JP2004035699A - 注入材及びこれを用いた注入施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スラリー状注入材としての瞬結性は要さずとも、可使時間を比較的短い時間ではあってもある程度は確保したい場合からより長い時間確保したい場合まで自在に調整することができ、可使時間を長くしても硬化不良を起こさず、良好な硬化性を示すセメント系の注入材を提供する。また、このような注入材を用いた作業制約が少ない簡易な注入施工方法を提供する。
【解決手段】アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント類以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合してなる注入材。また、アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合したものを地盤に注入することを特徴とする注入施工方法。
【選択図】 なし
【解決手段】アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント類以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合してなる注入材。また、アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合したものを地盤に注入することを特徴とする注入施工方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に軟弱地盤等の地盤改良に用いられるセメント系の注入材及びこのような注入材を用いた軟弱地盤等への注入施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
軟弱地盤等をより硬強な地盤や安定した岩盤に改良するための方策として、セメント等の水硬性物質を主成分とする粉体に水を加えたスラリー状の注入材を、軟弱地盤を形成する土壌粒子の間隙や岩盤の亀裂に圧入する工法が広く行なわれている。一般に、この種の注入材は、対象地盤等に注入したスラリーの当該対象領域からの沈下流冒を防ぎ、できるだけ対象領域内でのみ硬化させる必要から、瞬時に硬化させるための凝結促進物質が副成分として含まれる。しかるに、水硬性物質と瞬結性を付与する凝結促進物質を混合させると、注入時の形態である水性スラリーの状態での安定維持は困難であり、施工現場での使用直前の調混合等の作業負荷を抑えるため、セメント等の水硬性物質を主材とし、凝結促進物質を含まない水性スラリーと、凝結促進物質を主材とし、セメント等の水硬性物質を含まない水性スラリーを予め別個に作製し、注入施工時に両者を混合させて地盤等への注入に供すことが多い。このような例として、特開平7−188658号ではアルミナセメントを凝結促進物質に用いたスラリーと、ポルトランドセメントよりなる主材スラリーを別個に作製し、両スラリーを混合させた際に1分以内で瞬結性が発現されることが開示されている。
【0003】
一方で、施工現場の環境によっては両スラリーの混合直後には注入施工ができない場合、また注入距離が長い場合や大量の場合は混合作業に時間がかかる場合もある。これらのケースでは、必ずしも瞬結性を必要とせず、施工作業実体に応じて、ある程度の時間安定した性状の注入スラリーとしての使用可能時間(以下、可使時間と称す)を確保できるようにした注入材が要求される。特公昭57−10058号では、急硬促進成分に活性の高いカルシウムアルミネート系急結剤を用い、これに凝結遅延剤を加えた水性スラリーを作製し、別に作製したセメント等を主材とする水性スラリーと混合することによって、スラリー状注入材がゲル状態になるまでの時間(以下、ゲル化時間と称す)を調整している。可使時間を長く確保するにはこのゲル化時間を長くすればよく、このためには凝結遅延剤を配合増量すればよいが、凝結遅延剤の配合割合が高まると硬化性が著しく低下し易い。また、比較的短い可使時間を必要とする場合、凝結遅延剤の配合量を低減させると効果があるものの、急硬促進成分側のスラリー自体が凝結硬化し易くなるため、施工作業上支障が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スラリー状注入材としての瞬結性は要さずとも、可使時間を比較的短い時間ではあってもある程度は確保したい場合からより長い時間確保したい場合まで自在に調整することができ、可使時間を長くした場合でも硬化不良を起こさず、良好な硬化性を示すセメント系の注入材の提供を課題とする。