JP6755743B2 - 流動化ソイルセメントの製造方法 - Google Patents
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最低限必要な水として、セメントの水和反応に使われる水がある。実験結果から、流動化ソイルセメントの場合、セメントの水和反応に使われる水は、セメントとの重量比で25%程度であることが判明している。
また、セメントの水和反応に使われる水の他、土砂に吸収される水がある。この土砂に吸収される水は、水和反応に無関係な水であって、土砂の土粒子と結び付いて含水され土砂内部に取り込まれる水である。土砂に吸収される水を超えて加水すると自由水となる。
ソイルセメントのワーカビリティに影響する水として、締固めに必要な水がある。この締固めに必要な水とは、水和反応に無関係な水であって、土砂の土粒子に吸収されるのではなく、土粒子間隙に存在し、ソイルセメントの締固め効果を向上させるために必要な水のことを指している。
締固めに必要な水の他、ソイルセメントのワーカビリティに影響する水として、土砂の流動化に必要な水がある。土砂の流動化に必要な水とは、水和反応に無関係な水であって、土粒子間隙に存在し、土粒子を分散させて未だ固まらないソイルセメントを流動化させるために必要な水を指している。
前記以外のソイルセメントに関連する水として余剰水がある。この余剰水は、水和反応に無関係であるだけでなく、土砂の締固めや流動化等のワーカビリティの改善にも寄与しない水のことを指す。この余剰水が多いほどソイルセメントの強度発現に対して悪影響があり、乾燥収縮、凍結融解などの品質低下の原因となる。
次に、図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法の各工程を示すフローチャートである。また、第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法により製造する流動化ソイルセメントは、治山工事や砂防工事などにおいて、地盤改良又は土木構造物構築用として用いられる水和反応で硬化する水硬材料である。
第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、先ず、鋼製バケツやミキサーなどの一定の容積を有する容器に、施工現場の現地土砂を入れ、鋼製の混ぜ棒やミキサー等で撹拌しながら徐々に水を加える加水工程を行う。
第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、このような懸濁状態からさらに撹拌しながら加水して行き、撹拌を止めると容器内の混合物の土粒子が水に沈む材料分離状態とする。そして、その材料分離状態となった直後の加水量を分離加水量として確認して求める分離加水量確認工程を行う。
次に、第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、材料分離状態となった混合物に撹拌しながらセメントを添加していくセメント添加工程を行う。本実施形態に係るセメント添加工程では、セメントとして普通ポルトランドセメントの粉体をミキサーや混ぜ棒等で撹拌しながら徐々に添加して行く。
次に、第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、先の分離加水量確認工程で求めた分離加水量、及び前セメント添加工程で求めたセメント添加量に基づいてセメントミルクを調合するセメントセメントミルク調合工程を行う。具体的には、本工程では、先の工程において求めた分離加水量及びセメント添加量から決定される水セメント比により、混ぜ合わせる現地土砂の容量又は重量に比例した分量を決定し、施工時に必要な量のセメントミルクを調合する。
次に、第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、前工程で調合したセメントミルクを、現地土砂に混合して流動化ソイルセメントを製造する流動化ソイルセメント製造工程を行う。具体的には、本工程では、施工に必要な現地土砂を撹拌して空練りした後、前工程で調合したセメントミルクを撹拌しながら少量ずつ徐々に加えて流動化ソイルセメントを製造する。そうすることにより、均質で一様なソイルセメントを製造することができるからである。
最後に、第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、前工程で製造した流動化ソイルセメントを布製型枠に詰め、この布製型枠の間隙から余剰水を染み出させて余剰水を排除する余剰水排除工程を行う。
以上説明した第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法によれば、現地土砂の粒径や含水率等が不明であっても、簡易な方法で適切な水セメント比を求めることができる。また、第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法によれば、施工時には、流動性の高い状態で使用することができるので、作業性が極めて良好であるとともに、硬化時には、所望の強度を確保しつつ極力余剰水の発生を抑えた流動化ソイルセメントを製造することができる。このため、施工不良等による品質低下が少なく、極めて良質な地盤改良を施し、又は土木構造物を構築することが可能となる。
