以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態にかかる製氷装置1は、製氷皿10を捻れ変形させて製氷皿10内の氷を貯氷容器40に落下させる、いわゆる「捻り式」の製氷装置1である。なお、以下の説明における「原位置」とは、製氷皿10(各セル11)の開口が略上向きである状態をいう。
(製氷装置の全体構成)
まず、製氷装置1の全体構成について説明する。製氷装置1は、製氷皿10と、この製氷皿10に水を供給する給水手段20と、製氷皿10を回転させる製氷皿駆動手段と、氷が貯められる貯氷容器40と、氷容器内の氷量が所定量以上であるか所定量未満であるかを検出する検氷手段と、製氷皿10に取り付けられた静電容量センサ60と、上記給水手段20、製氷皿駆動手段、検氷手段などを制御する図示されない制御ユニットと、を備える。
製氷皿10は、絶縁体である樹脂材料で一体成形された弾性変形可能な部材である。製氷皿10には、一の氷を作るためのセル11が複数(本実施形態では2×5=10個)形成されており、隣り合うセル11同士の間には流路111が形成されている。したがって、一のセル11に流れ込んだ水は、この流路111を通じて隣のセル11に流れ込む。
また、製氷皿10の上部(各セル11の上部)には、周方向に連続した壁部12が形成されている。かかる製氷皿10の壁部12における短手方向の面には、製氷皿10を他の部材と接続する接続部が形成されている。一方の短手方向の面に形成された接続部は、装置の枠体に回転自在に支持される軸状部13である。他方の短手方向の面に形成された接続部は、詳細を後述する製氷皿駆動手段の出力軸33が嵌め込まれる凹部(図示せず)である。さらに、製氷皿10の一方の短手方向の面には、突起14が形成されている。この突起14は、製氷皿駆動手段によって製氷皿10が原位置からその開口が下方に向いた状態まで(略180度)回転すると、装置の枠体に形成された当接片80に当たるような位置に形成されている。つまり、製氷皿10は、その開口が下方に向いた状態まで回転するとその突起14が当接片80に当たって捻れ変形(弾性変形)する。この変形により、各セル11内で作られた氷が貯氷容器40に落下する。
給水手段20は、上記製氷皿10に水を供給する構成であり、一の給水口21および給水口21より根本側(供給される水の上流側)に設けられるバルブ22を備える。制御ユニットは、給水手段20のバルブ22を開閉操作することができる。つまり、制御ユニットによって、一の給水口21から水を製氷皿10に供給するか、供給を停止するかが制御される。
製氷皿駆動手段は、製氷皿10を原位置から離氷位置まで回転させる構成である。製氷皿10を原位置から略180度回転させること(離氷位置まで回転させること)ができる構成であれば、製氷皿駆動手段の構成は特に限定されない。本実施形態では、特開2001−304733号に記載の構成と同一の構成を適用している。つまり、駆動源であるモータ31の駆動力が歯車輪列32を介して出力軸33まで伝達され、出力軸33が回転すると、それに接続されている製氷皿10が回転する構成である。かかる製氷皿駆動手段は、制御ユニットによって制御される。つまり、駆動源であるモータ31が、制御ユニットによって制御される。
貯氷容器40は、製氷皿10の下方に位置する箱状の部材である。したがって、略180度回転した製氷皿10の捻れ変形によって落下した氷は、全てこの貯氷容器40内に収まる。
検氷手段は、貯氷容器40内の氷量が所定量以上であるか所定量未満であるか、すなわち、貯氷容器40内の氷が十分な量であるか否かを検出する。このように所定量以上の氷が貯氷容器40内に存在するか否かを検出することができる構成であれば、検氷手段の構成は特に限定されない。本実施形態では、特開2001−304733号に記載の構成と同一の構成を適用している。簡単に説明すると次の通りである。
検氷手段は、上記製氷皿駆動手段の駆動源であるモータ31を駆動源とする。製氷皿駆動手段と同様に、モータ31の駆動源は歯車輪列32を介してカム車51(出力軸33と一体に構成されている)に伝達される。カム車51が回転すると、その内側に形成されたカム構造(詳細は省略)によってそのカムに係合された検氷軸52が回転する。検氷軸52には、貯氷容器40の上方に位置する検氷部材53が連結されているため、検氷軸52の回転によって検氷部材53が下降する。このとき、貯氷容器40内に所定量以上の氷が存在していれば、その貯氷容器40内の氷によって所定高さより低い位置までの検氷部材53の下降が妨げられ、図示されない押圧スイッチのボタンが押圧されて信号が発生する。つまり、貯氷容器40内の氷が所定量以上であることを示す信号が発生する。一方、貯氷容器40内に所定量未満の氷しか存在しなければ、所定高さより低い位置までの検氷部材53の下降が妨げられず、押圧スイッチのボタンが押圧されない。つまり、押圧スイッチのボタンが押圧された信号が発生しなければ、貯氷容器40内の氷は所定量以上以下であるということである。
このような構成の検氷手段(検氷部材53を除く)は、製氷皿駆動手段と同一のボックス70に収容されて、製氷皿10の短手方向の面に対向して配置されている。
