JP5702942B2 - エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及びそれを用いた積層体 - Google Patents
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また、特許文献2に記載された表面処理層を形成するためには、多くのプロセスを要する。これに加えて各金属めっき層がμmオーダーであるため、処理時間を要し、生産コストが課題となる。
サイドエッチングが抑制される機構は明らかではないが、実験事実から、レジストの裏側に白金族金属、金及び/又は銀が残存することで、これらがエッチング液中の酸化剤の還元を促進し、レジスト直下(もしくは回路上方部)でサイドエッチングが抑制されるものと考えられる。
さらに、実用性の観点から、白金族金属、金及び/又は銀の付着量が多いと、初期エッチング性が悪くなるため、回路が形成できない。また、これらの付着層に処理抜けがあると、上記効果が期待できない。
これに対し、白金族金属、金及び/又は銀をスパッタリングで付着させると、極微量でも処理抜けがない表面処理層が形成され、さらにこれらがレジスト裏側に残存することでサイドエッチングが抑制され、銅箔の厚みが薄くなくても裾引きが小さい回路を形成することができ、高密度実装基板の形成が可能となる。また、これらの金属はNiやCoのような強磁性を有しないことに加えて、極微量で付着しているため、電子機器に悪影響を及ぼすことは無いものと期待される。
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含んでいる。被覆層に含まれる金属は、好ましくは、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上である。
なお、銅箔基材の絶縁基板との接着面側には、絶縁基板との接着性向上のために、例えば銅箔基材表面から順に積層した中間層及び表層で構成された別の被覆層を形成してもよい。この場合、中間層は、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn、Nb、Ta及びCrの少なくともいずれか1種を含むのが好ましい。中間層は、金属の単体で構成されていてもよく、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、Nb及びTaのいずれか1種で構成されるのが好ましい。中間層は、合金で構成されていてもよく、例えば、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されるのが好ましい。
本発明に係る銅箔の被覆層の同定は、被覆層表面にレジストを形成し、レジスト形成面の反対側から銅箔をエッチング除去した後のレジストの銅箔除去面における白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の合計原子濃度を測定することにより行う。具体的には、上述のように銅箔をエッチング除去した後のレジストの銅箔除去面を、XPS、若しくはAES等表面分析装置にてレジストの銅箔除去面側からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。
被覆層の貴金属原子濃度が高すぎると、初期エッチング性が悪くなり、本発明に係る良好なエッチング性を得ることが困難となる。このため、本発明に係る銅箔の被覆層表面にレジストを形成し、レジスト形成面の反対側から銅箔をエッチング除去した後のレジストの銅箔除去面において、XPSによる表面の深さ方向分析で、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の合計原子濃度が0.1%以上である。
また、本発明の効果である良好なエッチング性を得るためには、ある程度の貴金属原子濃度が必要となる。このため、被覆層に含まれる金属が、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上であるとき、被覆層における白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下であるのが好ましい。また、被覆層における白金の付着量が40〜350μg/dm 2 、パラジウムの付着量が30〜190μg/dm 2 、金の付着量が40〜300μg/dm 2 であるのが更に好ましい。
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上からなる被覆層を形成する。被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いためである。また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される(ダレの発生)。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、回路のピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけダレが大きくなり、回路のピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各回路及び回路内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路は、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して65〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。また、エッチングファクターとしては、回路のピッチが50μm以下であるとき、1.5以上であるのが好ましく、2.5以上であるのが更に好ましい。
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜21の銅箔基材として、厚さ9μm及び17μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)はそれぞれ0.5μm、0.2μmであった。また、実施例22〜24の銅箔基材として、厚さ9μmの電解銅箔(日鉱金属製JTC箔)を用意した。電解銅箔の樹脂との接着面の表面粗さ(Rz)は3.8μm、エッチング面の表面粗さ(Rz)は0.21μmであった。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧力:0.2Pa
・逆スパッタリング電力:100W
・ターゲット
樹脂との接着面:Ni、Cr(3N)
エッチング面:
Au、Pt、Pd(3N)
Au−50at%Pd、Pt−50at%Pd、
Au−50at%Pt
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタリングレートを算出した。
被覆層のAu,Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
上記手順で作製した積層体の銅箔エッチング面をアセトンで脱脂し、硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の汚れ及び酸化層を取り除いた。次にスピンコーターを用いて液体レジスト(東京応化工業製、OFPR−800LB)を積層体エッチング面に滴下し、乾燥させた。乾燥後のレジスト厚みは1μmとなるように調整した。その後、露光(11mW/cm2×3.5秒)、現像(現像液:東京応化工業製、NMD−W)により、L/S=33μm/17μm、またはL/S=25μm/5μmのレジストパターンを形成した。このときのエッチング条件を以下に示す。また、回路本数はそれぞれ10本である。
・塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
・液温:50°C
