JP2011253854A - プリント配線板用回路基板の形成方法 - Google Patents

プリント配線板用回路基板の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】回路パターンを良好なファインピッチで形成することができるプリント配線板用回路基板の形成方法を提供する。
【解決手段】プリント配線板用回路基板の形成方法は、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含み、白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である被覆層を表面に備えた銅箔又は銅層と、樹脂基板との積層体を準備する工程と、積層体の被覆層表面にレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを形成した積層体の被覆層表面を、CuCl2を1.5〜4.1mol/L、及び、HClを1.3〜5.0mol/L含むエッチング液を用いてエッチングする工程とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、プリント配線板用回路基板の形成方法に関し、特にフレキシブルプリント配線板用回路基板の形成方法に関する。
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
プリント配線板は銅箔に絶縁基板を接着させて積層体とした後に、エッチングにより銅箔面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅箔には良好なエッチング性が要求される。
銅箔は、樹脂との非接着面に表面処理を施さないと、エッチング後の銅箔回路の銅部分が、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)。通常は、回路側面の角度が小さい「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。ここで、図4に、銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真を示す。
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えられる。しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
これらを改善する方法として、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した表面処理が特許文献1に開示されている。この場合の金属又は合金としては、Ni、Co及びこれらの合金である。回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらすという、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
また、特許文献2では、厚さ1000〜10000ÅのCu薄膜を形成し、該Cu薄膜の上に厚さ10〜300Åの銅よりもエッチング速度が遅いNi薄膜を形成している。
特開2002−176242号公報 特開2000−269619号公報
近年、回路の微細化、高密度化がさらに進行し、より急峻に傾斜する側面を有する回路が求められている。しかしながら、特許文献1に記載される技術ではこれらには対応できない。
また、特許文献1に記載される表面処理層はソフトエッチングにより除去する必要があること、さらには樹脂との非接着面表面処理銅箔は、積層体に加工される工程で、樹脂の貼付け等の高温処理が施される。これは表面処理層の酸化を引き起こし、結果として銅箔のエッチング性は劣化する。
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、表面処理層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路パターンの幅の制御性などの不良が発生するという問題があるので、改良が必要か又は他の材料に置換することが要求されている。
さらに、特許文献1及び2に記載される表面処理層はNiやCoを用いて形成されているが、NiやCoはその磁性により電子機器に悪影響を及ぼすおそれがある。
このような問題に対し、本願出願人は、銅箔の樹脂との非接着面側に白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含む被覆層を、所定の金属付着量で設けた場合には、回路側面の傾斜角が80°以上となるような回路を形成できることを見出し、当該発明を特願2010−77964号として出願している。そして、当該発明によれば、回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適し、磁性が良好に抑制されたプリント配線板用銅箔及びそれを用いた積層体を提供することができると記載している。
ここで、一般に、プリント配線板用回路の製造方法は、銅箔または銅層の表面にレジストパターンを得た後、スプレーでエッチング液を噴霧し、レジストパターンの間に露出した銅部を溶解して回路を得ている。エッチング液としては、塩化第二銅と塩酸との混合液を用いることがある。この場合、塩化第二銅が銅を溶解すると、難溶性の塩化第一銅を生成する。これを溶解するために、多量の塩酸を必要とし、さらにエッチング速度を塩化第二鉄水溶液をエッチング液として用いる場合と同レベルまで上げている。しかしながら、塩酸を多量に使用し過ぎると、エッチング時の回路表面部のサイドエッチングが促進され、「ダレ」を引き起こし易くなる。さらに、銅箔または銅層とレジストパターンとの界面が酸によって破壊され、エッチングの途中でレジストが剥離し、エッチング不良が生じるおそれもある。そのため液中の塩酸量を管理する必要がある。
上述の特願2010−77964号として出願した発明に係る被覆層を含んだ銅箔又は銅層を備えた積層体においては、その被覆層の特性上、形成される回路パターンの形状について、このようなエッチング液組成が、一般的な積層体に比べてより大きな影響を与える。このため、良好なファインピッチを有する回路形成するためには、エッチング液組成について最適な規定が特に必要となる。
