JP3506765B2 - 土質安定用薬液およびそれを用いた地盤安定化工法 - Google Patents

土質安定用薬液およびそれを用いた地盤安定化工法

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JP3506765B2 JP10918394A JP10918394A JP3506765B2 JP 3506765 B2 JP3506765 B2 JP 3506765B2 JP 10918394 A JP10918394 A JP 10918394A JP 10918394 A JP10918394 A JP 10918394A JP 3506765 B2 JP3506765 B2 JP 3506765B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、土質安定用薬液および
それを用いた地盤安定化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミナセメントを除く水硬性セメント
と水との混練物を主材液 (以下A液という) とし、アル
ミナセメントと水との混練物を硬化材液 (以下B液とい
う) として、これらを組み合わせて地盤内に注入すると
A液とB液との混合液 (以下 A-B混合液ともいう) は数
分〜数十分で硬化することが知られている。
【0003】特開昭50-16717号公報には、可溶性アルミ
と無機硫酸塩との混合物を、セメント急硬剤としてセメ
ントと混合する急硬性セメントの施工方法が開示され、
そして、可溶性アルミとしては、結晶質および(また
は)無定形質のカルシウムアルミネートとこれにハロゲ
ン元素が固溶したカルシウムハロアルミネートであり、
特に好ましい鉱物は12CaO・7Al2O3 またはこれにハロ
ゲン元素が固溶した無定形物であることが、また、無機
硫酸塩としては、無水,半水,二水のセッコウなどが使
用でき、好ましくは無水セッコウであることが、記載さ
れている。また、アルミナセメントとセッコウの混合物
を添加したセメントが、急硬性セメントとして既に知ら
れていることが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記特開昭50-16717号
公報にも記載されているように、一般に急硬性セメント
は、短時間内に強度を発現する性質を有している反面、
凝結時間が短いので取り扱い中に凝結硬化してしまい施
工に支障をきたすという問題点がある。一般に、その凝
結硬化を遅らせる対策として、急硬性セメントにグルコ
ン酸、クエン酸等の有機カルボン酸やその塩などの凝結
遅延剤を添加することが実施工の場面では必要不可欠で
ある。ところが、凝結遅延剤を添加した場合でも、その
効果は添加した凝結遅延剤の種類や量により変化し、更
に温度や混練時間などの実施工における種々の付帯条件
の影響を受ける。
【0005】前記のA液に対して、水硬性セメントに対
するセメント急硬剤としてのアルミナセメントとセッコ
ウとの混合物または前記特開昭50-16717号公報に開示さ
れた可溶性アルミと無機硫酸塩との混合物と、水との混
練物を硬化材液 (B液) として、これらを組み合わせて
地盤内に注入する地盤安定化工法においても、前記した
と同様の問題点がある。
【0006】すなわち、可溶性アルミとして前記特開昭
50-16717号公報に開示された、結晶質または無定形質の
カルシウムアルミネートまたはこれにハロゲン元素が固
溶したカルシウムハロアルミネートである、12CaO・7
Al2O3 ,3CaO・Al2O3 または11CaO・7Al2O3 ・CaF
2 を硬化材としてB液を調製した場合には、B液それ自
身が長くとも30分以内には凝結硬化してしまうので、実
施工の場面では地盤内への注入作業中に、調液槽内やB
液を圧送するための配管やポンプ内で硬化物が生成し、
作業を継続することができなくなる恐れがある。
【0007】B液の凝結硬化を遅らせて施工上必要なB
液の安定性を確保するには、B液を調製する際に、グル
コン酸、クエン酸などの有機カルボン酸やその塩などの
凝結遅延剤を添加することが必要であり、また凝結遅延
剤を添加しても、その効果は添加した凝結遅延剤の種類
や量により変化し、更に温度や混練時間などの実施工に
おける種々の付帯条件の影響を受け、施工中、地盤内へ
の注入前に不測の凝結硬化が起こってB液を圧送でき
