JP5806619B2 - アルコールからの硫黄化合物の除去方法 - Google Patents
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Description
本発明の他の目的は、上記アルコールからの硫黄化合物の除去方法による硫黄化合物の除去工程を含む、上記アルコールの製造方法を提供することにある。
本発明のアルコールからの硫黄化合物の除去方法は、硫黄化合物を含有するアルコールと、銀を担持した吸着剤とを接触させることにより、該アルコール中の硫黄化合物を吸着除去し、その後、溶離液及び/又は気体を流通させながら該吸着剤の温度を上昇させ、吸着剤に吸着した硫黄化合物を脱着させることにより該吸着剤より除去し、該吸着剤を反復使用することを特徴とする。
本発明のアルコールからの硫黄化合物の除去方法に供されるアルコールとしては、不純物として有機硫黄化合物などの硫黄化合物を含むアルコールであれば特に限定されず、例えば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のモノオール(例えば、炭素数1〜10のモノオール、好ましくは炭素数1〜4のモノオール);エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール(例えば、炭素数1〜10の2〜6価のアルコール、好ましくは炭素数1〜4の2〜3価のアルコール)などを挙げる事が出来る。上記アルコールは、2種以上の混合物でもよい。また、これらは、0%(重量%、以下同)乃至50%程度の水分などの溶媒を含有するものであってもよい。
硫黄化合物としては、特に限定されないが、特に有機硫黄化合物が挙げられる。有機硫黄化合物としては、C−S結合を有するアルキルスルフィド類が挙げられ、ジメチルスルフィド(DMS)、ジエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、ジ−n−プロピルスルフィド、ジイソプロピルスルフィド等のスルフィド類(特に、炭素数2〜10の対称又は非対称ジアルキルスルフィド);ジメチルジスルフィド、ジメチルペルジスルフィド、2,3−ジチアブタン等のジスルフィド類;メタンチオール、エタンチオール等のチオール類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、3−メチルチオ−1−プロパノール等のスルホキシド類(特に、C2-10−ジアルキルスルホキシド);又は、メチオニン、S−メチル−メチオニン等のS含有アミノ酸などが例示できる。なかでも、硫黄化合物としては、有機硫黄化合物として、天然発酵アルコールには普遍的に含有されるDMS、ジメチルジスルフィドが代表的なものとして挙げられる。
本発明において使用される、銀を担持した吸着剤としては、銀イオンによりイオン交換した陽イオン交換樹脂、銀イオン又は酸化銀をシリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭等の一般的な担体類に担持したものが挙げられる。また、陽イオン交換樹脂としては特に限定されず、市販の陽イオン交換樹脂が使用できる。銀イオンの陽イオン交換樹脂へのイオン交換(本明細書においてイオン交換を担持という場合がある)、及び、銀イオン又は酸化銀の担体への担持は、公知の方法ですることができる。銀イオンの担持量(含有量)としては、担体(イオン交換樹脂を含む)100重量部に対して銀単体の金属重量として、例えば、50重量部以下、好ましくは0.1〜30重量部、更に好ましくは0.1〜20重量部とすることができる。なお、陽イオン交換樹脂における銀イオンの担持量は乾燥重量基準である。
本発明の実施形態としては、吸着剤の充填層にアルコールを連続的に通液させる所謂充填塔方式が実用的には最も簡便、効率的であるが、懸濁床あるいは回分法等、一般に吸着操作に用いられる公知方式の何れでも実施可能である。吸着温度は室温が最も簡便であるが、吸着能力を上げる為、室温以下に冷却してもよい。吸着処理後のアルコール中の硫黄化合物の含有量は、例えば0.1ppm以下とすることができる。
本発明の特徴は、一旦、吸着剤に吸着した硫黄化合物を、溶離液及び/又は気体を流通させながら吸着剤の温度を上げ、脱着させて吸着能力を復活させ、吸着剤の再生反復使用を可能にする点にある。
吸着剤再生時に通液する溶離液としては、吸着処理に付した当該のアルコールであって硫黄化合物を含まないものをそのまま使用するのが最も簡便であるが、他の有機溶剤や水などの他の溶媒を用いる事も可能である。
本発明の硫黄化合物含有量の低減されたアルコールの製造方法は、上記のアルコールからの硫黄化合物の除去方法による硫黄化合物の除去工程を含んでいる。このため、触媒被毒を回避して、カルボン酸エチルエステルの製造、アセトアルデヒドの製造、ブタジエンの製造、エチレンの製造、エチルアミンの製造等の原料などとして使用できる硫黄化合物含有量の低減されたアルコールを、環境への負荷を低減して製造できる。
