JP5059354B2 - 土質安定用地盤注入材 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な土質安定用地盤注入材に関する。
軟弱地盤の強化、漏水地盤の止水を行うために、地盤注入工法が実施されている。該工法は、地盤注入用薬液(地盤注入材)を地盤中に注入してゲルを生成せしめ、該地盤を安定化させるものであり、シールド工事やトンネル工事において、地盤からの地下水の漏水防止や坑壁の安定化をはじめ、土木建設業界において広く採用されている。
上記工法は、一般的に仮設工法として使用されることが多く、注入材として、水ガラスを主剤とした地盤注入材が用いられている。水ガラス系の注入材は、安全性が高く、さらに、止水や地盤強化等の様々な注入目的に応じることができるので、最も広く使用されている。水ガラス系の地盤注入材を大きく分類すると、溶液型と懸濁型の二つに分類される。溶液型は、先ず、水ガラスと重炭酸塩等を溶解したゲル化剤とよりなる地盤注入薬液を、地盤に圧入し、土粒子間の空隙に浸透させる。そして、水ガラスとゲル化剤のゲル化反応により、土粒子間の空隙を埋めて固化体を地盤中に生じせしめて該地盤を安定させるものである。一方、懸濁型は、先ず、水ガラスとセメントなどの懸濁物とよりなる地盤注入薬液を、地盤に圧入し、土粒子間の空隙に浸透または割裂注入させる。そして、水ガラスと懸濁物のゲル化反応により、固化体を生成し土粒子間の空隙を埋めて該地盤を安定させるものである。また、懸濁型は、生成した固化体によって土粒子を圧密させることによって、該地盤を安定させるものである。
しかしながら、水ガラスを主剤とした地盤注入薬液のゲル化反応より得られた固化体は、時間の経過とともに溶脱と呼ばれる体積減少が起きる。この溶脱は、固化体から該薬液成分を含む水が溶出し、その水の容積分だけ固化体が減少するものである。この溶脱が起こることによって、地盤の安定効果が減少し、ついには失われるといった問題があった。そのため、耐久性を必要とする薬液注入においては、水ガラスを用いない非水ガラス系の土質安定用地盤注入材を選定することが一般的である。
非水ガラス系の土質安定用地盤注入材とは、セメントを主成分とした土質安定用地盤注入材、つまり水硬性セメントに水を配合したセメントミルクと呼ばれるものである。しかし、このようなセメントミルクは、明確なゲル化時間を持たないため、地下水による希釈等の影響を受けやすい。そのため、ゲル化時間を制御する様々な検討がなされている。
例えば、セメントミルクにセメント急結剤を配合し、ゲル化時間を制御する方法が提案されている。より具体的には、可溶性アルミニウムと無機硫酸塩(石膏)との混合物を、セメント急結剤としてセメントミルクと混合し、ゲル化時間を制御する急硬性セメントの施工方法が提案されている(特許文献1参照)。
このようにゲル化時間を制御するため、可溶性アルミニウムと石膏の混合物を添加したセメントが、急結性セメントとして既に知られている。しかしながら、一般に、急硬性セメントは、短時間に強度を発現する性質を有している反面、ゲル化時間(凝結時間)が短いので取り扱い中に凝結硬化してしまい、施工に支障をきたすという問題があった。その対策として、凝結時間を遅らせるためにグルコン酸やクエン酸等の凝結遅延剤を添加することが一般的であるが、凝結遅延効果は、凝結遅延剤の種類や添加量により変化し、更に温度や混練り時間などの実施工における様々な付帯条件の影響を受けていた。
そのため、凝結遅延剤を添加しなくても施工に十分なゲル化時間(凝結時間)を有し、しかも、水硬性セメントを含む主材液と、アルミナセメントを含む硬化材液との混合液において、ブリーディングも少なく、脆弱部分が生じる可能性が低い注入材も提案されている。具体的には、アルミナセメントを除く水硬性セメントを含んでからなる主材液と、アルミナセメントを含んでなる硬化材液とを組み合わせてなる土質安定用注入材であって、アルミナセメントに対して、ブレーン値が3000cm/g以上あるII型無水石膏を特定量配合し、更に、前記水硬性セメントに対して、アルミナセメントとII型無水石膏の合計量が特定量以上になるように混合した土質安定用地盤注入材が提案されている(特許文献2参照)。
