JP5809185B2 - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶液製膜方法に関する。
ポリマーフィルムは、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の各種光学用途のフィルムとして多く用いられており、近年は薄膜化の要請が強い。このような光学用途のポリマーフィルムの代表的なものとしてはセルロースアシレートフィルムがある。光学用途とされるセルロースアシレートフィルムは、主に、溶液製膜方法により製造される。長尺のセルロースアシレートフィルムを製造する溶液製膜方法では、周知のように、セルロースアシレートを溶媒に溶解したセルロースアシレート溶液(以下、ドープと称する)を、走行する流延支持体へ、流延ダイから連続的に流出する。これにより流延支持体上に形成された流延膜を、流延支持体からフィルムとして剥ぎ取り、乾燥することによりセルロースアシレートフィルムが得られる。
ドープには、通常、いわゆるマット剤としての微粒子が含まれている。マット剤は、フィルムの耐傷性や滑り性を高め、ロール状に巻き取った際のフィルム同士の貼り付きを防止するためのものである。そこで、単層構造のフィルムを製造する場合にはそのフィルムを形成するドープに、複層構造のフィルムを製造する場合にはフィルム面となる外側の層を形成するドープに、マット剤を含ませてある。マット剤として利用される微粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)の微粒子が一般的である。
シリカの微粒子を含むドープを使用した場合には、シリカが凝集し、フィルムに入り込んだ凝集物が光を散乱したり反射することがある。そこで、このようなシリカの凝集を抑制するために、例えば、セルロースアシレートと添加剤と溶媒と表面が疎水化処理されたシリカとを含み、シリカの疎水化度がメタノールウェッタビリティ(MW)値で20%以下であるドープが提案されている(特許文献1参照)。
さらに、シリカを含むにも関わらずヘイズを低く抑え、液晶表示装置に組み込んだ際のコントラストを高くするために、有機化合物から構成される層と、シリカを含有し分子量1000以下の有機化合物の含有量がシリカの含有量の30質量%以下である層とを備え、シリカのMWが0≦MW≦80を満たす光学フィルムが提案されている(特許文献2参照)。また、シリカを含むにも関わらず、ヘイズと黒輝度とを低くするために、ドープに含ませるシリカとしてMWの範囲が80<MW≦100であるシリカを用いること、さらに、シリカについて5μm以上の粗大粒子が存在しないドープを用いることが提案されている(特許文献3参照)。
特開2006−070240号公報 特開2007−017626号公報 特開2006−265382号公報
フィルムの薄膜化に伴い、マット剤としての十分な機能を発現させるにはシリカの量を従来よりも多くする必要がある。ところが、シリカの量を多くすると、得られるフィルムのフィルム面には、フィルムの長手方向に延びたすじ状の傷が確認されるようになる。このすじ状の傷は、特許文献1〜3に記載されるシリカやドープを用いても、シリカの量を多くすると発生してしまう。
そこで、本発明は、フィルムの長手方向に延びた傷がシリカの使用によってフィルム面に発生することを防止する溶液製膜方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、厚みが10μm以上60μm以下の範囲内であるフィルムを製造する溶液製膜方法において、疎水基により表面が少なくとも0.012の表面被覆率で被覆されたシリカの微粒子を含み、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を、連続走行する支持体上へ流延ダイから連続的に流出することにより支持体上へ流延膜を形成するステップと、流延膜を支持体から剥がして乾燥してフィルムとするステップとを有し、上記疎水基の少なくとも一部がトリメチルシリル基であり、疎水基の一部がトリメチルシリル基である場合の他の疎水基はジメチルシリル基であることを特徴として構成されている。
ポリマーはセルロースアシレートである場合に、本発明は特に効果がある。
