以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の車両用の繰出装置VS1は、図1,2に示すように、歩行者の車両Vとの衝突時に、車両Vのフードパネル5の前端5aと後端5bとを上昇させて、保護対象物としての歩行者を、エンジンルームERから上昇させて衝撃力を緩和可能な状態としたフードパネル5により、受け止めることができるように、繰出部11をフードパネル5とともに待機位置WPから繰出位置SPまで移動させるものである。そして、第1実施形態の繰出装置VS1は、フードパネル5の前端5aと後端5bとの左右両側の4箇所に配置されて、それぞれ、繰出部11を有した繰出ユニット10(10F,10F,10R,10R)と、所定のセンサ102,103の信号を入力して、各繰出ユニット10の作動を制御する制御装置101と、を備えて構成される。
なお、フードパネル5の前端5aの左右両側における繰出ユニット10Fの繰出部11は、ロックストライカ6aやラッチ6b等を備えて構成されるフードロック装置6を保持し、繰出位置SPへの繰出時、フードロック装置6ごと、フードパネル5の前端5aを上昇させる構成としている。フードパネル5の後端5bの左右両側における繰出ユニット10Rの繰出部11は、ヒンジベース7aやヒンジアーム7bを備えてなるヒンジ装置7を保持し、繰出位置SPへの繰出時、ヒンジ装置7ごと、フードパネル5の後端5bを上昇させる構成としている。
センサ102は、車両Vのフロントバンパ4内に配設される加速度センサや圧力センサ等からなって、歩行者の車両Vとの実際の衝突を検知可能な衝突検知センサ102であり、センサ103は、車両Vの室内側の図示しないバックミラー付近に、歩行者の車両Vに対する接近を検知して歩行者の車両Vとの衝突を予測可能なミリ波レーダやカメラ等からなる衝突予測センサ103である。そして、衝突検知センサ102や衝突予測センサ103からの信号を入力した制御装置101が、各繰出ユニット10(10F,10F,10R,10R)を同時に作動させるように構成されている。
また、フードパネル5の前端5a側の繰出ユニット10Fは、ラジエータ等を支持するボディ側支持部材としてのサポートメンバ8に、後述するケース45を取り付けて配設され、フードパネル5の後端5b側の繰出ユニット10Rは、ボディ側支持部材としてのフードリッジリインホース9に、ケース45を取り付けて配設されている。そして、前方の繰出ユニット10Fが、ケース45の横断面の長手方向を左右方向に沿わせて配置させ、後方の繰出ユニット10Rが、ケース45の横断面の長手方向を前後方向に沿わせて配置させて、ケース45の配置方向とボディ側支持部材への配置位置が異なっているものの、これらの繰出ユニット10F,10Rは、同一のものである。
そして、各繰出ユニット10は、それぞれ、図3,4に示すように、繰出部11、圧縮コイルばね18、ロックレバー20、ねじりばね31、火薬式のアクチュエータ35、ケース45、及び、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55を備えて構成されている。火薬式のアクチュエータ35は、薬剤の点火によって発生した燃焼ガスを作動用流体とするもので、制御装置101から作動信号を入力したガス発生器37が燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスによって、可動部位としてのピストンロッド38を繰出方向SDに沿って素早く突出させるものである。
そして、制御装置101は、衝突検知センサ102からの衝突検知信号を入力した場合には、各繰出部11を迅速に繰り出すことができるように、各繰出ユニット10のアクチュエータ35を作動させ、衝突予測センサ103からの衝突予測信号を入力した場合には、各繰出ユニット10の電磁ソレノイド55を作動させるように、制御することとなり、アクチュエータ35の作動は、例えば、歩行者の車両Vとの実際の衝突から30ms程度後となり、電磁ソレノイド55の作動は、歩行者の車両Vとの衝突前、例えば、実際の衝突の100ms程度前に行われる。
なお、第1実施形態では、制御装置101が、各繰出ユニット10に対し、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55を作動させた後に、衝突検知センサ102からの信号を入力しても、火薬式アクチュエータ35を作動させないように、設定されている。
