JP2004075846A - 可塑性軽量注入材用起泡剤、それを用いた可塑性軽量注入材およびその製造方法並びにその充填工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭化水素系界面活性剤及び/又は蛋白質系界面活性剤を主成分とし、これに粘土鉱物を配合して可塑性軽量注入材用起泡剤とする。セメント及び混練水を含む硬化液にこの起泡剤を発泡させた気泡を混合して可塑性軽量注入材を得る。気泡の混合割合は可塑性軽量注入材の容積に対して15〜85%とし、注入材のフロー値が80〜150mmでかつ密度が0.3〜1.2g/cm3 とすることが望ましい。上記硬化液と気泡とを別個に調製し、両者の混合撹拌を注入現場で行ない、瞬時にゲル化させた注入材を注入箇所へ充填して固化させる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可塑性軽量注入材を製造するために使用する起泡剤、さらにはこの起泡剤を用いた可塑性軽量注入材及びその製造方法、さらにはこの可塑性軽量注入材の充填工法に関するものである。特に本発明の可塑性軽量注入材は、土木構造物の空洞充填、軽量盛土及び埋立て等に用いられ、所望する限定的な場所に注入して固化させるために好適に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル等の土木構造物や埋立てや盛り土等に注入される注入材としては、セメントミルクやセメントミルクに気泡を混入したセメントエアミルク等のセメント系注入材が知られており、これらの注入材は、例えば空洞部等の充填を所望する箇所に注入して、固化させる。
【0003】
しかし、注入部にセメントミルクやセメントエアミルク等のセメント系注入材を注導入する場合、充填しようとする箇所の空洞部に地下水や流水等の液体が存在すると、地下水や流水によって、注入した注入材が希釈化されてしまうことがある。
また、注入部を限定して区間注入する場合に、通常のセメントミルク系注入材では、かかる注入区間以外の周辺部位への注入材の逸脱が発生してしまい、限定注入が困難である。
【0004】
このような希釈化や周辺部への逸脱を防止するために、セメント系注入材をゲル化して、地下水や流水に希釈化されることなく、また、その形状維持性によって周辺部に逸脱することのない性状の注入材が求められており、セメントミルクやセメントエアミルク等に水ガラス系薬剤やアルミニウム塩類を添加して注入材にこのような性状を付与することが行われている。
【0005】
上記水ガラス系薬剤を添加した注入材は、地下水や流水等の水によって水ガラスの未反応のナトリウムイオンが溶出してしまうため耐久性に劣り、また高アルカリ性となるため汚染が問題となる。
また、アルミニウム塩類を添加した注入材は、アルミニウムが高価であるため、これを添加した注入材も高価なものとなり、また未反応陰イオンが溶出してしまうため耐久性に劣り、さらに陰イオンによる地下水等の汚染が問題となる。
【0006】
これらの問題に対して、特開平11−310779号公報には、セメントミルク又はセメントエアミルクと、ベントナイトミルク(ベントナイトと水とを混合したもの)とを撹拌混合して得られる可塑性注入材が開示されている。
また、特開2000−54794号公報には、セメント、ベントナイト及び水、又はセメント、ベントナイト、水及び気泡を含有させた注入材料が開示されている。
【0007】
しかし、上記公報の注入材に用いられている可塑材であるベントナイト等の粘土鉱物は、水に対する膨潤性が高く、ベントナイトミルクを調製するのにかなりの水を要し、軽量材、例えば気泡や発泡ビーズ等を混入するための十分な体積が確保できないため注入材の軽量化を図ることが困難である。
【0008】
また、上記公報の注入材を得るためには、ベントナイト中の成分がセメントから溶出したカルシウム成分と容易に反応して膨潤しなくなることを防止するため、予めベントナイトミルクと、セメントミルク又はセメントエアミルクとを別個に調製して、十分にベントナイトが膨潤した後にセメントミルク又はセメントエアミルクと混合する方法が採用されている。この場合、ベントナイトミルクとセメントミルク又はセメントエアミルクの2液を別個に製造する必要があることから、このための製造機械等の製造系列が2系列必要となり、製造コストが高価なものとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、軽量であり、かつ耐久性に優れ、瞬時にゲル化することができ、しかも地下水や流水の影響を受けず、限定注入や水中打設が容易にできる可塑性軽量注入材の製造に効果的に使用できる起泡剤を提供することである。ここで、地下水や流水に希釈化されることなく、ゲル化した凝集体の状態になり、その形状付与性に起因して、周囲への逸脱が生じがたい性状となることを、「可塑性」と称するものとする。