この土質安定用地盤注入材は、強度発現性が良好で、しかもブリーディングが少ないため、形成される硬化体(土質安定用地盤注入材が硬化したもの)の上層部に脆弱な部分が少なくなる。さらに、この土質安定用地盤注入材は、15分以内にゲル化し、硬化材液に凝結遅延剤を添加しなくても、実施工に十分なゲル化時間(凝結時間)を有するものである。このような特許文献2に記載された土質安定用地盤注入材においては、具体的に実施例おいて、水硬性セメント160kgに水を加えて混練し、練り上がり容量が200L(主材液)となるように水量を調整して使用した場合、硬化体の強度発現性が良好で、ブリーディングが少ないものであることが示されている。これを混合した土質安定用地盤注入材の全量を1000Lに換算した場合には、水硬性セメントが400kg含有されていることになり、この場合には、強度発現性が良好で、ブリーディングが少ないものであることが示されている。
しかしながら、より土質安定用地盤注入材の流動性を高めるため、水硬性セメントに対して、水の量を増やした場合には、上記土質安定用地盤注入材では、ブリーディングが増加する傾向にあり、脆弱な部分が生じてしまい改善の余地があった。また、形成される硬化体の乾燥収縮も大きくなる傾向にあり、改善の余地があった。
一方、水硬性セメントを含む主材液と、アルミナセメントを含む硬化材液よりなる土質安定用地盤注入材において、石膏と無機炭酸塩とを含むものも知られている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載された土質安定用地盤注入材は、石膏、無機炭酸塩、および石灰が必須成分とし、低温時においても瞬結性(1分以内)のゲル化時間が得られ、材令1日の一軸圧縮強度値が2kg/cm以上となる。
しかしながら、上記の通り、特許文献3に記載された土質安定用地盤注入材は、低温時における主材液−硬化材液との混合液の瞬結性、および硬化体の早強性を発現することを目的とするものであり、ブリーディングを少なくするものではない。しかも、上記土質安定用地盤注入材は、ゲル化については瞬結性(1分以内)を有する特殊なものであり、一般の用途、例えば、操作性を考慮して、1分を超えるようなゲル化時間が必要な用途においては使用することができない点で改善の余地があった。
特開昭50−16717号 特許第2929352号 特許第2928352号
したがって、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を補う新しい土質安定用地盤注入材を提供することにある。
即ち、本発明の目的は、グルコン酸やクエン酸等の凝結遅延剤を添加しなくても、実施工に十分なゲル化時間(凝結時間)を確保することができ、更に、ブリーディングを生じることがなく、形成される硬化体の圧縮強度が高く、しかも、乾燥収縮が小さい土質安定用地盤注入材を提供することにある。
特に、流動性をより高めるため、水硬性セメントに対して、水の量を増やした場合においても、上記効果が十分に発揮される土質安定用地盤注入材を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を行ってきた。その結果、アルミナセメントを除く水硬性セメントを含んでなる主材液と、アルミナセメントを含んでなる硬化材液とを組み合わせてなる土質安定用地盤注入材であって、前記硬化材液に無機炭酸塩が配合され、更に、前記主材液と前記硬化材液との混合液に、石膏、およびポゾラン反応を行なう粉体が含有されてなる土質安定用地盤注入材が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アルミナセメントを除く水硬性セメントを含んでなる主材液と、アルミナセメント、および無機炭酸塩を含んでなる硬化材液とを組み合わせてなる土質安定用地盤注入材であって、前記硬化材液に、前記主材液におけるアルミナセメントを除く水硬性セメント100質量部に対して、アルミナセメントが5質量部以上80質量部以下、および無機炭酸塩が1〜15質量部配合されてなり、更に、前記主材液と前記硬化材液との混合液に、アルミナセメント100質量部に対して、石膏が100質量部を超え250質量部以下の量含有され、かつ、ポゾラン反応を行なう粉体が50質量部以上300質量部以下含有されてなることを特徴とする土質安定用地盤注入材である。
