JP5811834B2 - 光学フィルム又は光学シート、偏光子保護フィルム及び偏光板 - Google Patents

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本発明は、光学フィルムの形成に使用される活性エネルギー線硬化型組成物、当該組成物を硬化して得られる光学フィルム又はシート、及びこれを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板に関し、これら技術分野に属する。
尚、下記においては、便宜上、特に断りがない場合は、「光学フィルム又はシート」を「光学フィルム」と記載する。又、「アクリレート又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリレート」と、「面内方向の位相差又は厚み方向の位相差」を「位相差」と表す。
近年、液晶ディスプレイの大型化に伴い、偏光子保護フィルムや液晶を光学補償する位相差フィルム等の光学フィルムの大型化も必要となっている。
しかしながら、光学フィルムを大型化した場合、外力の偏りが発生し易くなることや、光学フィルムの材質によっては、その外力により画面上に複屈折の分布が生じてコントラストが不均一なる問題が知られている。
応力による複屈折の発生し易さは、光弾性係数によって表されるが、偏光子保護フィルムとして一般的に用いられているトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という)フィルムは、光弾性係数が大きく、偏光子収縮に伴う応力複屈折の発生により、光漏れ・白抜けが起こる。
又、TACフィルムは、面内方向の位相差(正面方向の入射光に対する位相差)は小さいが、厚み方向の位相差が大きい。かかる位相差は、液晶ディスプレイの大型化が進むにしたがって、顕著に視野角特性に影響を及ぼすようになっている。
そこで、光弾性係数が低く且つ面内、厚み方向の位相差が低い材料が求められている。
特許文献1には、正の光弾性を有するセルロースエステル樹脂に対して、負の光弾性を有するアクリル樹脂をブレンドすることで光弾性を低減する内容が開示されているが、面内及び厚み方向の位相差が大きく、低光弾性係数と低位相差が両立できていない。
又、吸水率が高いセルロースをベースにしているため、耐湿熱性が充分でなく、当該フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温又は高湿下において使用すると、偏光板が変形する欠点や偏光度や色相等の偏光板の性能が低下する欠点がある。
特許文献2には、セルロースエステル樹脂に対して、ポリビニルピロリドンをブレンドすることで低光弾性係数と低位相差を両立しているが、セルロースエステル樹脂とポリビニルピロリドンの組み合わせであるため、特許文献1記載の組成物よりも耐湿熱性が悪化する問題がある。
特許文献3には、特定のウレタン(メタ)アクリレートからなる光学フィルムの光弾性係数が開示されているが、光弾性係数の絶対値はTAC(13×10-12Pa-1)並みと大きく、充分満足できるものではなかった。又、面内方向の位相差が大きく、低光弾性係数と低位相差が両立できていない。
特再WO09−81607号公報 特開2008−111056号公報 特開2011−145330号公報
前記したとおり従来からのTACに代わる偏光子保護フィルムの材料として検討されている光学フィルムは、低光弾性係数と低位相差が両立できていないか、両立できたとしても耐湿熱性が充分でなく、当該フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温又は高湿下において使用すると、偏光板が変形する欠点や、偏光度や色相等の偏光板性能が低下するという欠点があった。
本発明は、低光弾性係数と低位相差が両立でき、耐湿熱性が良好な光学フィルム形成用活性エネルギー線硬化型組成物、当該組成物から得られた光学フィルム、偏光子保護フィルム及び偏光板を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ホモポリマーの降伏強度又は破断強度が50MPa以上のウレタン(メタ)アクリレート及びホモポリマーのTgが0℃以上でのエチレン性不飽和結合を有する化合物からなる組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の組成物は、特定のウレタン(メタ)アクリレートと特定のエチレン性不飽和基を有する化合物を併用して、硬化物の光弾性係数が−10×10-12以上10×10-12Pa-1以下とすることで、外力による複屈折変化が発生し難い。又、厚さが40μmの硬化物の正面及び斜め40°の面内方向の位相差及び厚み方向の位相差が−5以上5nm以下とすることで、視野角特性が良好となる。
従って、本発明の活性エネルギー線硬化光学フィルムは、偏光子保護フィルム用途に好適に使用することができ、視野角特性に優れ、光漏れや白抜けのない液晶ディスプレイを得ることができる。
図1は、本発明の組成物を使用した光学フィルムの製造の1例を示す。 図2は、本発明の組成物を使用した光学フィルムの製造の1例を示す。
本発明は、下記の組成物の活性エネルギー線硬化物が、フィルム状又はシート状に形成されてなり、
23℃における光弾性係数が−10×10-12以上10×10-12Pa-1以下かつ、
厚さが40μmの正面及び斜め40°の面内方向の位相差並びに厚さ方向の位相差の全てが−5以上5nm以下である
光学フィルム又は光学シートに関する。

◆ホモポリマーの降伏強度又は破断強度が50MPa以上のウレタン(メタ)アクリレートであって、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールから選ばれる少なくともひとつのジオール(以下、「ジオールa」という)、炭素数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオール(以下、「ジオールb」という)、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、ジオールa及びジオールbをそれぞれ6.1〜20モル%及び80〜93.9モル%の割合で反応させて得られた2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)〔以下、単に「(A)成分」という〕及び
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有するエチレン性不飽和基を有する化合物で(A)成分以外の化合物であって、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を必須成分として含む(B)〔以下、単に「(B)成分」という〕を含有し、
(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、(A)成分30〜90重量%及び(B)成分70〜10重量%で含む
光学フィルム又は光学シート形成用活性エネルギー線硬化型組成物。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書では、組成物に活性エネルギー線照射して得られる架橋物及び硬化物を、まとめて「硬化物」と表す。
1.(A)成分
(A)成分は、ホモポリマーの降伏強度又は破断強度が50MPa以上のウレタン(メタ)アクリレートであって2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
ホモポリマーの降伏強度又は破断強度が50MPaに満たない化合物は、組成物の硬化物が変形し易くなってしまい、組成物の硬化物を偏光子保護フィルムとして使用した場合、偏光子(ポリビニルアルコール)の変形に耐えることができなくなってしまう。又、ホモポリマーの前記強度が50MPaに満たない化合物は、組成物の硬化物の光弾性係数が高いものとなってしまい、光学フィルムとして、特に偏光子保護フィルムとして使用できなくなってしまう。ホモポリマーの降伏強度又は破断強度の上限としては、好ましくは300MPaである。
尚、本発明において、降伏強度及び破断強度とは、JIS C 2318に従い引張試験(23℃、引張速度:100mm/分)を行った際における降伏点の強度であり、破断強度とは、同試験でサンプルが破断した際の強度を意味する。
(A)成分としては、ホモポリマーの引張弾性率(JIS K 7161)が1GPa以上であるウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。
(A)成分としては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物等が挙げられる。