ず、施工できなくなるという問題点がある。また、B液
の硬化を遅延させるための凝結遅延剤は、セメント急硬
材を水と混練してB液を調製する前に、あらかじめB液
用の混練水に溶解させておくことを要し、施工現場での
作業を煩雑なものにするという問題点もある。
【0008】なお、硬化材としてのカルシウムアルミネ
ートとしてCaO・Al2O3 を用いたB液は、調製する際の
水と硬化材との量比によっては3時間以上硬化せず、ま
たアルミナセメントを硬化材として用いたB液の硬化時
間は7時間程度であり、いずれも施工上充分なB液の安
定性を確保することはできるが、A液とB液とを混合し
て形成された硬化体の圧縮強度が低いといった問題点が
あった。このように従来知られている方法では、凝結遅
延剤を添加してもB液の安定性が悪かったり、あるいは
B液の安定性が確保できても形成される硬化体の圧縮強
度の発現が低く地盤安定化工法として実用上難点があり
改善が望まれていた。
【0009】更に、地下水が流動しているような地盤内
や、護岸堤防と地盤との空隙部などへ薬液を注入し硬化
させて地盤の安定化を図るときのように、注入した薬液
が流水に接触する可能性のある場合には、使用する薬液
としてのA液とB液とに求められる性能は、地盤内への
注入前の段階では、A液およびB液それぞれの安定性
が、一方、A液とB液とを混合して A-B混合液として地
盤内に注入した後には、瞬結性と早強性とが要求され
る。
【0010】ところが、前記の主材液と硬化材液とを組
み合わせる、従来知られている薬液においては、 A-B混
合液の硬化時間は1分以内とならず、瞬結性は得られな
い。そのため、このような薬液を流水に接触するような
地盤内に注入しても、薬液が硬化する前に水によって流
されてしまい、地盤の安定化を充分に行えない。このよ
うに、従来知られている薬液およびこれを用いた地盤安
定化工法は、瞬結性を要求される場面には適用できず、
改善が望まれていた。
【0011】本発明の目的は、従来知られている土質安
定用薬液とそれを用いた地盤安定化工法における問題点
を改善し、アルミナセメントを除く水硬性セメントと水
との混練物である主材液 (A液) と、アルミナセメント
と水との混練物である硬化材液 (B液) とを別々に調製
しておいて、施工時に両液を混合して地盤に注入する土
質安定用薬液および地盤安定化工法において、凝結遅延
剤を添加することなくA液およびB液それぞれ単独での
安定性を確保して、薬液の地盤注入前に凝結硬化を起こ
して施工できなくなる恐れを解消し、 A-B混合液は1分
以内に硬化する瞬結性と、また、形成される硬化体の圧
縮強度の発現が良好である早強性とを併せもつ、土質安
定用薬液および地盤安定化工法を提供することである。
【0012】本発明の土質安定用薬液において、その性
能としての、A液およびB液の安定性、 A-B混合液の硬
化時間に関する瞬結性、ならびに形成された硬化体の圧
縮強度に関する早強性は、それぞれ次の規定を満たすこ
とを目的とする。この規定において、A液の標準配合
は、A液 200Lあたり、普通ポルトランドセメント 120
kgを含むものとする。 a) A液およびB液の安定性… A液あるいはB液を調
製後、それぞれが単独で放置されたときに3時間未満で
硬化しないこと (A液およびB液のそれぞれ単独での硬
化時間が、調製後3時間以上であること) 。 b) A-B混合液の瞬結性… 液温20℃において、A液と
B液とを混合後、1分以内に硬化すること。 c) 硬化体の早強性… A液とB液とを混合して形成さ
れた硬化体の材令1日の一軸圧縮強度値が、硬化体の養
生温度が20℃のときに、2kg/cm2 以上であること。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記問題点
を改善し課題を解決すべく鋭意検討し、アルミナセメン
トを除く水硬性セメントと水との混練物をA液とし、ア
ルミナセメントと水との混練物をB液として、これらを
組み合わせて地盤内に注入する土質安定用薬液および地
盤安定化工法において、薬液を調製する際に、A液には
セメント膨張材を、一方、B液には無機炭酸塩を、それ
ぞれ配合することによって、得られるA液とB液は、凝
結遅延剤を添加することなく、それぞれ単独では3時間
以上硬化しない安定性が確保されて注入前に硬化物を生
成し施工できなくなる恐れを解消することができ、更
