導電性基材)に貼り付け、次いで得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜及び接着層を残し、前記素地から基材及び剥離層を剥離した後、素地(非導電性基材)に設けられる層である。
触媒層は、素地に接着層を介して設けれ、めっきを行うための層である。触媒層は、基材を剥離する際に、素地側に残る。
触媒層を形成する触媒組成物を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、基材-剥離層上に、塗布・乾燥させて、触媒層を形成することができる。
触媒層の厚みは、良好に無電解めっきを行い、素地にめっき皮膜を良好に形成することができること等から、0.01〜10μm程度が好ましく、0.02〜8μm程度がより好ましく、0.03〜5μm程度が更に好ましく、0.05μm(50nm)〜2μm程度が特に好ましい。
触媒層に対して、めっき(無電解めっき又は無電解めっきに続く電解めっき)を施し、得られらめっき転写フィルムを用いることで素地に目的とする意匠を表現することができる。
(3-3) めっき皮膜
めっき転写フィルムはめっき皮膜を有する。めっき皮膜は、無電解めっき又は無電解めっきに続く電解めっき(以下、合わせて「めっき」とも記す)により形成される。
めっき皮膜は、本発明のめっき転写フィルムを用いてめっき物を製造する方法において、熱ロール転写、インモールド転写等の転写技術により、前記めっき転写フィルムの接着層を素地(非導電性基材)に貼り付ける。
次いで得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜及び接着層を残し、前記素地から基材及び剥離層を剥離した後、素地(非導電性基材)に設けられる層である。
めっき皮膜は、基材を剥離する際に、素地側に残る。めっき転写フィルムの触媒層に対して、めっき(無電解めっき又は電解めっき)を行う。そのめっき転写フィルムを素地(非導電性基材)に転写後、めっき皮膜を露出させることができる。
素地(成形品又は成型品)に意匠性を付与することができる。素地に、模様、文字、パターン状の絵柄等を表現するための層である。素地に、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、ストライプ状、グラデーションの絵柄等を付与することができる。
めっき皮膜の厚みは、加飾用途の場合、素地に良好な意匠性を付与することができること等から、0.05〜10μm程度が好ましく、0.1〜6μm程度がより好ましく、0.2〜4μm程度が更に好ましく、0.3〜2μm程度が特に好ましい。めっきにより、素地に目的とする意匠を表現することができる。
また電子回路用途の場合要求される電流、電圧により適宜、目的用途に合った厚みとすれば良い。めっき転写フィルムにおけるめっき皮膜の作製方法は後述する。
(3-4) 接着層
めっき転写フィルムは接着層を有する。
接着層は、本発明のめっき転写フィルムを用いてめっき物を製造する方法において、熱ロール転写、インモールド転写等の転写技術により、前記めっき転写フィルムの接着層を素地(非導電性基材)に貼り付ける際に、素地と触媒層とを接着させる層である。接着層は、素地と触媒層との間に存在する。
接着層は、基材を剥離する際に、素地側に残る。接着層により、触媒層は素地に良好に形成され、その後、良好に無電解めっきを行うことができる。
接着層は、アクリル系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、フッ素樹脂(フッ素樹脂系接着剤)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer又はLiquid Crystal Plastic、LCP)(LCP系接着剤)、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、EVA樹脂系エマルジョン、アクリル樹脂系エマルジョン等の接着剤(樹脂)を含む接着組成物を用いて形成されることが好ましい。
これらは単独で使用することができ、また任意に組み合わせた樹脂組成物とすることも可能である。
接着層は、触媒層を触媒組成物に含まれるバインダーとの相性、前記素地への密着性を考慮して選択することが好ましい。例えば、アクリル樹脂等を用いることがより好ましい。
この接着組成物を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、基材-剥離層-触媒層上に、塗布・乾燥させて、接着層を形成することができる。
接着層の厚みは、触媒層は素地に良好に形成(接着)することができること等から、0.1〜5μm程度が好ましく、1〜5μm程度がより好ましい。
接着剤は、一般に、常温で溶媒乾燥後、硬化する(熱硬化性を有する)(常温接着剤)。常温接着剤で設計した場合、常温で反応が進むことから、転写フィルムを転写するまでの時間及び温度を制約することが可能である。また、常温で硬化することから、転写フィルムを転写する際にべたつきを抑える(発生させない)ことが可能である。
高周波回路基板
本発明は、高周波通信装置に使用される高周波回路基板に関する。
近年、情報通信量の増大に伴い、例えばICカード、携帯電話等の機器においてはマイクロ波やミリ波といった、より周波数が高い領域での通信が盛んになってきている。このため、高周波領域での使用が可能で、伝送遅延及び伝送損失がより小さい高周波回路基板が必要である。
伝送遅延に関係する伝送速度Vと、伝送損失αdは、基板材料の比誘電率εr及び誘電正接tanδを用いて、下記(式1)及び(式2)のように示すことができる。
V∝1/√εr・・・・・・・・(式1)
αd∝f×√εr×tanδ・・・・(式2)
(f:周波数)
(式1)より、伝送遅延を小さく、即ち、伝送速度Vを大きくするためには、比誘電率εrが小さい(低比誘電率)材料が用いられることが好ましい。また、(式2)より、伝送損失αdを小さくするためには、比誘電率εr及び誘電正接tanδが小さいことが好ましい。
エポキシ系接着剤
エポキシ系接着剤は低温(冷蔵庫等)で保管しておき(半生状態)、加工の時に熱プレスして使う。エポキシ系樹脂は回路の積層板作製で、絶縁材として使うことも可能である。
エポキシ系接着剤は、高周波回路基板を作製する際に、有利である。
フレキシブル回路基板(FPC)を作製する際の接着層として、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等を使用することが好ましい。
エポキシ系接着剤は、一般的に熱プロセスで硬化する熱硬化接着剤である。
熱ロール転写、インモールド転写等の転写技術では、接着剤を用いることが好ましい。電子回路基板の作製には、エポキシ系接着剤を熱ロール、熱プレス等で接着して用いることが好ましい。
エポキシ系接着剤として、ナミックス製のアドフレマNC0209、味の素テクノファイン製のABFフィルムGZ41等を用いることができる。
フッ素樹脂(フッ素樹脂系接着剤)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂は、低比誘電率、低誘電正接の材料であり、高周波回路基板の誘電体層として好ましい。しかし、フッ素樹脂は、表面エネルギーが著しく低く、非粘着性である。そのため、フッ素樹脂と金属導体(金属基材)との密着を充分に確保し、充分な剥離強度(ピール強度)を得ることが好ましい。
剥離強度を高める手段として、例えば、プライマーや接着剤を介して、金属導体(金属基材)と誘電体層とを接着する方法が有る。プライマーや接着剤は、一般に、誘電体層に比べて比誘電率が高い。そのため、伝送速度が小さくなり、伝送遅延及び伝送損失を充分に低減することができない傾向が有る。