(1) 酸型イオン交換樹脂であるアンバーリスト15(オルガノ株式会社製)20mLをジャケット付ガラス管(ガラス管の内径12mm、長さ200mm)に充填し、硝酸銀5gを溶解させた水溶液100mLを室温で管に通液して銀イオンを樹脂に担持した後、樹脂層を純水で洗浄した。この時、樹脂層の銀イオンの含有量は、17.6重量%であった。
(2) 樹脂層を室温(25℃)に保持し、発酵法エタノール(DMSを14ppmの濃度で含有;エタノール含有量 93重量%)を、流量4mL/分で通液し、流出液中のDMS濃度をガスクロマトグラフィーにて分析した。流出液中のDMS濃度は通液開始後62時間の間、検出限界である0.1ppm以下を維持した。DMSが破過するまでの通液量は14.9Lであった。
(3) 引き続き、ジャケットに80℃の温水を通液しながら、DMSを含まないエタノール(エタノール含有量 93重量%)を通液方向を逆にして流量4mL/分で流した。
(4) エタノールの通液量が1Lになった時点で、ジャケットに冷水を流して、樹脂層を室温まで冷却した。
(5) (2)と同条件で発酵法エタノールを樹脂層に通液した。DMSが破過するまでのエタノール通液量は11.9Lであった。
(6) 引き続き、(3)(4)と同様の脱着操作と(5)と同様の吸着操作を更に各3回繰り返した。
結果を第1表に、まとめて示した。
(1) 実施例1と同様に銀イオンを担持した酸型イオン交換樹脂アンバーリスト15 (20mL)をステンレス製パイプ(内径6mm、長さ800mm)に充填した。
(2) 充填した樹脂層に室温で15ppmのDMSをふくむ発酵法エタノール(エタノール含有量 93重量%)を流量4mL/分で、流出液中のDMS濃度が0.1ppmを超えるまで流した。流したエタノールの総量は11.2Lであった。
(3) 樹脂層にエタノール通液方向とは逆向きに水蒸気を流量1000mL/分で約1時間通気した。この間、樹脂層の温度は約100℃に保持された。
(4) 樹脂層を室温まで冷却後、(2)と同様に15ppmのDMSをふくむ発酵法エタノールを流した。DMSの破過(DMS濃度0.1ppm以上)までに流したエタノール量は10.1Lであった。
(5) 引き続き、(3)と同様の脱着操作と(4)と同様の吸着操作を更に各3回繰り返した。
結果を第2表に、まとめて示した。
(1) 実施例1と同様に銀イオンを担持した酸型イオン交換樹脂アンバーリスト15 (20mL)をステンレス製パイプ(内径6mm、長さ800mm)に充填した。
(2) 充填した樹脂層に室温で15ppmのDMSをふくむ発酵法エタノール(エタノール含有量 93重量%)を流量4mL/分で流出液中のDMS濃度が0.1ppmを超えるまで流した。流したエタノールの総量は11.1Lであった。
(3) 樹脂層にエタノール通液方向とは逆向きに窒素ガス(100vol%)を流量1000mL/分で約1時間通気した。この間、ステンレス製パイプをテープヒーターで加熱する事により、樹脂層の温度を約110℃に保持した。
(4) 樹脂層を室温まで冷却後、(2)と同様に15ppmのDMSをふくむ発酵法エタノールを流した。DMSの破過(DMS濃度0.1ppm以上)までに流したエタノール量は10.4Lであった。
(5) 引き続き、(3)と同様の脱着操作と(4)と同様の吸着操作を更に各3回繰り返した。
結果を第3表に、まとめて示した。
(1) 市販の触媒用シリカ担体(富士シリシア製Q10;平均粒径3mm)20mLに硝酸銀水溶液(濃度16重量%、8mL)を含浸させ110℃で乾燥後、500℃で空気中焼成し、銀を10重量%(金属重量として)シリカビーズに担持した吸着剤を調製した。
(2) ジャケット付ガラス管(ガラス管の内径12mm、長さ200mm)に(1)の吸着剤を充填し、吸着剤層に室温で15ppmのDMSをふくむ発酵法エタノール(エタノール含有量 93重量%)を流量4mL/分で流出液中のDMS濃度が0.1ppmを超えるまで流した。流したエタノールの総量は4.4Lであった。
(3) 引き続き、ジャケットに80℃の温水を通液しながら、DMSを含まないエタノール(エタノール含有量 93重量%)を通液方向を逆にして流量4mL/分で流した。
(4) エタノールの通液量が0.5Lになった時点で、ジャケットに冷水を流して、樹脂層を室温まで冷却した。
(5) (2)と同条件で発酵法エタノールを樹脂層に通液した。DMSが破過するまでのエタノール通液量は3.6Lであった。
(6) 引き続き、(3)(4)と同様の脱着操作と(5)と同様の吸着操作を更に各3回繰り返した。
結果を第4表に、まとめて示した。
(1) 酸型イオン交換樹脂であるアンバーリスト15に銀イオンを乾燥重量基準で17.6重量%担持させた樹脂を、56重量%の水を含有する状態でジャケット付ガラス管(ガラス管の内径18mm)に25g充填した。充填後の樹脂高さは10cmであった。