に、 A-B混合液中においては、アルミナセメントに対す
るセメント膨張材の量比、アルミナセメントを除く水硬
性セメントに対するアルミナセメントおよび無機炭酸塩
の量比が、それぞれ特定範囲の量比となるよう配合した
A液とB液とを混合して用いることによって、得られた
A-B混合液は1分以内に硬化し、かつ、形成された硬化
体の圧縮強度の発現が良好であるという、従来知られて
いる土質安定用薬液および地盤安定化工法では実現でき
なかった性能を発揮するという知見を得て、本発明を完
成した。
【0014】本発明の第一の発明は、「アルミナセメン
トを除く水硬性セメントを含んでなる主材液と、アルミ
ナセメントを含んでなる硬化材液とを組み合わせて地盤
内に注入する土質安定用薬液であって、主材液には、セ
メント膨張材を、一方、硬化材液に無機炭酸塩を、それ
ぞれ配合し、主材液と硬化材液との混合液中においてア
ルミナセメント 100重量部に対してセメント膨張材が15
重量部以上であり、アルミナセメントを除く水硬性セメ
ント 100重量部に対して、アルミナセメントが18重量部
以上であり、かつ、無機炭酸塩が2〜9重量部の範囲で
あるように混合して用いることを特徴とする土質安定用
薬液」を要旨とする。
【0015】第二の発明は、「アルミナセメントを除く
水硬性セメントを含んでなる主材液と、アルミナセメン
トを含んでなる硬化材液とを組み合わせて地盤内に注入
する地盤安定化工法において、主材液にセメント膨張材
を、一方、硬化材液に無機炭酸塩を、それぞれ配合し、
主材液と硬化材液との混合液中においてアルミナセメン
ト 100重量部に対してセメント膨張材が15重量部以上で
あり、アルミナセメントを除く水硬性セメント 100重量
部に対して、アルミナセメントが18重量部以上であり、
かつ、無機炭酸塩が2〜9重量部の範囲であるように混
合して地盤内に注入することを特徴とする地盤安定化工
法」を要旨とする。
【0016】本発明の土質安定用薬液で用いられるセメ
ント膨張材は、カルシウムサルホアルミネート系膨張材
または石灰系膨張剤の少なくとも一種であることがよ
い。
【0017】また、本発明の土質安定用薬液で用いられ
る無機炭酸塩は、水硬性セメントの硬化を促進する性質
を有する、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金
属の炭酸塩の少なくとも一種であり、より具体的には、
Li2CO3,Na2CO3,K2CO3 およびMgCO3 からなる群から選
ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0018】以下、本発明について説明する。本発明の
土質安定用薬液における主材液(A液)は、水硬性セメ
ント (アルミナセメントを除く) を水と混練したもので
ある。主材として用いることができる水硬性セメントと
しては、普通・早強・超早強・中庸熱・白色など各種の
ポルトランドセメント類、高炉セメント・シリカセメン
ト・フライアッシュセメントなどの混合セメント類など
を挙げることができ、これらのセメントは、一種ないし
二種以上を用いることができる。
【0019】A液における水硬性セメントと水との量比
は、特に制限はないが、A液 200Lあたり通常、水硬性
セメント20〜400 kg、好ましくは40〜300 kg、更に好ま
しくは60〜240 kgの範囲である。A液 200Lあたりの水
硬性セメント量が20kg未満であるときは、薬液を地盤内
に注入して硬化させたときに形成される土砂固結体の圧
縮強度が低く、地盤の安定化が不充分である。一方、A
液 200Lあたりの水硬性セメント量が 400kgを超える場
合は、形成される土砂固結体の圧縮強度は高まるが、A
液の粘度が大幅に増大してポンプによる圧送が困難とな
り、また A-B混合液の地盤内での浸透性が低下し、形成
される土砂固結体の体積が小さくなる。
【0020】本発明の土質安定用薬液におけるA液に
は、水硬性セメントと共に、セメント膨張材を併用す
る。本発明では、A液において水硬性セメントと共に、
セメント膨張材を併用することが要件の一つである。セ
メント膨張材をA液に添加することなく、B液に添加し
たときには、本発明で規定するB液の安定性が得られな
い。
【0021】本発明で用いられるセメント膨張材とは、
例えば JIS-A6202「コンクリート用膨張材」規格におい
て定義されているように、セメント及び水とともに練り