静電容量センサ60は、製氷皿10に取り付けられた二以上の電極61(導電体)を有する。電極61は、各々絶縁されている。この静電容量センサ60は、電極61間に存在する絶縁体の誘電率により変化する電極61間の静電容量を検知するものである。つまり、製氷皿10内部の状況(製氷皿10内部に存在するものが空気(何も存在しない)なのかあるいは水や氷なのか、および、これらの量など)を判断するセンサである。具体的には、空気の誘電率は約1.0、水の誘電率は約80、氷の誘電率は約4.2であるから、これらの誘電率の差による静電容量の変化を基に製氷皿10内部の状況を判断するセンサである。この静電容量センサ60の形状や取付位置、センサの機能の詳細については後述するが、図3に示すように、例えば製氷皿10の対向する長手方向の二面に沿って電極61が取り付けられている。
制御ユニットは、上述したように給水手段20、製氷皿駆動手段、および検氷手段を制御する。加えて、上記静電容量センサ60の電極61間における静電容量の変化により製氷皿10内の水量を検出する水量検出部、静電容量センサ60の電極61間における静電容量の変化により製氷皿10内の水が凍ったこと(製氷皿10内に氷が存在していること)を検出する製氷検出部、および、静電容量センサ60の電極61間における静電容量の変化により製氷皿10内の氷が無くなったこと(製氷皿10内に空気が存在していること)を検出する出氷検出部を有する(以下、これらを纏めて単に「検出部」と称することもある)。なお、これらは、一のコントローラに全ての機能を搭載した構成としてもよいし、複数のコントローラに分割して各機能を搭載してもよい。
(製氷装置の動作)
以上の構成を備える製氷装置1の動作、すなわち、制御ユニットによる動作制御について、図4のタイムチャートおよび図5および図6のフローチャートを参照して説明する。なお、上記構成を有する製氷装置1には、制御ユニット(プログラムや検出部)や静電容量センサ60などを変更すれば、以下で説明する第一の動作例、第二の動作例のどちらを適用することもできる。
1−1.第一の動作例(通常動作)
第一の動作例について説明する。第一の動作例は、以下の(1)工程から(4)工程までの動作を順に繰り返す。
(1)工程では、離氷動作が完了した後、上記製氷皿10が原位置にあること、すなわち、製氷皿駆動手段が原位置にあることを確認する(図5「S1」)。その確認方法はどのような構成であってもよい。例えば、製氷皿10に接続された出力軸33と一体的に回転するカム車51の回転位置をセンシングすることにより、製氷皿10が原位置にあるか否かを判断する。製氷皿10が原位置であると判断した後(図5「S1」Yes)、給水手段20による給水を開始する(図5「S2」)。すなわち、給水手段20のバルブ22を開放し、給水口21から製氷皿10内に水を流し込む。これにより、(1)工程が終了する。
(2)工程は、製氷皿10に所定量の水を注ぎ込む工程である。具体的には、給水時間が経過すればするほど、製氷皿10内を占める空気(誘電率約1.0)の量が減少し、水(誘電率約80)の量が増加していくから、静電容量センサ60によって測定される静電容量値が増加していく。そして、この静電容量センサ60によって測定される静電容量値が第一の閾値(図4参照)以上となるまで給水手段20による給水を続け、測定される静電容量値が第一の閾値以上となったことを水量検出部が検出したこと(図5「S3」Yes)を契機として、製氷皿10内に所定量の水が注ぎ込まれたとして給水手段20による給水を停止する(図5「S4」)。
ここで、「第一の閾値」とは、製氷皿10内に所定量の水が存在する状態での静電容量値に基づいて設定された値のことをいう。具体的には、作成しようとする氷の大きさに必要な水量が製氷皿10内に存在する状態での静電容量値のことをいう。この第一の閾値に相当する静電容量値は、使用する製氷皿10や静電容量センサ60の電極61の配置など、装置の仕様によって変化する。したがって、装置の仕様が決定した後、製氷皿10内に所定量の水が存在している状態で予め静電容量値を測定し、測定した値を第一の閾値として設定しておく。このように、(2)工程が終了すると、作成しようとする氷の大きさに必要な水量が製氷皿10内に存在している状態となる。
(3)工程では、まず、氷点下(摂氏0度未満)の環境下に設置された製氷皿10に注ぎ込まれた所定量の水が凍るまで待機する。具体的には、(2)工程終了後の待機時間が経過すればするほど、製氷皿10内に存在する水(誘電率約80)が氷(誘電率約4.2)に変化していく(徐々に凍っていく)から、静電容量センサ60によって測定される静電容量値が減少していく。そして、製氷検出部が測定した静電容量値が第二の閾値(図4参照)未満となったこと(図5「S5」Yes)をもって、製氷皿10内の水が全て氷となったと判断する。
ここで、「第二の閾値」とは、製氷皿10内の所定量の水が全て氷となった状態での静電容量値に基づいて設定された値をいう。具体的には、製氷皿10内の所定量の水が全て氷となった状態での静電容量値、または、この静電容量値に安全値を加えた値をいう。この第二の閾値を設定するための静電容量値は、使用する製氷皿10や静電容量センサ60の電極61の配置など、装置の仕様によって変化する。したがって、装置の仕様が決定した後、製氷皿10内に所定量の水を凍らせた氷が存在している状態で予め静電容量値を測定し、測定した値、または、この値に安全値を加えた値を第二の閾値として設定する。なお、「安全値」とは、測定誤差による動作不良を防止するための値である。例えば、予め測定された製氷皿10内の所定量の水が全て氷となった状態での静電容量値をそのまま第二の閾値として設定した場合、製氷装置1の運転時に(3)工程で静電容量センサ60によって測定される静電容量値に測定誤差が生ずると、製氷皿10内の水が全て氷になっているにも拘わらず、第二の閾値に到達しない(第二の閾値未満とならない)おそれがある。そのため、予め測定された製氷皿10内の所定量の水が全て氷となった状態での静電容量値よりも少し高い静電容量値、すなわち「安全値」を加えた静電容量値を、「第二の閾値」として設定してもよい。予め測定された製氷皿10内の所定量の水が全て氷となった状態での静電容量値をそのまま第二の閾値とするか、安全値を加えた値を第二の閾値とするかは、用いる静電容量センサ60の精度等に応じて設定するとよい。また、安全値を加えた値を第二の閾値とする場合、測定された静電容量値が第二の閾値未満となっても完全に氷となっていない状態が生ずる可能性があることから、第二の閾値未満となってから所定時間待機した後、以下の検氷動作を行うように制御してもよい。
