JP5800431B2 - 弾性多孔質体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、板状又はフィルム状の製造ラインにおいて、枚葉状あるいはシート状のワークの表面に対して給液、吸液、洗浄、乾燥などの処理を行うのに適する弾性多孔質体の製造方法に関する。
プリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラス基板、液晶用フィルム基板、半導体基板のような枚葉物や、連続して処理を行う高分子シート体や、リードフレーム等の金属シート体、などに見られる種々の製造ラインでは、枚葉状あるいはシート状のワークの表面に対して、給液、吸液、洗浄、乾燥などの処理が適宜行われていて、その処理に適する部材として弾性多孔質体が多々使用されている。
枚葉状のワークとしてはプリント基板を例示することができ、このプリント基板の製造工程では、基板表面に微細な配線パターンを形成させるためのフォトレジスト塗布工程、フォトマスクを介したパターン露光工程、不要な樹脂や夾雑物を取り除くための各種化学薬品による処理工程、それに続くエッチング処理による配線形成工程、各工程間でのワーク洗浄・乾燥工程、それぞれの工程の組み合わせによるパターンの積層工程、最終工程となる樹脂保護層の形成工程(プリフラックスやソルダーレジスト)などの多くの工程が含まれている。
上述各工程におけるワークの表面に対する処理には、枚葉式処理や連続式処理などが行われていて、その中でも処理効率の観点からは連続式処理が多用されている。
連続式処理では、ワークを連続的に搬送させるための多数のローラーを配設した装置によるものが多く、たとえばフォトレジスト塗布工程では、枚葉状の基板を支持シートなどに乗せた状態で搬送しながら、ドクターロールを介してコーティングロールにて転写された塗布液を基板表面に接触輪転させる、という操作を経て均一な製膜が行われる。また、パターン露光工程では、現像処理によって必要な部分のみを残すことによるパターン形成が行われ、各種化学薬品による処理工程では、露出した不要な銅箔を除去するためのエッチングやレジスト除去などの処理が行われる。
上記した一連のワークの表面に対する処理として、一般的には各種液体の接触を伴う湿式法による方法が多用されている。そして、同湿式法による方法には、いずれも多数のローラー部材を配設した装置が採用されていて、ローラー上もしくは上下に配置されたローラー間に基板を通過させながら連続的な処理を実行している。ここでのローラー部材には、薬剤環境に合わせた材質のものが選定されることは勿論、ワークへのダメージを防ぐこと、薬剤との接触を確保すること、などを勘案した上で、弾性多孔質体を用いることが好適であるとされている。
また、製造ライン中で行われる薬液処理には、ユニットとして構成された薬液槽を用いることが多く、ユニット間では、前工程で使用された薬剤が次工程の異なる薬液槽に混入することを避けるために、基板に付着した薬剤を除去するための液切りやリンス、洗浄、乾燥、熱処理といった二次処理が組み合される。
液切り手段としては、エアーナイフ(圧縮エアー)による非接触式の手段や、ローラー部材による接触式の手段が利用される場合もあり、それらはワークの形状や状態によって適宜選択使用されている。一般的には、後者の接触式の手段が、ワークに対する影響が少ないという品質安定性の観点から好適に利用され、さらに、省エネルギーの観点からも好適に利用されている。
さらに具体的には、接触式による液切り手段としての吸液性を有する弾性多孔質体には、ワークと接触すると同時に瞬時に表面に付着した液体を吸収すると共に、次工程に持ち込む残留液体量を極力低減しうる機能が求められる。乾燥工程で用いられる弾性多孔質体には、ワークを確実に搬送すると共に熱風にも耐えられる耐熱性が求められ、さらには、次工程に進む最後の接触部材となるため、ローラーからのコンタミネーション(夾雑物、溶出物の転写)のないものが求められるけれども、特に高分子弾性多孔質体の場合には、その硬度を下げるために低分子量の可塑剤や生産時に混練される各種添加剤が混練されているために、加熱条件におけるそれらのブリードアウトによるワークへの汚染が懸念される。
