JP5795926B2 - ポリ乳酸系樹脂発泡シート、及び、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法 - Google Patents
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例えば、下記特許文献1においては、ポリ乳酸系樹脂発泡シートに対してマッチモールド成形などの熱成形を実施してグラタン容器などの成形品を形成させることが記載されている(特許文献1の実施例等参照)。
しかし、ポリ乳酸系樹脂は、結晶化の進行に伴って脆性が顕著になる傾向があり、ポリ乳酸系樹脂発泡シートを形成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度を向上させすぎると、熱成形における加工性を低下させるおそれを有するとともに得られる成形品も割れ易いものとなってしまうおそれを有する。
また、本発明の製造方法によればこのようなポリ乳酸系樹脂発泡シートを容易に得ることができる。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、ポリ乳酸系樹脂を含む樹脂組成物(以下「ポリ乳酸系樹脂組成物」ともいう)が押出発泡されてシート状に形成されたものであり、マッチモールド成形などの熱成形によって成形品を形成させるべく用いられるものである。
本実施形態においては、このポリ乳酸系樹脂発泡シートを、熱成形が容易で、且つ、強度や耐熱性に優れたものとする上において、その厚み方向中央部を形成しているポリ乳酸系樹脂が表層部を形成しているポリ乳酸系樹脂よりも結晶化度を低くさせていることが重要である。
従って、それぞれの厚みがポリ乳酸系樹脂発泡シートの約3分の1となるように1枚のポリ乳酸系樹脂発泡シートを3枚にスライスし、この3枚の試料についてそれぞれ熱流束示差走査熱量測定を実施して結晶化度を求めることで、表層部と厚み方向中央部との結晶化度の比較を行うことができる。
また、厚みを約3等分にするスライス加工が困難であれば、研磨機などを使って、ポリ乳酸系樹脂発泡シートを一面側から研削し、厚みが3分の1程度になるまで研削して表層部における結晶化度を求めるための試料とすることができる。
さらに、厚み方向中央部における結晶化度を求めるための試料は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートを両面側から略均等に研削し、厚みが3分の1程度になるまで研削することで得ることができる。
結晶化度(%)=〔融解吸熱量(mJ)−結晶化発熱量(mJ)〕/完全結晶の融解熱量(mJ)×100(%)
(ただし、ポリ乳酸系樹脂の完全結晶の融解熱量を93mJとする。)
なお、本実施形態においては、厚み方向中央部において示される結晶化度を表層部において示される結晶化度よりも低い値にすることをポリ乳酸系樹脂発泡シートの耐熱性や成形性との関係から重要な要件としているが、過度に結晶化度を異ならせるとシート全体の結晶化度のバランスが悪くなり、シートの物性強度が落ちてしまうとともに、成形時に割れなどが発生してしまうおそれがある。
また、一方で結晶化度を過度に近似させるとポリ乳酸系樹脂発泡シートが、柔軟性の不十分な、成形時に割れを生じさせやすいものとなるおそれを有する。
従って、ポリ乳酸系樹脂発泡シートを、柔軟性に優れ、成形時に優れた伸びを示し、成形品に割れや外観不良といった不具合が生じることを抑制させる効果に優れたものとする上においては、厚み方向中央部において示される結晶化度(Ci)と表層部において示される結晶化度(Cs)との差(Cs−Ci)は、3.0% 以上8.0%以下となるように調整することが好ましい。
即ち、表層部、及び、厚み方向中央部に対して熱流束DSCを実施した際に、結晶化発熱量がほぼゼロに近く、熱流束DSCでは結晶化発熱量が実質上観測されないような状態になっていることが好ましい。
本実施形態においては、表層部と厚み方向中央部とも同じポリ乳酸系樹脂組成物で形成させているために通常であれば到達する最大結晶化度の値は同じになるはずである。
一方で、本実施形態においては、後述するように表層部を選択的に加熱して結晶化度を向上させる操作を実施して表層部と厚み方向中央部との間に結晶化度の相違を設けている。
また、本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、さらに、以下のような特性を有していることが好ましい。
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、見掛け密度が0.03〜0.1g/cm3であることが好ましく、0.03〜0.08g/cm3であることがより好ましい。
これは、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの見掛け密度を0.03g/cm3以上とすることで当該ポリ乳酸系樹脂発泡シートの熱成形性がより一層良好となり成形型の型面への追従性に優れ、求める形状の成形品を得られやすいためであり、しかも、得られる成形品を強度に優れたものとすることができるためである。
また、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの見掛け密度を0.1g/cm3以下とすることで、当該ポリ乳酸系樹脂発泡シートを熱成形して得られる成形品を軽量性、断熱性、緩衝性に優れたものとすることができるためである。
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの厚みは、0.5〜7mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましく、2〜5mmであることが特に好ましい。
これは、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの厚みを0.5mm以上とすることで得られる成形品を高強度なものとすることができるためであり、また、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの厚みを7mm以下とすることにより、当該ポリ乳酸系樹脂発泡シートの熱成形性が良好となるためである。
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その平均気泡径が、0.1〜1mmであることが好ましく、0.1〜0.8mmであることがより好ましく、0.1〜0.6mmであることが特に好ましい。