静電容量値が第二の閾値未満となったことを製氷検出部が検出した後、検氷手段による検氷動作を開始する。上述したように、貯氷容器40内に所定量未満の氷しか存在しなければ、所定高さより低い位置までの検氷部材53の下降が妨げられない。したがって、検氷軸52が所定量以上回転しても、図示されない押圧スイッチのボタンが押圧されて信号が発生することはない。このように、検氷軸52が所定量以上回転(モータ31を所定時間一方に回転)させても図示されない押圧スイッチのボタンが押圧されないということ、すなわち、貯氷容器40内の氷が一定量未満であるということが検出されると(図5「S6」Yes)、製氷皿駆動手段による離氷動作を開始する(図5「S7」)。つまり、「静電容量値が第二の閾値未満となったこと」および「貯氷容器40内の氷が一定量未満である」ことが検出されたことを契機として製氷皿駆動手段による離氷動作を開始する。すなわち、モータ31を一方に回転させることで製氷皿10を約180度回転させて捻れ変形させ、氷を貯氷容器40内に落下させる。なお、製氷皿10を約180度回転させたこと(離氷位置まで回転させたこと)を確認する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、上述した製氷皿10が原位置にあることを確認する方法と同様の方法が適用できる。これにより(3)工程が終了する。
(4)工程では、製氷皿10を原位置に戻す(図5「S1」)。すなわち、モータ31を他方に回転(逆回転)させて製氷皿10を原位置に戻す。そして、再び(1)の工程の動作開始する。このように、第一の動作例は、上記(1)から(4)の工程の動作を繰り返し行う。
1−2.第一の動作例(初期動作)
第一の動作例を採用した場合の初期動作について説明する。なお、初期動作とは、制御ユニット(検出部)が初期化(イニシャライズ)された場合の動作である。なお、制御ユニットが初期化される場合としては、商品購入時や、停電などによって制御ユニットへの通電が停止した状態から復帰した場合が考えられる。
初期状態(初期化された状態)において(図5「S′1」)、測定される静電容量値が第二の閾値以上である場合(図5「S′2」Yes)、まず上記(3)工程の動作を行う。すなわち、測定される静電容量値が第二の閾値以上であるということは、製氷皿10内に水が存在している(水が完全に凍っておらず水と氷が混合している状態等を含む)ということであるから、まず当該製氷皿10内の水が凍るまで待機する。そして、製氷皿10内の水が凍ったこと、つまり、測定される静電容量値が第二の閾値未満となったことを製氷検出部が検出したことを契機として、離氷動作を行う。このようにして(3)工程の動作を行った後、(4)工程、(1)工程、(2)工程・・・というように、上述した順序で通常動作を行う。以上のように、初期状態において測定される静電容量値が第二の閾値以上である場合、製氷皿10内に残っている水を一旦凍らせ、氷として離氷させてから、通常動作に復帰する。
一方、初期状態において、測定される静電容量値が第二の閾値未満であり(図5「S′2」No)、かつ、検氷手段により貯氷容器40内の氷が一定量未満であることを検出した場合には、最初に製氷皿駆動手段による離氷動作を行う。すなわち、測定される静電容量値が第二の閾値未満であるということは、製氷皿10内に氷が存在している状態(水が完全に凍った状態)か、製氷皿10内が空の状態(空気が存在している状態)であるということであるから、氷が存在している状態を想定してその氷を離氷させるべく、製氷皿駆動手段を動作させる。つまり、製氷皿10内に氷が存在している状態であれば、離氷動作によって氷が離氷し製氷皿10内が空の状態となるし、製氷皿10内が空の状態であれば、製氷皿10は空の状態のままである(空の状態である製氷皿10を回転させるだけである)。このように、「製氷皿10内に氷が存在している状態」および「製氷皿10内が空の状態」のいずれであっても、一旦離氷動作を行うことによって製氷皿10内が空の状態となる。その離氷動作の後、(4)工程、(1)工程、(2)工程・・・というように、上述した順序で通常動作を行う。以上のように、初期状態において測定される静電容量値が第二の閾値未満であり、かつ、検氷手段により貯氷容器40内の氷が一定量未満であることを検出した場合には、製氷皿10内に残っている氷を離氷させてから、通常動作に復帰する。
2−1.第二の動作例(通常動作)
第二の動作例について説明する。第二の動作例は、以下の(1)工程から(4)工程までの動作を順に繰り返す。以下で説明するように、第二の動作例では「第三の閾値」を設定している点で、上記第一の動作例と異なる。