また、このような注入材を用いた作業制約が少ない簡易な注入施工方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは検討を重ねた結果、スラリー状注入材の急激な硬化を抑える上で、注入材を構成する凝結促進物質に比較的穏やかな活性の凝結促進物質を用い、更に凝結硬化を調整し易くするための特定の成分を加えることによって、ゲル化時間を比較的短時間から長時間の範囲で概ね自在に調整でき、必要な可使時間を付与できると共に、注入後の硬化性も注入材として全く支障がなかったことから本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち本発明は、次の(イ)〜(ロ)で表される注入材及び(ハ)で表される注入施工方法である。(イ)アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合してなる注入材。(ロ)水性スラリーAにおいて、アルミナセメント、石膏及び炭酸ナトリウムの合計含有量100重量部に対し、水溶性リチウム塩含有量が1〜4重量部、凝結遅延剤含有量が0.1〜0.8重量部である前記(イ)の注入材。(ハ)アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合したものを地盤に注入することを特徴とする注入施工方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の注入材は、次の水性スラリーAと水性スラリーBを混合したものからなる。水性スラリーAは、アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を必須含有する水性スラリーであり、アルミナセメントと石膏以外の水硬性物質は含有しないものとする以外は、他の成分物質の含有は特に制限されるものではない。また、水性スラリーBは、アルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーであり、凝結促進剤や急結剤の類は含有しないものとする以外は、他の成分物質の含有は特に制限されるものではない。
【0008】
水性スラリーAに使用するアルミナセメントは、特に限定されず、市販品などが使用できる。好ましくは、凝結促進成分として適応できる活性度を確保する観点からブレーン比表面積3000m2/g以上のものとする。水性スラリーA中のアルミナセメントの量は水性スラリーBに含まれるセメント100重量部に対し、7〜15重量部とする。7重量部未満では凝結促進作用が乏しくなるため好ましくなく、15重量部を超えると注入材の初期強度発現性が低下することがあるので好ましくない。
【0009】
水性スラリーAに使用する石膏類とは、二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸カルシウム系固溶体の何れか1種または2種以上の混合物をいう。石膏類はエトリンガイト生成による初期強度発現性増進作用を付与するために配合使用するが、反応性が高いことから石膏類の中でも無水石膏の使用が特に望ましい。その使用量はアルミナセメント100重量部に対し、50〜120重量部とする。50重量部未満では初期強度発現性が低下することがあるので好ましくなく、120重量部を超えるとスラリーAとBの混合初期で粘性増加をまねいて作業性が低下し易く、また凝結が遅延し過ぎることがあるため好ましくない。
【0010】
水性スラリーAに使用する炭酸ナトリウムは、アルミナセメントの凝結促進化を抑制し、水性スラリーAのスラリー状態での経時的安定性を増進させる作用を有し、市販品などが使用できる。その使用量はアルミナセメント100重量部に対し、5〜12重量部とする。5重量部未満では水性スラリーA自体の凝結硬化が短時間に進むことがあるので好ましくなく、12重量部を超えると凝結が遅延し過ぎることがあるため好ましくない。
【0011】
水性スラリーAに使用する水溶性リチウム塩は、常温で水に概ね溶解できる塩であれば特に限定されないが、扱い易さの点から塩化リチウム、硝酸リチウムまたは炭酸リチウムが推奨される。水溶性リチウム塩は、注入後速やかに硬化を行なわせるために使用され、特に硬化初期におけるアルミナセメントでは不足しがちな凝結促進作用を補い、またゲル化時間を長くする作用がある成分が使用された場合に生じ易い硬化遅れを抑制することができる。その使用量は水性スラリーAに使用する粉体成分(水溶性リチウム塩を除く)の合計量100重量部に対し、1〜4重量部とする。1重量部未満では配合効果が殆ど発現されないため好ましくなく、4重量部を超えるとゲル化時間が著しく短時間になり易いため好ましくない。
【0012】