そこで、本発明は、回路パターンを良好なファインピッチで形成することができるプリント配線板用回路基板の形成方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂基板との非接着面側に白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含む被覆層を、所定の金属付着量で設けた銅箔又は銅層を備える積層体に対し、CuCl2を1.5〜4.0mol/L、及び、HClを1.3〜5.0mol/L含むエッチング液を用いてエッチングすることにより、回路側面の傾斜角が80°以上となるような回路を形成できることを見出した。これにより、近年の回路の微細化、高密度化に十分対応しうる回路を形成することができる。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含み、白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である被覆層を表面に備えた銅箔又は銅層と、樹脂基板との積層体を準備する工程と、積層体の被覆層表面にレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを形成した積層体の被覆層表面を、CuCl2を1.5〜4.0mol/L、及び、HClを1.3〜5.0mol/L含むエッチング液を用いてエッチングする工程とを備えたプリント配線板用回路基板の形成方法である。
本発明に係るプリント配線板用回路基板の形成方法の一実施形態においては、被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である。
本発明に係るプリント配線板用回路基板の形成方法の別の一実施形態においては、被覆層における白金の付着量が50〜300μg/dm2、パラジウムの付着量が30〜180μg/dm2、金の付着量が50〜300μg/dm2である。
本発明に係るプリント配線板用回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液中の塩酸の濃度[HCl]と、塩化第二銅濃度[CuCl2]との比率[HCl]/[CuCl2]が0.8〜3.0である。
本発明に係るプリント配線板用回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング液中にCuCl2を1.8〜3.0mol/L、及び、HClを1.8〜4.5mol/L含み、且つ、エッチング液中の[HCl]/[CuCl2]が1.0〜2.5である。
本発明に係るプリント配線板用回路基板の形成方法の更に別の一実施形態においては、エッチング工程によって、積層体の銅箔又は銅層に、断面形状において、銅箔又は銅層の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅をW1とし、表面から1μmよりも深い位置で、回路断面全体で回路幅が最も狭くなるときの回路幅をW2としたとき、0.7≦W2/W1≦1.0を満たし、且つ、エッチングファクターE.F.が4.0以上である回路を形成する。
本発明によれば、回路パターンを良好なファインピッチで形成することができるプリント配線板用回路基板の形成方法を提供することができる。
回路パターンの一部の表面写真、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。 実施例6により形成された回路およびその断面を示す写真である。 比較例44により形成された回路を示す写真である。 銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真である。
(銅箔基材)
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
本発明に用いることのできる銅箔基材の厚さについても特に制限はなく、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
本発明に使用する銅箔基材は、特に限定されないが、例えば、粗化処理をしないものを用いても良い。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であるが、一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化箔では不利な方向に働くことがある。また、粗化処理をしないものであると、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果がある。
(被覆層の構成)
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含んでいる。被覆層が白金で構成されている場合は、白金の付着量が1050μg/dm2以下であり、20〜400μg/dm2であるのがより好ましく、50〜300μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層がパラジウムで構成されている場合は、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下であり、20〜250μg/dm2であるのがより好ましく、30〜180μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層が金で構成されている場合は、金の付着量が1000μg/dm2以下であり、20〜400μg/dm2であるのがより好ましく、50〜300μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層の白金の付着量が1050μg/dm2、被覆層のパラジウムの付着量が600μg/dm2、及び、被覆層の金の付着量が1000μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
(銅箔の製造方法)
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種からなる被覆層を形成する。被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
(プリント配線板の製造方法)
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
まず、銅箔と絶縁基板とを貼り合わせて積層体を製造する。銅箔が積層される絶縁基板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。銅箔を被覆層の反対側の面からプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと銅箔とをエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を銅箔に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に銅箔を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
本発明に係る積層体は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。また、本発明に係る積層体は、銅箔を樹脂に貼り付けてなる上述のような銅張積層板に限定されず、樹脂上にスパッタリング、めっきで銅層を形成したメタライジング材であってもよい。
