JP4052707B2 - 多層微多孔フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の円筒型電池、角形電池、薄型電池、ボタン型電池、電解コンデンサー等の電池材料に使用されるセパレータ、精密濾過膜等の分離膜、建築用結露防止用通気性フィルム素材、壁材、透気性ジャンパー等の衣料品、おむつ、生理用品等の衛生用品、通気性で細菌、ゴミ等の通過を阻止する包装用フィルム、白化度の高い反射フィルム、印刷用紙材料等として有用な微多孔フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂からなり、厚みが5〜100μ程度で、厚さ方向に一表面から他の表面に貫通する、孔径が0.01μから5μ程度の連通孔を厚さ方向に垂直な面全面にわたって均一に有する微多孔フィルムは、一般に透気度(秒/100cc)が0.1以上10000以下の気体透過性を有する一方で、耐水性を有し、このような性能が要求される数多くの分野で頻繁に使用されている。
【0003】
従来、このような多孔質フィルムの製造方法として、(1)ポリオレフィンを有機溶媒に加熱溶解、もしくは両者を混合し、溶融成形後急冷して相分離させ、後に延伸および有機溶媒の抽出を行う方法(例えば、特開昭60−242035号公報参照)、(2)無機充填剤と有機液体とポリオレフィン樹脂とを混合後、溶融成形し、その後無機充填剤と有機液体とを抽出する方法(例えば、特開昭55−131028号公報参照)、(3)結晶性樹脂を縦方向に流動配向させ、その後冷間延伸と熱間延伸を続けて行う方法(例えば、特公昭55−32531号公報参照)、(4)フィラーを添加したフィルムを少なくとも一軸に延伸する方法(例えば、特開昭57−59727号公報参照)、(5)相溶性の小さい二種類の樹脂を溶融混練することにより片方の樹脂が他方の樹脂に微分散したフィルムを形成し、次いで該フィルムを少なくとも一軸に延伸する方法(例えば、特開平6−263904号公報参照)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に、分離膜や電池用セパレータの分野では、高強度、高透過性、高空孔率の均一な微多孔フィルムが望まれている。これまで、このようなフィルムを製造するには、多量(例えば、樹脂14体積部に対し86体積部)のパラフィンワックスや流動パラフィン等の有機液体とともに高分子量ポリオレフィンを押出し、急冷してシートを作成し、該シートに有機液体が少なくとも残留した状態で少なくとも一方向に面積倍率10倍以上に延伸し、その後残留有機液体を抽出する方法や、電子線照射等により架橋を施したポリオレフィンシートを、前記有機液体に浸漬して膨潤させ、これを急冷してから結晶分散温度から結晶融点の間の温度で少なくとも1方向に5〜10倍延伸を行い、最後に(あるいは延伸しながら)抽出する方法、架橋延伸ポリオレフィンシートを前記有機液体に浸漬して膨潤させ、これを急冷してから収縮を防止しながら抽出する方法等がとられており、いずれの方法もポリオレフィンと有機液体の間で、冷却時に相分離現象が起こることによりポリオレフィンが多孔体化することを利用している。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、従来一般にT−ダイより押出するため、両端部と中心部でダイの中での樹脂の滞留時間が異なり、その結果ダイリップから樹脂が押出された時点で、すでに両端部と中心部との間で、またはこれに加えて厚み方向にも、ポリオレフィンの相分離状態が異なる。このため最終的に得られる微多孔フィルムの多孔化状態が、両端部と中心部、または表層と内層部との間で異なるという問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決し、より均一な微多孔フィルムを効率よく生産する方法について検討を重ねてきた。
その結果、少なくとも2層の、熱可塑性樹脂(A)15〜90体積部と、抽出可能であって、200℃での粘度が1000cps以下であり、かつ不活性な有機液状物質(B)85〜10体積部を主成分とする組成物よりなる微多孔形成前駆層(以下「M層」という)を環状ダイにより押出し、伝熱媒体により急冷固化させて、次いで15℃以上、該前駆層を構成する熱可塑性樹脂(A)のビカット軟化点に50℃を加えた温度以下の温度条件で少なくとも1方向に面積倍率で2倍以上70倍以下に延伸し、その後物質(B)を抽出することにより、従来の技術では得ることができなかった均一な多層の微多孔フィルムを効率よく得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、微多孔フィルムの製造方法において、