水性スラリーAに使用する凝結遅延剤は、一般にモルタル・コンクリートで使用できることが知られているものであるなら特に限定されず、例えばオキシカルボン酸、アミノカルボン酸、燐酸、硼酸、またはその塩を挙げることができる。凝結遅延剤の使用量は、水性スラリーAに使用する粉体成分(水溶性リチウム塩を除く)の合計量100重量部に対し、0.1〜0.8重量部とする。0.1重量部未満では配合効果が乏しいため好ましくない。該範囲内で配合使用量を高めるに連れ、注入材のゲル化時間をより長く調整することができるが、0.8重量部を超えると凝結遅延効果が急激に増進し、硬化不良を起こすことがあるので好ましくない。
【0013】
水性スラリーAの含水率は概ね70〜90%とする。70%未満では水性スラリーBの水/セメント比を相対的に高くする必要があるので好ましくなく、90%を超えると注入材中の凝結促進成分の存在量がかなり低いものとなるため、注入材スラリーの硬化不良を起こすなど硬化性状に支障を来すことがあるため好ましくない。
【0014】
水性スラリーBに使用するセメントはアルミナセメント類以外のセメントであれば特に限定されない。ここで、アルミナセメント類とは、市販のアルミナセメントの他、カルシウムアルミネート含有率が概ね10重量%を超える無機物質をいう。
【0015】
水性スラリーBの含水率は概ね40〜60%とする。40%未満では水性スラリーAの含水率を高くしないと注入浸透性に支障が生じ、水性スラリーAの含水率を高くすれば硬化不良を起こす可能性が高まるので好ましくなく、また60%を超えると材料分離が起り易くなり、ゲル化後の強度発現性が低下するため好ましくない。
【0016】
本発明の注入材の注入施工方法は、予め別個に作製した前記水性スラリーAと前記水性スラリーBを、施工現場で混合し、これを対象とする地盤等に注入する。この場合、ミキサー等を用いて混合練り置きしたものを注入しても良いし、多重管やY字管等を用いてスラリーAとBの圧送途中若しくは注入口で両者が交流するようにし、交流した混合スラリーを注入しても良い。尚、混合練り置きする場合は、本発明の注入材は混合後最大2時間程度まで注入使用可能なものを作製することができるのでその時間内で注入を完了させる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
[使用材料]次の(1)〜(7)で示した材料から選定した。
(1)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
(2)アルミナセメント(ブレーン比表面積:3200m2/g;太平洋マテリアル(株)製)
(3)無水石膏(セントラル硝子(株)製)
(4)炭酸ナトリウム(市販試薬、純度>99%)
(5)塩化リチウム(市販試薬、純度>98.5%)
(6)凝結遅延剤:クエン酸(市販試薬、純度>99.4%)
(7)カルシウムアルミネート系急結剤(CaOとAl2O3のモル比約12:7の配合成分を65重量%含有するガラス化率約96%の粉末。CAと略記する)
【0018】
[水性スラリーAの作製]
前記(2)〜(7)の材料を表1に示した配合となるようグラウトミキサーに一括投入し、これに表1に記した量の水を加え、19℃で混練を約1分間行ない、水性スラリーAを作製した。
【0019】
【表1】
【0020】
[水性スラリーBの作製]
前記(1)の材料と水を表1に示した配合となるよう混合容器に投入し、19℃でハンドミキサーを使用して混練を約1分間行ない、水性スラリーBを作製した。
【0021】
[注入材の作製]
前記水性スラリーBを水性スラリーAが入ったグラウトミキサーに加え、19℃で混練を約2分間行ない、注入材を作製した。
【0022】
[注入材の性状評価]
作製した注入材は、倒立法によって19℃でゲル化時間を測定した。また、内寸直径50×高さ100mmの円柱状型枠に該注入材を充填して供試体を作製し、該供試体をJIS A 1216に準じた方法によって材齢24時間の一軸圧縮強度を測定し、硬化性状を評価した。以上の測定結果を表2に記す。
【0023】
【表2】
【0024】
表2より、本発明の注入材は、施工状況に応じてゲル化時間を20分程度の比較的短時間か2時間程度の長期まで調整することができ、ゲル化時間を長くしても硬化開始後は十分な初期強度発現性を示し、硬化性良好な注入材であることがわかる。また、カルシウムアルミネート系急結剤を使用したスラリーAを用いた注入材はスラリーBと混合時に瞬時に粘性が急増したため一軸圧縮強度の測定対象とはしなかった。
【0025】
【発明の効果】
本発明による注入材は、流動性等のスラリー性状が安定な可使時間を比較的短時間〜長時間の間で自在に調整できるため、施工作業上の制約が大幅に軽減され、可使時間を長くしても注入材として要求される硬化性状に支障を及ぼすこともない。また、本発明による注入材は施工現場等で水を加えるだけでも使用できるようなプレミックスタイプの注入材としても適する。更に、このような注入材を用いた本発明の注入施工方法によれば、施工時の作業性に優れ、比較的簡便に注入施工が行える。