ワークの表面に対する処理に使用されるローラー部材としては、これまでにも種々提案されており、また、適宜選定使用されている。たとえば、吸水性ローラーとしてはポリビニルホルマール系樹脂の多孔質ローラー(たとえば特許文献1参照)やポリウレタン系樹脂の多孔質ローラー(たとえば特許文献2参照)が好適に使用されている。ポリビニルホルマール系樹脂の多孔質ローラーは、湿潤時には柔軟な弾性を発現し得るものの乾燥時には硬化するために、ローラー自体の水分状態を調整する必要があって取扱上の煩わしさを有するが、ワークへのダメージが低いために、設置環境に合わせて選定使用されている。ウレタン系樹脂の多孔質ローラーは、含水状態に関係なく柔軟な弾性を維持するので取扱上の煩わしさがないという面で好適であるけれども、ウレタンの特性からアルカリ系薬剤に対しては加水分解による劣化を生じやすいために使用に制限があった。
一方、ポリビニルホルマール系樹脂やポリウレタン系樹脂では使用に制限がある薬剤環境、詳しくは強酸、強アルカリ薬剤を用いる薬剤環境に対しては、ポリオレフィン系多孔質ローラーが適用されて今日に至っている。
特許第2999745号公報 特開平8−27240号公報
しかしながら、ポリオレフィン系多孔質ローラーも万能ではなく、さらに厳しい薬剤環境の下では薬剤による劣化を防止することができず、頻繁に交換することを余儀なくされていた。具体的には、基板のエッチング工程、基板上に付着する異物除去、フォトレジストの剥離が挙げられ、それらは、酸化力のある薬剤にて処理することにより行われる。たとえば、硫酸と過酸化水素水との混合液を用いることが効果的であることが知られており、それら混合液は強酸化物であるペルオキソ−硫酸(いわゆるカロ酸)を生成することにより上述の処理効果を発揮する。それゆえ、基板の処理にはこれら混合薬剤を使用することが有効であるが、同時に接触するポリオレフィン系多孔質ローラーに対してもダメージを与えるものとなる。
上述のようにそれぞれの工程において求められる特性を有するローラー部材が適宜選択使用されており、いずれも消耗部材とした管理の下で、ワークの品質維持のためにも一定時間もしくは一定基準の性能を発揮しなくなったものは新しいものへと交換される。また、各々の工程で装着されるローラーはいずれも同一ではなく、それぞれの要求特性に合わせて選定されている。このため、それぞれの種類毎に消耗部材としてのローラ部材の在庫を持たなければならず、ローラーの装着数も多いためにその管理も煩雑となっていた。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、ワーク表面に薬液を均一に供給ないし塗布させるための給液性、ワークに付着する液体を除去するための吸液性、ワークへのダメージを与えないための弾性、さらには薬剤に対する高い耐性に加え、耐熱性やワークへのコンタミネーションの抑制など、多面的な機能を合わせ持った部材を提供することにより、プリント基板などの製造工程の安定運用を図ることのできる弾性多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、今後予想されるさらに厳しい薬剤環境での使用にも適合し得ると共に、各工程で使用される部材の共通化を可能とすることを視野に入れることのできる弾性多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る弾性多孔質体の製造方法は、主成分としてのフッ素系樹脂と気孔形成剤とを混合して加熱成形を行うこと、気孔形成剤を抽出除去することにより、3次元網目構造の骨格を有して隣接する気孔が互いに連通している弾性多孔質体の製造方法である。また、加熱成形したものを粉砕もしくはペレット化し、再混合を行った上で再度の加熱成形を行ってもよく、この方法は、品質均質化を図る観点から見ると、より望ましい方法であると云える。
上記製造方法では、主成分としてのフッ素系樹脂が、熱可塑フッ素エラストマー及びフッ素樹脂を含み、気孔形成剤が、無水硫酸ナトリウム及びポリエチレングリコールを含んでいる。
また、本発明に係る弾性多孔質体の製造方法では、加熱成形した後であって気孔形成剤を抽出除去する前に、又は気孔形成剤を抽出除去した後に、低酸素もしくは無酸素状態での環境、又は、不活性ガス環境にて放射線架橋が行われる。架橋方法として上記の放射線架橋を採用すると、耐久性、耐熱性、耐薬性などが改善され、機械的強度も向上する。また、この方法を採用すると、架橋に用いた未反応物等の残査成分が使用時に溶出するという余地がなくなるので、コンタミネーションが無く、転写など不具合を生じるおそれがなくなって清浄度が向上する。