本発明の土質安定用地盤注入材は、グルコン酸やクエン酸等の凝結遅延剤として添加しなくても、実施工に十分なゲル化時間(凝結時間)を確保することができる。また、本発明の土質用安定地盤注入材は、ブリーディングを生じることなく、形成された硬化体は、乾燥収縮が小さいものとなる。更に、形成された硬化体は、24時間後の圧縮強度が、一般的な土と同程度である0.3N/mm以上となり、強度的にも優れたものとなる。そのため、本発明の土質安定用地盤注入材は、硬化体上層部に脆弱な部分を生じるおそれが少なく、更に、硬化体の強度が高く、乾燥収縮が小さいものであるから、より確実に地盤を安定化することができる。
更に、本発明の土質安定用地盤注入材は、主材液のアルミナセメントを除く水硬性セメントの配合量が少ない場合においても、主材液と硬化材液との混合液が、数分から数十分のゲル化時間を有する。そのため、土質安定用地盤注入材の流動性を改善するために、水硬性セメントに対して、水の量を増やした場合においても、同様の効果を発揮することができ、操作性を改善することができる。また、本発明の土質安定用地盤注入材は、水硬性セメントに対して、水の量を増やした場合においても、ブリーディングを生じることなく、形成される硬化体は圧縮強度が高く、乾燥収縮が小さいものとなる。
また、本発明において、硬化材液は、常温(液温20℃)において、調製後、単独で放置されたときに3時間未満で硬化しないため、安定性に優れたものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の土質安定用地盤注入材は、アルミナセメントを除く水硬性セメントを含んでなる主材液と、アルミナセメント、および無機炭酸塩を含んでなる硬化材液とを組み合わせてなるものであり、前記主材液と前記硬化材液とを混合した混合液に、更に、石膏、ポゾラン反応を行う粉体が含有されてなるものである。以下、上記混合液に、石膏、ポゾラン反応を行う粉体が含有される土質安定用地盤注入材を、単に、注入材とする場合もある。
本発明において、前記主材液は、アルミナセメントを除く水硬性セメント(以下、単に水硬性セメントとする場合もある)を水で混練したものである。主材として用いることのできる水硬性セメントとしては、普通・早強・超早強・中庸熱・白色等の各種ポルトランドセメント類、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメント類を挙げることができ、これらのセメントは一種ないし二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、前記主材液(以下、単にA液とする場合もある)における水硬性セメントの使用量(水との比)は、特に制限されるものではないが、A液200Lに対して、60〜320kgであることが好ましい。水硬性セメントの使用量を上記範囲とすることにより、A液の粘性を低くすることができ、ポンプの負担を抑えることができる。更に、A液と下記の硬化材液とを混合しやすくなる。また、水硬性セメントの使用量は、下記の硬化材液と混合した土質安定用地盤注入材の全量を1000Lとした際、150〜1200kgの範囲が好ましく、更に200〜600kgの範囲が好ましい。水硬性セメントの使用量が、注入材1000L当り150kg以上であることにより、硬化体(土質安定用地盤注入材が硬化したもの)の強度が高くなり、地盤の安定化が十分となる。また、本発明の土質安定用地盤注入材は、注入材の流動性を高めるため、水硬性セメントに対する水の割合を多くした場合でも、ブリーディングを抑えることができる。具体的には、主成分となる水硬性セメントの使用量が、土質安定用地盤注入材1000L当り400kg以下、より流動性を高めるために300kg以下とした場合においても、硬化体の圧縮強度を保持したまま、ブリーディングの発生を抑えることができる。一方、水硬性セメントの使用量が、土質安定用地盤注入材1000L当り1200kg以下であることにより、A液とB液の混合液の浸透性が高くなり、形成される土砂固化体が大きく、計画範囲まで地盤の安定化が図れる。
