JP5524671B2 - エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体 - Google Patents
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Description
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含んでいる。
なお、銅箔基材の絶縁基板との接着面側には、絶縁基板との接着性向上のために、例えば銅箔基材表面から順に積層した中間層及び表層で構成された別の被覆層を形成してもよい。この場合、中間層は、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn、Nb、Ta及びCrの少なくともいずれか1種を含むのが好ましい。中間層は、金属の単体で構成されていてもよく、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、Nb及びTaのいずれか1種で構成されるのが好ましい。中間層は、合金で構成されていてもよく、例えば、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されるのが好ましい。
被覆層の同定はXPS、若しくはAES等表面分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。
本発明に係る被覆層は、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金、白金及び/又はパラジウムの原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f(x)dx/∫g(x)dx≦15を満たす。通常の表面処理により形成される被覆層であれば、上記式において銅の原子濃度g(x)は限りなく小さいため、∫f(x)dx/∫g(x)dxは無限大となる。しかしながら、本発明に係る被覆層は、貴金属の付着量が極微量であるため、適度に銅が拡散しており、∫f(x)dx/∫g(x)dxが無限大とならず、15以下となっている。このように、極微量の貴金属で形成された被覆層に銅が上述の比率で存在することにより、これらによって形成された酸化物を酸で溶解することで、耐腐食性がある貴金属層であっても、レジストパターンの開口部に露出した部分から容易に除去することが可能となる。
さらに、区間[0、1.0]において、0.05≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦3を満たすことがより好ましい。
被覆層が白金で構成されている場合は、白金の付着量が1050μg/dm2以下であり、15〜1050μg/dm2であるのがより好ましく、20〜400μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層がパラジウムで構成されている場合は、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下であり、10〜600μg/dm2であるのがより好ましく、20〜250μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層が金で構成されている場合は、金の付着量が1000μg/dm2以下であり、10〜1000μg/dm2であるのがより好ましく、20〜400μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層の白金の付着量が15μg/dm2未満、被覆層のパラジウムの付着量が10μg/dm2未満、及び、被覆層の金の付着量が10μg/dm2未満であると、それぞれ効果が十分でない。一方、被覆層の白金の付着量が1050μg/dm2、被覆層のパラジウムの付着量が600μg/dm2、及び、被覆層の金の付着量が1000μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上からなる被覆層を形成する。被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
次に、積層体をエッチング液に浸漬する。このとき、エッチングを抑制する白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含む被覆層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この被覆層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、被覆層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いためである。塩化第二鉄水溶液中のFe3+や塩化第二銅中のCu2+の濃度が低いなどの原因で初期エッチング性が悪い場合には、開口部に露出した部分の貴金属を予め溶解させる液で除去しても良い。この貴金属を溶解させる液としては塩酸やヨウ素を含む関東化学株式会社製「AURUM」等がある。ただし、これらの液を過剰に用いた場合はレジストの裏側に液が回りこんで、処理層を溶かしてしまう。
また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、ラインパターンのピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけ裾引きが大きくなり、ラインパターンのピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各ラインパターン及びラインパターン内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して65〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜18の基材として、厚さ12μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.7μmであった。また、実施例19〜21の銅箔基材として、厚さ9μmの無粗化処理の電解銅箔(日鉱金属製JTC箔)を用意した。電解銅箔の樹脂との接着面の表面粗さ(Rz)は1.5μmであった。さらに、実施例22〜24の基材として、厚さ8μmのメタライジングCCL(日鉱金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を用意した。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
また、実施例16〜18については、以下のターゲットを用いた。
・ターゲット:Au−50質量%Pd、Pt−50質量%Pd、Au−50質量%Pt
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・ターゲット:
Ni層用=Ni(純度3N)
Cr層用=Cr(純度3N)
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
被覆層のAu,Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
被覆層のデプスプロファイルを作成した際のXPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.0nm/min(SiO2換算)
銅箔のエッチング面をアセトンで脱脂し、硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の汚れ及び酸化層を取り除いた。次に、スピンコーターを用いて液体レジスト(東京応化工業製、OFPR−800LB)をエッチング面に滴下し、乾燥させた。乾燥後のレジスト厚みは1μmとなるように調整した。その後、露光工程により10本の回路を印刷し、希硫酸(90g/L)によりレジストパターンの開口部の貴金属層を除去し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
・塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
・液温:50°C
・スプレー圧:0.25MPa
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:30〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(裾引きが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からの裾引きの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、裾引きが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
12μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例1の条件で実施した。
12μm厚の圧延銅箔を準備し、それぞれ例1の手順で表面処理を施し、エッチング処理を行った。
厚み12μmの圧延銅箔の片面に下記条件でNiめっきを施した後、その反対面に例1の手順でスパッタリングによる表面処理を施した。Niめっきを施した面がエッチング面となるよう、この銅箔に例1の手順でポリイミドフィルムを接着させ、エッチングにより回路を形成した。
・Ni:30g/L
・pH:3.0
・温度:50℃
・電流密度:35A/dm2
・時間:5秒
例1〜4の各測定結果を表1〜4に示す。
(実施例1〜24)
実施例1〜24ではいずれもエッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
図2に、実施例13の熱処理前に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルを示す。図3に、実施例13の熱処理後に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルを示す。
比較例1は、銅箔表面が未処理であるブランク材であり、矩形方の断面の回路を形成することができなかった。
比較例2〜4では、白金の付着量が1050μg/dm2超、パラジウムの付着量が600μg/dm2超、又は、金の付着量が1000μg/dm2超であるために、矩形方の断面の回路を形成することができなかった。
エッチング面にNiめっきが施された比較例5でも、矩形方の断面の回路を形成することができなかった。
図4に、比較例4により形成された回路の写真を示す。
Claims (13)
- 銅箔基材と、該銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆し、且つ、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含む被覆層とを備え、
前記被覆層における白金の付着量が15〜1050μg/dm 2 、パラジウムの付着量が10〜600μg/dm 2 、金の付着量が10〜1000μg/dm 2 であり、
XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金、白金及び/又はパラジウムの原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f(x)dx/∫g(x)dx≦15を満たすプリント配線板用銅箔。 - ポリイミド硬化相当の熱処理を行った時、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金、白金及び/又はパラジウムの原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f(x)dx/∫g(x)dx≦3を満たす請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
- ポリイミド硬化相当の熱処理を行った時、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金、白金及び/又はパラジウムの原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.05≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦3を満たす請求項2に記載のプリント配線板用銅箔。
- ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金、白金及び/又はパラジウムの原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f(x)dx/∫g(x)dx≦3を満たす請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金、白金及び/又はパラジウムの原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.05≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦3を満たす請求項4に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である請求項5に記載のプリント配線板用銅箔。
- プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1〜6のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の銅箔を準備する工程と、
前記銅箔の被覆層をエッチング面として該銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、
前記被覆層の上にレジストで回路パターンを形成した後、該回路パターンの開口部に露出した該被覆層を除去し、その後、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングを行い銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
を含む電子回路の形成方法。 - 前記開口部に露出した被覆層の除去を、塩酸、硫酸又は硝酸を主成分とする試薬により行う請求項8に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
- 銅層と樹脂基板との積層体であって、
前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜7のいずれかに記載の被覆層を備えた積層体。 - 前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項10又は11に記載の積層体。
- 請求項10〜12のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
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