以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図3は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、第1実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの作像ユニット1Y,M,C,Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
4つの作像ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは、図4に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図3において、Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の作像ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
作像ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
作像ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
像担持体としての中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
プリンタ筺体の下部には、記録シートたる記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給紙路に向けて送り出す。送り出された記録シートPは、複数の給送ローラ対101によって鉛直方向下方から上方に向けて搬送された後、給紙路の末端付近に配設されたレジストローラ対102のレジストニップに挟み込まれる。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括2次転写され、記録シートPの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、心金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録シートPとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ38としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
定着装置90を通過した記録シートPは、切換爪104による搬送路切換点に至る。この切換爪104は、記録シートPの搬送路を、排出路と戻し路とで切り替えることができる。図示の状態では、記録シートPを排出路に向けて案内する。これにより、記録シートPは、排紙ローラ対103を経て機外へと排出される。
プリンタ筺体内において、鉛直方向における給紙カセット100と転写ユニット30との間には、スイッチバック部105aと再送部105bとを具備する反転再搬送装置105が配設されている。切換爪104が搬送路を排出路から戻し路に切り換えている状態では、定着装置90を通過した記録シートPが戻し路に進入する。そして、大きく湾曲している戻し路に沿って上下を反転せしめられながら、反転再搬送装置105のスイッチバック部105aに進入する。スイッチバック部105aは、自らの内部に記録シートPの全域を受け入れると、複数のスイッチバックローラ対の駆動を逆転させることで、記録シートPをスイッチバックさせる。これにより、記録シートPは後端を前方に向けた状態で、戻し路の湾曲に沿って上下反転しながら、スイッチバック部105aの真下に設けられた再送部105bに進入する。そして、再送部105bから再び給紙路に向けて送られる。その後、レジストローラ対102によるレジストニップと、2次転写ニップとを通過して、第二面にもトナー像が転写された後、定着装置90内でそのトナー像が定着せしめられる。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの作像ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
2次転写バイアス電源39は、先に図2に示した重畳バイアスからなる2次転写バイアスを出力する。本プリンタにおいて、2次転写バイアスは、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加される。電圧出力手段たる2次転写バイアス電源39は、転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段として機能している。2次転写裏面ローラの芯金に2次転写バイスが印加されると、2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、本プリンタのようにトナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。これにより、トナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ側36に静電移動させることが可能になる。
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。本プリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、本プリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラの芯金に印加し、且つニップ形成ローラの芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラの芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分とから構成される。
図5は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部200は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成され、各種の演算処理や、制御プログラムの実行を行うことができる。制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、LANポート210、パラレルポート211、USBポート212、転写ユニット30、画像処理部202、切換モータ215、給紙カセット100、反転再搬送装置105、作像ユニット1Y,M,C,K、操作表示部250、湿度センサ240などが接続されている。切換モータ215は、図1に示した切換爪(104)を駆動するためのものである。また、画像処理部202は、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてきた画像データを処理するものである。画像処理部202で処理された画像データは、書込制御部203に送られる。書込制御部203は、その画像データに基づいて、光書込ユニット80の駆動を制御して、各色感光体を光走査する。操作表示部250は、タッチパネルや入力キーなどを有しており、画像表示手段たるタッチパネルに画像を表示したり、タッチパネルや入力キーに対する入力操作を受け付けたりする。
ユーザーは、本プリンタに附属のプリンタドライバソフトをインストールしたパーソナルコンピュータで起動したプリンタドライバのダイアログボックスをマウスで操作することで、本プリンタにおける各種の設定を行うことができる。プリンタドライバで設定された各種のパラメータは、パーソナルコンピュータから有線回線を介して、本プリンタにおけるLANポート210、パラレルポート211、又はUSBポート212の何れかに入力される。そして、I/Oインターフェース201を介して制御部200に送られて、制御部200内のパラメータ設定値が変更される。各種のパラメータの1つとして、記録シートPの片面だけに画像を形成する片面プリント動作モードと、両面にそれぞれ画像を形成する両面プリント動作モードのうち、何れを実行するのかを示す動作モード情報が挙げられる。また、シート載置手段たる給紙カセット100内に載置された記録シートPについて、両面のうちの片面だけが凹凸に富んでいる片面凹凸シートとしてのエンボス紙であるか否かの情報も例示することができる。かかる構成においては、LANポート210、パラレルポート211、及びUSBポート212の組合せは、動作モード情報を取得する動作モード情報取得手段や、シート情報取得手段として機能している。
