例えば、大型の移動式クレーンでは、伸縮ブームのブーム先端部にジブを継ぎ足して使用できるようになっている。そして、この種のジブ付きクレーンにおけるジブの格納・張出方法の一つとして、従来から図1〜図8に示すような下振出し方式で行うものが知られている。尚、図1〜図8に示すようにジブを下振出し方式で行うジブ付きクレーンとしては、例えば特許文献1(特開平5−116888号公報)に示されるものがある。
ところで、この図1〜図8に示す公知のジブ付きクレーンは、本願発明の実施例でも採用するものであって、この公知のジブ付きクレーンの詳細な構成については後述する(本願実施例の項で説明する)が、ここでは(背景技術の説明では)このジブ付きクレーンについては機能的な事柄を中心にして説明する。尚、以下の説明において、ジブ4の基端部を単にジブ基端部といい、ジブ4の先端部を単にジブ先端部ということがある。
この公知のジブ付きクレーンは、図1に示すジブ下抱き姿勢から図4に示すジブ張出姿勢に移行するには次のように行われる。
尚、図1に示す公知のジブ付きクレーンでは、ジブ4を起伏操作をジブチルト装置5で行えるようにしている。このジブチルト装置5は、ブーム側ロッド52(屈伸自在な第1ロッド52aと第2ロッド52bを有している)とジブ側ロッド53とを連結・分離自在に連結し得るようにしたテンションロッド51と、ジブ側ロッド53を押し引き操作するジブチルトシリンダ50とを有している。そして、このジブチルト装置5は、ジブ張出操作時には、図1に示すジブ下抱き状態において、鎖線図示するように第2ロッド52b′を下向きに倒し、該第2ロッド52b′の自由側端部とジブ側ロッド53の自由側端部とを連結しておく。尚、図1のジブ下抱き状態では、ジブ先端部4bのピン穴45から外れ止めピン(図5の符号46)を抜き外しておく。
次に、図1の状態から、図2に示すように伸縮ブーム3を所定角度(例えば50°〜60°程度)まで起仰させ、補助ロープ9の一端をブーム基端部3a付近に固定し、該補助ロープ9の先端側を下抱き姿勢のジブ4のジブ先端シーブ43に巻掛けた状態で該補助ロープ9の他端をブーム先端部3bを迂回させたサブワイヤーロープ71の先端部(サブフック72)に連結した後、サブウインチ7を巻上げて補助ロープ9及びサブワイヤーロープ71を鎖線図示するように緊張状態にする。
次に、図2の状態から、伸縮ブーム3を若干長さ伸長させてジブ側の係止ピン49をブーム側の係止受部39から前方に抜き外し、その後、図3に示すように伸縮ブーム3を所定角度(図3の状態ではブーム角度は55°)だけ起仰させた姿勢でサブウインチ7をゆっくり巻下げ(繰出し)作動させることで、ジブ4が自重で鉛直方向に向く垂下姿勢となる。尚、図3の状態では、若干長さ伸長させた伸縮ブーム3を最縮小させている。
次に、図3の状態から、補助ロープ9を外し、サブウインチ7を巻下げ作動させてサブワイヤーロープ71の下端側をジブ先端部4bより若干下方まで延出させ(サブフックが符号72′の位置)、そのサブワイヤーロープ下端寄り部分(符号71′部分)をジブ先端シーブ43側に押し込んだ状態でジブ先端部4bのピン穴45に外れ止めピン46(図5)を挿入する。尚、この例のジブ4では、ジブ先端シーブ43の近傍位置に補助シーブ44が設けられていて、ジブ先端シーブ43に掛け回すサブワイヤーロープ71は、補助シーブ44に掛けた状態でジブ先端シーブ43と外れ止めピン46との間に挿通されている。
次に、図3のジブ垂下姿勢から、ジブチルト装置5のジブチルトシリンダ50を伸長作動させると、ジブ側ロッド53がジブ先端側に移動し、そのときテンションロッド51(ブーム側ロッド52とジブ側ロッド53)が緊張することにより、ジブ4がその基端部4aの枢支部(支軸)40を中心にして前方・上方側に旋回せしめられて図4に示すジブ張出姿勢位置まで振り出される。
そして、図4のジブ張出姿勢では、ブーム先端部3bからメインワイヤーロープ61で吊下されているメインフック62、又はジブ先端部4bからサブワイヤーロープ71で吊下されているサブフック72で個別にクレーン作業が行える。
ところで、上記のようなジブ空中振出し式のジブ付きクレーンでは、ジブ振出し前方側の近傍位置にジブ振出し作業の障害物(例えば図8に示すように架線Mや構築物N,N′等)がある場合には、ジブ4が障害物に対面した状態で該ジブ4を振出し操作すると、ジブ4が当該障害物に干渉する虞れがある。
そこで、ジブ振出し前方側の近傍位置に障害物(図8のM,N,N′等)がある場合には、伸縮ブーム3を大きく起仰させた状態(例えば図6の状態)で、伸縮ブーム3を所定長さ伸長させて、ジブ振出し時にジブ4が障害物に干渉しない高さ(例えばジブ4が図8における符号4′又は符号4″の高さ)まで持ち上げた状態でジブ振出し操作を行う。尚、伸縮ブーム3を伸長させるときは、過巻き防止(フック衝突防止)のためにメインワイヤーロープ61及びサブワイヤーロープ71を各ウインチ6,7から繰出しながら行う。
ところで、ジブ4をブーム先端部3bから下向きに垂下させ且つサブワイヤーロープ71の先端側をジブ先端部4bにおけるジブ先端シーブ43と外れ止めピン46間に通した状態では、ジブ4の対鉛直線角度が小さくなるほどサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間するようになる。即ち、図示例のものでは、図3に示すジブ鉛直姿勢では、図5に拡大図示するようにサブフック72を吊下げているサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間して外れ止めピン46に接触している。他方、図6(図7に拡大図示)に示すようにジブ4を鉛直線に対して所定角度θ(例えばθ=約31°)を持たせたときには、サブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に接触して外れ止めピン46からは離間するようになっている。
そして、図3に示すジブ鉛直姿勢では、ブーム先端部3bから前方へのジブ4の出幅が小さくなって、伸縮ブーム伸長時のジブ移動軌跡範囲を狭くできるという利点がある反面、図5に示すようにサブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触しているので、該サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46とが相対移動すると、該サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46とが擦れるようになる。特に、ジブ垂下姿勢が伸縮ブーム3に近づくほど、サブワイヤーロープ71の外れ止めピン46に対する圧接力が大きくなって、伸縮ブーム伸長動作(又は/及びサブウインチ巻上げ・巻下げ作動)によるサブワイヤーロープ71と外れ止めピン46との摩擦力が大きくなる。このように、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46が長期に亘って擦れると、該サブワイヤーロープ71が摩耗により損傷する虞れがある。
尚、上記したサブワイヤーロープ71と外れ止めピン46との擦れ現象は、伸縮ブーム3の縮小動作時にも発生する。
これに対して、ジブ4の垂下姿勢で伸縮ブーム3を伸長させる際に、図6及び図7に示すようにジブ4を鉛直線に対して所定角度θ(例えばθ=約31°程度)を持たせた状態で行うと、サブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に接触(外れ止めピン46からは離間)した状態で相対移動するが、そのときジブ先端シーブ43は回転するのでサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に擦れることはない(サブワイヤーロープ71が摩耗しない)という特性がある。
ところで、図3(図5に拡大図示)や図6(図7に拡大図示)に示すように、ジブ4を垂下させた姿勢において、サブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に接触しているのか外れ止めピン46に接触しているのかを判別するのに、従来では、キャビン21内からオペレータがジブ4の垂下姿勢(ジブ対鉛直線角度)を目視して、勘により判断していた。
