JP7155972B2 - 硬化材、硬化材液、土質安定用薬液、該薬液の製造方法、及び地盤安定化工法 - Google Patents
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Description
また、地下水が流動しているような地盤内や護岸堤防と地盤との空隙部などのように、注入したセメント懸濁液が流水に接触する場合、凝結速度が遅いと、該セメント懸濁液は、流水と混合してセメントの濃度が低下してしまうため、セメントは充分に硬化しなくなる。
したがって、セメント懸濁液を土質安定用薬液として用いる場合、セメント懸濁液は、地盤に注入する前には流動性が確保され、注入後10秒程度でゲル化し、かつ、早期に強度を発現することが求められる。
例えば、特許文献1には、アルミナセメントを除く水硬性セメント、石膏、石灰及び水を含む主材液と、アルミナセメント、無機炭酸塩及び水を含む硬化材液とを混合した土質安定用薬液を地盤に注入する土質安定用薬液及び地盤安定化工法が開示されている。該特許文献1に記載された発明によれば、主材液と硬化材液は、それぞれ液状態が長時間安定で、かつ、両液の混合終了後10秒程度で硬化させることが可能であるとされている。
[1] アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液を硬化させるために用いる硬化材であって、アルミナセメント、無機炭酸塩、並びに以下の(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の1種以上を含むことを特徴とする、硬化材。
(イ)ベントナイト
(ロ)セピオライト
(ハ)アタパルジャイト
(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウム
[2] アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液を硬化させるために用いる硬化材液であって、[1]に記載の硬化材及び水を含むことを特徴とする、硬化材液。
[3] アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰、アルミナセメント、無機炭酸塩、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の1種以上、並びに水を含むことを特徴とする、土質安定用薬液。
(イ)ベントナイト
(ロ)セピオライト
(ハ)アタパルジャイト
(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウム
[4] アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液と、[2]に記載の硬化材液とを混合することを特徴とする、[3]に記載の土質安定用薬液の製造方法。
[5] [3]に記載の土質安定用薬液を地盤に注入すること、或いは、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液と[2]に記載の硬化材液とを地盤内で混合することを特徴とする、地盤安定化工法。
また、「瞬結性を有する」とは、ゲルタイムが10秒以内であることを意味する。
また、「撹拌時間」とは、主材液及び硬化材液のそれぞれの製造において、全成分を混合してから、撹拌を終了するまでの時間を意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化材は、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液を硬化させるために用いるものである。該硬化材は、アルミナセメント、無機炭酸塩、並びに以下の(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の1種以上を含むことを特徴とする。
(イ)ベントナイト
(ロ)セピオライト
(ハ)アタパルジャイト
(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウム
また、該硬化材は、アルミナセメント及び無機炭酸塩と、上記(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の1種以上以外に、その他の添加剤を含んでいてもよい。
以下、本発明の硬化材が含む各成分について説明する。
本発明においてアルミナセメントとは、石灰質原料(カルシウム分)とアルミナ質原料(アルミナ分)とを混合し、この混合物を焼成するか、あるいは、該混合物を溶融~硬化させた後に粉砕することで得られるセメント鉱物全般を意味する。
このようなアルミナセメントしては、例えば、CA、CA2等のカルシウムアルミネートを主成分とし、C4AF等のカルシウムアルミノフェライト、C2AS等のカルシウムアルミノシリケート等の化合物で構成されるセメントが挙げられる。
