JP4978829B2 - フッ素樹脂多孔体の製造方法 - Google Patents
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溶融成形性フッ素樹脂の多孔体の製造方法において、当該溶融成形性フッ素樹脂が、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン及びエチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素樹脂であり、当該溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、及び無機微粉末5〜30質量%からなる組成物を溶融成形してその成形体を得る第1工程、ついで当該成形体より前記溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末を抽出して、溶融成形性フッ素樹脂の多孔体を得る第2工程、及び当該多孔体を、当該溶融成形性フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で熱処理する第3工程からなることを特徴とする溶融成形性フッ素樹脂多孔体の製造方法。
前記溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末に、更に耐熱性有機液状体を、当該溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末の合計100質量部に対して5〜45質量部混合する〔1〕に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
前記溶融成形性フッ素樹脂多孔体が、チューブ、パイプ及び中空糸から選択される中空管、フィルム又はシートである〔1〕又は〔2〕に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
本発明においては、基本的に、まず溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末からなる組成物を溶融成形した後多孔質化する。
本発明で使用する溶融成形性フッ素樹脂(以下、単に「フッ素樹脂」と称することがある。)としては、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「ETFE」と略記することがある。以下、同様)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(PFA)(但し、パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18である。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)等のテトラフルオロエチレン系フッ素樹脂;ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体(ECTFE)等のクロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂等が挙げられる。これらのフッ素樹脂は単体で、またはその混合物として使用することができる。
ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と称する。)に基づく繰返し単位/エチレンに基づく繰返し単位のモル比が、好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは65/35〜40/60、最も好ましくは60/40〜40/60である。
また、FEPとしては、TFEに基づく繰返し単位/ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰返し単位のモル比が、好ましくは98/2〜50/50、より好ましくは95/15〜60/40、最も好ましくは90/10〜75/25である。
本発明における溶融成形性フッ素樹脂は、これを中空体やフィルム等の形態に溶融成形した後、多孔質化するものであるが、適度の溶融成形性を有するためには、そのメルトインデックス値(MI)は、0.5〜40のものが好ましく、さらに好ましくは1〜30である。MIは樹脂の溶融成形性の尺度であり、一般的に、MIが大きいとポリマー分子量は小さくなり、MIが小さいとポリマー分子量は大きくなる。
本発明において、上記溶融成形性フッ素樹脂に配合して用いられる溶剤可溶性樹脂とは、成形体を形成後にその溶剤で抽出処理することにより、当該成形体内に空孔を形成して多孔質化するものである。したがって、当該溶融成形性フッ素樹脂をマトリックスとして、フッ素樹脂内に細かく、かつ、良好に分散しうるとともに、当該フッ素樹脂と高温で混練、溶融成形されることから、耐熱性を有することが要求される。
本発明において、溶剤可溶性樹脂とともに、溶融成形性フッ素樹脂に配合して用いられる無機微粉末も、成形体の形成後にその溶剤で抽出処理されることにより、当該成形体内に空孔を形成して多孔質化するものであるが、当該溶剤可溶性樹脂のフッ素樹脂中における分散性を高めると共に、より均一な多孔構造の形成に寄与し、さらに無機微粉体それ自身の抽出による空孔形成を重畳することにより、多孔体全体としての空孔率の増加、及び機械的強度の維持に寄与する機能を有するものである。
本発明においては、上記した溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末からなる組成物を基本的コンパウンドとして溶融成形するものであるが、その組成割合(混合割合)は、溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、無機微粉末5〜30質量%の範囲が好ましい。
本発明においては、溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末からなる組成物に、所望により、更に耐熱性有機液状体を混合することも好ましい。耐熱性有機液状体を混合することにより、当該組成物を溶融成形した成形体を、多孔質化して得られる多孔体の多孔構造の均一性をより向上させることができる。すなわち、これら耐熱性有機液状体は、通常溶剤可溶性樹脂の抽出時に共に抽出され、より均一な多孔質化に寄与すると推定される。
本発明においては、上記のごとくして得た、溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、及び無機微粉末5〜30質量%からなる溶融成形性フッ素樹脂組成物(以下、単に「フッ素樹脂組成物」ともいう。)を溶融成形してその成形体を得る(第1工程)。
以上第1工程において形成したフッ素樹脂組成物の成形体を、溶剤処理し、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末を抽出して多孔質化し、当該フッ素樹脂の多孔質成形体(先に定義したように、単に「フッ素樹脂多孔体」ということもある。)を得る抽出工程(第2工程)、すなわち多孔質化工程が実施される。
本発明においては、第2工程の抽出処理により多孔質化された、フッ素樹脂多孔質成形体は、当該溶融成形性フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で熱処理され、機械的強度を向上せしめられる。なお、本発明において、融点はJISK7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、DSC220C)を用いて、昇温速度10℃/分で測定される値である。
