JP2001288468A - 植生用土壌固化組成物 - Google Patents

植生用土壌固化組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬化時間を任意に調整でき、強度発現性や浸
透性に優れ、本発明の土壌固化組成物を混合した土壌の
pH値が10以下となる、植物の成長に影響の少ない植生
用土壌固化組成物を提供すること。 【解決手段】 ブレーン値が8,000cm2/g以上の高炉スラ
グ、カルシウムアルミネート、及び石膏を含有する植生
用土壌固化組成物、さらに、凝結調整剤を含有する植生
用土壌固化組成物を構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物の成長に影響
の少ない植生用土壌固化組成物に関する。なお、本発明
でいう部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、セメントの一部は軟弱
地盤の強化や止水などを目的として使用されており、セ
メントを土壌に混合又は注入することにより、土壌の固
化強度を高くしたり、止水したりすることが可能となっ
ている。しかしながら、セメントの水和反応により水酸
化カルシウムが生成するため、セメントを混合又は注入
した土壌のpH値は13以上の強いアルカリ性を示す。こ
のように、セメントを混合又は注入した土壌は強アルカ
リ性土壌となり、植物の育成が妨げられるという課題が
あった。
【0003】その対策として、高炉スラグ又はシリカフ
ューム中のシリカ成分が、セメントの水和反応で生成し
た水酸化カルシウムと反応(ポゾラン反応)し、ケイ酸
カルシウム水和物として固定することでpH値を低下で
きることから、セメントに、高炉スラグ又はシリカフュ
ームを混入することが提案されている(特開平4−29
5038号公報)。しかしながら、ポゾラン反応は、セ
メントの水和後に長期間をかけて進行するものであり、
ポゾラン反応が進行するまでに植物の成長は低下してし
まうのが現状である。
【0004】また、セメントに天然ゼオライトを添加す
ることにより、ゼオライトに吸着した炭酸ガスが水酸化
カルシウムと反応しpH値を低下させる方法が提案され
ている(特開平7−315903号公報、特開平7−3
24334号公報)。しかしながら、セメント水和物が
ゼオライトの表面を被覆するため、ゼオライトが空気中
の炭酸ガスを吸着する量は極めて小さく、pH値を充分
に低下することができないという課題があった。
【0005】さらに、セメントに過リン酸石灰を併用し
た組成物が提案されている(特開平10−80725号
公報、特開平10−338875号公報)。しかしなが
ら、生成した水酸化カルシウムをリン酸カルシウム水和
物として固定するためには多量の過リン酸石灰を添加す
る必要があり、過リン酸石灰を多量添加した場合、固化
強度が小さくなり実用的ではないという課題があった。
【0006】以上のように、セメントを土壌固化組成物
として使用する限りは、固化強度を確保し、土壌固化組
成物を混合した土壌のpH値を10以下に低減することは
困難であった。本発明者は、セメントの代わりに特定の
材料を使用することにより、その材料を混合した土壌の
pH値が10以下となり、しかも、硬化時間を任意に調整
でき、強度の発現性に優れ、固化強度が高い植生用土壌
固化組成物を得ることができるという知見を得て本発明
を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、ブレー
ン値が8,000cm2/g以上の高炉スラグ、カルシウムアルミ
ネート、及び石膏を含有してなる植生用土壌固化組成物
であり、さらに凝結調整剤を含有してなる植生用土壌固
化組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明で使用するブレーン値が8,000cm2/g
以上の高炉スラグ(以下、本スラグという)とは、製鉄
所の高炉により鉄鉱石、コークス、及び石灰石等を用い
て銑鉄を製造する過程で副産物として生成するものを微
粉砕したもので、溶融状態のスラグを急冷するため、大
部分が非晶質となったものである。本スラグのブレーン
値は、8,000cm2/g以上であり、10,000cm2/g以上が好ま
しい。本スラグはそれ自体は水硬性が無いが、ブレーン
値を8,000cm2/g以上とすることにより、カルシウムアル
ミネートと石膏とを併用することで、土壌を固化するこ
とが可能となる。ブレーン値が8,000cm2/g未満では、カ
ルシウムアルミネートと石膏を併用しても固化強度が極
端に低下する場合がある。
【0010】本発明で使用するカルシウムアルミネート
(以下、CAという)とは、カルシアを含む原料と、ア
ルミナを含む原料とを混合して、キルンでの焼成や電気
炉での溶融などの熱処理をして得られ、CaOとAl2O3とを
主たる成分とし水和活性を有する物質の総称であり、Ca
O及び/又はAl2O3の一部が、アルカリ金属酸化物、アル
カリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化
鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロ
ゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属
硫酸塩等と置換した化合物、又は、CaOとAl2O3とを主成
分とするものにこれらが固溶した物質である。鉱物形態
としては、結晶質、非晶質いずれであっても良いが、初
期強度を向上させる面から非晶質カルシウムアルミネー
トが好ましい。また、CAとしては、市販されているア
ルミナセメントやアーウィン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)を
使用することも可能である。CAの粒度は、ブレーン値
で5,000cm2/g以上が好ましく、8,000cm2/g以上がより好
ましく、10,000cm2/g以上が最も好ましい。ブレーン値
が5,000cm2/g未満では初期強度が低下する場合がある。
CAの使用量は、本スラグ100部に対して、5〜50部が
好ましく、10〜20部がより好ましい。5部未満では初期
強度が小さくなる場合があり、50部を越えると長期強度
が小さくなる場合がある。
【0011】本発明で使用する石膏とは、無水石膏、半
水石膏、及び二水石膏が挙げられ、これらの中では、初
期の強度発現性の面から無水石膏が好ましい。石膏の粒
度は、ブレーン値で5,000cm2/g以上が好ましく、8,000c
m2/g以上がより好ましく、10,000cm2/g以上が最も好ま
しい。ブレーン値が5,000cm2/g未満では初期強度が低下
する場合がある。石膏の使用量は、本スラグ100部に対
して、5〜80部が好ましく、10〜30部がより好ましい。
5部未満では初期強度が小さくなる場合があり、80部を
越えると長期強度が小さくなる場合がある。
【0012】本発明で使用する凝結調整剤は、本スラ
グ、CA、及び石膏を含有してなる植生用土壌固化組成
物の固化時間を促進又は遅延するものである。凝結調整
剤とは、具体的には、アルミン酸ナトリウムやアルミン
酸カリウムなどのアルミン酸塩、炭酸ナトリウムや炭酸
カリウムなどの炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム、及び水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸アルミ
ニウム、硫酸鉄、及びみょうばん等の硫酸塩、ケイ酸ナ
トリウムやケイ酸カリウムなどのケイ酸塩、並びに、ケ
イフッ化ナトリウムやケイフッ化マグネシウムなどのケ
イフッ化物等の無機塩類、クエン酸、グルコン酸、リン
ゴ酸、及び酒石酸又はこれらのナトリウム塩、カリウム
塩、及びカルシウム塩等の有機酸類が挙げられ、これら
のうちの一種又は二種以上が使用可能であり、これらの
中では、初期の強度発現性の面から、硫酸アルミニウム
と有機酸を併用したものが好ましい。凝結調整剤の使用
量は、必要とする凝結時間によって調整することが可能
であるが、一般的には、本スラグ100部に対して、10部
以下が好ましく、1〜5部がより好ましい。10部を越え
ると長期の強度が低下する場合がある。
【0013】本発明の植生用土壌固化組成物(以下、本
組成物という)は、本スラグ、CA、及び石膏、さらに
必要に応じ、凝結調整剤を含有するものである。本組成
物の使用量は、対象となる土壌の種類、含水量、また、
必要とする強度によって一律に決定されるものではない
が、一般的には、土壌1m3に対して、20〜300kgが好ま
しく、50〜150kgがより好ましい。20kg未満では固化強
度が小さい場合があり、300kgを越えると固化強度が大
きくなりすぎる場合がある。
【0014】本組成物を懸濁液として使用する場合の水
量は、懸濁液がポンプで圧送可能な粘性であれば特に限
定されるものではない。例えば、本スラグ、CA、石
膏、及び凝結調整剤の合計100部に対して、100〜1,000
部が好ましく、200〜500部がより好ましい。100部未満
では粘性が高くなりすぎる場合があり、1,000部を越え
ると固化強度が低下する場合がある。
【0015】本発明の本組成物を懸濁液として使用する
場合、懸濁液の粘性を低減するために、分散剤を併用す
ることが好ましい。分散剤としては、ナフタレンスルホ
ン酸ホルマリン縮合物の塩系、リグニンスルホン酸塩
系、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩系、ポリ
カルボン酸塩系、及びポリエーテル系等が挙げられ、こ
れらの中では、強度発現性の面からポリカルボン酸塩系
やポリエーテル系の分散剤が好ましい。分散剤の使用量
は、本スラグ100部に対して、0.1〜10部が好ましく、1
〜5部がより好ましい。0.1部未満では懸濁液の粘性が
高くなる場合があり、10部を越えると初期の強度発現性
が小さくなる場合がある。
【0016】さらに、ベントナイト、アロフェン、メチ
ルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキ
シエチルメチルセルロース、及びポリビニルアルコール
等の材料分離抵抗材、ゼラチン、カゼイン、及び金属ア
ルミニウム等の気泡剤、並びに、パラフィンやシリコー
ン等の消泡剤等を併用することも可能である。
【0017】本組成物を使用した土壌の改良方法として
は、土壌に本組成物を混合する方法であれば特に限定さ
れるものではない。例えば、本組成物を地面に散布し、
