JP6370614B2 - 地中連続壁の構築システム - Google Patents

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Description

本発明は、地盤改良での止水壁や土留め壁等として用いられる地中連続壁を構築する際に用いるソイルセメントによる地中連続壁の構築システムであり、前記地中連続壁を構築する際に発生する未硬化のソイルセメント分を含む余剰液が産業廃棄物として処理されるのを防止した地中壁の構築システムに関する。
従来から、地盤改良での止水壁や土留め壁等として、ソイルセメントによる地中連続壁の構築がなされている。この地中連続壁は、例えば、アースオーガにより地盤を掘削する際に発生する掘削土砂とセメント系固化材を含むセメント系注入固化液とを原位置で撹拌混合してソイルセメント柱を地中に作製し、かかるソイルセメント柱の一部を壁形成方向に重ね合わせて柱列壁とすることにより構築される。
上記のようなソイルセメントによる地中連続壁の構築施工においては、セメント系注入固化液の注入量に比例する形で、未硬化のソイルセメント分を含む泥水状の余剰液が発生する。この余剰液は未硬化のセメント分を含み強アルカリ性のものとなるため廃棄処分する際は産業廃棄物として処分する必要があるが、昨今の環境問題から、産業廃棄物に対する法的規制の厳格化、処分費用の増大、処理業者の低減といった様々な問題が発生してきている。
そのため、上記余剰液の発生量を抑制すべく、様々な取り組みがなされてきている。例えば、特許文献1には、連続壁を構築する際に用いる注入固化液の水量を低減して産業廃棄物となる排泥の発生量を低減させる連続壁の構築方法が開示されている。
また、特許文献2には、セメントとベントナイトと繊維質物(ペーパースラッジ)と水による硬化液を用いることにより、産業廃棄物残土をほとんど発生させないソイルセメント連続地中壁の施工法が開示されている。
また、本願発明者等は、特許文献3に開示したように、前記余剰液を固液分離して回収した余剰セメントミルクの回収液をリサイクルすることにより産廃処分土の排出量を減らす余剰液リサイクル工法を開発してきている。
一方、セメント系固化材の強アルカリ性、六価クロムの溶出、火山粘性土に対する強度発現不良といった問題を解決すべく、セメント系固化材に代わる固化材がいくつか開発されている。
例えば、特許文献4には、700℃〜1000℃で焼成し粉末度4000cm/g以上となるように調整された酸化マグネシウムからなる土壌用固化剤と火山灰土とからなる土壌用混合固化材が開示されている。また、特許文献5には、酸化マグネシウムを主成分とする固化材を対象土壌1mに対して50〜300kg添加混合する土壌の固化処理方法が開示されている。
特許第4889051号公報 特開2007−239253号公報 特許第5203872号公報 特許第4630655号公報 特開2003−193462号公報
上記特許文献1、3に記載される方法では、産業廃棄物となる排泥や排土の発生量を低減できるものの、地中連続壁の構築工法によっては十分低減できない。また、特許文献2に記載される方法では、繊維質物であるペーパースラッジを用いているため混練し難く、対象土によっては十分な強度の連続地中壁が得られなくなる恐れがある。
特許文献4、5には、土壌用のマグネシア系固化材が記載されているものの、発明の目的(技術思想)は強度改善や六価クロムの溶出低減に止まっており、マグネシア系固化材をソイルセメントによる地中連続壁の構築の際の固化材として用いる、産業廃棄物とみなされていた建設発生土をマグネシア系固化材を用いて産業廃棄物とならないようにするといった技術思想は開示されていない。
本願発明は、上述のような課題の解決を図ったものであり、ソイルセメントにより止水壁や土留め壁等として用いられる地中連続壁を構築するに際し、産業廃棄物として処理しなければならない土砂(建設発生土)や建設汚泥の発生を防止した地中連続壁の構築システムを提供することを目的とする。
本願発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、本願発明の上記目的を達成するには、(1)産業廃棄物に指定される可能性が高くなるセメント系固化材は使用せず、中性もしくは弱アルカリ性の非セメント系固化材を使用すればよいこと、(2)施工現場内に、発生する余剰液のリサイクルシステムを設け、場外に排出する排出物の量をできるだけ減らすこと、(3)前記排出物は埋め立て処分以外の再利用可能なものにすること、などを見出し本願発明を完成させた。
本願の請求項1に係る発明は、「地盤中で掘削土砂と弱アルカリ性注入固化液とを混練して作製されるソイルセメントによる地中連続壁の構築システムであって、前記弱アルカリ性注入固化液は非セメント系のマグネシア系固化材と混練水とからなり、前記マグネシア系固化材は固化材中に酸化マグネシウムを50重量%以上含む主成分とするマグネシア系固化液であり、施工現場内には、前記地中連続壁を構築する際に発生する未硬化のソイルセメント分を含む余剰液を固液分離処理して回収液と回収土砂を各々回収するための分離処理手段と、少なくとも前記回収液をリサイクルするためのリサイクル処理手段を含む回収液リサイクルシステムが設けられており、施工は、前記回収液を含まない当初の前記弱アルカリ性注入固化液による基本配合液施工と、前記回収液に新たな前記マグネシア系固化液を追加配合して作製したリサイクル配合液を次の弱アルカリ性注入固化液として用いたリサイクル配合液施工により行われ、前記基本配合液と前記リサイクル配合液の2種類の配合液を用いることによって、産業廃棄物として処理しなければならない土砂や建設汚泥の発生を減らすようにしたことを特徴とする地中連続壁の構築システム」である。
本願発明が適用される地盤は特に限定されず砂質土、火山粘性土、粘性土、有機質土、シルトなどに適用できるが、関東ローム等の火山粘性土に対して好適である。概して、火山粘性土を主体とした地盤にセメント系固化材による注入固化液を使用すると強度発現が不十分となる場合があるが、本願発明のような酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化液を用いれば良好な強度発現が得られる。