転写手段の一部を構成している制御部100は、パーソナルコンピュータから送られてきた紙種に関する情報がエンボス紙(片面凹凸シート)を示す内容のものであり、且つ、パーソナルコンピュータから送られてきた動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであるという条件を満たした場合には、エンボス紙の凹凸面に対して転写処理を施すときにおける2次転写バイアスと、非凹凸面に対して転写処理を施すときにおける2次転写バイアスとを異ならせるようにする制御信号を、転写ユニット30に送る。具体的には、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入したエンボス紙に対して2次転写処理を施すときには、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを2次転写バイアス電源39から出力させる制御信号を転写ユニット30に送る。これに対し、反転再搬送装置105によって反転再搬送されたエンボス紙に対して2次転写処理を施すときには、2次転写バイアスとして、直流電流だけからなるもの、あるいは、重畳電圧からなり且つ交流のピークツウピーク電圧Vppが凹凸部に対する2次転写のときよりも小さいもの、を2次転写バイアス電源39から出力させる制御信号を転写ユニット30に送る。
制御部100は、エンボス紙の両面に画像を形成する場合、2回の2次転写工程のうち、初めの2次転写工程のときに、2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを2次転写バイアス電源39から出力させる。これにより、エンボス紙の凹凸面にトナー像を2次転写するときには、凹凸面の転写に適した重畳電圧を2次転写裏面ローラ33にかけて、凹凸面の凹部に対して十分量のトナーを転移させることで、凹凸面における濃淡パターンの発生を抑えることができる。一方、2回目の2次転写工程のときには、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるもの、あるいは重畳電圧であってピークツウピーク電圧Vppがより小さいもの、を2次転写バイアス電源39から出力させる。これにより、エンボス紙の非凹凸面にトナー像を2次転写するときには、転写チリの原因となる交流成分を無くすか小さくすることで、非凹凸面における転写チリの発生を抑えることができる。
2次転写電源39はエンボス紙の凹凸面にトナー像を2次転写するときには、先に図2に示した重畳バイアスと同様の2次転写バイアスを出力する。2次転写バイアスは、上述した2次転写裏面ローラの芯金に印加される。電圧出力手段たる2次転写バイアス電源39は、転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段として機能している。2次転写裏面ローラの芯金に2次転写バイスが印加されると、2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、本実施形態のように、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写裏面ローラ側からニップ形成ローラ側に静電移動させることになる。
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分であり、且つ実施形態においては電位差の直流成分でもある。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分であり、且つ実施形態においては電位差の交流成分でもある。実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラの芯金に印加し、且つニップ形成ローラの芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラの芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分(Eoff)と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分(Epp)とから構成される。
同図に示すように、実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。2次転写裏面ローラ33に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。2次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録シートP上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録シートPに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、戻しピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。
そして、このプリント試験機を用いて、種々のテストプリントを実施した。各種のテストプリントにおいては、現像剤としては、平均粒径が6.8[μm]であるポリエステル系の粉砕法によるトナーと、平均粒径が55[μm]である表面に樹脂層を被覆した磁性キャリアとからなるものを使用した。
[第1テストプリント]
重畳バイアスからなる2次転写バイアスの直流電圧であるオフセット電圧Voffとして、−0.8[kV]を採用した。また、交流成分として、ピークツウピーク電圧Vppが2.5[kV]であるものを採用した。交流成分の周波数f[Hz]や、プロセス線速(中間転写ベルトや感光体の線速)については、適宜変更した。互いに異なる周波数fやプロセス線速の条件下で、普通紙からなる記録シートPにテスト用の黒ベタ画像を出力した。そして、出力された黒ベタ画像の質を、目視によって2段階で評価した。交流成分の周波数に同期する濃度ムラ(ピッチムラ)が視認されない場合を○、視認される場合を×とした。この結果を次の表1に示す。
表1に示すように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを400[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。また、プロセス線速vを141[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを200[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。プロセス線速vに応じて、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値が異なるのは、プロセス線速vに応じて、2次転写ニップ内でトナーに作用させる交番電界の回数が変化するからである。具体的には、以下、記録シートPを進入させていない状態における、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との直接当接による2次転写ニップのローラ表面移動方向の長さであるニップ幅をd[mm]と定義する。2次転写ニップ通過に要する時間であるニップ通過時間[s]は、「ニップ幅d/プロセス線速v」という式で表される。一方、周波数f[Hz]の条件下において、重畳バイアスの交流成分の周期[s]は、「1/周波数f」という式で表される。よって、ニップ通過時間においては、交流成分の1周期分の波形が、「d×f/v」回分だけ印加されることとなる。プリント試験機におけるニップ幅dは3[mm]である。表1に示したように、プロセス線速v=282[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×400/282)と計算することができる。これは、2次転写ニップ内において、約4.26回の交番電界をトナーに作用させることで、ピッチムラの発生を回避し得ることを示している。また、プロセス線速v=141[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は200[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×200/141)と計算することができる。400[Hz]のときと同じ値である。これらのことから、2次転写ニップ通過中に交番電界を約4回作用させることで、ピッチムラのない良好な画像を得ることができると言える。つまり、ピッチムラのない良好な画像を得るためには、「4<d×f/v」という条件が必要になるのである。
図6は、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周波数fと、プロセス線速vと、ピッチムラとの関係を示すグラフである。図示のように、周波数fをy軸、プロセス線速vをx軸とする2次元座標において、「f=(4/d)×v」という式で表される直線よりも下側の領域では、ピッチムラが生じてしまう。これに対し、同直線よりも上側の領域では、ピッチムラの発生を回避することができる。
[第2テストプリント]
記録シートPとして、普通紙の代わりに、株式会社NBSリコー社製のFC和紙タイプ さざ波(商品名)を使用した。和紙のような表面凹凸を具備する紙である。このような紙を用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを発生させ易くなる。縦70[mm]、横55[mm]の大きさの黒ベタ画像を、出力するテスト画像として採用した。そして、記録シートPに出力されたテスト画像について、凹部の濃度再現性、凸部(平滑部)の濃度再現性、及び放電に起因する白点の出現性の3項目を評価した。