別の手段として、金属基材の表面を、エッチング等により予め粗面化しておき、この粗面におけるアンカー効果を利用して剥離強度を高める方法が有る。金属基材は、高い高周波では、表皮効果により電流が導体の表面部分を流れるため、粗面化した場合、伝播距離が長くなり、伝送遅延が生じる傾向が有る。また、抵抗減衰や漏洩減衰も大きく、伝送損失が大きくなる傾向が有る。
フッ素樹脂に電子線等の電離性放射線を照射して、フッ素樹脂を金属基材に強固に密着させることができる(電子線照射法)。
フッ素樹脂に電離性放射線を照射して、架橋することにより、フッ素樹脂の炭素原子と金属基材の金属原子との間にも化学的な結合を形成させているため、金属基材を粗面化することなく、フッ素樹脂と金属基材とを充分に密着させることができ、高い剥離強度を得ることができる。また、架橋することによって、充分な耐摩耗性を得ることができる。
フッ素樹脂を金属基材と強固に密着させる方法としては、電子線等の電離性放射線を照射する方法が好ましい。電離性放射線の照射線量としては、電離性放射線が金属基材に到達することができる照射線量、具体的には、0.01kGy〜500kGyが好ましい。
電離性放射線照射は必須ではなく、フッ素樹脂と金属基材とを積層して適当な温度、圧力でプレスすることで密着させることもできる。
フッ素樹脂に電子線を照射する場合の照射条件を制御することにより、剥離強度を調整することができる。
低比誘電率及び低誘電正接の材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂を用いることが好ましい。基材(導体)上にフッ素樹脂からなる誘電体層が形成されている高周波回路基板を作製することができる。
金属基材は、高い高周波では、表皮効果により電流が導体の表面部分を流れるため、粗面化した場合、伝播距離が長くなり、伝送遅延が生じる。また、抵抗減衰や漏洩減衰も大きく、伝送損失が大きくなる恐れがある。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂は、低比誘電率、低誘電正接の材料であり、高周波回路基板の誘電体層として好ましい。伝送遅延及び伝送損失が充分に低減された高周波回路基板を得ることができる。また、フッ素樹脂は、フレキシブル回路基板(FPC)を作製する際にも、好ましい。
これらのフッ素樹脂は、耐熱性が優れている点においても好ましく、更に、透湿度が小さいため、回路基板のインピーダンスが湿度の影響を受けにくく安定する点においても好ましい。
液晶ポリマー(LCP)(LCP系接着剤)
LCPは、プリント基板実装に好ましく用いることができる。LCPは、フィルム成型したものは、薄層化や高周波等に対応する電子回路基板素材として好ましく用いることができる。
エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体(タイプI)

フェノール及びフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体(タイプII)
(一般的な4,4-ジヒドロキシビフェノールとテレフタル酸の例)

2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体(タイプIII)

LCPは、高周波回路基板を作製する際に、有利である。
アクリル系接着剤等の熱可塑性樹脂
アクリル系接着剤等の熱可塑性樹脂(ガラス転移点(Tg)が高い)は、加熱により粘度が低下するので、接着剤として機能する。
接着剤の効果
密着性(剥離強度)
不活性な基材上に形成するのではないので、基材の種類に限定されない。
比誘電率εr及び誘電正接tanδが小さい樹脂でモールドされている。
エポキシ樹脂系接着剤を用いることが好ましい(ナミックス製、味の素テクノファイン製)。
表面粗化
表面は、滑らかなPET表面粗さが転写することから、超平滑(粗さは数十nmオーダー)することが可能である。
(3-5) 粘着層
めっき転写フィルムは粘着層を有する。
粘着層は、本発明のめっき転写フィルムを用いて無電解めっき物を製造する方法において、粘着剤転写等の転写技術により、前記めっき転写フィルムの粘着層を素地(非導電性基材)に貼り付ける際に、素地と触媒層とを接着させる層である。
粘着層は、素地と触媒層との間に存在する。粘着層は、基材を剥離する際に、素地側に残る。粘着層により、触媒層は素地に良好に形成され、その後、良好に無電解めっきを行うことができる。
粘着層は、アクリル系粘着剤、ポリスチレン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤(樹脂)を含む粘着組成物を用いて形成されることが好ましい。これらは単独で使用することができ、また任意に組み合わせた樹脂組成物とすることも可能である。
粘着層は、触媒層を構成する触媒組成物に含まれるバインダーとの相性、前記素地(非導電性基材)への密着性を考慮して選択することが好ましい。例えば、アクリル樹脂等を用いることがより好ましい。
この粘着組成物を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、基材-剥離層-触媒層上に、塗布・乾燥させて、粘着層を形成することができる。
粘着層の厚みは、触媒層は素地(非導電性基材)に良好に形成(接着)することができること等から、1〜50μm程度が好ましく、10〜30μm程度がより好ましい。
粘着剤は、一般に、溶媒乾燥後も常温で粘性を持ち、圧力を加えることで被着材に対する流動性を持たせ、剥離に対する凝集性が硬化に代わる保持力となるものである。粘着剤は、一般に熱可塑性であり、常温プロセスで使用するものであり、ガラス転移点(Tg)は低い。
電子回路作製には、粘着剤(粘着層)を用いることが好ましい。
(4) めっき転写フィルムの製造方法
本発明のめっき転写フィルムは、前記めっき転写フィルムの技術を採用し、基材上に、少なくとも剥離層、触媒層、めっき皮膜及び接着層(又は粘着層)を順に積層することで製造することができる。
本発明のめっき転写フィルムは、
(1)基材上に剥離層を形成する工程、
(2)前記基材の剥離層側に、触媒組成物を塗布し、触媒層を設ける工程、
(3)前記触媒層に対して、めっきを行い、めっき皮膜を形成する工程、及び
(4)前記形成しためっき皮膜上に、接着層又は粘着層を設ける工程
を含む製造方法により、製造することができる。
めっき皮膜は、無電解めっき又は無電解めっきに続く電解めっき(以下、合わせて「めっき」とも記す)により形成される。
この製造工程によりめっき転写フィルムに触媒層及びめっき皮膜を形成することができる。転写技術により、このめっき転写フィルムを素地(非導電性基材、成形品又は成型品)に貼り付け、次いで剥離により、素地に触媒層及びめっき皮膜を露出させることで、成形品又は成型品にめっき皮膜を形成することができる。
これにより、無電解めっき物を製造することができる。
(4-1) 基材上に剥離層を形成する工程(1)
離型性を有する基材を作製する。
前記剥離組成物を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、基材上に、塗布・乾燥させて、剥離層を形成することができる(離型性を有する基材)。
(4-2) 基材の剥離層側に、触媒組成物を塗布し、触媒層を設ける工程(2)
離型性を有する基材(剥離層側)上に触媒層を設ける。
塗布処理
離型性を有する基材の剥離層側に触媒組成物を塗布する方法は限定されない。
塗布方法としては、バーコーター、グラビア印刷機(グラビアオフセット)、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、リバースコーター、スクリーン印刷機等を用いる塗布方法がある。マスキングレスや生産効率の観点ではグラビアオフセット印刷やパッド印刷が好ましい。パターンによってはスプレー塗装が好ましい。
塗布方法に合わせて、触媒組成物の粘度を調整することが好ましい。
グラビアオフセット印刷やパッド印刷にて塗布する場合、触媒組成物の粘度は50〜1,000mPa・s程度が好ましい。マスキングを施した上で、スプレー塗装する場合、触媒組成物の粘度は100mPa・s程度以下が好ましい。