(1)工程では、まず、上記製氷皿10が原位置にあること、すなわち、製氷皿駆動手段が原位置にあることを確認する(図6「S1」)。その確認方法は上記第一動作例と同様にどのような構成であってもよい。製氷皿10が原位置であると判断した後、給水手段20による給水を開始する(図6「S2」)。すなわち、給水手段20のバルブ22を開放し、給水口21から製氷皿10内に水を流し込む。これにより、(1)工程が終了する。
(2)工程は、製氷皿10に所定量の水を注ぎ込む工程である。具体的には、給水時間が経過すればするほど、製氷皿10内を占める空気(誘電率約1.0)の量が減少し、水(誘電率約80)の量が増加していくから、静電容量センサ60によって測定される静電容量値が増加していく。そして、この静電容量センサ60によって測定される静電容量値が第一の閾値(図4参照)以上となるまで給水手段20による給水を続け、測定される静電容量値が第一の閾値以上となったことを水量検出部が検出したことを契機として(図6「S3」Yes)、製氷皿10内に所定量の水が注ぎ込まれたとして給水手段20による給水を停止する(図6「S4」)。
なお「第一の閾値」とは、第一の動作例と同様に、製氷皿10内に所定量の水が存在する状態での静電容量値に基づいて設定された値のことをいう。その設定手法も第一の動作例と同様の手法を用いることができる。したがって、(2)工程が終了すると、作成しようとする氷の大きさに必要な水量が製氷皿10内に存在している状態となる。
(3)工程では、まず、製氷皿10に注ぎ込まれた所定量の水が凍るまで待機する。具体的には、(2)工程終了後の待機時間が経過すればするほど、製氷皿10内に存在する水(誘電率約80)が氷(誘電率約4.2)に変化していく(徐々に凍っていく)から、静電容量センサ60によって測定される静電容量値が減少していく。そして、この静電容量センサ60によって測定される静電容量値が第二の閾値(図4参照)未満となったことを製氷検出部が検出したこと(図6「S5」Yes)をもって、製氷皿10内の水が全て氷となったと判断する。
なお、「第二の閾値」とは、第一の動作例と同様に、製氷皿10内の所定量の水が全て氷となった状態での静電容量値に基づいて設定された値のことをいう。その設定手法も第一の動作例と同様の手法を用いることができる。上記「安全値」を加味した値を「第二の閾値」として設定するか否かも適宜選択可能である。
静電容量センサ60によって測定される静電容量値が第二の閾値未満となったことを検出した後、検氷手段による検氷動作を開始する。検氷動作は、上記第一の動作例と同様の手法を用いることができる。貯氷容器40内の氷が一定量未満であるということが検出されると(図6「S6」Yes)、製氷皿駆動手段による離氷動作を開始する(図6「S7」)。つまり、「静電容量値が第二の閾値未満となったこと」および「貯氷容器40内の氷が一定量未満である」ことが検出されたことを契機として製氷皿駆動手段による離氷動作を開始する。すなわち、モータ31を一方に回転させることで製氷皿10を約180度回転させて捻れ変形させ、氷を貯氷容器40内に落下させる。これにより(3)工程が終了する。
(4)工程では、まず、製氷皿10を原位置に戻す。すなわち、モータ31を他方に回転(逆回転)させて製氷皿10を原位置に戻す。そして、製氷皿10内が空である状態(空気が存在している状態;誘電率約1.0)であるかどうかを判断する。具体的には、測定される静電容量値が「第三の閾値」(図4参照)未満であるかを確認する(図6「S8」)。
ここで、「第三の閾値」とは、製氷皿10内が空である状態での静電容量値に基づいて設定された値をいう。具体的には、製氷皿10内が完全に空である状態の静電容量値と、製氷皿10内の少なくともいずれか一つのセル11に氷が残っている状態の静電容量値との間の値をいう。この第三の閾値を設定するための静電容量値は、使用する製氷皿10や静電容量センサ60の電極61の配置など、装置の仕様によって変化する。したがって、装置の仕様が決定した後、製氷皿10内が空である状態および製氷皿10内の少なくともいずれか一つのセル11に氷が残っている状態で予め静電容量値を測定し、測定した値を第二の閾値として設定する。
製氷皿10が原位置に戻された後、測定される静電容量値が第三の閾値未満であることが出氷検出部によって確認された場合(図6「S8」Yes)、製氷皿10内は空であり、離氷動作によって製氷皿10内の氷が完全に離氷したということになる。したがって、再び(1)の工程の動作を開始する。一方、製氷皿10が原位置に戻された後、測定される静電容量値が第三の閾値以上である場合(図6「S8」No)、製氷皿10内に未だ氷が残存しているということになるため、再度製氷皿駆動手段による離氷動作を行う。そして、製氷皿10を原位置に戻し、再び測定される静電容量値が第三の閾値未満であるか否かを判断する。この測定される静電容量値が第三の閾値未満であれば、再度行った離氷動作によって製氷皿10内の氷が完全に離氷したということになるため、(1)の工程の動作を開始する。
2−2.第二の動作例(初期動作)
第二の動作例を採用した場合の初期動作について説明する。
初期状態(初期化された状態)において(図6「S′1」)、測定される静電容量値が第二の閾値以上である場合(図6「S′2」Yes)、上記第一の動作例と同様に、まず上記(3)工程の動作を行う。すなわち、測定される静電容量値が第二の閾値以上であるということは、製氷皿10内に水が存在している(水が完全に凍っておらず水と氷が混合している状態等を含む)ということであるから、まず当該製氷皿10内の水が凍るまで待機する。そして、製氷皿10内の水が凍ったこと、つまり、測定される静電容量値が第二の閾値未満となったことを製氷検出部が検出したことを契機として、離氷動作を行う。このようにして(3)工程の動作を行った後、(4)工程、(1)工程、(2)工程・・・というように、上述した順序で通常動作を行う。以上のように、初期状態において測定される静電容量値が第二の閾値以上である場合、製氷皿10内に残っている水を一旦凍らせ、氷として離氷させてから、通常動作に復帰する。