次に、図3〜図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法の各工程を示すフローチャートである。また、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法により製造する流動化ソイルセメントも、前述の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントと同様に、治山工事や砂防工事などにおいて、地盤改良又は土木構造物構築用として用いられる水和反応で硬化する水硬材料である。なお、現地土砂やセメントなど、前述の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法で用いた用語と同一の用語は、同様のものを指す。
図3に示すように、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、先ず、施工現場の現地土砂と水とを混合した混合物のスランプ試験を行って、スランプコーンを持ち上げた際に材料が分離して脱型した混合物が崩壊し、スランプの計測ができない状態となる最小の加水量である崩壊加水量を求めて確認する崩壊加水量確認工程を行う。
次に、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、図3に示すように、現地土砂に崩壊加水量とセメントを加えた混合物のスランプ試験を行って、スランプスランプコーンを持ち上げた際に材料が分離せずにペースト状となってスランプの計測が可能な最小のセメント添加量であるスランプ成立セメント添加量を確認するスランプ成立セメント添加量確認工程を行う。
次に、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、先の崩壊加水量確認工程で求めた崩壊加水量、及び前工程であるスランプ成立セメント添加量確認工程で求めたスランプ成立セメント添加量に基づいてセメントミルクを調合するセメントセメントミルク調合工程を行う。具体的には、本工程では、先の工程において求めた崩壊加水量及びスランプ成立セメント添加量から決定される水セメント比により、混ぜ合わせる現地土砂の容量又は重量に比例した分量を決定し、施工時に必要な量のセメントミルクを調合する。
次に、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、前工程で調合したセメントミルクを、現地土砂に混合して流動化ソイルセメントを製造する流動化ソイルセメント製造工程を行う。具体的には、本工程では、施工に必要な現地土砂を撹拌して空練りした後、前工程で調合したセメントミルクを撹拌しながら少量ずつ徐々に加えて流動化ソイルセメントを製造する。そうすることにより、均質で一様なソイルセメントを製造することができるからである。
最後に、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、前工程で製造した流動化ソイルセメントを布製型枠に詰め、この布製型枠の間隙から余剰水を染み出させて余剰水を排除する余剰水排除工程を行う。なお、布製型枠は、前述の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法と同様である。
以上説明した第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法によれば、現地土砂の粒径や含水率等が不明であっても、簡易な方法で適切な水セメント比を求めることができる。また、第2実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法によれば、施工時には、流動性の高い状態で使用することができるので、作業性が極めて良好であるとともに、硬化時には、所望の強度を確保しつつ極力余剰水の発生を抑えた流動化ソイルセメントを製造することができる。このため、施工不良等による品質低下が少なく、極めて良質な地盤改良を施し、又は土木構造物を構築することが可能となる。
次に、図6、図7を用いて、本発明の第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法の各工程を示すフローチャートであり、図7は、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法の概略を示す説明図である。また、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法により製造する流動化ソイルセメントも、前述の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントと同様に、治山工事や砂防工事などにおいて、地盤改良又は土木構造物構築用として用いられる水和反応で硬化する水硬材料である。なお、現地土砂やセメントなど、前述の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法で用いた用語と同一の用語は、同様のものを指す。
先ず、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、試料1を作成する第1試料作成工程を行う。具体的には、土砂5kgに対して水2kgを投入し、土粒子が分離するまで攪拌する。そして、液状化した試料1にスランプ5cmを目標にセメントを投入する。このとき投入したセメント量(kg)を「セメント量X1」とする。
次に、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、試料2を作成する第2試料作成工程を行う。具体的には、土砂5kgに対して水3kgを投入し、土粒子が分離するまで攪拌する。そして、液状化した試料2にスランプ5cmを目標にセメントを投入する。このとき投入したセメント量(kg)を「セメント量X2」とする。