混ぜた場合、水和反応によってエトリンガイトまたは水
酸化カルシウムなどを生成し、モルタルまたはコンクリ
ートを膨張させる作用のある混和材料であって、カルシ
ウムサルホアルミネート系(以下CSA系と略す)膨張
材や石灰系膨張材が該当する。
【0022】A液に用いる水硬性セメントと共に併用す
るセメント膨張材の量は、A液とB液とを混合して得ら
れる A-B混合液中における硬化材としてのアルミナセメ
ント100重量部あたり、15重量部以上、好ましくは15〜4
0重量部の範囲とする。A-B混合液中におけるセメント膨
張材の量が、アルミナセメント 100重量部に対して15重
量部未満であるときには、本発明が目的とする A-B混合
液の瞬結性が得られない。なお、 A-B混合液中における
セメント膨張材の量が、アルミナセメント 100重量部あ
たり40重量部を超えても、それによる効果の向上はなく
不経済である。
【0023】A液を調製する際の、水硬性セメントとセ
メント膨張材の混練の順序には特に制約はない。たとえ
ば、水硬性セメントとセメント膨張材とを別々に施工現
場に搬入し、所定の量比で配合して水と混練する方法
や、水硬性セメントとセメント膨張材を所定の量比で予
め配合したものを施工現場に搬入し、これを水と混練す
る方法など、いずれでもよい。後者の方法は、施工現場
での作業を簡略化でき効率的で好ましい。
【0024】本発明の土質安定用薬液における硬化材液
(B液)は、前記の水硬性セメントに対しての硬化材を
水と混練したものである。硬化材として用いるアルミナ
セメントは、JIS-R2511「耐火物用アルミナセメント」
規格に規定されるアルミナセメント1種〜5種、もしく
はこれに相当する品質を有するアルミナセメントであ
る。これらの内、アルミナセメント3種ないし4種もし
くはこれに相当する品質を有するものを用いることが好
ましい。
【0025】アルミナセメントは、CaO・Al2O3 ,CaO
・2Al2O3 などのカルシウムアルミネートを主成分と
し、4CaO・Al2O3 ・Fe2O3 などのカルシウムアルミノ
フェライト、2CaO・SiO2 などのカルシウムシリケー
トおよび2CaO・Al2O3 ・SiO2 などのカルシウムアル
ミノシリケートなどの化合物で構成されるセメントであ
る。前記したように、アルミナセメントは、前記特開昭
50-16717号公報に開示された可溶性アルミとは異なる挙
動を示す。すなわち、結晶質または無定形質のカルシウ
ムアルミネートまたはこれにハロゲン元素が固溶したカ
ルシウムハロアルミネートである、12CaO・7Al2O3
3CaO・Al2O3 または11CaO・7Al2O3 ・CaF2 を硬化
材として水と混練して調製されたB液は、それ自身が調
製後3時間以内に凝結硬化してしまう。これに対して、
アルミナセメントを硬化材として水と混練して調製され
たB液の凝結硬化時間は7時間程度であり、施工上充分
なB液の安定性を確保することができる。
【0026】B液におけるアルミナセメントと水との量
比は、特に制限はないが、通常、B液 200Lあたりアル
ミナセメント10〜100 kg、好ましくは20〜90kg、更に好
ましくは30〜80kgの範囲である。B液 200Lあたりのア
ルミナセメント量が10kg未満であるときは、薬液を地盤
内に注入して硬化させたときに形成される土砂固結体の
圧縮強度が低く、地盤の安定化が不充分である。一方、
B液 200Lあたりのアルミナセメント量が 100kgを超え
る場合には、B液の粘度が増大してA液とB液との混合
状態が不良となり、形成される土砂固結体の圧縮強度の
バラツキが大きくなり不均一となる。
【0027】本発明の土質安定用薬液におけるB液に
は、アルミナセメントと共に、更に無機炭酸塩を併用す
る。本発明では、無機炭酸塩をB液に併用することが要
件の一つである。無機炭酸塩をA液に添加したときに
は、A液の安定性が得られず、また、 A-B混合液の硬化
時間に関して本発明で規定する瞬結性が得られない。
【0028】B液に併用する無機炭酸塩としては、水硬
性セメントに添加したときに水硬性セメントの硬化を促
進する性質を有するものを用いることができる。このよ
うなものとしては、たとえば、Li2CO3,Na2CO3,K2CO3
などのアルカリ金属の炭酸塩やアルカリ土類金属の炭酸
塩であるMgCO3 などを挙げることができ、これらは一種