(A)成分は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
(A)成分としては、芳香族基を有しないウレタン(メタ)アクリレートが、低光弾性係数となるため好ましい。芳香族基を有しないウレタン(メタ)アクリレートは、原料のポリオール及び有機ポリイソシアネートとして、芳香族基を有しない化合物を使用することにより製造することができる。
(A)成分の重量平均分子量としては、1,000〜15,000のものが好ましく、より好ましくは1,000〜10,000である。
尚、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
(A)成分は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
以下、(A)成分の原料化合物である、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、並びに(A)成分の製造方法について説明する。
1-1.ポリオール
ポリオールとしては、ジオールが好ましく、さらにポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、炭素数2〜12の脂肪族ジオール及び炭素数2〜12の脂環族ジオールがより好ましい。
ポリカーボネートジオールとしては、低分子量ジオール又は/及びポリエーテルジオールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
ここで、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びにポリエチレンポリプロポキシブロックポリマージオール等のブロック又はランダムポリマーのジオール等が挙げられる。
ポリエステルジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及び前記ポリエーテルジオールと、アジピン酸、コハク酸、テトラヒドルフタル酸及びヘキサヒドロフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレンポリプロポキシブロックポリマージオール等のブロック又はランダムポリマーのジオール等が挙げられる。
炭素数2〜12の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール及び2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。
炭素数2〜12の脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(通称;トリシクロデカンジメタノール)、1,4−デカヒドロナフタレンジオール、1,5−デカヒドロナフタレンジオール、1,6−デカヒドロナフタレンジオール、2,6−デカヒドロナフタレンジオール、2,7−デカヒドロナフタレンジオール、デカヒドロナフタレンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルナンジメタノール、デカリンジメタノール、アダマンタンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(通称;スピログリコール)、イイソソルビド、イソマンニド、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(通称;水添ビスフェノールA)、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルメタン(通称;水添ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1,1−ジシクロヘキシルメタン(通称;水添ビスフェノールZ)及び4,4−ビシクロヘキサノール等の脂環族ジオール等が挙げられる。
ポリオールとしては、硬化物の機械強度を向上させるため、ジオール以外にもトリオールを併用することが好ましい。
トリオールとしては、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、カシリトール、ピロガロール、グリセリン及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられ、これらトリオールのε−カプロラクトン、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の付加物等が挙げられる。
トリオールのカプロラクトン付加物としては、トリメチロールプロパンのカプロラクトン付加物、グリセリンのカプロラクトン付加物が好ましい。当該トリオールのカプロラクトン付加物としては、平均水酸基価300〜600mgKOH/g、平均水酸基数3の化合物が好ましい。
上記トリオールのカカプロラクトン付加物は市販品されており、例えばプラクセル303、305、308、312、L320ML(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
これらのポリオールは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
1-2.有機ポリイソシアネート
有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましく、無黄変型有機ジイソシアネートがより好ましい。
無黄変型有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート及びω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
これらの有機ポリイソシアネートは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
前記した化合物の中でも、硬化物の機械強度と光学特性に優れるという点で、IPDIが好ましい。
1-3.ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記した化合物の中でも、組成物の硬化性と硬化物の柔軟性に優れるという点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
1-4.(A)成分の製造方法
(A)成分は、常法に従い製造されたもので良い。
(A)成分としては、ポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有化合物を製造し、これとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物(以下、「化合物A1」という)、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを同時に反応させた化合物(以下、「化合物A2」という)等が挙げられ、分子量を制御しやすいという理由で化合物A1が好ましい。
化合物A1を製造する場合は、ジブチルスズジラウレート等のウレタン化触媒存在下、使用するポリオール及び有機ポリイソシアネートを加熱攪拌し付加反応させ、さらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱攪拌し付加反応させる方法等が挙げられ、化合物A2を製造する場合は、前記と同様の触媒の存在下に、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを同時に添加して加熱攪拌する方法等が挙げられる。
1-5.好ましい(A)成分
本発明において、(A)成分としては、前記したものの中でも、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール(以下、これらをまとめて「ジオールa」という)、炭素数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオール(以下、これらをまとめて「ジオールb」という)、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、当該化合物を必須とする
当該(A)成分は、他のウレタン(メタ)アクリレートと比較して、ポリオールとしてジオールa、短鎖ジオールとしてジオールb、有機ジイソシアネートとして無黄変型を使用することにより、機械強度に優れ、耐光性試験後の黄変度が小さいものとなり、さらに組成物の硬化物の光弾性係数が低いものとすることができる。
ジオールaとしては、前記したポリカーボネートジオール及びポリエステルジオールが挙げられ、ジオールbとしては、前記した炭素数2〜12の脂肪族ジオール及び炭素数2〜12脂環族ジオールが挙げられる。