本発明の土質安定用地盤注入材において、前記硬化材液(以下、単にB液とする場合もある)は、アルミナセメント、および無機炭酸塩が下記に示す量配合されてなり、これらと水とを混練りしたものである。尚、B液におけるアルミナセメント、無機炭酸塩、および必要に応じて配合される石膏、ポゾラン反応を行う粉体の合計量は、特に制限されるものではないが、B液200Lに対し、60〜300kgであることが好ましい。この範囲にすることにより、B液の粘性を低くすることができ、ポンプの負担を抑えることができる。更に、上記A液と混合しやすくなる。
前記アルミナセメントは、水硬性セメントに対して硬化剤として使用されるものであり、具体的には、JIS−R2511「耐火物用アルミナセメント」に規定されるアルミナセメント1〜5種、もしくはこれに相当する品質を有するものである。これらの内、特にアルミナセメント3種、もしくはこれに相当する品質を有するものを用いるのが望ましい。
本発明において、前記B液には、前記主材液におけるアルミナセメントを除く水硬性セメント100質量部に対して、前記アルミナセメントが5質量部以上配合される。アルミナセメントが5質量部未満である場合には、硬化体の強度が低く、ブリーディングを生じやすいために、地盤に注入し形成された土砂固化体においても、脆弱部分を生じるため好ましくない。一方、アルミナセメントの配合量の上限は、特に制限されるものではないが、80質量部を超える場合は、アルミナセメントを配合することによる効果がそれ以上期待できず、経済的でなくなる。硬化体の強度発現性等の効果と経済性を考慮すると、アルミナセメントは、前記主材液におけるアルミナセメントを除く水硬性セメント100質量部に対して、好ましくは8〜80質量部、より好ましくは8〜40質量部、更に好ましくは8〜20質量部である。
また、本発明において、前記B液には、前記主材液におけるアルミナセメントを除く水硬性セメント100質量部に対して、無機炭酸塩が1〜15質量部配合される。この無機炭酸塩は、アルミナセメントを除く水硬性セメントと反応するため、B液に配合しなければならない。A液に添加する場合は、クエン酸等の遅延剤を一緒に加える必要性があり、ゲル化時間や混練り時間等の調整が難しくなる。
本発明において、前記無機炭酸塩を具体的に例示すると、市販の炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等があげられ、中でも、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を使用することが好ましい。また、これらを一種ないし二種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、前記無機炭酸塩の配合割合は、前記主材液におけるアルミナセメントを除く水硬性セメント100質量部に対して、無機炭酸塩が1〜15質量部である。無機炭酸塩が1質量部未満の場合、土質安定用地盤注入材の流動性を高めるため、水硬性セメントに対する水の量を増加させた際に、ブリーディングが生じるため好ましくない。一方、無機炭酸塩が15質量部を超える場合、ゲル化時間が遅延し、更に、ブリーディングも発生しやすくなり、硬化体の圧縮強度が低下するため好ましくない。
本発明の土質安定用地盤注入材においては、前記A液とB液との混合液に、石膏、およびポゾラン反応を行なう粉体が含有される。
本発明において、前記石膏は、無水石膏が好ましい。例えば無水石膏以外の形態の石膏である半水石膏、二水石膏などを用いることもできるが、目標のゲル化物性を得るためには配合量を多くしなければならない場合があり、経済的でなくなる。また、前記石膏の性状等は、特に制限されるものではないが、例えば、ブレーン値は、3000〜9000cm/gのものを使用することができる。