【0010】
さらに本発明の目的は、上記起泡剤を用いた可塑性軽量注入材、およびこの可塑性軽量注入材を簡便にかつ経済的に製造する方法を提供することである。
さらにまた本発明の目的は、上記可塑性軽量注入材を所望する限定場所に注入して効果的に使用できる可塑性軽量注入材の充填工法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、セメントと水を含む硬化液に、起泡剤を発泡させて得られた気泡を混合して軽量注入材を製造するに際して、特定材料を配合した起泡剤を用いれば硬化液と気泡との混合時に混合物を瞬時にゲル化して、注入材に可塑性状を付与させることが出来ることを見出し、さらには、硬化液と気泡とを撹拌混合することにより得られた可塑性軽量注入材が、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち請求項1に記載の発明は、炭化水素系界面活性剤及び/又は蛋白質系界面活性剤を主成分とし、これに粘土鉱物を配合したことを特徴とする可塑性軽量注入材用起泡剤である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記粘土鉱物を濃度1〜40重量%の範囲で配合したことを特徴とする前記請求項1記載の可塑性軽量注入材用起泡剤である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、さらに分散剤を濃度0.1〜10重量%の範囲で配合したことを特徴とする前記請求項1又は2記載の可塑性軽量注入材用起泡剤である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、セメント及び混練水を含む硬化液に、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡を混合して得られたものであることを特徴とする可塑性軽量注入材である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、セメント及び混練水を含む硬化液と、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡とを別個に調製し、次いで両者を混合撹拌することにより、瞬時にゲル化させることを特徴とする可塑性軽量注入材の製造方法である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記硬化液は、セメントと骨材と混練水とを混合撹拌することにより製造することを特徴とする請求項5記載の可塑性軽量注入材の製造方法である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、セメント及び混練水を含む硬化液と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡とを別個に調製し、注入現場箇所に置いて両者を混合撹拌して瞬時にゲル化させて得られた可塑性軽量注入材を注入箇所へ充填することを特徴とする可塑性軽量注入材の充填工法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の可塑性軽量注入材用起泡剤は、炭化水素系界面活性剤、蛋白質系界面活性剤又は両者の混合物を主成分とし、これに粘土鉱物を配合したものである。起泡剤中の粘土鉱物の濃度は、使用時において、1〜40重量%、好適には5〜20重量%であることが、期待する可塑性を有する注入材が得られる点で望ましい。粘土鉱物の濃度が1重量%より少ないと可塑性を有する効果がなく、40重量%を超えると可塑性が強すぎて気泡を消してしまう。
ここで、使用時とは、起泡剤を調製し、得られた起泡剤を、例えば1〜200倍に希釈して、気泡を発泡させる直前の濃度を示すものとする。
【0020】