ないし二種以上を用いることができる。この内、K2CO3
は形成される硬化体の圧縮強度の発現上最も好ましい。
【0029】B液に対する無機炭酸塩の添加量は、B液
と前記のA液とを混合して得られるA-B混合液中におけ
る主材としてのアルミナセメントを除く水硬性セメント
100重量部あたり、2〜9重量部の範囲となるようにす
る。A-B混合液中におけるアルミナセメントを除く水硬
性セメント 100重量部に対する無機炭酸塩の量が、2重
量部未満であるとき、または、9重量部を超えるとき
は、本発明で規定する A-B混合液の瞬結性が得られな
い。B液を調製する際に添加する無機炭酸塩は、混練水
に完全に溶解させ、不溶解分を残さないようにすること
が、本発明の効果を発揮させる上で好ましい。
【0030】本発明の土質安定用薬液は、A液とB液と
を混合して使用する。A液とB液とは、A液とB液との
混合液中のアルミナセメントを除く水硬性セメント 100
重量部あたり、アルミナセメント量が18重量部以上、好
ましくは20〜40重量部の範囲となる量比で混合して使用
する。A-B混合液中のアルミナセメントを除く水硬性セ
メント 100重量部に対して、アルミナセメント量が18重
量部未満であるときは、 A-B混合液の硬化時間に関して
本発明の目的とする瞬結性が得られない。なお、アルミ
ナセメント量を40重量部を超える量としても、それによ
る効果の向上はなく不経済である。
【0031】本発明の土質安定用薬液を用いる地盤安定
化工法においては、A液とB液とを前記の各量比の規定
を満たす比率で混合して地盤内に注入する。このような
量比の規定を満たすようにA液とB液とを混合する方法
としては、たとえば、単位容量のA液中の水硬性セメン
トの重量を 100としたときに、A液と等容量のB液中の
アルミナセメントの重量が18以上、無機炭酸塩の重量が
2〜9の範囲となるように配合して調製したB液と、こ
のB液中のアルミナセメントの重量を 100としたとき
に、A液中のセメント膨張材の重量が15以上となるよう
に配合して調製したA液とをそれぞれ、単位時間当りの
送液容量が等しいポンプを用いて個別にY字管、撹拌装
置、注入管内に設けられた混合室- 管内混合器・管路混
合器などに圧送して合流させ混合する方法が挙げられ
る。
【0032】本発明の地盤安定化工法においては、A液
とB液との混合液を、単管式・多重管式・多管式などの
各種注入管を用いて地盤内に注入し硬化させて地盤を安
定化させる。また、噴射ノズルを有する注入管を用いて
圧力50〜1000kg/cm2 で噴射注入することもできる。
【0033】本発明の土質安定用薬液には、必要に応じ
て、減水剤・消泡剤・増粘剤など、通常用いられる各種
のセメント混和剤を添加することができる。これらのセ
メント混和剤は、A液またはB液のいずれか一方もしく
は両方に添加して用いることができる。
【0034】減水剤としては、リグニンスルホン酸塩ま
たはその誘導体・オキシ有機酸塩・アルキルアリルスル
ホン酸塩・ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリ
オール複合体・高級多価アルコールスルホン酸塩・メラ
ミンホルマリン縮合物スルホン酸塩などを主成分とする
各種の減水剤・分散剤・高性能減水剤・流動化剤を挙げ
ることができる。
【0035】また、消泡剤としては、高級アルコール系
・アルキルフェノール系・ジエチレングリコール系・ジ
ブチルフタレート系・非水溶性アルコール系・トリブチ
ルホスフェート系・ポリグリコール系・シリコーン系・
酸化エチレン−酸化プロピレン共重合物系などの各種の
消泡剤を挙げることができる。
【0036】また、増粘剤としては、メチルセルロース
・エチルセルロース・ヒドロキシエチルセルロース・ヒ
ドロキシプロピルセルロース・ヒドロキシエチルメチル
セルロース・ヒドロキシブチルメチルセルロース・ヒド
ロキシエチルエチルセルロース・カルボキシメチルセル
ロースなどのセルロースエーテル系;ポリアクリルアミ
ド・ポリアクリル酸ソーダ・ポリアクリルアミド−ポリ
アクリル酸ソーダ共重合物・ポリアクリルアミド部分加
水分解物などのアクリル系ポリマー;ポリビニルアルコ
ール,ポリエチレンオキサイド,アルギン酸ソーダ,カ
ゼイン,グアガムなどの水溶性ポリマーなど各種の増粘
剤を挙げることができる。
【0037】
【実施例】次に、実施例および比較例によって、本発明