また、繰出ユニット10の説明では、特に断らない限り、図3,4に示すように、直方体形状のケース45の横断面の長手方向を左右方向に沿わせた状態として、説明する。
繰出ユニット10のケース45は、ボディ側支持部材としてのサポートメンバ8やフードリッジリインホース9に取り付けられて、内部に、圧縮コイルばね18等の各部品を収納している。ケース45は、板金等から形成され、長方形状の底壁部46、底壁部46の外周縁から上方に延びる周壁部48、及び、底壁部46の上方に配設される支持壁部47、を備えて構成される。底壁部46上には、アクチュエータ35と電磁ソレノイド55とが取り付けられている。
支持壁部47上には、左右両側に、円柱状の支持部47bを設けてなるばね座47aが配設され、各ばね座47aには、圧縮コイルばね18の下端が組み付けられている。また、支持壁部47には、圧縮コイルばね18,18の間におけるアクチュエータ35の側方に、ロックレバー20の後述する連結片部28側を挿通させる挿通孔47cが開口し、ロックレバー20を揺動可能としている。なお、挿通孔47cの内周面の右縁側は、ロックレバー20が戻し用のねじりばね31の付勢力を受けても、図3中、反時計回り方向に戻り過ぎないように(換言すれば、繰出部11の復帰時に、ロックレバー20の後述する復元用摺動部としての復元用摺動面27に対し、後述するロックピン17が円滑に当接して摺動可能なように)、位置規制する規制面47dとしている。
周壁部48における左右方向で対向する側壁49,49には、繰出部11の繰出方向SDに沿って延びる(換言すれば、上下方向に沿って延びる)ガイド溝50が配設されている。これらのガイド溝50には、繰出部11に設けられたストッパピン15が配設される。そして、ガイド溝50は、上縁側を、繰出部11を繰出位置SPで停止させるように、ストッパピン15を位置規制する繰出側規制面50aとして、構成されている。なお、ガイド溝50の下縁側は、繰出部11が待機位置WPで停止されても、ストッパピン15との間に隙間を開けるように構成されている。
さらに、周壁部48における前後方向で対向する側壁51,51間には、上下方向の略中間位置付近で、前後方向に沿った支持軸21が、固着されている。支持軸21は、ロックレバー20を左右方向に沿って回動可能に支持するものである。
左右の側壁49,49の上端には、繰出ユニット10をサポートメンバ8やフードリッジリインホース9に固定するための取付部52が配設されている。
繰出部11は、ケース45の上端側の内側に嵌合するように配設され、フードロック装置6やヒンジ装置7を保持する長方形板状の保持壁部12と、保持壁部12の外周縁から下方に延びる周壁部13と、を備えて構成される。周壁部13の左右方向で対向する側壁14,14には、ガイド溝50に嵌まる既述のストッパピン15が突設されている。
圧縮コイルばね18,18は、ケース45の支持壁部47と繰出部11の保持壁部12との間に配設されて、常時、保持壁部12を上方に付勢している。実施形態の場合、これらのばね18は、フードロック装置6やヒンジ装置7ごと、フードパネル5を急激に押上可能な復元力(反発力、付勢力)を有して構成されている。
さらに、周壁部13の前後方向で対向する側壁16,16には、支持軸21の上方に、前後方向に沿ったロックピン17が固着されている。ロックピン17は、ロックレバー20の係止片部22に係止される被係止部を構成するものであり、金属製の丸棒から形成されている。
ロックレバー20は、繰出部11を待機位置WPで停止させるように係止する係止部を構成するものであり、支持軸21から繰出方向SDの上方に延びる係止片部22と、支持軸21から下方に延びる連結片部28と、を備えて構成される。ロックレバー20は、支持軸21によって、左右方向に揺動可能に支持され、さらに、支持軸21の周囲に配設される付勢手段としてのねじりばね31により、ロックピン17を係止する方向、換言すれば、図3中、反時計回り方向、に付勢されている。