上述のように作製した積層体の銅箔上に形成された被覆層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成したものをエッチング液に浸漬する。このとき、エッチングを抑制する白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種からなる被覆層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この被覆層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、被覆層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、CuCl2の濃度が1.5〜4.0mol/Lで、HClの濃度が1.3〜5.0mol/Lである塩化第二銅水溶液を用いる。CuCl2の濃度が1.5mol/L未満であると、エッチングを十分に行うことが困難となる。CuCl2の濃度が4.0mol/L超であると、CuCl2の溶解度を超えてしまい、液中でCuCl2が析出するという問題が生じる。HClは、表面の被覆層を溶解してエッチングを進めるため、およびエッチングの際の反応により生成する難溶性の塩化第一銅を溶解するに添加される。HClの濃度が1.3mol/L未満であると、塩化第一銅を溶解するには十分であるが、銅よりも腐食されにくい被覆層を溶解してエッチングするには不十分である。HClの濃度が5.0mol/L超であると、エッチング時の回路表面部のサイドエッチングが促進され、「ダレ」を引き起こし易くなる。さらに、銅箔または銅層とレジストパターンとの界面が酸によって破壊され、エッチングの途中でレジストが剥離し、エッチング不良が生じる可能性が高まる。また、同様の理由により、HClについては、エッチング液中の塩酸の濃度[HCl]と、塩化第二銅濃度[CuCl2]との比率[HCl]/[CuCl2]が0.8〜3.0であるのが好ましく、1.0〜2.5であるのがより好ましい。
また、エッチング液中のCuCl2の濃度を1.8〜3.0mol/Lとし、HClの濃度を1.8〜4.5mol/Lとし、さらにエッチング液中の[HCl]/[CuCl2]が1.0〜2.5であるエッチング液を用いてエッチングを行うと、本発明に係る被覆層を有する銅箔又は銅層のエッチング液組成が特に良好に作用し、エッチング時の回路表面部のサイドエッチングをより抑制し、回路の良好なファインピッチを実現することができる。
(プリント配線板の銅箔表面の回路形状)
一般に、エッチングで形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される(ダレの発生)。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、回路のピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけダレが大きくなり、回路のピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各回路及び回路内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、エッチングで形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して75〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。また、エッチングファクターとしては、回路のピッチが50μm以下であるとき、4.0以上であるのが好ましく、5.0以上であるのが更に好ましい。
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、被覆層の貴金属が耐食性に優れるため、レジスト及び銅箔の界面近傍のサイドエッチングが抑制される。したがって、配線回路の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲では最も回路幅が広くなるのは回路トップとなる。このため、相対的にそれよりも下側では回路幅が回路トップと比べて狭くなる。従って、配線回路は回路トップにおける回路幅が回路の厚み方向において最も狭くなることは無い。また、最も狭い幅が回路トップの回路幅の50%を下回ると、回路の厚み方向において中細の回路となり、電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある。以上により、回路の断面形態において、該銅箔又は銅層の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅をW1とし、回路断面全体で回路幅が最も狭くなる位置が表面から1μmよりも深く、このときの回路幅をW2としたとき、0.7≦W2/W1≦1.0を満たすのが好ましい。また、W1及びW2は、0.8≦W2/W1≦1.0を満たすのが更に好ましい。
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(例1:実施例1〜42)
(銅箔又は銅層への被覆層の形成)
実施例1〜33及び40〜42の銅箔基材として、厚さ8又は12μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.7μmであった。また、実施例34〜39の銅箔基材として、厚さ3μmのメタライジングCCL(日鉱金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を用意した。
銅箔の表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Au、Pt及び/又はPdのターゲットを以下の装置及び条件でスパッタリングすることにより、被覆層を形成した。被覆層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。スパッタリングに使用した各種金属の単体は純度が3Nのものを用いた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
上述の被覆層が形成された表面の反対側の銅箔基材表面に対して、以下の条件であらかじめ銅箔基材表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Ni及びCr単層のターゲットをスパッタリングすることにより、Ni層及びCr層を順に成膜した。Ni層及びCr層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・ターゲット:
Ni層用=Ni(純度3N)
Cr層用=Cr(純度3N)
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
銅箔基材のNi層及びCr層形成側表面に以下の手順により、ポリイミドフィルムを接着した。
(1)7cm×7cmの銅箔に対しアプリケーターを用い、宇部興産製Uワニス−A(ポリイミドワニス)を乾燥体で25μmになるよう塗布。