少なくとも2層の異なった組成の熱可塑性樹脂(A)15〜90体積部と、抽出可能であって、200℃での粘度が1000cps以下であり、かつ不活性な有機液状物質(B)85〜10体積部を主成分とする組成物よりなる微多孔形成前駆層(原反)を環状ダイにより積層共押出し、伝熱媒体により急冷固化させて、次いで15℃以上、該前駆層(原反)を構成する熱可塑性樹脂(A)のビカット軟化点(以下「VSP」[ASTM−D1525(荷重1kgの値)]と略する)に50℃を加えた温度以下でかつ、各段階における延伸開始部の温度差が少なくとも10℃以上の温度条件で少なくとも1方向に面積倍率で2倍以上70倍以下に二段階以上延伸し、その後物質(B)を抽出することにより微多孔フィルムを得ることを特徴とする。
【0008】
この方法により、T−ダイ法では不可能だった、厚み、幅および流れ方向で孔形成性、特性が異なり、幅方向で均一性に欠ける、更には条件的により厳しいバブル法での延伸ができない等の理由で、いまだかつて達成することが出来なかった延伸条件でも、均一な微多孔フィルムを効率よく生産することができる製造方法(1)が提供される。
また、本願は以下の(2)から(12)の好ましい態様の発明も同時に提供する。
【0009】
(2)該熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、エチレンとビニルアルコールの共重合体、C2〜C12のα−オレフィンと一酸化炭素の共重合体及びその水添物、スチレン系重合体の水添物、スチレンとα−オレフィンとの共重合体及びその水添物、スチレンと脂肪族モノ不飽和脂肪酸との共重合体、アクリル酸及びアクリル酸誘導体からなるアクリル酸系重合体、スチレンと共役ジエン系不飽和単量体との共重合体及びこれらの水添物から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする、上記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
【0010】
(3)該熱可塑性樹脂(A)を構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂、エチレンとC3〜C12のα−オレフィンとの共重合体、異なるC3〜C12のα−オレフィン同士の共重合体、C2〜C12のα−オレフィンと極性基含有ビニル単量体との共重合体、エチレンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物、C3〜C12のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物から少なくとも1種選択されることを特徴とする、上記(2)記載の微多孔フィルムの製造方法。
【0011】
(4)該抽出可能な有機液状物質(B)が、該熱可塑性樹脂(A)を、押出混練加熱下で微分散化または溶解もしくは膨潤させ、かつ経時後または冷却下で該(B)が分離しうることを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
(5)該微多孔形成前駆層(M層)を構成する組成物が、該熱可塑性樹脂(A)と有機液状物質(B)との合計100体積部に加え、さらに抽出可能な充填剤(D)を7〜60体積部含むことを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
【0012】
(6)該前駆層(M層)が、少なくとも2層の、異なった組成の該熱可塑性樹脂(A)と該抽出可能な有機物質(B)とを主成分とする組成物からなる層からなり、抽出後、それぞれ微多孔構造が異なる層となることを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
(7)少なくとも一方向に、15℃以上、該前駆層(M層)を構成する組成物のビカット軟化点に50℃を加えた温度以下の温度条件内で少なくとも異なる温度条件で二段階以上のステップで合計2倍以上70倍以下延伸することを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
【0013】
(8)延伸をチューブラープロセスにおいて行うことを特徴とする、前記(7)記載の微多孔フィルムの製造方法。
(9)二段階以上延伸することにより微多孔フィルムを製造する方法において、各段における延伸開始部の温度差が少なくとも10℃以上であることを特徴とする、上記(7)ないし(8)記載の微多孔フィルムの製造方法。
(10)延伸開始部と延伸終了部の温度差が5℃以上の条件下で延伸することを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