本願発明におけるソイルセメントは、地中連続壁を構築できるものであれば限定されないが、フレッシュ性状での流動性(練り上がり直後)が200mm以上、材齢28日での一軸圧縮強度が500kN/m 以上であるのが好ましい。
本願発明では、ソイルセメントを得るに当たり掘削土砂に添加する注入固化液として弱アルカリ性注入固化液を用いる。弱アルカリ性のものを用いることによって、強アルカリによる環境汚染を防止できるとともに、酸性土にも対応できる。また、非セメント系のものを用いれば、建設発生土等を場外で処分しなくてはならなくなったとしても、産業廃棄物と認定され難くなる。産業廃棄物と認定されると中間処理及び最終処分を行わなければならず、手間や処理費の発生といったデメリットが生じるので好ましくない。
弱アルカリ性固化材は、酸化マグネシウムを主体としたもの、水酸化マグネシウムを主体としたもの、石膏系のもの、アウイン等のカルシウムアルミネートを主体としたもの、フライアッシュを主体としたもの、高炉スラグを主体としたものなどいろいろ知られているが、本願発明では、酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材を用い、これにより上記弱アルカリ性注入固化液を得た。
弱アルカリ性注入固化液として酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化液を用いれば、作業性に問題が生ずることなく良質の地中連続壁が簡便かつ安価に得られる。また、酸化マグネシウムは土の成分であるので、構築された地中連続壁や排出土砂は天然由来の環境に優しいものとなる。
本願発明で用いる酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化液は、酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材と混練水とからなるものである。前記マグネシア系固化材は、固化材中に酸化マグネシウムを50重量%以上含むものであり、必要に応じて、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の固化助剤、ベントナイト、分散剤、固化遅延剤などが添加される。
酸化マグネシウムは純度90%以上の軽焼マグネシアが好ましい。軽焼マグネシアはマグネサイト鉱石やブルーサイトやドロマイトを600〜900℃で焼成して得られるものである。酸化マグネシウムの粉末度は特に限定されないが、ブレーン値で4000〜12000cm/gが好ましい。あまり細かすぎると作業性が悪くなったり取り扱い難くなったりするので好ましくない。
ベントナイトは、従来から地盤改良に使用されているものであれば特に限定されない。
分散剤は、従来から地盤改良分野でセメント系固化材とともに使用されているものであれば特に限定されないが、ポリカルボン酸系のものが好ましい。ポリカルボン酸系のものであれば、ソイルセメントの強度に悪影響を与えることなく掘削土砂とマグネシア系固化液との混練における混練物の流動性を改善できる。例えば、フローリック社の「ジオスパーF10」(商品名)が挙げられる。
固化遅延剤としては、後述のGSS工法用に開発されたフローリック社の「GK−8」(商品名)が好ましい。これは、オキシカルボン酸と多価アルコールを主成分としたpH9.5〜11.5のものである。この固化遅延剤であれば、強度発現に大きな影響を与えることなくソイルセメントの凝結時間を調整できる。
上記酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材は、必ずしも一剤型にする必要はなく、例えば、分散剤や固化遅延剤は混練水に添加して用いてもよい。
本願発明では、施工現場内に、地中連続壁を構築する際に発生する未硬化のソイルセメント分を含む余剰液(掘削孔から地上に排出される固化材を含む余剰泥水)を固液分離処理して回収液と回収土砂を各々回収するための分離処理手段と、少なくとも前記回収液をリサイクルするためのリサイクル処理手段を含む回収液リサイクルシステムが設けられる。
このような回収液リサイクルシステムは従来から広く知られており、発生する余剰排出物(廃棄物)の処理量を減らすべく、実用化されているものもある。このリサイクル技術については、例えば、前記特許文献3の他、特公平6−63221、特開2002−54133、特許第3846887、特開2010−101025などに記載されている。
本願発明の回収液リサイクルシステムは、上記分離処理手段と上記リサイクル処理手段を備えたものであれば特に限定されるものではなく、上記の各特許文献に開示されている技術を利用することができる。
本願発明はマグネシア系固化液の使用と回収液リサイクルシステムの使用の組み合わせに特徴を有するものであり、この組み合わせによって、ソイルセメントにより止水壁や土留め壁等として用いられる地中連続壁を構築するに際し、産業廃棄物として処理しなければならない土砂(建設発生土)や建設汚泥の発生を防止できるといった効果を奏するものである。
上記分離処理手段としては、篩分け、遠心分離、沈降分離、これらの併用による分離といった従来から土木・建築分野で用いられている分離手段を利用することができる。篩分けとしてはスクリーンでの振動篩による分離が挙げられる。遠心分離としてはサイクロンによる分離が挙げられる。沈降分離としてはピット等の沈降槽による分離が挙げられる。
上記リサイクル処理手段としては、上記各特許文献に示されるような従来のリサイクル処理手段が利用できる。中でも、本願の出願人が開発した「GSS工法」は好ましい。
このGSS工法は「ジェコスリサイクルシステム」とも言われるものであり、ソイルバキューム車による余剰液の吸引・圧送と、振動篩とサイクロンとタンクを備えたKGソイル分離機による固液分離と、GSSプラントによる回収液を再利用したリサイクル配合液の作成・供給を行うリサイクル処理手段である。