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に軟弱地盤等の地盤改良に用いられるセメント系の注入材及びこのような注入材を用いた軟弱地盤等への注入施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
軟弱地盤等をより硬強な地盤や安定した岩盤に改良するための方策として、セメント等の水硬性物質を主成分とする粉体に水を加えたスラリー状の注入材を、軟弱地盤を形成する土壌粒子の間隙や岩盤の亀裂に圧入する工法が広く行なわれている。一般に、この種の注入材は、対象地盤等に注入したスラリーの当該対象領域からの沈下流冒を防ぎ、できるだけ対象領域内でのみ硬化させる必要から、瞬時に硬化させるための凝結促進物質が副成分として含まれる。しかるに、水硬性物質と瞬結性を付与する凝結促進物質を混合させると、注入時の形態である水性スラリーの状態での安定維持は困難であり、施工現場での使用直前の調混合等の作業負荷を抑えるため、セメント等の水硬性物質を主材とし、凝結促進物質を含まない水性スラリーと、凝結促進物質を主材とし、セメント等の水硬性物質を含まない水性スラリーを予め別個に作製し、注入施工時に両者を混合させて地盤等への注入に供すことが多い。このような例として、特開平7−188658号ではアルミナセメントを凝結促進物質に用いたスラリーと、ポルトランドセメントよりなる主材スラリーを別個に作製し、両スラリーを混合させた際に1分以内で瞬結性が発現されることが開示されている。
【0003】
一方で、施工現場の環境によっては両スラリーの混合直後には注入施工ができない場合、また注入距離が長い場合や大量の場合は混合作業に時間がかかる場合もある。これらのケースでは、必ずしも瞬結性を必要とせず、施工作業実体に応じて、ある程度の時間安定した性状の注入スラリーとしての使用可能時間(以下、可使時間と称す)を確保できるようにした注入材が要求される。特公昭57−10058号では、急硬促進成分に活性の高いカルシウムアルミネート系急結剤を用い、これに凝結遅延剤を加えた水性スラリーを作製し、別に作製したセメント等を主材とする水性スラリーと混合することによって、スラリー状注入材がゲル状態になるまでの時間(以下、ゲル化時間と称す)を調整している。可使時間を長く確保するにはこのゲル化時間を長くすればよく、このためには凝結遅延剤を配合増量すればよいが、凝結遅延剤の配合割合が高まると硬化性が著しく低下し易い。また、比較的短い可使時間を必要とする場合、凝結遅延剤の配合量を低減させると効果があるものの、急硬促進成分側のスラリー自体が凝結硬化し易くなるため、施工作業上支障が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スラリー状注入材としての瞬結性は要さずとも、可使時間を比較的短い時間ではあってもある程度は確保したい場合からより長い時間確保したい場合まで自在に調整することができ、可使時間を長くした場合でも硬化不良を起こさず、良好な硬化性を示すセメント系の注入材の提供を課題とする。また、このような注入材を用いた作業制約が少ない簡易な注入施工方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは検討を重ねた結果、スラリー状注入材の急激な硬化を抑える上で、注入材を構成する凝結促進物質に比較的穏やかな活性の凝結促進物質を用い、更に凝結硬化を調整し易くするための特定の成分を加えることによって、ゲル化時間を比較的短時間から長時間の範囲で概ね自在に調整でき、必要な可使時間を付与できると共に、注入後の硬化性も注入材として全く支障がなかったことから本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち本発明は、次の(イ)〜(ロ)で表される注入材及び(ハ)で表される注入施工方法である。(イ)アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合してなる注入材。(ロ)水性スラリーAにおいて、アルミナセメント、石膏及び炭酸ナトリウムの合計含有量100重量部に対し、水溶性リチウム塩含有量が1〜4重量部、凝結遅延剤含有量が0.1〜0.8重量部である前記(イ)の注入材。(ハ)アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合したものを地盤に注入することを特徴とする注入施工方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の注入材は、次の水性スラリーAと水性スラリーBを混合したものからなる。水性スラリーAは、アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を必須含有する水性スラリーであり、アルミナセメントと石膏以外の水硬性物質は含有しないものとする以外は、他の成分物質の含有は特に制限されるものではない。また、水性スラリーBは、アルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーであり、凝結促進剤や急結剤の類は含有しないものとする以外は、他の成分物質の含有は特に制限されるものではない。