乾燥及び硬化前の触媒組成物の膜厚は、使用用途によって適宜選択することができ、触媒組成物の粘度に依存する。その膜厚は、触媒組成物を良好に塗布できる観点から、1〜120μm程度が好ましい。その膜厚が120μmを超えると、触媒組成物が液垂れを引き起こす傾向がある。
硬化処理
基材に触媒組成物を塗布した後、触媒組成物に含まれる溶媒(溶剤)を揮発及び/又は乾燥させ、次いで硬化処理を行う。硬化処理により、バインダーが硬化される。
基材に触媒組成物を塗布した後、乾燥処理を行うことができる。乾燥処理によって、無電解めっきを行う際に不必要な溶媒を効率的に除去するとともに、塗膜と基材との密着性及び塗膜の表面強度を向上させることができる。乾燥処理の温度は、60〜400℃程度が好ましく、80〜150℃程度がより好ましい。
乾燥処理の時間は、乾燥温度に合わせて、6秒〜60分程度が好ましく、10分〜30分程度がより好ましい。
硬化処理の温度は触媒組成物に含まれる前記(3)バインダーの種類に合わせて調整することができる。硬化処理の温度は40〜400℃程度が好ましい。また、基材としてプラスチックを用いる場合、プラスチック素材の軟化温度を考慮し、硬化処理の温度を40〜200℃程度に設定することが好ましい。
乾燥及び硬化後の触媒組成物の膜厚は、触媒組成物の固形分濃度に依存する。その膜厚は、無電解めっきを効率良く行うことができ、十分なめっき密着性が発揮されるという点から、0.05〜20μm程度が好ましい。その膜厚が0.05μm未満であっても、無電解めっきの反応性を得ることができるが、めっき密着性については十分に発揮されない傾向がある。その膜厚が20μmを超えると、無電解めっきの反応速度が劣る傾向がある。
触媒組成物に含まれる溶媒を揮発及び/又は乾燥させ、触媒組成物に含まれるバインダーを硬化させる。
本発明の触媒組成物を用いて、これら一連の処理を行うことにより、基材上に触媒層(触媒膜)を形成することができる。触媒層には、金属複合体(Pd複合体等)が含まれる。金属複合体(Pd複合体等)は、塗膜に対して均一に分散された状態で存在する。そのため、触媒膜上に対して、より効率的に無電解めっきを行うことができる。
(4-3) 触媒層に対してめっきを行い、めっき皮膜を形成する工程(3)
めっきは、無電解めっき又は無電解めっきに続く電解めっき(以下、合わせて「めっき」とも記す)。
触媒層(触媒膜)が形成された基材(めっき転写フィルムを構成する基材シート)に対して、無電解めっきを行うことで、基材の上にパターンめっきを形成することができる。触媒層が形成された基材は、金属を析出させるためのめっき液と接触し、これにより無電解めっき皮膜が形成される。
基材に触媒組成物によって形成された触媒層は、無電解めっきの反応性がよく、得られた無電解めっき皮膜はむらがなく、密着性及び外観性に優れる。これは、非導電性基材(成形品)に対しても、むらがなく、外観性に優れるめっき皮膜となる。
めっき液は、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば特に限定されない。めっき液として、例えば、銅、金、銀、ニッケル等を用いることが好ましい。めっき液として、触媒組成物によって形成された触媒層(触媒膜)との関係から、銅又はニッケルを含むめっき液を用いることが好ましい。
めっき条件は、常法に従うことができる。触媒層(触媒膜)は無電解めっきの反応性が非常に良好であるため、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。そのため、めっき液の寿命が長持ちするだけでなく、触媒層のパターン通りにめっきが選択的に析出される。
即ち、触媒組成物(めっき転写フィルム)から形成される触媒(触媒膜)は、パターン形成能に優れる。
無電解めっき処理で、無電解銅(Cu)めっき浴を用いる場合、その処理温度は25〜65℃程度が好ましく、その処理時間は10〜20分程度が好ましい。この無電解めっき処理により、0.3〜1.0μm程度の析出膜厚を形成することができる。
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン(Ni-B)浴を用いる場合、その処理温度は55〜70℃程度が好ましく、その析出速度は5μm/hr(60℃)程度が好ましい。
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん(Ni-P)浴を用いる場合、その処理温度は30〜95℃程度が好ましく、その析出速度は浴温30℃においては3μm/hr程度、90℃においては20μm/hr程度が好ましい。
基材に形成された触媒組成物に対して、めっきを形成する技術は、触媒組成物を全面めっきに使用しても良く、パターンめっきを対象として良い。
加飾を目的とする場合、無電解めっきの後、電解銅(Cu)めっき、半光沢ニッケル(Ni)めっき、光沢ニッケル(Ni)めっき、クロム(Cr)めっき等の一般的なプロセスを用いることが好ましい。
加飾処理で、電解銅(Cu)めっき浴を用いる場合、その処理温度は20〜60℃程度が好ましい。電流密度は1〜10A/m2程度が好ましい。処理時間は10〜60分程度が好ましい。電解Cuめっき浴を用いる加飾処理により、5〜40μm程度の析出膜厚を形成することができる。
加飾処理で、半光沢ニッケル(Ni)めっき浴を用いる場合、その処理温度は45〜55℃程度が好ましい。電流密度は1〜10A/m2程度が好ましい。処理時間は10〜60分程度が好ましい。半光沢Niめっき浴を用いる加飾処理により、5〜20μm程度の析出膜厚となる。
加飾処理で、光沢ニッケル(Ni)めっき浴を用いる場合、その処理温度は45〜55℃程度が好ましい。電流密度は1〜10A/m2程度が好ましい。処理時間は10〜60分程度が好ましい。光沢Niめっき浴を用いる加飾処理により、5〜20μm程度の析出膜厚となる。
加飾処理で、クロム(Cr)めっき浴を用いる場合、その処理温度は40〜60℃程度が好ましい。電流密度は10〜60A/m2程度が好ましい。処理時間は1〜5分程度が好ましい。Crめっき浴を用いる加飾処理により、0.1〜0.3μm程度の析出膜厚となる。
触媒層(触媒膜)が形成された基材(めっき転写フィルムを構成する基材シート)に対して、無電解めっきを行い、引き続き電解めっき行うことで、基材の上にパターンめっきを形成することができる。
(4-4) 形成しためっき皮膜上に、接着層又は粘着層を設ける工程(4)
触媒層上に接着層又は粘着層を設ける。
前記接着組成物又は粘着組成物を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、離型性を有する基材(基材-剥離層)-触媒層上に、塗布・乾燥させて、接着層又は粘着層を形成することができる。
(5) めっき物を製造する方法
本発明のめっき転写フィルムを用いて、非導電性基材に滑らかなめっき皮膜(無電解めっき皮膜又は電解めっき皮膜)を形成させることができる。
転写フィルムを用いてめっき物を製造するには、
(1)めっき転写フィルムの接着層又は粘着層を素地に貼り付ける工程、及び
(2)前記工程によって得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜、及び接着層又は粘着層を残し、前記素地から基材を剥離する工程を含む方法により、めっき物を製造することができる。
前記工程(1)及び(2)は、インモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写の転写技術を採用する。
(5-1) 転写技術(図1〜3)
転写技術は、主に熱ロール転写技術、インモールド転写技術又は粘着剤転写である。転写技術を用いて、めっき転写フィルムの触媒層及びめっき皮膜を非導電性基材(成形品)に貼り付け、非導電性基材(成形品)を加飾することができる。
電子機器のプリント配線板の製造では、金属配線回路を形成することができる。