本発明の起泡剤には、粘土鉱物の分散性を良好にするために、必要に応じて分散剤をさらに配合することができる。分散剤の濃度は、使用時において、0.1〜10重量%であることが、期待する粘土鉱物分散性を得られる点で望ましい。分散剤の濃度が0.1重量%より少ないと粘土鉱物の分散効果が十分に得られず、10重量%を超えて添加しても粘土鉱物分散性は向上することはなく、価格的にも高価な起泡剤となってしまう。
【0021】
本発明の起泡剤に使用される炭化水素系界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を用いることができ、さらにはケラチン、コラーゲンなどの蛋白質系界面活性剤も使用できる。これらの界面活性剤は1種あるいは2種以上混合して使用することができる。また、炭化水素系又は蛋白質系界面活性剤からなる市販の気泡モルタル用起泡剤を、本発明の起泡剤における界面活性剤の供給源として使用しても、何ら問題はない。
【0022】
好適に使用できる界面活性剤は、アニオン界面活性剤である。アニオン界面活性剤は、水中で解離して生じるアニオンが水溶液の表面に吸着されて、その表面張力を低下させる作用を有するもので泡を生成するために必要な成分である。例えばRCOONa等のカルボン酸塩、ROSO3 Na等の硫酸エステル塩、RSO3 Na等のスルホン酸塩、ROPO(ONa)2 等のリン酸エステル塩等、公知のアニオン界面活性剤が使用できる。
【0023】
具体的には、上記アニオン界面活性剤には、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩、アルファオレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩等のカルボン酸塩等がある。
【0024】
本発明の起泡剤に使用される粘土鉱物としては、カオリン鉱物、蛇紋岩及び類縁鉱物、パイロフィライト、タルク、雲母粘土鉱物、緑泥岩、バーミキュライト、スメクタイト、ベントナイト等の層状粘土鉱物、セピオライト、アタパルジャイト等の繊維状粘土鉱物、アロフェン及びイモゴライト等の非晶質粘土鉱物、その他、シリカ鉱物、長石、沸石、ドロマイト等で、これらの焼成物、例えばメタカオリン、メタハロイサイト等も挙げられる。これらの粘土鉱物は1種又は2種以上混合して使用できる。
このうち特に好ましい粘土鉱物として、ベントナイト、アタパルジャイトおよびメタカオリンが挙げられる。
【0025】
本発明の起泡剤に使用される分散剤としては、リグニン系、メラミン系、ナフタリン系、ポリカルボン酸系、リン酸塩系、クエン酸系、フミン酸系、スルホン酸系及びフミン誘導体、タンニン酸塩及びタンニン誘導体、アクリル酸ナトリウム等が挙げられ、これらを混合併用してもなんら問題はない。
【0026】
また、本発明の起泡剤には必要に応じて可塑剤成分である、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコールやラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、メチルセルロース等のセルロース系誘導体やポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質系増粘剤、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等の合成系増粘剤、グアーガム、アラビアガム、カラギナン、アルギン酸、カードラン、ペクチン等の天然系増粘剤、ペクチン、キチン、キトサン等の植物、甲殻類抽出物、アルケニルコハク酸、アミノ酸と脂肪酸からなるアミノ酸系界面活性剤等のカルボン酸系界面活性剤、水ガラス系薬剤やアルミニウム塩類等の無機塩類などを添加しても良い。これらの可塑剤成分は1種あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0027】
さらに、本発明の起泡剤には必要に応じて、ナトリウム塩(硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム等)、カリウム塩(硫酸カリウム、塩化カリウム等)、マグネシウム塩(硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等)、カルシウム塩(硫酸カルシウム、塩化カルシウム等)などの水溶性無機金属塩、セロソルブ系溶剤(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、カルビトール類(エチルカルビトール、ブチルカルビトール等)、エチレンオキシドの付加モル数が3〜10のポリオキシエチレン低級アルキルエーテル、ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール等)などの水溶性有機溶媒、ポリカルボン酸系、リグニン系、スルファミン系、ナフタレンスルホン酸系、アルキル硫酸エステル塩等の減水剤などを併用しても良い。特に水溶性有機溶媒は気泡を滑らかにし、セメントミルク中の粗泡の発生を抑制する作用がある。