ところが、図3や図6のように、伸縮ブーム3が最縮小している状態(ジブ先端部4bがキャビン21に近い状態)であっても、ジブ先端部4b付近のサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に接触しているか外れ止めピン46に接触しているかを正確に目視することは困難であり、特にジブ4がかなりの高所以上まで持ち上げられた状態(例えば図8に符号3b′で示すセカンドブーム伸長長さを超える伸長状態での高さ)では、ジブ4の姿勢やジブ先端部4b付近の状況が一層わかりにくくなる。
このように、従来では、ジブの垂下姿勢でサブワイヤーロープ71が正常に位置しいてる(ジブ先端シーブ43に接触している)かどうかをオペレータの目視による勘だけで判断しいてるので確実性がなく、ときには勘違いによりサブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触しているジブ垂下姿勢で伸縮ブーム3の伸縮動作(又は/及びサブウインチ7の巻上げ・巻下げ作動)を行うこともある。従って、その場合には、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46との擦れが発生して好ましくない。
そこで、本願発明は、上記した従来の問題点を改善するために、ブーム先端部から垂下させたジブ姿勢が、伸縮ブームを伸縮作動させたりサブウインチを巻上げ・巻下げ作動させるときの適正姿勢であるかどうか(又はジブ垂下姿勢が不適正角度に達したかどうか)を自動で判別し、その判別結果に基いて安全制御を行えるようにした、ジブ付きクレーンにおけるジブ姿勢に関連した安全制御装置を提供することを目的としている。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、「ジブ付きクレーンにおけるジブ姿勢に関連した安全制御装置」(発明の名称)を対象としたものであるが、以下の説明では、本願の発明の名称として単に「安全制御装置」と表現する。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の安全制御装置を適用するジブ付きクレーンは、次の構成を有したものである。
即ち、本願で使用するジブ付きクレーンは、複数段の単ブームを伸縮自在に連続させた伸縮ブームを旋回台に対して起伏自在に取付け、伸縮ブームのブーム先端部にジブの基端部を着脱自在に連結し、ジブの基端部をブーム先端部に連結した状態でジブチルト装置によりジブをブーム先端部の下方に向く垂下姿勢とブーム先端部の前方に向く張出姿勢との間で揺動させ得るようにし、さらに伸縮ブーム基端側の適所(例えば旋回台上)に設けたサブウインチから繰出したサブワイヤーロープの先端側をジブの先端部に設けたジブ先端シーブを介して下方に導く一方、上記ジブの先端部に上記ジブ先端シーブに掛けられた上記サブワイヤーロープの外れ止めピンを設けて構成されている。
尚、以下の説明においても、ジブの基端部を単にジブ基端部といい、ジブの先端部を単にジブ先端部ということがある。
伸縮ブームのブーム段数としては、2段以上であれば適宜の段数のものを採用できるが、この種のジブ付きクレーンでは、4段ブーム程度のものが多用されている。尚、伸縮ブームは、ブームに内蔵された伸縮シリンダで伸縮せしめられる一方、ブーム起伏シリンダによって起伏せしめられる。
ジブは、ブームに対してジブチルト装置により下振出し方式でブーム先端部の前方に張出させ得るようになっている。
ジブ先端部には、サブワイヤーロープを巻き掛けるジブ先端シーブが設けられている一方、ジブ先端部におけるジブ先端シーブの外周近傍位置には、ジブ先端シーブに掛けられたサブワイヤーロープの外れ止めピンが抜き挿し自在に設けられる。
ところで、この種のジブ付きクレーンでは、上記「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、ジブをブーム先端部から垂下させた姿勢においてサブワイヤーロープがジブ先端部の外れ止めピンに接触した状態で、伸縮ブームを伸縮作動させたりサブウインチを巻上げ・巻下げ作動させたりした場合には、サブワイヤーロープと外れ止めピンとの擦れの問題が生じるが、これを改善するために本願請求項1の発明(安全制御装置)では、次の構成を有している。
即ち、本願請求項1の発明の安全制御装置は、上記構成を有したジブ付きクレーンにおいて、現状のジブ対鉛直線角度を検出するジブ角度検出手段と、ジブ先端部から鉛直姿勢で垂下しているサブワイヤーロープがジブ先端シーブから離間する直前のジブ姿勢からサブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する直前のジブ姿勢までのジブ角度範囲内での所定のジブ対鉛直線角度を記憶しているジブ角度記憶手段と、ジブ角度検出手段で検出した現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶しているジブ対鉛直線角度より小さい側にあるときに、伸縮ブームの伸縮作動とサブウインチの巻上げ・巻下げ作動をそれぞれ禁止する制御手段とを備えている。
ジブ対鉛直線角度を検出するためのジブ角度検出手段としては、例えばジブ側面に重錘式の角度検出器を設けたものでもよく、あるいは既存のブーム起伏角度検出器で検出したブーム起伏角度とブームに対するジブチルト角度(例えばジブチルト装置の一部を構成するジブチルトシリンダの伸縮量から求め得る)とから演算することで求め得るようにしたものでもよい。
ジブ角度記憶手段に記憶しているジブ対鉛直線角度は、制御対象となる基準角度であって、ジブがブーム先端部に対して下向き姿勢にある状態でジブ先端部から鉛直姿勢で垂下しているサブワイヤーロープがジブ先端シーブから離間する直前のジブ姿勢からサブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する直前のジブ姿勢までのジブ角度範囲内での所定のジブ対鉛直線角度であるが、このジブ姿勢では、サブワイヤーロープがジブ先端シーブにほぼ接線状態で接触している状態(又はごく僅かに離間している状態)であって、該サブワイヤーロープがジブ先端部の外れ止めピンに接触するものではない。尚、以下の説明では、ジブ角度記憶手段に記憶しているジブ対鉛直線角度を、単に「記憶角度」ということがある。
そして、上記制御手段は、上記ジブ角度検出手段で検出した現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶している記憶角度より小さい側にあるときに、伸縮ブームの伸縮作動とサブウインチの巻上げ・巻下げ作動をそれぞれ禁止する信号を発するものであるが、この請求項1の安全制御装置の制御手段は、例えばコントローラに設けた比較手段と出力手段とで構成することができる。この場合の比較手段は、ジブ角度検出手段で検出した現状のジブ対鉛直線角度とジブ角度記憶手段で記憶している記憶角度とを比較し、現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶している記憶角度より小さい側にあると判断したときに、該比較手段から出力手段を介して伸縮ブームの伸縮作動を禁止する信号とサブウインチの巻上げ・巻下げ作動を禁止する信号とがそれぞれ発せられるようになっている。
上記制御手段により伸縮ブーム及びサブウインチに対してそれぞれ作動禁止信号が発せられる時点では、サブワイヤーロープが外れ止めピンに近接又は接触している可能性があるが、このとき伸縮ブーム及びサブウインチに対してそれぞれ作動禁止信号が発せられているので、サブワイヤーロープとジブ先端部とが相対移動しなくなる(サブワイヤーロープと外れ止めピンとが擦れない)。尚、制御手段から上記作動禁止信号が発せられた後、ブーム起伏シリンダ又はジブチルト装置(ジブチルトシリンダ)をジブの対鉛直線角度が大きくなる側に作動させて、ジブの対鉛直線角度を上記記憶角度より大きくすれば(このときサブワイヤーロープはジブ先端シーブに接し外れ止めピンから離間する)、上記制御手段の制御が解除されて、該伸縮ブーム及びサブウインチの各作動が許容される。