本発明の転写技術は、特に、高周波通信装置に使用される高周波回路基板、特にフレキシブル回路基板(フレキシブルプリント基板、Flexible Printed Circuits:FPC)を作製する際に、有利な技術である。
本発明のめっき転写フィルム転写フィルムを用いて、配線板(非導電性基材)に、触媒層及びめっき皮膜をパターン形成(露出)させる。
(5-1-1) 熱ロール転写技術(図1及び3)
成型品(成形品)は、めっき転写フィルムを用いて、熱ロール転写技術により成型(成形)することが好ましい。
熱ロール転写技術は、(1)本発明のめっき転写フィルムを用意する工程、(2)成形(成型)樹脂体上に、そのめっき転写フィルムを設置する工程、(3)設置したまま熱圧によりロール転写する工程を含むものことが好ましい。
熱ロール転写技では、次の(i)〜(iii)工程を含むことが好ましい。
(i)加熱されたローラー(ゴムローラー、シリコンローラー等)を用いて、めっき転写フィルムの接着層を非導電性基材(成形品)に押し付ける。
(ii)熱と圧により、めっき転写フィルムの接着層を溶融させ、接着層を非導電性基材の表面に接着させる。
(iii) めっき転写フィルムの離型性を有する基材(剥離層を含む)を剥がし、非導電性基材に触媒層及びめっき皮膜を転移(形成)させて、めっき皮膜を露出させる。
熱ロール転写技術は、熱したローラーで熱及び圧をかけることにより、めっき転写フィルムの基材上の触媒層及びめっき皮膜を、非導電性基材の表面に移す技術である。
更に部分的なアルミ蒸着、マット印刷等でデザインをグレードアップさせたり、ハードコート等の機能性を付加したりすることが可能である。非導電性基材に対して、絵柄等をめっきする(加飾する)こと、つまり意匠を付与することが可能である。家庭日用品、家電製品、化粧品等の分野で利用することができる。
熱ロール転写加工は、輪転グラビア、輪転シルクスクリーン等の印刷方法により、めっき転写フィルムを移すことができる。
本発明の熱ロール転写技術により、成形品に直接印刷することが難しい多色・写真分解柄の絵付けが容易である。ハードコート等、更なる表面処理の同時加工が可能である。蒸着を利用することにより、表面に金属感を表現することができる。
転写加工時に溶剤等を使用しないため、作業環境の向上が図れる。設備の簡略化、生産性の向上が図れる。多種素材に対して柔軟な対応が可能である。
熱ロール転写技術では、プラスチック等の非導電性基材(成形品)の平面から円筒物等の3次曲面状の表面に、絵柄、金属調、パール、マット調等のデザイン(めっき)を付与する(加飾する)ことができる。
成形品に対する印刷、塗装等の技術と比べて、熱ロール転写技術は有機溶剤による環境負荷の少ない加飾工法である。熱ロール転写技術により、成形品に直接印刷することが難しい多色・写真分解柄の絵付けが容易である。転写加工時に溶剤等を使用しないため、作業環境の向上が図れる。設備の簡略化、生産性の向上が図れる。多種素材に対して柔軟な対応が可能である。
熱ロール転写技術は、例えば家庭日用品、文具、化粧品、家電製品、金属配線回路等に適用することができる。
本発明の熱ロール転写技術は、例えば、携帯電話等の通信機器;冷蔵庫、蛍光灯、スイッチパネル等の弱電機器;ファンベルト、インジケーター等の自動車部品;弁当箱、コップ、箸、ステンレスボトル、ゴミ箱、トイレ用品、バス用品、収納用品等の家庭日用品;筆記具(鉛筆、シャープペンシル等)、定規、鉛筆キャップ、テレビゲーム等の文具・玩具;容器、チューブ、ボトル、キャップ等の化粧品;スキーブーツ、スキーストック、スキー板、ゴルフクラブ等のスポーツ用品;金属配線回路に適用することが可能である。
(5-1-2) インモールド転写技術(図2及び3)
成型品(成形品)は、めっき転写フィルムを用いて、インモールド転写技術(射出成型同時転写法)により成型(成形)することが好ましい。
インモールド転写技術は、(1)本発明のめっき転写フィルムを用意する工程、(2)インモールド成形用金型内に、そのめっき転写フィルムを挿入する工程、(3)その金型内に溶融した射出樹脂を射出注入する工程、及び(4)そのめっき転写フィルムと射出樹脂とを一体化させて、樹脂成型体の表面上に触媒層を形成する工程を含むことが好ましい。
インモールド転写技術では、次の(i)〜(iv)工程を含むことが好ましい。
(i)箔送り装置から、めっき転写フィルムを金型内へ供給し、カメラ、センサー等を用いて、めっき転写フィルムの位置決めを行う。
(ii)クランプと吸引とでめっき転写フィルムを固定し、型締めを行う。
(iii)樹脂温度と射出圧力により、金型内でめっき皮膜(接着層)を非導電性基材(成型品)に転移させる。
(iv)型開きと同時に、めっき転写フィルムの離型性を有する基材(剥離層を含む)を剥離し、非導電性基材に触媒層及びめっき皮膜を転移(形成)させて、めっき皮膜を露出させる。その成型品(完成品)を自動又は手動で取り出す。
インモールド転写技術は、金型内にめっき転写フィルムを送り、成型時、内在する熱及び圧を利用して成型品を作るのと同時に、その成型品の表面にめっき転写フィルムの基材上の触媒層を転写する技術である。
本発明のインモールド転写技術は、非導電性基材に対して、従来不可能とされた3次元曲面、穴あき成形品、緩やかな凹凸面へのめっき(加飾)が可能である。ハードコート等の機能性材料と組み合わせることで、商品の付加価値を高めることができる。工程の簡略化によりコストダウンが図れる。省エネ、省スペースが図れ、作業環境の改善に繋がる。成形品に対する絵柄の位置精度に優れている。
インモールド転写技術は、プラスチック等の非導電性基材を金型の中で成型すると同時に、その3次曲面を有する成型品の表面に、めっき皮膜を形成することができる。非導電性基材(成型品)に対して、3次曲面状の表面に様々な意匠性の高いデザイン(めっき)を、位置精度良く施す(加飾する)ことができる。インモールド転写技術は、成形品に対する絵柄の位置精度に優れている。
インモールド転写技術は有機溶剤による環境負荷が少ない加飾工法であり、且つ、省スペース、コストダウンを図ることができ、従来不可能とされた三次元曲面、穴あき成形品、緩やかな凹凸面へのめっき(加飾)が可能である。
本発明のインモールド転写技術は、例えば、通信機器、弱電機器、自動車部品、家庭日用品、レジャー用品、金属配線回路等に適用することが可能である。
本発明のインモールド転写技術は、例えば、携帯電話等の通信機器;冷蔵庫、エアコン、パソコン、オーディオ等の弱電機器;インジケーター、カーエアコン等の自動車部品;弁当箱、キーホルダー、爪切り等の家庭日用品;パチンコ用銘板等のレジャー用品;金属配線回路に適用することが可能である。
(5-1-3) 粘着剤転写技術(図3)
本発明のめっき転写フィルムは、離型性を有する基材(剥離層1を含む)上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び粘着層が順に積層されてなり、更にその粘着層に剥離層2が積層されていても良い。
成型品(成形品)は、めっき転写フィルムを用いて、粘着剤転写技術により成型(成形)することが好ましい。粘着剤転写技術は、(1)本発明のめっき転写フィルムを用意する工程、(2)成形(成型)樹脂体上に、そのめっき転写フィルムの粘着剤側を貼り付ける工程を含むものことが好ましい。
粘着剤転写技術では、次の(i)〜(iii)工程を含むことが好ましい。
(i) めっき転写フィルムの粘着層を非導電性基材(成形品)に押し付ける。めっき転写フィルムの粘着層に剥離層2が積層されている場合、その剥離層2を剥がした後、めっき転写フィルムの粘着層を非導電性基材に押し付ける。
(ii) めっき転写フィルムの粘着層を非導電性基材表面に接着させる。
(iii) めっき転写フィルムの基材(剥離層1を含む)を剥がし、非導電性基材に触媒層及びめっき皮膜を転移(形成)させて、めっき皮膜を露出させる。