【0014】
(11)延伸前、延伸後の少なくともいずれかにおいて、該前駆層(M層)に、2〜15Mradの高エネルギー線による照射処理を行うことを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
(12)微多孔フィルムが、少なくとも2層の微多孔構造が異なり、かつ150℃での加熱収縮率がタテ方向10〜80%、ヨコ方向−5〜80%であることを特徴とする、前記(1)記載の微多孔フィルムの製造方法。
【0015】
本発明において、M層は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂(A)15〜90体積部と、少なくとも1種の抽出可能であって、200℃での粘度が1000cps以下であり、かつ不活性な有機液状物質(B)85〜10体積部を主成分とする組成物よりなる。
【0016】
該熱可塑性樹脂(A)は、本発明の方法により得られる微多孔フィルムの使用目的により選択されるべきもので、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンをはじめとするポリエチレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂、エチレンとC3〜C12のα−オレフィンとの共重合体、異なるC3〜C12のα−オレフィン同士の共重合体、エチレンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物、C3〜C12のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物等をはじめとするポリオレフィン系樹脂、ポリアミド−6、ポリアミド−66、
【0017】
ポリアミド−6、66共重合体をはじめとするポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ−α−ヒドロキシイソ酪酸をはじめとする結晶性ポリエステル及びこれらを主成分とした他の任意な単量体との共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ3フッ化塩化エチレンその他をはじめとする、例えばエチレン、ヘキサフルオロプロピレンその他それぞれ任意な共重合体を含むフッ素系樹脂、エチレンとビニルアルコールの共重合体、エチレンやプロピレンに代表されるα−オレフィンと一酸化炭素の共重合体及びその水添物、スチレン系重合体の水添物、スチレンとα−オレフィンとの共重合体及びその水添物、スチレンと脂肪族モノ不飽和脂肪酸との共重合体及びその水添物、アクリル酸及びアクリル酸誘導体からなるアクリル酸系重合体、スチレンと共役ジエン系不飽和単量体との共重合体及びその水添物等が挙げられる。
【0018】
また、本発明の微多孔フィルムを製造する方法において、少なくとも1種の該熱可塑性樹脂(A)に加えて、少なくとも1種の抽出可能であって、200℃での粘度が1000cps以下であり、かつ不活性な有機液状物質(B)(以下、単に有機液状物質、または(B)ともいう。)が使用される。
該(B)の200℃での粘度が1000cpsを超えると、次のような問題が発生する場合があり好ましくない。
【0019】
1)溶融時における該(B)の粘度が高いために、押出後冷却するまでの間に該(A)と該(B)が均一に凝固または相分離せず、その結果得られる微多孔フィルムの孔構造が不均一化する。
2)高粘度物質は一般に分子量が高いため、延伸後該(B)を抽出する際に抽出されにくく、効率的でない。
本発明に用いられる有機液状物質としては、より好ましくは200℃での粘度が500cps以下の液状物質が用いられる。
【0020】
これら(B)の具体例として、例えば、キシレン、トルエン、デカリン、デカン、ドデカン、炭化水素の少なくとも一部分をハロゲン化したもの、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンや、流動パラフィン、パラフィンワックス等のパラフィンオイル類、環状成分を含むミネラルオイル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール類及びそれらのエステル、グリセリン等の多価アルコール及びその少なくとも一部をエステル化したもの、天然油脂類、ワックス類、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン等の液状ゴム類、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステル類、セバシン酸ジ−n−ブチル、
【0021】
セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル類、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類、ロジン類、テルペン樹脂及びその水添物、石油樹脂及びその水添物等、前述の該熱可塑性樹脂(A)のオリゴマー及び低重合物類及びこれらの混合成分が挙げられる。また、成形性や、得られる微多孔フィルムの均一性や用途によっては、該有機液状物質(B)は、該熱可塑性樹脂(A)を、溶融成形温度における混練押出中に、微分散化または溶解もしくは膨潤させ、かつ冷却下で該有機液状物質(B)が分離しうることが望ましい場合がある。
【0022】
該(A)と該(B)は、(A)15〜90体積部と(B)85〜10体積部、好ましくは、(A)25〜80体積部と(B)75〜20体積部の比で混合される。該(A)の量が15体積部未満の場合は、製造時に大量の該(B)が必要になり不経済になるばかりか、ダイの出口でスウェルやネックインが大きく、また該熱可塑性樹脂(A)の溶融張力が保てなくなり、切れやすくなり、均一な微多孔フィルムが得られない。一方、該(A)の量が90体積部を超えると、空孔率や孔径が小さくなりすぎ、厚さ方向に連通した孔がほとんど、あるいは全く形成されない場合や、あるいは延伸性が悪くなることがある。
【0023】
さらに、溶融成形時に該有機液状物質(B)の遊離を防止し、成形を容易にする目的で、該熱可塑性樹脂(A)と有機液状物質(B)に加え、抽出可能な無機系(D1)および有機系(D2)の充填剤を、(A)と(B)の合計100体積部に対して7〜60体積部用いることもできる。
このうち、無機系充填剤(D1)は、酸もしくはアルカリにより抽出可能な、(3次元投影法により測定された)平均粒径が0.005〜0.5μ、比表面積50〜500m2 /gの微少(多孔質)粒子であることが好ましく、具体的は、例えば、微粉ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、等が好ましく使用される。
【0024】
また、有機系充填剤(D2)は、溶媒、酸もしくはアルカリにより抽出可能な、(3次元投影法により測定された)平均粒径が0.005〜0.5μ、比表面積50〜500m2 /gの微少(多孔質)粒子であることが好ましく、セルロース粉末、スチレン系、アクリル系、シリコーン系、その他の樹脂系架橋粒子等が好ましく使用される。また、さらに有機系充填剤(D2)として、充分混練することによりに該熱可塑性樹脂(A)中に微分散化され、かつ所定の溶媒により抽出可能な、公知の樹脂も好ましく使用される。
【0025】
これら充填剤は該有機液状物質(B)が抽出されることにより形成された孔の壁部に更に小さな孔を形成する場合があり、その結果得られる微多孔フィルムの空孔率や透気度を増大させ、電気抵抗を低下させる。また、電池用セパレータをはじめとする電気化学的用途に使用する際、電流のシャットダウン効果を二段階で発現させうる等、目的により好ましい場合がある。
このとき、該充填剤の量が(A)と(B)の合計100体積部に対して7体積部未満では、十分に該有機液状物質(B)を吸着することができず、成形性を向上させる効果が不十分である。また、60体積部を超えると、溶融時の流動性が悪く、後の延伸時にもろくなり微多孔フィルムが安定して得られない。さらに該充填剤を用いる場合、溶融成形性、得られる微多孔フィルムの空孔度や機械的強度及びこれらの均一性の点で、該(B)を該充填剤と混合してから、該(A)と混合することが好ましい。
【0026】
また、製造時の延伸性、得られる微多孔フィルムの引張強度、引裂強度や孔径分布等を向上させる目的で、熱可塑性樹脂(A)、有機液状物質(B)、充填剤に加え、全体に対し、好ましくは0.05〜30体積%の範囲内で、結晶核剤、酸化防止剤、軟質樹脂、エラストマーをはじめとする公知の加工助剤や改質剤を用いても差し支えない。
本発明では、得られる微多孔フィルムの強度、耐熱性や厚み方向の孔径分布等の性能面からの要求により、熱可塑性樹脂(A)と有機液状物質(B)を成分とする組成物からなる、少なくとも2層の、同種または異種の樹脂からなる層から構成される、異なる微多孔状態を有する多層構造を有することも本発明の好ましい範囲に属する。
【0027】
本発明では、少なくとも2層のM層を構成する組成物が、それぞれ別々の押出機で熱可塑化溶融し、少なくとも原反工程段階(延伸及び抽出による微多孔化する前の工程)において(多層)環状ダイより(同時に)押出後、伝熱媒体により急冷固化させることにより該(B)成分を島状に相分離させ、十分均一なチューブ状原反とする。その際、相分離をより均一に行わせるために、また層間の接着性及び多孔性の変化(電気抵抗、透気度、通流体特性など)のムラを少なくするためにスパイラルダイを使用するのが好ましい。この点が、多層状多孔フィルムの公知の製造法である多孔化後ラミネート法(以下「後ラミ法」という)と異なる。後ラミ法の場合、次のような問題点があり好ましくない。
