JP7441685B2 - 流動化処理土及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、パーライトを配合した流動化処理土の供給およびその製造方法に関するものである。
近年、地盤改良工法の一つとして流動化処理工法により施工された流動化処理土の活用が進められている。流動化処理土は調整した泥水にセメントやセメント系固化材を配合しスラリー化した処理土であるため、流し込みによる施工が容易であることから、構造物の基礎部分の埋め戻しや水道管、下水管、ガス管、電線地中化など、地下埋設物周りの空洞充填に活用されている。このため、施工不良等により充填不足を発生させると空洞ができ、構造的な欠陥となることから、一般的に流動化処理土は流動性を高めるために容重を1.4~1.8程度に調整し、充填性を高めている。
しかしながら、流動化処理土の容重を高めると、強度の発現性が大きくなる傾向を示す。水道管、下水管、ガス管、電線地中化などライフラインは、老朽化や破損等が生じた場合には交換が必要となることから、埋め戻した流動化処理土を再掘削する必要が生じる場合がある。このとき、強度の発現性が大きいと再掘削を容易に行うことができず、交換工事に多大な影響を及ぼす可能性がある。一般的に一軸圧縮強さが1.0N/mmを超えるとバックホウ等での再掘削が困難になるといわれている。
このため、流動化処理土の容重を小さくして強度の発現性を抑制しようとすると、打設後に土粒子およびセメント分が沈降分離してブリーディングが発生し、結果として空洞欠陥を生じてしまうなどの課題があった。
その一方で、道路や鉄道トンネルを施工した後に覆工コンクリート背面に生じた空洞部への裏込めや地下構造物の上面への埋め戻し、急傾斜地や地滑り斜面での盛土材にはかかる荷重や土圧を低減する必要があるため、モルタルやセメントペーストに気泡を混入したエアモルタルやエアミルク等の軽量な埋め戻し材が使用されている。
しかしながら、エアモルタルやエアミルクは、まず特殊な界面活性剤系の気泡剤に空気を吹き込んで気泡体を作り、モルタルやセメントペーストと混合して製造するのが一般的である。このため、特殊な専用製造機材一式が必要であり、コストが高くなるといった欠点がある。また、エアモルタルやエアミルクをポンプ等で圧送すると消泡現象が発生しやすく、充填した箇所では骨材やセメント粒子が沈降し、不均一になりやすい傾向もある。さらには充填箇所に地下水が存在する場合や雨天時の施工では、地下水、降雨との接触によって打設したエアモルタルやエアミルク中の気泡が消失し、所定の性能が得られないことから、打設箇所の環境や天候等に左右されやすい。
このような状況において、軽量盛土材、硬化時間を調整したエアモルタルやエアミルク、軽量化グラウト材、軽量固化処理土や軽量流動化処理土の提供に関する様々な技術が提案されている。すなわち、リン酸の多価金属塩と多価金属酸化物、発泡剤または起泡剤、樹脂エマルジョンおよび水からなる軽量盛土材(特許文献1)、セメントに硬化を抑制する遅延剤を添加してエアモルタルまたはエアミルクを作製し、打設の直前に遅延剤の2~20倍の硬化刺激剤を添加する工法(特許文献2)、気泡を混入させた粘土泥水にセメントミルクまたは気泡を混入させたセメントミルクを混合するグラウト材の軽量方法(特許文献3)、微細気泡供給手段により、泥土に微細気泡が混入した軽量化流動化処理土を充填して得られる軽量固化処理土の造成工法(特許文献4)、調整泥水とセメントと気泡が軽量流動化処理土製造装置で混練製造される軽量化流動化処理土の供給システム(特許文献5)、などの技術が開示報告されている。
特開平7-158070号公報 特開2005-271280号公報 特開2004-190273号公報 特開2005-036502号公報 特開2006-051437号公報
しかしながら、これらの技術は高価な薬剤を複数使用するため材料コストが高くなることや有機系の樹脂エマルジョンを含むため、地盤環境や地下水に悪影響を及ぼす可能性がある、エアモルタルまたはエアミルクに遅延剤を添加したり、打設直前に刺激剤を添加するなど複雑な製造工程や品質管理を必要とする、予め粘土泥水や流動化処理土に気泡を混入させるため、気泡剤混入装置やマイクロバブル発生装置など過大な設備や複雑な制御を必要とする、さらには泥土、セメント、水、気泡の配合割合を瞬時に計算し、流動化処理土を製造供給するプラントシステムの導入には多大な初期投資が必要になるなど、改良の余地があった。
従って本発明の課題は、過大な製造設備やシステムを必要とすることなく、安価で要求される諸性能(低容重、高流動性、ノンブリーディング、初期強度発現性など)を有する流動化処理土の製造技術を提供することである。
そこで本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、土砂、パーライト、セメント、水を加えて混練して、適切な容重を有するものとすることで、高い流動性および分離抵抗性を有し、初期強度発現性にも優れ、かつ再掘削も可能な軽量化された流動化処理土を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明による流動化処理土は、土砂、パーライト、セメント、及び水を含み、その流動化処理土の容重が1.2~1.4kg/Lであることを特徴とするものである。
