JP5800487B2 - グラウトの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、これらセメント系のグラウトは、高アルカリ性である。このため、例えば、内部に水が溜まった空洞に、当該グラウトを充填した場合、グラウトと接触した水が、pH12〜14程度のアルカリ性になる。その結果、この高pHの水が浸み込んだ地盤が、植生に悪影響を及ぼしたり、あるいは、この高pHの水が、河川、湖、海等に流れ込んで魚介類等に悪影響を及ぼす可能性がある。
このため、中性域(例えば、5.8〜8.6)のpHを有するグラウトが求められてきた。
しかし、この特許文献1の技術は実用化されておらず、また、実際に再現試験を行なったところ、得られるスラリーのpHには非常にばらつきがあり、かつ材齢7日の一軸圧縮強さが0.1N/mm2以下となるため、実用上の使用が困難であることがわかった。
一方、グラウトは、圧送及び充填時に、水中での材料分離が生じないことが求められる。また、グラウトは、充填対象箇所(空洞または空隙)への圧送を円滑に行ない、かつ、充填対象箇所の隅々まで充填するために、良好な可塑性(適度なフロー値)を有することが求められる。さらに、グラウトは、充填後に、大きな固化強度(例えば、一軸圧縮強さ)を発現することが求められる。
本発明は、かかる事情の下、圧送及び充填時に、中性域のpH(例えば、5.8〜8.6)を示し、水中での材料分離が生じず、良好な可塑性を有し、充填後に、大きな固化強度を発現することのできるグラウトの製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供する。
[1] 硫酸アルミニウム及び水を含むA材と、酸化マグネシウム及び/又は酸化マグネシウムの部分水和物並びに水を含むB材(但し、セメントを含む場合を除く。)とを、使用時に混合して、グラウトを調製することを特徴とするグラウトの製造方法。
[2] 上記硫酸アルミニウム100質量部(無水物換算)に対して、酸化マグネシウム及び/又は酸化マグネシウムの部分水和物の合計量(MgO換算)が50〜300質量部、水の量が500〜1500質量部である、前記[1]に記載のグラウトの製造方法。
[3] 上記A材として、さらに増粘剤を含むものを用いる、前記[1]又は[2]に記載のグラウトの製造方法。
[4] 上記硫酸アルミニウム100質量部(無水物換算)に対して、増粘剤の量が0.2〜30質量部である、前記[3]に記載のグラウトの製造方法。
[5] 上記B材として、さらに炭酸カルシウムを含むものを用いる、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のグラウトの製造方法。
[6] 上記硫酸アルミニウム100質量部(無水物換算)に対して、炭酸カルシウムの量が、酸化物(CaO)換算で、20〜180質量部である、前記[5]に記載のグラウトの製造方法。
[7] 上記炭酸カルシウムのブレーン比表面積が2000〜10000cm2/gである、前記[5]又は[6]に記載のグラウトの製造方法。
また、本発明のグラウトは、例えば、A材とB材の混合時から充填終了時までの所定の時間(例えば、10〜60分間)、良好な可塑性を維持するため、充填対象箇所(空洞または空隙)まで円滑に圧送することができ、また、充填対象箇所の隅々まで充填し、固化物を形成することができる。
さらに、本発明のグラウトは、充填後に、大きな固化強度(例えば、一軸圧縮強さ)を有する固化物を形成することができる。
本発明において、硫酸塩は、圧送及び充填時に、中性域のpH(例えば、5.8〜8.6)を有するスラリーを調製し、かつ、充填後に、大きな固化強度を有する固化物を形成するために用いられる。硫酸塩に代えて、硫酸、塩酸等の無機酸やクエン酸等の有機酸を用いることも可能であるが、取り扱いやpHの調整を考慮すると、硫酸塩が好ましい。本発明で使用する硫酸塩は、硫酸アルミニウムである。硫酸アルミニウムは、pHを調整する能力に優れ、かつ水溶液として安価に一般販売されている点で、性能的にも経済的にも好ましい。なお、硫酸塩は、粉末と水溶液のいずれの形態で用いてもよい。
本発明で使用するマグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、及び/又は、酸化マグネシウムの部分水和物である。
なお、マグネシウム化合物は、粉末とスラリーのいずれの形態で用いてもよい。
軽焼マグネシアは、例えば、炭酸マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを主成分とする物質(例えば、鉱物、海水成分等の天然資源)を650〜1000℃で焼成することによって得ることができる。