無機炭酸塩は、アルミナセメント以外の水硬性セメントの硬化を促進する性質を有し、瞬結性を担保しつつ、主材液及び硬化材液のそれぞれの製造に要する撹拌時間を短くする成分である。無機炭酸塩は、主材液に配合すると該主材液を不安定にするが、硬化材液に配合しても該硬化材液を不安定にしない。
ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト(別名:パリゴルスカイト)、結晶性層状珪酸ナトリウムは、瞬結性を担保しつつ、硬化材液の製造に要する撹拌時間を短くする成分である。これらは、一種のみが含まれていてもよく、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
本発明の硬化材は、アルミナセメント、無機炭酸塩及び前記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)以外に、減水剤、消泡剤、増粘剤などの各種の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の硬化材は、一般に用いられる混合器により、各成分を所望の配合量で混合して製造される。用いる混合器は、工場又は施工現場に固定されているものでもよく、ミキサートラックに搭載されているものでもよい。
各成分は充分に混合されていることが好ましい。各成分が充分に混合されていることにより、均質な硬化材液を素早く製造することができる。
本発明に係る主材液は、アルミナセメント以外の水硬性セメント(以下、単に「水硬性セメント」とも称する。)、石灰及び水を含む。該主材液は、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水以外に、その他の添加剤を含んでいてもよい。
特に石膏は、初期及び最終的な固結体の強度を向上させるという観点から、主材液に含有させることが好ましい。
本発明に係る主材液が含む水硬性セメントは、アルミナセメント以外の水硬性セメントである。該水硬性セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱及び白色などのポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメント、微粒子セメント、超微粒子セメント、極超微粒子セメントや高炉水砕スラグ微粉末等が挙げられる。
水硬性セメントは、これらの一種のみが含まれていてもよく、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
石灰は、水中で水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の形をとるものであり、例えば、消石灰(Ca(OH)2)や生石灰(CaO)が挙げられる。中でも、取扱いが容易な消石灰が好ましい。
石灰のブレーン値は6000~20000cm2/gが好ましく、8000~15000cm2/gがより好ましい。石灰のブレーン値が上記下限値以上であれば、瞬結性により優れる。一方、上記上限値以下であれば、水と混合した時に凝集が起こりにくくなる。
石灰は、一種のみが含まれていてもよく、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
本発明に係る主材液において、石膏の含有は必須ではないが、固結体の初期及び最終の強度を上げるという観点から含まれる方が好ましい。
石膏のブレーン値は、3000~15000cm2/gが好ましく、6000~10000cm2/gがより好ましい。石膏のブレーン値が上記下限値以上であれば、固結体の圧縮強度がより高くなる。一方、上記上限値以下であれば、水と混合した時に凝集が起こりにくくなる。
石膏は、一種のみが含まれていてもよく、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
本発明に係る主材液が石灰と石膏とを含む場合、主材液中の石膏(G)と石灰(L)の質量比率は、石膏比率「G/(G+L)」の値で、0.1~0.85が好ましく、0.2~0.6がより好ましい。「G/(G+L)」が上記下限値以上であれば、固結体の圧縮強度がより高くなる。一方、上記上限値以下であれば、瞬結性により優れる。また、上記上限値以下であれば、主材液中の成分量に対する固結体の体積をより大きくすることができる。
水としては、例えば、上水、工業用水、地下水、河川水、海水などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を充分に発揮させるためには、上水や工業用水が好ましい。
本発明に係る主材液は、公知の撹拌器等を用いて、各成分を所望の配合量で水に分散させることにより製造される。
主材液を製造する際の、水硬性セメント、石灰及び水、必要に応じて配合される石膏を混合する順序は、特に限定されない。主材液の製造方法は、石灰、必要に応じて配合される石膏並びに任意成分である分散剤及び消泡剤などの添加剤を水に分散させた後、水硬性セメントを加え、所定時間撹拌して混合する方法が好ましい。
本発明の硬化材液は、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液を硬化させるために用いる硬化材液である。該硬化材液は、前述の本発明の硬化材及び水を含むことを特徴とする。