GSS工法は、分離処理手段とリサイクル処理手段を備えたものであるからして、本願発明の回収液リサイクルシステムに合致するものであるとともに、効果的に固液分離を行えるため高品質な回収液が得られる。
本願発明では、地中連続壁の構築施工は、前記回収液を含まない当初の前記弱アルカリ性注入固化液による基本配合液施工と、前記回収液に新たな前記マグネシア系固化液を追加配合して作製したリサイクル配合液を次の弱アルカリ性注入固化液として用いたリサイクル配合液施工により行われる。
基本配合液施工とは、回収液を含まない当初の上記マグネシア系固化液を基本配合液として、これを弱アルカリ性注入固化液として所定の深度まで削孔・混練を行う施工である。
リサイクル配合液施工とは、回収液に新たなマグネシア系固化液(追加配合液)を追加配合して作製したリサイクル配合液を前記基本配合液による弱アルカリ性注入固化液に次ぐ弱アルカリ性注入固化液として、前記削孔・混練に続く削孔・混練をターニング程度まで行い、その後、削孔内にマグネシア系固化材によるソイルセメント柱を構築する施工である。このリサイクル配合液施工は、必要に応じて、複数回に分けて行ってもよい。
このように、地中連続壁の構築を上記基本配合液施工と上記リサイクル配合液施工の併用により行えば、深度による地盤条件の変化にも対応できるとともに、場外に運び出される排出物の量を減らすことができる。
本願の請求項2に係る発明は、「前記マグネシア系固化液は、酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材と混練水とからなり、前記マグネシア系固化材は、純度が90%以上で粉末度がブレーン値4000cm/g以上の酸化マグネシウムとベントナイトとポリカルボン酸系の分散剤とからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の地中連続壁の構築システム」である。
酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材は、前述の通りであり、酸化マグネシウム粉末を50重量%以上含み、固化液にした時のpH値が弱アルカリ性の範囲になるものであれば特に限定されないが、酸化マグネシウム粉末とベントナイトとポリカルボン酸系の分散剤とからなるものが好ましい。このような構成のものであれば、対象土が火山粘性土であっても地中連続壁を構築するのに十分なソイルセメントが得られる。
酸化マグネシウム粉末は、前述の通り、純度が90%以上で粉末度がブレーン値4000cm/g以上のものが好ましい。純度が90%未満であると不純物の影響が大きくなり、固化液にした時のpH値が弱アルカリ性の範囲にし難くなるなどの不都合が生じやすくなる。また、粉末度がブレーン値4000cm/g未満であると対象土によってはソイルセメントの固化強度が不十分となるおそれがある。このような酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材としては、例えば、松田技研工業社の「エコアース」(商品名)が挙げられる。
これらの構成材によるマグネシア系固化液の配合割合は、例えば、対象土1mに対し、酸化マグネシウム粉末200〜400kg、ベントナイト1〜20kg、ポリカルボン酸系の分散剤1〜20kg、混練水400〜1000kgである。
本願の請求項3に係る発明は、「前記分離処理手段は、振動篩とサイクロンとタンクとを備えたものであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の地中連続壁の構築システム」である。
上述の回収液リサイクルシステムにおける前記分離処理手段は、前記GSS工法における前記KGソイル分離機のように、振動篩とサイクロンとタンクとを備えたものであるのが好ましい。このような分離処理手段を用いれば、固体分(土砂、泥土)と液分(回収液)との固液分離が十分できる。
発生した前記余剰液は、まず、振動篩によって土砂分と土砂分以外のもの(泥土微粒子と前記マグネシア系固化液の一部を含む液)に分けられ土砂分(建設発生土)は排出される。土砂分以外のものは一旦タンクに入れられるか、あるいは直接サイクロンに送られ、泥土微粒子分(建設汚泥)と液分(回収液)とに分けられる。泥土微粒子分は排出され、液分は再利用するためタンクに貯留される。
振動篩は、例えば、網目0.5mmのウェッジワイヤースクリーンであり、回転数1000rpmの加振体により該ウェッジワイヤースクリーンが振動するものである。
サイクロンは遠心力を利用して懸濁液の固液分離を行うものであり、従来から微粒子を含む懸濁液の固液分離に使われているものであれば、これを適用できる。
タンクは、振動篩によって分離した土砂分以外のもの(泥土微粒子と前記マグネシア系固化液の一部を含む液)を貯留する5〜7m程度の1次貯留タンクとサイクロンによって分離した液分(回収液)を貯留する5〜7m程度の2次貯留タンクである。前記土砂分以外のものを直接サイクロンに送る場合は、1次貯留タンクは省略される。
本願の請求項4に係る発明は、「前記回収土砂は、コーン指数が200kN/m 以上でpHが7を超え11未満の非産廃土として回収されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の地中連続壁の構築システム」である。
ここでいう回収土砂とは、上記分離処理手段により固液分離されて得られる上記回収液(リサイクルされる液)以外のものであり、土砂と泥土微粒子(建設汚泥)と若干のマグネシア系固化液とからなるものである。
上記回収土砂はコーン指数が200kN/m 以上になるようにして回収するのが好ましい。コーン指数の試験方法は、JIS A 1228によるものであり、コーンペネトロメーターを1cm/sの貫入速度で5cm、7.5cm及び10cmと連続的に押し込んだ時にコーン底面に作用する貫入抵抗力の平均値を貫入先端のコーンの底面積で除した値を求めるものである。また、回収土砂には若干のマグネシア系固化材が含まれているので、通常、自然放置することにより硬化が進み容易に200kN/m 以上にすることができる。
