JP5079883B2 - 耐加熱変色及びエッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及びそれを用いた積層体 - Google Patents
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Description
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、Ni、Zn、Sn、V、Mn、Co及びAgの少なくともいずれか1種と、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種とを含む。被覆層は、Ni、Zn、Sn、V、Mn、Co及びAgのいずれか1種以上を含む第1の被覆層と、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む第2の被覆層とで形成されていてもよい。また、この場合、第1の被覆層は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi、Co、Ag及びZnのいずれか1種で構成されてもよい。さらに、第1の被覆層は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Zn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のSnからなるNi−Sn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のVからなるNi−V合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のMnからなるNi−Mn合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Cu−Zn合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNiからなるNi−Cu合金で構成されていてもよい。このように、第1の被覆層がNi、Co、Ag及びZnの中でも特にNiを含有する合金で構成されていると、初期エッチング性がより良好となり、好ましい。各金属の付着量が上述の数値範囲未満であると初期エッチング性や耐変色性に悪影響を及ぼし、上述の数値範囲を超えると、回路のダレが大きくなり直線性が不良となる。
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、Ni、Zn、Sn、V、Mn、Co及びAgの少なくともいずれか1種と、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種との合金で構成された被覆層で被覆することができる。また、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部に、Ni等からなる第1の被覆層を形成した後、さらに銅よりもエッチングレートの低いPt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上からなる第2の被覆層を形成してもよい。さらに、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部に、銅よりもエッチングレートの低いPt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上からなる第2の被覆層を形成した後、さらにNi等からなる第1の被覆層を形成してもよい。第1及び第2の被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、第2の被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いためである。また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される(ダレの発生)。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、ラインパターンのピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけダレが大きくなり、ラインパターンのピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各ラインパターン及びラインパターン内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して65〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜54、56〜64の銅箔基材として、厚さ12μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
上記実施例のうち、実施例13〜15については、以下のターゲットを用いた。
・ターゲット:Au−50質量%Pd、Pt−50質量%Pd、Au−50質量%Pt
上記実施例のうち、実施例52〜54については、以下のターゲットを用いた。
・ターゲット:Au−50質量%Ni、Pt−50質量%Ni、Pd−50質量%Ni
上記実施例のうち、実施例59〜61については、以下のターゲットを用いた。
・ターゲット:Ni−80質量%Cu、及び、純度3NのAu、Pt又はPd
上記実施例のうち、実施例62〜64については、以下のターゲットを用いた。
・ターゲット:Ni−64質量%Cu−18質量%Zn、及び、純度3NのAu、Pt又はPd
上記手順で表面処理が施された銅箔に、接着剤付ポリイミドフィルム(ニッカン工業製、CISV1215)を7kgf/cm2の圧力、160℃で40分間の加熱プレスで積層させた。一部の銅箔は、窒素雰囲気下で350℃で2時間保持した後に、上記手順でポリイミドフィルムと積層させた。
第1の被覆層の各金属の付着量は、50mm×50mmの銅箔表面の被膜をHNO3(2重量%)とHCl(5重量%)を混合した溶液に溶解し、その溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SFC−3100)にて定量し、単位面積当たりの金属量(μg/dm2)を算出した。
第2の被覆層のAu、Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
銅箔のエッチング面をアセトンで脱脂し、硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の汚れ及び酸化層を取り除いた。次に、スピンコーターを用いて液体レジスト(東京応化工業製、OFPR−800LB)をエッチング面に滴下し、乾燥させた。乾燥後のレジスト厚みは1μmとなるように調整した。その後、露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
・塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
・液温:50℃
・スプレー圧:0.25MPa
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:30〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
耐変色加熱性は、恒温槽を用いて300℃10分の条件で加熱後、色彩色差計を用いてL*(明るさ)、a*(赤−緑軸の色度)、b*(黄−青軸の色度)を測定し、(JIS Z 8729)に基づいて、式(1)に示すΔE*abにより評価した。
ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