・スプレー圧:0.25MPa
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:30〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
・エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
レジスト直下のアンダーカット(サイドエッチ)は高々数〜20μmである。この部分をXPSで直接分析しようとすると、X線の照射面積(800μmφ、下記参照)が十分ではなかった。このため、以下の手順でレジストの銅箔除去面における原子濃度の測定を行った。
上述の表面処理を施した銅箔(回路形成前の銅箔)にレジストを塗工し、回路パターンを形成せずに乾燥させてレジスト付積層体を作製した。続いて、このレジスト付積層体を塩化第二鉄溶液に浸漬させた。浸漬時間は各種表面処理の銅箔から回路を形成するのに要したエッチング時間とした。このようにして得られたレジストの銅箔との接着面をXPSで分析した。これにより、レジストの銅箔除去面の金、白金、パラジウムの合計原子濃度(%)を測定した。
(XPS稼動条件)
レジスト裏側のsurveyスペクトルを作成した際のXPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:8.0×10-8Pa
・X線:単色AlKα、エックス線出力210W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
銅層厚み8μmのメタライジングCCL(日鉱金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)に例1の手順でAu、Pt、Pdを蒸着させ、エッチング性の評価、及び、レジストの銅箔除去面における原子濃度の測定を行った。
9μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同様の手順で銅箔のエッチング面にAu、Pt、Pdを付着させ、ポリイミドフィルムと積層させてエッチングにより回路を形成し、エッチング性の評価、及び、レジストの銅箔除去面における原子濃度の測定を行った。
9μm厚及び12μm厚の圧延銅箔を準備し、それぞれ例1の手順で表面処理を施し、エッチング性の評価、及び、レジストの銅箔除去面における原子濃度の測定を行った。
厚み9μmの圧延銅箔の片面に下記条件でNiめっきを施した後、その反対面に例1の手順でスパッタリングによる表面処理を施した。Niめっきを施した面がエッチング面となるよう、この銅箔に例1の手順でポリイミドフィルムを接着させ、エッチングにより回路を形成し、エッチング性の評価、及び、レジストの銅箔除去面における原子濃度の測定を行った。
・Ni:30g/L
・pH:3.0
・温度:50℃
・電流密度:35A/dm2
・時間:4秒
例1〜5の各測定結果を表1〜4に示す。
実施例1、5、9ではやや裾引きが大きかったものの、両方のレジストパターンで回路を形成することができた。
実施例2〜4、6〜8、10〜15では両方のレジストパターンで裾引きが小さい回路を形成することができた。
表面処理銅箔にポリイミド硬化相当の熱処理を施した実施例16〜18でもレジスト上にAu、Pt、Pdが残存し、裾引きが小さい回路を形成することができた。
実施例19〜21では銅箔が厚くなっても、同等の付着量で裾引きが小さい回路を形成することができた。
実施例22〜24では樹脂との接着面が粗化処理であっても、両方のレジストパターンで裾引きが小さい回路を形成することができた。
銅基材をメタライジングCCLとした実施例25〜27でも、裾引きが小さい回路を形成することができた。
比較例1〜3はAu、Pt、Pdの付着量が過剰であり、初期エッチング性が非常に悪く、銅箔エッチング面の耐腐食性が向上したために、30μmピッチのレジストパターンで回路を形成することができなかった。
ブランク材である比較例4、5では30μmピッチのレジストパターンで銅箔厚み方向のエッチングが完了する前に回路上方でのサイドエッチが進行したために、回路を形成することができなかった。
比較例6では初期エッチング性が悪く、また、サイドエッチング量が大きく、裾引きが大きい回路となった。
図2に、実施例21の回路断面写真を示す。
また、図3に、実施例11におけるレジスト裏側のXPSのsurveyスペクトルを、図4に比較例3により形成された回路を示す写真をそれぞれ示す。なお、surveyスペクトルとはXPSの極表層の分析結果をスペクトルで表したものである。
Claims (12)
- 銅箔基材と、該銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆し、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含む被覆層とを備えた銅箔であって、
前記銅箔の被覆層表面にレジストを形成し、該レジスト形成面の反対側から該銅箔をエッチング除去した後の該レジストの銅箔除去面において、XPSによる表面からの深さ方向分析で、白金、金、及び、パラジウムからなる群から選択される1種以上の合計原子濃度が0.1%以上0.8%以下であり、
前記被覆層における白金の付着量が40〜1050μg/dm 2 、パラジウムの付着量が30〜600μg/dm 2 、金の付着量が40〜1000μg/dm 2 であるプリント配線板用銅箔。 - 前記被覆層における白金の付着量が40〜350μg/dm2、パラジウムの付着量が30〜190μg/dm2、金の付着量が40〜300μg/dm2である請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
- 前記プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1又は2に記載のプリント配線板用銅箔。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔で構成された圧延銅箔又は電解銅箔を準備する工程と、
前記銅箔の被覆層をエッチング面として該銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、
前記積層体を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
を含む電子回路の形成方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
- 銅層と樹脂基板との積層体であって、
前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜3のいずれかに記載の被覆層を備えた積層体。 - 前記銅箔又は銅層に回路が形成されており、該回路の断面形態において、該銅箔又は銅層の前記被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅をW1とし、該回路断面全体で回路幅が最も狭くなる位置が表面から1μmよりも深く、このときの回路幅をW2としたとき、0.5≦W2/W1≦1.0を満たす請求項5又は6に記載の積層体。
- 前記W1及びW2が、0.8≦W2/W1≦1.0を満たす請求項7に記載の積層体。
- 前記回路のピッチが50μm以下であり、エッチングファクターが1.5以上である請求項7又は8に記載の積層体。
- 前記エッチングファクターが、2.5以上である請求項9に記載の積層体。
- 前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項5〜10のいずれかに記載の積層体。
- 請求項5〜11のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
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