JP2003192815A - フッ素樹脂の硬質多孔質成形体 - Google Patents
フッ素樹脂の硬質多孔質成形体Info
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Abstract
連続孔を有する多孔質フィルムや多孔質中空糸のごとき
硬質の多孔質成形体を提供する。 【解決手段】 ETFE、PFA、FEP、PCTF
E及びECTFE等の溶融成形性のフッ素樹脂を延伸し
てなる連続孔を有する硬質の多孔質成形体が提供され
る。当該成形体は、例えば、この溶融性フッ素樹脂に無
機充填剤を配合した原反を延伸して得られた空孔率20
%以上のものであるか、弾性回復率30%以上の特性を
有するETFEからなる原反を延伸して得られた空孔率
15%以上の多孔質中空糸である。
Description
フルオロエチレン系共重合体のような溶融成形性のフッ
素樹脂を延伸して得られる連続孔を有する多孔質フィル
ムや多孔質中空糸のごとき硬質の多孔質成形体に関す
る。
からなる多孔質フィルムや多孔質中空糸等の多孔質成形
体は、所望の微細孔を有し、かつ安価、軽量であり、半
導体製造工程における洗浄用薬品や気体中の微粒子の分
離、醸造品の無菌分離、血液製剤中のビールス除去、血
液の透析、海水の脱塩等の精密な濾過膜や分離膜とし
て、又は電池のセパレータ等として、様々な分野で広く
使用されている。
性、耐溶剤性、耐熱性等のフィルター材料として好適な
特性を有することから、その多孔質成形体について、多
くの検討がなされているが、現在、実用化されている多
孔質フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン
(以下、PTFEと略記する。)がほとんど唯一のもの
である。
パウダーをカレンダー成形した予備成型品を延伸するこ
とにより比較的容易にフィブリル化し、微細孔を有する
高多孔質のPTFEフィルムが得られる。当該PTFE
のフィルター膜は、血液成分分析、血清、注射薬の除菌
等臨床医学分野、LSIの洗浄水や洗浄薬品中の微粒子
除去等の半導体産業分野、大気汚染検査等の公衆衛生分
野等で好適に使用されており、また、PTFEは、強い
撥水・撥油性を有することから、その微細孔が水蒸気は
通すが水滴は遮断すると喧伝されている著名な通気性防
水布として、産業分野のみならず、一般の防水衣料の分
野でも広く使用されている。
は、その材質に由来して比較的軟質であるため、耐クリ
ープ性が充分でなく、巻回すると潰れが生じ、濾過性が
低下するという問題がある。また、PTFEは、溶融粘
度が極めて高く、一般のポリオレフィン系樹脂で用いら
れている押出成形、射出成形等の溶融成形が困難である
という問題もある。従って、当該成形体の形態は、フィ
ルム状等に限定され、用途に応じた任意の形態、例えば
中空糸等の形態とすることは、一般には困難である。
その多孔質フィルムを、炭酸カルシウム等の無機充填剤
を添加して溶融混練して得た原反を延伸する多孔化手段
を適用することにより容易に製造しうることが広く知ら
れている。しかるに、これをPTFE以外の溶融成形可
能なフッ素樹脂に適用し、この多孔質成形体とすること
は、当然試みられることであると予想されるが、すでに
述べたように、かかる試みは実際上、ほとんどなされて
いないのが実状である。
反自体が、基本的に延伸性が悪いものであり、これを通
常の手段で、均質に延伸するのは困難だからである。従
来、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン
樹脂においては樹脂自体が容易に延伸することができ、
その際、配合された無機充填剤は、樹脂界面で剥離を生
じることにより容易に微細孔を形成する(所謂開繊核剤
である)。しかるに、当該フッ素樹脂では、これがそも
そも均一に延伸され難い樹脂であるため、無機充填剤を
加えた場合、フィルムのある領域は多孔化される一方、
残りの部分は全く多孔化されない。また多孔化される部
分も、極めて不均質に延伸されるため、マクロな孔とな
ってしまう。そして、甚だしい場合は、その部分から裂
けて破断したりするため、到底好ましい粒径分布を有す
る微細孔からなる多孔体は得られないためであると考え
られる。
ッ素樹脂の原反を延伸させる場合、当該原反を単体で延
伸するのでなく、これを、それ自身容易に延伸される易
延伸性のフィルムでサンドイッチして積層フィルムと