本発明によると、シリカを使用してもフィルムの長手方向に延びた傷がフィルム面に発生することが防止される。
フィルムの断面図である。 トリメチルシリル基による微粒子の表面被覆を説明する説明図である。 ジメチルシラノール基による微粒子の表面被覆を説明する説明図である。 溶液製膜設備の概略図である。
本発明の実施形態で得られるフィルムを、図1を参照して説明する。図1に示すフィルム10は、フィルム本体12と、フィルム本体12の両面に配される表層13とを備える。フィルム本体12と表層13との境界は観察されるものではないが、図1では、説明の便宜上これらの境界を図示している。
フィルム本体12はセルロースアシレートと添加剤とから構成される。1対の表層13は互いに同じ成分から構成され、具体的にはいずれの表層13もセルロースアシレートと微粒子14と添加剤とから構成され、その比率も互いに同じである。添加剤は、可塑剤、紫外線吸収剤、フィルム10のレタデーションを制御するレタデーション制御剤等である。微粒子14は、フィルム10の耐傷性や滑り性を高めたり、フィルム10同士の貼り付きを防止するいわゆるマット剤として機能する。微粒子14はフィルム面10aから突出して設けられており、これによりフィルム面aに一定の粗さをもたせ、微小な凹凸を形成する。この凹凸によりフィルム10同士が重なっても互いに貼り付かず、フィルム10同士の滑りが確保され、一定の耐傷性が発現する。微粒子14は、疎水基で表面が被覆され、二次粒子の態様をとっているシリカ(二酸化ケイ素,SiO)である。微粒子14の詳細については、他の図面を用いて後述する。
フィルム本体12のセルロースアシレートはTACであり、表層13のセルロースアシレートはTACとしてある。ただし、フィルム本体12と表層13との各セルロースアシレートはこれらに限定されない。例えば、フィルム本体12のセルロースアシレートをDAC、表層13のセルロースアシレートをTACとしてもよい。また、本実施形態では、フィルム本体12と表層13との各ポリマー成分をいずれもセルロースアシレートとしているが、溶液製膜方法によりフィルムとすることができるポリマーであればよい。他のポリマーとしては、例えば、環状ポリオレフィン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等がある。
本実施形態では、両表層13を互いに同じ構成としているが、この態様に限られない。例えば、両表層13を互いに同じ成分で構成し、その比率が互いに異なっていてもよい。また、両表層13のうち一方のみが微粒子を含む態様であってもよい。
フィルム10の厚みT10は60μm、フィルム本体12の厚みT12は54μm、表層13の厚みT13は3μmとしている。ただし、各厚みはこれらに限られず、厚みT10は10μm以上80μm以下の範囲内、厚みT12は9μm以上70μm以下の範囲内、厚みT13は1μm以上10μm以下の範囲内であればよい。特に、本発明は、厚みT13が2μm以上5μm以下の範囲内である場合に、特に、ヘイズの上昇が抑えられ、ロール状にした場合のフィルム10同士の貼り付きが防止される効果がある。厚みT10,T12,T13は、後述の第1ドープ41と第2ドープ42との各固形分の濃度と流延ダイへの流量とから、計算により求めることができる。
このフィルム10は、後述の溶液製膜設備により、フィルム本体12を形成する第1ドープと表層13を形成する第2ドープとから製造される。第2ドープの原料とされる微粒子14は、通常は分散媒中に分散されており、微粒子14はこの分散液の状態で第2ドープの調製に用いられる。微粒子14を構成するシリカが、疎水基で表面被覆されていない場合には、図2の(A)に示すように、一般にヒドロキシ基(hydroxyl group、−OH)を含む。このヒドロキシ基同士の親和性により、流延ダイ65(図4参照)において微粒子は凝集する。そこで、ヒドロキシ基を疎水基で修飾することにより、ヒドロキシ基を疎水化する。
疎水基はトリメチルシリル基(以下、TMSと称する)である。TMSによるヒドロキシ基の修飾により、微粒子14の表面は、図2の(B)に示すように、ヒドロキシ基が無く、TMSにより被覆された状態となる。表面被覆率は少なくとも0.012、すなわち0.012以上としてある。表面被覆率は0.012以上0.12以下の範囲内であることが好ましく、0.012以上0.016以下の範囲内であることがより好ましい。