凹部の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、表面凹凸の凹部内に対して十分量のトナーを進入させていることから、凹部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5として評価した。また、凹部内のごく僅かな領域を白く抜けた領域にしているか、あるいは、凹部の画像濃度が平滑部よりも僅かに低い状態になっている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4よりも、白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合を、ランク3として評価した。また、ランク3に比べ、さらに白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合をランク2として評価した。また、凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合や、さらに悪い場合をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
凸部(平滑部)の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、平滑部において十分な画像濃度を得られている場合をランク5とした。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる場合をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い場合をランク2とし、平滑部が全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い場合をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
2次転写バイアスによっては、2次転写ニップ内において、記録シートPの表面凹部と、中間転写ベルト31との間の微小空隙で放電が発生して、画像に白点を出現させることがある。放電に起因する白点の出現性については、次のようにして評価した。即ち、放電に起因するものと考えられる白点が認められない状態をランク5として評価した。また、白点が僅かに認められるものの、認められる数が少なく且つ大きさも小さいことから、ユーザーに提供する画質として問題ないレベルをランク4として評価した。また、ランク4に比べて白点が多く認められ、問題あるほど目立つ状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに白点が多く認められる場合をランク2として評価した。また、白点が画像全体に認められ、ランク2よりも更に悪い状態をランク1として評価した。なお、放電に起因する白点は点状に発生するのに対し、凹部の濃度が非常に薄い場合は凹部全体が白くなる。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
第2テストプリントについては、次のようにして行った。即ち、まず、2次転写ニップで交番電界を全く作用させない場合を基準として評価するために、2次転写バイアスとして、直流成分だけからなるものを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力して上記3項目を評価した。この結果を次の表2に示す。
表2に示すように、2次転写バイアスとして直流成分だけからなるものを採用した場合、直流電圧の増加に伴って凸部の画像濃度も増加していくが、凹部においては必要な画像濃度を得ることができない。直流電圧の値にかかわらず、凹部の濃度再現性はランク1である。また、直流電圧が増加するにつれて、放電に起因する白点の発生が目立ってくる。マイナス極性の直流電圧の絶対値を2[kV]よりも大きくすると、白点の出現性が許容レベルであるランク4を下回ってしまう。
次に、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力した。重畳バイアスの交流成分の周波数fについては、500[Hz]に固定した。また、プロセス線速vについては、282[mm/s]に固定した。また、直流成分の電圧であるオフセット電圧については、−0.6[kV]〜−2.0[kV]の範囲内で適宜変更した。また、交流成分のピークツウピーク電圧Vppについては、1.0[kV]〜9.0[kV]の範囲内で適宜変更した。このような条件で出力した黒ベタ画像の凹部濃度再現性を評価した結果を、次の表3に示す。
表3に示すように、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用すると、バイアス条件によっては、凹部濃度再現性のランクを4以上にし得ることがわかる。凹部濃度再現性については、交流成分のピークツウピーク電圧Vppを大きくするほど、ランクを向上させ、且つ、直流成分であるオフセット電圧Voff(の絶対値)を小さくするほど、ランクを向上させる傾向にある。
上記黒ベタ画像の凸部濃度再現性を評価した結果を、次の表4に示す。
オフセット電圧Voffの絶対値を大きくするほど、凸部(平滑部)の画像濃度を増加させる傾向にあることがわかる。オフセット電圧Voffの絶対値をある程度まで大きくすることで、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にすることができる。ここで注目すべき点は、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用した場合、直流成分だけからなるものを採用する場合に比べて(表2に比べて)、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にするオフセット電圧Voffの値(絶対値)を小さくすることができている点である。
上記黒ベタ画像の白点出現性を評価した結果を、次の表5に示す。
交流成分のピークツウピーク電圧Vppを小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。これに対し、オフセット電圧Voffの絶対値を小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。
図7は、第2テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフである。このグラフは、図示のように、y軸にオフセット電圧Voffの値をとるとともに、x軸にピークツウピーク電圧Vppの値をとった2次元座標上に作成されたものである。2次元座標上には、実線で示される直線L1、点線で示される直線L2、及び一点鎖線で示される直線L3、という3つの直線が描かれている。図示の2次元座標において、直線L1の線上の領域や、直線L1に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、凹部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凹部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L2の線上の領域や、直線L2に比べて同じy座標が小さくなる領域では、凸部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凸部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L3の線上の領域や、直線L3に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、白点出現性のランク許容レベルを下回る3以下という結果になった(放電に起因する白点が目立った)。このため、プロット点を×として示している。なお、直線L1よりも図中上側で且つ直線L2よりも図中下側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、凸部濃度再現性のランクが4を下回った。また、直線L1よりも図中上側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、白点出現性のランクが4を下回った。また、直線L2よりも図中下側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凸部濃度再現性が4を下回るとともに、白点出現ランクが4を下回った。
同図では、凹部濃度再現性、凸部濃度再現性、及び白点出現性という3つの項目について、全て許容レベルのランク4以上になった実験結果のみ、プロット点を丸で示している。3つの項目ではなく、凹部濃度再現性だけに着目すると、直線L1よりも図中下側の座標となるオフセット電圧Voff及びピークツウピーク電圧の組合せを採用すればよいことになる。直線L1は、「Vpp=−4×Voff」という式で表される。よって、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を満たす2次転写バイアスを採用することで、紙表面の凹部で十分な画像濃度を得て、凹凸にならった濃淡パターンを抑えることができる。