し、当該積層フィルムを、その外層を形成する易延伸性
のフィルムを主体として延伸させれば、芯層(コア層)
となっている対象フッ素樹脂の原反は、外層の易延伸性
フィルムに引っ張られて強制的に追随して延伸され、結
果として均一に延伸されることを見いだした。
スト法と称することがある。)に基づけば、無機充填剤
を添加した溶融成形性のフッ素樹脂についても、単体延
伸と全く異なり、きわめて均一に延伸が行われるため、
当該開繊核剤たる無機充填剤の界面剥離による微細孔形
成作用が、原反の全表面において均質に行われ、微細孔
が均一に分布したフッ素樹脂の多孔質成形体が得られる
ことを発見した。本発明はかかる知見によりなされるに
至ったものである。
ば、溶融成形性のフッ素樹脂を延伸してなることを特徴
とする連続孔を有する硬質の多孔質成形体、が提供され
る。
(以下、単にフッ素樹脂と称することがある。)として
は、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以
下、ETFEと略記することがある。以下、同様)、テ
トラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニル
エーテル)系共重合体(PFA)(但し、パーフルオロ
アルキル基の炭素数は、1〜18程度であるものが好ま
しい。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプ
ロピレン系共重合体(FEP)等のテトラフルオロエチ
レン系フッ素樹脂;ポリクロロトリフルオロエチレン
(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレ
ン系共重合体(ECTFE)等のクロロトリフルオロエ
チレン系フッ素樹脂等が好ましいものとして挙げられ
る。また、これらのブレンドや上記単量体成分のさらな
る共重合体でもよい。
FEやFEPが好ましく、これについてさらに詳しく述
べれば以下のとおりである。
ラフルオロエチレン(以下、TFEと称する。)/エチ
レンに基づく重合単位のモル比が、好ましくは70/3
0〜30/70、より好ましくは65/35〜40/6
0、最も好ましくは60/40〜40/60の共重合体
である。
FE/ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位のモ
ル比が、好ましくは98/2〜50/50、より好まし
くは95/15〜60/40、最も好ましくは90/1
0〜75/25の共重合体である。
チレンの他に、又はTFE及びヘキサフルオロプロピレ
ンの他に、少量の共単量体に基づく重合単位を含んでい
てもよい。これらの共単量体としては、CF2=CFC
l、CF2=CH2などのTFEを除くフルオロエチレン
類;CF2=CFCF3、CF2=CHCF3などのフルオ
ロプロピレン類;CF3CF2CF2CF2CH=CH2、
CF3CF2CF2CF2CF=CH2などの炭素数が4〜
12のフルオロアルキル基を有する(パーフルオロアル
キル)エチレン類;Rf(OCFXCF2)mOCF=C
F2(式中Rfは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル
基、Xは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基、m
は、0〜5の整数を表す。)などのパーフルオロビニル
エーテル類;CH3OC(=O)CF2CF2CF2OCF
=CF2やFSO2CF2CF2OCF(CF3)CF2OC
F=CF2などの容易にカルボン酸基やスルホン酸基に
変換可能な基を有するパーフルオロビニルエーテル類;
プロピレンなどのC3オレフィン、ブチレン、イソブチ
レンなどのC4オレフィン等のエチレンを除くオレフィ
ン類などが挙げられ、これら共単量体は、単独で又は2
種以上組み合わせて含むこともできる。
する場合は、その含有割合は、通常ETFE又はFEP
の重合単位全体に対して、好ましくは30モル%以下、
より好ましくは0.1〜15モル%、最も好ましくは
0.2〜10モル%である。
樹脂のメルトインデクス値(MI)は、0.1〜30、
好ましくは1〜20である。MI値がこれより高くなる
と高延伸倍率での延伸を行うことが困難となり、また、
MI値がこれより小さくなると、溶融粘度が高すぎて押