一方、初期状態において、測定される静電容量値が第二の閾値未満、かつ、第三の閾値以上であり(図6「S′3」Yes)、さらに検氷手段により貯氷容器40内の氷が一定量未満であることを検出した場合には、最初に製氷皿駆動手段による離氷動作を行う。すなわち、測定される静電容量値が第二の閾値未満、かつ、第三の閾値以上であるということは、製氷皿10内に氷が存在している(水が完全に凍った状態である)ということであるから、その氷を離氷させるべく、製氷皿駆動手段を動作させる。その離氷動作の後、(4)工程、(1)工程、(2)工程・・・というように、上述した順序で通常動作を行う。以上のように、初期状態において測定される静電容量値が第二の閾値未満であり、かつ、検氷手段により貯氷容器40内の氷が一定量未満であることを検出した場合には、製氷皿10内に残っている氷を離氷させてから、通常動作に復帰する。
また、初期状態において、測定される静電容量値が第三の閾値未満である場合(図6「S′3」No)、まず、上記(1)工程の動作を行う。すなわち、測定される静電容量値が第三の閾値未満であるということは、製氷皿10内が空の状態(空気が存在している状態)であるということであるから、そのまま製氷皿10内への給水を開始する。このようにして(1)工程の動作を行った後、(2)工程、(3)工程、(4)工程・・・というように、上述した順序で通常動作を行う。以上のように、初期状態において測定される静電容量値が第三の閾値未満である場合、製氷皿10内は空の状態であると判断し、(1)工程の動作(給水動作)を行う。
このように、第二の動作例は、離氷動作後、測定される静電容量値が第三の閾値未満であるか否かを判断する点で上記第一の動作例と異なる。それぞれの動作例を採用した場合の利点(効果)としては、次のような点が挙げられる。
第一の動作例では、動作の契機となる閾値として水の誘電率が約80であることに基づく「第一の閾値」、および、氷の誘電率が約4.2であることに基づく「第二の閾値」を設定する。つまり、製氷皿10内に水が存在しているか、氷が存在しているかを検出する(氷と空の状態(空気)を区別しない)。水と氷の誘電率は大きく異なり、両閾値には大きな差が存在するため、測定精度が低い静電容量センサ60や検出部(制御ユニット)を用いることができる。つまり、装置を安価に構成することができる。
また、このように製氷皿10内に氷が存在している状態と、製氷皿10内が空である状態を区別しない場合であっても、初期状態において測定される静電容量値が第二の閾値未満であり、かつ、検氷手段により貯氷容器40内の氷が一定量未満であることを検出した場合には、最初に離氷動作を行うようにすれば、いずれの場合であっても離氷動作後製氷皿10内は空の状態となるから、その後(4)工程より通常動作に復帰することができる。
一方、第二の動作例では、上記「第一の閾値」、「第二の閾値」に加え、空気の誘電率が約1.0であることに基づく「第三の閾値」を設定する。つまり、製氷皿10内に水が存在している状態、氷が存在している状態に加え、製氷皿10内が空である状態も区別して検出する。したがって、離氷動作後、製氷皿10内の氷が完全に離氷したかどうかを検出することができる。そのため、製氷皿10内に氷が残っている状態で給水を開始し、製氷皿10から水が溢れてしまうなどの不具合の発生を防止することができる。
また、このように製氷皿10内に氷が存在している状態と、製氷皿10内が空である状態を区別する場合、初期状態において測定される静電容量値が第三の閾値未満である場合に即座に給水動作((1)工程の動作)を行うことができるから、第一の動作例を採用した場合における初期動作のように、空の状態の製氷皿10を回転させる動作(空の状態の製氷皿10に対して行う離氷動作)が発生することはない。
また、第一の動作例および第二の動作例のどちらを採用した場合であっても、温度変化から製氷皿10内の状態を推測する従来構成(温度センサを用いた構成)に比べて、以下の点で優れる。
温度変化から製氷皿10内の状態を推測する従来構成の場合、製氷皿10内に水が存在している状態と、製氷皿10内が空の状態であって製氷皿10自体が比較的温かい状態(商品購入時や、長時間の停電が発生した場合などに発生する)とを区別することができない。したがって、このような場合には、とりあえず製氷皿10内に水が存在していると仮定して、水が氷となるのに十分な時間が経過するまで待機し、製氷皿10内に氷が存在した状態に変化するかどうかを確認しなければならない。つまり、製氷皿10が空の状態であっても、当該時間が経過しても製氷皿10内に氷が存在した状態とならないことを確認しなければ、製氷皿10内は空の状態であると判断することができない。これに対して本実施形態にかかる製氷装置1は、製氷皿10内に水が存在しているか、空の状態であるかを区別することができるため、初期状態における製氷皿10が空の状態での待機は発生しない。
以下、上記第一の動作例および第二の動作例に共通して適用することができる好適な制御例について説明する。