(2) 温水をジャケットに通液して樹脂層を25℃に保持し、発酵法エタノール(DMSを5ppmの濃度で含有;エタノール含有量 93重量%、水分 7重量%)を、流量1.7mL/分で通液し、流出液中のDMS濃度をガスクロマトグラフィーにて分析した。流出液中のDMS濃度は通液開始後336時間の間、検出限界である0.1ppm以下を維持した。DMSが破過するまでの通液量は34.2Lであった。
(3)(2)の樹脂を脱イオン水で洗い、そのうち10gをステンレス製パイプ(内径8mm)に充填した。充填時の樹脂高さは、20cmであった。パイプに一定の速度(吸着剤20mL当たり、8785mL/分)で水蒸気を通気し、パイプ出口にはジャケットに水を流したガラス製コンデンサーを設け、パイプに吹き込んだ水蒸気を全て凝縮させた。得られた凝縮水の留出速度は155g/時間であった。パイプの出口部の温度は100℃であった。水蒸気通気は4時間継続した。凝縮水を分析し、終了時点ではDMSは検出されなかった。
(4)(3)の樹脂を水蒸気通気した樹脂をパイプから取り出し、DMS4000ppmを含有するエタノール(エタノール 93重量%、水 7重量%)25gと混合、室温(25℃)で震盪させながら10時間保持した。ろ過で樹脂と液を分離し、分離した液相中のDMSは6.5ppmに低下していた。(1)に使用したのと同じ樹脂10gを同様に操作すると、分離した液相中のDMSは6ppmであり、(3)の操作により吸着能力が回復していることが確認された。
(1)実施例5の(1)で用いたのと同じ酸型イオン交換樹脂であるアンバーリスト15に銀イオンを乾燥重量基準で17.6重量%担持させた樹脂10g(水分56重量%含有)を、DMS4000ppmを含有するエタノール(エタノール 93重量%、水 7重量%)25gと混合、室温(25℃)で震盪させながら10時間保持した。ろ過で樹脂と液を分離し、分離した液相中のDMSは6ppmに低下していた。分離した樹脂を水蒸気再生実験原料とした。
(2)(1)の樹脂を脱イオン水で洗い、ステンレス製パイプ(内径8mm)に充填した。充填時の樹脂高さは、20cmであった。パイプに一定の速度(吸着剤20mL当たり、4988mL/分)で水蒸気を通気し、パイプ出口にはジャケットに水を流したガラス製コンデンサーを設け、パイプに吹き込んだ水蒸気を全て凝縮させた。得られた凝縮水の留出速度は88g/時間であった。パイプの出口部の温度は100℃であり、出口には蒸気と凝縮水が混在した。水蒸気通気は5時間継続した。凝縮水を分析し、終了時点ではDMSは検出されなかった。また、3時間目までにDMSの排出が95%以上終了していた。
(3)水蒸気通気した樹脂をパイプから取り出し、DMS4000ppmを含有するエタノール(エタノール 93重量%、水 7重量%)25gと混合、室温(25℃)で震盪させながら10時間保持した。ろ過で樹脂と液を分離し、分離した液相中のDMSは6.5ppmに低下していた。
(1)実施例6の(1)と同じ操作を2度繰り返し、水蒸気再生実験原料とした。
(2)(1)の樹脂を脱イオン水で洗い、そのうち17.5gをステンレス製パイプ(内径8mm)に充填した。充填時の樹脂高さは、35cmであった。パイプに一定の速度(吸着剤20mL当たり、2332mL/分)で水蒸気を通気し、パイプ出口にはジャケットに水を流したガラス製コンデンサーを設け、パイプに吹き込んだ水蒸気を全て凝縮させた。得られた凝縮水の留出速度は72g/時間であった。パイプの出口部の温度は100℃であり、出口には蒸気と凝縮水が混在した。水蒸気通気は6時間継続した。凝縮水を分析し、終了時点ではDMSは検出されなかった。また、3時間目までにDMSの排出が95%以上終了していた。
(3)水蒸気通気したパイプから取り出した樹脂のうち10gをDMS4000ppmを含有するエタノール(エタノール 93重量%、水 7重量%)25gと混合、室温(25℃)で震盪させながら10時間保持した。ろ過で樹脂と液を分離し、分離した液相中のDMSは7ppmに低下していた。
Claims (4)
- 硫黄化合物としてジメチルスルフィドを含有するアルコールと、銀を担持した吸着剤とを接触させることにより、該アルコール中の硫黄化合物を吸着除去し、その後、溶離液及び/又は気体を流通させながら該吸着剤の温度を200℃以下まで上昇させ、吸着剤に吸着した硫黄化合物を脱着させることにより該吸着剤より除去し、該吸着剤を反復使用することを特徴とするアルコールからの硫黄化合物の除去方法。
- アルコールがエタノールである、請求項1記載のアルコールからの硫黄化合物の除去方法。
- 吸着剤が銀イオンを担持した陽イオン交換樹脂である請求項1又は2記載のアルコールからの硫黄化合物の除去方法。
- 請求項1〜3の何れかに記載のアルコールからの硫黄化合物の除去方法による硫黄化合物の除去工程を含む、硫黄化合物含有量の低減されたアルコールの製造方法。
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