ここで、炭酸マグネシウムを主成分とする鉱物としては、マグネサイト、ドロマイト等が挙げられる。水酸化マグネシウムを主成分とする鉱物等としては、ブルーサイトや、海水から製造される水酸化マグネシウム等が挙げられる。
本発明で用いられる軽焼マグネシアの部分水和物中、酸化マグネシウムの含有率は、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、特に好ましくは75〜100質量%である。軽焼マグネシアの部分水和物中、水酸化マグネシウムの含有率は、好ましくは3.5〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは7〜10質量%である。酸化マグネシウムの含有率が65質量%未満、あるいは水酸化マグネシウムの含有率が30質量%を超えると、強度発現性が低下することがある。
水の量は、硫酸塩100質量部(無水物換算)に対して、好ましくは500〜1500質量部、より好ましくは600〜1400質量部、特に好ましくは700〜1300質量部である。該量が500質量部未満では、水量が少ないために流動性が小さくなり、圧送が困難になることがあり、また、充填対象箇所である空洞等に水がない場合に、空洞等の隅々までグラウト材を充填することが困難になることがある。該量が1500質量部を超えると、固化強度が低下する傾向がある。
上記B材において、水の量は、該B材の流動性等の観点から、マグネシウム化合物100質量部に対して、好ましくは70〜1250質量部、より好ましくは100〜1000質量部、特に好ましくは150〜800質量部である。
なお、A材とB材中の水の合計量は、硫酸塩100質量部(無水物換算)に対して、1500質量部以下であることが好ましい。
ガラクトマンナンとは、D−マンノース主鎖及びD−ガラクトース側鎖を有する多糖類であり、例えば、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム等が挙げられる。中でも、グアガムは、可塑性、水中不分離性等の観点から、好ましい。
増粘剤に代えて界面活性剤を用いた場合、数分間しか水中不分離性を発揮できないことがある。
増粘剤の量は、硫酸塩100質量部(無水物換算)に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは0.2〜25質量部、特に好ましくは0.4〜20質量部である。該量が30質量部を超えると、水中不分離性等の向上の効果が頭打ちになるため、増粘剤のコストの点で不利であり、また、過剰添加により流動性が低下するので、充填性の点でも不利である。
なお、増粘剤を含む場合のA材の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(i)硫酸塩と水を混合して、硫酸塩水溶液を調製した後、この硫酸塩水溶液と増粘剤を混合して、A材を調製する方法、(ii)硫酸塩、増粘剤及び水を同時に混合して、A材を調製する方法、等が挙げられる。
炭酸カルシウムの量は、硫酸塩(無水物換算)100質量部に対して、酸化物(CaO)換算で、好ましくは180質量部以下、より好ましくは20〜160質量部、特に好ましくは40〜140質量部である。該量が180質量部を超えると、固化強度、水中不分離性等の向上の効果が頭打ちまたは低下することがある。
炭酸カルシウムは、粉末とスラリーのいずれの形態で用いてもよい。
なお、本発明のグラウトを、A材とB材を混合して製造する場合には、炭酸カルシウムは、B材に含ませることが好ましい。炭酸カルシウムをA材に含ませた場合には、発泡によって練混ぜ(製造)が困難となる場合がある。
細骨材としては、硫酸塩等と反応しない不活性なものである限りにおいて特に限定されず、例えば、珪砂、川砂、海砂、山砂等が挙げられる。
細骨材の量は、固化強度、可塑性等の観点から、硫酸塩100質量部(無水物換算)に対して、好ましくは500質量部以下である。
なお、本発明のグラウトを、A材とB材を混合して製造する場合は、細骨材はA材とB材のどちらにでも含ませることができる。この場合、A材とB材の各々における細骨材の量は、A材とB材中の細骨材の合計量が上記範囲内であれば特に限定されるものではない。
[材料]
以下の材料を用いた。
(1)硫酸塩:硫酸アルミニウム水溶液(無水物換算の濃度:8質量%、住友化学社製)
(2)増粘剤:グアガム(食品添加用、CBC社製)