係止片部22は、支持軸21から上方に延びる首部23と、首部23の上端側で左方に突出するような三角板状の頭部24と、を備えて構成される。頭部24は、支持軸21側の下面側をロックピン17を係止する係止面25とし、支持軸21から離れる上面側を復元用摺動部としての復元用摺動面27としている。係止面25は、首部23の近傍側に、首部23と直交方向に突出し、外れることなくロックピン17を係止する直交面部25aを配設させ、係止面25と復元用摺動面27との境界となる反転頂部26側に、首部23から離れる斜め上方向に曲がりつつ延びる当接面部25bを配設している。当接面部25bは、アクチュエータ35の後述する係止部用押圧面43aと当接する部位となり、アクチュエータ35が作動して、当接面部25bが押し上げられれば、図10〜12に示すように、ロックレバー20が、支持軸21を中心として、時計回り方向に回転して、係止片部22の係止面25がロックピン17から外れて係止解除状態となる。
なお、各繰出ユニット10のロックレバー20が係止解除となれば、ばね18,18の復元力により、各繰出部11が上方に押し上げられ、フードロック装置6やヒンジ装置7ごと、フードパネル5の全体が上昇することとなる。
復元用摺動面27は、反転頂部26から斜め上方向に傾斜して延びるように形成されている。この復元用摺動面27は、図7〜9に示すように、係止片部22が、繰出後における繰出部11の待機位置WPへの復帰時、ねじりばね31の付勢力を利用して、ロックピン17に押し戻されつつ、ロックピン17を係止する係止状態に復元するように、ロックピン17の案内面(外周面)17aと摺動するように、形成されている。
連結片部28は、ケース45の支持壁部47の挿通孔47cを経て下方に突出し、下端を連結軸29を利用して、電磁ソレノイド55の作動部(可動部位)56に連結されている。
電磁ソレノイド55は、プッシュ型のものであり、制御装置101からの作動用信号の入力時、可動鉄心からなる作動部56が左方側に突出するように、作動し、その際、ロックレバー20は、図3中、時計回り方向に回転し、係止片部22がロックピン17から外れることとなる(図5,6参照)。
連結片部28の支持軸21から連結軸29までの長さ寸法CLは、電磁ソレノイド55の作動時に、ばね18,18によって上方へ付勢されたロックピン17が係止片部22の係止面25に対する摩擦力を大きくしていても、極力、迅速に、ロックレバー20を係止解除状態の図5中の時計回り方向に回転可能に、十分な回転モーメントを作用可能な寸法に設定されている。
また、ロックレバー20は、ロックピン17から外れた後は、電磁ソレノイド55への通電を停止させていれば、ねじりばね31の付勢力により、連結片部28が支持壁部47の挿通孔47cの内周面における規制面47dに当接するように、反時計回り方向に回転し、繰出部11の繰出に伴なって上昇したロックピン17の直下に、復元用摺動面27を配置させる状態となる。
火薬式のアクチュエータ35は、薬剤の点火によって燃焼ガスを発生させるガス発生器37をシリンダ36内に配設させ、ガス発生器37の燃焼ガスにより、シリンダ36内に配設された可動部位としてのピストンロッド38を上昇させる構成としている。ピストンロッド38は、ガス発生器37近傍のピストン部39と、ピストン部39から上方に延びるロッド部40と、を備えて構成される。ロッド部40の先端部(上端部)としてのヘッド41は、略軸直交方向に拡径する鍔部43と、鍔部43の中央から上方へ突出する小径部42と、を備えて構成される。鍔部43の上面は、上方に向かうに従って先細りとなるテーパ面として、ロックレバー20におけるロックピン17の係止を解除させるように、上昇時に、図10,11に示すように、係止片部22の当接面部25bに当接して、ロックレバー20を支持軸21を中心として時計回り方向に回転させる係止部用押圧面43aとしている。小径部42の先端面は、水平面に沿う平面として、繰出部11の保持壁部12を押し上げる繰出部用押圧面42aとしている。
アクチュエータ35のヘッド41は、アクチュエータ35の作動時、図10,11に示すように、係止部用押圧面43aが係止片部22の当接面部25bに当接して、ロックレバー20を時計回り方向に回転させ、そして、図12に示すように、係止部用押圧面43aの外縁43b付近が反転頂部26と接触するような位置まで上昇すると、繰出部用押圧面42aが繰出部11の保持壁部12に当接するように構成されている。
この時、ロックレバー20は、ロックピン17を、直交面部25aから離脱させて、直交面部25a近傍の当接面部25bに配置させる位置まで回転する。そのため、ロックレバー20は、圧縮コイルばね18,18の付勢力とアクチュエータ35の作動とによって押し上げれられる繰出部11に設けられたロックピン17自体に、当接面部25bを押圧されて、図12,13に示すように、時計回り方向に回転して、ロックピン17から外れることとなる。