尚、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階では、伸縮ブーム及びサブウインチの各作動をそれぞれ許容する必要があるが、この請求項1の安全制御装置では、制御手段の機能をキャンセルするスイッチを設けておいて、該制御手段の作動禁止機能が邪魔になるときには該制御手段の機能をスイッチ操作でOFFにすればよい。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の安全制御装置において、上記制御手段は、伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態のときに伸縮ブームとサブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ解除する一方、上記伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲を超えて伸長しているときに上記伸縮ブームと上記サブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。
ところで、ジブを伸縮ブーム側に格納する場合は、伸縮ブームを全縮小付近まで縮小させた状態でジブを垂下姿勢からブーム下面に沿わせた下抱き位置まで揺動させる必要があるが、この種のジブ付きクレーンでは、ジブ格納操作時においてサブウインチによるサブワイヤーロープの巻上げ・巻下げ操作と伸縮ブームの伸縮操作を併用して行う。即ち、垂下姿勢のジブをブーム下面に近接させるのに、サブウインチからのサブワイヤーロープ(サブフック)と補助ロープとを連結した状態(図3の状態)でサブウインチを巻上げ作動させることでジブをブーム下面側に揺動させる一方、ジブ側の係止ピン(図1、図3の符号49)をブーム側の係止受部(図1、図2、図3の符号39)に係脱させるのに伸縮ブームを伸縮作動させる必要がある。尚、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階においてもサブウインチと伸縮ブームをそれぞれ作動させる必要がある。
このような事情から本願請求項2の安全制御装置では、制御手段の機能として、伸縮ブームを全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態のときには伸縮ブームとサブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ自動で解除できるようにしている。従って、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階においては、特別な制御解除操作をすることなしに伸縮ブーム及びサブウインチの各作動をそれぞれ許容することができる。又、この制御手段は、伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲を超えて伸長しているときには伸縮ブームとサブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ自動で行うようにしている。
尚、この請求項2において、伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態とは、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階において必要な、例えばブーム全縮小状態から50cm程度伸長した状態までの長さ範囲内のことである。
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1の安全制御装置において、上記制御手段は、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さ以下のときに上記伸縮ブームと上記サブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ解除する一方、上記伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときに上記伸縮ブームと上記サブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。
ところで、この種のジブ付きクレーンにおいて、ジブの振出し操作は伸縮ブームを大きく起仰させた姿勢で行うが、伸縮ブームの最縮小状態でのブーム長さは機種にもよるが概ね10m内外のものが多い。又、その場合の伸縮ブームにおけるセカンドブーム伸長状態でのブーム長さは略16m〜17mとなる。
そして、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長長さ以下の状態で、ジブ振出し作業を行う場合は、垂下姿勢のジブの先端部付近がキャビンから比較的近いので(例えば7m内外の距離になる)、キャビン内のオペレータがジブ対鉛直線角度の概略やジブ先端部付近の状態等を目視により比較的容易に確認できる。ところが、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長長さを超えて長くなっていく(高さが高くなる)と、ジブがキャビンから遠ざかることにより、キャビン内のオペレータがジブの状況を見づらくなっていく。
そこで、この請求項3の安全制御装置では、ジブ振出し作業時におけるジブの状況をキャビン内のオペレータが目視により比較的容易に確認し得る作業状態のときには、請求項1の制御手段の機能を自動的に解除し得るようにしている。即ち、この請求項3の安全制御装置では、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長長さ以下のときには、制御手段による規制を自動的に解除して、伸縮ブーム及びサブウインチを自由に作動させ得るようにしている。尚、この請求項3の場合は、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときには、伸縮ブームとサブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、独立項であるがこの請求項4の安全制御装置も、上記請求項1で採用したジブ付きクレーンに適用されるものである。尚、この請求項4の安全制御装置を適用するジブ付きクレーンの説明は、上記請求項1での説明を援用する。
又、この請求項4の安全制御装置でも、現状のジブ対鉛直線角度を検出するジブ角度検出手段と、ジブ先端部から鉛直姿勢で垂下しているサブワイヤーロープがジブ先端シーブから離間する直前のジブ姿勢からサブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する直前のジブ姿勢までのジブ角度範囲内での所定のジブ対鉛直線角度を記憶しているジブ角度記憶手段とを備えているが、該ジブ角度検出手段及びジブ角度記憶手段は、それぞれ上記請求項1で採用したものを使用できる。尚、この請求項4の説明でも、ジブ角度記憶手段で記憶しているジブ対鉛直線角度を単に記憶角度ということがある。
ところで、現状のジブ対鉛直線角度が上記ジブ角度記憶手段で記憶している記憶角度以下になると、ジブ先端部に挿通させているサブワイヤーロープがジブ先端部のジブ先端シーブから離間して外れ止めピンに接触する虞れが生じる(この場合、サブワイヤーロープと外れ止めピンとの擦れの原因となる)。
そこで、この請求項4の安全制御装置では、ジブが伸縮ブームに対して離間した側から近接する側に揺動する際において、ジブ角度検出手段で検出した現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶しているジブ対鉛直線角度(記憶角度)に達したときにジブ倒伏側作動を禁止する制御手段を備えている。尚、現状のジブ対鉛直線角度が上記記憶角度に達した時点では、サブワイヤーロープがまだ外れ止めピンに接触していない状態である。