を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定
されるものではない。 実施例および比較例 ・A液: 水硬性セメントとしての普通ポルトランドセメ
ント 120kgに、表1に示す量比となるようセメント膨張
材を、また、比較のために無機塩を、それぞれ配合し、
水を加えて混練し、練り上がりの容量が200 Lとなるよ
うに水量を調整して調製した。 ・B液: アルミナセメント(JIS-R2511, 3種)を硬化
材とし、表1に示す量比となるよう各種の無機塩を、ま
た比較のために各種のセメント膨張材を、それぞれ配合
し、水を加えて混練し、練り上がりの容量が200 Lとな
るように水量を調整して調製した。 ・試験に使用した材料: 普通ポルトランドセメント…市販品 セメント膨張材(CSA系)…市販品 セメント膨張材(石灰系)…市販品 無機塩…試薬1級
【0038】上記のようにして調製したA液とB液を用
いて後記の項目の試験を行った。表1に、セメント膨張
材の種類・配合先の液種別(A液またはB液)、無機塩
の種類・配合先の液種別、ならびに A-B混合液中におけ
る、アルミナセメント量(AC)に対するセメント膨張材(C
B)の重量比(CB/AC)、アルミナセメントを除く水硬性
セメントとしてのポルトランドセメント量(PC)に対する
無機塩(S) の重量比( S/PC)、ポルトランドセメント
量に対するアルミナセメント量の重量比(AC/PC)を示
した。
【0039】
【表1】
【0040】表1に示した、実験条件として設定した A
-B混合液中における各重量比の値の組合せのいくつかと
それに対応する、A液およびB液の配合処方の例を、次
に示す。 《A液 200Lあたりの配合処方》 A- A- A- ・普通ポルトランドセメント(PC) kg, 120 120 120 ・セメント膨張材(CB) kg, 9 13.5 9 《B液 200Lあたりの配合処方》 B- B- B- ・アルミナセメント(AC) kg, 30 30 60 ・無機炭酸塩(S) kg, 6 6 6 《対応する配合処方を組み合わせたときの、A-B 混合液中における各重量比》 ・AC 100 部あたりの CB: 30 45 30 ・PC 100 部あたりの S: 5 5 5 ・PC 100 部あたりの AC: 25 25 50
【0041】試験項目、試験方法ならびに表示記号と評
価内容は、次のとおりである。 ・A液またはB液の安定性…液温度20℃で調製したA液
またはB液を、それぞれ単独でビーカー内で静置し、調
製してから硬化物が生成するまでに要した時間を測定し
た。 ○…調製後、硬化物が生成するまでに3時間以上要し
た。(A液またはB液単独では、調製後3時間以上硬化
しない。) ×…調製後、3時間未満で硬化物が生成した。
【0042】・硬化時間…液温度20℃において、調製し
たA液とB液の等容量づつをよく混合して容器内に静置
し、混合後容器を傾けても内容物が動かなくなるまでの
所要時間を測定し、硬化時間とした。 ○…硬化時間が、1分以内であった。 ×…硬化時間が、1分よりも長かった。
【0043】・硬化体の圧縮強度…温度20℃において、
調製したA液とB液の等容量の混合液を円柱型の型枠
(径5cm×高さ10cm) 内に流し込み、形成された硬化体
の材令1日の一軸圧縮強度値を測定した。 ○…一軸圧縮強度値が、2kg/cm2 以上であった。 ×…一軸圧縮強度値が、2kg/cm2 未満であった。
【0044】各試験における、A液およびB液の安定
性、 A-B混合液の硬化時間、ならびに形成された硬化体
の圧縮強度値の、それぞれについての評価の結果および
総合評価を、表2に示した。 ・総合評価 ○…A液およびB液の安定性、 A-B混合液の硬化時間お
よび形成された硬化体の圧縮強度値のいずれの評価結果
も、○であった。 ×…A液またはB液の安定性、 A-B混合液の硬化時間お
よび形成された硬化体の圧縮強度値のいずれかの評価結
果が、×であった。
【0045】
【表2】
【0046】実験No. 1〜4は、セメント膨張材ならび
に無機炭酸塩の両方あるいはいずれか一方を用いなかっ
た場合である。セメント膨張材を用いない場合は、無機
炭酸塩を用いても用いなくても、本発明が目的とする瞬
結性、早強性共に得られなかった(実験No. 1,4)。
また、セメント膨張材を用いても無機炭酸塩を用いない
場合は、硬化体の早強性が得られなかった(実験No.