【0028】
1)界面がつぶれる現象があり、その分全体を高多孔化(高空洞率化)させる必要が生じ、結果として全体の強度が低下する。
2)全体の均一性や強度が低下し、使用中に剥離しやすい。
また、多孔処理前の原反を後ラミし、その後多孔化処理する場合でも同様な問題が発生する。
本発明の方法は、異質の基材でも層間の界面を交互に食い込ませることが可能なため、多孔性を害することなくスムーズに均一に接着できうるため、上述の点で大幅に改良されている。
【0029】
少なくとも2層からなる原反は、次いで15℃以上、M層を構成する組成物のVSPに50℃を加えた温度以下の温度条件で少なくとも1方向に面積倍率で2倍以上延伸する。延伸温度が15℃以上、原反を構成する組成物のVSPに50℃を加えた温度以下の範囲になければ、後に抽出を行っても、延伸ムラが発生したり、あるいは開孔しないといった問題が発生する。
【0030】
延伸倍率が上記の範囲外、例えば2倍未満であると、後に抽出を行っても、膜強度が出ないばかりか、原反が均一に開孔しないか、あるいは実用上有効に開孔しない。また、延伸倍率の上限は安定に延伸できず、破断してしまうといった現象が生じる場合、あるいは不必要に延伸倍率が大きいと、孔径が必要以上に大きくなりすぎたり不均一になったりする。このため延伸倍率は、一般に70倍以内、好ましくは60倍以内である。延伸方向は原反の組成ならびに微多孔フィルムに要求される特性により決定されるが、一軸でも二軸でもかまわない。
【0031】
延伸の方法は、圧延法、ロール延伸法、テンターフレーム法、(ダブルバブル、トリプルバブル等のマルチバブルプロセスを含む)チューブラー法等の各種方法があるが、以下の理由等からチューブラー法によるのが好ましい。
1)原反がチューブ状であり、幅サイズが有利、スリット後2枚取りが可能、製品化効率がよい、といった長所がある。
2)得られる微多孔フィルムの厚み方向、幅方向、長さ方向における均一性、高流動配向を付与した結果開孔が容易になる。
【0032】
3)開孔サイズや分布の均一性がよいこと。
4)延伸時のチャック部やネックインによる製品のロスがないこと。
5)原反もしくは延伸フィルムの偏肉分散が容易で、ゲージバンドなどの巻き姿不良によるロスをなくすことが可能である。
6)生産設備投資が安く、高速生産性がよい。
7)(5〜7層といった)高度多層化が容易である
8)延伸の際、得られる微多孔フィルムの微孔特性を使用される用途に合わせやすい。
9)寸法安定性を向上させやすい。
10)タテ/ヨコの延伸度合いを変換・移動する等の目的で、延伸を多段階に分けて行いやすい。
【0033】
延伸を多段階に分けて行う場合、15℃以上、原反を構成する組成物のVSPに50℃を加えた温度以下の範囲の温度でかつ合計面積倍率が2倍以上70倍以下であれば特に限定されないが、各段における延伸開始部の温度差が少なくとも10℃以上であることが好ましい。例えば、原反を構成する組成物のVSPから10℃を引いた温度で2倍の延伸後、原反を構成する組成物のVSPに30℃を加えた温度で5倍の延伸を行ってもよい。
【0034】
また、同様な目的で、延伸開始部と延伸終了部の温度差が5℃以上の条件下で延伸してもよい。なお、ここでいう延伸温度とは、延伸開始部の温度のことをいう。また、寸法安定性を特に重要視する場合は、最終延伸段の温度を高めにしてヒートセット効果を付与しても、または次工程としてヒートセット工程を加えてもよい。
【0035】
さらに、延伸前、延伸後の少なくともいずれかにおいて、少なくとも2層の原反からなる積層原反の延伸性、延伸開孔性を高め、また微多孔フィルムの強度、耐熱性、寸法安定性を向上させる目的で、延伸前、延伸後で自由に2〜15Mrad、好ましくは2.5〜10Mradの高エネルギー線により、照射処理を行ってもよい。この際の方法としては、電離性放射線、例えば電子線、放射性同位元素から放射されるβ線、γ線を照射する方法、またはベンゾフェノンやパーオキサイド等の増感剤をあらかじめ原反に混合しておき、紫外線照射を行う方法等があるが、これらのうち、工業的には高エネルギー電子線を使用するのが好ましい。
【0036】
また、多層状の原反の所定層の架橋度合いを以下に述べる方法等により、コントロール(例えば、表層の架橋密度を高くする、中間層の架橋密度を下げる、または実質的にゲル分率が測定できない程度の弱い架橋を行う等)してもよい。
1)架橋されやすい、またはされにくい樹脂を使用する。