この請求項4の安全制御装置で使用されている制御手段は、ジブが伸縮ブームに対して離間した側から近接する側に揺動する際において、ジブの対鉛直線角度が上記記憶角度を超えて小さくならないようにするためのものである。
ところで、ジブ対鉛直線角度が小さくなる側の作動としては、ジブの倒伏側作動と伸縮ブームの倒伏側作動の2つがあるが、ジブを張出操作又は格納操作する場合は、伸縮ブームを所定角度まで起仰させた伸縮ブーム固定姿勢でジブのみを揺動させることが多い。
そこで、この請求項4の安全制御装置では、制御手段の制御対象としてジブの倒伏側作動を禁止するものを採用している。尚、この請求項4の安全制御装置では、上記制御手段が作動しても、ジブ対鉛直線角度増大側の作動(ジブ起仰側作動)は許容している。
又、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階では、ジブ対鉛直線角度が上記記憶角度より小さい状態でもジブを倒伏側(ジブ対鉛直線角度減少側)に作動させる操作を許容する必要があるが、この請求項4の安全制御装置でも、請求項1の場合と同様に制御手段の機能をキャンセルするスイッチを設けておいて、該制御手段の作動禁止機能が邪魔になるときには該制御手段の機能をスイッチ操作によりOFFにすればよい。
[本願請求項5の発明]
本願請求項5の発明は、上記請求項4の安全制御装置において、上記制御手段の作動時には、ジブ倒伏側作動の禁止とともに伸縮ブーム倒伏側作動も禁止するようにしている。
ところで、ジブ対鉛直線角度が小さくなる側の作動としては、ジブの倒伏側作動と伸縮ブームの倒伏側作動の2つがあるが、この請求項5の安全制御装置では、制御手段の作動時に、ジブ倒伏側作動と伸縮ブーム倒伏側作動の両方をそれぞれ禁止することにより、ジブ対鉛直線角度が小さくなる側の全作動を禁止するようにしている。従って、この請求項5の安全制御装置では、ジブの対鉛直線角度が上記記憶角度を超えて小さくなる状態には進行することがない。尚、この請求項5の安全制御装置では、上記制御手段が作動しても、ジブ対鉛直線角度増大側の各作動(伸縮ブーム起仰側作動及びジブ起仰側作動)は許容している。
[本願請求項6の発明]
本願請求項6の発明は、上記請求項4又は5の安全制御装置において、上記制御手段は、伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態のときに伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ解除する一方、上記伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲を超えて伸長しているときに上記伸縮ブームと上記ジブに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。尚、この請求項6において、制御手段が制御する内容は、請求項4を引用したものではジブ倒伏側作動を禁止するものであり、請求項5を引用したものではジブ倒伏側作動と伸縮ブーム倒伏側作動の両方をそれぞれ禁止するものである。
この請求項6の安全制御装置で使用されるジブ付きクレーンも、上記請求項2の発明での説明と同様に、ジブを伸縮ブーム側に格納する場合は伸縮ブームを全縮小付近まで縮小させた状態で行うが、その場合にジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階においては伸縮ブーム倒伏側動作やジブ倒伏側動作を行う必要がある。
そして、この請求項6の安全制御装置では、制御手段の機能として、伸縮ブームを全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態のときにはジブ(又は伸縮ブームとジブ)に対する倒伏側作動禁止制御を自動で解除できるようにしているので、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階においては、特別な操作をすることなしにジブ倒伏側作動(又はジブ倒伏側作動と伸縮ブーム倒伏側作動の両方)を許容することができる。尚、この請求項6の場合は、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときには、伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。
尚、この請求項6においても、伸縮ブームが全縮小付近まで縮小している状態とは、上記請求項2と同様に、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階において必要な、例えばブーム全縮小状態から50cm程度伸長した状態までの長さ範囲内のことである。
[本願請求項7の発明]
本願請求項7の発明は、上記請求項4又は5の安全制御装置において、上記制御手段は、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さ以下のときに伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ解除する一方、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときに伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。尚、この請求項7において、制御手段が制御する内容は、上記請求項6と同様に、請求項4を引用したものではジブ倒伏側作動を禁止するものであり、請求項5を引用したものではジブ倒伏側作動と伸縮ブーム倒伏側作動の両方をそれぞれ禁止するものである。
この請求項7の安全制御装置で使用されるジブ付きクレーンも、上記請求項3の発明での説明と同様に、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長長さ以下のときには、キャビン内のオペレータがジブ対鉛直線角度の概略やジブ先端部付近の状態等を目視により比較的容易に確認できるので、この場合(伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長長さ以下のとき)には制御手段による規制を自動的に解除して、伸縮ブーム及びジブの各倒伏側動作をそれぞれ自由に行わせ得るようにしている。尚、この請求項7の場合は、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときには、伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ行うようにしている。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の安全制御装置では、ジブ角度検出手段で検出した現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶しているジブ対鉛直線角度(記憶角度)より小さい側にあるときには、制御手段により伸縮ブームの伸縮作動とサブウインチの巻上げ・巻下げ作動をそれぞれ禁止するように制御するので、もしサブワイヤーロープがジブ先端部に設けた外れ止めピンに接触する状態が発生しても、該サブワイヤーロープと外れ止めピンとが相対移動することがない。
従って、現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶している上記記憶角度に達している状態(サブワイヤーロープが外れ止めピンに接触している虞れがある状態)での、サブワイヤーロープと外れ止めピンとの擦れによる問題(サブワイヤーロープの損傷)を未然に防止できるという効果がある。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、請求項1の安全制御装置において、伸縮ブームを全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態のときには制御手段による作動禁止制御をそれぞれ自動で解除できるようにしているので、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階(いずれも伸縮ブームを全縮小付近まで縮小させた状態で行う)において、特別な制御解除操作なしで伸縮ブーム及びサブウインチの各作動をそれぞれ許容することができる。