ASTM D3159−98に準拠し、タカラ工業社製メルトインデクサーを用いて、297℃で測定した。
(b)〔ガラス転移温度(Tg(℃))の測定〕
JIS K 7244−4 に準拠し、動的粘弾性測定装置(「レオログラフ・ソリッド」、東洋精機製作所製)を使用して、測定周波数:10Hzで測定した。
フッ素樹脂多孔体の多孔度(空孔率ともいう。)ε(%)は、次式(1)を使用して求めた。
ε=[(d−d')/d]×100 (1)
ここで、d=溶融成形性フッ素樹脂の真比重、d'=溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末抽出後の多孔体の見かけ比重を表す。
成形体が多孔質中空管である場合の引張強度は、当該多孔質中空管のサンプルをチャック間25mm、速度50mm/分で引張ったときの破断強さを、引張り前の見かけの断面積で除した値を引張強度とした。
また成形体が多孔質シートである場合の引張強度は、1mm厚の多孔質シートを、ASTM D638−00に準じ、ダンベル形状5、チャック間25.4mm、速度50mm/分で引張ったときの破断強さを、引張り前の見かけの断面積で除した値を引張強度とした。
(1)溶融成形性フッ素樹脂として、300℃におけるメルトインデックス値(MI)が3.8であるエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下「ETFE」ともいう。)(フルオンC−88AX、旭硝子社製、Tg=93℃、Tm=260℃)1200gと、溶剤可溶性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーT−#1100、 クレハ社製) 1800g、無機微粉体として無水シリカ(AEROSIL OX50、日本アエロジル社製、1次粒子平均粒子径40nm)750gを、二軸押出機を用いて成形温度280℃で溶融混練してそのペレットを得た。なお、ETFE/ポリフッ化ビニリデン/無水シリカの質量比は、32/48/20であった。
実施例1において、80℃、24時間の予備乾燥(予備熱処理)して得られた、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質中空管を、230℃における熱処理を実施しないで、その物性を測定した結果を表1に示した。
(1)溶融成形性樹脂として実施例1で使用したものと同一のエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(フルオンC−88AX、旭硝子社製)10.9g、溶剤可溶性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーT−#1100、 クレハ社製)7.9g、無機微粉体として無水シリカ(AEROSIL OX50、日本エアロジル社製、1次粒子平均粒子径40nm)3.3g、及び耐熱性有機液状体としてクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(ダイフロイル#1、ダイキン社製)5.2gを、東洋精機製ラボプラスミルを使用して、加工温度300℃で10分間溶融混練して混合し、同300℃で5分間プレス加工を行い、成形体として1mm厚のシートを作成した。なお、ETFE/ポリフッ化ビニリデン/無水シリカ/クロロトリフルオロエチレンオリゴマーの質量比は、49.4/35.8/14.8/23.5であった。
(3)この多孔質シートを、熱風式ギアオーブンを使用して120℃で24時間の熱処理を行い製品多孔質シートが得られた。当該熱処理温度120℃は、ETFEのガラス転移温度Tg(90℃)以上で、融点Tm(260℃)より低い温度として選択されたものである。当該多孔質シートの物性(多孔度と引張強度)を測定した結果を表2に示した。
実施例2において、80℃、24時間の予備乾燥(予備熱処理)して得られた、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを、120℃における熱処理を実施しないで、その物性を測定した結果を表2に示した。
(1)溶融成形性樹脂として実施例2で使用したものと同一のエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(フルオンC−88AX、旭硝子社製)12.6g、溶剤可溶性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーT−#1100、 クレハ社製)14.7g、無機微粉体として無水シリカ(AEROSIL OX50、日本エアロジル社製、1次粒子平均粒子径40nm)4.2g、及び耐熱性有機液状体としてクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(ダイフロイル#1、ダイキン社製)10.5gを用いる以外は実施例2と同様に1mm厚のシートを作成した。なお、ETFE/ポリフッ化ビニリデン/無水シリカ/クロロトリフルオロエチレンオリゴマーの質量比は、40.0/46.7/13.3/33.3であった。
抽出処理された多孔質シートを、水洗し、実施例2と同様にして、80℃において、24時間予備乾燥(予備熱処理)してエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを得た。
実施例3において、80℃、24時間の予備乾燥(予備熱処理)して得られた、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを、当該120℃における熱処理を実施しないで、その物性を測定した結果を表2に示した。
Claims (3)
- 溶融成形性フッ素樹脂の多孔体の製造方法において、当該溶融成形性フッ素樹脂が、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン及びエチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素樹脂であり、当該溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、及び無機微粉末5〜30質量%からなる組成物を溶融成形してその成形体を得る第1工程、ついで当該成形体より前記溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末を抽出して、溶融成形性フッ素樹脂の多孔体を得る第2工程、及び当該多孔体を、当該溶融成形性フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で熱処理する第3工程からなることを特徴とする溶融成形性フッ素樹脂多孔体の製造方法。
- 前記溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末に、更に耐熱性有機液状体を、当該溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末の合計100質量部に対して5〜45質量部混合する請求項1に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
- 前記溶融成形性フッ素樹脂多孔体が、チューブ、パイプ及び中空糸から選択される中空管、フィルム又はシートである請求項1又は2に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
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