これらのジオールa及びbは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
ジオールa及びbの割合、ジオールa:6.120モル%及びジオールb:8096.9モルある。
さらに、トリオールを併用する場合には、トリオールの割合としては、ジオールa及びbの合計:50〜95モル%及びトリオール:5〜50モル%好ましく、より好ましくはジオールa及びbの合計:60〜95モル%及びトリオール:5〜40モル%である。
当該(A)成分としては、前記と同様に、ジオールa及びジオールbと無黄変型有機ジイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有化合物を製造し、これとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物(化合物A1)、ジオールa及びジオールb、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを同時に反応させた化合物(化合物A2)等が挙げられ、分子量を制御しやすいという理由で化合物A1が好ましい。
2.(B)成分
(B)成分は、ホモポリマーのTgが0℃以上を有するエチレン性不飽和基を有する化合物であって(A)成分以外の化合物であって、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を必須成分として含むものである。
尚、本発明においてTgとは、1Hzにおいて測定した硬化物の動的粘弾性スペクトルの損失正接(tanδ)の主ピークが最大となる温度を意味する。
(B)成分において、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
(B)成分としては、エチレン性不飽和基を有し、ホモポリマーのTgが0℃以上である化合物であれば種々の化合物が使用でき、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という)、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「多官能(メタ)アクリレート」という)、(メタ)アクリルアミド系化合物、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、アリル化合物及びビニル化合物類が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体及びビスフェノールFジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体等のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート;
ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
前記ポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;並びにイソシアヌル酸アルキレンオキサイドのジ又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系化合物としては、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド及びN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
フマル酸エステルとしては、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジイソプロピルフマレート及びジブチルフマレート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジイソプロピルマレート及びジブチルマレート等が挙げられる。
アリル化合物としては、ジアリルフタレート及びイソシアヌル酸トリアリルが挙げられる。
ビニル化合物としては、N−ビニルピロリドン、4−ビニルシクロへキセン、酢酸ビニル及びジビニルベンゼン等が挙げられる。
(B)成分としては、前記した化合物の中でも、第3級及び第4級炭素原子を有する化合物は低光弾性係数となるため好ましい。
ここで、第3級炭素原子とは、水素原子が1つと水素原子以外の原子が3つ結合した炭素原子を、第4級炭素原子とは、水素原子以外の原子が4つ結合した炭素原子を意味する。
当該化合物の具体例としては、単官能(メタ)アクリレートとしては、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチルメタクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体等のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;前記ポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;並びにイソシアヌル酸アルキレンオキサイドのジ又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系化合物としては、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
フマル酸エステルとしては、ジイソプロピルフマレート及びジブチルフマレート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、ジイソプロピルマレートが挙げられる。
ビニル化合物としては、4−ビニルシクロへキセンが挙げられる。
さらにこれらの中でも、特に、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:41℃。メタクリレートのホモポリマーのTg:107℃。以下、括弧書は同様を意味する。)、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:81℃)及びイソボルニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:94℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:180℃。)は、機械特性が良好な点や熱処理後の着色が少ない点でより好ましい。
又、(B)成分としては、前記した化合物の中でも、脂肪族環状骨格を有する化合物又はヘテロ原子を含む飽和環状骨格を有する化合物が低光弾性係数となるため好ましい。
当該化合物の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂肪族環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレート;ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート及び前記ポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等の脂肪族環状骨格を有する多官能(メタ)アクリレート;2−プロピオン酸(5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルエステル及び2−メチル−2−プロピオン酸(5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルエステル等の酸素原子を含む飽和環状骨格有する含む単官能(メタ)アクリレート:並びに(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子を含む飽和環状骨格有する含む単官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらにこれらの中でも、特に、2−プロピオン酸(5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルエステル(ホモポリマーのTg:10℃)、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:81℃)、イソボルニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:94℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:180℃。)及び(メタ)アクリロイルモルホリン(アクリレートのホモポリマーのTg:145℃。)は、機械特性が良好な点でより好ましい。
3.その他成分