本発明に係る弾性多孔質体の製造方法において、上記3次元網目構造の骨格を有する、とは、フッ素系樹脂が当該弾性多孔質体の骨格を形成している、ということであり、このような弾性多孔質体では、気孔が骨格で仕切られていて、相隣接する気孔どうしが互いに連通している。この点で、独立気孔の多孔質体とは区別される。3次元網目構造の骨格を有して、隣接する気孔が互いに連通している弾性多孔質体では、相隣接する気孔の相互間を液体やガスが流通するので、弾性多孔質体が吸収した液体を排出する機能(給液機能)や弾性多孔質体が液体を吸収する機能(吸液機能)が無理なく発揮される。したがって、この製造方法によって得られる弾性多孔質体によれば、ワークなどの対象物への接触をもって対象物の表面に付着している液体の吸収や対象物の表面への液体の供給が安定して行われる。また、対象物の表面への液体の塗布を行うことも可能になる。さらに、主成分であるフッ素系樹脂が耐薬性に優れた特性を発揮することにより、この構成の弾性多孔質体は耐薬性にも優れている。この作用は、フッ素系樹脂が、重合性の官能基を有して、単一もしくは複数のモノマーの共重合体からなり、かつ、フッ素含有率が40%以上の高分子化合物である、という構成を採用することによって顕著に発揮される。
重合性の官能基を有するフッ素系モノマーとしては、二重結合、三重結合、エポキシ基、オキセタン骨格またはケテンアセタール骨格を有するモノマーなどが挙げられる。重合性の官能基を有するフッ素系モノマーの具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、3,3,3−トリフルオロプロペン、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、パーフルオロ(ブチルエチレン)など、の直鎖状または分岐状の脂肪族フルオロオレフィン類、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)(BVE)等のパーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)などのエーテル性酸素原子含有環状パーフルオロオレフィンなど、が挙げられる。これらの含フッ素系モノマーは、重合性の官能基以外の官能基を有していても構わない。
複数のモノマーの共重合体の種類は、フッ素系モノマーと共重合するものであれば特に限定されるものではなく、たとえば上述のフッ素系モノマー同士のほか、フッ素を含まないモノマーであってもよく、具体例として以下を示すことができる。
エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ステアリルアクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のアクリレート類、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、等のビニルエステル類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、シクロヘキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状オレフィン類などである。このほか、エポキシ化合物などフッ素系モノマーとの共重合が可能であれば、上記のモノマーに限定されるものではない。重合形態としての繰り返し単位についても任意に適用されるものであり、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合など、要求特性に合わせていずれでも可能である。
本発明に係る製造方法によって得られる弾性多孔質体は、アスカーCタイプでのゴム硬度が50以下であることが望ましい。ゴム硬度が50以下であると、ワークの表面に弾性多孔質体が押し付けられたときに、弾性多孔質体がワークの表面に沿ってよく馴染み、ワークの表面に対する給液や吸液の性能の安定性が保たれやすくなる。また、ゴム硬度が50を越えていると、弾性多孔質体がワーク表面に接触することによってワーク表面を損傷するおそれが生じる。また、上記弾性多孔質体は、ローラー形状に形成されていても、ブロック又はシート形状に形成されていてもよい。これらの特徴についての作用は、後述する実験例などによって明らかになる。
本発明に係る製造方法によって得られる弾性多孔質体は、3次元網目構造の骨格を有して、隣接する気孔が互いに連通していることに加えて、特に主成分がフッ素系樹脂であることにより、ワーク表面に薬液を均一に供給ないし塗布させるための給液性、ワークに付着する液体を除去するための吸液性、ワークへのダメージを与えないための弾性を備えているほか、特に、薬剤に対する高い耐性を有し、さらには、耐熱性やワークへのコンタミネーションの抑制など、多面的に優れた機能を発揮する。したがって、この弾性多孔質体を用いたローラーや、ブロック又はシートをプリント基板などの製造工程で採用することによってその製造ラインの安定運用を図ることができるようになる。加えて、今後予想されるさらに厳しい薬剤環境での使用にも適合し得るものである
