JP2018044049A - 充填材料およびそれを用いた充填方法 - Google Patents

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【課題】あらゆる地盤の空洞や空隙部、トンネルの背面や法面の背面など自然由来の湧水や雨水など流水を透水させながら、一定の強度を確保させる低pHの充填材料およびそれを用いた充填方法を提供する。【解決手段】(1)アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ土類金属炭酸塩、酸性物質を含有してなる充填材料であり、(2)カルシウムアルミネートを含有する(1)の充填材料であり、(3)増粘剤を含有する(1)または(2)の充填材料であり、(4)体積の発泡倍率が1.1〜30倍である(1)〜(3)のいずれかの充填材料であり、(5)(1)〜(4)のいずれかの充填材料を用いた充填方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、土木・建築分野において使用される充填材料およびそれを用いた充填方法に関する。
土木・建築分野においてトンネルの背面や法面の背面やあらゆる地盤において自然由来の湧水や雨水などの流水により土砂が流れ空隙や空洞が生じてしまう課題がある。この流水を止めたり、空隙を埋めるため充填材が使用されている。しかしながら、充填した箇所では注入材が充填され流水は止水されるが、充填されていない箇所に水圧がかかり、水圧により新たに空隙が生じ、補修を繰り返す課題がある。そこで、流水を透水させながら、一定の強度を確保できる充填材料が求められる。
空隙を充填する材料として、例えば、発泡ウレタンが地盤などの空隙部の充填材として使用されている(特許文献1)。これは、発泡して体積膨張することで脆弱部や空洞部に選択的に注入することができるものである。しかしながら、材料自体に透水性がなく、充填されていない箇所に水圧がかかり、新たに空隙が生まれてしまう課題がある。
また、空気を強制混合したセメント系のエアモルタルが使用されている。(特許文献2〜4)が、発泡機が必要となり、施工手間となることや、さらに透水性は低く、一定の強度が得られない課題がある。また、空気量は少ないが発泡剤を混和した無収縮モルタルなどは、可燃性ガスが発生する課題がある。
さらに、充填性を有するコンクリートとして、ポーラスコンクリートが挙げられ、植生や藻場造成礁などに利用されている(特許文献5〜7)。しかしながら、セメントを使用するため、アルカリ性が高く、環境負荷が高い課題があった。
その他にもトンネルの吹付け工法で、アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ土類金属炭酸塩、水溶性酸性物質や、カルシウムアルミネートを使用することが知られる(特許文献8)。しかしながら、これは急結材の混合管が固結しないようにスラリーを発泡させて脆弱化させる技術であり、充填材料ではない。
さらに、アルカリ土類金属炭酸塩粉末と硫酸アルミニウム水溶液を混合して合成した多孔質浄化材料が検討されている(特許文献9、10)。しかしながら、これらは充填材料として使用されるものではない。
特開2013−199514号公報 特開2002−047048号公報 特開2010−150073号公報 特開2015−107900号公報 特開2000−178057号公報 特開2015−167524号公報 特開2015−193531号公報 特願2008−543111号公報 特許第5069153号公報 特許第5069154号公報
土木・建築分野において、あらゆる地盤の空洞や空隙部、トンネルの背面や法面の背面など自然由来の湧水や雨水など流水を透水させながら、一定の強度を確保させる低pHの充填材料およびそれを用いた充填方法を提供する。
すなわち、本発明は、(1)アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ土類金属炭酸塩、酸性物質を含有してなる充填材料であり、(2)カルシウムアルミネートを含有する(1)の充填材料であり、(3)増粘剤を含有する(1)または(2)の充填材料であり、(4)体積の発泡倍率が1.1〜30倍である(1)〜(3)のいずれかの充填材料であり、(5)(1)〜(4)のいずれかの充填材料を用いた充填方法である。
本発明の充填材料は、pHが低く、一定の強度を確保させることが可能となり、流水による空洞の発生が懸念される箇所に使用可能となるなどの効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明で使用する部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
本発明で使用する炭酸塩はアルカリ土類金属および/またはアルカリ金属(以下、炭酸塩類と云う)であり、特に限定されるものではないが、アルカリ土類金属炭酸塩としては炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが好ましい。アルカリ金属炭酸塩としては炭酸ナトリウムや炭酸カリウムや炭酸リチウムや炭酸水素ナトリウムやセスキ炭酸ナトリウムがより好ましい。炭酸塩類は、固体(粉体)あるいは水溶液や懸濁液のいずれでも使用することができ、特に限定されるものではない。
炭酸塩類の使用量は、酸性物質と混合する場合、その使用量は、固形分換算で、酸性物質の固形分換算100部に対して、50〜2500部が好ましく、より好ましくは80〜2000部が好ましい。
また、酸性物質と炭酸塩類に加え、カルシウムアルミネートを混合する場合、発泡に必要な炭酸塩類の使用量は固形分換算で、酸性物質100部に対して、5〜20部であることが好ましく、より好ましくは7〜10部である。
