JP2020158728A - 下地塗料およびめっき物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
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特開2004−79660号公報(特許文献1)は、ポリイミド樹脂フィルムの表面にニッケル又はニッケル合金を無電解めっきし、該めっき層の表面に銅を電気めっきすることにより、熱負荷後においても高い密着性を有するめっき物(フレキシブルプリント基板)を開示する。
上記めっき物は、ニッケル等の無電解めっき層の接着力、延いてはその無電解めっき層の表面に形成される銅めっき層の接着力を物理的に(粗化によるアンカー効果)及び化学的に(官能基への結合)高めるために、基材となるポリイミド樹脂フィルムを、初めにプラズマ処理し、続いてアルカリ金属水酸化物で活性化する必要があった。
そこで、該エッチング不良を防止するために、特殊なエッチング液を用いる、あるいは銅めっき層用のエッチング液とは異なるエッチング液を用いてエッチングを行う等の対策が提案されているが、依然として回路形成時にオーバーエッチングを生じる等の不良及び作業工程が増加する等の問題があった。
引用文献1に記載の発明におけるバリア層(ニッケル層やニッケル合金層)は、界面の酸化された銅(酸化銅)、及び銅がポリイミド樹脂フィルム側へ拡散するのを抑制し、それによりポリイミド樹脂フィルムとめっき層の界面の密着性低下を防止すると考えられる。
これに対し、本発明の下地塗料を塗布することにより形成された塗膜層は、エポキシ樹脂が十分に架橋され、強靱で高遮断性の塗膜層となるため、酸化された銅(酸化銅)及び銅の拡散を抑え、高熱環境下に曝されても高い密着性、具体的には180度ピール強度が0.35N/mm以上のものが得られたものと推測される。
基材上に無電解めっき法により金属めっき膜を形成するための下地塗料であって、
下地塗料は、ポリピロール微粒子と、バインダーとを含み、
バインダーは、エポキシ当量が875〜9200のエポキシ樹脂であり、
ポリピロール微粒子とバインダーとの質量比はポリピロール微粒子:バインダー=1:2ないし1:60の範囲である。
本発明の下地塗料に含まれるポリピロール微粒子は、無電解めっき法により金属膜を形成するに際し、ポリピロール微粒子上にパラジウムなどの触媒金属を還元・吸着させ、その後、パラジウムなどの触媒金属が吸着されたポリピロール微粒子を起点として金属めっき膜を形成することができるものである。
また、基材上に、下地塗料を塗布することにより塗膜層を形成する際、ポリピロール微粒子としては、例えば導電性ポリピロール微粒子であっても、還元性ポリピロール微粒子であっても使用することができる。そして、導電性ポリピロール微粒子とバインダーを含む下地塗料を基材上に塗布して塗膜層を形成させた場合、その後、後述する脱ドープ処理を行ってから、触媒金属を還元・吸着させるのがよい。
なお、無電解めっき法により金属めっき膜が形成されためっき物の時点では、ポリピロール微粒子上にパラジウムなどの触媒金属が還元・吸着されるため、導電性のポリピロール微粒子となる。
上記の導電性ポリピロール微粒子とバインダーを含む塗料における導電性ポリピロール微粒子とは、導電性を有する粒子であって、具体的には、0.01S/cm以上の導電率を有する微粒子である。
また、導電性ポリピロール微粒子としては、球形の微粒子であるものが挙げられ、その平均粒径(レーザー回析/散乱法により求められる値)は、10〜100nmとするのが好ましい。
導電性ポリピロール微粒子は、π−共役二重結合を有するピロールモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性ポリピロール微粒子を使用することもできる。
上記の還元性ポリピロール微粒子とバインダーを含む塗料における還元性ポリピロール微粒子としては、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有するポリピロールであれば特に限定されないが、例えばポリピロールの誘導体も使用できる。
また、還元性ポリピロール微粒子としては、0.005S/cm以下の導電率を有するポリピロール微粒子が好ましい。
還元性ポリピロール微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性ポリピロール微粒子を使用することもできる。
また、還元性ポリピロール微粒子としては、球形の微粒子であるものが挙げられ、その平均粒径(レーザー回析/散乱法により求められる値)は、10〜100nmとするのが好ましい。
本発明の下地塗料に含まれるバインダーとしては、エポキシ当量が875〜9200のエポキシ樹脂であればよい。
また、エポキシ当量が875未満のエポキシ樹脂の場合、触媒金属が吸着し難くなり、結果、金属めっき膜が得られ難い、すなわち、めっき析出性に劣る。加えて、金属めっき膜が得られたとしても、ポリピロール微粒子と、エポキシ当量875未満のエポキシ樹脂とでは、エポキシ樹脂の架橋が不十分になりやすく、高熱環境下に曝されると、酸化された銅(酸化銅)及び銅が塗膜層を通過しながら拡散して基材まで到達し、高い密着性、具体的には180度ピール強度が0.35N/mm以上のものが得られないものと推測される。
エポキシ塗料が9200越えのエポキシ樹脂の場合、高熱環境下に曝されて密着性の低下はないが、コスト高となる。
なお、ここでいう当量とは、分子量(Mw)を官能基数(n)で割ったものであり、当量[g/eq]=Mw/nを意味する。
ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーが60質量部を超えると、金属めっき膜が析出し難くなる。加えて、エポキシ樹脂からなるバインダーの架橋が不十分となり、塗膜層間での剥離が起こりやすい。
バインダーが2質量部未満であると、金属めっき物を得た初期の180度ピール強度や、高熱環境下後の180度ピール強度において、所望の密着性が得られ難く、具体的には、初期、あるいは高熱環境下後の180度ピール強度において0.35N/mm以上を得難くなる。加えて、基材と塗膜層の界面での剥離が起こりやすい。
上記溶媒としては、バインダーを溶解することができるものであれば特に限定されないが、基材を大きく溶解するものは好ましくない。但し、基材を大きく溶解する溶媒であっても、他の低溶解性の溶媒と混合することにより、溶解性を低下させて使用することが可能である。
上記溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
なお、有機溶媒に分散されたポリピロール微粒子の分散液に、バインダーを混合させる場合、その分散液に使用されている有機溶媒を、下地塗料の溶媒の一部又は全部として使用することができる。
無機系フィラーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン及びシリカ粒子等が挙げられる。
無機フィラーの使用量は、特に、限定されるものではないが、バインダー1質量部に対して0.1ないし1.5質量部の範囲であるのが好ましい。
塗膜層の形成は、上記で調製された下地塗料を基材に塗布し、例えば加熱したり、光や電子線を照射して乾燥・硬化することにより行われる。
基材への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、オフセット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター、スプレー等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。
乾燥条件も特に限定されず、室温、又は加熱条件下で行うことができる。
加熱を行う場合の温度は、基材のTgより低い温度で行うことが好ましい。
厚さが10nm未満であるとめっきが析出し難くなり、厚さが10μmを超えると、密着性が得られ難くなる。
本発明の基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス等が挙げられる。
また、基材の形状は特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状が挙げられる。
他にも、基材として、例えば、射出成形などにより樹脂を成形した樹脂成形品が挙げられる。そして、この樹脂成形品に本発明のめっき物を設けることにより、例えば、自動車向けの装飾めっき品を作成することができたり、或いは、ポリイミド樹脂からなるフィルム上に本発明のめっき物を全面もしくはパターン状で設けることにより、例えば、電気回路品を作成することができる。
本発明に使用する基材としては、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、液晶ポリマー(LCP)樹脂フィルムが好ましい。
即ち、塗膜層が形成された基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、塗膜層中のポリピロール微粒子は、結果的に、導電性のポリピロール微粒子となる。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
得られためっき物は、使用した基材のTgより低い温度範囲において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましい。
脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液、またはアカリ性溶液に、導電性ポリピロール微粒子とバインダーを含む塗膜層を設けた基材を浸漬処理する方法が挙げられ、操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で浸漬処理するのが好ましい。
特に、導電性ポリピロール微粒子とバインダーを含む塗膜層は薄くできるため、緩和な条件下で短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。
例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。
上記のようにして脱ドープ処理された、塗膜層が形成された基材を無電解めっき法によりめっき物とするが、該無電解めっき法は、上記と同様の操作により行うことができる。
なお、上記めっき物は、形成された無電解めっき膜上に、電解めっきにより、同一又は異なる金属を更にめっきすることもできる。
また、金属めっき膜は、基材の両面に形成されてもよい。
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P (花王 (株) 製)1.5mmol、トルエン 10mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌し、乳化液を得た。
次に、得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行なった。