本発明の製造方法によって得られる弾性多孔質体の図面に代わる走査型電子顕微鏡写真である。
本発明に係る弾性多孔質体の製造方法としては、気孔形成剤と称する化合物をフッ素系樹脂に混合し、一次成形をもって気孔形成剤を抽出操作により除去して連続気孔を確保するという方法を採用することが可能である。気孔形成剤は、無機系および有機系の化合物のいずれも可能であり、これらを溶解するための抽出溶媒とあわせて適宜選定使用される。具体的には、フッ素系樹脂と気孔形成剤を任意手段によって混合成形したのちに、含有する気孔形成剤を溶解させる溶媒をもって抽出除去することによって均質な気孔が形成される。さらに、二次加工を行うことによって所望の形状、サイズの弾性多孔質体が得られる。
混合成形手段は樹脂の特性に合わせて選定されるものであり、たとえば、加硫等の二次架橋を必要とする場合には、オープンロールによる混練操作が一般的であり、熱可塑系樹脂の場合にはエクストルーダーのような連続混練成形機の利用が可能である。
ゴム弾性を発現するには、一般的な加硫方式によるもののほか、加硫剤を必要としない方式も選択可能となる。具体的には、熱可塑エラストマーの使用や放射線架橋などが挙げることができる。この熱可塑エラストマーは、分子中にブロック状に異なる性質のモノマー構成を有し、所謂ソフトセグメントとハードセグメントと呼ばれる分子構造を有している。
ソフトセグメントはその名の通り、分子的にも柔軟にあるのに対し、ハードセグメントは結晶相として物理的な束縛作用を有することにより、疑似的な架橋状態となってゴム弾性を発現する。また、ハードセグメントは加熱により結晶相がほぐれて流動性を示す、所謂熱可塑状態を呈することにより、任意形状への成形が可能となり、さらに冷却により元のゴム弾性を発揮することができるものである。放射線架橋については、分子鎖中に放射線に対して架橋反応を生じるセグメントを構成することによって、加硫剤の存在がなくとも架橋を生じる。
本発明に係る弾性多孔質体の製造方法では、熱可塑エラストマーと放射線架橋との組み合わせなどの複合的な方式を含めて、いずれの方式も適用可能であるが、清浄度の観点では未加硫方式が優位にある。すなわち、加硫方式においては、弾性多孔質体を構成する主成分のフッ素系の原料樹脂以外に加硫剤やそれら反応時に副生する酸物質を捕捉するための受酸剤といった補助剤の添加が必要であり、それらの未反応物等の残査成分が使用時に溶出することによってワークへ転写するなどの不具合を生じるおそれがある。このため、原料樹脂以外の添加剤、特に低分子量物の使用は避けることが望ましい。さらに詳しくは、放射線としては電子線、ガンマ線等必要透過深度に合わせて選択可能であり、低酸素もしくは無酸素状態での環境、又は、不活性ガス環境にて行うことが望ましい。なぜならば、酸素存在化で照射処理を行うと、分子鎖中に酸素分子が取り込まれ、フッ素系樹脂の本来の特性を損なうことや低分子化による強度低下、収縮等の不具合を生じるためである。
気孔形成剤は、フッ素系樹脂の特性や成形条件さらには、抽出する溶媒にあわせて適宜選定使用が可能であり、抽出方式として広く知られる方法(特開昭58−189242号公報)より選択できる。望ましくは、無機系および有機系の物質いずれでもよいが、コストや環境影響の観点からは、水を抽出溶媒とする水溶性物質が好適であり、加熱操作を伴う場合などでは、熱的にも安定な粒子状無機塩類が好適である。さらには、粒子状無機塩類のみでは気孔同士の連通度が乏しいため、熱可塑性水溶性物質との併用がより望ましい。例えば、熱可塑性水溶性物質としては、多価アルコール、ポリエーテル類などの有機化合物が挙げられる。
本発明に係る製造方法によって得られる弾性多孔質体は、上述のように、ワークに付着している液体を吸収する作用やワークに対して液体を供給する作用を好適に発揮させるために、所望とする効能に合わせて硬度を調整することも可能である。硬度は、原料とするフッ素系樹脂のモノマー構成の変更や複数の樹脂をブレンドすることによって調整可能となる。
一般的には、給・吸液特性の発現には弾性を有するものがより好適に使用される。詳しくは、ワークとの接触部位にて弾性多孔質体の屈曲変形を伴うことによって効果を奏する。たとえば、ワークに対して連続的な処理を行うに際し、ローラー形状の弾性多孔質体を使用した場合には、同ローラーとワークとの接触部位において、ローラー側が変形することによって、気孔内に含有保持された液体が排出されてワーク表面への塗布がなされ、さらにその外圧が除去されてローラーの変形が元の状態に復元する際には、構成する気孔の体積変化に伴うポンプ作用をもってワーク上に付着した液体を吸引する作用を生じる。