バックホウやスタビライザーなどの重機で混合した後
に、タイヤローラーや振動ローラーなどで転圧して改良
する方法等が挙げられる。また、本組成物をあらかじめ
水と混合して懸濁液とし、ポンプで地盤に注入して改良
する方法も可能である。本組成物をあらかじめ水と混合
して懸濁液とし、ポンプで地盤に注入する方法の場合、
本スラグと水からなる懸濁液と、CA、石膏、及び凝結
調整剤からなる懸濁液を別々に作製し、二種類の懸濁液
をY字管で混合して注入する、いわゆる、1.5ショット
の注入方法が、また、上記二種の懸濁液を別々に圧送し
注入用二重管の先端で混合して注入する、いわゆる、2
ショットで地盤に注入することが可能である。特に、2
ショットで地盤に注入する方法は、二種類の懸濁液を混
合するまではそれぞれの懸濁液が固化しないことから好
ましい。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実験例を示し、本発明をさら
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0019】実験例1 本スラグ、表1に示すCA、及び石膏を表2に示す配合
で混合し本組成物を作製した。作製した本組成物を、含
水比150%に調製した新潟県産の粘性土壌1リットルに
対して、表2に示す量配合し、ホバート型ミキサーで攪
拌混合し、凝結時間、圧縮強度、及びpH値を測定し
た。結果を表2に併記する。
【0020】 <使用材料> 本スラグA:高炉スラグ粉砕品、ブレーン値6,500cm2/g 本スラグB:高炉スラグ粉砕品、ブレーン値8,050cm2/g 本スラグC:高炉スラグ粉砕品、ブレーン値10,150cm2/g CAα :表1に示す化学組成と鉱物組成、ブレーン値8,200cm2/g CAβ :表1に示す化学組成と鉱物組成、ブレーン値8,150cm2/g 石膏 :市販の無水石膏を粉砕、ブレーン値8,100cm2/g
【0021】<測定時間> 凝結時間 :JIS R 5201記載のビカー針装置を用いて、
終結時間の測定方法に準じて測定 圧縮強度 :JIS R 5201に準じ、4×4×16cmの鋼製型枠
に詰め、材齢1日と28日、耐圧試験機で測定 pH値 :材齢1日と28日の圧縮強度測定後の硬化体
を1mm以下に粉砕して試料とし、試料10gを200ミリリ
ットルのビーカーに入れ、100ミリリットルの純水を加
えて攪拌し、pHメーターで30分後のpH値を測定
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】実験例2 本スラグC100部、CAα15部、石膏15部、及び表3に
示す凝結調整剤からなる本組成物を調製した。調製した
本組成物を、土壌1m3に対して、150kg混合したこと以
外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0025】<使用材料> 凝結調整剤ア:硫酸アルミニウム、市販品 凝結調整剤イ:アルミン酸ナトリウム、市販品 凝結調整剤ウ:炭酸ナトリウム、市販品 凝結調整剤エ:クエン酸、市販品 凝結調整剤オ:酒石酸、市販品
【0026】
【表3】
【0027】実験例3 直径5cm×長さ30cmのポリエチレンチューブに7号珪砂
を高さ20cmになるまで入れた。一方、本スラグC100
部、CAα15部、石膏15部、凝結調整剤ア2部、及び凝
結調整剤エ2部からなる本組成物100部を、水300部、表
4に示す分散剤2部と混合して懸濁液を作製し、この懸
濁液を砂を入れたポリエチレンチューブに静かに投入
し、砂への浸透長さ、圧縮強度、及びpH値を測定し
た。結果を表4に併記する。
【0028】<使用材料> 分散剤a :ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の
塩系、市販品 分散剤b :ポリカルボン酸塩系、市販品 分散剤c :ポリエーテル系、市販品
【0029】<測定方法> 浸透長さ :1日後にポリエチレンチューブから浸透後
の供試体を取り出し、その長さを測定、最大値は20cm 圧縮強度 :浸透後の供試体を長さ10cmに切断し、材齢
1日と28日、耐圧試験機で測定
【0030】
【表4】
【0031】
【発明の効果】以上のように、本発明の植生用土壌固化
組成物は、 (1)土壌固化組成物を混合した土壌のpH値が10以下と
なる。 (2)硬化時間を任意に調整できる。 (3)強度の発現性に優れる。 (4)浸透性に優れる。 等の効果を奏する。
フロントページの続き Fターム(参考) 2B022 AA05 AB02 BA01 BA05 BA15 BA21 BA22 BA25 4H026 AA01 AA03 AA05 AA07

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブレーン値が8,000cm2/g以上の高炉スラ
    グ、カルシウムアルミネート、及び石膏を含有してなる
    植生用土壌固化組成物。
  2. 【請求項2】 ブレーン値が8,000cm2/g以上の高炉スラ
    グ、カルシウムアルミネート、石膏、及び凝結調整剤を
    含有してなる植生用土壌固化組成物。
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