JP5808114B2 - プリント配線板用銅箔、積層体及びプリント配線板 - Google Patents
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Description
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
圧延銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅等の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金の箔も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
また、被覆層は樹脂との積層し、銅張積層体とした後に銅箔基材表面に形成してもよい。
さらに、被覆層はメタライズドCCLの銅表面に形成することも可能である。
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、金属単体又は合金で形成された被覆層が形成されている。本発明の銅箔は、腐食液中の自然電位がCuより高いことが必要である。このため、被覆層は、本発明の所定の侵食条件におけるこのような自然電位を実現するためには、Au、Pd、Pt、Co、Ni、Cr、Mo、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含むことが好ましい。より具体的には、被覆層は、貴金属のAu、Pd、Pt、これらを含む合金(Au−Ni、Au−Cu、Pd−Ag、Pd−Ni、Pd−Cu合金)、Cr、Ni及びNi合金(Ni−Cr、Ni−Sn、Ni−V、Ni−Mn、Ni−Zn)等で形成してもよい。
また、被覆層の表面または銅箔基材との間に、Ni、Cr、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む層を形成してもよい。このような層は、Cuが表面に拡散することによる銅箔基材表面の酸化変色を防止する防錆層としての効果と、Cuが表面に拡散することを防止し、エッチング途中のレジスト剥離によるエッチング不良を防止するための下地層としての効果を有する。
被覆層の同定はXPS、若しくはAES等表面分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。
本発明の銅箔は、比重40度ボーメ且つ3.2mol/Lの塩化第二鉄水溶液を腐食液とし、腐食液中、液温50℃で且つ腐食液の攪拌を行わずに、Ag/AgCl電極を用い、被覆層側から測定範囲1cm×1cmで測定したときに、測定開始時の自然電位が銅箔基材の自然電位より高く、且つ、測定開始から240秒以内で銅箔基材と同じ電位にまで低下する。ここで、測定開始時の自然電位が高いということは「腐食しにくい」ことを示す。銅箔または銅層の表面にCuよりも腐食しにくい層がある場合、エッチングするときに回路の底部が優先的にエッチングされやすくなるため、回路の上部(トップ部)の幅が表面処理を施さない場合よりも広く残り、矩形に近い回路(エッチングファクターが高い回路)を形成することができる。そのため、ファインピッチの回路を形成できると言える。また、測定開始から240秒以内で銅箔基材と同じ電位にまで低下するため、初期エッチング性が良好であり、より良好にファインピッチの回路を形成することができる。
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い単体金属又は合金からなる被覆層を形成する。被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができる。
また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、レジスト及び銅箔の界面近傍のサイドエッチングが抑制されている。したがって、配線回路の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲では最も回路幅が広くなるのは回路トップとなる。このため、相対的にそれよりも下側では回路幅が回路トップと比べて狭くなる。従って、配線回路は回路トップにおける回路幅が回路の厚み方向において最も狭くなることは無い。また、最も狭い幅が回路トップの回路幅の50%を下回ると、回路の厚み方向において中細の回路となり、電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある。以上により、回路の断面形態において、該銅箔又は銅層の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅をW1とし、回路断面全体で回路幅が最も狭くなる位置が表面から1μmよりも深く、このときの回路幅をW2としたとき、0.7≦W2/W1≦1.0を満たすのが好ましい。また、W1及びW2は、0.8≦W2/W1≦1.0を満たすのが更に好ましい。
また、上記銅箔表面の回路は、良好なファインピッチ回路に形成することができ、50μmピッチ以下でエッチングファクターが1.5以上の回路、好ましくはエッチングファクターが2.5以上の回路とすることができる。
(銅箔又は銅層への被覆層の形成)
参考例1〜15、18、21〜28、実施例16、17、19、20の銅箔基材として、厚さ8μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.7μmであった。また、参考例29〜37の銅箔基材として、厚さ9又は18μmのSn添加圧延銅箔(JX日鉱日石金属製HS1200)を用意した。また、参考例38〜43、実施例44の銅箔基材として、厚さ8μmのメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を用意した。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
・装置:ロール to ロール式スパッタリング装置(神港精機社)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.25Pa
・搬送速度:15m/min
・イオンガン電力:225W
・スパッタリング電力:200〜3000W
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・ターゲット:
Ni層用=Ni(純度3N)
Cr層用=Cr(純度3N)
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
(1)7cm×7cmの銅箔に対しアプリケーターを用い、宇部興産製Uワニス−A(ポリイミドワニス)を乾燥体で25μmになるよう塗布。