(2)(1)で得られた樹脂付き銅箔を空気下乾燥機で130℃30分で乾燥。
(3)窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉において、350℃30分でイミド化。
<付着量の測定>
被覆層のAu、Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
(エッチングによる回路形状)
銅箔の被覆層が形成された面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
<エッチング条件>
板に固定した回路エッチング液に浸漬し、槽内で液を攪拌してエッチングを行った。
エッチング液は下記薬品を純水に溶解して調整した。
・CuCl2(無水または二水和物):1.2〜4.0mol/L
・HCl:1.0〜5.5mol/L
・液温:50°C
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:20〜350秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:30〜400秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
上記手順で形成した回路の断面を、日本電子株式会社製の断面試料作製装置SM−09010で加工した。この回路断面のSEM写真から、任意に選択した3本の回路の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅W1(μm)、回路断面全体で最も狭い回路幅W2(μm)を測定し、これらの平均値を算出した。また、当該平均値を用いてW2/W1を算出した。
(例2:比較例43〜57)
8又は12μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に、銅箔表面に例1と同様にAu、Pd及び/又はPtの各層をスパッタリングで形成し、エッチングで回路を形成した。
(例3:比較例58〜69)
比較例58〜61及び66〜69(ブランク材)として8μm厚又は17μm厚の圧延銅箔を準備し、それぞれ例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。また、比較例62〜65として、9μm厚の電解銅箔を準備し、以下のめっき条件で、Ni及びCoの合金層を形成し、エッチングで回路を形成した。
(Ni、Co合金めっき)
・Co:1〜20g/L
・Ni:1〜20g/L
・温度:室温〜60℃
・電流密度:DK:1〜15A/dm2
・時間:1〜10秒
例1〜3の各測定条件及び測定結果を表1〜4に示す。
なお、図2(b)に示すように、回路の断面形状は、正確には斜辺が直線である台形ではない。表には実施例及び比較例の回路の傾斜角が記載されているが、これはあくまで図1に示した定義式によって算出した値である。
(評価)
(実施例1〜42)
実施例1〜42ではいずれもエッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
特に、実施例3〜7、10〜14、17〜21、24、25、28、29、32〜39は50μmピッチの回路において、ほぼ矩形に回路を形成できていることから、上面から裾引きはみられず、エッチングファクターを算出できなかった。
なお、実施例34〜36では、[HCl]/[CuCl2]が3超であるが、これらは銅層が3μm厚と薄いため、このように塩酸濃度が高くても所望の回路形状を得ることができた。
さらに実施例2、9、16では、[HCl]/[CuCl2]が0.8未満であるため、他の実施例と比較するとエッチングファクターが低く、エッチングファクターの標準偏差が大きかった。
図2に、実施例6により形成された回路の写真およびその断面写真を示す。
(比較例43〜69)
比較例43、46及び49では、CuCl2の濃度が低く、エッチングファクターが実施例のものより低かった。
比較例44、47及び50では、HClの濃度が低く、初期エッチング性が不良であった。
比較例45、48及び51では、HClの濃度が高く、エッチングの途中でレジストが剥離したため、所望の回路が形成できなかった。
比較例52〜57は、貴金属の付着量が多く、初期エッチング性が不良であった。
比較例58〜69は、それぞれエッチングファクターが実施例のものより低かった。
ここで、例として、図3に、比較例44により形成された回路の写真を示す。

Claims (6)

  1. 白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含み、白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である被覆層を表面に備えた銅箔又は銅層と、樹脂基板との積層体を準備する工程と、
    前記積層体の被覆層表面にレジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンを形成した積層体の被覆層表面を、CuCl2を1.5〜4.0mol/L、及び、HClを1.3〜5.0mol/L含むエッチング液を用いてエッチングする工程と、
    を備えたプリント配線板用回路基板の形成方法。
  2. 前記被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である請求項1に記載のプリント配線板用回路基板の形成方法。
  3. 前記被覆層における白金の付着量が50〜300μg/dm2、パラジウムの付着量が30〜180μg/dm2、金の付着量が50〜300μg/dm2である請求項2に記載のプリント配線板用回路基板の形成方法。
  4. 前記エッチング液中の塩酸の濃度[HCl]と、塩化第二銅濃度[CuCl2]との比率[HCl]/[CuCl2]が0.8〜3.0である請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用回路基板の形成方法。
  5. 前記エッチング液中にCuCl2を1.8〜3.0mol/L、及び、HClを1.8〜4.5mol/L含み、且つ、該エッチング液中の[HCl]/[CuCl2]が1.0〜2.5である請求項1〜4のいずれかに記載のプリント配線板用回路基板の形成方法。
  6. 前記エッチング工程によって、前記積層体の銅箔又は銅層に、断面形状において、該銅箔又は銅層の前記被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅をW1とし、表面から1μmよりも深い位置で、回路断面全体で回路幅が最も狭くなるときの回路幅をW2としたとき、0.7≦W2/W1≦1.0を満たし、且つ、エッチングファクターE.F.が4.0以上であることを特徴とする回路を形成する請求項1〜5のいずれかに記載のプリント配線板用回路基板の形成方法。
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