第一の制御例は、上記(3)工程において、給水停止後から一定時間の間、制御ユニットが静電容量センサ60によって静電容量を検出する検出部(製氷検出部)への通電を停止するように制御する手法である。つまり、製氷皿10内に所定量の水が供給された後、その水が凍るまでは、ある時間以上の時間(外気温等の条件に左右されない必須の製氷時間。以下、最低時間と称する)が必要となる。したがって、給水停止後から当該最低時間内の間は、氷は完成していないのであるから、静電容量を検出することに意味はない。そのため、少なくとも当該最低時間より短い一定時間の間検出部への通電を停止すれば、その分静電容量の検出に必要な電力を低減することができる。
第二の制御例は、上記(3)工程において、測定される静電容量値が第二の閾値未満となってから離氷動作が終了するまでの間、制御ユニットが静電容量センサ60によって静電容量を検出する検出部への通電を停止するように制御する手法である。測定される静電容量値が第二の閾値未満となったことが検出された後、検氷動作によって貯氷容器40内の氷が一定量未満であるということが検出されるまで離氷動作は開始せず、製氷皿10内に氷が存在している状態がそのまま維持される。場合によっては、氷を全く使用せず、貯氷容器40内の氷が一定量以上である時間が長時間となることも考えられるから、その間検出部への通電を停止しておくとよい。また、離氷動作中は、製氷皿10内の状態を検出する必要がないから、短時間ではあるがその間検知部への通電を停止しておくとよい。このようにすれば、上記第一の制御例と同様に、静電容量の検出に必要な電力を低減することができる。
なお、この第一の制御例と第二の制御例をともに採用した場合、以下の(a)から(c)で示す場合にのみ、制御ユニットは検出部(水量検出部、製氷検出部、および出氷検出部)に通電する(図4参照)。
(a)測定される静電容量値が第一の閾値以上となったことを検出するとき(給水手段20による製氷皿10への給水中の間)
(b)上記一定時間経過した後から測定される静電容量値が第二の閾値未満となったことを検出するとき
(c)第二の動作例を採用した場合において、離氷動作終了後、測定される静電容量値が第三の閾値未満であるか否かを検出するとき
第三の制御例は、(3)工程において、測定される静電容量値が第二の閾値未満となったか否かを検出する際(上記(b)で示す場合のとき)、制御ユニットが静電容量センサ60によって静電容量を検出する検出部(製氷検出部)への通電を間欠的に行うように制御する手法である。測定される静電容量値が第二の閾値未満となったか否か、すなわち、製氷皿10内の水が凍ったか否かを検出するタイミングは遅れても問題がない(完全に氷になった瞬間を検出しなければならないわけではない)。したがって、例えば、一定時間間隔で静電容量を検出するなど、間欠的に検出部を動作させることで、上記第一の制御例および第二の制御例と同様に、静電容量の検出に必要な電力を低減することができる。
(静電容量センサの構成)
以下、静電容量センサ60の構成について説明する。まず、静電容量センサ60の電極61の取付位置について説明する。
1.電極の取付位置
図3に示した取付位置例は、製氷皿10の対向する長手方向の二面に沿って電極61が取り付けられた構成である。具体的には、製氷皿10の壁部12における長手方向の二面の外面に取り付けられた構成である。本実施形態にかかる製氷装置1では、壁部12の短手方向に製氷皿10を他の部材(装置の枠体や出力軸33)と接続するための接続部が形成されているため(壁部12の長手方向には何も設けられていないため)、長手方向に沿った広い平面に電極61を取り付けることができる。つまり、平面方向の電極61の大きさ(電極61における水と対向する面の面積)は、長手方向における壁部12と略同じ大きさ(面積)とすることができる。また、両電極61間の距離は、製氷皿10の短手方向長さと略同じになる。そのため、かかる構成とすれば、電極61を大きくでき、かつ、両電極61間の距離を短くすることができるため、優れた検出精度を発揮する静電容量センサ60とすることができる。なお、本実施形態にかかる製氷装置1は、いわゆる「捻り式」の製氷装置1であり、離氷動作時に製氷皿10が捻れ変形させられるため、本構成を採用する場合、製氷皿10の捻れ変形とともに電極61が大きく変形して損傷してしまわないよう、後述する損傷防止機構を適用した電極61とすることが好ましい。
また、製氷皿10内の氷を掻出部材によって掻き出す、いわゆる「掻出式」の製氷装置1(例えば、US2010/0037633号公報参照)である場合には、製氷皿10を他の部材と接続するための接続部が、製氷皿10における長手方向の面に形成されることも考えられる。このように、製氷皿10における長手方向の面に、電極61を取り付けることを阻害する構造物が形成される構成であれば、電極61を短手方向の面(短手方向における壁部12)に取り付けた構成としてもよい(図7参照)。
図8から図13に示した取付位置例は、製氷皿10のセル11単位で電極61が取り付けられた構成である。かかる構成とすれば、図3や図7に示した構成と比べて、離氷動作時における製氷皿10の捻れ変形に伴う電極61の変形量が小さいという利点がある。以下、各例について具体的に説明する。
図8から図10に示した構成は、製氷皿10における一のセル11を構成する部分の外面に電極61が取り付けられたものである。つまり、当該一のセル11を挟んで電極61が取り付けられたものである。
具体的には、図8に示した構成は、製氷皿10における一のセル11を構成する部分の外面に、電極61を対向させて(厳密にはセル11の傾斜分電極61も傾斜している)配置したものである。かかる構成とすれば、両電極61の間隔が小さくなる分、静電容量センサ60の検出精度が優れるという利点がある。