出機から安定した吐出を行うことが困難になる。
に無機充填剤を配合してえられる原反を延伸する。
たフッ素樹脂との間で界面剥離を起こし、微細な透孔
(ボイド)を多数形成しうるものであれば、従来公知の
ものがいずれも使用可能であり、特に限定するものでは
ない。例えば、
マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、
炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫
酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグ
ネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マ
グネシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。これら
のなかでは、特に無水シリカが好ましい。
するために、30〜0.01μm、好ましくは20〜
0.02μm、さらに好ましくは10〜0.03μm程
度である。
率を確保し、かつ、延伸性や成形性を損なわない範囲で
選択され、通常フッ素樹脂:無機充填剤の質量比として
90/10〜40/60、好ましくは85/15〜50
/50程度である。なお、これら無機充填剤は、フッ素
樹脂中への分散性を向上させるため、常法に従いその粒
子表面を適当なカップリング剤等の表面処理剤で処理し
てもよい。
無機充填剤を適当な粉体混合機、例えばV型混合機、二
重円錐混合機、リボン型混合機、短軸ローター型混合
機、タービン型混合機、ヘンシェルミキサー、ハイスピ
ードミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー
等に投入して混合した後、一軸又は二軸押出機を用い
て、混練し、ペレット化する。又は、各々独立したフィ
ーダーから定量的に一軸又は二軸押出機に上記各材料を
投入してもよい。
フッ素樹脂の融点以上、好ましくは融点+20℃以上の
温度で、かつ、分解温度未満の温度において、フラット
ダイやTダイが装着された押出成形機により溶融、製膜
することにより、無機充填剤含有フッ素樹脂フィルムが
得られるのである。
の多孔質フィルムは、かくして得られた無機充填剤含有
フッ素樹脂フィルム(以下、単に「原反フィルム」と称
することがある。)を、特定の条件下で延伸することに
より得られる。なお、原反フィルムの厚みは、通常10
〜1000μm、好ましくは30〜500μm、さらに
好ましくは50〜250μm程度である。
明する。図1は、この延伸工程の一例をモデル的に示す
説明図であり、主として、原反フィルムとアシストフィ
ルムの積層体を形成する第I工程と、当該積層体を延伸
する第II工程と、及び延伸後アシストフィルムを剥離等
で除去する第III工程からなる。
も片面、好ましくは両面に、延伸をアシストすべきアシ
ストフィルム20,20'を積層し、原反フィルム/ア
シストフィルム積層体(以下、「原反フィルム積層体」
と称する。)30を形成する工程である。
体30を形成することが、本発明で目的とする、通常は
延伸し難い溶融成形性のETFE等のフッ素樹脂フィル
ムを無水シリカ等の無機充填剤を含有した状態でスムー
スに延伸し、多孔化するためのポイントになる。
なり、当該アシストフィルム20,20'が、コア層と
なる原反フィルム10に強固に接着又は熱融着し、最終
製品としての積層シートを形成することを目的とするも
のではない。基本的には、コア層に積層されたアシスト
フィルムは、ある程度の界面接着力(又は、界面剪断強
度)で当該コア層と重なり合っていればよく、次の延伸
工程において、外表面を形成する当該アシスト層が、延
伸装置のロール、ガイドレール、クリップ等により把持
されて延伸を受ける場合、両層の界面がすべってコア層
/アシスト層の両層がそれぞれ独立に動くことがなく、
コア層の原反フィルムを当該外層であるアシスト層の延
伸に強制的に追随せしめることができる程度のものでよ
いのである。
びアシストフィルムを構成する樹脂の種類、厚み、目的
とする延伸倍率等により決定される。
種々の方法により行うことができる。例えば、(1)別
々に調製した、原反フィルム10とアシストフィルム2
0,20'を重ねて熱プレス機により、又は熱ロールを
通して加熱圧着する熱ラミネーション法を用いることが