また、本発明による流動化処理土の製造方法は、土砂、パーライト、セメント、及び水を均一に混練することを含むことを特徴とするものである。
本発明による流動化処理土は、経済的かつ従来の流動化処理土プラントで容易に製造することが可能である。そしてその流動化処理土は、高い流動性および分離抵抗性を有し、初期強度発現性にも優れ、かつ再掘削可能な強度発現性を有する。このため、空洞部への裏込めや地下構造物の上面や側面への埋め戻し、急傾斜地や地滑り斜面での盛土材として、荷重や土圧の軽減が必要な施工箇所に使用することが可能な極めて有用な技術である。
[流動化処理土]
本発明による流動化処理土に用いられる土砂は特に限定されず、用途に応じて任意に選択することができる。例えば建設発生土、山砂、再生コンクリート砂、根切り土など、またはそれらに対して分別や洗浄などの処理を施したものが挙げられる。これらのうち、流動化処理土の有用性を高めるために、適切な粘度を有するもの、あるいは粗大な粒子を含まないものを用いることが好ましい。
このような土砂を含むものの一例として、通常の流動化処理土に使用される調整泥水が挙げられる。調整泥水とは、建設現場等で発生した建設発生土や泥土に、水を加えてスラリー化して容重を調整したものである。本発明においては、この調整泥水を土砂および水として用いることができる。このような調整泥水を用いることで、流動化処理土を製造する際には新たな設備が不要となるので好ましい。
流動化処理土に含まれる土砂は、粗大な礫や石等を含まないことが好ましい。このため、土砂に含まれる粗大な異物はスクリーン等によって除去されることが好ましい。具体的には土砂は粒径10mm以上の異物が除去されたものが好ましい。また、木片、金属類、プラスチック、その他の産業廃棄物を含まないものが好ましい。
本発明による流動化処理土はパーライトを含んでなる。パーライトは、真珠岩や黒曜石を破砕し、粒度を調整した後、急速に焼成して発泡させたものである。ガラス質で化学的にも安定しており、極めて軽量であり、さらに耐火性、断熱性、または耐薬品性にも優れている。水と混和した場合、pHも中性(pH7)であることから、建材用、農園芸用、保冷・真空断熱用、製鉄・鋳造用など、様々な分野で利用されている。このようなパーライトは種々のものが製造販売されており、例えば太平洋パーライト(商品名、太平洋マテリアル株式会社製)、三井パーライトA(三井金属鉱業株式会社製)などがある。その粒径は、一般的に0.1~25.0mm、単位体積重量は0.08~0.9g/cmである。本発明による流動化処理土に用いられるパーライトは特に限定されず、目的に応じて任意に選択することができるが、粒径が1.2~5.0mmであるものが好ましく、単位容積重量が0.6~0.8g/cmであるものが好ましい。
パーライトは、一般に広い粒径分布を有しているが、特定の粒径を有するパーライトを得るためには、一般的には篩による分粒が行われる。例えば、篩目がXmmの篩によって分粒した場合、篩を通過した粒子は粒径Xmm未満であり、篩上に残った粒子は粒径Xmm以上である。したがって、篩目がXmmの篩と、篩目がYmmの篩(X>Y)の2つを用い、Xmmの篩を通過した粒子を、さらにYmmの篩によって分粒することで、Ymmの篩上に、粒径がY~Xmmの粒子を得ることができる。
本発明による流動化処理土に用いるセメントは、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、低熱セメント等のポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント、エコセメント、超微粒子セメントが挙げられる。また、セメントを含むセメント系固化材を用いてもよい。セメント系固化材は、様々な土壌に対応して各種セメントに石膏や石灰、スラグ等の副材を添加したものであり、6価クロム溶出対策型の固化材も各セメントメーカーより販売されている。本発明では、低コストならびに汎用性の観点から、普通セメント、高炉セメントがより好ましい。さらに好ましくは、環境保全対策の観点から、6価クロムの溶出が少ない高炉セメントが好ましい。
本発明において、セメントの含有量は流動化処理土1m当たり40~100kgであることが好ましい。本発明による流動化処理土は、セメントの含有量が比較的少なくても、初期の強度発現性が良好である。さらに、材齢28日でも一軸圧縮強さが例えば0.4~0.8N/mm程度であるため、再掘削が可能である。
本発明による流動化処理土は、容重が低く、具体的には1.2~1.4kg/Lであり、好ましくは1.25~1.35kg/Lである、軽量化された流動化処理土である。このように低い容重は、適切なパーライトを含むことによって達成され、また容重が低くても、優れた強度その他の特性を発揮することができる。
本発明の流動化処理土の流動性は、NEXCO試験方法(試験法313 エアモルタル及びエアミルクの試験方法)のシリンダー法(シリンダー形状;内径80mm、高さ80mm)により測定することができる。このコンシステンシー試験により測定される、本発明による流動化処理土は、シリンダフロー値が200~300mmであることが好ましい。シリンダーフロー値がこの範囲にあることで、より適切な流動性を保ち、良好な施工性を確保することができる。