なお、プリンタ試験機においては、2次転写裏面ローラ33に対して2次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36を接地しているので、両ローラ間における電位差の時間平均値であるオフセット電圧Voffが、2次転写バイアスの直流成分と同じ値になる。しかし、ニップ形成ローラ36を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36に直流電圧を印加した場合、両ローラ間における電位差の時間平均値と、オフセット電圧Voffとは互いに異なる値になる。2次転写ニップ内において、中間転写ベルト31と記録シートPとの間のトナー粒子の移動には、2次転写バイアスの直流成分そのものではなく、両ローラ間における電位差の時間平均値が関わっている。よって、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件ではなく、「1/4×Vpp>|時間平均値|」という条件を具備させる必要がある。
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
なお、上記(2)や(5)の場合においては、「直流成分」は重畳バイアスの直流成分と直流バイアスとを合わせて重畳値を意味する。例えば、ニップ形成部材にVpp=8.0[kV]、直流成分Vdc=+0.5[kV]の重畳バイアスを印加し、裏面当接部材にVdc=−0.5[kV]の直流バイアスを印加する場合には、「直流成分」は、0.5[kV]と0.5[kV]とを合わせて+1.0[kV]となる。
[転写実験]
次に、本発明者らが行った転写実験について説明する。
本発明者らは、「1/4×Vpp>Voff」という条件にすることで、凹部で十分な画像濃度を得て紙面凹凸にならった濃淡パターンを従来よりも目立たなくすることができた原因を明らかにするために、特殊な転写実験装置を作製した。
図8は、その転写実験装置を示す概略構成図である。この転写実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録シート214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録用紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録用紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録用紙214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
トナーの挙動については、次のようにして撮影する。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録シート214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影する。
図8に示した転写実験装置と、実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録シートに転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、転写実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録シート214としては、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名) 260kg紙(四六版連量)を使用した。レザック66は、「さざ波」よりも紙表面の凹凸の度合いが大きい紙である。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。転写実験装置では、記録シートの裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録シートに転写し得る転写バイアスの極性が、実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを500[Hz]、オフセット電圧Voffを200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを400[V]から2600[V]まで200[V]単位で変化させていきながら、記録シート214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、ピークツウピーク電圧Vppを800[V]未満に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4未満になったが、Vppを800〜2200[V]の範囲に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4以上になった。転写試験装置でも、プリンタ試験機と同様に、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件で、凹部濃度再現性を許容レベルまで良好にすることができたのである。なお、ピークツウピーク電圧Vppを2400[V]に設定した条件では、凹部濃度再現性は許容レベルであるものの、許容レベルを超える白点が発生してしまった。
次に、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、オフセット電圧Voffを200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを1000[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件で、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録シート214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加する。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図9に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録シート216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図10に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録シート216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図11に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(転写実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録シートPの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
一方、オフセット電圧Voffを200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを800[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」を満足しない条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録シートPの凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録シートPの凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録シートPの凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。
以上のように、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備することで、図9〜図11に示したような現象を生起せしめて、記録シートPの凹部内に十分量のトナーを転移させ得ることがわかった。なお、図9〜図11に示したような現象を生起せしめるためには、転写ニップ内で最低でもトナー粒子を2往復させる必要がある。このため、ニップ通過時間については、交流成分の周期の2倍以上に設定する必要がある。望ましくは、既に述べたように、転写ニップ内で交番電界を4回以上作用させることが望ましい(f>(4/d)×v)。
[凹部深さ測定試験]