【0028】
さらに本発明は、上述した可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡と、セメント及び混練水を含む硬化液を混合することにより得られる可塑性軽量注入材である。
かような可塑性軽量注入材は、水などに界面活性剤と粘土鉱物さらには必要に応じて分散剤を加えて溶解分散させて本発明の起泡剤を調製し、この起泡剤を発泡させて気泡を得、これとは別個にセメントと混練水を含む硬化液を調製し、この硬化液と気泡とを混合撹拌して、瞬時にゲル化させることにより得られる。
【0029】
セメント及び混練水を含む硬化液とは、例えば、セメントと混練水とを混合して得られたセメントミルク、セメントと骨材と混練水とを混合して得られたモルタル等が挙げられ、当該硬化液中でカルシウムイオンが溶出して、その液自体で硬化性を有するものであれば、特に限定されず、任意のものが使用できる。
【0030】
骨材としては、その種類についての制約は特になく、通常の砂(川砂、山砂、海砂、砕石粉末砂等で、粒径が5mm以下のもの)、混和材(高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等)、石灰石、砕石、珪砂、軽量骨材(パーライト、シラスバルーン等)、現地発生土などが挙げられる。
混練水としては、水道水、地下水、海水などを挙げることができる。
【0031】
本発明に用いることのできるセメントとしては、普通、早強、白色、耐硫酸、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメント、前記ポルトランドセメントの少なくとも1種と高炉スラグ、フライアッシュ等の少なくとも1種が混合された混合セメント、ジェットセメント、アルミナセメント等の特殊セメント、及びセメント系固化材等がある。
【0032】
セメント及び混練水を含む硬化液には、必要に応じて、各種セメント混和剤を併用することも可能である。これらのセメント混和剤は、得られる注入材の可塑性に影響を及ぼすことがないものであれば使用することができる。
具体的には、公知のセメント分散剤(リグニン系、メラミン系、ナフタリン系等)、硬化遅延剤(ポリリン酸塩、クエン酸塩等)、硬化促進剤(塩化カルシウム等)、収縮低減剤(低級アルコール等)、撥水剤(高級脂肪酸等)、急結剤(アルミン酸カルシウム等)、高炉スラグ、シリカフューム、石膏、火山灰等の種々のものを挙げることができる。
例えば、減水剤等の混和剤の添加によって、セメント及び混練水を含む硬化液中の単位水量を減らすことや、含有されるセメント量の調整が可能となることにより、高強度及び軽量化の配合設定の範囲を拡大することが可能である。
【0033】
本発明の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡を、セメント及び混練水を含有する硬化液と混合して可塑性軽量注入材を調製するにあたり、起泡剤をあらかじめ水溶性有機溶媒等を使用して水溶液の形としておいてもよく、その希釈倍率は1〜100倍程度である。
【0034】
起泡剤を発泡させる際の発泡倍率は1〜200倍、好適には15〜100倍とすることが、本発明の可塑性軽量注入材の可塑性を発現させるために望ましい。起泡剤を発泡させて気泡とするためには、発泡装置やミキサー等を用いて発泡させる通常の方法を採用することができる。
【0035】
本発明の起泡剤を発泡させて得られる気泡は、セメント及び混練水を含む硬化液とは別個に調製し、次いで両者を混合攪拌することにより瞬時にゲル化させる機能を有する。気泡の混入量は、可塑性軽量注入材の容積に対して15〜85%、好ましくは40〜60%となるように混合されることが望ましい。気泡が上記範囲より多くなると、得られる可塑性軽量注入材中のセメント量が少なくなるため硬化性が不十分となる場合もある。一方、上記範囲より少なくなると、混入した気泡が材料から分離してしまう材料分離が生じやすくなるため好ましくない。かかる気泡の混入量は、硬化液の種類などによって、変化させることができる。