これは、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの平均気泡径を0.1mm以上とすることで、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの連続気泡率を低い値にさせやすくなるためであり、その結果、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの熱成形性が良好になり、得られる成形品も軽量性に優れたものとなるためである。
また、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの平均気泡径を1mm以下とすることにより、得られる成形品を断熱性、緩衝性等に優れたものとすることができる。
具体的には、ポリ乳酸系樹脂発泡シートをMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する幅方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−3000N)で拡大して視野を変えて写真を各2枚撮影し、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、各画像上に長さ60mmの直線を3本(MD方向に合計6本、TD方向にも合計6本)描いてこの直線上に存在するそれぞれの方向の平均気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式によりそれぞれ算出し、この平均弦長から下記式により各方向(MD方向、TD方向、VD方向)の気泡径をそれぞれ算出することができる。
平均弦長:t=60(mm)/(気泡数×写真の倍率)
気泡径:D=t/0.616(mm)
なお、通常、MD方向に切断した切断面についてはMD方向に平行に、TD方向に切断した切断面についてはTD方向に平行に直線を描いて上記気泡径を算出する。
さらにVD方向(厚み方向)は、MD、TDそれぞれ1枚の画像上に直線を描いて、上記と同様に気泡径を算出することができる。
このとき、通常、直線上に気泡が10〜20個存在するように、上記電子顕微鏡での拡大倍率を調整し、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるように留意する。
そして、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含めて計算を行う。
即ち、下記式により、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの平均気泡径を算出することができる。
平均気泡径(mm)=(DMD×DTD×DVD)1/3
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの連続気泡率は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの連続気泡率を50%以下とすることで、当該ポリ乳酸系樹脂発泡シートの機械的強度、及び熱成形時の二次発泡性が特に優れたものとなり、且つ、該ポリ乳酸系樹脂発泡シートを熱成形した成形品を、機械的強度や型再現性などにおいて優れたものとすることができる。
連続気泡率(%)=(V0−V)/V0×100
なお、上記式において、「V」は上記した方法で測定される試験片の体積(cm3)、「V0」は測定に使用した試験片の外形寸法から計算される試験片の見掛けの体積(cm3)である。
該ポリマーとしては、(1)乳酸の重合体、(2)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(3)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(4)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(5)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(6)前記(1)〜(5)の何れかの組み合わせによる混合物等を挙げることができる。
なお、上記乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物を挙げることができる。
このようなポリ乳酸系樹脂が好ましいのは、前記ポリ乳酸系樹脂組成物を発泡させた際における発泡性、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの熱成形性、及び、該ポリ乳酸系樹脂発泡シートを熱成形して得られる成形品の耐熱性をそれぞれ優れたものとすることができるためである。
ただし、特に優れた結晶性を示すポリ乳酸系樹脂は、一般的に溶融張力が低いため、化学架橋や電子線架橋などの方法で架橋を施したり、高分子量成分を混合するなどして樹脂の溶融張力を高め、押出発泡性を向上させたものが好適に用いられ得る。
このような溶融張力を高めた結晶性に優れるポリ乳酸系樹脂としては、例えば、ユニチカ社製、商品名「テラマックHV6250H」、「テラマックHV8250H」、ネイチャーワークス社製、商品名「INGEO8251D」などの市販品を採用することができる。
なお、ポリ乳酸系樹脂組成物に含有させうるポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
本実施形態においては、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの耐衝撃性を向上させうる点において熱可塑性エラストマーをポリ乳酸系樹脂組成物に含有させることが好ましい。
この熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、エステル系エラストマーが挙げられるが、それらの中でもポリ乳酸系樹脂との相溶性が高い、アクリル系エラストマー、酸変性させたスチレン系エラストマー、エステル系エラストマーが好ましい。
具体的には、三菱レーヨン社製、商品名「メタブレンW-600A」、旭化成社製、商品名「タフテックMP10」、日油社製、商品名「ノフアロイTZ810」などの市販品を好適に採用することができる。
これらの中でも、ノルマルブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素が好ましい。尚、前記発泡剤として、上記物理発泡剤の他、化学発泡剤、或いは物理発泡剤と化学発泡剤とを併用して使用することもできる。
特にタルクやポリテトラフルオロエチレンが気泡調整の容易さの点で好ましい。