表面被覆率は、微粒子14中の炭素含有率を比表面積で除して求める。すなわち、表面被覆率は、微粒子14の炭素含有率をRC、比表面積をSとするときに、RC/Sで求める。炭素含有率RCは、燃焼法による元素分析(例えば、全自動元素分析装置、(株)パーキンエルマージャパン製)で求められる。比表面積Sは、BET法に従い測定する。
TMSによるシリカの疎水化は、図2に示すように、ヒドロキシ基をもつシリカとSi(CH−NH−Si(CHとを気相中、水の存在下で、100℃以上400℃以下の範囲内の温度に加熱することにより行われる。なお、この反応はバッチ式で行う。このようにTMSによる表面被覆では、ヒドロキシ基1個をメチル基3個で修飾するので、ほぼ100%のヒドロキシ基が無くなり、シラノール基が無い微粒子14となる。
TMSにより表面被覆がなされた微粒子14に加えて、ジメチルシラノール基(−Si(CH)OH、以下DMSと称する)により表面被覆がなされた微粒子14を用いてもよい。TMSにより表面被覆がなされた微粒子14とDMSにより表面被覆がなされた微粒子14との混合割合を調節することにより、表面被覆率が0.012以上の所定の値に調節される。
DMSによるシリカの疎水化は、図3に示すように、ヒドロキシ基をもつシリカとSi(CHClとを気相中、水の存在下で、100℃以上400℃以下の範囲内の温度に加熱することにより行われる。なお、この反応は連続式で行う。このようにSi(CHClによるヒドロキシ基の修飾では、修飾後もヒドロキシ基が残るので、環境が反応条件を満たす限り反応が再現なく続き、50%程度の疎水化度(修飾割合)に達した時点から以降では疎水化度は変わらなくなる。そこで、50%程度の疎水化度に達した時点で反応を終えてよい。
フィルム10を製造する溶液製膜は、例えば図1の溶液製膜設備30で行われる。溶液製膜設備30は、ドープ調製装置31と、流延装置32と、テンタ35と、ローラ乾燥装置36と、巻取装置37とを、上流側から順に備える。
ドープ調製装置31は、第1ドープ41と第2ドープ42とをつくるためのものである。前述の通り、第1ドープ41はフィルム本体12を形成し、第2ドープ42は表層13を形成する。ドープ調製装置31は、溶液製膜設備30内ではなく溶液製膜設備30の外部に設けられていてもよい。その場合には、つくられた第1ドープ41と第2ドープ42とは、一旦保存容器等に保存される。ドープ調製装置31は、溶解部43と、混合部46と、分散部47と、ろ過部48,49とを備える。
溶解部43は、セルロースアシレート52と溶媒53とが供給されると、これらの混合物に対して加熱や攪拌等を行う。これにより、セルロースアシレート52が溶媒53に溶解した原料ドープ54をつくる。ろ過部48は、原料ドープ54の一部と添加剤59との混合物が供給されると、これをろ過して第1ドープ41とする。
混合部46は、セルロースアシレート52と溶媒53と微粒子14とが供給されると、これらの混合物を攪拌する。分散部47は、混合部46の下流に配され、分散部47からセルロースアシレート52と溶媒53と微粒子14との混合物が供給されると、この混合物に超音波を与え、微粒子14を液中に分散する。なお、超音波を与える分散部47に代えて、ボールミルを用いてもよい。ろ過部49は、分散部47により得られる微粒子分散液58と原料ドープ54の他の一部との混合物が供給されるとこれをろ過して第2ドープ42にする。
流延装置32は、第1ドープ41と第2ドープ42とからフィルム10を形成するためのものである。流延装置32は、ベルト62と、第1ローラ63及び第2ローラ64とを備える。ベルト62は、環状に形成された無端の流延支持体であり、SUS製である。ベルト62は、第1ローラ63と第2ローラ64との周面に巻き掛けられる。第1ローラ63と第2ローラ64の少なくともいずれか一方は、駆動部(図示無し)を有し、駆動部により周方向に回転する。この回転により周面に接するベルト62が搬送され、この搬送により、ベルト62は、循環して長手方向に連続走行する。
ベルト62の上方には第1ドープ41と第2ドープ42とを流出する流延ダイ65が備えられる。搬送されているベルト62に流延ダイ65から第1ドープ41と第2ドープ42とを連続的に流出することにより、第1ドープ41と第2ドープ42とは互いに重なった状態でベルト62上へ流延されて流延膜66が形成される。なお、第1ドープ41は第2ドープ42に挟まれた態様で流延ダイ65の流出口65aから出される。