また、アクチュエータ35は、可動部位としてのピストンロッド38の作動ストロークALを、圧縮コイルばね18による繰出部11の繰出距離SLより、短くしている。実施形態の場合、作動ストロークALは、繰出距離SLの7割程度とし、かつ、繰出部11を繰出距離SLの半分程度の距離分しか、繰出部11を押圧していない。
そして、第1実施形態の繰出装置VS1では、例えば、歩行者が車両Vの側方から急激に飛び出して、車両Vと衝突した場合には、制御装置101が、衝突予測センサ103からの信号を入力させること無く、衝突検知センサ102からの衝突検知信号を入力して、各繰出ユニット10のアクチュエータ35のガス発生器37に点火信号を出力する。
すると、図10〜12に示すように、各繰出ユニット10(10F,10F,10R,10R)の火薬式アクチュエータ35の可動部位としてのピストンロッド38が上昇して、ヘッド41を係止片部22の当接面部25bに当接させ、係止部としてのロックレバー20を係止解除状態となるように時計回り方向に回転移動させることから、撓ませたばね18,18の復元力が繰出部11に作用して、繰出部11が、ばね18,18を駆動源として、待機位置WPから繰出位置SPまで繰り出され、その結果、フードパネル5の全体が上昇して、衝撃を緩和させて、フードパネル5が歩行者を受け止めることができる。
なお、この火薬式のアクチュエータ35は、作動時、薬剤の点火によって発生した燃焼ガスを作動用流体として、ロックレバー20を移動させることから、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55より、迅速にロックレバー20を移動させることができて、制御装置101が車両の実際の衝突時を検知する衝突検知信号を入力した際に、作動するアクチュエータとして、好適となる。
また、第1実施形態の繰出装置VS1では、例えば、歩行者が車両Vに接近して、車両Vが歩行者との衝突を回避できないとして、衝突を予測できる状態となった際、制御装置101は、衝突予測センサ103からの衝突予測信号を入力して、各繰出ユニット10の電磁ソレノイド55を作動させる信号を出力する。
すると、各繰出ユニット10(10F,10F,10R,10R)は、電磁ソレノイド55の作動部56が押し出され、図5,6に示すように、ロックレバー20が、支持軸21を中心として、時計回り方向に回転し、係止面25をロックピン17から離脱させ、係止解除状態となることから、圧縮ばね18,18の付勢力により、繰出部11が待機位置WPから繰出位置SPまで繰り出され、フードパネル5の全体を上昇させることができる。
そして、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55の作動後、衝突が回避されていれば、フードパネル5の全体を下降させて、繰出部11を待機位置WPへ復帰させることができる。すなわち、その際、係止部としてのロックレバー20が、ねじりばね31の付勢力を利用し、ロックピン17の案内面17aに復元用摺動面27を摺動させて、まず、図7,8に示すように、ロックピン17に押し戻されつつ、時計回り方向に回転する。ついで、ロックレバー20は、図8,9に示すように、反転頂部26がロックピン17を乗り越えれば、ねじりばね31の付勢力により、反時計回り方向に回転して、係止面25の直交面部25aの位置にロックピン17を配置させて、ロックピン17を係止する係止状態に復元できる。
そのため、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55の作動後、実際の車両Vの衝突がなければ、適宜、電磁ソレノイド55への通電を止めて、作動部56を逆駆動させつつつ、各繰出部11を、フードパネル5ごと、待機位置WPに復帰させるように下方に押し込めば、ロックピン17に摺動する復元用摺動面27やロックレバー20を係止状態に付勢する付勢手段としてのねじりばね31を利用し、円滑に、係止部としてのロックレバー20もロックピン17を係止した係止状態に復元でき、火薬式アクチュエータ35も未使用であり、第1実施形態の車両用繰出装置VS1では、衝突を回避した場合に部品の交換をせずに、次の衝突に備えることができる。