本発明者らは、互いに表面凹部の深さの異なる記録シートPを用いてプリントテストを行ったところ、「さざ波」のような、凹部の深さが比較的小さい記録シートであれば、転写バイアスに対して「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備させるだけで、凹部上で十分な画像濃度が得られることがわかった。しかし、凹部の深さが比較的大きい記録シートでは、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件だけでは、凹部内へのトナーの転移不足を引き起こすこともわかった。凹部の深さが大きくなるにつれて、交流成分のピークツウピーク電圧Vppに対するオフセット電圧Voffの割合を低くする必要があった。これは、凹部の深さが大きくなるにつれて戻しピーク値Vrを大きくしていく必要があるということを意味している。
そこで、凹部の深さと、凹部に十分量のトナーを転移させることが可能な最小限の戻しピーク値Vr(以下、適正Vr下限値という)との関係を調べることにしたが、その前に、各種の記録シートについて凹部深さを測定しておく必要がある。このため、まずは、各種の記録シートの凹部深さを測定した。
測定装置としては、東京精密社製の「SURFCOM 1400D」を用いた。測定点については、記録シート表面を顕微鏡で観察して、表面全域の中から、被検領域とする箇所をアトランダムに5つ選んだ。それぞれの箇所について、評価長さ20[mm]、基準長さ20[mm]という条件で、断面曲線の最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)を測定した。そして、得られた5つの最大断面高さPtのうち、上位3つの平均値を求めた。以上の作業を、同じ種類の3枚の記録シートについて行って、前記平均値の3枚の平均を、最大凹部深さDとして求めた。
記録シートとしては、特殊製紙株式会社製のレザック66の260kg紙、215kg、175kg紙、130kg紙、及び100kg紙(何れも連量)、並びに、(株)NBSリコー社製のFC和紙タイプ「さざ波」の6種類を用意した。これら6種類の記録シートについてそれぞれ、上述のようにして最大凹部深さDを測定した。
図12は、レザック66(260kg紙(連量))の表面の拡大撮影像を示すものである。図中点線で示す軌道に沿って断面高さの測定を行った。図示の軌道においては、図13に示すような断面曲線が得られた。このような断面曲線に基づいて6種類の記録シートについてそれぞれ最大凹部深さDを測定した結果を、図14に示す。
[第3テストプリント]
図14に示した6種類の記録シートについてそれぞれ、次のようにして適正Vr下限値を調べた。即ち、転写バイアスの戻しピーク値Vrを変化させながら、それぞれの戻しピーク値Vrの条件で黒ベタ画像を出力する。そして、それぞれの出力画像について、凹部濃度再現性を評価し、ランク4以上の結果が得られた戻しピーク値Vrだけを適正データとして抽出した。そして、得られた適正データのうち、最も低いものを、適正Vr下限値とした。6種類の記録シートについてそれぞれ求めた適正Vr下限値と、凹部最大深さとに基づいて、両者の関係が図15に示すような1次関数直線の関係であることを確かめた。
以上のテストプリントの結果から、2次転写バイアスにおけるオフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとについては、記録シートの種類毎に、記録シート表面の凸部や凹部でそれぞれ良好な画像濃度を得つつ、凹部での画像白抜けの発生を抑え得る値の組合せに設定しなければならないことがわかる。但し、適切な値の組合せは、転写ニップ圧や各種部材の電気抵抗値などの誤差に起因して、個々のプリンタ個体間でバラツキがある。従って、個々のプリンタ個体毎に、オフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧Vppについて様々な条件でテストプリントを実施して、それらの適切な値の組合せを調査することが望ましい。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
先に示した図5において、制御部200は、不揮発性メモリからなる図示しないデ記録用メモリーを有している。そして、この記録用メモリーの中には、各種のエンボス紙の情報や、各種のデータテーブルなどを記憶している。また、制御部200は、後述するバイアス決定処理を行うための制御プログラムを、ROM内に記憶している。
図16は、実施形態に係るプリンタの操作表示部250を示す拡大模式図である。操作表示部250は、タッチパネルからなるタッチ表示部251と、複数のキーからなるキー部252とを具備している。タッチ表示部251は、画像を表示したり、操作者によるタッチ操作を受け付けたりすることが可能である。また、キー部252は、複数のキーの1つとして、テスト印字キー253を有している。上述した制御部200は、非プリントジョブ時に、このテスト印字キー253が押されると、オフセット電圧Voffの適正値と、ピークツウピーク電圧Vppの適正値との組合せを決定するためのバイアス決定処理を開始する。
図17は、制御部200によって実施されるバイアス決定処理における各処理工程を示すフローチャートである。図示のようにバイアス決定処理では、モード問い合わせ処理(ステップ1:以下、ステップをSと記す)、シート種類問い合わせ処理(S2)、テスト時条件決定処理(S3)、第1パターン形成処理(S4)、第1良好画像問い合わせ処理(S5)、直流成分決定処理(S6)、第2パターン形成処理(S7)、第2良好画像問い合わせ処理(S8)、及び交流成分決定処理(S9)が順に実行される。
Y,M,C,Kの4色のうち、Kトナーだけを用いて形成されるモノクロ画像に対する単位面積あたりのトナー付着量は、2色以上のトナーを用いて形成されるカラー画像に対する単位面積あたりのトナー付着量よりも少なくなる。そして、トナー付着量が異なると、オフセット電圧Vppの適正値や、ピークツウピーク電圧Vppの適正値が異なってくる。このため、モノクロ画像を形成するモノクロモードと、カラー画像を形成するカラーモードとで、それぞれオフセット電圧Vppの適正値や、ピークツウピーク電圧Vppの適正値を個別に調査する必要がある。そこで、制御部200は、バイス決定処理を開始すると、まず、モード問い合わせ処理(S1)を実施する。このモード問い合わせ処理(S1)では、図18に示すように、これからテスト印字を行う旨の情報と、テスト印字についてモノクロモードとカラーモードとのうち、どちらで行うのかを問い合わせるための情報とを、タッチ表示部251に表示する。ユーザーは、タッチ表示部251に表示されたモノクロボタンとカラーボタンとのうち、何れか一方にタッチすることで、何れのモードで行うのかを本プリンタに対して指定する。
制御部200は、複数種類のエンボス紙にそれぞれ個別に対応する複数の直流成分データテーブルや交流成分データテーブルを上述した記録用メモリーにそれぞれ記憶している。直流成分データテーブルは、2次転写バイアスにおけるオフセット電圧Voffの14通りの値を一覧で記録しているものである。上述したように、同じ種類のエンボス紙であっても、その種類に対応するオフセット電圧Voffの適正値は、2次転写ニップの誤差などによって個々のプリンタ個体毎に誤差がある。但し、その誤差は、ある程度の範囲に限られてくる。例えば、種類Aであれば、−300[V]〜−150[V]の範囲に必ずオフセット電圧Voffの適正値が存在するといった具合である。そこで、個々の種類のエンボス紙についてそれぞれ、必ず適正値が存在するオフセット電圧範囲を予め調べておき、その範囲内における14通りのオフセット電圧Voffの値を一覧で記録したものが直流成分データテーブルである。また、交流成分データテーブルは、必ず適正値が存在するピークツウピーク電圧範囲を予め調べておき、その範囲内における14通りピークツウピーク電圧Vppの値を一覧で記録したものである。
ところで、エンボス紙の種類が同じであっても、エンボス紙の厚みが異なると、紙全体の電気抵抗値が異なってくることから、オフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧の適正値も異なってくる。また、例え同種且つ同厚のエンボス紙であっても、湿度が変化すると、エンボス紙の吸水量の変化に伴って電気抵抗が変化することから、オフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧の適正値も変化する。更には、例え同種且つ同厚で、しかも湿度が一定であっても、上述したように、モノクロ画像とカラー画像とでは、適正値が異なってくる。そこで、制御部200は、同じ種類のエンボス紙について、厚み及び湿度毎に、互いに14通りの値の異なる直流成分データテーブルや交流成分データテーブルを記憶している。例えば、レザック66という種類のエンボス紙であれば、連量100kg、130kg、175kg、215kg及び260kgの5通りの厚みと、高湿、中湿及び低湿の3通りの湿度と、モノクロ及びカラーの2通りのモードとの組合せに対応する30通り(5×3×2)の直流成分データテーブルや交流成分データテーブルを記録用メモリーに記憶している。
次に示す表6は、種類=レザック66で、厚み=連量260kgという条件を満たすエンボス紙が用いられる場合であって、且つ、湿度環境=中湿である場合に選択される直流成分データテーブルの一例を示すものである。また、表7は、同様の場合に選択される交流成分データテーブルの一例を示すものである。