できる。また、(2)無機充填剤含有フッ素樹脂とアシ
ストフィルムを形成すべき樹脂を多層ダイ内で溶融し、
積層フィルムとして押し出す共押出ラミネーション法を
用いることもできる。当該多層ダイの場合、フッ素樹脂
とアシストフィルムとを積層する位置は、ダイ内であっ
ても、ダイ外であってもよく、さらに前者の場合は、ダ
イの構造は、シングルマニホールドであっても、マルチ
マニホールドであってもよい。さらに(3)原反フィル
ムをあらかじめ調製し、当該フィルム上に、アシストフ
ィルムを形成する樹脂を押出機によりフィルム状に押出
して圧着させる押出ラミネーション法を用いることも可
能である。なお、熱プレス等により加熱圧着させる場合
は、ホットメルト接着剤等の適当な接着剤を両層間に介
在させて接着力を調整することもできる。
する場合は、層間の接着力を強めるため、基材であるフ
ィルムの表面をあらかじめコロナ放電処理等の表面処理
することが行われるが、本発明における原反フィルム積
層体においては、延伸後に、アシストフィルムは、容易
に剥離できるものであることが好ましいので、通常これ
らの前処理は必要ではない。
使用できる樹脂は、基本的にそれ自身で、容易に単体延
伸(より詳しくは、例えば単体二軸延伸)が可能である
樹脂から選択され、かつ、コアとなる原反フィルムよ
り、融点(mp)もしくはガラス転移点(Tg)が、低
いものが好ましい。
きる樹脂としては、特に限定するものではないが、たと
えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエ
チレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボ
ネート(PC)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66
(PA66)、ポリスチレン(PS)、ポリα−メチル
スチレン(PαMS)、ポリアクリロニトリル(PA
N)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(P
VAC)、ポリブテン(PB)、塩素化ポリエチレン
(CPE)、エチレン塩化ビニル共重合体(EVC)、
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリメチルメ
タクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(P
VAL)等が挙げられ、なかでもPET、PE、PP、
PC及びPA6が好ましい。これら樹脂から形成される
アシストフィルムは、未延伸フィルムであることが好ま
しい。アシストフィルムの厚みは50〜2000μm程
度である。
て第I工程で形成された原反フィルム積層体を延伸する
延伸工程である。
として、原反フィルム積層体30の延伸温度への予熱4
1、延伸43、熱処理45による熱固定(安定化)の各
工程からなる。
に予熱される。予熱温度(延伸温度)は、一般的に、原
反であるフッ素樹脂フィルム及びこれに組み合わせられ
るアシストフィルムのガラス転移点以上、融点以下の適
当な温度が選択されるが、少なくとも250℃以下、好
ましくは20〜200℃、より好ましくは50〜200
℃、更に好ましくは60〜160℃である。例えば、原
反フィルムとしてETFEを使用し、アシストフィルム
として、PETフィルムを組み合わせた場合は、80〜
120℃程度である。なお、予熱は、当該原反フィルム
積層体を熱ロールに接触させることによって行うことも
できるし、または、熱風、赤外線ヒータ等の照射によっ
て行うこともできる。
で、それ自身公知の方法によって行うことができ、特に
限定するものではないが、同時二軸延伸又は逐次二軸延
伸によって行うことが好ましく、同時二軸延伸が最も好
ましい。
行方向(MD方向)の延伸)とヨコ方向(すなわちフィ
ルムの進行方向と直角な方向(TD方向)の延伸)を同
時に行うものであり、通常、後記する逐次二軸延伸とは
ややメカニズム的に異なった装置が使用される。すなわ
ち、ガイドレールにより原反フィルム積層体を移動させ
ながら、所定の形状に配置されたテンタで当該ガイドレ
ールを開いて横方向の延伸を行うと同時に、タテ方向の
間隔が開くパンタグラフ式機構のクリップにより縦方向
の延伸を同時に行うものが基本である。
を行い、引き続いてヨコ延伸を行うものである。当該タ