また、図9および図10に示した構成は、製氷皿10における一のセル11を構成する部分の外面に、電極61を直交させて(厳密にはセル11の傾斜分電極61も傾斜している)配置したものである。かかる構成を採用すれば、両電極61を製氷皿10の外側に位置させることができるため、配線等が容易になるという利点がある。
これら図8から図10に示した構成を採用する場合、電極61が取り付けられた一のセル11は、給水手段20の給水口21から給水された水が最も早く到達する一または複数のセル11から最も離れた位置に位置するものであることが好ましい。換言すれば、製氷皿10への給水時に、一番最後に水が流れ込む(所定量の水が溜まる)セル11であることが好ましい。一番最後に水が流れ込むセル11内に所定量の水が存在していることが静電容量センサ60によって検出された(測定される静電容量値が第一の閾値以上となった)ということは、それ以外のセル11にも所定量の水が存在しているということであるからである。つまり、一番最後に水が流れ込むセル11の静電容量の変化によって給水量を制御することにより、製氷皿10への給水量を正確に制御することができる。
図11から図13に示した構成は、あるセル11を構成する外面に一の電極61が取り付けられ、当該あるセル11とは異なる別のセル11を構成する外面にもう一つの電極61が取り付けられたものである。つまり、複数のセル11を挟むように電極61が取り付けられたものである。
具体的には、図11に示した構成は、製氷皿10の短手方向に並ぶ二つのセル11の外面のそれぞれに電極61が取り付けられたものである。つまり、両電極61は製氷皿10の短手方向で対向する(厳密にはセル11の傾斜分電極61も傾斜している)。かかる構成とすれば、電極61の間隔が比較的小さいため、静電容量センサ60の検出精度が優れるという利点がある。また、両電極61を製氷皿10の外側に位置させることができるため、配線等が容易になるという利点もある。なお、両電極61の間隔が大きくなるため、図11に示した構成よりも検出精度に劣る可能性があるが、図12に示すような構成を採用してもよい。つまり、製氷皿10の長手方向の一方端かつ短手方向の一方端に位置するセル11を構成する外面(長手方向に沿う外面)と、製氷皿10の長手方向の他方端かつ短手方向の他方端に位置するセル11を構成する外面(長手方向に沿う外面)のそれぞれに電極61が取り付けられ、電極61が短手方向に対向した構成としても、製氷皿10内の静電容量の変化を検出することが可能である。
なお、図11に示した製氷皿10の短手方向に並ぶ二つのセル11の外面のそれぞれに電極61が取り付けられた構成を採用する場合、いずれか一方のセル11もしくは両方のセル11は、給水手段20の給水口21から給水された水が最も早く到達する一または複数のセル11から最も離れた位置に位置するものであることが好ましい。上述したように、一番最後に水が流れ込むセル11の静電容量の変化によって給水量を制御することにより、製氷皿10への給水量を正確に制御することができるからである。このように、複数のセル11を挟むように電極61が取り付けられた構成であっても、給水手段20の給水口21から最も離れた位置に位置する一または複数のセル11に電極61が取り付けられた構成にするとよい。
また、図13に示した構成は、製氷皿10の長手方向に並ぶ複数のセル11のうち、最も外側に位置する二つのセル11の外面のそれぞれに電極61が取り付けられたものである。かかる構成とすれば、両電極61を製氷皿10の外側に位置させることができるため、配線等が容易になるという利点がある。なお、両電極61の間隔が大きくなるため、図13に示した構成よりも検出精度に劣る可能性があるが、図14に示すような構成を採用してもよい。つまり、製氷皿10の長手方向の一方端かつ短手方向の一方端に位置するセル11を構成する外面(短手方向に沿う外面)と、製氷皿10の長手方向の他方端かつ短手方向の他方端に位置するセル11を構成する外面(短手方向に沿う外面)のそれぞれに電極61が取り付けられ、電極61が長手方向に対向した構成としても、製氷皿10内の静電容量の変化を検出することが可能である。
以上説明した電極61の取付位置は全て、絶縁体である樹脂製の製氷皿10の外面に電極61が取り付けられた構成(電極61が製氷皿10の内側の空間に臨んだ状態で取り付けられた構成以外の構成すべてを含む)である。したがって、製氷皿10内に給水された水と電極61は隔離された状態となり、水による電極61の腐食等が防止される。
2.電極の損傷防止機構
本実施形態のようないわゆる「捻り式」の製氷装置1である場合、離氷動作時に製氷皿10が捻れ変形(弾性変形)する。したがって、この捻れ変形とともに静電容量センサ60を構成する電極61が大きく変形して損傷しないよう、以下で説明するような電極61の損傷防止機構を適用した構成とすることが好ましい。
図15に示す第一の機構は、静電容量センサ60を構成する電極61を、変位吸収部材64を介して製氷皿10に取り付けたものである。具体的には、電極61は、製氷皿10に密着させた状態かつ製氷皿10に接合されていない状態で、変位吸収部材64を介して製氷皿10に取り付けられている。変位吸収部材64は、製氷皿10に接合されていない電極61を保持するための構成である。この構成では、製氷皿10が変形しても、製氷皿10に接合されていない電極61は大きく変形しない。別の見方をすれば、製氷皿10が変形したとしても、電極61の外側には製氷皿10よりも変形しやすい(柔らかい)変位吸収部材64が存在しているから、電極61は変位吸収部材64を押しのけるようにしてそのままの状態(自然状態)を維持しようとし、大きく変形することはない。