また、次に示す表8は、種類=レザック66で、厚み=連量175kgという条件を満たすエンボス紙が用いられる場合であって、且つ、湿度環境=中湿である場合に選択される直流成分データテーブルの一例を示すものである。また、表9は、同様の場合に選択される交流成分データテーブルの一例を示すものである。
制御部200は、図18に示したモノクロボタン又はカラーボタンに対するタッチ操作によって動作モードが特定されると、次に、シート種類問い合わせ処理を実施する(S2)。このシート種類問い合わせ処理では、図19に示すシート種類選択用のプルダウンボックスを表示させる。そのプルダウンボックスに対するタッチ操作により、ユーザーはテスト印字に用いるエンボス紙の種類及び厚み(連量)を入力する。この入力により、エンボス紙の種類及び厚みが特定されると、制御部200は、テスト時条件決定処理(S3)を実施する。テスト時条件決定処理では、まず、湿度センサ240による湿度の検知結果に基づいて、現在の湿度環境について、高湿、中湿及び低湿のうち、何れに該当するのかを特定する。そして、記録用メモリーに記憶している直流成分データテーブルや交流成分データテーブルについて、それぞれ上述した30通りの中から、モード問い合わせ処理(S1)で特定した動作モードと、シート種類問い合わせ処理(S2)で特定したエンボス紙の種類及び厚みと、現在の湿度環境の特定結果との組合せに対応するものを特定する。このようにして特定したデータテーブルにおけるオフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧を、後述する第1テストパターン像や第2テストパターン像を形成する際の電圧条件として採用する。
このようにして電圧条件を決定した制御部200は、次に、第1パターン形成処理(S4)を実施する。この第1パタ−ン形成処理(S4)では、まず、図20に示すように、シート種類問い合わせ処理(S2)でユーザーによって指定された種類及び厚みのエンボス紙を、エンボス面(凹凸面)が下になる姿勢で給紙カセット(100)にセットするようにユーザーに促すメッセージを表示する。第1パターン形成処理においては、エンボス紙に対してその一方の面だけに第1テストパターン像を形成する。給紙カセット(100)に対し、エンボス面が下になる姿勢でエンボス紙がセットされることで、エンボス面に対して第1テストパターン像を形成することが可能になる。制御部200は、エンボス紙をセットしたユーザーによって確認/OKボタンがタッチされると、セットされたエンボス紙の1枚目に対して、第1テストパターン像を形成するためのプリントジョブ処理を実施する。これにより、15[mm]×150[mm]の大きさのテストトナー像を14個含む第1テストパターン像が1枚目のエンボス紙のエンボス面に形成される。14個のテストトナー像のうち、一番初めの1列目に形成されるテストトナー像は、テスト時条件決定処理(S3)で決定しておいた直流成分データテーブルの画像番号1に対応するオフセット電圧Voffの条件でエンボス面に2次転写される。また、2、3、4・・・14列目のテストトナー像は、画像番号2、3、4・・・14に対応するオフセット電圧Voffの条件でエンボス面に2次転写される。これら14個のテストトナー像を2次転写する際のピークツウピーク電圧Vppの値は、一定である。本プリンタでは、そのピークツウピークVppは、14通りのオフセット電圧Voffのうち、最も大きい画像番号14に対応するものにおいても「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備する値に設定される。つまり、例えば、表6に示した直流成分データテーブルが用いられる場合、ピークツウピーク電圧Vppの絶対値は、2280[V]の4倍である9120[V]よりも大きな値に設定される。
図21は、エンボス面に第1テストパターン像が形成されたエンボス紙の一例を示す模式図である。第1テストパターン像における14個のテストトナー像の横には、それぞれ、直流成分データテーブル中における何番目のオフセット電位Voffで形成されたのかを示す画像番号が印字される。つまり、同図において、14個のテストトナー像のうち、1番上に形成されたテストトナー像は、直流成分データテーブルにおける画像番号1のオフセット電圧Voffの条件で2次転写されたものである。同様にして、上から2、3、4・・・14番目のテストトナー像は、直流成分データテーブルにおける画像番号2、3、4・・・14のオフセット電圧Voffの条件で2次転写されたものである。14個のテストトナー像は、互いに識別をし易くするために、互いに主走査方向(図中で左右方向)の異なった位置に形成されるが、主走査方向のサイズは互いに同じ150[mm]である。
図22は、第1テストパターン像に含まれる14個のテストトナー像のうち、画像番号1、7、14の3つをそれぞれ一例として示す拡大模式図である。これら3つのテストトナー像において、白い画像抜けが発生している箇所は、エンボス紙のエンボス面の凹部に相当している。ユーザーは、それらテストトナー像の画像濃度を評価する。同図において、画像番号1のテストトナー像における凸部上の画像濃度は、画像番号6のテストトナー像における凸部上の画像濃度よりも、明らかに低くなっている。これは、画像番号1に対応するオフセット電圧Voffでは、ベルト上のトナーを凸部上に十分に転移させることができなかったためである。先に表6や表8に示したように、画像番号が大きくなるほど、オフセット電圧Voffの絶対値が大きくなるので、画像番号が1から1つずつ増えていくに従って、凸部上の画像濃度が高くなっていく。但し、画像番号がある程度大きくなると、それ以上番号が増加しても凸部上の画像濃度が高くならなくなる。その画像番号に対応するオフセット電圧Voffが、凸部上で十分な画像を得るための最小限の値であり、直流成分の適正値に相当する。これは次に説明する理由による。即ち、オフセット電圧Voffを大きくし過ぎると、エンボス面の凹部で十分な画像濃度を得るのに必要な戻しピーク値(例えば図2のVr)を確保するために交流成分もかなり大きな値にしなければならない。すると、送りピーク値(例えば図2のVt)を大きくし過ぎて白点状の画像抜けを引き起こしてしまう。よって、オフセット電圧Voffについては、2次転写ニップ内でベルトと紙面との間を往復移動しているトナーをベルト側からシート表面凸部に確実に移動させるのに必要な最小限の値に設定することが望ましいのである。
かかる最小限の値は、画像番号の増加とともに上昇する凸部上の画像濃度がちょうど飽和に達している画像番号に対応するオフセット電圧Voffの値である。このため、ちょうど飽和に達する画像番号をユーザーに問い合わせることで、前述の最小限の値を特定することが可能であるが、凸部だけに着目して画像濃度を判断するにはある程度の熟練を要するので、ユーザーには困難な場合がある。但し、凸部だけでなく、凹部も加味することで、ユーザーであっても前述の最小限の値を容易に特定することが可能である。その理由について詳述する。即ち、上述したように、2次転写バイアスにおける交流成分については、第1テストパターン像の14個のテストトナー像でそれぞれ同じ値にしている。このため、表6や表8に示したように画像番号の増加に伴ってオフセット電圧Voffを徐々に大きくしていくと、図2に示した送りピーク値Vtも画像番号の増加に従って徐々に大きくなっていく。エンボス面の凸部上における画像濃度がちょうど飽和に達する画像番号のあたりでは、送りピーク値Vtはそれほど大きくならないことから、凹部上において、放電に起因する白点状の画像抜けを殆ど発生しない。ところが、画像番号が更に増加して送りピーク値Vtが更に増加していくと、それに伴って白点状の画像抜けが徐々に増えていく。このため、同図における画像番号6のテストトナー像と画像番号14のテストトナー像との比較からわかるように、凸部上の画像濃度がほぼ同じであっても、画像番号の小さいテストトナー像の方が画像全体としての画像濃度は濃く見える。
図23は、テストトナー像の画像番号とID測定器による画像濃度の検知結果との関係を示すグラフである。ID測定器は、ある程度の面積の画像領域を被検対象とする。このため、エンボス紙のエンボス面では、被検対象となる画像領域の中に、どうしても凹部が含まれる。すると、図示のように、凸部上での画像濃度がちょうど飽和になる画像番号のテストトナー像において(図示の例では画像番号5)、画像濃度の測定結果が最も高くなる。このような結果が得られるのは、画像番号の増加に伴ってオフセット電圧Voffを大きくする一方で、ピークツウピーク電圧Vppについては一定にしているからである。