本発明の組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を必須とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
具体的には、(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和化合物〔以下、(C)成分という〕、光重合開始剤〔以下、(D)成分という〕、有機溶剤〔以下、(E)成分という〕、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤等を挙げることができる。
以下これらの成分について説明する。
●(C)成分
(C)成分は、(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和化合物である。
(C)成分は、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で必要に応じて配合する成分である。
(C)成分の具体例としては、(A)、(B)成分以外のエチレン性不飽和化合物で、主に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。
(C)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても2種以上を併用しても良い。
(C)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、得られる硬化物の降伏強度及び破断強度を低下させない量であれば良いが、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して1〜100重量%が好ましく、より好ましくは1〜80重量%である。
●(D)成分
(D)成分は、光重合開始剤である。
(D)成分は、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いた場合に配合する成分である。
(D)成分としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4-(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチルー1−プロパンー1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシー2−メチルー1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシー1−[4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチルプロパンー1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノー2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、アデカオプトマーN−1414((株)ADEKA製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することもできる。
(D)成分の配合割合としては、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、前記(C)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
(D)成分の配合割合を0.01重量%以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10重量%以下とすることで、硬化物を耐侯性や透明性に優れたものとすることができる。
●(E)成分
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、(E)成分の有機溶剤を含むものが好ましい。
(E)成分の具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル及びビス(2−ブトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
(E)成分としては、前記した化合物の1種又は2種以上用いることができる。
(E)成分としては、別途添加しても良く、又、ウレタン(メタ)アクリレート製造で使用する有機溶剤を分離することなくそのまま使用しても良い。
(E)成分の割合としては、組成物の粘度や使用目的等を考慮し、適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に10〜90重量%が好ましく、より好ましくは40〜80重量%である。
●重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することが、本発明の組成物の保存安定性を向上させことができ、好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、前記(C)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、0.001〜3重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
●耐光性向上剤
本発明の組成物には、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐光性向上剤を添加しても良い。
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、4、4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2、2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
光安定性剤としては、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
耐光性向上剤の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、前記(C)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、0〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜1重量%である。
4.光学フィルム形成用活性エネルギー線硬化型組成物
本発明は、前記(A)成分及び(B)成分を必須成分として含む光学フィルム形成用活性エネルギー線硬化型組成物である。
組成物の製造方法としては、常法に従えばよく、(A)成分及び(B)成分を使用し、必要に応じてその他の成分をさらに使用し、これらを攪拌・混合して得ることができる。
本発明の組成物は、硬化物の23℃における光弾性係数が−10×10-12以上10×10-12Pa-1以下である必要がある。光弾性係数が10×10-12Pa-1を超える又は−10×10-12Pa-1未満の場合、外力による複屈折が生じ易くなり、その硬化物を偏光子保護フィルムとして使用した場合、光漏れや白抜けが生じてしまう。
発明において光弾性係数とは、外力による複屈折の発生し易さを表す係数で、光弾性係数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の発生が少ないことを意味する。
具体的には、光弾性係数(C)は、σを伸張応力、△nを応力付加時の複屈折としたとき、下式で定義される値である。
C[Pa-1]=△n/σ
ここで、△nは、n1を伸張方向と平行な方向の屈折率、n2を伸張方向と垂直な方向の屈折率としたとき、下式で定義される。
△n=n1−n2
尚、本発明における光弾性係数は、温度23℃で測定した値を意味する。
本発明の組成物は、厚さが40μmの硬化物の正面及び斜め40°の面内方向の位相差並びに厚さ方向の位相差の全てが−5以上5nm以下である必要がある。これにより、偏光子保護フィルムとして用いた場合、視野角特性に優れた液晶ディスプレイを得ることができる。硬化物の位相差が−5未満及び5nmより大きいものは、視野角特性が劣るという問題がある。
さらに、厚さが40μmの硬化物の面内方向の位相差が−1以上1nm以下で、斜め40°の面内方向の位相差が−5以上5nm以下で、厚さ方向の位相差が−5以上5nm以下であるものが好ましい。
本発明において面内方向の位相差(Re)及び厚み方向の位相差(Rth)とは、フィルム面内の主屈折率をnx、ny(但し、nx≧ny)、厚さ方向の屈折率をnz、フィルム厚さをdとしたとき、下式で定義される値である。
Re =(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz)}×d