2)分子量の高いもの、または低いものを使用する。
3)架橋を促進する、または抑制する添加剤等を利用する。
4)エネルギー線の透過深度を制御する。
【0037】
上記の積層後延伸された原反から、有機液状物質(B)や充填剤を抽出することにより少なくとも1枚の微多孔フィルムが得られる。
本発明により得られる微多孔フィルムの厚みは、好ましくは1〜150μ程度、より好ましくは5〜100μ程度である。該延伸積層体は延伸歪を内蔵することがあり、その除去のために、延伸後に該延伸積層体を緊張状態あるいは緩和状態(収縮させる)に保ち、所定温度、通常は延伸温度(複数段階延伸した場合はその最高温度)の前後近くの温度で加熱することにより安定化できる。
また、場合により最後に多少の(自由方向の)一軸延伸を加え配向移動処理を行ってもよい。この歪除去のための加熱時間は、温度、該積層体に残存する歪量等に応じて設定するが、通常約5秒間から2分間である。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に実施例と比較例を挙げて本発明を更にの具体的に説明する。なお、表1に本実施例で使用する熱可塑性樹脂組成を示す。また、実施例中に示される透気度はASTM−D726(B)法に基づいて測定したガーレー値(秒/100cc)である。
【0039】
【実施例1】
原反として、組成11層/組成12層/組成11層を積層したものを使用した。即ち、2台の二軸押出機を使用し、180℃に加熱された3層環状ダイに組成11層/組成12層/組成11層の層構成になるように供給し、ダイ先端と20℃の水が均一に出る水冷リングの間の距離を調節して、ロドーダウン比(DDR)18の厚みムラのないチューブ状の原反を安定した状態で得た。この原反を、2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通して熱風により52℃に加熱し、そのまま内部に空気を入れ、整流接触ガイドを用いて連続的に膨張させて機械方向(以下タテ方向)の延伸倍率が3倍、機械方向に垂直方向(以下ヨコ方向)の延伸倍率が3倍になるように延伸し、次いでもう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通して熱風により110℃に加熱し、タテ方向の延伸倍率が2倍、ヨコ方向の延伸倍率が1.5倍になるように再延伸し、さらにもう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通してチューブ状にして周方向より熱風により110℃に加熱してタテ方向に50%延伸、ヨコ方向を30%収縮させながらヒートセットした。 次いで両端をスリットし、さらに1,1,1−トリクロロエタンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去することにより微多孔フィルム(厚み25μ;組成11層/組成12層/組成11層=8/9/8、透気度250)を得た。この微多孔フィルムの幅方向の相対透気度を表2に示す。
【0040】
【参考例1】
実施例1と同様にして得られた原反を、110℃に加熱された同時二軸テンター延伸機に通してタテ/ヨコ方向の延伸倍率がそれぞれ5倍になるように延伸し、さらに110℃に加熱したロール延伸機へ通して、タテ方向に50%延伸、ヨコ方向に30%収縮させながらヒートセットした。次いで両端をスリットし、さらに1,1,1−トリクロロエタンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去することにより微多孔フィルム(厚み25μ;組成11層/組成12層/組成11層=8/9/8、透気度250)を得た。この微多孔フィルムの幅方向の相対透気度を表2に示す。
【0041】
【比較例1】
原反として、組成11層/組成12層/組成11層を積層したものを使用した。即ち、2台の二軸押出機を使用し、180℃に加熱された2種3層のT−ダイに供給し、ダイ先端と20℃の水冷ロールの間の距離およびロールの周速を調節してDDR18の原反を得た。この原反を、110℃に加熱された同時二軸テンター延伸機に通してタテ/ヨコ方向の延伸倍率がそれぞれ5倍になるように延伸し、さらに110℃に加熱したロール延伸機へ通して、タテ方向に50%延伸、ヨコ方向に30%収縮させながらヒートセットした。次いで両端をスリットし、さらに1,1,1−トリクロロエタンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去することにより微多孔フィルム(厚み25μ;組成11層/組成12層/組成11層=8/9/8、透気度25)が得られた。この微多孔フィルムの幅方向の透気度を表2に示す。