粘着剤転写技術は、粘着剤により、直接的に、簡便にめっき転写フィルムの基材上の触媒層及びめっき皮膜を、非導電性基材の表面に移す技術である。非導電性基材に対して、絵柄等をめっきする(加飾する)こと、つまり意匠を付与することが可能である。
更に部分的なアルミ蒸着、マット印刷等でデザインをグレードアップさせたり、ハードコート等の機能性を付加したりすることが可能である。
粘着剤転写技術は、プラスチック等の非導電性基材(成形品)の平面から円筒物等の3次曲面状の表面に、めっき皮膜を形成する(貼り付ける)ことで、絵柄、金属調、パール、マット調等のデザイン(めっき)を付与する(加飾する)ことができる。成形品に対する印刷、塗装等の技術と比べて、粘着剤転写技術は有機溶剤による環境負荷の少ない加飾工法である。
本発明の粘着剤転写技術により、成形品に直接印刷することが難しい多色・写真分解柄の絵付けが容易である。ハードコート等、更なる表面処理の同時加工が可能である。蒸着を利用することにより、表面に金属感を表現することができる。転写加工時に溶剤等を使用しないため、作業環境の向上が図れる。設備の簡略化、生産性の向上が図れる。多種素材に対して柔軟な対応が可能である。
転写加工時に溶剤等を使用しないため、作業環境の向上が図れる。設備の簡略化、生産性の向上が図れる。多種素材に対して柔軟な対応が可能である。
粘着剤転写技術は、通信機器、弱電機器、自動車部品、家庭日用品、文具・玩具、化粧品容器、スポーツ用品、金属配線回路等に適用することが可能である。
本発明の粘着剤転写技術は、例えば、携帯電話等の通信機器;冷蔵庫、蛍光灯、スイッチパネル等の弱電機器;ファンベルト、インジケーター等の自動車部品;弁当箱、コップ、箸、ステンレスボトル、ゴミ箱、トイレ用品、バス用品、収納用品等の家庭日用品;筆記具(鉛筆、シャープペンシル等)、定規、鉛筆キャップ、テレビゲーム等の文具・玩具;容器、チューブ、ボトル、キャップ等の化粧品;スキーブーツ、スキーストック、スキー板、ゴルフクラブ等のスポーツ用品;金属配線回路に適用することが可能である。
電子機器のプリント配線板の製造では、本発明のめっき転写フィルムを用いて、熱ロール転写技術、インモールド転写技術又は粘着剤転写技術により、配線板(非導電性基材)に触媒層触媒層及びめっき皮膜をパターン形成(露出)させて、金属配線回路を形成することができる。
(5-2) めっき転写フィルムの接着層又は粘着層を素地に貼り付ける工程(1)
熱ロール転写技術、インモールド転写技術、粘着剤転写等の転写技術により、めっき転写フィルムの接着層又は粘着層を素地に貼り付ける。
素地
めっき転写フィルムにより、めっき皮膜を転写させる対象物である。
素地は、特に限定されない。素地は、プラスチック等の非導電性基材が好ましい。
基材として、プラスチック(樹脂)、ガラス、セラミックス等を用いることが好ましい。
プラスチックとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等のポリオレフィン等を用いることが好ましい。
プラスチックとして、また、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合樹脂(ABS樹脂)等を用いることが好ましい。
プラスチックとして、更に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸エステル等のポリエステル;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;等を用いることが好ましい。
プラスチックとして、更に、ポリエーテルエーテルケトン;ノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン;ポリフェニレンスルファイド;液晶ポリマー;変性ポリフェニルエーテル;ポリスルホン;フェノール;ポリフタルアミド(PPA);ポリアリレート等を用いることが好ましい。
セラミックスとしては、ガラス、アルミナ等が挙げられる。また、基材として不織布を使用する場合、木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維等の不織布が挙げられる。
インモールド成形(成型)等の射出成形(成型)により製造する際に用いられる射出樹脂として、成形(成型)可能な熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)を用いることが好ましい。
射出樹脂として、熱可塑性樹脂を用いる場合、ポリスチレン(PS)、ポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレンのコポリマー(共重合化合物)(AS樹脂)、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、等の樹脂を用いることが好ましい。
射出樹脂として、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテフタレート(PBT)、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂を用いることが好ましい。
射出樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合は、2液硬化性ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
射出樹脂として、前記樹脂を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
素地の形状としては、特に限定されない。例えば、板状(又はフィルム状)、不織布状(又は織布状)、糸状、金型で成形された各種形状、等のいずれであってもよい。
素地(非導電性基材)によって、触媒組成物(転写フィルムの触媒層)に含まれる溶剤、バインダー等を適宜選択することができる。
本発明のめっき転写フィルムを用いると、転写技術により、通常、めっき浴に耐えられないか向かない基材に対しても、めっき皮膜(導電性の回路等)を良好に形成させることができる。
本発明の転写技術は、特に、高周波通信装置に使用される高周波回路基板、特にフレキシブル回路基板(フレキシブルプリント基板、Flexible Printed Circuits:FPC)を作製する際に、有利な技術である。
素地として、紙、布等に対してもめっき皮膜を転写することが可能である。これら紙、布等は、その特性から、通常、めっき浴に耐えられないか向かない基材である。
(5-3) 得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜、及び接着層又は粘着層を残し、前記素地から基材を剥離する工程(2)
インモールド転写(射出成型同時転写法)では、更に、樹脂成型体を冷却して金型から取り出した後、そのめっき転写フィルムの離型性を有する基材(基材シート、剥離部分)を剥離することにより、触媒層が露出した成型品を得ることができる。
熱ロール転写法では、更に、そのめっき転写フィルムの離型性を有する基材(基材シート、剥離部分)を剥離することにより、触媒層が露出した成型品を得ることができる。
粘着剤転写法では、更に、そのめっき転写フィルムの離型性を有する基材(基材シート、剥離部分)を剥離することにより、触媒層が露出した成型品を得ることができる。
(6) めっき皮膜を載せた成形品(めっき物)
本発明のめっき転写フィルムを素地(非導電性基材、プラスチック(樹脂)等)に塗布し、めっき皮膜を形成する。これにより、パターンめっき又は部分めっきされためっき皮膜を形成することができる。めっき皮膜を載せた成形品(被めっき物)は、めっき皮膜の密着性に優れる。
めっき皮膜を載せた成形品は、例えば、携帯電話、パソコン、冷蔵庫等の電化製品の筐体;エンブレム、スイッチベース、ラジエータグリル、ドアハンドル、ホイールカバー等の自動車用部品等に使用することができる。