また、本発明に係る製造方法によって得られる弾性多孔質体の気孔径の大きさを変更することによって給・吸液特性を調整することが可能となる。詳しくは、ワークに対して液体塗布を目的とする場合には、給液機能(排液機能)を高め吸引機能を低下させることにより、ワーク表面に液体を意図的に残存させる性能、すなわち塗布性能が発揮される。これに対し、吸液を目的とする場合には、吸引機能を高めることによりワークへの液体の残存量を低減することが可能となる。さらに詳しくは、気孔径が細かいほど液体の残存量の低減が期待されるものの、液体の種類にもよるが、実用的には吸液抵抗も考慮した中で気孔径が設定され、5ミクロン〜100ミクロンが好適であり、20ミクロン〜60ミクロンがより高い効果を奏するものとなる。塗布を目的とする際にも、僅かな塗布を必要とする場合は、上記と同一範囲である5ミクロン〜100ミクロンにあっても使用可能な場合があるが、安定的な供給を維持して塗布性能を高めるためには、100ミクロン〜500ミクロンが使用範囲として推奨され、さらに給液性と塗布量のバランスからは100ミクロン〜300ミクロンが好適である。すなわち、塗布対象とする液体の性質にあわせて、保液性と給液性のバランスの観点から、最適な気孔径が選択されるものとなる。
このほか、本発明に係る製造方法によって得られるフッ素系多孔質体を採用したローラーは、従来の処理装置において既に装着されている各種ローラーの種類を統一もしくは減らすことに寄与し得る。そのため、生産システム管理の観点からも有効である。また、本発明の弾性多孔質体は、上記したワークの連続処理として多用されるローラー形状だけでなく、ワーク表面へのパッティング操作を行うためにブロック状又はシート状に成形されていてもよい。これらのブロック状又はシート状の弾性多孔質体は、ワークに対して枚葉的に押し当てるいわゆるスタンピング方式に適用することができる。
実施例1
下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として使用した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−
530) 4重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製THV500) 1重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
これらの原料をタンブラーにて混合したのち、ベント式二軸混練押出し機に連続的に投入し、加熱押出しにより約φ3mmほどのストランドとして空冷を行いながら切断することによってペレットとした。さらに、これらペレットを再混合したのちに、外径30mm、内径15mmのチューブ状の成形ダイスを接続したベント式二軸混練押出し機によって250℃の加熱押出しを行い、シャワー水によって冷却し硬化させた。
次いで65℃の温水中に浸漬することにより気孔形成剤を抽出除去し、水洗リンス処理に続き、80℃の乾燥処理をもってゴム弾性を有するローラ形状のフッ素系多孔質体を得た。
実施例2
実施例1により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、酸素吸収材(三菱ガス化学(株)製エージレス)と酸素検知呈色剤((三菱ガス化学(株)製エージレスアイ)と共に酸素バリア性の袋に入れ密封し、無酸素状態となったことを確認の上、積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
実施例3
実施例1のフッ素樹脂(THV500)を別のモノマー構成からなるフッ素樹脂(旭硝子(株)製フルオンLM−ETFELM−730AP)に置き換えて、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−530) 4重量部
フッ素樹脂(旭硝子(株)製フルオンLM−ETFELM−730AP) 1重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
実施例4
実施例1の熱可塑フッ素エラストマー及びフッ素樹脂を別のモノマー構成からなるフッ素樹脂(旭硝子(株)製アフラス150FC)に置き換えて、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