そしてまた、第1実施形態の繰出装置VS1は、各繰出ユニット10の繰出部11を繰り出す駆動源をばね18,18として、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55や火薬式アクチュエータ35は、作動時、係止部としてのロックレバー20を係止解除状態に移動させるだけで、繰出部11を繰出位置SPまで移動させるもので無いことから、各アクチュエータ35,55の作動ストロークを小さくでき、各アクチュエータ35,55の可動部位(ピストンロッド38や作動部56)に連動する係合部の部位(頭部24の当接面部25bや連結片部28の連結軸29)の強度等も低減できて、繰出装置VS1を簡便でコンパクトに構成することができる。
したがって、第1実施形態の繰出装置VS1では、衝突予測時と衝突時とに繰出部11を繰り出し可能とし、かつ、衝突を回避した場合に部品の交換をせずに対応可能にでき、そして、簡便に構成することができる。
なお、可逆式アクチュエータとして、実施形態では、電磁ソレノイド55を例示したが、作動時の可動部位(作動部)を復帰可能(復元可能)に作動できれば、電動アクチュエータ、エアシリンダ、油圧シリンダ等を使用してもよい。
また、第1実施形態の繰出装置VS1では、係止部としてのロックレバー20が、支持軸21に支持されて回動可能に配設されるとともに、被係止部としてのロックピン17に係止可能に支持軸21側から延びる係止片部22と、支持軸21側から延びて、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55における作動時に動作する可動部位としての作動部56と連結される連結片部28と、を備えて構成されている。さらに、火薬式アクチュエータ35が、作動時に動作する可動部位としてのピストンロッド38を、作動前の状態で、係止片部22から離隔させ、かつ、作動時に、係止解除方向に回転させるように係止片部22を押圧可能として、配設されている。
そのため、実施形態の繰出装置VS1では、被係止部としてのロックピン17を係止する係止部としてのロックレバー20の係止状態から係止解除状態となる移動が、支持軸21周りの回転となる。そして、電磁ソレノイド55が、ロックレバー20を係止解除状態に移動させる際、すなわち、撓ませたばね18,18の付勢力を受けた状態のロックピン17からロックレバー20を外すように、ロックレバー20を回転させる際、強い力が必要となっても、連結片部28における支持軸21から電磁ソレノイド55の作動部56との連結部位までの長さ寸法CLを大きく設定すれば、回転モーメントを大きく確保できて、容易に、電磁ソレノイド55がロックレバー20を係止解除状態に移動可能となる。そして、ばね18の付勢力が大きくとも、円滑に、電磁ソレノイド55がロックレバー20を係止解除状態に移動できることから、逆に、ばね18の付勢力(復元力)を大きく設定できて、作動時の繰出部11の繰出速度や繰出力を大きくすることができる。
また、火薬式アクチュエータ35は、その可動部位としてのピストンロッド38を、作動前の状態で、ロックレバー20の係止片部22から離隔させていることから、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55は、火薬式アクチュエータ35の影響を受けること無く、独立して、ロックレバー20を係止解除状態に移動させることができる。
さらに、第1実施形態の繰出装置VS1では、制御装置101が、車両Vの衝突予測信号を入力して各繰出ユニット10の可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55を作動させた後に、車両Vの衝突検知信号を入力した際には、火薬式アクチュエータ35を作動させない設定としている。
このような構成では、電磁ソレノイド55の作動後、実際の車両Vの歩行者との衝突があっても、その際には、既に、電磁ソレノイド55の作動により、ロックレバー20が係止解除状態に移動し、ばね18,18が復元力を発揮して、繰出部11を繰出位置SPに配置させ、フードパネル5を上昇させている。
そのため、既に、電磁ソレノイド55が作動されて、繰出部11が繰出位置SPに配置されていれば、火薬式アクチュエータ35を作動させなくともよい。そして、車両Vの衝突後、待機位置WPまで繰出部11を復帰させれば、極力、部品交換を抑えて、各部品を再使用できる。
すなわち、フードパネル5を押し下げつつ、各繰出ユニット10の繰出部11を待機位置WPまで復帰させれば、その際、既述したように、ロックレバー20が、ねじりばね31の付勢力を利用し、ロックピン17に復元用摺動面27を摺動させて、ロックピン17に押し戻されつつ、円滑に、ロックピン17を係止する係止状態に復元できる。