【0036】
当該可塑性軽量注入材のフロー値は、日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して測定された値であって、内径8cm、高さ8cmのシリンダーに試料を入れて、引き抜き後の試料底面の直径を測定した値で表して、80〜150mm、好適には80〜120mm、密度が0.3〜1.2g/cm3 であることが、可塑性軽量注入材の注入を現場箇所でおこない、瞬時にゲル化させて、限定注入を可能とする有効な可塑性を、注入材に付与させるため望ましい。特にフロー値が80〜120mmでは、可塑性注入材として最適である上、流水等が存在する場所でも材料分離性が少なく、より有効である。
【0037】
上述したように本発明においては、セメント及び混練水を含む硬化液と気泡とを別個に調製して混合攪拌することが重要であり、このような調製方法を用いることによって、2液性の可塑性軽量注入材と比較してミキサー等の製造系列を削減することが可能となり、製造コストの高騰が抑制できる。
【0038】
このようにして得られた可塑性軽量注入材は、その中に含有される固体と混練水と気泡との混入割合が、体積比で1:0.4:1〜1:4:15、好適には、1:0.5:1.5〜1:2.5:15であることが望ましい。これは、セメントミルクおよびモルタルの圧送性、気泡を混合したときの注入材の良好な可塑性状等の点から好ましいからである。
【0039】
本発明の可塑性軽量注入材の充填注入では、セメント及び混練水を含む硬化液と気泡との混合攪拌を注入現場箇所でおこない、瞬時にゲル化させて得られた可塑性軽量注入材を所望する注入箇所へ充填することにより、耐久性に優れ、瞬時にゲル化することができ、しかも地下水や流水の影響を受けず、限定注入や水中打設が容易にできる。
【0040】
【実施例】
本発明を次の実施例により説明するが、これらに限定されるものではない。
〈実施例1〜6、比較例1〉
(1)起泡剤の調製
表1に示す界面活性剤(A)と粘土鉱物(B)を用いて、(A):(B)=1:5(純分重量比)とし、表2に示すような組み合わせで本発明の可塑性軽量注入材用起泡剤を調製した。また、(A)と(B)以外のその他の主要成分としてミリスチルアルコール(可塑剤)又はカルボキシメチルセルロース(可塑剤)を併用した起泡剤〈実施例2と3〉や、ピロリン酸ナトリウム(分散剤)を併用した起泡剤〈実施例4と5〉も調製した。その他の主要成分の混合割合((A)と(B)の合計100重量部に対する純分の重量比)は、表2中の各成分の後に記載した括弧内の数字で示してある。
なお比較例として、界面活性剤(A)のアルファオレフィンスルホン酸ナトリウム単独からなり粘土鉱物(B)を含まない起泡剤〈比較例1〉と、界面活性剤(A)のアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムとミリスチルアルコール(可塑剤)からなり粘土鉱物(B)を含まない起泡剤〈比較例2〉を調製した。
これら起泡剤を用いて、発泡装置により
発泡倍率25倍の気泡を作製した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
(2)硬化液の調製
セメントミルクの硬化液は、セメント(住友大阪セメント(株)製高炉セメントB種、密度3.05g/cm3 )と混練水とを表3に示す割合で配合して、ハンドミキサーで2分間混練して調製した。一方、モルタルの硬化液は、セメントと砂(密度2.65g/cm3 、5mm以下に篩をかけたもの)と混練水とを表3に示す割合で配合して、ハンドミキサーで2分間混練して調製した。
【0044】
【表3】
【0045】
(3)注入材の調製
上記(1)で得られた気泡と、上記(2)で得られた硬化液(セメントミルク、モルタル)を、表3に示す気泡量となるように配合し、ハンドミキサーにて撹拌混合し、それぞれ注入材(エアミルク、エアモルタル)を得た。
【0046】
(4)注入材の試験
上記(3)で得られた注入材(エアミルク、エアモルタル)を以下の試験に供した。
(a)フロー値
日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して、内径8cm、高さ8cmのシリンダーに、上記(3)で得られた各注入材試料を入れて、引き抜き後の試料底面の直径を測定し、その値をフロー値とした。結果を表4に示す。
【0047】
(b)密度