フッ素樹脂(旭硝子(株)製アフラス150FC) 5重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
実施例5
実施例1の気孔形成剤の量を変更して、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−
530) 4重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製THV500) 1重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 10重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000)1.3重量部
実施例6
実施例1の気孔形成剤中の一部の組成を変更して、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−530) 4重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製THV500) 1重量部
<気孔形成剤>
塩化ナトリウム微粉(赤穂化成(株)製オシオミクロンT0) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG- 20000) 2重量部
実施例7
実施例1の気孔形成剤中の一部の組成を変更して、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製 ダイエルサーモプラスチックT−530) 4重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製 THV500) 1重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製 無水芒硝E品) 8重量部
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製 無水芒硝C品) 8重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製 PEG−20000) 2重量部
実施例8
実施例1の気孔形成剤中の一部の組成を変更して、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−530) 4重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製THV500) 1重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 8重量部
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝K品) 8重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
実施例9
実施例1の気孔形成剤としての無水硫酸ナトリウムに代え、平均粒子径400μmの塩化ナトリウム粒子((株)天塩製焼塩)を用い、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−530) 4重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製THV500) 1重量部
<気孔形成剤>
塩化ナトリウム粒子((株)天塩製焼塩)(平均粒子径400μm) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
比較例1
実施例1にて得られたローラー形状のフッ素系多孔質体に対し、酸素存在下で積算線量強度100kGyのガンマ線照射処理を実施した。照射前の状態と比較すると寸法が大きく収縮し、硬化すると共に部位的な変形を生じたことから、性能評価に適さないと判定した。
比較例2
実施例1の熱可塑フッ素エラストマー及びフッ素樹脂を別のモノマー構成からなる加硫タイプのフッ素樹脂(旭硝子(株)製アフラス150P)に置き換え、新たな加硫を行うための下記添加剤を加えて、下記のフッ素系樹脂、気孔生成剤、及び加硫剤/添加剤を主原料として、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得て、その乾燥工程後にさらに高温熱処理(200℃、5hrs)を施すことにより、ゴム弾性を有する連続多孔質体を得た(ガンマ線照射工程を省略)。
<フッ素系樹脂>