表2の比較により、T−ダイを用いた場合と比較して、環状ダイを用いた場合のほうが幅方向の透気度の均一性の面で優れることが明白である。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明により、T−ダイを使用した場合には不可能だった、幅方向及び厚み方向に均一な高強度の微多孔フィルムを効率よく生産することができる製造方法が提供される。
Claims (13)
- 微多孔フィルムの製造方法において、少なくとも2層の異なった組成の熱可塑性樹脂(A)15〜90体積部と、抽出可能であって、200℃での粘度が1000cps以下であり、かつ不活性な有機液状物質(B)85〜10体積部を主成分とする組成物よりなる微多孔形成前駆層を環状ダイにより押出し、伝熱媒体により該前駆層を急冷固化させて、次いで15℃以上、かつ該前駆層を構成する熱可塑性樹脂(A)のビカット軟化点に50℃を加えた温度以下でかつ、各段階における延伸開始部の温度差が少なくとも10℃以上の温度条件で少なくとも1方向に面積倍率で2倍以上70倍以下に二段階以上延伸し、その後該物質(B)を抽出することにより微多孔フィルムを得ることを特徴とする、微多孔フィルムの製造方法。
- 該熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、エチレンとビニルアルコールの共重合体、C2〜C12のα−オレフィンと一酸化炭素の共重合体及びその水添物、スチレン系重合体の水添物、スチレンとα−オレフィンとの共重合体及びその水添物、スチレンと脂肪族モノ不飽和脂肪酸との共重合体、アクリル酸及びアクリル酸誘導体からなるアクリル酸系重合体、スチレンと共役ジエン系不飽和単量体との共重合体及びこれらの水添物から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 該熱可塑性樹脂(A)を構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂、エチレンとC3〜C12のα−オレフィンとの共重合体、異なるC3〜C12のα−オレフィン同士の共重合体、C2〜C12のα−オレフィンと極性基含有ビニル単量体との共重合体、エチレンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物、C3〜C12のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 該抽出可能な有機液状物質(B)が、該熱可塑性樹脂(A)を、押出混練加熱下で微分散化または溶解もしくは膨潤させ、かつ経時後または冷却下で該(B)が分離しうることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 該微多孔形成前駆層(M層)を構成する組成物が、該熱可塑性樹脂(A)と有機液状物質(B)との合計100体積部に加え、さらに抽出可能な充填剤(D)を7〜60体積部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 該微多孔形成前駆層(M層)が、抽出後、それぞれ微多孔構造が異なる層となることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 延伸をチューブラープロセスにおいて行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 延伸開始部と延伸終了部の温度差が5℃以上の条件下で延伸することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 延伸前、延伸後の少なくともいずれかにおいて、該前駆層(M層)に、2〜15Mradの高エネルギー線による照射処理を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 微多孔フィルムが、少なくとも2層の微多孔構造が異なり、かつ150℃での加熱収縮率がタテ方向10〜80%、ヨコ方向−5〜80%であるフィルムであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の微多孔フィルムの製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法により得られることを特徴とする微多孔フィルム。
- 請求項11に記載の微多孔フィルムを用いたことを特徴とするセパレータ。
- 請求項12に記載のセパレータを用いたことを特徴とする電池。
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