第1ローラ63と第2ローラ64とは、それぞれ周面温度を制御する温度コントローラ(図示せず)を備える。第1ローラ63と第2ローラとの各周面温度が制御されることによって、ベルト62の温度が調整される。
流延ダイ65からベルト62に至る第1ドープ41及び第2ドープ42、いわゆるビードに関して、ベルト62の走行方向における上流には、減圧チャンバ(図示無し)が備えられる。この減圧チャンバは、流出した第1ドープ41及び第2ドープ42の上流側エリアの雰囲気を吸引して前記エリアを減圧する。
流延膜66を、テンタ35への搬送が可能な程度にまで固くしてから、溶媒53を含む状態でベルト62から剥がす。剥ぎ取りは、乾燥流延方式の場合には10質量%以上100質量%以下の範囲内の溶媒含有率で行い、冷却流延方式の場合には100質量%以上300質量%以下の範囲内の溶媒含有率で行う。乾燥流延方式とは、流延膜66を主に乾燥によって固くする方式であり、冷却流延方式とは、流延膜66を主に冷却によってゲル化して固くする方式である。なお、本明細書における溶媒含有率は、湿潤状態にあるフィルム10の質量をX、このフィルム10を乾燥した後の質量をYとするときに、{(X−Y)/Y}×100で求めるいわゆる乾量基準の値である。
剥ぎ取りの際には、フィルム10を剥ぎ取り用のローラ(以下、剥取ローラと称する)70で支持し、流延膜66がベルト62から剥がれる剥取位置を一定に保持する。ベルト62は循環して剥取位置から第1,第2ドープ41,42が流延される流延位置に戻ると再び新たな第1ドープ41及び第2ドープ42が流延される。
ベルト62の流延膜66が形成される流延面に対向するように、給気ダクト(図示無し)が設けられていてもよい。この給気ダクトは気体を出して、通過する流延膜66の乾燥をすすめる。
剥取ローラ70で剥ぎ取られた流延膜66、すなわちフィルム10は、テンタ35に案内される。テンタ35は、フィルム10の各側部を保持部材71で保持しながらフィルム10の乾燥をすすめる。テンタ35の保持部材71としては、クリップやピン等が用いられる。クリップはフィルム10を挟持し、ピンはフィルム10を厚み方向に貫通することによって、それぞれフィルム10を保持する。
テンタ35は、フィルム10を保持部材71で保持して長手方向に搬送しながら、幅方向での張力を付与し、フィルム10の幅を拡げる。このテンタ35には、乾燥気体をフィルム10の近傍に流して供給するダクト72が備えられる。フィルム10は搬送されながら、ダクト72からの乾燥気体により乾燥をすすめられるとともに、保持部材71により幅を所定のタイミングで変えられる。
ローラ乾燥装置36は、搬送されているフィルム10を乾燥するためのものである。ローラ乾燥装置36は、フィルム10の搬送方向に複数並べられた複数のローラ73と、空調機(図示無し)と、チャンバ(図示無し)とを備える。複数のローラ73の中には、周方向に回転する駆動ローラがあり、この駆動ローラの回転により、フィルム10は下流へと搬送される。空調機はチャンバ内部の雰囲気を吸引し、吸引した気体の湿度や温度等を調節した後にその気体を再びチャンバ内部に送り込む。これにより、チャンバ内部の温度や湿度等は一定に保持される。巻取装置37はローラ乾燥装置36から供給されてくるフィルム10をロール状に巻き取る。なお、ローラ乾燥装置36と巻取装置37との間に冷却室(図示無し)を設けてもよい。この冷却室は、内部を通過するフィルム10を、巻取り前に室温まで冷却する。
溶液製膜設備30は、本発明の実施態様の一例であり、他の溶液製膜設備であってもよい。例えば、流延支持体としては、ベルト62に代えて、周方向に回転するドラム(図示せず)であってもよい。冷却流延方式の場合には、ドラムを流延支持体として用いる場合が多い。また、テンタ35とローラ乾燥装置36との間に、テンタ35と同じ構成をもつテンタ(図示無し)を設けてもよい。
上記構成の作用を説明する。セルロースアシレート52と溶媒53とは溶解部43に送られると、加熱や攪拌等により原料ドープ54とされる。原料ドープ54の一部はろ過部48に案内される前に、添加剤59を加えられ、添加剤59と混じった状態でろ過部48によりろ過されて第1ドープ41となる。