そのため、第1実施形態では、電磁ソレノイド55が作動すれば、実際の車両Vの歩行者との衝突が無くとも、あるいは、実際の車両Vの歩行者との衝突があっても、その後、適宜、電磁ソレノイド55を逆駆動させつつつ、繰出部11を待機位置WPに復帰させれば、ロックピン17に摺動する復元用摺動面27やロックレバー20を係止状態に付勢するねじりばね31を利用し、円滑に、ロックレバー20もロックピン17を係止した係止状態に復元でき、火薬式アクチュエータ35も未使用であることから、衝突を回避した場合や実際の衝突があっても、部品の交換を極力行わずに、次の衝突に備えることができる。
また、第1実施形態の繰出装置VS1では、各繰出ユニット10の火薬式のアクチュエータ35の作動時、図10〜12に示すように、アクチュエータ35が、ガス発生器37から燃焼ガスを吐出するため、可動部位としてのピストンロッド38が上昇し、先端のヘッド41の係止部用押圧面43aがロックレバー20の係止片部22における当接面部25bに当接し、係止片部22を、ロックピン17への係止状態から係止解除状態とするように、支持軸21を中心として、時計回り方向に回転させる。と同時に、ピストンロッド38の繰出部用押圧面42aが、繰出部11の保持壁部12に当接して、繰出部11の繰出初期における圧縮コイルばね18,18の補助繰出手段として作用し、繰出部11を押し上げ、また、ロックピン17自体にロックレバー20の当接面部25bが押し上げられ、ロックレバー20がロックピン17から外れる。
そのため、繰出部11が、繰出初期に、図12,13に示すように、アクチュエータ35の押圧力の補助を受け、その後、ロックレバー20の係止解除による圧縮コイルばね18,18の復元力により、図13の二点鎖線に示すように、繰出部11が、繰出位置SPまで迅速に繰り出されて、フードパネル5の全体を、フードロック装置6やヒンジ装置7ごと、上昇させることができる。
以上のように、第1実施形態の繰出装置VS1では、作動時、火薬式のアクチュエータ35の可動部位としてのピストンロッド38が、繰出部11の繰出方向SDに沿って上昇移動して、係止解除状態へ係止部としてのロックレバー20を移動させて、圧縮ばね18の復元力を繰出部11に作用させるとともに、繰出部11を繰出方向SDに押圧して迅速に移動開始させることができる。
したがって、第1実施形態の繰出装置VS1では、火薬式アクチュエータ35の作動時、繰出部11の移動を圧縮ばね18,18で行うこととしても、繰出初期の繰出部11の移動開始を迅速に行うことができる。
なお、実施形態の場合、アクチュエータ35のピストンロッド38が繰出部11と当接しない状態とした場合に比べて、繰出開始から繰出完了までの時間を、4割程度短縮できた(5msを3msに短縮できた)。
特に、第1実施形態の繰出装置VS1では、アクチュエータ35が、作動時に、可動部位としての可動ロッドであるピストンロッド38を、繰出部11の繰出方向SDに沿って上昇移動させ、かつ、繰出部11の待機位置WPから繰出位置SPまでの繰出距離SLの全長にわたって押圧せずに、押圧距離を短くするように構成されている。そして、ピストンロッド38の先端部としてのヘッド41が、ロックレバー20を係止解除状態に移動させる係止部用押圧面43aと、係止部用押圧面43aとずれた位置に配置されて、繰出部11を押圧する繰出部用押圧面42aと、を備えて構成されるとともに、繰出部用押圧面42aが、係止部用押圧面43aによるロックレバー20の係止解除の完了前に、繰出部11を押圧するように構成されている。
そのため、第1実施形態では、アクチュエータ35のピストンロッド38が、繰出部11の繰出方向SDに沿って上昇移動して、その先端部の係止部用押圧面43aにより、ロックレバー20を係止解除状態に移動させ、かつ、繰出部用押圧面42aにより、繰出部11を繰出方向SDに移動させることができる。そして、図12に示すように、繰出部用押圧面42aが、係止部用押圧面43aによるロックレバー20の係止解除の完了前に、繰出部11を押圧し始めることから、圧縮ばね18の復元力が繰出部11に十分に作用する直前には、既に、アクチュエータ35のピストンロッド38の押圧力が繰出部11に作用しており、一層、繰出初期の繰出部11の移動開始のタイミングを早めることとができるとともに、さらに、移動開始の移動速度も高めることができる。