【0008】
水性スラリーAに使用するアルミナセメントは、特に限定されず、市販品などが使用できる。好ましくは、凝結促進成分として適応できる活性度を確保する観点からブレーン比表面積3000m2/g以上のものとする。水性スラリーA中のアルミナセメントの量は水性スラリーBに含まれるセメント100重量部に対し、7〜15重量部とする。7重量部未満では凝結促進作用が乏しくなるため好ましくなく、15重量部を超えると注入材の初期強度発現性が低下することがあるので好ましくない。
【0009】
水性スラリーAに使用する石膏類とは、二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸カルシウム系固溶体の何れか1種または2種以上の混合物をいう。石膏類はエトリンガイト生成による初期強度発現性増進作用を付与するために配合使用するが、反応性が高いことから石膏類の中でも無水石膏の使用が特に望ましい。その使用量はアルミナセメント100重量部に対し、50〜120重量部とする。50重量部未満では初期強度発現性が低下することがあるので好ましくなく、120重量部を超えるとスラリーAとBの混合初期で粘性増加をまねいて作業性が低下し易く、また凝結が遅延し過ぎることがあるため好ましくない。
【0010】
水性スラリーAに使用する炭酸ナトリウムは、アルミナセメントの凝結促進化を抑制し、水性スラリーAのスラリー状態での経時的安定性を増進させる作用を有し、市販品などが使用できる。その使用量はアルミナセメント100重量部に対し、5〜12重量部とする。5重量部未満では水性スラリーA自体の凝結硬化が短時間に進むことがあるので好ましくなく、12重量部を超えると凝結が遅延し過ぎることがあるため好ましくない。
【0011】
水性スラリーAに使用する水溶性リチウム塩は、常温で水に概ね溶解できる塩であれば特に限定されないが、扱い易さの点から塩化リチウム、硝酸リチウムまたは炭酸リチウムが推奨される。水溶性リチウム塩は、注入後速やかに硬化を行なわせるために使用され、特に硬化初期におけるアルミナセメントでは不足しがちな凝結促進作用を補い、またゲル化時間を長くする作用がある成分が使用された場合に生じ易い硬化遅れを抑制することができる。その使用量は水性スラリーAに使用する粉体成分(水溶性リチウム塩を除く)の合計量100重量部に対し、1〜4重量部とする。1重量部未満では配合効果が殆ど発現されないため好ましくなく、4重量部を超えるとゲル化時間が著しく短時間になり易いため好ましくない。
【0012】
水性スラリーAに使用する凝結遅延剤は、一般にモルタル・コンクリートで使用できることが知られているものであるなら特に限定されず、例えばオキシカルボン酸、アミノカルボン酸、燐酸、硼酸、またはその塩を挙げることができる。凝結遅延剤の使用量は、水性スラリーAに使用する粉体成分(水溶性リチウム塩を除く)の合計量100重量部に対し、0.1〜0.8重量部とする。0.1重量部未満では配合効果が乏しいため好ましくない。該範囲内で配合使用量を高めるに連れ、注入材のゲル化時間をより長く調整することができるが、0.8重量部を超えると凝結遅延効果が急激に増進し、硬化不良を起こすことがあるので好ましくない。
【0013】
水性スラリーAの含水率は概ね70〜90%とする。70%未満では水性スラリーBの水/セメント比を相対的に高くする必要があるので好ましくなく、90%を超えると注入材中の凝結促進成分の存在量がかなり低いものとなるため、注入材スラリーの硬化不良を起こすなど硬化性状に支障を来すことがあるため好ましくない。
【0014】
水性スラリーBに使用するセメントはアルミナセメント類以外のセメントであれば特に限定されない。ここで、アルミナセメント類とは、市販のアルミナセメントの他、カルシウムアルミネート含有率が概ね10重量%を超える無機物質をいう。
【0015】
水性スラリーBの含水率は概ね40〜60%とする。40%未満では水性スラリーAの含水率を高くしないと注入浸透性に支障が生じ、水性スラリーAの含水率を高くすれば硬化不良を起こす可能性が高まるので好ましくなく、また60%を超えると材料分離が起り易くなり、ゲル化後の強度発現性が低下するため好ましくない。