また、微粒子14は、二次粒子のシリカがTMSにより疎水化処理されることにより少なくとも0.012の表面被覆率に表面被覆されている。この微粒子14とセルロースアシレート52と溶媒53とは混合部46へ案内されると、混合部46により混合されて、この混合部46から分散部47へ送られる。混合物中の微粒子14は分散部47により一定の分散度合いにされ、微粒子分散液58が得られる。微粒子分散液58は、原料ドープ54の他の一部に加えられてろ過部49へ案内され、ろ過部49によりろ過されて第2ドープ42とされる。
第1ドープ41と第2ドープとは連続的に流延ダイ65へ案内され、流出口65aから連続的に流出される。微粒子14の表面被覆率が0.012未満であると、微粒子が流出口65aに付着しやすいが、本実施形態の微粒子14は少なくとも0.012の表面被覆率に表面被覆されているので、流延ダイ65の流出口65aにおいて、凝集した状態で付着することが抑制されている。このため、流出口65aから第1ドープ41の流れを挟んだ状態で出てくる第2ドープ42の流れには、流出口65aに付着した微粒子の固まりによるすじがつかない。このため、流延膜66の膜面にも長手方向に延びたすじは発生しない。走行するベルト62上に形成された流延膜66は、自己支持性をもった後にベルト62から溶媒53を含む状態で剥ぎ取られることで、フィルム10とされる。フィルム10は、テンタ35へ送られ、保持部材71により幅を規制された状態で、ダクト72から供給される乾燥気体の雰囲気を通過する。これによりフィルム10は乾燥を進められる。
テンタ35を出たフィルム10はローラ乾燥装置36へ案内され、このローラ乾燥装置36のチャンバ(図示無し)内部を通過する間に乾燥される。乾燥したフィルム10は、巻取装置37へ案内されて、ロール状に巻き取られる。流延膜66の膜面には長手方向に延びたすじが発生していないので、この流延膜66から得られるフィルム10にも長手方向に延びたすじがない。
第2ドープ42におけるセルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合と、フィルム10における長手方向に延びたすじの発生との間には、関係がある。この関係について、表1に示す。表1のデータは、微粒子14として、DMSにより表面被覆したシリカを用いた場合と、TMSにより表面被覆したシリカを用いた場合とのそれぞれについて、第2ドープ42でのセルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合を変えて得られたものである。すじの評価は、後述の実施例に記載する方法及び基準で行っている。
Figure 0005809185
第2ドープ42において、微粒子14がDMSである場合には、セルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合が、0.050%以下ですじの評価が合格レベルである。微粒子14がTMSである場合には、セルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合が1.000%であってもすじの評価が合格レベルである。
本実施形態では、3層という複層構造のフィルム10を製造するが、単層構造のフィルムに対しても本発明は効果がある。また、本実施形態ではフィルム本体12と1対の表層13とからなる3層構造のフィルム10を製造するが、本発明により得られるフィルムはこれに限られない。例えば、重層流延や塗布などにより4層以上としてもよい。なお、単層構造のフィルムを製造する場合にも同様に、微粒子14がDMSである場合には、セルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合が、0.050%以下ですじの評価が合格レベルである。微粒子14がTMSである場合には、セルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合が1.000%であってもすじの評価は合格レベルである。
以下、本発明の実施例と、本発明に対する比較例とを挙げる。
[実施例1]〜[実施例3]