従って、この請求項2の安全制御装置では、制御手段が上記請求項1の制御を行うものであっても、伸縮ブーム全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小させた状態で行われるジブ振出し操作及びジブ格納操作を、特別な制御解除操作をすることなくそれぞれ連続して行うことができる(操作性を良好にし得る)という効果がある。尚、この請求項2において、伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲を超えて伸長しているときには伸縮ブームとサブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ自動で行うようになっている。
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、請求項1の安全制御装置において、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さ以下のときには制御手段による作動禁止制御をそれぞれ自動で解除できるようにしたものであるが、セカンドブーム伸長長さ以下の比較的低高さでジブの振出しを行う場合は、ジブ振出し作業時におけるジブの状況をキャビン内のオペレータが目視により比較的容易に確認し得る。
従って、この請求項3の安全制御装置では、セカンドブーム伸長長さ以下の比較的低高さ領域においては制御手段による制御を解除するので、支障発生の程度が少ない領域での伸縮ブーム及びサブウインチの作動を自由に行わせることができ、制御手段が上記請求項1の制御を行うものであっても、伸縮ブーム及びサブウインチによる作動可能領域を拡大できる(操作性を良好にし得る)という効果がある。尚、この請求項3において、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときには伸縮ブームとサブウインチに対する作動禁止制御をそれぞれ自動で行うようになっている。
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明の安全制御装置では、ジブが伸縮ブームに対して離間した側から近接する側に揺動する際において、ジブ角度検出手段で検出した現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段で記憶しているジブ対鉛直線角度に達したときに、制御手段によりジブ倒伏側作動を禁止するようにしたものである。
このように、請求項4の安全制御装置では、ジブが伸縮ブームに対して離間した側から近接する側に揺動する際に、サブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する前にジブの倒伏側作動(ジブ対鉛直線角度減少側作動となる)が禁止されるので、伸縮ブームを定姿勢(固定角度)でジブを倒伏側に揺動させる際には、サブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する事態は発生しない。
従って、この請求項4の安全制御装置では、上記条件での操作中には必然的にサブワイヤーロープが外れ止めピンに接触しないので、該サブワイヤーロープが外れ止めピンに擦れることによる損傷から保護できるという効果がある。
[本願請求項5の発明の効果]
本願請求項5の発明では、上記請求項4の安全制御装置において、制御手段の作動時には、ジブ倒伏側作動の禁止とともに伸縮ブーム倒伏側作動も禁止するようにしたものである。
従って、この請求項5の安全制御装置では、サブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する前にジブ対鉛直線角度減少側作動の全てが禁止されるので、サブワイヤーロープが外れ止めピンに接触する事態を確実に防止できる(サブワイヤーロープが外れ止めピンに擦れることによる損傷から保護できる)という効果がある。
[本願請求項6の発明の効果]
本願請求項6の発明は、請求項4又は5の安全制御装置において、伸縮ブームを全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態のときには制御手段による作動禁止制御をそれぞれ自動で解除できるようにしているので、ジブを格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階(いずれも伸縮ブームを全縮小付近まで縮小させた状態で行う)において、特別な制御解除操作なしでジブの倒伏側作動(又はジブ倒伏側作動と伸縮ブーム倒伏側作動の両方)を許容することができる。
従って、この請求項6の安全制御装置では、制御手段が上記請求項4又は5の制御を行うものであっても、伸縮ブーム全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小させた状態で行われるジブ振出し操作及びジブ格納操作を、特別な制御解除操作をすることなくそれぞれ連続して行うことができる(操作性を良好にし得る)という効果がある。尚、この請求項6において、伸縮ブームが全縮小付近の所定長さ範囲を超えて伸長しているときには伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ自動で行うようになっている。
[本願請求項7の発明の効果]
本願請求項7の発明は、請求項4又は5の安全制御装置において、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さ以下のときには制御手段による作動禁止制御をそれぞれ自動で解除できるようにしたものであるが、セカンドブーム伸長長さ以下の比較的低高さでジブの振出しを行う場合は、ジブ振出し作業時におけるジブの状況をキャビン内のオペレータが目視により比較的容易に確認し得る。
従って、この請求項7の安全制御装置では、セカンドブーム伸長長さ以下の比較的低高さ領域においては制御手段による制御を解除するので、支障発生の程度が少ない領域での伸縮ブーム及びジブの作動を自由に行わせることができ、制御手段が上記請求項4又は5の制御を行うものであっても、ジブ倒伏側作動(又はジブ倒伏側作動と伸縮ブーム倒伏側作動の両方)の可能領域を拡大できる(操作性を良好にし得る)という効果がある。尚、この請求項7において、伸縮ブームの伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときには伸縮ブームとジブに対する作動禁止制御をそれぞれ自動で行うようになっている。
[実施例]
本願の実施例の説明においても、発明の名称として単に「安全制御装置」と表現する。又、本願発明(安全制御装置)の実施例としては、図9に示す第1実施例と、図10に示す第2実施例の2つを採用している。そして、図9に示す第1実施例の安全制御装置は、本願請求項1と4と5(請求項5は請求項4の従属項)に対応するものであり、図10に示す第2実施例の安全制御装置は、本願請求項2及び3(いずれも請求項1の従属項)と本願請求項6及び7(いずれも請求項4の従属項)にそれぞれ対応するものである。
本願の各実施例の安全制御装置は、図1〜図8に示すジブ付きクレーンに適用するものであるが、この図1〜図8のジブ付きクレーンは、上記した「背景技術」の項で説明したように、ジブ4を、図1に示す伸縮ブーム3の下面に沿わせた格納位置から、図3に示す鉛直方向に向く垂下姿勢を経て、図4に示すブーム先端部3bの前方に向く張出姿勢に位置させるのに、空中において振出し得るように構成されたものである。そして、このジブ付きクレーンの基本的な構成は、例えば特許文献1(特開平5−116888号公報)等によって公知のものであり、且つ上記「背景技術」の項で概略の構成及び作動方法を説明しているが、本願の実施例においてもこのジブ付きクレーンの構成及び作動方法について以下に説明する。