また、本発明において、前記石膏の含有量は、土質安定用地盤注入材中のアルミナセメント100質量部に対して、100質量部を超える量である。アルミナセメント100質量部に対して、石膏の含有量が100質量部以下である場合には、ブリーディングが生じやすくなるため好ましくない。特に、水硬性セメントの配合量が少ない場合(即ち、水の量が多く、土質安定用地盤注入材の流動性を高めた場合)において、ゲル化時間が遅延する傾向にあり、更に、ブリーディング率が高くなり、硬化体の強度も低下する。その結果、地盤に注入し形成された土砂固化体において、脆弱部分が多くなるため好ましくない。一方、石膏の含有量の上限については、特に制限されるものではないが、実施工におけるポンプへの負担、地盤への浸透性、形成される土砂固化体の大きさ、経済性等を考慮すると、アルミナセメント100質量部に対して、石膏の含有量が250質量部以下であることが好ましい。よりブリーディング率を低下させ、硬化体の強度を保ち、かつ、実施工の作業性、経済性を考慮すると、石膏の含有量は、アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは150質量部を超え250質量部以下、更に好ましくは150質量部を超え200質量部以下である。
本発明において、前記ポゾラン反応を行う粉体は、該粉体がポゾラン反応を行なうもの(可溶性シリカが水酸化カルシウムと反応し、シリカ質化合物を生成するもの)であれば、特に制限されるものではない。具体的には、フライアッシュ、石炭灰、高炉スラグ、シリカゲル、シリカヒューム、凝灰岩、ケイソウ土、焼成粘土、焼成百岩などを粉砕および/または分級したものが好ましく、これらを一種ないし二種以上組み合わせて用いることができる。中でも、経済性等を考慮すると、フライアッシュを用いることが好ましい。また、ポゾラン反応を行う粉体の性状は、特に制限されるものではないが、ブレーン値が3000〜9000cm/gのものを使用することができる。
本発明において、ポゾラン反応を行う粉体の含有量は、土質安定用地盤注入材中のアルミナセメント100質量部に対して、50質量部以上である。アルミナセメント100質量部に対して、ポゾラン反応を行う粉体の含有量が50質量部未満の場合には、硬化体の乾燥収縮が大きくなり、ブリーディングも生じやすくなるため好ましくない。一方、ポゾラン反応を行う粉体の含有量の上限は、特に制限されるものではないが、注入材の粘度(実施工におけるポンプの負担)、地盤への浸透性、形成される土砂固化体の大きさ、経済性等を考慮すると、アルミナセメント100質量部に対して、ポゾラン反応を行う粉体が300質量部以下であることが好ましい。硬化体の乾燥収縮、実施工時の作業性、経済性を考慮すると、ポゾラン反応を行なう粉体の含有量は、アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは100質量部〜200質量部であり、より好ましくは100〜150質量部である。
本発明の土質安定用注入材において、前記石膏および前記ポゾラン反応を行なう粉体は、前記割合のものがA液とB液との混合液に含有されていればよい。そのため、A液またはB液のいずれに配合されていてもよく、また、A液とB液とを混合する際に、同時に石膏、ポゾラン反応を行う粉体を含有させてもよい。石膏およびポゾラン反応を行なう粉体を、A液とB液との混合液に含有させる具体的な方法を例示すると、A液またはB液のいずれか一方に、石膏およびポゾラン反応を行なう粉体の両者を予め配合し、A液とB液を混合する方法、A液に石膏またはポゾラン反応を行なう粉体の一方を配合し、B液にA液に配合されなかった他方の物質(ポゾラン反応を行なう粉体または石膏)を配合し、A液とB液を混合する方法等を挙げることができる。また、A液およびB液の両方に、石膏およびポゾラン反応を行う粉体の両者を配合し、A液とB液を混合する方法を採用することもできる。中でも、実施工においては、A液とB液の粘性バランス、操作性等を考えると、B液に石膏とポゾラン反応を行う粉体を配合し、混合液に含有させる方法を採用することが好ましい。