また、前記気泡調整剤には、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩系の気泡調整剤を適宜含有させることもできる。
また、加熱ロールを当接させる方法は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートとの接触時間を調整させ易い点においても、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの表層部の結晶化度を調整するのに公的である。
なお、結晶化発熱ピークがはっきりと確認できないような状態にまで結晶化が進行した状況から、さらに結晶化度が向上しているかどうかについては融解吸熱量が増大するか否かによって確認することができる。
しかも、シート厚み方向中央部を形成しているポリ乳酸系樹脂の方が表層部を形成しているポリ乳酸系樹脂よりも結晶化度が低くなるようにすることで熱成形においてシート表面が過度に軟化してしまう前に厚み方向中央部を軟化させ得る。
即ち、熱成形に際して表層部を形成しているポリ乳酸系樹脂がある程度の溶融粘度を有し良好な伸びを示す状態でポリ乳酸系樹脂発泡シートを型面形状に賦形することができるため、型面に対する追従性も優れたものとなる。
従って、本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートにより形成される成形品は、耐熱性及び耐衝撃性に優れたものとなる。
このようなことから本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートを用いて作製する成形品としては、弁当箱、カップ麺容器、果物容器、野菜容器等の食品包装容器、精密機器、電気製品の緩衝包装容器等が好適な態様として例示することができる。
まず、第一押出機(L/D:29、口径φ:50mm)の先端に接続配管を介して第二押出機(L/D:34、口径:65mm)が接続されてなるタンデム型押出機を用意した。
そして、結晶性ポリ乳酸樹脂(ユニチカ社製 商品名「テラマック HV6250H」、融点(mp):166.2℃、D体比率:1.4モル%、L体比率:98.6モル%)および気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を配合した配合樹脂(住化カラー社製 商品名「キノプラス BLBD−A1107」)とを、ポリ乳酸樹脂100質量部に対してPTFE配合樹脂1.0質量部になるように混合し、このタンデム型押出機の第一押出機に供給した。
次に、第一押出機の途中から発泡剤としてブタンを圧入し、溶融状態の溶融樹脂組成物とブタンを均一に混練した上で、この発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。
その後、第二押出機の先端に取り付けたスリット口径70mmのサーキュラー金型から吐出量30kg/h、樹脂温度166℃の条件で該溶融樹脂組成物を押出発泡させ、金型スリットから押出発泡された筒状のポリ乳酸系樹脂発泡シートを冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、カッターにより切開して、平坦シート状のポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製した。
図1に示したように千鳥配置された4本の誘電加熱式の加熱ロール(ロール直径:300mm、ロール温度:140℃)に前記押出発泡によって得られたポリ乳酸系発泡シートを巻き掛けて1m/minのロール速度(シートと加熱ロールとの接触時間:合計105.5秒)で通過させ、該ポリ乳酸系発泡シートの両面を加熱処理した。
得られたシートをそれぞれの厚みがポリ乳酸系樹脂発泡シートの約3分の1になるように1枚のポリ乳酸系樹脂発泡シートを3枚にスライスし、一面側の表層部(シート表面)、他面側の表層部(シート裏面)、及び、厚み方向中央部(シート内部)の3枚の試料についてそれぞれ熱流束示差走査熱量測定により結晶化度を求めた。
4本の誘電加熱ロールの温度を前から順番に120℃、140℃、145℃、160℃とし、速度を3m/min(シートと加熱ロールとの接触時間:合計36秒)としたこと以外は、実施例1と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製した。
このポリ乳酸系樹脂発泡シートも実施例1と同様に結晶化度を求めた。
結果を下記表1に示す。
Claims (4)
- 熱成形に用いられるポリ乳酸系樹脂発泡シートであって、シート厚み方向中央部を形成しているポリ乳酸系樹脂が、表層部を形成しているポリ乳酸系樹脂よりも結晶化度が低く、前記表層部の結晶化度が40%以上で、該表層部とシート厚み方向中央部との結晶化度の差が3%以上8%以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡シート。
- 熱成形に用いられるポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法であって、
発泡剤を含むポリ乳酸系樹脂組成物を押出発泡してポリ乳酸系樹脂発泡シートを形成させた後に、該ポリ乳酸系樹脂発泡シートの両面を加熱して、その表層部を形成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度を向上させることにより、シート厚み方向中央部を形成しているポリ乳酸系樹脂の方が前記表層部を形成しているポリ乳酸系樹脂よりも結晶化度が低く、前記表層部の結晶化度が40%以上で、該表層部とシート厚み方向中央部との結晶化度の差が3%以上8%以下であるポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。 - 前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートを形成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化開始温度よりも高温に加熱された加熱ロールを当接させて前記両面の加熱を実施する請求項2記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。
- 前記押出発泡に続けて前記加熱ロールによる両面の加熱を実施する請求項3記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。
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