水としては、例えば、上水、工業用水、地下水、河川水、海水などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を充分に発揮させるためには、上水や工業用水が好ましい。
本発明の硬化材液中のアルミナセメントの含有量の下限は、該硬化材液200Lあたり、5~100kgであることが好ましく、10~60kgがより好ましく、15~40kgが特に好ましい。アルミナセメントの含有量が上記下限値以上であれば、瞬結性発現に必要な最低撹拌時間が短くなるとともに、固結体の圧縮強度がより高くなる。一方、上記上限値以下であれば、硬化材液の粘度が抑えられるため、主材液と硬化材液とがより均一に混合され、固結体の圧縮強度のバラツキがより少なくなる。また、上記上限値以下であれば、ポンプによる圧送が容易となり、硬化材液又は後述する土質安定用薬液が地盤に浸透しやすくなる。
本発明の硬化材液は、公知の撹拌器等を用いて、硬化材の各成分を水に分散させることにより製造される。分散方法としては、予め製造した硬化材を水に分散させる方法でもよく、硬化材の各成分を任意の順序で水に分散させる方法でもよい。
本発明の土質安定用薬液は、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰、アルミナセメント、無機炭酸塩、前記(イ)ベントナイト、(ロ)セピオライト、(ハ)アパタルジャイト、及び(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウムの1種以上、並びに水を含むことを特徴とする。また、該土質安定用薬液は、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰、アルミナセメント、無機炭酸塩、前記(イ)ベントナイト、(ロ)セピオライト、(ハ)アパタルジャイト、及び(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウムの1種以上、並びに水以外に、石膏、その他の添加剤を含んでいてもよい。
土質安定用薬液が含む各成分の詳細は、前述の本発明の硬化材、本発明に係る主材液、及び本発明の硬化材液における成分と同様である。
本発明の土質安定用薬液の製造方法は、公知の撹拌器等を用いて、各成分を水に分散させる方法でもよく、主材液に、硬化材又は硬化材の成分を添加する方法でもよく、硬化材液に、主材液中の水以外の成分を添加する方法でもよく、主材液と硬化材液とを混合する方法でもよい。中でも、施工現場での作業を簡略化できる点及び瞬結性をより高める点から、土質安定用薬液の製造方法は、主材液と硬化材液とを混合する方法であることが好ましい。
両液の混合は、地盤に注入する前に行ってもよく、各液を地盤に注入しながら行ってもよい。地盤に注入する前に行う場合は、セメントを製造する際に通常用いる撹拌器等を用いて、一般的な撹拌方法によって混合すればよい。各液を地盤に注入しながら混合する場合は、例えば、主材液と硬化材液とを、それぞれ単位時間当りの送液容量が等しいポンプを用いて個別にY字管、撹拌装置、注入管内に設けられた混合室(管内混合器・管路混合器)などに圧送して混合する方法、又は、主材液と硬化材液を二重管の内管と外管で別々に送液し、注入時に地盤中で主材液と硬化材液を合流させて混合する方法などが挙げられる。両液が注入中に硬化しないようにするため、土質安定用薬液は、注入直前又は注入しながら製造することが好ましく、注入しながら製造することがより好ましい。
本発明の地盤安定化工法には、上述の本発明の土質安定用薬液を地盤に注入する第一の態様と、主材液と硬化材液とを地盤内で混合する第二の態様とがある。
第一の態様の具体的な方法は、上述の本発明の土質安定用薬液の製造方法と同様にして土質安定用薬液を得、該薬液を地盤に注入する方法である。
第二の態様の具体的な方法は、主材液と硬化材液とを別々の注入管で地盤内に注入し、両液を地盤内で合流させ、混合させる方法である。本態様では、注入の際に、噴射ノズルを有する注入管を用いて、圧力50~1000kg/cm2で噴射注入してもよい。
本発明によれば、アルカリ度の高いアルミン酸ナトリウムを用いることなく、瞬結性に優れ、かつ、主材液及び硬化材液のそれぞれの製造に要する撹拌時間がより短い硬化材、硬化材液、土質安定用薬液、該薬液の製造方法、及び地盤安定化工法を提供することができる。
本発明による効果は、以下のメカニズムによるものと推定される。
以下の実施例及び比較例で用いた材料、主材液及び硬化材液の調製方法、並びに各種測定・評価方法は以下のとおりである。
(主材液)
・水硬性セメント:普通ポルトランドセメント
・石膏:II型無水石膏(ブレーン値:6500cm2/g)
・石灰:消石灰(ブレーン値:13000cm2/g)
・減水剤:ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルムアルデヒド縮合物
・水:水道水
・アルミナセメント:JIS-R2511,3種