【0016】
本発明の注入材の注入施工方法は、予め別個に作製した前記水性スラリーAと前記水性スラリーBを、施工現場で混合し、これを対象とする地盤等に注入する。この場合、ミキサー等を用いて混合練り置きしたものを注入しても良いし、多重管やY字管等を用いてスラリーAとBの圧送途中若しくは注入口で両者が交流するようにし、交流した混合スラリーを注入しても良い。尚、混合練り置きする場合は、本発明の注入材は混合後最大2時間程度まで注入使用可能なものを作製することができるのでその時間内で注入を完了させる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
[使用材料]次の(1)〜(7)で示した材料から選定した。
(1)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
(2)アルミナセメント(ブレーン比表面積:3200m2/g;太平洋マテリアル(株)製)
(3)無水石膏(セントラル硝子(株)製)
(4)炭酸ナトリウム(市販試薬、純度>99%)
(5)塩化リチウム(市販試薬、純度>98.5%)
(6)凝結遅延剤:クエン酸(市販試薬、純度>99.4%)
(7)カルシウムアルミネート系急結剤(CaOとAl2O3のモル比約12:7の配合成分を65重量%含有するガラス化率約96%の粉末。CAと略記する)
【0018】
[水性スラリーAの作製]
前記(2)〜(7)の材料を表1に示した配合となるようグラウトミキサーに一括投入し、これに表1に記した量の水を加え、19℃で混練を約1分間行ない、水性スラリーAを作製した。
【0019】
【表1】
【0020】
[水性スラリーBの作製]
前記(1)の材料と水を表1に示した配合となるよう混合容器に投入し、19℃でハンドミキサーを使用して混練を約1分間行ない、水性スラリーBを作製した。
【0021】
[注入材の作製]
前記水性スラリーBを水性スラリーAが入ったグラウトミキサーに加え、19℃で混練を約2分間行ない、注入材を作製した。
【0022】
[注入材の性状評価]
作製した注入材は、倒立法によって19℃でゲル化時間を測定した。また、内寸直径50×高さ100mmの円柱状型枠に該注入材を充填して供試体を作製し、該供試体をJIS A 1216に準じた方法によって材齢24時間の一軸圧縮強度を測定し、硬化性状を評価した。以上の測定結果を表2に記す。
【0023】
【表2】
【0024】
表2より、本発明の注入材は、施工状況に応じてゲル化時間を20分程度の比較的短時間か2時間程度の長期まで調整することができ、ゲル化時間を長くしても硬化開始後は十分な初期強度発現性を示し、硬化性良好な注入材であることがわかる。また、カルシウムアルミネート系急結剤を使用したスラリーAを用いた注入材はスラリーBと混合時に瞬時に粘性が急増したため一軸圧縮強度の測定対象とはしなかった。
【0025】
【発明の効果】
本発明による注入材は、流動性等のスラリー性状が安定な可使時間を比較的短時間〜長時間の間で自在に調整できるため、施工作業上の制約が大幅に軽減され、可使時間を長くしても注入材として要求される硬化性状に支障を及ぼすこともない。また、本発明による注入材は施工現場等で水を加えるだけでも使用できるようなプレミックスタイプの注入材としても適する。更に、このような注入材を用いた本発明の注入施工方法によれば、施工時の作業性に優れ、比較的簡便に注入施工が行える。
Claims (3)
- アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント類以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合してなる注入材。
- 水性スラリーAにおいて、アルミナセメント、石膏及び炭酸ナトリウムの合計含有量100重量部に対し、水溶性リチウム塩含有量が1〜4重量部、凝結遅延剤含有量が0.1〜0.8重量部である請求項1記載の注入材。
- アルミナセメント、石膏類、炭酸ナトリウム、水溶性リチウム塩及び凝結遅延剤を含有してなる水性スラリーAとアルミナセメント以外のセメントを主成分とする水性スラリーBを混合したものを地盤に注入することを特徴とする注入施工方法。
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- 2002-07-02 JP JP2002193948A patent/JP2004035699A/ja active Pending
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