(3)マグネシウム化合物A:軽焼マグネシア(酸化マグネシウムの含有率:95質量%、マグネサイトを850℃で焼成して粉砕したもの、ブレーン比表面積:5500cm2/g)
(4)マグネシウム化合物B:上記軽焼マグネシアを温度20℃、相対湿度100%の恒温恒湿槽に10日間放置し、軽焼マグネシアの一部を水和させたもの(酸化マグネシウムの含有率:87.5質量%、水酸化マグネシウムの含有率:7.5質量%)
(5)炭酸カルシウム(石灰石粉末、ブレーン比表面積:4000cm2/g、太平洋セメント社製)
(6)酸化カルシウム:石灰石を1000℃で焼成して粉砕したもの(ブレーン比表面積:5500cm2/g)
(7)水:pH8.2の佐倉市の水道水
(8)細骨材:静岡県掛川産の山砂(表乾密度:2.59g/cm3)
以下の表1に示す成分組成で、グラウト用ミキサーを用いて、200rpmで3分間撹拌することで、A材を500リットル調製した。また、表1に示す成分組成で、セメント練り用のミキサーを用いて、200rpmで3分間撹拌することで、B材を500リットル調製した。
調製したA材及びB材を、同時に混合撹拌槽(東邦地下工機社製のMS−750S型)に投入し、200rpmで撹拌した。撹拌の開始時から20〜30秒経過後に、A材とB材の混合物がゲル化した。さらに90秒程度撹拌を継続したところ、液状化したスラリー(グラウト)が得られた。
なお、参考例1は、グラウト用ミキサーを用いて全材料を一括混合して製造した(100リットル)ものであるが、この場合は液状化したスラリー(グラウト)を得るのに10分以上攪拌することが必要であった。
(1)可塑性
JHS 313((旧)日本道路公団規格)に規定されるコンシステンシー試験方法のシリンダー法により、グラウトのフロー値(JHSフロー;単位:mm)を測定した。その際、フロー値の測定は、グラウトの調製直後、及び、グラウトの調製時から30分経過後に行なった。
(2)水中不分離性
長さ450mm×幅300mm×高さ300mmの水槽内に26リットルの水を貯留した。貯留した水の中に、φ80mm、高さ80mmのフローコーンを設置し、グラウトを充填後にすばやくフローコーンを除去した。その後、材料分離の有無を目視で確認した。その際、材料分離の有無の確認は、グラウトの投入直後、及び、グラウトの投入時から30分経過後に行なった。その結果、材料分離が生じていない場合を「○」(良好)とし、材料分離が生じている場合を「×」(不良)とした。なお、実施例1〜2では、水中不分離性の評価を行わなかった。
(3)pH
100mlのビーカーに練混ぜ直後のスラリー(グラウト)を充填した後、JIS Z 8802に準拠したガラス電極式pH計をスラリーに差し込み、pHを測定した。
(4)一軸圧縮強さ
練混ぜ直後のグラウトを型枠(φ50mm×100mm)内に注入して、円柱状の試験体を作製した。この試験体を20℃で水中養生し、材齢7日及び28日の一軸圧縮強さ(単位:N/mm2)を測定した。
以上の結果を表1に示す。表1から、本発明のグラウト(実施例1〜15)は、良好な可塑性(JHSフロー)や水中不分離性を有し、中性域のpH(pH8以下)を示し、大きな固化強度(一軸圧縮強さ)を発現することがわかる。一方、マグネシウム化合物を用いない比較例1では、可塑性、pH及び固化強度が劣る。
Claims (7)
- 硫酸アルミニウム及び水を含むA材と、酸化マグネシウム及び/又は酸化マグネシウムの部分水和物並びに水を含むB材(但し、セメントを含む場合を除く。)とを、使用時に混合して、グラウトを調製することを特徴とするグラウトの製造方法。
- 上記硫酸アルミニウム100質量部(無水物換算)に対して、酸化マグネシウム及び/又は酸化マグネシウムの部分水和物の合計量(MgO換算)が50〜300質量部、水の量が500〜1500質量部である、請求項1に記載のグラウトの製造方法。
- 上記A材として、さらに増粘剤を含むものを用いる、請求項1又は2に記載のグラウトの製造方法。
- 上記硫酸アルミニウム100質量部(無水物換算)に対して、増粘剤の量が0.2〜30質量部である、請求項3に記載のグラウトの製造方法。
- 上記B材として、さらに炭酸カルシウムを含むものを用いる、請求項1〜4のいずれかに記載のグラウトの製造方法。
- 上記硫酸アルミニウム100質量部(無水物換算)に対して、炭酸カルシウムの量が、酸化物(CaO)換算で、20〜180質量部である、請求項5に記載のグラウトの製造方法。
- 上記炭酸カルシウムのブレーン比表面積が2000〜10000cm2/gである、請求項5又は6に記載のグラウトの製造方法。
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