反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した導電性ポリピロール微粒子を得た。
次に、導電性のポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量875〜975)を5質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製し、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量1200〜1400)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量3000〜5000)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量7500〜8500)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを2質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを10質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを20質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを60質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量230〜270)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量450〜500)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを0.5質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを1質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量2400〜3300)を用い、かつ、導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーを70質量部混合し、最終固形分が約20%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてメラミン系樹脂(DIC(株)製のアミディアJ−820)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
バインダーとしてポリエステル系樹脂(東洋紡(株)製のバイロン200)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、下地塗料を得た。
実施例1ないし9、ならびに比較例1ないし7で得られた各下地塗料を、ポリイミドフィルムとして、東レ・デュポン株式会社製のカプトン 200H(登録商標:カプトン)高接着グレードを用い、該フィルム上にバーコーターにより塗布し、180℃で30分間加熱し、乾燥・硬化させて、塗膜層を得た。
次に、塗膜層が形成されたフィルムを、1M水酸化ナトリウム水溶液に35℃で5分間浸漬後、イオン交換水で水洗した。
次に、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液に35℃で5分間浸漬後、イオン交換水で水洗した。
次に,無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW (奥野製薬工業 (株) 製) に浸漬して、35℃で10分間浸漬し、銅めっき (膜厚0.3μm) を施してめっき物を得た。
上記で製造した実施例1ないし9、比較例1ないし7のめっき物について、めっき析出性、180度ピール強度(初期、150℃×168時間後、270℃×30分後)、膨れの評価試験を行い、その結果を表1に纏めた。
なお、評価項目や評価方法・基準などは以下の通りである。
○:塗膜層全体にめっき膜が析出した。
×:塗膜層の一部にめっき未析出部分があった。
上記で製造した実施例1ないし9、比較例2、3、4、6、7のめっき物に対して、硫酸銅めっき浴により電解めっきをおこない、30μmまで厚付けした。
その後、JIS C6471に準拠して、初期、150℃×168時間(7日間)大気条件で熱処理後、270℃のオーブンで30分間熱処理後、それぞれで180度ピール強度[N/mm]を測定した。
判定は、日本電子回路工業会規格 JPCA−BM03におけるスパッタめっき法での銅張積層基板の規格が0.35N/mm以上であることから、0.35N/mm以上を○とし、それ未満を×とした。
上記で製造した実施例1ないし9、比較例2、3、4、6、7のめっき物に対して、270℃のオーブンで2分間熱処理後、めっき物の膨れ有無を目視にて評価した。
Claims (2)
- 基材上に無電解めっき法により金属めっき膜を形成するための下地塗料であって、
下地塗料は、ポリピロール微粒子と、バインダーとを含み、
バインダーは、エポキシ当量が875〜9200のエポキシ樹脂であり、
ポリピロール微粒子とバインダーとの質量比は、ポリピロール微粒子:バインダー=1:2ないし1:60の範囲であることを特徴とする下地塗料。 - 前記請求項1記載の下地塗料を、基材上に塗布することにより塗膜層が形成され、
該塗膜層上に金属めっき膜が無電解めっき法により形成されためっき物の製造方法。
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