本発明のめっき転写フィルムを用いると、素地上にパターンめっきを行うめっきにおいて、めっき(特に無電解めっき)の反応性が高く、クロムめっきとの優れた密着性と装飾用めっきの優れた平滑性を発現することができる。そのめっきでは、パターンの拡がりを抑え、良好に部分めっきをすることが可能である。
本発明のめっき転写フィルムを用いると、無電解めっきの反応性を向上させる目的で、無電解めっきにおける還元剤の濃度を高める必要が無く、また無電解めっきの反応温度を上げる必要もない。更に、また有害な物質によるエッチング工程、煩雑な触媒付与工程等を必要としない。
インモールド転写法又は熱ロール転写法では、熱転写時の熱により、転写フィルムの接着層(接着剤)が溶融し、素地と接着層とが密着する。
図7は、メタロイド法による回路形成法を示す。
図7の(1)は、従来のサブトラクティブ法である。
先ず、FR-4(ガラスエポキシ基板)にエポキシ系接着剤を用いて銅箔をラミネートする。引き続きフォトリソ技術にて目的の電子回路を形成する方法である。
図7の(2)は、従来のセミアディティブ法である。
この方法は、ファインパターン回路形成が可能である。先ず、全面に触媒を付与し、引き続き、フォトリソ技術を用いて、回路パターン形成、めっき、レジスト除去、触媒残渣除去し目的の電子回路を形成する方法である。
図7の(3)は、本発明のメタロイド法による回路形成法を示す。
この方法は、各種印刷技術を用い、無電解めっき触媒(メタロイド)をパターン印刷し、無電解、電気めっきにて目的の電子回路を形成する方法である。
この方法により、上記サブトラクティブ法又はセミアディティブ法で必要とされるレジスト材料及びエッチング工程で排出される大量の銅廃液処理が不要となるメリットがある。
図8は、本発明のメタロイド転写方式による高周波両面フレキ基板の作製方法を示す。
図8の(1)は、メタロイド転写フィルム(ML-TRF)の作製方法を示す。
先ず、剥離フィルムに各種印刷秘術を用い、無電解めっき触媒(メタロイド)をパターン印刷する。その後、その上にエポキシ材等の低損失ワニス塗布工程を経て、メタロイド転写フィルム(ML-TRF)を作製することができる。
このフィルムは半硬化(Bステージ)状態で冷蔵保存すると良い。メタロイド転写後の基材表面は平滑であり、高周波回路用途に有利である。
図8の(2)は、メタロイド転写方式による高周波両面フレキ基板の作製方法を示す。
FR-4(ガラスエポキシ)、PI、PET、アルミニウム箔等の支持基板の両面に、上下の電極位置を正確になるようにメタロイド転写フィルム(ML-TRF)を真空プレス方式により、熱転写する。その後、剥離フィルムを除去し、露出したメタロイドパターン部に無電解、電気めっきにて目的の電子回路を形成する。その後、両面の電極間を接続する。
接続方法として、先ず、ドリル、レーザーによりスルーホール(貫通穴)を設ける。その後、導電ペーストにて穴埋めを行い、両面電極間を接続する。最後に、回路保護目的で、カバーレイ(保護フィルム)をラミネートし、高周波両面フレキ基板が作製される。
この方法により、レジスト材料及びエッチング工程で排出される大量の銅廃液処理が不要となる。
図9は、本発明のめっき転写方式による高周波用基板の作製方法を示す。
図9の(1)は、めっき転写フィルム(ML-MTRF)の作製方法を示す。
図9の(2)は、各種チップ部品搭載めっき転写フィルムを示す。
先ず、剥離フィルムに対して、各種印刷技術を用い、無電解めっき触媒(メタロイド)をパターン印刷する。その後、無電解、電気めっきにて目的の電子回路を形成し、めっき転写フィルム(ML-MTRF)を作製することができる。更に、搭載位置の決まった各種チップ部品を転写基板上に接着剤或いは、両面テープ等を用いて固定する。
チップ部品電極と転写めっきパターン電極間は、導電ペースト、インク等の導電材料で接続することにより、各種チップ部品搭載めっき転写フィルムを作製することができる。
図10は、本発明のめっき転写方式による高周波用基板の作製方法を示す。
図10の(1)は、めっき転写方式による高周波フレキ基板の作製方法を示す。
図10の(2)は、各種チップ部品搭載金属めっき転写フィルムによるチップ部品内蔵高周波フレキ基板の作製方法を示す。
めっき転写フィルム(ML-TRF)又は、チップ部品搭載金属めっき転写フィルムと低損失材コートフィルムとを真空熱プレスする。その後、剥離フィルムを除去する。
低損失材が熱転写工程で硬化が進行し、接着性が消滅する場合は、更にフィルム接着剤等を用いて、FR-4(ガラスエポキシ)、PI、PET、アルミニウム箔等の基板に接着することで、高周波用フレキ基板又は、各種チップ部品内蔵高周波用フレキ基板を作製することができる。
インモールド転写成形の場合、平面状から円筒物等の3次曲面状の基板レスの高周波用基板又は、各種チップ部品内蔵高周波用基板を作製することができる。
この方法により、電子回路が低損失材にモールドされており、高周波用基板用途に有利である。基板に放熱特性の良い基板を用いることで放熱特性の良い高周波用基板を作製できる。また部品メーカーはめっき工程を必要とせず、必要量の生産が、オールドライプロセスで部品製造が可能となる。
図11は、本発明の(1)高周波用基板、(2)ML-MTRF、(3)各金属の周波数ごとの表皮深さ(計算値)を示す。
図11の(3)は、各金属の周波数ごとの表皮深さ(計算値)を示す。
30GHzを超える高周波領域においては、銅厚みは計算上1μm以下で十分であり、しかも本開発高周波用基板の表面粗さは30NM以下と平滑であり、表面粗さを起因とする損失は無視できる。
応用例
ミリ波レーダー(76GHz)回路基板 準ミリ波レーダー(24GHz)
自動車追突防止、ゲリラ豪雨監視、不法投棄監視、無線LAN
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
無電解めっき用転写フィルム用触媒組成物を触媒組成物と記す。
無電解めっき用転写フィルムを転写フィルムと記す。
「重量%」は「wt%」とも記す。
[1] パラジウム粒子(Pd粒子)と分散剤との複合体(Pdコロイド)の作製
液相還元法による金属ナノ粒子
精製水 89 重量部(分散溶媒)に塩化Pd(Pd化合物)1重量部を溶解し、更にクエン酸三ナトリウム10重量部を溶解して均一に攪拌した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム0.01重量部を添加して塩化Pdを還元させ、クエン酸で安定化させ、保護コロイド化されたPdコロイドを得た。
次いで、限外濾過により濃縮脱塩を行い、Pd 0.5重量部を含有するPdコロイドを得た。
[2] 実施例(めっき転写フィルムの作製)
(1) インク
(a) 実施例1及び10
Pd複合体含有液(Pd分12.75wt%、株式会社イオックス社製):1.96g、塩ビ-酢ビ樹脂(固形分10wt%、DICグラフィックス社製):9.0g、及びシクロヘキサン/MIBK/MEK混合溶剤(溶媒)を、Pd濃度が5,000ppm(0.5重量%)になるように混合して、金属めっき転写フィルム用触媒組成物(インク)を作製した。
(b) 実施例2〜5
Pd複合体含有液(Pd分12.55wt%、株式会社イオックス社製):1.96g、塩ビ-酢ビ樹脂(固形分40wt%(トルエン/MIBK希釈、日信化学社製):2.5g、及びターピネオール/NMP混合溶剤(溶媒)を、Pd濃度が10,000ppm(1重量%)になるように混合して、金属めっき転写フィルム用触媒組成物(インク)を作製した。
(c) 実施例6〜9
Pd複合体含有液(Pd分12.75wt%、株式会社イオックス社製):0.1g、バイロン24SS(ポリエステル樹脂、固形分10wt%、東洋紡株式会社製):0.3g(バインダー)、及びシクロヘキサン/MIBK/MEK混合溶剤(溶媒)を、Pd濃度が5,000ppm(0.5重量%)になるように混合して、金属めっき転写フィルム用触媒組成物(インク)を作製した。
(2) 金属めっき転写用触媒層形成フィルムの形成
(a) 実施例1及び6〜9