制御部200は、第1テストパターン像形成処理(S4)を実施して第1テストパターン像が形成されたエンボス紙をプリントアウトすると、次に、第1良好画像問い合わせ処理(S5)を実施する。この第1良好画像問い合わせ処理(S5)では、図24に示すように、第1テストパターン像における14個のテストトナー像のうち、画像濃度が最も高いテストトナー像の画像番号をユーザーに問い合わせるための画像を、タッチ表示部251に表示する。ユーザーは、この表示に従って、最も高い画像濃度が得られたテストトナー像の画像番号をキー操作によって入力する。制御部200は、オフセット電圧Voffの適正値を、その入力結果に対応する値として決定する(直流成分決定処理)。但し、適正値は、湿度によって変化するため、オフセット電圧Voffの値そのものではなく、画像番号を電圧値の代わりに記憶する。例えば、レザック66 175kg紙について、第1良好画像問い合わせ処理(S5)にてユーザーによって画像番号として「5」が入力されたら、オフセット電圧Voffの代わりに、画像番号「5」を、レザック66 175kg紙についての直流成分適正値として記録用メモリーに記憶する。このように画像番号を記憶することで、例えば、第1テストパターン像形成処理(S4)において中湿の湿度環境で第1テストパターン像が形成された後、湿度環境が高湿や低湿に変化したとしても、高湿や低湿に対応する直流成分データテーブルにおける画像番号5に対応するオフセット電圧を特定することで、高湿や低湿におけるオフセット電圧Voffの適正値を特定することが可能になる。
次に、制御部200は、第2パターン形成処理(S7)を実施する。第2パターン形成処理においては、15[mm]×150[mm]の大きさのテストトナー像を14個含む第2テストパターン像をエンボス紙のエンボス面に形成する。14個のテストトナー像のうち、一番初めの1列目に形成されるテストトナー像は、テスト時条件決定処理(S3)で決定された交流成分データテーブルの画像番号1に対応するピークツウピーク電圧Vppの条件でエンボス面に2次転写される。また、2、3、4・・・14列目のテストトナー像は、画像番号2、3、4・・・14に対応するピークツウピーク電圧Vppの条件でエンボス面に2次転写される。これら14個のテストトナー像を2次転写する際のオフセット電圧Voffの値は、何れも直流成分決定処理で決定された値(直流成分データテーブルのうち、ユーザーによって入力された画像場号に対応するVoff)に設定される。なお、ピークツウピーク電圧Vppの周波数fは何れも500[Hz]であり、波形は何れもサイン波である。また、14個のテストトナー像は、第1テストパターン像と同様に、互いに主走査方向の異なった位置に形成される。
図25は、第2テストパターン像に含まれる14個のテストトナー像のうち、画像番号1、7、14の3つをそれぞれ一例として示す拡大模式図である。先に表7や表9に示したように、第2テストパターン像においては、画像番号が大きくなるほど、ピークツウピーク電圧Vppの値を大きくする。オフセット電圧Voffは一定であるので、画像番号が大きくなるほど、図2に示した戻しピーク値Vrや送りピーク値Vtが大きくなる。図25に示した画像番号1のテストトナー像において、エンボス紙の凹部に対応する箇所が白くなっているのは、凹部内にトナーが転移しなかったことによるものである。つまり、凹部上において、著しい画像濃度不足が発生しているのである。かかる画像濃度不足が発生しているのは、戻しピーク値Vrの値が小さすぎることに起因して、凹部とベルトとの間でトナーを往復移動させることができていないためである。画像番号が1から1つずつ徐々に大きくなっていくと、それに伴って戻しピーク値Vrが大きくなっていくことから、凹部上における画像濃度が徐々に増加していく。そして、やがて画像番号7のテストトナー像のように、凹部上において十分な画像濃度が得られて、凸部と凹部とでそれぞれ黒ベタ状の画像部が得られるようになる。但し、画像番号が更に増加していくと、やがて送りピーク値が過剰に大きくなっていくことから、凹部上において白点状の画像抜けが発生し始める。画像番号14のテストトナー像において、凹部上の画像が白く抜けているのは、凹部上において白点状の画像抜けが無数に発生しているからである。
図26は、第2テストパターン像におけるテストトナー像の画像番号とID測定器による画像濃度の検知結果との関係を示すグラフである。ID測定器の被検対象となる領域に含まれる凹部において、画像濃度不足や画像抜けが発生していると、発生していないものに比べて画像濃度の測定結果が低くなる。このため、画像濃度の測定結果を最も高くするテストトナー像のピークツウピーク電圧Vppが、画像濃度不足や画像抜けを最も有効に抑え得る適正値となる。このような結果が得られるのは、画像番号の増加に伴ってピークツウピーク電圧Vpp大きくする一方で、オフセット電圧Voffについては適切値で一定にしているからである。
制御部200は、第2テストパターン像形成処理(S7)を実施して第2テストパターン像が形成されたエンボス紙をプリントアウトすると、次に、第2良好画像問い合わせ処理(S8)を実施する。この第2良好画像問い合わせ処理では、図27に示すように、第1テストパターン像における14個のテストトナー像のうち、画質が最も良好(画像濃度が最も高い)テストトナー像の画像番号をユーザーに問い合わせるための画像を、タッチ表示部251に表示する。ユーザーは、この表示に従って、画質の最も良いテストトナー像の画像番号をキー操作によって入力する。制御部200は、ピークツウピーク電圧Vppの適正値を、その入力結果に対応する値として決定する(交流成分決定処理)。但し、適正値は、湿度によって変化するため、ピークツウピーク電圧Vppの値そのものではなく、画像番号を電圧値の代わりに記憶する。例えば、レザック66 175kg紙について、第1良好画像問い合わせ処理(S5)にてユーザーによって画像番号として「7」が入力されたら、ピークツウピーク電圧Vppの代わりに、画像番号「7」を、レザック66 175kg紙についての直流成分適正値として記録用メモリーに記憶する。このように画像番号を記憶することで、例えば、第2テストパターン像形成処理(S7)において中湿の湿度環境で第2テストパターン像が形成された後、湿度環境が高湿や低湿に変化したとしても、高湿や低湿に対応する直流成分データテーブルにおける画像番号7に対応するピークツウピーク電圧Vppを特定することで、高湿や低湿におけるピークツウピーク電圧Vppの適正値を特定することが可能になる。
制御部200は、最後に、図28に示すように、画質の最適化が終了した旨のメッセージをタッチ表示部251に表示した後、一連のバイアス決定処理を終了する。
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、ユーザーに対して問い合わせ情報を通知する通知手段たる操作表示部250を設けている。そして、操作表示部250を用いた問い合わせ情報の通知により、第1パターン形成処理で形成した第1テストパターン像における14個のテストトナー像のうち、エンボス紙のエンボス面の凹凸における凸部で最も良好な画像濃度が得られているものについてどれであるのかを問い合わせる第1良好画像問い合わせ処理(S5)を、第1パターン形成処理(S4)と直流成分決定処理(S6)との間で実施し、且つ、問い合わせ情報の通知により、第2パターン形成処理(S7)で形成した第2テストパターン像における14個のテストトナー像のうち、エンボス面の凹凸における凹部で最も良好な画像濃度が得られているものについてどれであるのかを問い合わせる第2良好画像問い合わせ処理(S8)を、第2パターン形成処理(S7)と交流成分決定処理(S9)との間で実施するように、制御手段たる制御部200を構成している。かかる構成においては、テストトナー像の画像濃度を自動測定するための画像濃度測定器を設けることなく、画像濃度をユーザーの評価結果によって取得することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、問い合わせ情報の通知により、第1テストパターン像形成処理(S4)や第2テストパターン像形成処理(S7)で使用するエンボス紙の種類をユーザーに問い合わせるシート種類問い合わせ処理(S2)と、シート種類問い合わせ処理による問い合わせに応じてユーザーによって入力された情報に基づいて、第1テストパターン像における14個のテストトナー像にそれぞれ個別に対応する14通りのオフセット電圧Voffの値(直流成分データテーブル)を決定するテスト時条件決定処理(S3)とを、第1パターン形成処理(S4)に先立って実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、エンボス紙の凹部深さに適した範囲で、第1テストパターン像における14通りのオフセット電圧Voffを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、テスト時条件決定処理(S3)にて、シート種類問い合わせ処理(S2)による問い合わせに応じてユーザーによって入力された情報に基づいて、第2テストパターン像における14個のテストトナー像にそれぞれ個別に対応する14通りのピークツウピーク電圧Vppの値(交流成分データテーブル)を決定する処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成においては、エンボス紙の凹部深さに適した範囲で、第2テストパターン像における14通りのピークツウピーク電圧Vppを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