フッ素樹脂(旭硝子(株)製アフラス150P) 5重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
<加硫剤/添加剤>
TAIC(※) 0.25重量部
パーオキサイド(※※) 0.05重量部
ステアリン酸ナトリウム 0.05重量部
※トリアリルイソシアヌレート
※※1,3ビス(tブチルパーオキシ)−ジイソプロピルベンゼン
比較例3
実施例1のフッ素系樹脂の配合比率を変更して、下記のフッ素系樹脂及び気孔生成剤の量にて、実施例1と同様の手順でローラー形状のフッ素系多孔質体を得た。
そして、本実施例により得られたローラー形状のフッ素系多孔質体を、実施例2と同様の条件で、無酸素状態となったことを確認の上、実施例2と同様に積算線量強度100kGyにてガンマ線を照射した。
<フッ素系樹脂>
熱可塑フッ素エラストマー(ダイキン工業(株)製ダイエルサーモプラスチックT−530) 1重量部
フッ素樹脂(住友スリーエム(株)製THV500) 4重量部
<気孔形成剤>
無水硫酸ナトリウム(三田尻化学工業(株)製無水芒硝E品) 16重量部
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製PEG−20000) 2重量部
上記の実施例及び比較例によって得られた弾性多孔質体の評価結果を表1及び表2に示した。表1及び表2には、ガンマ線照射による耐熱性の向上や各種樹脂ブレンドによっても実用に適した素材が確保できることや処方による物性影響など、液切り性や塗布性が気孔径や硬度によって影響することなどを示してある。また、図1には本発明に係る弾性多孔質体の走査型電子顕微鏡写真を示した。図1より明らかなように、本願発明に係る弾性多孔質体は、3次元網目構造の骨格を有して、隣接する気孔が互いに連通している構造を有する。
耐薬性1:硫酸72%/過酸化水素水7.5%
耐薬性2:フッ酸50%
耐薬性3:水酸化ナトリウム30%
表1及び表2の気孔径、気孔率及び硬度は、次の測定法に基づいている。
(気孔径の測定)
試料の切断面に対して走査電子顕微鏡にて観察し、倍率200倍の視野において、大きいものから20個の気孔をピックアップし、それぞれの短径を測定し、その平均値として求めた。
(気孔率の測定)
試料の見掛けの体積と真体積を測定することにより次式にて算出される。見掛け体積は、多孔質弾性体の外径寸法より算出され、真体積は乾式自動密度計((株)島津製作所製ACCUPIC1330)により測定した。
気孔率(%)=〔(V1−V2)/V1〕×100
V1:見掛け体積、V2:真体積
(硬度の測定)
試料を恒温環境におき約25℃とした上で、ゴム硬度計(高分子計器社製アスカーゴム硬度計Cタイプ)により、表面の硬度を測定した。
(耐熱性の評価)
試料を100℃環境に24時間おき、外観変化及び寸法変化、さらには同温度下にて屈曲操作を繰り返すことによる状態観察をもって評価した。寸法変化については、5%以内にあることを許容値として目安とした。
(吸排液性の評価)
試料の表面に、イソプロピルアルコール(IPA)を滴下した際に速やかに吸収されることのほか、同含有状態から、圧縮操作をもって容易に給液(排出)されることを目安とした。吸収の指標としては、液体が試料に接触後、3秒以下にて完全に吸収されること、給液性(排液性)の指標としては、サンプルを液体飽和状態としたのち圧縮脱液を行い、吸液量に対する排出液量を測定することにより次式にて算出される。これを排出率とし、40%以上にあることを評価基準とした。
排出率(%)=〔W3/(W2−W1)〕×100
W1:吸液前サンプル重量(乾燥)、W2:吸液後サンプル重量(飽和)、W3:排出 液重量
○:上記指標に照らして、満足のいく吸液性・給液性が得られた。
×:上記指標に照らして、満足のいく吸液性・給液性が得られなかった。
(液切り性の評価)
ダミーワークとするSUS板上面に対してIPAを全面に塗布し、濡れた状態とした上で試料を押し当て、離した時のSUS板上面の状態を目視にて観察し、液切特性とした。 IPAの残存状態および量をもって相対的に比較した。
○:目視にて、満足のいく液切り性が得られた。
△:目視にて、SUS板上面にIPAが部分的に残存した。
×:目視にて、満足のいく液切り性が得られなかった。
(塗布性能の評価)
ダミーワークとするSUS板上面に対してIPAを飽和状態に含ませたローラーを輪転させ、ローラー通過後のSUS板上面の状態を目視にて観察し、塗布特性とした。定性評価としては同IPAの残存状態をもって相対的に比較した。
○:目視にて、一様にIPAが残存した。
△:目視にて、IPAの残存量が少なかった。