上記回収土砂のコーン指数を200kN/m 以上とすることにより、第4種処理土(第4種建設発生土)としての扱いが受けれるようになり、盛土材、埋戻し材、裏込め材等の適用が可能となる。また、若干含まれる固化液(固化材)はマグネシア系で非セメント系のものなので、上記回収土砂のpHは7を超え11未満の弱アルカリ性で環境に優しいものとなる。
以上の通り、本願発明の地中連続壁の構築システムによれば、回収土砂をセメントを含まない弱アルカリ性の第4種処理土とすることができるので、再利用可能な非産廃土として回収できる。再利用可能な非産廃土にすれば、産業廃棄物としての処理に必要なコストをなくすことができるとともに、リサイクル品として付加価値を付すことができる。
本願の請求項5に係る発明は、「前記地中連続壁の構築は、掘削ロッドに撹拌翼と移動翼とを交互に配置した多軸式掘削機を用い、掘削ヘッドの掘削ビットにより地盤を削孔するとともに、前記掘削ビットの近傍より前記マグネシア系固化液を削孔内に注入し、前記撹拌翼により前記マグネシア系固化液と原位置土とを撹拌混合し、前記移動翼で更に撹拌混合しながら移送することにより得られる前記ソイルセメント柱の柱列を完全ラップ方式で施工することによりなされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に地中連続壁の構築システム」である。
本願発明において、地中連続壁、地中連続壁の構築方法は特に限定されないが、掘削ロッドに撹拌翼と移動翼とを交互に配置した多軸式掘削機を、固化液としてマグネシア系固化液を用いるのが好ましい。このように、掘削ロッドに撹拌翼と移動翼とを交互に配置した多軸式掘削機による施工とマグネシア系固化液との組み合わせにより、産業廃棄物として処理しなければならない土砂(建設発生土)や建設汚泥の発生を防止しつつ、効率よく高性能な地中連続壁が構築できる。
施工は、上記多軸式掘削機の掘削ヘッドの掘削ビットにより地盤を削孔するとともに、前記掘削ビットの近傍より前記マグネシア系固化液を削孔内に注入し、前記撹拌翼により前記マグネシア系固化液と原位置土とを撹拌混合(混練)し、前記移動翼で更に撹拌混合しながら移送することにより得られる前記ソイルセメント柱の柱列を完全ラップ方式で構築することにより行う。
このような施工による地中連続壁の構築方法としては、例えば、本願の出願人が開発した「SMW工法」がある。このSMW工法は、削孔と混練との機能を兼ね備えた削孔混練機構を有する多軸式掘削機により原位置土を削孔すると同時に、前記多軸式掘削機の先端部分より吐出する固化液と原位置での掘削土砂とを混練(混合・撹拌)し、ソイルセメントによる柱列の地中連続壁を構築するものである。
このSMW工法によれば、地中連続壁が止水性の高いものとなり、種々の芯材(H形鋼、鋼矢板など)を挿入することにより、土止め壁等の耐土圧構造物として広く利用できる。
止水性が高いものとなるのは、撹拌翼と移動翼とを交互に配置したことによる独特のミキシングメカニズムと完全ラップ方式でのソイルセメント柱列により、混練性が均一で止水に対し弱点である鉛直継手のない連続一体の地中連続壁が造成されるためである。
上記の通り、SMW工法に代表される前記多軸式掘削機による施工方法と、前記GSS工法に代表される前記回収液リサイクルシステムを備えた施工方法とを組み合わせて用い、これら施工に使う固化液をマグネシア系固化液にすれば、高性能な地中連続壁が効率よく構築できるだけでなく、地中連続壁を構築する際に排出される余剰液からの産廃土の発生を防止でき、回収液のリサイクルによりコスト低減ができる。
本願発明の地中連続壁の構築システムによれば、ソイルセメントにより止水壁や土留め壁等として用いられる地中連続壁を構築するに際し、産業廃棄物として処理しなければならない土砂(建設発生土)や建設汚泥の発生を防止することができる。
本願発明の構築システムにより地中連続壁を構築する際の施工システムの概略を示す図である。 発生した余剰液の処理工程を示す図である。 余剰液と該余剰液を上記処理することによって得られる回収物の構成関係を示す図である。 本願発明の地中連続壁の構築システムにおける各設備の設置例を示す図である。(a)は立面図、(b)は平面図である。解り易いように、輸送管等の配管はすべて省略してある。 ソイルバキューム車の概略図である。 ソイル分離機を示す図である。(a)は装置の概略を示す立面図、(b)は分離処理の系統図である。 リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)を示す図である。(a)は装置の概略を示す立面図、(b)は固化液調合・供給の系統図である。 本願発明の地中連続壁構築システムで用いるベースマシンの一例を示す図である。 ソイルセメント柱列による地中連続壁(連続壁)の構築工程を示す図である。 図9に示す一つのエレメントの施工工程を示す図である。 図10に示す一つのエレメントの施工工程での施工と余剰液処理との関係を示す図である。
以下、本願発明の「地中連続壁の構築システム」の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態一例であり、本願発明はこの実施形態に限定されるものではない。
[固化液]
ソイルセメント柱を得るための削孔内に注入する固化液として、本願発明では非セメント系のマグネシア系固化材と混練水とからなるマグネシア系固化液(弱アルカリ性注入固化液)を用いる。
マグネシア系固化材は、固化材中に酸化マグネシウムを50重量%以上含む酸化マグネシウムを主成分とするものであり、必要に応じて、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の固化助剤、ベントナイト、分散剤、固化遅延剤などが添加される。
酸化マグネシウムを主成分とした市販のマグネシア系固化材としては、例えば、松田技研工業社の「エコアース」(商品名)、武井工業所社の「ジオベスト」(商品名)、宇部興産社の「U−マグガード」(商品名)がある。これらの他、独自に工業用の酸化マグネシウム粉末を用いてマグネシア系固化材を作製してもよい。