2,3)。
【0047】実験No. 5〜8は、B液中でアルミナセメ
ントと共に用いた無機塩の種類の影響を示す。アルカリ
金属の酸性炭酸塩であるKHCO3 ,アルカリ金属のアルミ
ン酸塩であるNa2Al24 ,アルカリ土類金属の塩化物で
あるCaCl2 などは、いずれも、水硬性セメントに対して
硬化促進の性能を有する化合物である。しかし、B液中
でアルミナセメントと共に用いる無機塩としてアルカリ
金属の酸性炭酸塩を用いた場合には、本発明が目的とす
る瞬結性と早強性が得られず (実験No. 6) 、アルカリ
金属のアルミン酸塩を用いた場合には、本発明が目的と
するB液の安定性と早強性が得られず (実験No. 7) 、
アルカリ土類金属の塩化物を用いた場合には、本発明が
目的とするB液の安定性と瞬結性が得られなかった (実
験No. 8) 。
【0048】実験No. 9〜12は、セメント膨張材や無機
塩の配合先の液種別の影響を示す。セメント膨張材を、
本発明が規定する液種別とは逆の、B液に配合した場合
には、本発明が目的とするB液の安定性が得られなかっ
た(実験No. 10)。無機塩を、本発明が規定する液種別
とは逆の、A液に配合した場合には、本発明が目的とす
るA液の安定性と瞬結性が得られなかった(実験No. 1
1)。セメント膨張材と無機塩の両者を本発明が規定す
る液種別とは逆に配合した場合には、本発明が目的とす
るA液およびB液の安定性や瞬結性が得られなかった
(実験No. 12)。
【0049】実験No. 13〜17は、 A-B混合液中におけ
る、アルミナセメント量(AC)に対する、セメント膨張材
(CB)の重量比(CB/AC)の影響を示す。この量比が本発
明で規定する要件を満たさない、アルミナセメント 100
重量部あたりのセメント膨張材が15重量部未満であると
きには、本発明が目的とする瞬結性が得られなかった
(実験No. 13)。
【0050】実験No. 18〜21は、 A-B混合液中におけ
る、アルミナセメントを除く水硬性セメントとしてのポ
ルトランドセメント量(PC)に対する、無機炭酸塩の量
(S) の重量比( S/PC)の影響を示す。この量比が、本
発明で規定する要件を満たさない、アルミナセメントを
除く水硬性セメントとしてのポルトランドセメント量(P
C) 100重量部あたりの無機炭酸塩の量(S) が、2重量部
未満であるか、または9重量部を超えるときには、本発
明が目的とする瞬結性が得られなかった (実験No. 18,
21) 。
【0051】実験No. 22〜26は、 A-B混合液中での、ア
ルミナセメントを除く水硬性セメントとしてのポルトラ
ンドセメント量(PC)に対する、アルミナセメントの量(A
C)の重量比 (AC/PC) の影響を示す。この量比が、本発
明で規定する要件を満たさない、アルミナセメントを除
く水硬性セメントとしてのポルトランドセメント量(PC)
100重量部あたりのアルミナセメントの量(AC)が、18重
量部未満であるときには、本発明が目的とする瞬結性が
得られなかった (実験No. 22) 。これに対して、本発明
の要件を満たした場合には、A液およびB液共、単独で
は調製後3時間以上凝結硬化を起こさない。また、A液
とB液との混合液は、混合後1分以内に硬化し、形成さ
れた硬化体(材令1日)の一軸圧縮強度値は、2kg/cm
2 以上であって、本発明で規定する安定性・瞬結性・早
強性が得られ、本発明の目的を達成することができた。
(実験No. 5, 9,14〜17,19,20,23〜26)
【0052】
【発明の効果】本発明により、水硬性セメントと水の混
練物であるA液と、硬化材と水の混練物であるB液を別
々に調製しておき、施工時に両液を混合して地盤内に注
入する土質安定用薬液および地盤安定化工法において、