また、A液とB液の混合液に、石膏、ポゾラン反応を行う粉体が含有された土質安定用地盤注入材を注入する方法については、公知の単管式、多重管式、多管式等の各種注入管を用いて地盤内に浸透または割裂注入し、固化体を形成し地盤を安定させる方法や、噴射ノズルを有する注入管を用いて200kgf/cm程度の切削圧力で噴射注入し、円柱状の固化体を形成して地盤を安定させる方法等を採用することができる。
本発明の最大の特徴は、水硬性セメントとアルミナセメントとを主成分とする注入材において、特定量の無機炭酸塩、石膏、およびポゾラン反応を行なう粉体を含有させることにある。この3成分を混合することにより、アルミナセメントを除く水硬性セメントの配合量が少ない場合(即ち、水の量を多くし、注入材の流動性を高めた場合)においても、ブリーディングを生じないため、形成された硬化体上部に脆弱部分を生じることがなく、確実な地盤の安定化が期待できる。特に、本発明の土質安定用地盤注入材においては、土質安定用地盤注入材の全量を1000Lとした際、主成分となる水硬性セメントの配合量が400kg以下、特に、300kg、200kgの場合においても、ブリーディングの発生がなく、硬化体の圧縮強度を0.3N/mm以上と高くすることができる。更に、硬化体の乾燥収縮までも小さくできるため、地盤をより確実に安定化することができる。
この効果が発揮される理由は明らかではないが、アルミナセメントを除く水硬性セメントに対するアルミナセメントおよび無機炭酸塩を一定の範囲内で配合し、更に、アルミナセメントに対する石膏およびポゾラン反応を行う物質を一定の範囲内で配合することにより粉体同士の相乗効果が起こり、各粉体の能力が最大限に発揮されるものと推定される。
また、本発明の土質安定用地盤注入材には、必要に応じて、減水剤、消泡剤、増粘剤など、各種セメント混和剤を添加することができる。これらのセメント混和剤を主材液または硬化材液のいずれか一方もしくは両方に添加し、使用することができる。公知減水剤としては、リグニンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ポリカルボン酸などがあげられる。また、公知消泡剤としては高級アルコール系やジエチレングリコール系などがあげられる。また、公知増粘剤としてはメチルセルロースなどのセルロースエーテル系やグアガム水溶性ポリマー系などがあげられる。
本発明を更に具体的に説明するため以下実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、使用材料、試験方法を示す。
1. 使用材料
(1)アルミナセメントを除く水硬性セメント
商品名:普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ社製)
(2)アルミナセメント
商品名:デンカアルミナセメント1号(電気化学株式会社製)
(3)無機炭酸塩
商品名:ソーダ灰(デンス)(株式会社トクヤマ社製)
(4)無水石膏
商品名:無水フッ酸石膏(セントラル硝子社製)
(5)ポゾラン反応を行う粉体
商品名:フライアッシュ(中国電力小野田工場製)
2.試験方法
注入材のブリーディング率、ゲル化時間、24時間後の圧縮強度、B液の安定性および乾燥収縮率は下記の方法により測定した。
(ブリーディング率)
下記の実施例、比較例で得られた注入材をJSCE−F 522−1999プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)に準拠して、ブリーディングを測定した。
(ゲル化時間)
下記実施例、比較例で得られた注入材を容器内に静置し、容器を傾けても内容物が動かなくなるまでの所要時間をゲル化時間とした。
(圧縮強度(ホモゲル))
5φ×10cmのモールドに下記実施例、比較例で得られた注入材を流し込み20±2℃で密封養生し、24時間後にJISA1216(1998)土の一軸圧縮試験方法に準拠して測定した。
(B液の安定性)