酸化マグネシウムは純度90%以上の軽焼マグネシアが好ましい。軽焼マグネシアはマグネサイト鉱石やブルーサイトやドロマイトを600〜900℃で焼成して得られるものである。酸化マグネシウムの粉末度は特に限定されないが、ブレーン値で4000〜12000cm/gが好ましい。あまり細かすぎると作業性が悪くなったり取り扱い難くなったりするので好ましくない。
ベントナイトは、従来から地盤改良に使用されているものであれば特に限定されない。市販の分散剤としては、フローリック社の「ジオスパーF10」(商品名)が挙げられる。これは、特殊カルボン酸塩を主成分としたpH4.0〜7.0のものであり、従来からソイルセメント柱列壁の施工に使われてきているものである。これであれば、マグネシア系固化材を用いた場合でも強度発現に大きく悪影響を与えない。
また、市販の固化遅延剤としては、フローリック社の「GK−8」(商品名)が挙げられる。これは、オキシカルボン酸と多価アルコールの混合物を主成分とするpH9.0〜11.0のものであり、強度発現に大きく悪影響を与えることなく凝結時間を調整できるものである。
本願発明で用いるマグネシア系固化材は、上記材料を適宜組み合わせてなるものであり、例えば、酸化マグネシウム粉末単味、酸化マグネシウム粉末+ベントナイト、酸化マグネシウム粉末+ベントナイト+分散剤のいずれかからなるものを主体とし、これに必要に応じて上記固化助剤や固化遅延剤を添加してなるものである。なお、酸化マグネシウム粉末には、酸化マグネシウムを主成分とした市販のマグネシア系固化材も含まれる。
本願発明で用いるマグネシア系固化液の配合例としては、対象土が関東ロームである場合、該対象土1mに対し、松田技研工業社の「エコアース」(商品名)208.5kg、クニミネ工業社のベントナイト5kg、分散剤としてフローリック社の「ジオスパーF10」(商品名)6.255kg、混練水719.25kgである。
この配合にすることにより、練り上がり直後のフロー値が320mmの良好な流動性となり、材齢28日での一軸圧縮強度が530kN/mの合格基準値(材齢28日で500kN/m以上)を上回るものとなる。
本願発明では、固化液として、回収液を含まない当初の弱アルカリ性注入固化液である基本配合液と、余剰液から回収した回収液に新たな追加配合液を加えたリサイクル配合液の両方を用いる。
基本配合液は、例えば、上記配合例に示すものである。リサイクル配合液は余剰液から回収した回収液に新たな追加配合液を加えたものであるが、配合は、特許第5203872号などに記載されるように、リサイクル演算プログラムを用いて算出することにより決められるものである(詳細は省略)。
本願発明では、上記の通り、固化液を工夫し、固化液をマグネシア系のものにするとともに、基本配合液とリサイクル配合液の2種類の配合液を用いることにより、土砂(建設発生土)や建設汚泥の発生量を減らし、産業廃棄物としての適用を受けないようにした。
[施工システム]
図1は、本願発明の構築システムにより地中連続壁を構築する際の施工システムの概略を示す図である。
施工現場に設置されたベースマシン1の多軸式オーガー2により地盤が削孔される。その際、リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10で製造された固化液(基本配合液)がベースマシン1に送られ、多軸式オーガー2の先端部から弱アルカリ性注入固化液3として噴射され、原位置で掘削土砂と混練されることにより削孔内にソイルセメント柱が造られ、このソイルセメント柱が連続して壁を形成することにより地中連続壁としてのソイルセメント柱列壁4が構築される。
前記弱アルカリ性注入固化液3は、酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化液であり、酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材を混練水中に分散させた懸濁液である。
一方、施工現場内には、回収液リサイクルシステム12が設けられている。この回収液リサイクルシステム12には、前記地中連続壁を構築する際に発生する余剰液を固液分離処理して回収液と回収土砂を各々回収するための分離処理手段であるソイル分離機9と、前記回収液をリサイクルするためのリサイクル処理手段であるリサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10が備わっている。
上記のようにして地中連続壁を構築する際には、未硬化酸化マグネシウムを主成分とするマグネシアのソイルセメント分を含む余剰液5が発生し地上付近に排出される。排出されてくる余剰液5は、地上付近に設けられたピットに貯められ、そこからソイルバキューム車で8で吸引されソイル分離機9に送られる。
ソイル分離機9に送られた余剰液5は、分離処理手段により土砂分(含水率低下排出土砂、建設汚泥)と回収液6に分離される。前記土砂分はコーン指数を調整することにより第4種処理土としての回収土砂7となり、ダンプトラック11に積み込まれ再利用される目的地まで運搬される。この回収土砂7は、若干の上記マグネシア系固化材を含むもののセメント分は含まないので、セメント分を含むことにより産業廃棄物として取り扱われたこれまでの排出土砂とは異なるものである。
また、上記回収液6はリサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10に送られ、固化液(リサイクル配合液)の一部として再利用される。リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10で製造された固化液(リサイクル配合液)は、前記固化液(基本配合液)と同様、ベースマシン1に送られ弱アルカリ性注入固化液3として使われる。
上記施工システムに示したように、本願発明の地中連続壁の構築システムを用いて地中連続壁施工を行えば、発生する余剰液5は分離処理されてリサイクル可能な有益の回収液6と回収土砂7となるので産業廃棄物として処分しなければならない産廃土は発生しない。