図1に示すジブ付きクレーンは、車両1上に旋回台2を水平旋回自在に搭載し、該旋回台2に伸縮ブーム3の基端部3aを枢支して該伸縮ブーム3をブーム起伏シリンダ30により起伏自在としているとともに、伸縮ブーム3の先端部3bにジブ4を着脱自在に継ぎ足し得るように構成されている。
伸縮ブーム3は、図示例のものでは基端ブーム31と先端ブーム34の間に2本の中間ブーム(セカンドブーム32とサードブーム33)を介在させた4段ブームを採用している。この伸縮ブーム3は、ブーム内に内蔵された伸縮シリンダ(図示省略)によって伸縮せしめられる。そして、図1のジブ付きクレーンでは、図8に示すように、伸縮ブーム3の最縮小状態(ブーム先端部が3bの位置)のブーム長さL1が10m内外であり、セカンドブーム伸長状態(ブーム先端部が3b′の位置)でのブーム長さL2が16〜17mとなっている。又、伸縮ブーム3が全伸長状態(ブーム先端部が3b″の位置)では、ブーム長さL3が30〜31m程度になる。尚、この伸縮ブーム3の長さは、ブーム長さ検出器17によって常時検出されていて、AML制御(転倒防止制御)や本願の第2実施例(図10)での制御用データとして利用されている。
伸縮ブーム3の起伏角度は、ブーム起伏角度検出器12aによって常時検出されていて、AML制御(転倒防止制御)や本願の第1実施例(図9)及び第2実施例(図10)での制御用データとして利用されている。
ジブ4は、格納状態では伸縮ブーム3の基端ブーム31の側面に支持されるが、図1ではジブ4を基端ブーム31の側面位置から下面位置に姿勢変更させた状態を示している。尚、該ジブ4は、図示しない昇降装置で基端ブーム31の側面位置と下面位置の間を変位させ得るようになっている。
図1に示すジブ下抱き姿勢では、ジブ4の基端部4aがブーム先端部3bに支軸40で枢支されていて、ジブ4側の係止ピン49を基端ブーム31側の係止受部39から外すと、支軸40を中心にしてジブ先端側がブーム起伏面内で揺動可能となる。
ジブ4の基端部4a寄り位置は二股状になっていて、該ジブ基端部4a付近の内部は空所41となっている。この空所41は、ジブ4の揺動時にブーム先端部3bから吊下されるメインフック62等が干渉しないようにするための逃げ部となるものである。
ジブ4は、ジブチルト装置5によって図3に示す垂下姿勢と図4に示す張出姿勢との間で揺動させ得るようになっている。このジブチルト装置5は、ジブ4に取付けたジブチルトシリンダ50と一連のテンションロッド51とで構成されている。テンションロッド51は、ブーム側ロッド52(屈伸自在な第1ロッド52aと第2ロッド52bを有している)と、ジブチルトシリンダ50によって押し引き操作されるジブ側ロッド53とを連結・分離自在に連結し得るようにしたものである。そして、このテンションロッド51は、ジブ格納状態ではブーム側ロッド52の第2ロッド52bを上に折畳んで格納しておき(側面視で第1ロッド52aと重合している)、ジブ張出作業時には図1に示すジブ下抱き状態において鎖線図示するように第2ロッド52b′の自由側端部とジブ側ロッド53の自由側端部とを連結させる。
本願実施例の安全制御装置では、後述するようにジブ4の対鉛直線角度を算出するのに、ブーム起伏角度(ブーム起伏角度検出器12aで検出される)とブームに対するジブ角度とから、コントローラ10(図9及び図10参照)に設けたジブ対鉛直線角度演算手段12cで演算して求めるようにしている。そして、この実施例では、ブームに対するジブ角度を検出するのに、ジブチルトシリンダ50に設けたジブチルトシリンダ伸縮長さ検出器12bを利用している。即ち、ブームに対するジブ角度は、ジブチルトシリンダ50の伸縮長さで決まるので、該ジブチルトシリンダ伸縮長さ検出器12bでジブチルトシリンダ50の伸縮長さを検出することで、該ブームに対するジブ角度を求めることができる。
伸縮ブーム3の基端側(図示例では旋回台2上)には、メインウインチ6とサブウインチ7とが並置されている。そして、メインウインチ6からはメインワイヤーロープ61が延出されていて、該メインワイヤーロープ61の先端側をブーム先端部3bの上シーブ35及び下シーブ37に巻掛けた後、該メインワイヤーロープ先端部にメインフック62を取付けている。他方、サブウインチ7からはサブワイヤーロープ71が延出されていて、該サブワイヤーロープ71の先端側をブーム先端部3bの上シーブ36及び前シーブ38に巻掛けた後、該サブワイヤーロープ先端部にサブフック72を取付けている。
ジブ4の先端部4bには、図5及び図7に拡大図示するように、左右に若干間隔を隔てた2枚の側板42,42を取付け、該両側板42,42間の先部側寄りにジブ先端シーブ43を取付けている。又、図示例のものでは、該両側板42,42間の基部寄りに補助シーブ44を取付けており、サブウインチ7から繰出したサブワイヤーロープ71の先端側を、上シーブ36、前シーブ38、補助シーブ44、及びジブ先端シーブ43を介してジブ先端部下方に導くようにしている。
ジブ先端部4bの側板42には、ジブ先端シーブ43の外周の近傍位置にピン穴45が形成されている。このピン穴45には、ジブ先端シーブ43に巻掛けたサブワイヤーロープ71が該ジブ先端シーブ43から外れるのを防止するための外れ止めピン46が抜き挿し自在に挿入される。
このジブ付きクレーンについてのジブ振出し方法は、上記「背景技術」の項で詳細に説明しているので、ここでは重複説明を避けるために概略のみを説明する。
まず、図1に示す伸縮ブーム3の格納状態(略水平姿勢)において、テンションロッド51を連結した後(第2ロッド52b′の状態)、図2に示すように伸縮ブーム3を所定角度(例えば50°〜60°)だけ起仰させ、この状態で補助ロープ9をセットする。即ち、一端を基端ブーム31に固定した補助ロープ9の先端をジブ先端部4b(ジブ先端シーブ43)を介してブーム先端部から垂下させているサブワイヤーロープ71の先端(サブフック72)に連結した後、サブウインチ7を巻上げ作動して補助ロープ9とサブワイヤーロープ71(サブフック72)を鎖線図示するように緊張させる。その後、サブウインチ7をゆっくり巻下げ作動させることにより、図3に示すようにジブ4をブーム先端部3bから鉛直姿勢状態で垂下させることができる。
次に、図3の状態から、補助ロープ9を外し、サブウインチ7を巻下げ作動させ、サブワイヤーロープ下端寄り部分(符号71′部分)をジブ先端シーブ43側に押し込んだ状態でジブ先端部4bのピン穴45に外れ止めピン46(図5)を挿入する。
次に、ジブチルト装置5のジブチルトシリンダ50を伸長させると、ジブ4を図4に示すジブ張出姿勢位置まで振り出すことができる。
ところで、上記のようなジブ空中振出し式のジブ付きクレーンでは、ジブ振出し前方側の近傍位置にジブ振出し作業の障害物(例えば図8に示すように架線Mや構築物N,N′等)がある場合には、ジブ4が障害物に対面した状態で該ジブ4を振出し操作することができない。
そこで、ジブ振出し前方側の近傍位置に障害物(図8のM,N,N′等)がある場合には、伸縮ブーム3を大きく起仰させた状態(例えば図6の状態)で、伸縮ブーム3を所定長さ伸長させて、ジブ振出し時にジブ4が障害物に干渉しない高さ(例えばジブ4が図8における符号4′又は符号4″の高さ)まで持ち上げた状態でジブ振出し操作を行う。尚、伸縮ブーム3を伸長させるときは、過巻き防止(フック衝突防止)のためにメインワイヤーロープ61及びサブワイヤーロープ71を各ウインチから繰出しながら行う。
ところで、ジブ4をブーム先端部3bから下向きに垂下させ且つサブワイヤーロープ71の先端側をジブ先端部4bにおけるジブ先端シーブ43と外れ止めピン46間に通した状態では、ジブ4の対鉛直線角度が小さくなるほどサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間するようになる。即ち、図3に示すジブ鉛直姿勢では、図5に拡大図示するようにサブフック72を吊下げているサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間して外れ止めピン46に接触している。