・無機炭酸塩:ソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)
・ベントナイト(品川窯業(株)社製 商品名「九州ベントナイト 筑前特8号」)
・セピオライト(IMV Nevada社製 商品名「THERMOGEL」)
・アタパルジャイト(SKWイーストアジア(株)社製 商品名「Ashagel SF」)
・結晶性層状珪酸ナトリウム((株)トクヤマ社製 商品名「プリフィード」)
・アルミン酸アルカリ金属塩:アルミン酸ナトリウム粉末(Al2O3/Na2Oモル比1.1)
・水:水道水
20℃に調整した材料を使用し、それぞれ20℃の室内で石灰、場合により石膏、減水散剤等の混合物を水に分散させた後、普通ポルトランドセメントを分散させ、撹拌して主材液を得た。撹拌は、マグネチックスターラーを用い、200mLのディスカップに長さ4cmのスターラーバーを入れ、主材液200mLの入った状態で、回転数650~750rpmの条件で所定の時間行った。
主材液中の各成分の含有量は表1に示す通りとした。
なお、本実施例では、硬化材液を作製する直前に主材液を調製して実験を行った。
20℃に調整した材料を使用し、20℃の室内でアルミナセメント、無機炭酸塩、並びにベントナイト、セピオライト、アパタルジャイト、又は結晶性層状珪酸ナトリウムを混合した硬化材を水に分散させ、撹拌して硬化材液を得た。撹拌は、マグネチックスターラーを用い、200mLのディスカップに長さ4cmのスターラーバーを入れ、硬化材液200mLの入った状態で、回転数650~750rpmの条件で所定の時間行った。
硬化材液中の各成分の含有量は表1に示す通りとした。
まず、得られた主材液50mLと硬化材液50mLとをそれぞれ200mLディスカップA,Bに入れ、硬化材液の入ったディスカップBに主材液の全量を勢いよく入れた後、両液の混合液を直ちに主材液が入っていたディスカップAに移しかえ、さらに硬化材液が入っていたディスカップBに移しかえた。最初に主材液と硬化材液を混合してからここまで3秒程度であった。次いで、ディスカップBを水平にして10秒間静置した後、ディスカップBを45度傾けて、混合液の液面が動くか否かを確認した。
混合液の液面が動かないことが確認された場合、その場合の各液の
撹拌時間を、瞬結性発現に必要な最低撹拌時間(以下、「最低撹拌時間」という。)とし、やり直すのを止めた。
硬化材液にアルミン酸ナトリウムよりもアルカリ度が低い材料を使用している場合に安全性が高いとの判断で「○」とし、アルミン酸ナトリウムを用いた場合を安全性が低いと判断し「×」と記載した。
実施例1~7及び比較例1~3では、それぞれ表1に示された成分、該成分の含有量で、上記の通り調製した主材液と硬化材液を用いて、20℃における最低撹拌時間を測定した。
測定結果を表1に示す。
これに対し、硬化材液がベントナイト、セピオライト、アパタルジャイト、結晶性層状珪酸ナトリウムを含まない比較例1では、最低撹拌時間は11分間であり、実施例1~7に比べて長かった。
また、硬化材液が炭酸ナトリウムを含まない比較例2では、30分間撹拌しても、瞬結性を有する土質安定化薬液は得られなかった。
アルミン酸ナトリウムを添加した比較例3では、最低撹拌時間は2分間となったが、水溶液のアルカリ度が高いことから、硬化材液の安全性の面で問題がある。
Claims (5)
- アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液を硬化させるために用いる硬化材であり、アルミナセメント、無機炭酸塩、並びに以下の(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の1種以上を含むことを特徴とする、硬化材。
(イ)ベントナイト
(ロ)セピオライト
(ハ)アタパルジャイト
(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウム - アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液を硬化させるために用いる硬化材液であって、請求項1に記載の硬化材及び水を含むことを特徴とする、硬化材液。
- アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液と、アルミナセメント、無機炭酸塩、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)の1種以上、並びに水を含む硬化材液とを含む、土質安定用薬液。
(イ)ベントナイト
(ロ)セピオライト
(ハ)アタパルジャイト
(ニ)結晶性層状珪酸ナトリウム - 前記主材液と、前記硬化材液とを混合することを特徴とする、請求項3に記載の土質安定用薬液の製造方法。
- 請求項3に記載の土質安定用薬液を地盤に注入すること、或いは、アルミナセメント以外の水硬性セメント、石灰及び水を含む主材液と請求項2に記載の硬化材液とを地盤内で混合することを特徴とする、地盤安定化工法。
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