図2は、発生した余剰液の処理工程を示す図である。処理工程は大別して供給工程と分離処理工程とリサイクル処理工程とからなる。この分離処理工程とリサイクル処理工程とで回収液リサイクルシステムを構成する。
供給工程は余剰液を集め分離処理工程に供給する工程である。ここでは、ソイルバキューム車(SV車)により、基本配合液施工で発生し地上付近に設けたピットに貯められた余剰液を該ピットから吸引し分離処理工程まで圧送する。分離処理工程には、振動篩と貯留タンク(1次貯留タンク、2次貯留タンク)とサイクロンを備えたソイル分離機が設置されている。
分離処理工程は余剰液を固液分離して回収土砂と回収液を得る工程である。ソイルバキューム車(SV車)により圧送されてきた余剰液は振動篩により含水率低下排出土砂と微粒子(建設汚泥)や未硬化のマグネシア系固化材を含むスラリーとに分級(1次処理)され、前記スラリーは1次貯留タンクに貯留される。
1次貯留タンクに貯留されたスラリーはサイクロンで建設汚泥とマグネシア系固化材を含む回収液とに分級(2次処理)され、前記回収液は2次貯留タンクに貯留される。
リサイクル処理工程は、リサイクルプラントにより回収液をリサイクル配合液に変える工程である。2次貯留タンクに貯留された回収液は、その後、リサイクルプラントに送られ、この回収液に追加配合液を追加してリサイクル配合液が作製される。作製されたリサイクル配合液はベースマシンまで圧送され、リサイクル配合液施工での弱アルカリ性注入固化液として使われる。
一方、上記1次処理で発生した含水率低下排出土砂と上記2次処理で発生した建設汚泥は、第4種処理土となるようにコーン指数を200kN/m以上に調整後、回収土砂として回収される。前記含水率低下排出土砂と前記建設汚泥には、わずかながら水硬性のマグネシア系固化材が含まれているので、放置しておけば自然に硬化してくるので、容易に200kN/m以上にすることができる。
図3は、余剰液と該余剰液を上記処理することによって得られる回収物の構成関係を示す図である。
余剰液は掘削土と注入固化液とを混練してソイルセメント柱を得る際に発生するので、大別して、固化液分と土砂分とからなる。これを上記ソイル分離機で固液分離することにより、回収土砂と回収液がそれぞれ回収される。
回収土砂は、上記含水率低下排出土砂と建設汚泥とからなる土砂分と若干のマグネシア系の固化液分とからなる。このように、回収土砂には水硬性の固化液分が含まれるので、雨があたらないようにして自然放置することにより硬化してコーン指数200kN/m以上の第4種処理土(第4種発生土)となる。また、回収土砂に含まれる固化液分はマグシア系であるので、回収土砂はpHが7を超え10未満の弱アルカリ性のものとなる。したがって、回収土砂を再利用した場合、強アルカリ性によるアルカリ汚染の心配はなくなる。
回収液は、マグネシア系の固化液分とソイル分離機で分離できなかった若干の土砂分(土砂の微粒子)とからなる。この回収液は、同施工に再利用される。回収液は、もとの基本配合液と比べ固化材成分が薄まっているので、回収液にマグネシア系の新規固化液からなる追加配合液を加えて基本配合液に準じたマグネシア系のリサイクル配合液を作り、これを基本配合液施工に続くリサイクル配合液施工に用いる。
上記のように、本願発明では、余剰液から回収液を分離し、回収液を場内で再利用するので、場外への排出量を減らすことができる。また、固化液に含まれる固化材を非セメント系のものとし、土砂分のコーン指数を調整して土砂分をセメント分を含まない第4種処理土とすることにより産廃土の発生がなくなる。
図4は、本願発明の地中連続壁の構築システムにおける各設備の設置例を示す図である。(a)は立面図、(b)は平面図である。解り易いように、輸送管等の配管はすべて省略してある。
敷鉄板18上には、地中連続壁を構築するための多軸式オーガー2を備えたベースマシン1が設置されている。定規材24の下方には発生した余剰液を一時貯留するためのピット22が設けられており、ソイルバキューム車8により適宜吸引されソイル分離機9に圧送される。
ソイル分離機9で分離された土砂分はソイル分離9の周囲に設けられたピット22に一時貯留され、その後、コーン指数の調整を行った後に回収土砂7としてバックホー14でダンプトラック11に積み込まれる。
ソイル分離機9の隣にはベントナイトサイロ21と添加剤槽39を備えたリサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10が設置されている。また、近くには、追加配合液を作るためのマグネシア材料を一時貯留するサイロ15と混練水を貯留する水槽43が設けられている。粉体ローリー車16によりマグネシア材料(酸化マグネシウム粉末など)やベントナイトが運ばれてきて、それぞれサイロ15とベントナイトサイロ21に入れられる。
ソイル分離機9で分離された回収液は、リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10に送られ前記マグネシア材料と添加材を用いて新たに作られた追加配合液と混合されリサイクル配合液となってベースマシン1に送られる。
芯材(H鋼材)20は、強固な地中連続壁を得るために用いられる。クローラクレーン13で吊り上げられ、ベースマシン1によって構築された地中連続壁(ソイルセメント柱列壁)に挿入されることにより地中連続壁の芯材になる。
以上のような設備を施工現場に配置して本願発明のシステムを形成することにより、産廃土を発生させることなく高品質の地中連続壁を効率よく施工できる。
図5は、前記ソイルバキューム車8の概略図である。ソイルバキューム車8には、余剰液を吸い上げソイル分離機に圧送するための泥土ポンプ25、余剰液を泥土ポンプ25に送る吸引パイプ26、吸込み口27をピット22(ガイド溝)するためのクレームブーム28などが備わっている。
余剰液は、泥土ポンプ25により吸引パイプ26の吸込み口27から吸い上げられ、吐出口29から吐出されてソイル分離機に圧送される。泥土ポンプ25の吸引圧送能力は、例えば、40m/hr程度である。