さらに、本発明において、斜め40°の面内方向の位相差とは、光学フィルムに対して斜め40°で直線偏光を入射したときの面内方向の位相差を意味する。
(A)成分及び(B)成分の割合A)成分及び(B)成分の合計量を基準として(A)成分30〜90重量%及び(B)成分70〜10重量%でありましくは(A)成分50〜80重量%及び(B)成分50〜20重量%である。
(A)成分の割合を30重量%以上にすることで、得られる硬化物の機械物性は良好になり、他方90重量%以下にすることで、低光弾性係数と低位相差を両立することができる。
5.使用方法
本発明の組成物は、光学フィルム形成の目的に応じて種々の方法を採用することができる。
具体的には、基材に組成物を塗工し活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後さらに活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、凹部を有する型枠に組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法等が挙げられる。
基材としては、剥離可能な基材及び離型性を有しない基材(以下、「非離型性基材」という)のいずれも使用することができる。
剥離可能な基材としては、離型処理されたフィルム及び剥離性を有する表面未処理フィルム(以下、まとめて「離型材」という)等が挙げられる。
離型材としては、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理シクロオレフィンポリマーフィルム及び表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)等が挙げられる。
本発明の組成物の硬化物のヘイズを1.0%以下に抑えるためには、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムや表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)を使用することが好ましい。
本願発明の組成物から得られる光学フィルムに対して、高い透明性及び表面平滑性を付与するためには、剥離可能な基材として表面粗さRaが150nm以下の基材を使用することが好ましい。
当該基材の具体例としては、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムや表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)等が挙げられる。
尚、本発明において表面粗さRaとは、フィルムの表面の凹凸を測定し、平均の粗さを計算したものを意味する。
非離型性基材としては、前記以外の各種プラスチックが挙げられ、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコート、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
活性エネルギー線としては、電子線、紫外線及び可視光線等が挙げられる。これらの中でも、光重合開始剤を必ずしも配合する必要がなく硬化物の耐熱性や耐光性に優れるという点で、電子線がより好ましい。
活性エネルギー線照射における、線量や照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
6.光学フィルム
本発明の組成物は、光学フィルムの製造に好ましく使用できる。
以下、光学フィルムについて説明する。
尚、以下においては、図1〜図2に基づき一部説明する。
6−1.光学フィルムの製造方法
光学フィルムの製造方法としては常法に従えば良く、例えば、組成物を基材に塗布した後、活性エネルギー線を照射して製造することができる。
図1は、離型材/硬化物から構成される光学フィルムの好ましい製造方法の一例を示す。
図1において、(1)は離型材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図1:F1)は、組成物を離型材〔図1:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図1:F2)は、組成物を離型材〔図1:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図1:1−1)。
離型材に組成物層(2)が形成されてなるシートに対して活性エネルギー線を照射することで、離型材/硬化物から構成される光学フィルムが得られる。活性エネルギー線の照射は、通常、組成物層側から照射するが、離型材側からも照射できる。
上記において、基材(1)として離型材を使用すれば、離型材/硬化物から構成される光学フィルムを製造することができる。
本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤等を乾燥した後の膜厚が5〜200μmとなるよう塗工するのが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。
組成物が有機溶剤等を含む場合は、塗布後に乾燥させ、有機溶剤等を蒸発させる。
乾燥条件は、使用する有機溶剤等に応じて適宜設定すれば良く、40〜150℃の温度に加熱する方法等が挙げられる。
活性エネルギー線照射における、線量や照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
図2は、離型材/硬化物/離型材から構成される光学フィルムの好ましい製造方法の一例を示す。
図2において、(1)、(3)、(4)は離型材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図2:F1)は、組成物を離型材〔図2:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図2:F2)は、組成物を離型材〔図2:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図2:2−1)。組成物層(2)には離型材(3)をラミネートした後活性エネルギー線照射したり、活性エネルギー線照射した後に離型材(4)をラミネートすることで、離型材、硬化物及び離型材が、この順に形成されてなる光学フィルムが得られる。
上記図1及び2では基材として離型材を使用した例を記載したが、非離型性基材を使用して、光学フィルムを製造することもできる。
例えば、図1において、(1)の離型材に代え非離型性基材を使用し、前記と同様に活性エネルギー線照射して硬化させ、非離型性基材/硬化物から構成される光学フィルムを製造することもできる。
又、図2において、(1)、(3)及び(4)のいずれかの離型材として、非離型性基材を使用し、前記と同様の方法で活性エネルギー線照射して硬化させ、離型材/硬化物/非離型性基材から構成される光学フィルムや、非離型性基材/硬化物/非離型性基材から構成される光学フィルムを製造することもできる。
当該実施態様の具体例としては、非離型性基材として偏光子を使用し、組成物を塗工して活性エネルギー線を照射し、偏光子に保護膜を直接形成させる方法等が挙げられる。
又、前記の例では、組成物を基材に塗工して光学フィルムを製造する例を挙げたが、膜厚が大きい光学フィルムを製造する場合は、特定の凹部を有する型枠等に組成物を流し込み、前記と同様にして活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させ光学フィルムを製造することもできる。
6−2.光学フィルムの用途
本発明の組成物から形成される光学フィルムは、種々の光学用途に使用できるものであり、より具体的には、液晶表示装置等に使用される偏光板の偏光子保護フィルム、プリズムシート用支持フィルム及び導光フィルム等が挙げられる。
以下、本発明の組成物から形成される偏光子保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」という)を使用した偏光板について説明する。
●偏光板
偏光板は、偏光子の少なくとも片面に保護フィルムが積層された構成である。
偏光子としては、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するものであれば種々の材料が使用できる。
例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光フィルム、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性の染料を吸着・配向させた染料系偏光フィルム、二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光子等が挙げられる。これら、ヨウ素系偏光フィルム、染料系偏光フィルム及び塗布型偏光子は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収する機能を有するもので、吸収型偏光子と呼ばれている。これらの偏光子の中でも、視認性に優れている吸収型偏光子を用いるのが好ましい。吸収型偏光子の厚みは、5〜40μmが好ましい。