12μm厚の圧延銅箔を用意し、銅箔の表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Pdターゲットをスパッタリングすることにより第1の被覆層を形成し、次にNiターゲットをスパッタリングすることにより第二の被覆層を形成した。その後、同様の手順でポリイミドフィルムを接着した。次に、反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例1の条件で実施した。
12μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例1の条件で実施した。
12μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同じ手順で樹脂との接着面側を表面処理した後、ポリイミドフィルムを接着した。次に、銅箔表面に例1と同様にNi等で構成された第1の被覆層、Pt、Pd、Auで構成された第2の被覆層をそれぞれスパッタリングで形成し、エッチングで回路を形成した。
例1〜4の各測定結果を表1〜8に示す。表3、4、7及び8において、耐加熱変色ΔE*abの各数値範囲における銅箔表面の色差の基準を以下に示す。
ΔE*ab=0〜0.5 極めてわずかに異なる(trace)
ΔE*ab=0.5〜1.5 わずかに異なる(slight)
ΔE*ab=1.5〜3.0 感知し得るほどに異なる(noticiable)
ΔE*ab=3.0〜6.0 著しく異なる(appreciable)
ΔE*ab=6.0〜12.0 極めて著しく異なる(much)
ΔE*ab=12.0超 別の色系統になる(very much)
(実施例1〜64)
実施例1〜15では、やや変色が見られたものの、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。実施例16〜64では、変色もほとんど見られず、さらに50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
比較例1は、銅箔表面が未処理であるブランク材であり、50μmピッチ、30μmピッチのレジストパターンで回路のダレが大きくなった。
比較例2〜6では、第1の被覆層中のNi、Zn、Sn、V又はMnの付着量が不足したため、耐変色性が不良となった。また、第2の被覆層を形成しておらず、エッチング性が不良であった。
比較例7〜10では、第1の被覆層中のNi等の付着量が過剰であり、初期エッチング性に劣り(30μmピッチ)、回路のダレが大きくなった(50μmピッチ)。
比較例11〜13では、Pt、Pd、Auの付着量が過剰であったため、初期エッチング性に劣り(30μmピッチ)、回路のダレが大きくなった(50μmピッチ)。
比較例14〜43では、第1の被覆層中のNi等の付着量が過剰であり、初期エッチング性に劣り(30μmピッチ)、回路のダレが大きくなった(50μmピッチ)。
図2に、比較例13により形成された回路の写真を示す。
Claims (14)
- 銅箔基材と、該銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を備え、
前記被覆層は、Ni、Zn、Sn、V、Mn、Co及びAgの少なくともいずれか1種と、Pt、Pd、及び、Auの少なくともいずれか1種とを含み、Ptの付着量が1050μg/dm 2 以下、Pdの付着量が600μg/dm 2 以下、Auの付着量が1000μg/dm 2 以下であるプリント配線板用銅箔。 - 前記被覆層は、Ni、Zn、Sn、V、Mn、Co及びAgのいずれか1種以上を含む第1の被覆層と、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む第2の被覆層とで形成され、
前記第2の被覆層におけるPtの付着量が1050μg/dm 2 以下、Pdの付着量が600μg/dm 2 以下、Auの付着量が1000μg/dm 2 以下である請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。 - 前記第1の被覆層が、被覆量が1500μg/dm2以下のNi、Co、Ag及びZnのいずれか1種からなる請求項2に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記第1の被覆層が、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Zn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のSnからなるNi−Sn合金、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のVからなるNi−V合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び500μg/dm2以下のMnからなるNi−Mn合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNi及び1100μg/dm2以下のZnからなるNi−Cu−Zn合金、又は、被覆量が1500μg/dm2以下のNiからなるNi−Cu合金からなる請求項2に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記第2の被覆層におけるPtの付着量が20〜400μg/dm2、Pdの付着量が20〜250μg/dm2、Auの付着量が20〜400μg/dm2である請求項2に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記第2の被覆層におけるPtの付着量が50〜300μg/dm2、Pdの付着量が30〜180μg/dm2、Auの付着量が50〜300μg/dm2である請求項5に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記第1の被覆層が前記銅箔基材の表面に形成され、前記第2の被覆層が該第1の被覆層上に形成された請求項2〜6のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記第2の被覆層が前記銅箔基材の表面に形成され、前記第1の被覆層が該第2の被覆層上に形成された請求項2〜6のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1〜8のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の銅箔で構成された圧延銅箔又は電解銅箔を準備する工程と、
前記銅箔の被覆層をエッチング面として該銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、
前記積層体を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
を含む電子回路の形成方法。 - 請求項1〜9のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
- 銅層と樹脂基板との積層体であって、
前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜9のいずれかに記載の被覆層を備えた積層体。 - 前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項11又は12に記載の積層体。
- 請求項11〜13のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
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