図6は、ソイル分離機9を示す図である。(a)は装置の概略を示す立面図、(b)は分離処理の系統図である。
図6(a)に示すように、ソイル分離機9には、余剰液を分離する振動篩30、振動篩30で分離された(1次処理された)分離スラリーを一時貯留する1次貯留タンク32、分離スラリーを更に分離するサイクロン31、サイクロン30で分離された(2次処理された)回収液を貯留する2次貯留タンク33などが備わっている。
図6(b)に示すように、ソイル分離機9に送られてきた余剰液は、まず、振動篩30に備わっているスクリーン36で固液分離される。分離された含水率低下排出土砂37は、排出口34から排出されピット(図示省略)に貯められる。また、分離された微粒子と若干の固化材を含む分離スラリーは、1次貯留タンク32に一時的に貯められる。
1次貯留タンク32に一時的に貯められた分離スラリーは、サイクロン31に送られ更に固液分離される。分離された固形分(微粒子)はサイクロン31の下部から排出され建設汚泥38となる。また、分離された固化材を若干含み、ほとんど微粒子を含まない液分は回収液として2次貯留タンクに貯留される。そして、2次貯留タンクに貯留された回収液は、その後、次の工程のリサイクルプラントに送られる。
図7は、リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10を示す図である。(a)は装置の概略を示す立面図、(b)は固化液調合・供給の系統図である。
図7(a)に示すように、リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)10には、注入固化液を作製するためのミキサー40、作製された注入固化液を養生するアジテーター41、各液を送るモルタルポンプ42などの装置と、酸化マグネシウム粉末等のマグネシア主材を貯留するサイロ15、ベントナイトを貯留するベントナイトサイロ21、高性能減水剤や固化遅延剤等の添加剤を貯留する添加剤槽39が備わっている。
地中連続壁の構築施工においては、まず、基本配合液施工に使われるマグネシア系固化液(基本配合液)が作られる。図7(b)に示すように、サイロ15からの酸化マグネシウム、ベンナイトサイロ21からのベントナイト、添加剤槽39からの添加剤(高性能減水剤など)、水槽43からの水が各々ミキサー40に送られマグネシア系固化液(基本配合液)となる。作られたマグネシア系固化液(基本配合液)は、注入固化液ライン46によりベースマシンに送られ、弱アルカリ性注入固化液としてソイルセメント柱を削孔内に構築するのに用いられる。
その後、リサイクル配合液施工に使われる回収液を用いたマグネシア系固化液(リサイクル配合液)が作られる。回収液が回収液ライン45によりミキサー40におくられるとともに、追加配合液の配合割合でサイロ15からの酸化マグネシウム、ベントナイトサイロ21からのベントナイト、添加剤槽39からの添加剤(高性能減水剤など)、水槽43からの水が各々ミキサー40に送られ前記回収液とともに混合されマグネシア系固化液(リサイクル配合液)となる。作られたマグネシア系固化液(リサイクル配合液)も、注入固化液ライン46によりベースマシンに送られ、次の弱アルカリ性注入固化液としてソイルセメント柱を削孔内に構築するのに用いられる。
図8は、本願発明の地中連続壁構築システムで用いるベースマシンの一例を示す図である。ベースマシン1には、多軸式オーガー2が取り付けられている。この多軸式オーガー2の下部には撹拌翼50と移動翼51とが交互に設けられ、均一なソイルセメント柱が効率よく作れるようになっている。
図9は、ソイルセメント柱列による地中連続壁(連続壁)の構築工程を示す図である。
地中連続壁の構築は、ロッド48に撹拌翼50と移動翼51とを交互に配置した図8に示す多軸式オーガー2を用い、掘削ヘッド52の掘削ビットにより地盤を削孔するとともに、前記掘削ビットの近傍より弱アルカリ性注入固化液(マグネシア系固化液)を削孔内に注入(先端注入)し、前記撹拌翼50により前記弱アルカリ性注入固化液と原位置土とを撹拌混合(混練)し、前記移動翼51で更に撹拌混合しながら移送することにより得られるマグネシア系ソイルセメント柱の柱列を完全ラップ方式で施工することにより得られる。
上記撹拌混合(混練)は、削孔しながらの混練と孔底部での反復混練とオーガーを引き揚げながらの引き上げ混練の3種の混練でなされる。また、地中連続壁はソイルセメント柱列壁であり、図に示すように、ソイルセメント柱の第1エレメントと第2エレメントと第3エレメントを完全ラップ方式で造成することにより構築される。
図10は、上記図9に示す一つのエレメントの施工工程を示す図である。この例では、20mのソイルセメント柱を造る。
施工場所にベースマシン1を設置し、基本配合液による弱アルカリ性注入固化液(マグネシア系固化液)を用いて11m付近まで多軸式オーガー2により削孔しながら原位置土と前記弱アルカリ性注入固化液とを混練しソイルセメント53を得る。
その後、1次リサイクル配合液を用いて、同様に20mの深さまで削孔する。次に、2次リサイクル配合液を用いて、多軸式オーガー2を引き上げながら前記混練を進め、削孔内にソイルセメント柱54を造る。このようにして、一つのエレメントが完了する。
図11は、上記図10に示す一つのエレメントの施工工程での施工と余剰液処理との関係を示す図である。
施工は、基本配合液施工と1次リサイクル配合液施工と2次リサイクル配合液施工の3つの工程で行われる。
まず、基本配合液Q1を用いて深さH1まで削孔しながら原位置土と弱アルカリ性注入固化液とを混練しソイルセメントを得る基本配合液施工を行う。基本配合液Q1の基本配合液Q1液組成は、前述の通りである。
その際、発生する余剰液を固液分離処理することにより1次回収液R1と建設汚泥(1)と排出土砂(1)を得る。1次回収液R1の液組成は、例えば、固形分1.5重量%、水分98.5重量%であって、固形分は酸化マグネシウムとベントナイトと少量の添加剤(固化遅延剤、高性能減水剤等)からなる。