本発明で使用する炭酸塩の固体(粉末)の粒径は1cm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。1cmを超えると表面積が少なくなり反応性が乏しくなり、炭酸ガスの発生量が少なくなり、充填が低くなる場合ある。
本発明で使用する酸性物質は、水に溶解して酸性を示す物質の総称である。水に溶解しpHを酸性領域とし、炭酸塩類と反応して炭酸ガスを発泡させる物質であればいずれの物質も使用可能である。
酸性物質としては、例えば、硫酸類、明礬、硝酸類、塩化物、リン酸類、ヒドロキシル酸類、オキシカルボン酸類等が挙げられ、この中でも初期強度発現性が良好なことから、硫酸類としては、硫酸アルミニウムが好ましく、ヒドロキシル酸類としては、シュウ酸が好ましい。これらの中では、硫酸アルミニウムが最も好ましい。
硫酸アルミニウムは無水や含水のいずれも使用可能であり、上記の酸性物質の一種又は二種以上が使用可能である。酸性物質は、固体(粉体)あるいは水溶液や懸濁液のいずれでも使用することができ、特に限定されるものではない。
本発明に使用するカルシウムアルミネートは、カルシア原料とアルミナ原料などを混合して、キルンで焼成し、あるいは、電気炉で溶融し冷却して得られるCaOとAlとを主成分とする水和活性を有する物質の総称であり、結晶質、非晶質のいずれであっても使用可能であり、硬化時間が早く、初期強度発現性が高い材料である。カルシウムアルミネートの代表的なものとしてはアルミナセメントが挙げられ、通常市販されているものが使用できる。例えば、アルミナセメント1号、アルミナセメント2号などが使用できる。
アルミナセメントよりも短時間で硬化し、その後の初期強度発現性が高い点から、溶融後に急冷した非晶質カルシウムアルミネートが好ましく、CaOとAlとのモル比(CaO/Alモル比)は、1.0〜3.0が好ましく、1.7〜2.5がより好ましい。1.0〜1.7の場合は、セメントや消石灰及び生石灰を配合する事で硬化時間をより短縮して初期強度発現性を高めることが可能である。
さらに、本発明では、カルシウムアルミネート中に含まれるCaOやAl以外の不純物が15%以下であることが初期強度発現性の観点から好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。15%を超えると硬化に時間を費やし、さらに低温時には固まらず、防草効果が低い場合がある。
不純物の代表例として酸化ケイ素があり、その他、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等がCaOやAlの一部に置換したものがあるが、特に限定されるものでない。
カルシウムアルミネートのガラス化率は、反応活性の面で70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。70%以下であると初期強度発現性が低下する場合がある。カルシウムアルミネートのガラス化率は、反応活性の点で70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。ガラス化率は加熱前のサンプルについて、粉末X線回折法により結晶鉱物のメインピーク面積Sを予め測定し、その後1000℃で2時間加熱後、1〜10℃/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回折法による加熱後の結晶鉱物のメインピーク面積Sを求め、さらに、これらのS及びSの値を用い、次の式を用いてガラス化率χを算出する。ガラス化率χ(%)=100×(1−S/S
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積値3000cm/g以上が好ましく、5000cm/g以上がより好ましい。3000cm/g未満であると硬化時間が長くなり初期強度発現性が低下する場合がある。
カルシウムアルミネートの使用量は、特に限定されるものではないが、酸性物質の固形分換算100部に対して300〜2200部が好ましい。300部未満では充填材の強度が低い場合がある。2200部を超えると炭酸ガスの発生量が少なくなり、充填が低くなる場合ある。
本発明で使用する増粘剤は、特に限定されるものではないが、発泡する際のスラリーの水中不分離性を上げることに加え、発泡する時に適度な粘性を与えることで気泡の抜けを抑制するために使用されるもので、通常市販されているものが使用できる。例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース等のセルロースエーテル系増粘剤、グアーガム、デュータンガム、ウエランガム等のバイオサッカライド系増粘剤、ポリアクリル酸塩、ポリビニールアルコール等の合成高分子類やベントナイトなどの粘土鉱物等が挙げられる。
増粘剤の使用量は、特に限定されるものではないが、酸性物質の固形分換算100部に対して0.01〜20部が好ましく、0.05〜15部がより好ましい。0.01部未満では目的とする粘性が得られない場合があり、5部を超えて使用しても粘性の向上が期待できないばかりか強度が低下する場合がある。