得られた金属めっき転写フィルム用触媒組成物を、ノンシリコン系剥離ポリエチレンテレフタレート(PET:38μm)(転写フィルムの基材+剥離層)の剥離層上に、バーコーター#4(塗工厚み:4μm)を用いて塗布し、次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
(b) 実施例2〜5
得られた無電解めっき用転写フィルム用触媒組成物を、ノンシリコン系剥離ポリエチレンテレフタレート(PET:38μm)(転写フィルムの基材+剥離層)の剥離層上に、オフセット印刷方式で、印刷パターン版(図5)を用いて印刷塗布した。
そのパターン版は、線幅1000μm、500μm、400μm、ピッチ、深度30μmである。次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
(c) 実施例10
得られた無電解めっき用転写フィルム用触媒組成物を、ノンシリコン系剥離ポリエチレンテレフタレート(PET:38μm)(転写フィルムの基材+剥離層)の剥離層上に、グラビア印刷機で、印刷グラビアパターン版(図6)を用いて、ロールtoロール連続印刷した。そのグラビアパターン版は、線数300線、深度10μm、角度65°、線幅200μmを用いた。
(3) 金属めっき層形成
(a) 実施例1〜5
得られた触媒コート済みのフィルムに無電解めっきを行った。
無電解銅めっき浴は、奥野製薬工業株式会社製OPCカッパーHFS(初期Cu濃度2.5g/l、浴容積500ml、40℃、40分)を用いた。得られた金属めっき転写フィルム上の金属めっきの厚みは2μmであった。
(b) 実施例6〜9
得られた触媒コート済みのフィルムに無電解めっきを行った。
無電解めっきを10分間行った。無電解ニッケルめっき浴は、上村工業株式会社製BEL18(初期Ni濃度6g/l、浴容積500ml、65℃)を用いた。得られた金属めっき転写フィルム上の金属めっきの厚みは1μmであった。
(c) 実施例10
得られた触媒コート済みのフィルムに無電解、電解めっきを行った。
無電解銅めっき浴は、奥野製薬工業株式会社製OPCカッパーHFS(初期Cu濃度2.5g/l、浴容積500ml、40℃、5分)を用いた。電解銅めっき浴は、硫酸銅濃度80g/L,硫酸濃度150g/Lを用いた。めっき後の厚みは13μmであった。
(4) 熱転写(熱ロール転写)
(a) 実施例1(べた印刷)及び2(パターン印刷)
金属めっき転写フィルムの無電解めっき面に、エポキシ系接着剤(固形分22%、東亜合成社製)をバーコーター#22(塗工厚み:22μm)を用いて塗布し、次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
更にその接着剤塗工面上に、アクリル系メジウム(固形20wt%、大日精化工業株式会社製)を、バーコーター#22(塗工厚み:22μm)を用いて塗布し、次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
その後、熱転写装置(太平工業株式会社製のナビタスRT-300)を用いて、平面アクリル板(厚み:2mm、縦及び横:50mm)に温度220℃、圧力目盛110、3回押し条件で熱転写した。
(5) 粘着転写
(a) 実施例3〜7及び10(実施例6及び7:べた印刷)
金属めっき転写フィルムの無電解めっき面に、エポキシ系接着剤(固形分22%、東亜合成社製)をバーコーター#22(塗工厚み:22μm)を用いて塗布し、次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
更にSKダイン1435(粘着剤、固形分30%綜研化学工業社製)バーコーター#47(塗工厚み:47μm)を用いて塗布し、次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
その後、ゴムローラーを用いて、コピー用紙(64g/m2坪量)、またはラベルシール紙に転写した。
パターン印刷の場合は、粘着剤を直に塗工すると、パターン以外の部分がべたつくので、中間に粘着性のないエポキシ接着剤を塗工した。
(b) 実施例8及び9
金属めっき転写フィルムの無電解めっき面に、SKダイン1435(固形分30%、綜研化学工業社製)バーコーター#47(塗工厚み:47μm)を用いて塗布し、次いで乾燥用オーブン内で120℃、1分間乾燥させた。
その後、両面粘着剤テープ、ゴムローラーを用いて、コピー用紙(64g/m2坪量)、又はラベルシール紙に転写した。
(6) 導電率測定
実施例3〜9では、インクを、紙又は布に転写し、その抵抗を測定した。紙又は布は、その特性から、めっき浴に耐えられないか向かない基材である。
(a) 実施例1、6、7及び10
熱転写及び粘着転写で得られた各無電解めっき又は無電解、電解めっき転写基材の表面抵抗を、三菱化学アナリテック社製のロレスタ GP MCP-T610を用いて測定した。
実施例1で得られた無電解銅めっき転写アクリル板の表面抵抗は、2.21×10-2/□であった。転写前の金属銅めっき層の抵抗は、2.1×10-2/□であった。
本発明の金属銅めっき層転写フィルムを用いると、酸化性金属めっき層への酸化防止処理が必要ないことがわかった。
実施例6及び7で得られた無電解ニッケルめっき転写コピー用紙及びラベルシール紙の表面抵抗は、夫々3.02×10-1/□、3.38×10-1/□であった。
転写前の金属ニッケルめっき層の抵抗は、5.56×10-1/□であった。
実施例10で得られた無電解、電解銅めっき転写コピー用紙の表面抵抗は、5.40×10-3/□であった。
転写前の金属銅めっき層の抵抗は、5.33×10-3/□であった。
(b) 実施例2〜5、8及び9(実施例8及び9:べた印刷)
株式会社カスタム社製のKM-320Nテスターを用いて、1,000μm巾めっきパターン又は、べためっき面の電極10mm間の電気抵抗を測定した。
[3] 測定結果のまとめ
熱転写、粘着剤転写、両面粘着剤テープ転写で得られた無電解めっき転写基板の表面抵抗を、株式会社カスタム社製のKM-320Nテスターを用いて、1,000μm巾めっきパターンまたは、めっき皮膜面の電極10mm間の電気抵抗を測定した。
実施例1〜10の測定結果を表1にまとめた。
本発明の金属めっき層転写フィルムを用いると、酸化性金属めっき層への酸化防止処理が必要ないことがわかった。
[4] 実施例(高周波回路基板の作製)
PTFE等のフッ素樹脂は、低比誘電率、低誘電正接の材料であり、高周波回路基板の誘電体層として好ましい。フッ素樹脂は、表面エネルギーが著しく低く、非粘着性であるため、金属導体(金属基材)との密着を充分に確保する(剥離強度(ピール強度)を得る)ために、電子線照射法を用いた。
1.福田金属箔粉工業社製電解銅箔CF-LB9(厚み:20μm、表面粗さ:Rz=1.0μm)を希硫酸に浸漬して、酸化防止のためのコーティングが除去された銅箔を作製した。
2.銅箔上に、ダイキン工業社製PTFEディスパージョン(EK-3700)をキャスティングにより塗布し、乾燥させた。その後、窒素雰囲気(酸化防止のため)下、360℃で焼成し、15μmのPTFE膜を銅箔上に作製した。
3.PTFE膜が作製された銅箔を、日新電機社製電子線照射装置(加速電圧:1.13MeV)を用いて、照射時温度340℃、酸素濃度5ppmの雰囲気下で、300kGyの電子線照射を行い、PTFEを架橋させると同時に、銅箔とPTFEを接着させて、試験体を得た。
密着(剥離強度)
不活性な基材上に形成するのではないので、基材の種類は限定されない。
比誘電率εr及び誘電正接tanδが小さい樹脂でモールドできる。
表面粗化
表面は、滑らかなPET表面粗さが転写するので、超平滑(粗さは数十nmオーダー)である。
本発明のめっき転写フィルムを用い、各種転写技術により、素地に対してめっき皮膜を良好に形成させることができる。
転写フィルムにめっき皮膜が形成されていることから、各種転写技術により、素地に対して、一気にめっき皮膜を形成させることが可能である。