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に、保護フィルムとして本発明の光学フィルムが積層された偏光板であって、接着剤により接着される。
偏光子と保護フィルムとの接着に用いる接着剤は、それぞれの接着性を考慮して任意のものを用いることができる。
接着剤としては、具体的には、ポリビニルアルコール系水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤及び無溶剤系接着剤等が挙げられ、無溶剤系の活性エネルギー線硬化型接着剤を好適に用いることができる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、光カチオン硬化型接着剤、光ラジカル硬化型接着剤、及び光カチオン硬化と光ラジカル硬化を併用するハイブリッド型接着剤が挙げられる。
光カチオン硬化型接着剤としては、エポキシ化合物及びオキセタン化合物等の光カチオン硬化性化合物、並びに光カチオン重合開始剤を含む接着剤等が挙げられる。
光ラジカル硬化型接着剤としては、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニル化合物等の光ラジカル硬化性化合物、並びに光ラジカル重合開始剤を含む接着剤等が挙げられる。
ハイブリッド型接着剤としては、前記した光カチオン硬化性化合物、光ラジカル硬化性化合物、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤を含む接着剤等が挙げられる。
偏光子の両面に保護フィルムを有する場合、本発明の保護フィルムを両面に有するものが最も好ましい。但し、必要に応じて本発明の保護フィルムを片面に使用し、もう片面には本願発明の保護フィルム以外の保護フィルム(以下、「その他保護フィルム」という)を使用することもできる。
その他保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。又、これらをディスプレイ側の保護フィルムとして使用する場合には位相差を有するフィルムであっても良い。
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
○製造例1〔(A)成分の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、室温でイソシアネートとしてIPDI:145.9g、触媒としてジブチルスズジラウレート:0.07gを仕込み、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、これらを攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
アルコール溶液としてポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製デュラノールT−5651、数平均分子量1,000):43.0g、1,4−ブタンジオール:33.5g及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」という):65.0gの混合溶液を内温が75℃以下となるように滴下した後、内温80℃で2時間反応させた。
その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、「HEA」という):57.6g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、「BHT」という):0.28g、MEK:5.0g及びジブチルスズジラウレート:0.07gの混合溶液を内温が75℃以下となるように滴下した後3時間反応させ、赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT−IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認し、ウレタンアクリレート(以下、「UA−1」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
UA−1のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwという)を、GPC(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:Waters製HSPgel HR MB−L)により測定した結果、2,300であった。
UA−1のホモポリマーの破断強度を下記方法に従い測定した。
*UA−1の硬化物作製方法:
東レ(株)製フィルム「ルミラー50−T60」(表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ50μm、以下「ルミラー」という)にUA−1をアプリケーターで塗工し、80℃で10分間乾燥させた(膜厚40μm)。その後、(株)NHVコーポレーション製の電子線照射装置を用いて(硬化条件:加速電圧200kV、線量50kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度300ppm以下)、電子線硬化フィルムを得た。
*引張試験方法:
インストロンジャパン製の引張試験機(インストロン5564)を用いて、JIS C 2318に従い23℃における破断強度を測定した(引張速度:100mm/分)。
このUA−1フィルムの破断強度は、58MPaであった。
○製造例2〔(A)成分の製造〕
製造例1において、イソシアネートとしてIPDI:127.8g、アルコール溶液としてデュラノールT5651:37.6g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(オクセア社製TCDDM):64.1g及びMEK:65.0gの混合溶液、HEA:50.5gとした以外は同様の操作を行い、ウレタンアクリレート(以下、「UA−2」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
得られたUA−2のMwを製造例1と同様の方法で測定した結果、2,300であり、UA−2のホモポリマーの破断強度を製造例1と同様の方法で測定した結果、70MPaであった。
○製造例3〔(A)成分の製造〕
製造例1において、イソシアネートとしてIPDI:151.4g、アルコール溶液としてポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業(株)製)プラクセル303、数平均分子量300):18.3g、デュラノールT5651:20.4g、1,4−ブタンジオール:28.2g及びMEK:65.0gの混合溶液、HEA:61.6gとした以外は同様の操作を行い、ウレタンアクリレート(以下、「UA−3」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
得られたUA−3のMwを製造例1と同様の方法で測定した結果、2,400であり、UA−3のホモポリマーの破断強度を製造例1と同様の方法で測定した結果、80MPaであった。
○製造例4〔(A)成分の製造〕
製造例1において、イソシアネートとしてIPDI:148.8g、アルコール溶液としてポリエステルジオール(DIC(株)製Exp4358、アジピン酸とエチレングリコールのエステル化物、数平均分子量500):42.1g、1,4−ブタンジオール:30.4g及びMEK:65.0gの混合溶液、HEA:58.7gとした以外は同様の操作を行い、ウレタンアクリレート(以下、「UA−4」という)を含むMEK溶液(固形分80%)を得た。
得られたUA−4のMwを製造例1と同様の方法で測定した結果、1,900であり、UA−4のホモポリマーの破断強度を製造例1と同様の方法で測定した結果、74MPaであった。
○製造例5〔(A)成分以外のウレタンアクリレートの製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、室温でイソシアネートとしてIPDI:196.0g、触媒としてジブチルスズジラウレート:0.035gを仕込み、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、これらを攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