、問い合わせ情報の通知により、第1テストパターン像形成処理(S4)や第2テストパターン像形成処理(S7)で使用するエンボス紙の厚みに関する情報である連量情報をユーザーに問い合わせる厚み問い合わせ処理を含むシート処理問い合わせ処理(S2)と、厚み問い合わせ処理による問い合わせに応じてユーザーによって入力された情報に基づいて、第1テストパターン像における14個のテストトナー像にそれぞれ個別に対応する14通りのオフセット電圧Voffの値(直流成分データテーブル)を決定するテスト時条件決定処理(S3)とを、第1パターン形成処理(S4)に先立って実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、エンボス紙の厚みに適した範囲で、第1テストパターン像における14通りのオフセット電圧Voffを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、テスト時条件決定処理(S3)にて、厚み問い合わせ処理による問い合わせに応じてユーザーによって入力された情報に基づいて、第2テストパターン像における14個のテストトナー像にそれぞれ個別に対応する14通りのピークツウピーク電圧Vppの値(交流成分データテーブル)を決定する処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、エンボス紙の厚みに適した範囲で、第2テストパターン像における14通りのピークツウピーク電圧Vppを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、湿度を検知する湿度検知手段たる湿度センサ240を設けている。そして、湿度センサ240による検知結果に基づいて、第1テストパターン像における14個のテストトナー像にそれぞれ個別に対応する14通りのオフセット電圧Voffの値(直流成分データテーブル)を決定するテスト時条件決定処理(S3)を、第1パターン形成処理(S4)に先立って実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、湿度環境に適した範囲で、第1テストパターン像における14通りのオフセット電圧Voffを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、テスト時条件決定処理(S3)にて、湿度センサ240による検知結果に基づいて、第2テストパターン像における14個のテストトナー像にそれぞれ個別に対応する14通りのピークツウピーク電圧Vppの値を決定する処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、湿度環境に適した範囲で、第2テストパターン像における14通りのピークツウピーク電圧Vppを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、1色のトナーだけを用いた単色トナー像であるモノクロ画像の他に、互いに色の異なる単色トナー像の重ね合わせによる合成色トナー像であるカラー画像を形成するように各色の作像ユニット等からなる像形成手段を構成している。そして、モノクロ画像とカラー画像とについてそれぞれ、第1パターン形成処理、直流成分決定処理、第2パターン形成処理、及び交流成分決定処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、画像に対するトナー付着量に適した範囲で、第1テストパターン像における14通りのオフセット電圧Voffや、第2テストパターン像における14通りのピークツウピーク電圧Vppを設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第1テストパターン像形成処理(S4)にて、第1テストパターン像における14個のテストトナー像をそれぞれ、オフセット電圧Voffの絶対値をピークツウピーク電圧Vppの1/4よりも小さくした電位差条件でエンボス紙に転写する処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、既に述べたように、第1テストパターン像の14個のテストトナー像として、オフセット電圧Voffが適正であれば、それぞれエンボス紙のエンボス面における凹部で十分な画像濃度(画像抜けによる画像濃度不足を除く)が得られるものを形成することができる。
なお、第1テストパターン像における複数のテストトナー像の画像濃度や、第2テストパターン像における複数のテストトナー像の画像濃度を検知する画像濃度検知手段を設け、画像濃度を自動で測定するようにしてもよい。かかる画像濃度検知手段として、スキャナを例示することができる。この場合、第1テストパターン像や第2テストパターン像を形成したエンボス紙からなるプリントアウト紙を、スキャナにセットしてそれらテストパターン像を読み取らせる操作をすべきメッセージを表示する。このメッセージに従ってユーザーが読取操作を実施することで、テストトナー像の画像濃度を測定して、ユーザーの画像濃度評価の手間を省くことができる。よって、画像濃度の測定結果に基づいて、第1テストトナー像における複数のテストトナー像のうち、エンボス面の凸部で最も良好な画像濃度が得られているものについてどれであるのかを特定する第1良好画像特定処理を、第1良好画像問い合わせ処理の代わりに実施するようにする。また、画像濃度の測定結果に基づいて、第2テストトナー像における複数のテストトナー像のうち、エンボス面の凹部上で最も良好な画像濃度が得られているものについてどれであるのかを特定する第2良好画像特定処理を、第2良好画像問い合わせ処理の代わりに実施するようにする。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第1テストパターン像形成処理、第2テストパターン像形成処理、及びプリントジョブ時にてそれぞれ、ピークツウピーク電圧Vppの周波数f[Hz]と、2次転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、中間転写ベルト31の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備させる。かかる構成では、既に説明したように、ピッチムラの発生を回避することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、像担持ベルトたる中間転写ベルト31として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上であるものを用いている。かかる構成においては、エンボス紙における高画質とベルトの高耐久性とを両立することができる。具体的には、ポリイミドベルトのような引っ張り弾性率の比較的高いベルトは、高い耐久性を発揮する一方で、紙表面に対する凹凸追従性が低いことから、優れた2次転写性を発揮することが困難であった。これに対し、本プリンタにおいては、凹凸面に対する2次転写性を向上させていることから、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である中間転写ベルト31を用いても、高画質を実現することが可能であるため、高画質とベルトの高耐久性とを両立することができる。
これまで、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との当接によって2次転写ニップを形成する例について説明したが、中間転写ベルト31と、無端状のニップ形成ベルトとの当接によって2次転写ニップを形成してもよい。この場合、中間転写ベルト31のループ内側に配設された2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ベルトのループ内側でニップ形成ベルトを中間転写ベルト31に向けて押圧する押圧部材たる押圧ローラの芯金との間に、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備し、且つ押圧ローラの芯金の電位を2次転写裏面ローラ33の芯金の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくした電位差を発生させればよい。
また、像担持体である中間転写ベルト31とニップ形成部材であるニップ形成ローラ36との当接による2次転写ニップにおいて、本発明を適用した例について説明したが、次のような転写ニップにおいて、本発明を適用することも可能である。即ち、像担持体たる無端ベルト状の感光体の裏面に裏面当接部材を当接させて、無端ベルト状の感光体をニップ形成部材に向けて押圧して、感光体とニップ形成部材とを当接させることで形成し、且つ、記録材を通紙して感光体上のトナー像を記録材へと転写する転写ニップである。
また、交流成分として、サイン波からなるものを採用した例について説明したが、三角波や矩形波のものを採用してもよい。矩形波を採用する場合には、図29に示すように、ディーティが50[%]でないもの(立ち上がり時間と立ち下がり時間とが半分ずつでないもの)を採用してもよい。