本発明のめっき転写フィルムを用いて、各種転写技術により、通常、めっき浴に耐えられない基材やめっき浴に向かない基材に対しても、簡単に導電性の回路を転写することができる。
本発明は、高周波通信装置に使用される高周波回路基板、特にフレキシブル回路基板(FPC)を作製する際に、めっき皮膜を形成させためっき転写フィルムを提供することができる。本発明は、高周波領域での使用が可能で、伝送遅延及び伝送損失がより小さい高周波回路基板を作製することができる。
本発明の高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルムは、表面が滑らかな無電解めっき皮膜を形成させることができる。高周波回路には、従来の金属配線転写とは異なり、優れた平滑性と基板材料の損失率が小さいことが求められる。
本発明の高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルムを「基板レス」に適用することで、金属めっき転写時に、チップ部品も固定し、同時被覆転写も可能である。その場合、樹脂はABS等まで用いることが可能となる。ABS樹脂やポリカーボネート等汎用の樹脂素材での部品埋設が可能である。
「基板レス」とは、プリント配線基板を使わず、筐体や構造部品に配線機能を持たせることで部品同士を繋ぐ技術である。
樹脂部品の射出成型時に一緒に部品を埋め込んで固定したり、版無しにインクジェット印刷で配線を形成したりと、工数を増やさずに既存手法とは異なる実装を実現することができる。例えば、射出成型樹脂にIC等の電子部品を埋め込み、Agナノインクのインクジェット印刷により配線・接続する。
本発明の高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルムを使い、プリント基板を用いることなく電子回路を形成することが可能となるため、製品の小型化や環境負荷軽減に寄与する他、形成工程を簡素化するため、多品種少量生産に対応する柔軟性も併せ持つ。
本発明を高周波用途とする場合、エポキシ、LCP、フッ素系の樹脂を用いることが好ましい。本発明を基板レスに適用する場合、高周波回路パターン転写時に、同時に各種チップ部品を接着剤、或いは両面テープ等を用いて位置決め固定し、導電ペーストを用いて転写めっき回路とチップ電極とを接続し、エポキシ等で被覆、硬化後剥離することができる。配線がモールドされた構成となる。

Claims (7)

  1. 離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層が順に積層されてなるめっき転写フィルムであって、
    前記触媒層が(1)金属粒子と分散剤との複合体、(2)溶媒及び(3)バインダーを含有する触媒組成物からなり、前記金属粒子がパラジウム粒子、金粒子、銀粒子又は白金粒子であり、
    前記接着層が、アクリル系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、EVA樹脂系エマルジョン及びアクリル樹脂系エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種の接着剤からなる接着層であり、
    前記転写がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写である、
    高周波用回路基板作成用のめっき転写フィルム。
  2. 前記触媒組成物の分散剤が、ポリカルボン酸系高分子分散剤、ヒドロキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤及びカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤である、請求項1に記載のめっき転写フィルム。
  3. 前記触媒組成物の溶媒が、水;非プロトン性極性溶媒として、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド及びγ-ブチロラクトンからなる群から選ばれる非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール及びイソブチルアルコールからなる群から選ばれるアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノンからなる群から選ばれるケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選ばれるグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル及びサリチル酸メチルからなる群から選ばれる芳香族カルボン酸エステル類;トルエン及びキシレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン及びミネラルスピリットからなる群から選ばれる脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート及びブチルカルビトールアセテートからなる群から選ばれるグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル及び酢酸ブチルからなる群から選ばれるアルカノールエステル類;2-フェノキシエタノール、からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、請求項1又は2に記載のめっき転写フィルム。
  4. 前記触媒組成物のバインダーが、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体及びオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダーである、請求項1〜3のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
  5. 前記離型性を有する基材が、メラミン樹脂系剥離剤、シリコーン系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、セルロース樹脂系剥離剤、尿素樹脂系剥離剤、ポリオレフィン樹脂系剥離剤、パラフィン系剥離剤及びアクリル樹脂系剥離剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の剥離剤からなる剥離層を含む基材である、請求項1〜4のいずれかに記載のめっき転写フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のめっき転写フィルムを製造する方法であって、
    (1)基材上に剥離層を形成する工程、
    (2)前記基材の剥離層側に、触媒組成物を塗布し、触媒層を設ける工程、
    (3)前記触媒層に対して、めっきを行い、めっき皮膜を形成する工程、及び
    (4)前記形成しためっき皮膜上に、接着層を設ける工程を含む、
    めっき転写フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のめっき転写フィルムを用いてめっき物を製造する方法であって、
    前記めっき転写フィルムは、離型性を有する基材上に、少なくとも触媒層、めっき皮膜、及び接着層が順に積層されてなり、
    (1)前記めっき転写フィルムの接着層を素地に貼り付ける工程、及び
    (2)前記工程によって得られた貼り付け物に対して、前記素地にめっき転写フィルムの触媒層、めっき皮膜、及び接着層を残し、前記素地から基材を剥離する工程を含み、
    前記工程(1)及び(2)がインモールド転写、熱ロール転写又は粘着剤転写により行われる、
    めっき物の製造方法。
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