そして、例えば図3(図5に拡大図示)に示すように、サブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触している状態で伸縮ブーム3を伸長させると(メインウインチ6及びサブウインチ7の巻下げ作動を併用)、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46とが擦れながら相対移動し、該サブワイヤーロープ71が損傷(摩耗)する原因になる。
尚、上記したサブワイヤーロープ71と外れ止めピン46との擦れ現象は、伸縮ブーム3の縮小動作時にも発生するとともに、サブウインチ7の巻上げ又は巻下げ動作でも発生する。
これに対して、ジブ4の垂下姿勢で伸縮ブーム3を伸長させる際に、図6(図7に拡大図示)に示すようにジブ4を鉛直線に対して所定角度θ(例えばθ=約31°程度)を持たせた状態で行うと、サブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に接触(外れ止めピン46からは離間)した状態で相対移動するが、そのときジブ先端シーブ43は回転するのでサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に擦れることはない(サブワイヤーロープ71が摩耗しない)という特性がある。
ところで、ジブ4を垂下させた姿勢において、サブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43に接触しているのか外れ止めピン46に接触しているのかを判別するのに、従来では、キャビン21内からオペレータがジブ4の垂下姿勢(ジブ対鉛直線角度)を目視して勘により判断していたため確実性がなく、ときには勘違いによりサブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触しているジブ垂下姿勢で伸縮ブーム3の伸縮動作を行うこともある。従って、その場合には、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46との擦れが発生して好ましくない。
そこで、本願発明は、ジブ4の垂下姿勢において、サブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間した状態(外れ止めピン46に接触する可能性がある状態)では、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46とが相対移動するような作動を禁止するとともに、ジブ姿勢が後述する不適正姿勢にならないように制御し得る安全制御装置を提供するものである。
「図9に示す第1実施例の安全制御装置」
図9に示す第1実施例の安全制御装置について、図1〜図8を併用して説明すると、この第1実施例の安全制御装置は、上記構成を有したジブ付きクレーンにおいて、現状のジブ対鉛直線角度を検出するジブ角度検出手段12と、ジブ先端部4bから鉛直姿勢で垂下しているサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間する直前のジブ姿勢からサブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触する直前(まだ接触していない)のジブ姿勢までのジブ角度範囲内での所定のジブ対鉛直線角度θ(例えば図6、図7近辺の状態)を記憶しているジブ角度記憶手段13と、ジブ角度検出手段12で検出した現状のジブ対鉛直線角度とジブ角度記憶手段13で記憶しているジブ対鉛直線角度θとを比較手段14で比較して該比較手段14がONになったときに本願請求項1に対応する制御と本願請求項4(及び5)に対応する制御の両方を行う制御手段11とを備えている。
図9の第1実施例では、ジブ角度検出手段12として、伸縮ブーム3の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器12aと、ジブ4の対ブーム角度を検出するためのジブチルトシリンダ50の伸縮長さ検出器12bと、該両検出器12a,12bでそれぞれ検出され
た各検出値に基いて現状のジブ対鉛直線角度を演算するジブ対鉛直線角度演算手段12cとで構成している。
ジブ対鉛直線角度演算手段12cはコントローラ10に設けられている。そして、該ジブ対鉛直線角度演算手段12cでは、ジブチルトシリンダ伸縮長さ検出器12bで検出されたジブチルトシリンダ伸縮長さに基くジブ4の対ブーム角度と、ブーム起伏角度検出器12aで検出されたブーム起伏角度を演算することで、現状のジブ対鉛直線角度を求めるようになっている。尚、このジブ角度検出手段12としては、他の実施例ではジブ側面に重錘式の角度検出器(ブーム起伏角度検出器12aと同様のもの)を設けたものでもよい。
上記ジブ角度記憶手段13は、コントローラ10に設けられていて、制御対象となるジブ対鉛直線角度を記憶するものである。尚、このジブ角度記憶手段13に記憶されたジブ対鉛直線角度は、以下の説明では単に「記憶角度」ということがある。このジブ角度記憶手段13に記憶される記憶角度は、ジブ先端部4bから鉛直姿勢で垂下しているサブワイヤーロープ71がジブ先端シーブ43から離間する直前のジブ姿勢からサブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触する直前(まだ接触していない)のジブ姿勢までのジブ角度範囲内での所定のジブ対鉛直線角度であって、この実施例では、図6及び図7に示すジブ対鉛直線角度θ(角度θ=31°)近辺のものである。即ち、図6(及び図7)のジブ対鉛直線角度θからジブ角度が小さくなっていくと、補助シーブ44より下側のサブワイヤーロープ71部分がジブ先端シーブ43から離間する可能性があり、この実施例では、ジブ角度記憶手段13に記憶される記憶角度として図6及び図7に示すジブ対鉛直線角度θ(31°)近辺の角度が設定されている。
この第1実施例で使用している制御手段11は、コントローラ10に設けられたもので、ジブ角度検出手段12(ジブ対鉛直線角度演算手段12c)による現状のジブ対鉛直線角度とジブ角度記憶手段13に記憶している記憶角度θとを比較する比較手段14と、該比較手段14からの信号を受けて作動する2つの出力手段15,16を有している。
比較手段14は、現状のジブ対鉛直線角度(ジブ角度検出手段12で検出される)が記憶角度θ(ジブ角度記憶手段13に記憶している)より小さい側にあるとき、及びジブ4が伸縮ブーム3に対して離間した側(ジブ対鉛直線角度が大きい状態)から近接する側に揺動する際において現状のジブ対鉛直線角度(ジブ角度検出手段12で検出される)が記憶角度θ(ジブ角度記憶手段13に記憶している)に達したときに、2つの出力手段15,16に対して同時に作動指令信号を発信するものである。尚、この実施例では、現状のジブ対鉛直線角度が記憶角度θ以下のときの全ての範囲で、比較手段14がON作動するようになっている。
そして、この制御手段11は、現状のジブ対鉛直線角度が上記記憶角度θより大きい状態では比較手段14がOFFのままであって、各出力手段15,16がOFFのままである。尚、この状態では、伸縮ブーム3の伸縮作動、サブウインチ7の巻上げ・巻下げ作動、伸縮ブーム3の倒伏側作動、及びジブ4の倒伏側作動は、それぞれ制限されない。
他方、現状のジブ対鉛直線角度(ジブ角度検出手段12で検出される)が記憶角度θ(ジブ角度記憶手段13に記憶している)より小さい側にあることを比較手段14が認識している状態では、該比較手段14から第1の出力手段15及び第2の出力手段16にそれぞれ作動指令信号が発信される。すると、第1の出力手段15からの信号により、伸縮ブーム3の伸縮作動を禁止する制御A(具体的には伸縮ブーム3の伸縮シリンダへの作動油供給を禁止する)と、サブウインチ7の巻上げ・巻下げ作動を禁止する制御B(具体的にはサブウインチ7の油圧モータへの作動油供給を禁止する)とが同時に行われる一方、第2の出力手段16からの信号により、伸縮ブーム3の倒伏側作動を禁止する制御C(具体的にはブーム起伏シリンダ30の縮小側への作動油供給を禁止する)と、ジブ4の倒伏側作動を禁止する制御D(具体的にはジブチルトシリンダ50の縮小側への作動油供給を禁止する)とが同時に行われる。