テ延伸の典型的な手段は、延伸ロールを使用するもの
で、低速度回転ロールを上流側に、高速度回転ロールを
下流側に配置し、予熱された原反フィルム積層体を、こ
のロールを通すことにより両ロールの周速度の差を利用
して、原反フィルム積層体の進行方向に張力を印加し、
タテ方向に延伸させるものである。引き続いてヨコ延伸
では、基本的には、すでに述べたと同様のテンタにより
当該フィルム積層体をヨコ方向に延伸する。
ルムの厚さ、種類、目的とする多孔化フィルムの厚み、
空孔率、無機充填剤の含有量等によって変わりうるが、
通常、タテ2〜15倍、ヨコ2〜15倍、好ましくはタ
テ2〜6倍、ヨコ2〜6倍程度である。
積層体は、そのまま冷却することも可能であるが、延伸
温度より高い温度で熱処理して、残留応力を緩和し、寸
法安定性を向上させることも好ましい。
素樹脂フィルムの融点以下〜延伸温度の範囲が好まし
く、融点より10℃程度低い温度〜延伸温度より20℃
高い温度の範囲がより好ましい。また、熱処理時間は、
0.1〜60分程度が好ましい。例えば、ETFEフィ
ルムの場合は、200〜140℃において、0.2〜1
0分間熱処理することが望ましい。
(延伸された)アシストフィルム60,60'を、コア
シートから機械的に剥離して除去することにより、多孔
化されたフッ素樹脂フィルム50が得られる。
ルムの種類によっては、アシストフィルムが容易にはコ
アであるフッ素樹脂フィルムから剥離することができな
い場合があるが、その場合は、当該アシストフィルム
は、その溶剤により溶解せしめて除去することができ
る。
合した原反フィルムを延伸することにより、その多孔質
成形体として、空孔率20〜90%、好ましくは30〜
70%程度の連続孔を有するフッ素樹脂多孔質フィルム
が得られる。
の一例を示すもので、後記実施例1における、ETFE
に無水シリカを配合、延伸して得られた多孔質ETFE
フィルムの表面状態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)
写真であり、その表面はスポンジ状に無数の微小孔で多
孔化されていることがわかる。
μm、好ましくは1〜200μm程度である。また、当
該多孔質フィルムの平均孔径は0.01〜10μm、好
ましくは0.05〜5μm程度である。
してなる多孔質フッ素樹脂フィルムは、後記実施例1の
結果を示す図3に示されているように、その空孔径分布
は、図4に示した従来の多孔質PTFEフィルムの空孔
径分布に比較してずっとシャープであり、半導体分野、
クリーンルーム、血液成分分離の分野で、シャープな分
画特性を発現させることが期待でき、より精密なフィル
ター用分離膜等に適している多孔体である。
うに、当該多孔質フィルムは、PTFEフィルムと比較
して、引張弾性率が高く、PTFEよりはるかに硬質の
多孔体であり、巻回した場合でもずっと潰れ難いフィル
ター材料等を形成することとができる。
の空孔率(多孔度)ε(%)は、次式(1)で求められ
る。
ムの真比重、d'=延伸後の無機充填剤含有多孔質フィ
ルムの見かけ比重を表す。
/dfil)であり、dresはフッ素樹脂の真比重、dfil
は無機充填剤粒子の真比重、Xは無機充填剤含有フィル
ム中の無機充填剤の質量分率である。
は、基本的には、開繊核剤として使用した無機充填剤の
粒子が残存している。
ことができるが、所望により、当該無機充填剤を多孔質
フィルムから除去し、空孔率をさらに向上させることも
可能である。この除去は、比較的容易であって、当該無
機充填剤粒子を溶解しうる溶剤によって、当該多孔質フ
ィルムを処理すればよい。例えば、無機充填剤が無水シ
リカ場合は、フッ化水素酸(フッ酸)中に、この多孔質
フィルムを浸漬することにより、シリカは容易に溶解除
去されるのである。
しない多孔質フッ素樹脂フィルムの空孔率(多孔度)ε
(%)は、次式(2)で求められる。
d'=延伸後の無機充填剤を除去した多孔質フィルムの
見かけ比重を表す。
無機充填剤を配合し、延伸して得られる空孔率20%以
上の多孔質フィルム等の多孔質成形体について説明した
が、本発明者らは、さらに、当該フッ素樹脂が特にET
FEの場合には、特定の条件を選択することにより、そ
の多孔質中空糸を無機充填剤を使用することなく形成す
ることができることをも見出した。
復率30%以上の特性を有するエチレン−テトラフルオ
ロエチレン系共重合体からなる原反を延伸して得られる