本発明では、凝結調整剤を本発明の差し支えない範囲で使用することが可能である。凝結調整剤は充填材の凝結を促進、遅延するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、水酸化アルカリ、アルカリ金属塩化物塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸又はその塩、リン酸又はその塩、デキストリン、ショ糖、ポリアクリル酸又はその塩、減水剤、高性能減水剤、AE剤、気泡剤などを1種又は2種以上、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明では、ウッドチップ、もみ殻などの嵩をあげる増量材、各種ポルトランドセメント、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、フライアッシュ、高炉スラグ、カオリン、シラス、珪藻土及びシリカフュームなどの混和材料、発泡剤、消泡剤、防錆剤、防凍剤、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、着色剤などを1種又は2種以上、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明で使用する充填材料の体積の発泡倍率は1.1〜20倍が好ましい。1.1倍未満では充填のある硬化体が得られない場合があり、20倍を超えると一定の強度が得られない場合がある。
本発明で使用する充填材料の充填方法は、充填材料が空隙に充填できればよく、流込みやグラウトや吹付けなどが挙げられ、特に限定されるものではない。炭酸塩類と酸性物質は反応により発泡が生じるため、別々に圧送し、充填直前に混合することが好ましい。圧送方法は、グラウトポンプやスクイズポンプ、スネークポンプなどが好ましい。
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験例1」
酸性物質の水溶液と、表1に示す炭酸塩類、カルシウムアルミネートを混合し、硬化体について、pH値と透水係数と圧縮強度を測定した。結果を表1に併記した(酸性物質の(部)は、固形分を示す)。
また、比較として、発泡ウレタンを作製した。発泡ウレタンは、ポリオール100部に対して、300部のコロイダルシリカとからなるA液と、ポリイソシアネートからなるB液とA、B両液を体積比で4:1になるように混合して調製した。さらに、プレキャストで製造されたポーラスコンクリートを比較とした。
「使用材料」
酸性物質(A):硫酸アルミニウム水溶液、固形分濃度25%、一級試薬、市販品
酸性物質(B):シュウ酸水溶液、固形分濃度15%、一級試薬、市販品
酸性物質(C):グルコン酸水溶液、固形分濃度5%、一級試薬、市販品
炭酸塩類(A):炭酸カルシウム、一級試薬、市販品
炭酸塩類(B):炭酸マグネシウム、一級試薬、市販品
炭酸塩類(C):炭酸水素ナトリウム、一級試薬、市販品
炭酸塩類(D):炭酸ナトリウム、一級試薬、市販品
炭酸塩類(E):炭酸塩類(C)と(D)を等量混合したもの、一級試薬
カルシウムアルミネート(A):炭酸カルシウムと酸化アルミニウムのCaO/Alモル比を2.2となるように、1650℃で溶融して急冷した、ガラス化率97%、ブレーン比表面積値5000cmに調製した。CaO/Alモル比2.2、ガラス化率97%、ブレーン比表面積値5000cm
カルシウムアルミネート(B):アルミナセメント1号、デンカ社製
ポリオール:東邦化学社製、ポリエチレングリコール
ポリイソシアネート:三井東圧社製、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート
コロイダルシリカ:日産化学社製、商品名「スノーテックスー30」
ポーラスコンクリートブロック:舗装用ポーラスコンクリート、空隙率22%、市販品
「試験方法」
圧縮強度:一軸圧縮強度は、20℃・相対湿度60%の環境でJIS R 5201に準じて4×4×16cm供試体を作製した。材齢28日強度を測定し、養生方法は、20℃・相対湿度60%の環境下で気乾養生とした。
pH:圧縮強度と同様な方法で20℃・相対湿度60%の環境下で供試体を作製後、材齢28日時点の供試体の粉砕物を100倍(質量)の純水で30分攪拌した上澄み液のpHを測定した。
透水係数:圧縮強度と同様な方法で20℃・相対湿度60%の環境下で供試体を作製後、材齢28日時点の供試体を用い、JIS A 1404(建築用セメント防水剤の試験方法)に準じて水圧を1時間の間10kPaかけ、透水係数を測定した。
発泡倍率:高さ100cmの円筒パイプ下部に高さ5cmの試験体を施工。発泡後の高さを測定し、5cmで除して、発泡倍率を測定した。
Figure 2018044049
本発明の充填材料を用いることにより、低アルカリで充填に優れながら、一定の圧縮強度が得られることが分かる。
「実験例2」
実験No.1-3における酸性物質100部に対して、増粘剤を表2に示したように使用したこと以外は実験例1と同様に行った。
「使用材料」
増粘剤(A):メチルセルロース、平均分子量1000万、市販品
増粘剤(B):ベントナイト:カリウムベントナイト、膨潤度27.0ml/2g、含水率8.9%、粒度湿式残渣45μm5.0%、強熱減量7.0%、市販品
Figure 2018044049
本発明において、充填材料に増粘剤を用いることにより、発泡倍率を上げ、充填に優れながら、一定の圧縮強度が得られることが分かる。
トンネルの背面や法面などあらゆる地盤に発生する空隙部に、本発明の充填材料を使用することで、自然由来の湧水や雨水などの流水を透水させながら、pHが低く、一定の強度を確保させる充填材が可能となり、流水による空洞の発生が懸念される箇所に使用可能となるので、土木分野などに好適である。

Claims (5)

  1. アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ土類金属炭酸塩、酸性物質を含有してなる充填材料。
  2. カルシウムアルミネートを含有してなる請求項1に記載の充填材料。
  3. 増粘剤を含有する請求項1または2に記載の充填材料。
  4. 体積の発泡倍率が1.1〜20倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の充填材料を用いた充填方法。
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