内容量1000cm3 の計量用カップに上記(3)で得られた各注入材試料を充填して、1000cm3 当りの重量を計測し、密度を算出した。結果を表4に示す。
【0048】
(c)可塑性軽量注入材の評価
可塑性軽量注入材としての評価は、以下の基準で行った。
◎:密度が0.3〜1.2g/cm3 でかつフロー値が80〜120mm
○:密度が0.3〜1.2g/cm3 でかつフロー値が120超〜140mm
△:密度が0.3〜1.2g/cm3 でかつフロー値が140超〜150mm
×:密度が1.2g/cm3 超又はフロー値が150mm超
【0049】
【表4】
【0050】
〈実施例7〜10、比較例2〉
(1)起泡剤の調製
界面活性剤としてアルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(商品名;「リポランLB−440」、ライオン(株)製)2重量%(純分重量%)と、粘土鉱物としてアタパルジャイトとを、発泡時の濃度がそれぞれ表5に示す濃度(0〜50重量%)となるように配合し、可塑性軽量注入材用起泡剤を調製した。
得られた起泡剤を用いて、発泡装置により
発泡倍率25倍の気泡を作製した。
【0051】
(2)硬化液の調製
セメント(住友大阪セメント(株)製高炉セメントB種、密度3.05g/cm3 )と混練水とを表3に示す割合で配合し、ハンドミキサーで2分間混練してセメントミルクの硬化液を調製した。
【0052】
(3)注入材の調製
上記(1)で得られた気泡と、上記(2)で得られた硬化液(セメントミルク)を、表3に示す気泡量で混入させ、ハンドミキサーにて攪拌混合し、それぞれ注入材(エアミルク)を得た。
【0053】
(4)注入材の試験
上記(3)で得られた注入材(エアミルク)を以下の試験に供した。
(a)フロー値
フロー値は、実施例1〜5の「(4)注入材の試験」におけるフロー値と同様にして測定した。結果を表5に示す。
(b)密度
密度は、実施例1〜5の「(4)注入材の試験」における密度と同様にして測定した。結果を表5に示す。
(c)可塑性軽量注入材の評価
可塑性軽量注入材としての評価は、実施例1〜5の「(4)注入材の試験」における評価基準と同様にして評価した。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
【発明の効果】
本発明の可塑性軽量注入材用起泡剤を用いて作製した可塑性軽量注入材は、軽量であり、かつ耐久性に優れ、瞬時にゲル化することができ、しかも地下水や流水の影響を受けず、限定注入や水中打設を容易にすることができる。
また、本発明の可塑性軽量注入材の製造方法は、上記した可塑性軽量注入材を簡便にかつ経済的に製造することができる。
更に、本発明の可塑性軽量注入材の充填工法は、迅速な限定注入や水中打設を効果的に実施することができるものである。
Claims (7)
- 炭化水素系界面活性剤及び/又は蛋白質系界面活性剤を主成分とし、これに粘土鉱物を配合したことを特徴とする可塑性軽量注入材用起泡剤。
- 前記粘土鉱物を濃度1〜40重量%の範囲で配合したことを特徴とする請求項1記載の可塑性軽量注入材用起泡剤。
- さらに分散剤を濃度0.1〜10重量%の範囲で配合したことを特徴とする請求項1又は2記載の可塑性軽量注入材用起泡剤。
- セメント及び混練水を含む硬化液に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡を混合して得られたものであることを特徴とする可塑性軽量注入材。
- セメント及び混練水を含む硬化液と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡とを別個に調製し、次いで両者を混合撹拌することにより、瞬時にゲル化させることを特徴とする可塑性軽量注入材の製造方法。
- 前記硬化液は、セメントと骨材と混練水とを混合撹拌することにより製造することを特徴とする請求項5記載の可塑性軽量注入材の製造方法。
- セメント及び混練水を含む硬化液と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性軽量注入材用起泡剤を発泡させて得られた気泡とを別個に調製し、注入現場箇所に置いて両者を混合撹拌して瞬時にゲル化させて得られた可塑性軽量注入材を注入箇所へ充填することを特徴とする可塑性軽量注入材の充填工法。
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