空孔率15%以上の多孔質成形体、特に多孔質中空糸が
提供される。
TFEの多孔質中空糸を製造する工程について説明す
る。
ように、紡糸工程(第1工程)、熱処理工程(第2工
程)及びこの中空糸の延伸工程(多孔化工程)(第3工
程)からなる。
ETFE110は、押出成形機120中で溶融され、二
重管構造を有する円環ダイス123から中空状に吐出さ
れ、引取ロール125により比較的高いドロー比におい
て引き取られ、繊維の軸方向に高度に配向した結晶性の
未延伸中空糸130が得られる。
て、多孔化しやすくするため、C3やC4オレフィン等
の第3共単量体を含む3元系のETFEは望ましくな
く、エチレンとTFEから実質的になる所謂2元系のE
TFEが好ましい。
(MI)は、0.5〜20、好ましくは1〜10程度で
ある。MI値がこれより高くなると、次の延伸工程にお
いて高い延伸倍率を得ることが困難となり、MI値がこ
れより小さいと溶融粘度が高すぎて、安定した紡糸が困
難になるため好ましくない。
を得るためETFEの融点より、20〜150℃程度高
い温度とする。また、ドロー比は、引き取られた中空糸
の厚みで、円環ダイスのリップ厚みを除した値である
が、3〜150、好ましくは5〜100程度とすること
が望ましい。ドロー比がこれよりあまり小さいと充分に
高配向の未延伸中空糸が得られず、ドロー比がこれより
あまり大きいと、所望の延伸倍率を実施することが困難
になる。
り、上記繊維軸方向に高度に配向した未延伸中空糸13
0は、高温槽150内にセットされ、熱処理に付される
ことにより、再結晶化し、結晶構造がより完全なものと
なり、延伸に適した状態となる。高温槽の熱源は、熱風
や電気炉等が使用される。
ましくは150〜260℃程度である。熱処理時間は温
度によっても変わりうるが、通常10〜60分、好まし
くは20〜40分程度である。
糸(原反)は、この熱処理工程において、50%伸張時
の弾性回復率が30%以上となるように規定される。
(東洋精機製作所社製)を用い、クランプ間の長さ50
mm(L0)のETFE未延伸中空糸の試験片を23℃
において速度50mm/分で伸ばして50%の歪みを与
えた後、一分間そのままの状態を保持し、すぐに速度5
0mm/分で急に収縮させたとき、たるみを生ずる点、
すなわちクランプ間のシートの長さ(L1)を測定し、
次式(3)で算出された値である。
程度を表示する指標であって、これが30%未満の場合
は、再結晶化が充分でなく、次の延伸工程において延伸
しても、満足すべき多孔化行われず、空孔率15%以上
の多孔質中空糸は得られない。
以上が確保された未延伸中空糸130は、第3工程(延
伸工程)において、延伸装置160にセットされ
(a)、延伸されることにより(b)、当該結晶構造が
破壊されて多孔化され微細孔が形成される。このように
して空孔率15%以上、さらに好ましくは20%以上の
多孔質中空糸135が得られるのである。図7は、後記
実施例2で得られた多孔質ETFE中空糸の多孔化状態
を示すSEM写真の一例である。
2〜20、好ましくは1.4〜10程度である。また、
延伸温度は、基本的には、室温で行われる(所謂冷延
伸)。なお、さらに所望により、温度を上げて100〜
200℃の温度において、一回又は多数回熱延伸を行う
ことも可能である。かくして得られた多孔質中空糸は、
当該熱延伸温度においてアニール処理し寸法安定性を確
保することも好ましい。またさらに、延伸をより円滑、
均一に行うために、この中空糸の延伸の場合において
も、アシスト延伸を適用することが可能である。また、
中空糸の代わりに、ETFEからなる中実の糸やストラ
ンドにおいても、同様にして多孔化することが可能であ
る。
復率を、熱処理工程において特定の値以上になるように
規定しているため、その高結晶化が確保されている。そ
して、おそらく、その結晶粒(所謂ラメラ)とそれらの
接続(タイ)分子からなる構造を、延伸することによ
り、当該ラメラ構造を破壊し、かつ、タイ分子部分を引
き延ばし(開繊)、孔径の安定した多孔質体が形成され
るものと推定される。
るが、本発明がこれらによって制限的に解釈されるもの
ではない。以下、部とは、特に断り無き限り、質量部を
表す。
が3.8であるエチレン/テトラフルオロエチレン/C
4オレフィン3元系共重合体(アフロンCOPC−88
AX、旭硝子社登録商標)75部と、無機充填剤として
無水シリカ(AEROSIL OX50、日本エアロジ