[流動化処理土の製造方法]
本発明による流動化処理土は、前記した各成分、および必要に応じてその他の添加剤を混合することによって調整することができる。混合順序は特に限定されず、また各成分を組み合わせた混合物、例えば土砂と水とを混練したスラリーや、セメントと添加剤とを組み合わせたセメント固化材を原料とすることもできる。
また本発明による流動化処理土は、特に調整泥水を原料として用いることで、新たに特殊な製造設備等を導入・使用することなく、従来の流動化処理土プラントで製造可能である。そして、複雑な製造工程や煩雑な品質管理も必要なく、低コストで軽量化された流動化処理土を製造し、アジテータ車で運搬し、施工現場に提供することが可能である。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(調整泥水)
土砂および水の一部として、調整泥水を用いた。建設発生土をふるい目10mmのスクリーンにて玉石や礫等を取り除いた後、水道水を加えて容重1.52の調整泥水(A)を作製した。
(パーライト)
パーライトとして、太平洋パーライト社製パーライトを分粒したものを使用した。異なる製品から、分粒によって粒径が1.2~5.0mm、かつ単位容積重量が0.61g/cmの粒状パーライト(B1)、と、粒径が1.2~5.0mm、かつ0.72g/cmの粒状パーライト(B2)を使用した。
(セメント)
セメントには、太平洋セメント社製の高炉セメントB種(C)を使用した。
上記に示すA~Cから選定される材料と水道水を用い、表1に示す配合割合でハンドミキサー(回転数;1100rpm)を用いて3分間混合し、実施例1~7および比較例1~4の流動化処理土を作製した。
Figure 0007441685000001
表1に示した各流動化処理土を作製し、容重、シリンダフロー値、ブリーディング率、一軸圧縮強さの測定を行い、流動化処理土としての特性評価を実施した。以下に各測定方法の詳細を示すとともに、表2に測定結果を示す。
(容重)
各流動化処理土をステンレス製の容重升(500ml)に流し込み、土木学会基準(JSCE-F 536-2018)に準拠して測定した。
(シリンダフロー値)
各流動化処理土をNEXCO試験方法(試験法313 エアモルタル及びエアミルクの試験方法)のシリンダー法(シリンダー形状;内径80mm、高さ80mm)に準拠してフロー値を測定した。
(ブリーディング率)
各流動化処理土を土木学会基準(JSCE-F 522-2013:ポリエチレン袋方法)に準拠してブリーディング率の測定を行った。
(一軸圧縮強さ)
各流動化処理土を内径50×高さ100mmの型枠に流し込み、供試体を作製した後、ポリエチレン袋にて湿空養生を行った。材齢7日および28日に土の一軸圧縮試験方法(JIS A 1216:2009)に準拠して一軸圧縮強さを測定した。また一軸圧縮試験後の供試体の破断面を観察し、パーライトの分散状態を目視にて確認した。
(パーライトの分散状態)
上記一軸圧縮試験後の供試体の破断面を目視で観察し、パーライトの分散状態を評価した。
〇;均一に分散、
×;不均一(分離)、
-;パーライトなし
Figure 0007441685000002
表2の結果より、本発明で特定された成分を含み、容重が1.2~1.4kg/Lである、本発明による流動化処理土は、フロー値(237~268mm)、ブリーディング率(0%)のいずれも良好なフレッシュ性状を示している。さらに、一軸圧縮強さも初期強度発現性(材齢7日)が良好であり、かつ材齢28日強度も0.48~0.74N/mmと再掘削が可能な強度発現性を示している。また一軸圧縮試験後の供試体の破断面を観察した結果、パーライトが均一に分散していることが確認された。
一方、本発明以外の流動化処理土は容重が大きい、フロー値が小さい、ブリーディングの発生、強度が高い、供試体の不均一性(分離)等の不具合が発生しており、流動化処理土として十分な性能を発揮し得ないことが分かる。

Claims (6)

  1. 土砂、パーライト、セメント、及び水を含み、その流動化処理土の容重が1.2~1.4kg/Lであり、
    前記パーライトの粒径が1.2~5.0mm、単位容積重量が0.6~0.8g/cm あることを特徴とする、流動化処理土。
  2. 前記セメントの含有量が1m当たり40~100kgである、請求項に記載の流動化処理土。
  3. シリンダフロー値が200~300mmである、請求項1または2に記載の流動化処理土。
  4. 前記土砂が、建設発生土、またはそれを洗浄または分別したものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の流動化処理土。
  5. 土砂、パーライト、セメント、及び水を均一に混練することを含むことを特徴とする、流動化処理土の製造方法であって、
    前記パーライトの粒径が1.2~5.0mm、単位容積重量が0.6~0.8g/cm である方法
  6. 土砂および水の一部として調整泥水を用い、流動化処理土製造プラントで混練を行う、請求項に記載の方法。
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