次に、この1次回収液R1に追加配合液T1を加えて1次リサイクル配合液を作り、これを弱アルカリ性注入固化液として用いて、深さH2の範囲の1次リサイクル配合液施工を上記基本配合液施工と同様に行う。追加配合液T1の液組成は、例えば、酸化マグネシウム粉末28.5重量%、固化遅延剤0.4重量%、混練水71.1重量%である。1次リサイクル配合液における追加配合液T1と1次回収液R1との割合は、例えば、容積比で1:3程度である。
その際、発生する余剰液を固液分離処理することにより2次回収液R2と建設汚泥(2)と排出土砂(2)を得る。2次回収液R2の液組成も、上記1次回収液R1とほぼ同様である。
次に、この2次回収液R2に追加配合液T2を加えて2次リサイクル配合液を作り、これを弱アルカリ性注入固化液として用いて、多軸式オーガーを引き上げながら深さ(H2+H1)の範囲の2次リサイクル配合液施工を上記1次リサイクル配合液施工と同様に行う。追加配合液T2の液組成は、例えば、酸化マグネシウム粉末30.5重量%、固化遅延剤0.3重量%、混練水69.2重量%である。2次リサイクル配合液における追加配合液T2と1次回収液R2との割合は、例えば、容積比で3:7程度である。
その際、発生する余剰液を固液分離処理することにより廃棄回収液R3と建設汚泥(3)と排出土砂(3)を得る。上記排出土砂(1)〜(3)と上記建設汚泥(1)〜(3)と上記廃棄回収液は、個別にあるいは一つにまとめて場外に運び出される。その際コーン指数を調整し200kN/m以上とすることにより、第4種処理土に該当する再利用可能なものとなる。これらには若干の固化材が含まれるものの、非セメント系のマグネシア系固化材であるので、産業廃棄物としての扱いを受け難くなる。
以上の通り、ソイルセメント柱列壁による地中連続壁を構築するにあたり、マグネシア系固化液のような弱アルカリ性注入固化液と回収液リサイクルシステムとを組み合わせた本願発明の地中連続壁の構築システムを用いれば、施工現場の場外に排出する排出物の量を減らすことができるとともに、該排出物が産業廃棄物と見なされるのを防止することができる。
1…ベースマシン、2…多軸式オーガー、3…弱アルカリ性注入固化液、4…ソイルセメント柱列壁、5…余剰液、6…回収液、7…回収土砂、8…ソイルバキューム車、9…ソイル分離機、10…リサイクルプラント(固化液調合・供給プラント)、11…ダンプトラック、12…回収液リサイクルシステム、13…クローラクレーン、14…バックホー、15…サイロ、16…粉体ローリー車、17…発電機、18…敷鉄板、19…高圧洗浄機、20…芯材(H鋼材)、21…ベントナイトサイロ、22…ピット、23…空気圧縮機、24…定規材、25…泥土ポンプ、26…吸引パイプ、27…吸込み口、28…クレーンブーム、29…吐出口、30…振動篩、31…サイクロン、32…1次貯留タンク、33…2次貯留タンク、34…排出口、35…サンドポンプ、36…スクリーン、37…含水率低下排出土砂、38…建設汚泥、39…添加剤槽、40…ミキサー、41…アジテーター、42…モルタルポンプ、43…水槽、44…水ライン、45…回収液ライン、46…注入固化液ライン、47…減速機、48…ロッド、49…連結装置、50…撹拌翼、51…移動翼、52…掘削ヘッド、53…ソイルセメント、54…ソイルセメント柱

Claims (5)

  1. 地盤中で掘削土砂と弱アルカリ性注入固化液とを混練して作製されるソイルセメントによる地中連続壁の構築システムであって、前記弱アルカリ性注入固化液は非セメント系のマグネシア系固化材と混練水とからなり、前記マグネシア系固化材は固化材中に酸化マグネシウムを50重量%以上含むマグネシア系固化液であり、施工現場内には、前記地中連続壁を構築する際に発生する未硬化のソイルセメント分を含む余剰液を固液分離処理して回収液と回収土砂を各々回収するための分離処理手段と、少なくとも前記回収液をリサイクルするためのリサイクル処理手段を含む回収液リサイクルシステムが設けられており、
    施工は、前記回収液を含まない当初の前記弱アルカリ性注入固化液による基本配合液施工と、前記回収液に新たな前記マグネシア系固化液を追加配合して作製したリサイクル配合液を次の弱アルカリ性注入固化液として用いたリサイクル配合液施工により行われ、前記基本配合液と前記リサイクル配合液の2種類の配合液を用いることによって、産業廃棄物として処理しなければならない土砂や建設汚泥の発生を減らすようにしたことを特徴とする地中連続壁の構築システム。
  2. 前記マグネシア系固化液は、酸化マグネシウムを主成分とするマグネシア系固化材と混練水とからなり、前記マグネシア系固化材は、純度が90%以上で粉末度がブレーン値4000cm/g以上の酸化マグネシウムとベントナイトとポリカルボン酸系の分散剤とからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の地中連続壁の構築システム。
  3. 前記分離処理手段は、振動篩とサイクロンとタンクとを備えたものであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の地中連続壁の構築システム。
  4. 前記回収土砂は、コーン指数が200kN/m 以上でpHが7を超え10未満の非産廃土として回収されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の地中連続壁の構築システム。
  5. 前記地中連続壁の構築は、掘削ロッドに撹拌翼と移動翼とを交互に配置した多軸式掘削機を用い、掘削ヘッドの掘削ビットにより地盤を削孔するとともに、前記掘削ビットの近傍より前記弱アルカリ性注入固化液を削孔内に注入し、前記撹拌翼により前記弱アルカリ性注入固化液と原位置土とを撹拌混合し、前記移動翼で更に撹拌混合しながら移送することにより得られる前記ソイルセメント柱の柱列を完全ラップ方式で施工することによりなされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に地中連続壁の構築システム。
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