(2)(1)で得られた樹脂付き銅箔を空気下乾燥機で130℃30分で乾燥。
(3)窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉において、350℃120分でイミド化。
被覆層のAu、Pd、Pt、Co、Ni、Cr、Mo、Sn、V及びZnの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
表面処理銅箔および積層体の自然電位は、1cm×1cmの範囲の測定部を除いて全てマスキングし、下記条件の腐食液中に浸漬して測定した。自然電位はガルバノ・ポテンショスタットを用いて測定し、その変化を経過時間で追った。
・塩化第二鉄水溶液(濃度:3.2mol/L、ボーメ度:40度)
・液温:50℃
・攪拌:なし
・測定電極:Ag/AgCl電極
銅箔の被覆層が形成された面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の33μm幅および25μm幅の回路を印刷し、銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
エッチングは、下記の条件でスプレーエッチング装置を用いて行った。
・塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
スプレー圧:0.25MPa
・液温:50℃
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:20〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
比較例45及び46(ブランク材)として、8μm厚又は17μm厚の圧延銅箔(JX日鉱日石金属製C1100)を準備した。また、比較例47及び48(ブランク材)として、9μm厚又は18μm厚のSn添加圧延銅箔(JX日鉱日石金属製HS1200)を準備した。さらに、比較例49及び50として、3μm厚又は8μm厚のメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を準備した。次に、それぞれの銅箔に例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。
8μm厚の圧延銅箔(JX日鉱日石金属製C1100)を準備し、例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に、銅箔表面に例1と同様に種々の金属で構成された第2層(被覆層)をスパッタリングで形成し、エッチングで回路を形成した。
例1〜3の各測定条件及び測定結果を表1〜6に示す。なお、表4〜6の「電位低下時間」は、それぞれの実施例及び比較例の自然電位が、対応するブランク材(比較例45〜50)の測定開始時電位まで低下するまでに経過した時間を示している。
参考例1〜15、18、21〜43、実施例16、17、19、20、44は、いずれもエッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
比較例45〜50は、ブランク材であり、良好な形状の回路が形成できなかった。
比較例51〜56は、測定開始時の電位は高いが、電位が240秒以内に低下しなかったために、良好な形状の回路が形成できなかった。
比較例57は、被覆層を形成しているものの、測定開始の電位が低い(ブランク材と同等)ために、良好な形状の回路が形成できなかった。
図3に、(1)参考例2の腐食液中の自然電位、(2)比較例46の自然電位、(3)比較例52の自然電位を測定した結果のグラフをそれぞれ示す。
Claims (11)
- 銅箔基材、及び、前記銅箔基材のエッチング処理面上に設けられ、金属単体又は合金で形成された被覆層を備え、
前記被覆層は、Mo単体、Ni−Cr合金、Ni−Sn合金、又は、Ni−V合金で形成されており、
比重40度ボーメ且つ3.2mol/Lの塩化第二鉄水溶液を腐食液とし、前記腐食液中、液温50℃で且つ前記腐食液の攪拌を行わずに、Ag/AgCl電極を用い、前記被覆層側から測定範囲1cm×1cmで測定したときに、測定開始時の自然電位が前記銅箔基材の自然電位より高く、且つ、測定開始から15秒以上且つ240秒以内で前記銅箔基材と同じ電位にまで低下するプリント配線板用銅箔。 - 前記測定開始時の自然電位が前記銅箔基材の自然電位より50mV以上高い請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記自然電位が測定開始から極大値を有さずに120秒以内で前記銅箔基材と同じ電位にまで低下する請求項1又は2に記載のプリント配線板用銅箔。
- 50μmピッチ以下でエッチングファクターが1.5以上の回路が前記銅箔の被覆層側に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記エッチングファクターが2.5以上である請求項4に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記回路の断面形状において、前記銅箔の前記被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅をW1とし、表面から1μmよりも深い位置で、回路断面全体で回路幅が最も狭くなるときの回路幅をW2としたとき、0.7≦W2/W1≦1.0を満たす請求項4又は5に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である請求項1〜6のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
- 樹脂基板と、前記樹脂基板上に形成された銅層と、前記銅層のエッチング処理面上に形成された請求項1〜7のいずれかに記載の被覆層とで構成された積層体であって、
比重40度ボーメ且つ3.2mol/Lの塩化第二鉄水溶液を腐食液とし、前記腐食液中、液温50℃で且つ前記腐食液の攪拌を行わずに、Ag/AgCl電極を用い、前記被覆層側から測定範囲1cm×1cmで測定したときに、測定開始時の自然電位が前記銅層の自然電位より高く、且つ、測定開始から15秒以上且つ240秒以内で前記銅層と同じ電位にまで低下する積層体。 - 前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項8又は9に記載の積層体。
- 請求項8〜10のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
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