調製したB液をビーカー内で静置し、調製してから3時間以内に硬化物が生成しないものを合格(○:まる)とした。
(乾燥収縮率(ホモゲル))
4cm×4cm×16cmの型枠に下記実施例、比較例で得られた注入材を流し込み、20±2℃で養生し、24時間後に脱型したのち基準となる寸法を測定した。次に20±2℃で気中養生し、28日後に寸法を測定し、基準となる寸法と比較した。
実施例1〜6、比較例1〜8
表1、表2に示す配合割合で土質安定用地盤注入材を製造し、上記試験方法により評価を行った。
実施例1においては、主材液(A液)として、撹拌機を用いて水を撹拌しながら、上記使用材料に示したアルミナセメントを除く水硬性セメント300gを加え、A液が500mlになるように調製した。一方、硬化材液(B液)については、撹拌機を用いて水を撹拌しながら、上記使用材料に示したアルミナセメント37.5g、無機炭酸塩5g、石膏75g、およびポゾラン反応を行う粉体50gを加え、B液が500mlになるように調製した。これらA液とB液とを素早く均一に混合し、土質安定用地盤注入材とした。この注入材、およびB液を上記試験方法により、その性能を評価した。結果を表1に示す。
その他の実施例、比較例のA液は、実施例1と同様に、撹拌機を用いて水を撹拌しながら、表1、表2に示す配合量のアルミナセメントを除く水硬性セメントを加え、A液が500mlとなるように調製した。一方、その他の実施例、比較例のB液も、実施例1と同様に、撹拌機を用いて水を撹拌しながら、表1、表2に示す配合量のアルミナセメント、無機炭酸塩、石膏、およびポゾラン反応を行う粉体を加え、B液が500mlになるように調製した。これらA液とB液との混合は、実施例1と同様に行い、注入材を得た。この注入材、およびB液を上記試験方法により、その性能を評価した。結果を表1、2に示す。
Figure 0005059354
Figure 0005059354
表1の実施例1〜3と比較例1〜2から明らかな通り、無機炭酸塩が本発明の範囲を満足しない場合は、ブリーディングが生じたり、1時間以内にゲル化しなかった。また、アルミナセメントが本発明の範囲を満足しない場合(表1の実施例2、4、5、と比較例3との比較)は、1時間以内にゲル化しなかった。また、石膏が本発明の範囲を満足しない場合(表1 実施例2、表2 実施例6と表2 比較例4、5との比較)は、ゲル化時間が遅延する傾向にあり、更に、ブリーディング率が高くなり、硬化体の強度も低下した。更に、ポゾラン反応を行う粉体が、本発明の範囲を満足しない場合には、硬化体の乾燥収縮が大きくなり、ブリーディングも生じやすかった。
一方、本発明の範囲を満足する土質安定用地盤注入材は、ブリーディングが生じることなく、ゲル化時間を有し、更に、形成される硬化体の強度も高く、乾燥収縮も小さかった。特に、アルミナセメントを除く水硬性セメントの割合が少ない場合(実施例1〜3、6、注入材 1000L当たり、水硬性セメント 300kg相当、実施例5 注入材 1000L当たり、水硬性セメント 200kg相当)でも、優れた効果を有していた。

Claims (3)

  1. アルミナセメントを除く水硬性セメントを含んでなる主材液と、アルミナセメント、および無機炭酸塩を含んでなる硬化材液とを組み合わせてなる土質安定用地盤注入材であって、前記硬化材液に、前記主材液におけるアルミナセメントを除く水硬性セメント100質量部に対して、アルミナセメントが5質量部以上80質量部以下、および無機炭酸塩が1〜15質量部配合されてなり、更に、前記主材液と前記硬化材液との混合液に、アルミナセメント100質量部に対して、石膏が100質量部を超え250質量部以下の量含有され、かつ、ポゾラン反応を行なう粉体が50質量部以上300質量部以下含有されてなることを特徴とする土質安定用地盤注入材。
  2. 石膏及びポゾラン反応を行なう粉体が硬化材液側に含まれる請求項1記載の土質安定用地盤注入材。
  3. ポゾラン反応を行なう粉体がフライアッシュである請求項1又は2記載の土質安定用地盤注入材。
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