表面被覆率が互いに異なる微粒子14を3種類つくった。各微粒子14の表面被覆率は表2の「表面被覆率」欄に示す。微粒子14としては、TMSにより表面被覆したシリカだけからなるものと、DMSにより表面被覆したシリカとTMSにより表面被覆したシリカとを混合したものとの2通りがある。そこで、DMSにより表面被覆したシリカとTMSにより表面被覆したシリカとの混合比率を、表2の「DMS:TMS」欄に示す。
各微粒子14をそれぞれ用いて3種類の第2ドープ42をつくった。各第2ドープ42において、セルロースアシレート52に対する微粒子14の質量割合は0.100%である。第1ドープ41は微粒子14を含まない。第1ドープ41と第2ドープ42とを使用して、溶液製膜設備30により、3種類のフィルム10を製造した。
評価1.すじの評価
得られた各フィルム10からA4版(210mm×297mm)のサンプルを10枚ずつ切り出した。具体的には、フィルム10の幅方向に沿って5枚切り出し、この5枚を切り出した位置からフィルム10の長手方向で5m離れた位置で、同様に幅方向に沿って5枚切り出した。各サンプルは、フィルム10の長手方向にサンプルの長辺を一致させて切り出した。各サンプルにつき、長手方向に延びる傷の有無及びその程度の評価を行った。評価は、フィルム面についている幅100μm以上、長さ5cm以上のすじの本数を目視で数え、その本数の平均値を求めた。平均値につき、以下の基準ですじを評価した。なお、A,Bは合格レベルであり、C,Dは不合格レベルである。
A:0
B:0より大きく0.5以下である
C:0.5より大きく1以下である
D:1より大きい
評価2.粗大粒子率の評価
また、ドープ調製装置31から微粒子分散液58をサンプリングして、このサンプルを溶媒で1〜5%に希釈した後、粒径分布測定機(製品名LA920、HORIBA社製)を用いて粒径分布を測定した。得られた粒径分布から、10μm以上の粒子が含まれているか否か、および粒径分布のグラフにおいて10μm以上の粒子のピーク面積を調べ、このピーク面積の全ピーク面積に対する割合(単位;%)を粗大粒子率として求めた。この粗大粒子率を以下の基準で評価した。評価した。なお、A,Bは合格レベルであり、C,Dは不合格レベルである。
A:0%
B:0%より大きく20%以下である
C:20%より大きく40%以下である
D:40%より大きい
Figure 0005809185
[比較例1],[比較例2]
表面被覆率が互いに異なる微粒子を2種類つくった。各微粒子の表面被覆率は表2の「表面被覆率」欄に示す。微粒子としては、表2に示すように、DMSにより表面被覆したシリカだけからなるものと、DMSにより表面被覆したシリカとTMSにより表面被覆したシリカとを混合したものとの2通りがある。
各微粒子をそれぞれ用いて2種類の第2ドープをつくった。各第2ドープにおいて、セルロースアシレート52に対する微粒子の質量割合は0.100%である。この第2ドープと実施例と同じ第1ドープ41とを使用して、実施例と同じ条件で2種類のフィルム10を製造した。
実施例と同様の方法及び基準で、すじと粗大粒子率との評価を行った。結果は表2に示す。
10 フィルム
14 微粒子
30 溶液製膜設備
32 流延装置
41 第1ドープ
42 第2ドープ

Claims (2)

  1. 厚みが10μm以上60μm以下の範囲内であるフィルムを製造する溶液製膜方法において、
    疎水基により表面が少なくとも0.012の表面被覆率で被覆されたシリカの微粒子を含み、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を、連続走行する支持体上へ流延ダイから連続的に流出することにより前記支持体上へ流延膜を形成するステップと、
    前記流延膜を前記支持体から剥がして乾燥して前記フィルムとするステップとを有し、
    前記疎水基の少なくとも一部がトリメチルシリル基であり、前記疎水基の一部がトリメチルシリル基である場合の他の前記疎水基はジメチルシリル基であることを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記ポリマーはセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
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