第2実施形態の車両用の繰出装置VS2は、図14〜16に示すように、一つの繰出ユニット10Aと、制御装置101Aとを備えて構成され、車両Vの前面衝突時、保護対象物としての運転者Dの膝Kを受け止める膝受止パネル68を、待機位置WPから後方の繰出位置SPまで繰り出すように作動される。
第2実施形態の繰出装置VS2は、車両Vの図示しないフロントバンパ内に、他の車両や障害物等の車両Vとの実際の衝突を検知可能な加速度センサや圧力センサ等からなる衝突検知センサ102Aを配設させるとともに、車両Vの室内側の図示しないバックミラー付近に、障害物等の車両Vに対する接近を検知して障害物等の車両Vとの衝突を予測可能なミリ波レーダやカメラ等の衝突予測センサ103Aを配設させ、そして、衝突検知センサ102Aや衝突予測センサ103Aからの信号を入力した制御装置101Aが、繰出ユニット10Aのアクチュエータ35,55を作動させるように構成されている。
繰出ユニット10Aは、図14,15に示すように、第1実施形態と同様に、繰出部11、圧縮コイルばね18、ロックレバー20、ねじりばね31、火薬式のアクチュエータ35、ケース45、及び、可逆式のアクチュエータとしての電磁ソレノイド55、を備えて構成されている。
そして、制御装置101Aは、衝突検知センサ102Aからの信号を入力した場合には、繰出部11を迅速に繰り出すことができるように、アクチュエータ35を作動させ、衝突予測センサ103Aからの信号を入力した場合には、電磁ソレノイド55を作動させるように、制御することとなり、アクチュエータ35の作動は、例えば、車両Vの実際の衝突から30ms程度後となり、電磁ソレノイド55の作動は、車両Vの衝突前、例えば、実際の衝突の100ms程度前に行われる。なお、この第2実施形態の繰出装置VS2でも、制御装置101Aが、可逆式アクチュエータとしての電磁ソレノイド55を作動させた後に、衝突検知センサ102Aからの信号を入力しても、火薬式のアクチュエータ35を作動させないように、設定されている。
膝受止パネル68は、繰出部11に保持され、運転席前方のステアリングコラム60の下方のインパネ(インストルメントパネル)65に囲まれて配設されている。ステアリングコラム60は、ステアリングホイール64を締結するメインシャフト61と、コラムチューブ62と、コラムカバー63と、を備えて構成されている。
そして、繰出ユニット10Aは、膝受止パネル68を保持壁部12の後面で保持した繰出部11を後方移動させるように繰出可能に、インパネリインフォースメント66から延びるボディ側支持部材としての支持ブラケット67に取り付けて、配設されている。
この第2実施形態でも、制御装置101Aが、衝突センサ102Aからの車両Vの衝突を検知した信号を入力させれば、火薬式のアクチュエータ35を作動させる。そして、アクチュエータ35が作動すれば、図示しないガス発生器から燃焼ガスを吐出するため、可動部位としてのピストンロッド38が後方移動し、先端のヘッド41の係止部用押圧面43aが係止部としてのロックレバー20の係止片部22における当接面部25bに当接し、係止片部22を、被係止部としてのロックピン17への係止状態から係止解除状態とするように、支持軸21を中心として、図16のA中、時計回り方向に回転させる。と同時に、ピストンロッド38の繰出部用押圧面42aが、繰出部11の保持壁部12に当接して、繰出部11の繰出初期における圧縮コイルばね18,18の補助繰出手段として作用し、繰出部11を後方へ押し出し、また、ロックピン17自体にロックレバー20の当接面部25bが後方へ押し出され、ロックレバー20がロックピン17から外れることから、圧縮ばね18,18の復元力により、繰出部11とともに膝受止パネル68を繰出位置SPに配置させることができる。
そして勿論、この繰出装置VS2でも、制御装置101Aが衝突予測センサ103Aからの信号を入力すれば、電磁ソレノイド55を作動させて、ロックレバー20を係止解除方向に回転させるため、圧縮ばね18,18の復元力により、繰出部11とともに膝受止パネル68を繰出位置SPに配置させることができ、その後の車両Vの前面衝突時の前方移動する運転者Dの膝Kを的確に受け止めることができる。そして、この場合でも、電磁ソレノイド55を作動させただけであれば、繰出部11を繰り出しても、アクチュエータ35を作動させていないことから、アクチュエータ35を交換せずに、再使用することができる。