アルコールとしてデュラノールT5651:49.5gを内温が75℃以下となるように滴下した後、内温80℃で2時間反応させた。
その後、HEA:104.5g及びBHT:0.09gを内温が75℃以下となるように滴下した後3時間反応させ、ウレタンアクリレート(以下、「UA−5」という)を得た。
得られたUA−5のMwを製造例1と同様の方法で測定した結果、4,400であり、UA−5のホモポリマーの破断強度を製造例1と同様の方法で測定した結果、19MPaであった。
○製造例6〔偏光子の製造〕
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴で膨潤させた後、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸及び2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに55℃の4重量%のホウ酸及び3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで一軸延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、70℃のオーブンで1分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子(以下、偏光子Pという)を得た。
得られた偏光子Pについて、偏光プリズム付き分光光度計((株)島津製作所製UV−2200)を用いて偏光度及び単体透過率を測定したところ、それぞれ99.99%及び43.1%であった。
○製造例7〔紫外線硬化型接着剤の製造〕
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製jER807)50部、テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製THF−A)20部、4−ヒドロキシルブチルアクリレート(日本化成(株)製4−HBA)30部、光重合開始剤(以下、「光開始剤」という)のヨードニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオルフォスフェート(BASFジャパン(株)製IRGACURE250)4部、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製カヤキュアDETX−s)1部をステンレス製容器に投入し、マグネチックスターラーで均一になるまで撹拌し、紫外線硬化型接着剤(以下、接着剤UVXという)を得た。
(1)実施例(組成物の製造)
製造例1〜同5で得られたウレタンアクリレート溶液及び後記表1に示す成分を表1に示す割合でステンレス製容器に投入し、加温しながらマグネチックスターラーで均一になるまで撹拌し、組成物を得た。
尚、表1中の(E)成分は、ウレタンアクリレート溶液を使用して得られる組成物において、ウレタンアクリレート溶液を由来とする有機溶剤の組成物中の割合を意味する。
Figure 0005811834
Figure 0005811834
表1における略号は、下記を意味する。
・TB:t−ブチルメタクリレート、共栄社化学(株)製ライトエステルTB、ホモポリマーのTg=107℃
・MMA:メチルメタクリレート、共栄社化学(株)製ライトエステルM、ホモポリマーのTg=105℃
・IBXA:イソボルニルアクリレート、共栄社化学(株)製IBXA、ホモポリマーのTg=94℃
・CD420:3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、サートマー製CD420、ホモポリマーのTg=81℃
・SR531:2−プロピオン酸(5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルエステル(下記式で表される化合物)。サートマー製SR531、ホモポリマーのTg=10℃
Figure 0005811834
・ACMO:アクリロイルモルフォリン、興人(株)製ACMO、ホモポリマーのTg=145℃
・POA:フェノキシエチルアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレート、PO−A、ホモポリマーのTg=―22℃
・Dc1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、BASFジャパン(株)製DAROCUR−1173
(2)実施例12〜20及び比較例8〜13(電子線硬化による光学フィルムの製造)
幅300mm×長さ300mmのルミラーに、実施例1〜11及び比較例1〜6で得られた組成物を、80℃で10分乾燥した後の膜厚が40μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、(株)NHVコーポレーション製の電子線照射装置により、加速電圧200kV、線量50kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度300ppm以下の条件下で電子線照射を行い、光学フィルムを得た。
硬化後、ルミラーから剥離し、後記する光弾性係数、面内及び厚さ方向レタデーションの評価に用いた。
(3)実施例21〜22及び比較例14(紫外線硬化による光学フィルムの製造)
幅300mm×長さ300mmのルミラーに、実施例10、11及び比較例7で得られた紫外線硬化型組成物を、80℃で10分乾燥した後の膜厚が40μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、幅300mm×長さ300mmのルミラーをラミネートした後、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ12cm、365nmの照射強度400mW/cm2(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値))によりコンベア速度を調整して、積算光量1,000mJ/cm2の紫外線照射を行い、紫外線硬化型光学フィルムを得た。
硬化後、ルミラーから剥離し、後記する評価に用いた。
〔光弾性係数〕
実施例及び比較例で得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用いて、室温で0N〜10Nの範囲で5点張力σを変えたときの面内位相差値をそれぞれ測定し、下記式に従って作製した近似直線の傾きから光弾性係数を求めた。結果を表2に示す。
△n=C・σ[式中、△nは応力複屈折、σは張力、Cは光弾性係数を表す。]
〔面内及び厚さ方向レタデーション〕
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、位相差測定器(王子計測機器(株)製KOBRA-21ADH)を用いて正面及び斜め40°の面内方向の位相差(以下、それぞれ「0°Re」及び「40°Re」という)及び厚さ方向の位相差(以下、「Rth」という)を測定した。それらの結果を表2に示す。
Figure 0005811834
実施例12〜22は、本発明の組成物である実施例1〜11から組成物から得られた光学フィルムであり、光弾性係数は、従来偏光子保護フィルムとして使用されているTACの光弾性係数の13×10-12Pa-1よりも小さく、光漏れや白抜の懸念のないものであった。又、面内及び厚さ方向位相差の双方が小さく、特に厚さ方向レタデーションは、TAC(40μm)のRthの30〜40nmよりも小さく、視野角特性に優れるものであった。
これに対して、比較例8〜11、13は、(B)成分を含まないため、光弾性係数又は厚さ方向の位相差が大きく、双方を同時に小さくすることはできなかった。又、比較例12及び14は、(B)成分を含むものの、UA−5のホモポリマーの破断強度は本発明の下限50MPaに満たないものであり、得られる光学フィルムの光弾性係数を充分に低減することはできなかった。
(6)実施例23〜24及び比較例15(偏光板の製造)
偏光子保護フィルムとして実施例14、16及び比較例12で得られた光学フィルムを用い、偏光子Pの両面に接着剤UVXを膜厚5μmで塗布して光学フィルムを介して貼り合わせた後、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ15cm、365nmの照射強度370mW/cm2(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値))によりコンベア速度を調整して、積算光量220mJ/cm2の紫外線照射を行い、偏光板(幅100mm×長さ100mm)を得た。
なお、いずれの偏光子保護フィルムに対してもコロナ処理は行わなかった。
〔偏光度及び単体透過率の測定〕