×:目視にて、IPAの残存量が極端に少なかった。
(耐薬性の評価)
試料を指定の薬剤に浸漬し、常温環境下にて1週間浸漬したのち、試料を十分に水洗リンスし、さらに乾燥(80℃、10時間)処理を施したあとに、室温まで冷却後に引張破断強度を測定した。薬液浸漬前の強度との比較をもって、強度保持率が80%以上にあることを耐性基準とした。
○:強度保持率が80%以上にあり、満足のいく強度が得られた。
×:強度保持率が80%を越えて低下した。
〔評価結果の考察〕
実施例1〜9の弾性多孔質体は70%又は60%の気孔率を示しているところから、見かけ体積の半分以上が気孔で占められている。そのため、気孔での液体保持量が非常に多くなる。このことは、吸液性すなわち液切り性、及び、給液性すなわち塗布性を高める観点から好ましいことである。また、吸液性や給液性に影響を及ぼす気孔径の値は、実施例8及び実施例9に比べて実施例1〜7が小さい。このことは、実施例1〜7の弾性多孔質体が吸液性(液切り性)の要求される用途で優れた特性を示すことを表している。その反面で、気孔径の値が実施例1〜7に比べて大きな実施例8及び実施例9の弾性多孔質体は給液性(塗布性)の要求される用途で優れた特性を示すことを表している。
さらに、実施例1〜9の弾性多孔質体について、アスカーCタイプでのゴム硬度は15〜30であり、ワークの表面に弾性多孔質体が押し付けられたときに、弾性多孔質体がワークの表面に沿ってよく馴染み、ワークの表面に対する給液や吸液の性能の安定性が保たれやすくなるという性質を発揮し得る50以下に収まっている。したがって、これらの多孔質体は、ワークの表面に対する給液や吸液のために必要な性能安定性を備えている。
次に、実施例1の弾性多孔質体は、100℃環境下での外観変化及び寸法変化、同温度下にて屈曲操作を繰り返すことによる状態観察の評価のみに難点がある。しかし、このことをもって実施例1の弾性多孔質体の使用が不可能になるというものではない。たとえば、冒頭で説明したプリント基板の製造工程でも、最終的な乾燥工程以外の工程では、それほどの耐熱性が要求されないために十分に使用可能であると判断した。
実施例3、実施例6、実施例7の弾性多孔質体は、イソプロピルアルコール(IPA)の塗布性のみに難点が見られる。しかし、このことをもって実施例3、6、7の各弾性多孔質体の使用が不可能になるというものではない。たとえば、冒頭で説明したプリント基板の製造工程の中のフォトレジスト塗布工程での使用に難点があるだけであって、その他の工程では十分に使用可能であると判断した。
実施例1〜9の弾性多孔質体は、いずれも耐薬性1〜3に関して良好な評価が得られた。このことから、これらの弾性多孔質体は、今後予想されるさらに厳しい薬剤環境での使用にも適合し得るものと考えられる。
比較例2については、熱可塑性ではないフッ素樹脂の加硫により架橋と耐熱性の両方を得ることができるけれども、清浄度の点で難点があった。
比較例3については、ゴム硬度が85であり、液切り性、塗布性の両方で難点があった。

Claims (2)

  1. 主成分としてのフッ素系樹脂と気孔形成剤とを混合して加熱成形を行うこと、気孔形成剤を抽出除去すること、とをこの順に行うことにより、3次元網目構造の骨格を有して隣接する気孔が互いに連通している弾性多孔質体の製造方法であって、
    主成分としてのフッ素系樹脂が、フッ素エラストマー単独であるか、もしくは、フッ素樹脂と複合されていて、気孔形成剤が、無機塩類及び多価アルコールを含み、
    加熱成形した後であって気孔形成剤を抽出除去する前に、又は気孔形成剤を抽出除去した後に、低酸素もしくは無酸素状態での環境、又は、不活性ガス環境にて放射線架橋行うことを特徴とする弾性多孔質体の製造方法。
  2. 主成分としてのフッ素系樹脂と気孔形成剤とを混合して加熱成形したものを、粉砕もしくはペレット化し、再混合を行った上で再度の加熱成形を行うこと、気孔形成剤を抽出除去すること、とをこの順に行うことにより、3次元網目構造の骨格を有して隣接する気孔が互いに連通している弾性多孔質体の製造方法であって、
    主成分としてのフッ素系樹脂が、フッ素エラストマー単独であるか、もしくは、フッ素樹脂と複合されていて、気孔形成剤が、無機塩類及び多価アルコールを含み、
    加熱成形した後であって気孔形成剤を抽出除去する前に、又は気孔形成剤を抽出除去した後に、低酸素もしくは無酸素状態での環境、又は、不活性ガス環境にて放射線架橋行うことを特徴とする弾性多孔質体の製造方法。
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