ちなみに、繰出位置SPの繰出部11を膝受止パネル68とともに待機位置WPに復帰させる場合も、第1実施形態と同様に、電磁ソレノイド55への通電を止めて、作動部56を逆駆動させつつつ、繰出部11を待機位置WPに復帰させるように前方に押し込めば、ロックピン17に摺動する復元用摺動面27やロックレバー20を係止状態に付勢する付勢手段としてのねじりばね31を利用し、円滑に、係止部としてのロックレバー20がロックピン17を係止した係止状態に復元でき、繰出部11も復元できる。
したがって、第2実施形態の繰出装置VS2でも、第1実施形態と同様に、衝突予測時と衝突時とに繰出部11を繰り出し可能とし、かつ、衝突を回避した場合に部品の交換をせずに対応可能にでき、そして、簡便に構成することができる。
なお、第1,2実施形態では、繰出部11にフードパネル5や膝受止パネル68を保持させるように構成したが、他に、保護対象物を受け止めるように、繰出部を待機位置から迅速に繰出位置まで繰り出す装置であれば、本発明を適用でき、例えば、図17に示す第3実施形態の繰出装置VS3に示すように、車両の後面に追突される後突時に、保護対象物としての乗員頭部を受け止めるヘッドレスト73に、繰出ユニット10Bを配設させてもよい。
ヘッドレスト73は、車両に配置されるシート70の背もたれ部71の上端で、ステイ72を利用して配設され、前部74が、繰出ユニット10Bを利用して、後部75に密着した待機位置WPから繰出位置SPの前方に繰り出すように、繰出部11に保持されている。
この場合、車両の図示しないリヤウインド付近に、後方車両の接近を検知して後方車両の追突を予測可能なミリ波レーダやカメラ等の衝突予測センサ103Bを配設させ、車両の図示しないリヤバンパ内に実際の追突を検知する衝突検知センサ102Bを配設させ、そして、衝突予測センサ103Bや衝突検知センサ102Bからの信号を入力した制御装置101Bが、繰出ユニット10Bの図示しない電磁ソレノイドや火薬式アクチュエータを作動させるように構成されており、この第3実施形態でも、第1,2実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
さらに、保護対象物を受け止めるように、繰出部を待機位置から迅速に繰出位置まで繰り出す装置であれば、例えば、衝撃を緩和して歩行者を受止可能にフロントピラーを構成し、そのフロントピラーを繰出ユニットの繰出部に保持させ、歩行者の車両との衝突時、あるいは、衝突予測時、フロントピラーを待機位置から前方の繰出位置まで繰り出させるように構成してもよい。
さらに、各実施形態では、ばね18を二つ配設させたものを示したが、図18,19に示す第4実施形態の繰出装置VS4の繰出ユニット10Cのように、ばね18を一つとして、構成してもよい。
この第4実施形態では、図示しないフードパネルのフードロック装置やヒンジ装置を保持する各繰出ユニット10Cにおける繰出部11Cの周壁部13Cが、圧縮ばね18の周囲を囲うように、略四角筒形状として、ケース45Cに配設される四角筒状のガイド部53内に嵌挿可能に配設されて、繰出部11Cの繰出方向と直交する方向のずれを規制している。
また、ロックピン17は、繰出部11Cの保持壁部12Cの幅方向(前後方向)の両縁から下方に延びる支持壁部12aに固着され、係止部としてのロックレバー20を支持する支持軸21が、周囲に、ロックレバー20を係止方向に付勢するねじりばね31を設けて、ケース45Cのガイド部53から延びる軸支壁部54に支持されている。
さらに、第4実施形態では、火薬式アクチュエータ35Cが軸方向の長さ寸法をコンパクトに構成されて、ケース45Cの底壁部46Cに対し、ばね18や可逆式アクチュエータの電磁ソレノイド55Cとともに取り付けられている。
但し、電磁ソレノイド55Cは、プル型として、作動時、連結片部28に連結される作動部56を引き込めて、ロックレバー20の係止片部22をロックピン17から外すように構成されている。
この第4実施形態の繰出ユニット10Cでは、ばね18が一つとし、電磁ソレノイド55Cの作動部56の作動方向が相違する点を除いて、第1〜3実施形態の繰出ユニット10,10A,10Bと同様な作用・効果を得ることができる。そして、この第4実施形態の繰出装置VS4では、各繰出ユニット10Cがばね18を一つの使用としていることから、コンパクトに構成することができる。