実施例及び比較例で得られた偏光板について、偏光プリズム付き分光光度計((株)島津製作所製UV−2200)を用いて偏光度及び単体透過率を測定した。それらの結果を表3に示す。
〔偏光子保護フィルムと偏光子の接着性〕
実施例及び比較例で得られた偏光板における、偏光子保護フィルムと偏光子Pの接着性を手でひねりを加えてねじ切ったときの状態を以下の基準で評価した。それらの結果を表3に示す。
○:偏光子と偏光子保護フィルムとが一体化して剥がれが生じない。
×:偏光子と偏光子保護フィルムとの間に剥がれが認められる。
〔偏光板の耐湿熱性〕
実施例及び比較例で得られた偏光板を、60℃90%RHの恒温恒湿槽に120時間放置した後のサンプルの変形の有無を以下の基準で目視評価した。それらの結果を表3に示す。
○:変形は見られない。
×:変形が見られた。
Figure 0005811834
実施例23及び24は、本発明の組成物である実施例14及び16で得られた光学フィルムを用いた偏光板であり、偏光子Pの性能が維持されており、接着性及び耐湿熱性が良好であった。
これに対して、比較例15は、比較例12で得られた光学フィルムを用いた偏光板であるが、偏光子Pの性能が維持されており、接着性は良好なものの、耐湿熱性が低下した。
本発明の光学フィルム形成用活性エネルギー線硬化型組成物は、光学フィルムの製造に好適に使用することができる。
さらに、本発明の光学フィルムは、前記で詳述した通り、偏光子保護フィルム用途において好適に使用される。

Claims (15)

  1. 下記の組成物の活性エネルギー線硬化物が、フィルム状又はシート状に形成されてなり、
    23℃における光弾性係数が−10×10-12以上10×10-12Pa-1以下かつ、
    厚さが40μmの正面及び斜め40°の面内方向の位相差並びに厚さ方向の位相差の全てが−5以上5nm以下である
    光学フィルム又は光学シート。

    ◆ホモポリマーの降伏強度又は破断強度が50MPa以上のウレタン(メタ)アクリレートであって、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールから選ばれる少なくともひとつのジオール(以下、「ジオールa」という)、炭素数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオール(以下、「ジオールb」という)、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、ジオールa及びジオールbをそれぞれ6.1〜20モル%及び80〜93.9モル%の割合で反応させて得られた2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)及び
    ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有するエチレン性不飽和基を有する化合物で(A)成分以外の化合物であって、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を必須成分として含む(B)を含有し、
    (A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、(A)成分30〜90重量%及び(B)成分70〜10重量%で含む
    光学フィルム又は光学シート形成用活性エネルギー線硬化型組成物。
  2. 前記(A)成分が、芳香族基を有しない化合物である請求項1記載の光学フィルム又は光学シー
  3. 前記(A)成分が、ポリオールとしてジオールa及びジオールbに加えさらにトリオールを含み、ジオールa及びジオールbの合計とトリオールの割合が、それぞれ50〜95モル%及び5〜50モル%の割合で反応させて得られたものである請求項1又は請求項2記載の光学フィルム又は光学シート。
  4. 前記(A)成分が重量平均分子量1,000〜15,000を有する化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シート。
  5. 前記(B)成分における、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が第3級及び第4級炭素原子を有する化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シート。
  6. 前記(B)成分が、脂肪族環状骨格を有する化合物又はヘテロ原子を含む飽和環状骨格を有する化合物である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シー
  7. 前記組成物の電子線硬化物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シー
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シートからなる偏光子保護フィルム。
  9. シート状基材に、下記組成物を塗布した後、塗工面側又はシート状基材側から活性エネルギー線を照射する
    23℃における光弾性係数が−10×10-12以上10×10-12Pa-1以下かつ、
    厚さが40μmの正面及び斜め40°の面内方向の位相差並びに厚さ方向の位相差の全てが−5以上5nm以下である
    光学フィルム又は光学シートの製造方法。

    ◆ホモポリマーの降伏強度又は破断強度が50MPa以上のウレタン(メタ)アクリレートであって、ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールから選ばれる少なくともひとつのジオール(以下、「ジオールa」という)、炭素数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオール(以下、「ジオールb」という)、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、ジオールa及びジオールbをそれぞれ6.1〜20モル%及び80〜93.0モル%の割合で反応させて得られた2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)及び
    ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有するエチレン性不飽和基を有する化合物で(A)成分以外の化合物であって、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を必須成分として含む(B)を含有し、
    (A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、(A)成分30〜90重量%及び(B)成分70〜10重量%で含む
    光学フィルム又は光学シート形成用活性エネルギー線硬化型組成物。
  10. 前記(A)成分が、芳香族基を有しない化合物である請求項9記載の光学フィルム又は光学シートの製造方法。
  11. 前記(A)成分が、ポリオールとしてジオールa及びジオールbに加えさらにトリオールを含み、ジオールa及びジオールbの合計とトリオールの割合が、それぞれ50〜95モル%及び5〜50モル%の割合で反応させてえられたものである請求項9又は請求項10記載の光学フィルム又は光学シートの製造方法。
  12. 前記(A)成分が重量平均分子量1,000〜15,000を有する化合物である請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シートの製造方法。
  13. 前記(B)成分における、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上を有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が第3級及び第4級炭素原子を有する化合物である請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シートの製造方法。
  14. シート状基材が剥離可能な基材である請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載の光学フィルム又は光学シートの製造方法。
  15. ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子の少なくとも片面に、請求項記載の偏光子保護フィルムが積層された偏光板であって、該偏光子が接着剤層を介して該偏光子保護フィルムに接着されてなる偏光板。
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