ル社商標、1次粒子平均粒子径40nm)15部を粉体
混合機により充分混合した。
TEM−35)を用い、300℃で混練したのち、直径
2.5mmのストランドを押出し、これを長さ2.5m
mで切断してペレットを得た。
(池貝社製、VS40)に供給し、700mmの口金幅
を有するフラットダイを用い、ダイス温度333℃、押
出速度4.3kg/時間で押し出した。当該吐出物を、
表面温度が130℃になるように調整したロールに沿わ
せて0.59m/分の速度で引き取ることにより、厚さ
109μmの無水シリカ含有ETFEフィルムを得た。
シリカ含有原反フィルム、又は単にETFE原反フィル
ムと称する。)を以下の方法で二軸延伸を行い、評価用
の多孔化ETFEフィルムの試料を得た。
ETFE原反フィルムの上下に、延伸をアシストすべき
フィルムとして、210μmの未延伸ポリエステルフィ
ルム(A−PET FR−1、帝人社製)を重ねて3枚
重ねのフィルムを得た。ついで、金属ロールと厚さ10
mmのゴムを被覆したロールの一対からなるロールを用
いて、表面温度が85℃になるように調整した後、前記
3枚重ねのフィルムを、当該フィルムの幅で換算した線
圧力が40kg/cmとなるように加圧し、速度10c
m/分で積層し、3層積層フィルムを得た。得られた3
層積層フィルム(原反フィルム積層体)を90mm角に
切断して延伸用の試料を得た。
二軸延伸試験装置(二軸延伸試験装置×6H、東洋精機
製作所社製)を用い、温度95℃、予熱3分、延伸速度
2m/分の条件で、延伸前の試料の寸法に対してタテ、
ヨコ共2倍となるように、同時二軸延伸し、二軸延伸フ
ィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムを、表面温度
が40℃以下になるまで緊張下で風冷した後取り出し
た。
ムであるA−PETを剥離し、二軸延伸により多孔化さ
れた多孔質ETEFフィルムを得た。当該ETFEフィ
ルムをフッ化水素酸で処理して無水シリカを溶解除去
し、厚み65μmの多孔質ETFEフィルムを得た。こ
のシートをSEMで観察したところ、図2に示すよう
に、表面はスポンジ状に無数の微小孔で多孔化されてい
ることが認められた。
ついて、以下の測定を実施した。
ら式(2)で算出した。
638により、幅15mmの短冊サンプルをチャック間
50mm、速度50mm/分で引張ったときの破断強さ
を、引張り前の断面積で除した値を引張り強度とした。
mmの短冊サンプルをチャック間50mm、速度50m
m/分で引張り、得られた変位と荷重のチャートから初
期の10%の歪みの傾きから算出した。
Eインスツルメンツ社製)により測定した。
る代表的なフッ素樹脂の多孔質体であるPTFE製の多
孔質フィルム(平均空孔径0.1μm、厚み60μm、
ポアフロンFP−010−60、住友電工ファインポリ
マー社商標)についても同じ測定を行った。
図3及び図4に示す。なお、図3及び図4において、ヨ
コ軸は空孔径(μm)、タテ軸は空孔容積の積算分布
(m3/g)、及び空孔容積頻度分布(相対値)(%)
である。
1の多孔質ETFEフィルムは、参考例1のPTFEフ
ィルムと比較すると、空孔率が60%前後の、ほぼ同じ
ものであるが、そのフィルム強度(引張弾性率)は、約
10倍程度と、PTFEからなる多孔質フィルムよりは
るかに大きい。
は0.15μmであり、参考例1のフィルムでは0.1
μmであるので、両者同じ程度であるが、実施例1の空
孔径分布は、参考例1のフィルムのように、ブロードで
はなく、ずっとシャープに形成されていることが認めら
れる。なお、この多孔質ETFEフィルムは、これをア
ルコール中に浸漬することにより、透明化し、連続孔
(貫通孔)が形成されていることが確認された。
た多孔質ETFEフィルムの空孔率と面積延伸倍率の関
係を図5に示した。
が3.1であるエチレン/テトラフルオロエチレ2元系
共重合体(エチレン:テトラエチレン質量比=51:4
9)を口径20mmの一軸押出成形機(田辺プラスチッ
クス社製)に、外径15mm、内径11mmのパイプダ
イス(円環ダイス)を取り付け、押出速度480g/時
間で中空パイプに押し出した。
として、引取速度9.1m/分で引き落として冷却し、
外径1.47mm、内径1.09mmの中空糸を得た。
に入れ、230℃において30分間熱処理した。熱処理
した当該中空糸の弾性回復率(式(3)による測定値)
は36%であった。