次に、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、スランプ5cmの水セメント比「W/C5cm」を「セメント量X1」と「セメント量X2」から求める水セメント比(W/C)決定工程を行う。具体的には、「W/C5cm」=セメント(3kg−2kg)/(X2−X3)、即ち、試料1に投入したセメント量X1に、「W/C5cm」を乗じてこれを「セメントに必要な水」とし、全体水量から差し引けば、「土砂に必要な水」+「流動化に必要な水」が求まる。
次に、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、最小セメント量決定工程を行う。具体的には、土砂5kgに対して水0.5kg,1kg,2kg,3kgを投入し、土粒子が分離するまで攪拌する。そして、前工程で求めた「セメントに必要な水」、「土砂に必要な水」、「流動化に必要な水」、「W/C5cm」を基に加水量に応じたセメント量を求めて投入する。ここで、「セメントに必要な水」={「加水量」−「土砂に必要な水」−「流動化に必要な水」}であり、「セメント量」=「セメントに必要な水」/「W/C5cm」である。
次に、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、流動化ソイルセメントの最小セメント量決定工程を行う。具体的には、前述のスランプ試験においてスランプ5cmでタッピングを行って目視において流動しなければ、非流動と判断し、タッピングを行って流動性が確認できるまで、水量を増やし目標スランプ値を10cm,15cm,20cm上げて行く。そして、前記手順で流動性が確認できたスランプ値の最小のスランプ値における水セメント比(W/C)及び最小セメント量を求め、それらの値に応じて流動化ソイルセメントを製造する。
最後に、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法では、前工程で製造した流動化ソイルセメントを布製型枠に詰め、この布製型枠の間隙から余剰水を染み出させて余剰水を排除する余剰水排除工程を行う。なお、布製型枠は、前述の第1実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法と同様である。
以上説明した第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法によれば、現地土砂の粒径や含水率等が不明であっても、簡易な方法で適切な水セメント比を求めることができる。また、第3実施形態に係る流動化ソイルセメントの製造方法によれば、施工時には、流動性の高い状態で使用することができるので、作業性が極めて良好であるとともに、硬化時には、所望の強度を確保しつつ極力余剰水の発生を抑えた流動化ソイルセメントを製造することができる。このため、施工不良等による品質低下が少なく、極めて良質な地盤改良を施し、又は土木構造物を構築することが可能となる。
C2 :コーン本体
C3 :押さえ
C4 :取っ手
Claims (4)
- 地盤改良又は土木構造物構築用の流動化ソイルセメントの製造方法であって、
容器に施工現場の所定量の現地土砂を入れて撹拌しながら水を徐々に加えて行き、ペースト状から脱して土粒子が水に浮遊する懸濁水とし、その後、撹拌を止めると土粒子が水に沈む材料分離状態となるまで加水して、その直後の分離加水量を確認する分離加水量確認工程と、
前記分離加水量確認工程において材料分離状態となった前記容器内の混合物にセメントを撹拌しながら徐々に添加して行き、前記容器の混合物が撹拌を止めても土粒子と水とが分離しないペースト状に戻るまでセメントを添加し、ペースト状となった直後のセメント添加量を確認するセメント添加量確認工程と、を備え、
前記分離加水量と、前記セメント添加量と、に基づいてセメントミルクを調合し、調合したセメントミルクに現地土砂を混合して流動化ソイルセメントを製造すること
を特徴とする流動化ソイルセメントの製造方法。 - 地盤改良又は土木構造物構築用の流動化ソイルセメントの製造方法であって、
施工現場の現地土砂と水とを混合した混合物のスランプ試験を行って、スランプコーンを持ち上げた際に材料が分離して脱型した混合物が崩壊し、スランプの計測ができない状態となる最小の加水量である崩壊加水量を確認する崩壊加水量確認工程と、
現地土砂に前記崩壊加水量とセメントを加えた混合物のスランプ試験を行って、スランプコーンを持ち上げた際に材料が分離せずにペースト状となってスランプの計測が可能な最小のセメント添加量であるスランプ成立セメント添加量を確認するスランプ成立セメント添加量確認工程と、を備え、
前記崩壊加水量と、前記スランプ成立セメント添加量と、に基づいてセメントミルクを調合し、調合したセメントミルクに現地土砂を混合して流動化ソイルセメントを製造すること
を特徴とする流動化ソイルセメントの製造方法。 - 地盤改良又は土木構造物構築用の流動化ソイルセメントの製造方法であって、
スランプ試験における目標スランプ値を定めて、それに応じた複数の試料を作成する工程と、
作成する複数の試料から水セメント比及び最小セメント量を決定する工程と、を備え、
目標スランプ値を段階的に増加させながら、それぞれの水セメント比及び最小セメント量を求めていき、タッピングで流動性が確認できた最小のスランプ値における水セメント比及び最小セメント量に基づいて流動化ソイルセメントを製造すること
を特徴とする流動化ソイルセメントの製造方法。 - 前記流動化ソイルセメントを布製型枠に詰め、この布製型枠の間隙から余剰水を染み出させて余剰水を排除すること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流動化ソイルセメントの製造方法。
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