凝結遅延剤を添加することなくA液およびB液の充分な
安定性を確保して、薬液の地盤注入前に凝結硬化を起こ
して施工できなくなる恐れを解消し、A液とB液との混
合液は1分以内に硬化し、かつ、形成された硬化体の圧
縮強度の発現が良好である、安定性・瞬結性・早強性を
併せもつ土質安定用薬液とそれを用いる地盤安定化工法
を提供することができる。これにより、注入した薬液が
流水に接触する可能性のあるような特殊な地盤でも、薬
液が硬化前に流水に流されてしまうことなく、より確実
に地盤を安定化させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C09K 103:00 C09K 103:00 (56)参考文献 特開 平1−299913(JP,A) 特開 昭56−74178(JP,A) 特開 昭54−162809(JP,A) 特開 平1−289890(JP,A) 特開 平3−23247(JP,A) 特開 昭53−16410(JP,A) 特開 昭54−50114(JP,A) 特開 平1−230455(JP,A) 特開 平7−188658(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 17/10 C09K 17/02 C09K 17/06 C09K 17/08 E02D 3/12 101 C09K 103:00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミナセメントを除く水硬性セメント
    を含んでなる主材液と、アルミナセメントを含んでなる
    硬化材液とを組み合わせて地盤内に注入する土質安定用
    薬液であって、主材液にはセメント膨張材を、一方、硬
    化材液に無機炭酸塩を、それぞれ配合し、主材液と硬化
    材液との混合液中においてアルミナセメント 100重量部
    に対してセメント膨張材が15重量部以上であり、アルミ
    ナセメントを除く水硬性セメント 100重量部に対して、
    アルミナセメントが18重量部以上であり、かつ、無機炭
    酸塩が2〜9重量部の範囲であるように混合して用いる
    ことを特徴とする土質安定用薬液。
  2. 【請求項2】 セメント膨張材がカルシウムサルホアル
    ミネート系膨張材または石灰系膨張材の少なくとも一種
    である請求項1記載の土質安定用薬液。
  3. 【請求項3】 無機炭酸塩が、水硬性セメントの硬化を
    促進する性質を有する、アルカリ金属の炭酸塩またはア
    ルカリ土類金属の炭酸塩の少なくとも一種である請求項
    1記載の土質安定用薬液。
  4. 【請求項4】 無機炭酸塩が、Li2CO3,Na2CO3,K2CO3
    およびMgCO3 からなる群から選ばれた少なくとも一種で
    ある請求項1記載の土質安定用薬液。
  5. 【請求項5】 アルミナセメントを除く水硬性セメント
    を含んでなる主材液と、アルミナセメントを含んでなる
    硬化材液とを組み合わせて地盤内に注入する地盤安定化
    工法において、主材液にはセメント膨張材を、一方、硬
    化材液に無機炭酸塩を、それぞれ配合し、主材液と硬化
    材液との混合液中においてアルミナセメント 100重量部
    に対してセメント膨張材が15重量部以上であり、アルミ
    ナセメントを除く水硬性セメント 100重量部に対して、
    アルミナセメントが18重量部以上であり、かつ、無機炭
    酸塩が2〜9重量部の範囲であるように混合して地盤内
    に注入することを特徴とする地盤安定化工法。
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