℃)で50%延伸したところ、延伸した中空糸は白化し
た。当該延伸した中空糸をエチルアルコール中に浸漬し
たところ、約9分で再び透明化し、連続孔が形成されて
いることが確認された。寸法及び質量から式(2)で算
出された空孔率は、21%であった。当該多孔化された
中空糸の表面のSEM写真を図7に示すが、充分多孔化
されていることが確認された。
が3.8であるエチレン/テトラフルオロエチレン/C
4オレフィン3元系共重合体(アフロンCOPC−88
AX、旭硝子社登録商標)を用いた以外は、実施例2と
同様にして得た中空糸を同様に熱処理した。当該熱処理
された中空糸の弾性回復率は20%であった。
50%及び200%延伸したところ、中空糸は白化し
た。しかしながら、延伸した中空糸は、エチルアルコー
ルに3日間浸漬してもいずれも透明化せず、連続孔の形
成は確認されなかった。また式(2)により、寸法及び
質量から計算された空孔率は、いずれも6%であった。
EM写真(図8)に示すが、写真から明らかなように、
この中空糸の表面はほとんど多孔化されていないことが
確認された。また、200%延伸した場合のSEM写真
もほぼ同様な状態であった。
当該フッ素樹脂が溶融成形性のものであるから、形態が
フィルム状に限定される従来のPTFEの多孔質体と異
なり、フィルム、中空糸を始めとして、シート、チュー
ブ、パイプその他の任意の形態の多孔質体となしうるも
のである。
に、成形体として、溶融成形性のフッ素樹脂を延伸して
多孔質フッ素樹脂フィルムとした場合は、その空孔径分
布が、従来の多孔質PTFEフィルムに比較してずっと
シャープであり、半導体分野や血液成分分離の分野で、
よりシャープな分画特性を有する精密なフィルター用分
離膜等を形成することができる。
率が高く、従来のPTFEフィルムよりずっと硬質の多
孔体であり、耐クリープ性が高く、巻回等した場合でも
潰れ難いフィルター材料等を形成することとができる。
場合は、無機充填剤を添加することなく、弾性回復率を
特定の値以上に規定して延伸することのみで、その多孔
質中空糸が提供される。
工程の一例をモデル的に示す説明図である。
た多孔質ETFEフィルムの表面状態を示すSEM写真
である。
を示すグラフである。
示すグラフである。
率の関係を示すグラフである。
る工程をモデル的に示す説明図である。
状態を示すSEM写真である。
EM写真である。
積層体 41 予熱工程 43 延伸工程 45 熱処理工程 47 アシストフィルムの剥離工程 50 延伸後の多孔質フッ素樹脂フィルム 60,60' 剥離除去される延伸後のアシストフィル
ム 110 溶融フッ素樹脂 120 押出成形機 123 円環ダイス 125 引取ロール 130 未延伸中空糸 150 高温槽 160 延伸装置 135 多孔質中空糸
Claims (4)
- 【請求項1】 溶融成形性のフッ素樹脂を延伸してなる
ことを特徴とする連続孔を有する硬質の多孔質成形体。 - 【請求項2】 前記溶融性フッ素樹脂が、エチレン−テ
トラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチ
レン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重
合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピ
レン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン及び
エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体から
なる群より選択される少なくとも一つのフッ素樹脂であ
るか、これらの更なる共重合体である請求項1に記載の
多孔質成形体。 - 【請求項3】 前記成形体が、前記溶融性フッ素樹脂に
無機充填剤を配合した原反を延伸して得られた空孔率2
0%以上のものである請求項1又は2に記載の多孔質成
形体。 - 【請求項4】 前記成形体が、弾性回復率30%以上の
特性を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重
合体からなる原反を延伸して得られた空孔率15%以上
のものである請求項1又は2に記載の多孔質成形体。
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