図9の安全制御装置において、本願請求項1に対応する制御手段11は比較手段14と第1の出力手段15が担当し、本願請求項4及び5に対応する制御手段11は比較手段14と第2の出力手段16が担当する。尚、本願請求項4で採用される制御手段11では、第2の出力手段16からの作動信号は、制御Dで示すジブ4の倒伏側作動を禁止するものだけでもよい(制御Cは行わなくてもよい)。
制御手段11の第1の出力手段15から伸縮ブーム3及びサブウインチ7に対してそれぞれ作動禁止信号が発せられる時点では、サブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に近接又は接触している可能性があるが、このとき伸縮ブーム3及びサブウインチ7に対してそれぞれ作動禁止制御(図9の制御Aと制御B)がかかるので、サブワイヤーロープ71とジブ先端部4bとが相対移動しなくなる(サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46とが擦れない)。尚、制御手段11から上記作動禁止信号が発せられた後、ブーム起伏シリンダ30又はジブチルトシリンダ50を起仰側に作動させて、ジブ4の対鉛直線角度を上記記憶角度θより大きくすれば(このときサブワイヤーロープ71は外れ止めピン46から確実に離間する)、上記制御手段11の制御が解除されて、該伸縮ブーム3及びサブウインチ7の各作動が許容される。
他方、制御手段11の第2の出力手段16から作動禁止信号が発せられる時点は、現状のジブ対鉛直線角度が上記記憶角度θに達したときであり、この状態はサブワイヤーロープ71が外れ止めピン46に接触していない状態である。そして、この状態で第2の出力手段16から伸縮ブーム3及びジブ4に対してそれぞれ倒伏側作動を禁止する制御(図9の制御Cと制御D)が発信されると、現状のジブ対鉛直線角度がそれ以上、小さくなることがないので、サブワイヤーロープ71とジブ先端部4bとが相対移動するような操作(例えば伸縮ブーム3の伸縮操作やサブウインチ7の巻上げ・巻下げ操作)を行っても、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46が擦れることはない。
尚、ジブ4を格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階では、伸縮ブーム3及びサブウインチ7を作動させる操作や、伸縮ブーム3やジブ4を倒伏側(ジブ対鉛直線角度減少側)に作動させる操作をそれぞれ許容する必要があるが、この第1実施例の安全制御装置では、制御手段11の機能をキャンセルするスイッチを設けておいて、該制御手段11による作動禁止機能が邪魔になるときには該制御手段11の機能をスイッチ操作によりOFFにすればよい。
「図10に示す第2実施例の安全制御装置」
図10に示す第2実施例の安全制御装置は、本願の請求項2と3及び請求項6と7に対応るものである。
この図10の第2実施例の安全制御装置では、上記第1実施例(図9)の安全制御装置の構成に加えて、伸縮ブーム3の現状長さを検出するブーム長さ検出器17と、制御対象となるブーム長さを記憶しているブーム長さ記憶手段18と、ブーム長さ検出器17で検出した現状ブーム長さとブーム長さ記憶手段18で記憶している記憶ブーム長さとを比較する比較手段19と、該比較手段19からのON信号を受けて上記した角度比較用の比較手段14に対して制御解除信号を発する解除手段20とを有している。
尚、この第2実施例において、2つの比較手段14,19を識別するために、符号14で示す角度比較用の比較手段を角度比較手段と表現し、符号19で示す長さ比較用の比較手段を長さ比較手段と表現する。又、以下の説明では、ブーム長さ記憶手段18で記憶しているブーム長さを記憶ブーム長さということがある。
ブーム長さ記憶手段18に記憶させる記憶ブーム長さとしては、本願請求項2と6に対応するように、伸縮ブーム3が全縮小付近の所定長さ範囲内まで縮小している状態(例えば伸縮ブーム3の全縮小状態から50cm程度伸長した状態までの長さ範囲内)のときのブーム長さを設定する場合と、本願請求項3と7に対応するように、伸縮ブーム3の伸長長さがセカンドブーム伸長時のブーム長さを設定する場合とがある。
そして、ブーム長さ記憶手段18に伸縮ブーム3が全縮小付近まで縮小している状態のブーム長さを記憶させている場合は、ブーム長さ検出器17で検出した現状のブーム長さが当該記憶ブーム長さ以下であるときには、長さ比較手段19がON作動して、該長さ比較手段19から解除手段20を作動させる信号を発し、もし角度比較手段14がON作動中(現状のジブ対鉛直線角度がジブ角度記憶手段13で記憶している記憶角度θ以下の状態)であっても、該角度比較手段14をOFFにするようになっている。
このように、伸縮ブーム3が全縮小付近まで縮小している状態(長さ比較手段19がON)では、角度比較手段14が作動し得る条件下であっても、長さ比較手段19からの信号で解除手段20を作動させ、続いて該解除手段20が角度比較手段14を自動でOFFにするので、特別な制御解除操作をすることなしに図10における符号A,B,C,Dの各制御を全て起こせなくすることができる。
従って、第1実施例のように、ジブ角度が上記した特定条件下で各種の制御A,B,C,Dが行われるものであっても、ジブ4を格納姿勢から振出す際の初期段階及びジブ格納終期段階において、角度比較手段14がONであるかOFFであるかにかかわらず、長さ比較手段19がONになることで、伸縮ブーム3やサブウインチ7やジブ4等を通常通り自由に作動させることができる。
又、ブーム長さ記憶手段18に伸縮ブーム3の伸長長さがセカンドブーム伸長時のブーム長さを記憶させている場合(本願請求項3及び6に相当する)は、ブーム長さ検出器17で検出した現状のブーム長さが当該記憶ブーム長さ以下(ブーム先端部の高さが例えば図8におけるL2以下)であるときには、長さ比較手段19がON作動して、該長さ比較手段19から解除手段20を作動させる信号を発し、もし角度比較手段14がON作動中であっても、該角度比較手段14をOFFにできるようになっている。尚、伸縮ブーム3の伸長長さがセカンドブーム伸長時の長さを超えているときには、長さ比較手段19がOFFのままで解除手段20も非作動であるので、角度比較手段14がON作動中であると上記各種の制御A,B,C,Dが行われる。
このように、ブーム先端部の高さが例えば図8の符号3b′付近の比較的低高さ(セカンドブーム伸長長さでL2の高さ)では、垂下姿勢のジブ4′の先端部4b′付近がキャビン21から比較的近い(例えば7m内外の距離)ので、キャビン21内のオペレータがジブ対鉛直線角度の概略やジブ先端部4b′付近の状態等を目視により比較的容易に確認できる。そして、この場合は、セカンドブーム伸長長さ以下の比較的低高さ領域においては制御手段11による各制御A,B,C,Dを解除するので、支障発生の程度が少ない領域での各種作動を自由に行わせることができ、制御手段11が上記各制御を行うものであっても、伸縮ブーム3やサブウインチ7やジブ4等の作動可能領域を拡大できる(操作性を良好にし得る)。
尚、この第2実施例において、伸縮ブーム3の伸長長さがセカンドブーム伸長長さ(図8のL2)を超えて長くなっていく(高さが高くなる)と、ジブ4がキャビン21から遠ざかることにより、キャビン21内のオペレータがジブの状況を見づらくなっていく。例えば、伸縮ブーム3が全伸長したときには、図8において、ブーム先端部の高さが符号3b″の位置(L3の高さ)まで上昇してしまい、キャビン21からはジブ4″の対鉛直線角度状況やジブ先端部4b″付近の状況等が非常に見ずらくなるが、伸縮ブーム3の伸長長さがセカンドブーム伸長長さ(図8のL2)を超えると、制御手段11が作動可能状態になるので、サブワイヤーロープ71と外れ止めピン46とが擦れるような動作は起こせないので安全である。