したがって、かかる構成を採用すれば、電極61が大きく変形してしまうことによる電極61の損傷を防止することができる。また、電極61の存在が、電極61を含めた製氷皿10全体としての変形しやすさにほとんど寄与しないため、電極61の厚みや材質を自由に設定すること、製氷皿10を変形させるためのモータ31のトルクを小さくすることができる。なお、変位吸収部材64は、製氷皿10から電極61が外れない範囲内で、できるだけ変形しやすい材質で形成することが好ましい。具体的には、シリコン樹脂などが例示できる。また、上記構成は、電極61と製氷皿10が密着した状態にある(電極61と製氷皿10の間に何も存在しない)から、静電容量センサ60としての検出精度に優れる。
第二の機構は、静電容量センサ60を構成する電極61自体を容易に変形する形状、構成としたものである。具体的には、離氷動作時に捻り変形させた製氷皿10が元に戻ろうとする復元力によって、製氷皿10に取り付けられた電極61が元の状態に復元可能なものである。その電極の例としては、電極61をアルミ箔や銅箔で形成したシート状、導電性カーボンや金属の粉末を練り込むことにより導電性をもたせた導電性の弾性体、線状の導体を網目状(メッシュ状)に配したもの、繊維状の導体を無規則に配した綿状の導体を所定の大きさに切断したもの、などを所定の大きさに切断したものを電極61として用いても静電容量の変化が検出できる。
かかる構成を採用すれば、製氷皿10の変形に伴う電極61の損傷を防止できる。また、電極61の剛性が、電極61を含めた製氷皿10全体としての変形しやすさにほとんど寄与しないため、製氷皿10を変形させるためのモータ31のトルクを小さくすることができる。なお、本構成では、製氷皿10に対して電極61をどのような方法で取り付けてもよい。例えば、接着(接着剤や両面テープを用いたもの)による取付方法や、ねじなどの締結部材を用いた取付方法などが挙げられる。
第三の機構は、静電容量センサ60の電極61を移動させる電極駆動手段をさらに備えた製氷装置1とするものである。かかる電極駆動手段は、電極61を図16(a)に示す第一の位置から図16(b)、(c)に示す第二の位置まで移動させることができ、制御ユニットによって次のように制御される。
給水手段20によって製氷皿10に給水されているとき(給水開始から測定される静電容量値が第一の閾値以上となって給水が停止されるまで)、および、製氷皿10内の水が未だ凍っていないとき(給水が停止された後から測定される静電容量値が第二の閾値未満となるまで)には、電極駆動手段は、電極61を製氷皿10に接触させた状態、すなわち図16(a)に示す第一の位置に位置させた状態とする。一方、製氷皿10内の水が凍った後、製氷皿駆動手段によって製氷皿10を回転させているとき(製氷皿10が回転する直前)には、電極駆動手段は、製氷皿10の回転軌跡C(図16(c)参照)内に電極61が入り込まない位置まで電極61を移動させる。すなわち図16(b)、(c)に示す第二の位置に位置させた状態とする。離氷動作が終了し、製氷皿10が原位置に戻ると、電極駆動手段は、再び製氷皿10に接触させた状態まで電極61を移動させる。すなわち図16(a)に示す第一の位置に位置させた状態とする。
かかる構成を採用すれば、製氷皿10が弾性変形している間は電極61は製氷皿10から離れているため、電極61が大きく変形してしまうことによる電極61の損傷を防止することができる。また、電極61の存在が、電極61を含めた製氷皿10全体としての変形しやすさに全く寄与しないため、電極61の厚みや材質を自由に設定すること、製氷皿10を変形させるためのモータ31のトルクをより小さくすることができる。さらに、電極61が製氷皿10に直接もしくは間接的に取り付けられた構成ではないため、電極61と検出部を繋ぐ配線を外すことなく製氷皿10のみを外して洗浄することができる。
第四の機構は、図17(a)に示すように、静電容量センサ60の電極61が、その外側に接続された付勢部材66(ばねなど)によって製氷皿10の外面に押圧された状態となっているものである。付勢部材66が自然長である場合における電極61の位置(製氷皿10に接触していない状態における電極61の位置)は、製氷皿10の外面に押圧された状態となっているときよりも若干内側であり、電極61の先端側(製氷皿10側)は面取りされている。具体的には、電極61の厚み方向における面取りの大きさ(面取り部分の厚み)が、製氷皿10の外面に押圧された状態となっているときの電極61の位置と付勢部材66が自然長である場合における電極61の位置の差よりも大きくなっている。
離氷動作の際には、製氷皿10は、電極61を押しのけるようにして付勢部材66を弾性変形させつつ回転する。電極61の先端側は上記のような面取りが施されているため、製氷皿10が原位置に戻る際に電極が61に引っ掛かってしまうことはない。つまり、図17(b)に示すように、電極61の面取り部分が製氷皿10の外面上を摺動するようにして製氷皿10の外面に押圧された状態(図17(a)に示す状態)まで戻る。
かかる構成を採用すれば、製氷皿10の弾性変形に伴って、電極61が変形してしまうことが防止される。すなわち、製氷皿10の回転によって付勢部材66が変形し、電極61が変形することはないから、電極61の変形による損傷が防止される。また、電極61の存在が、電極61を含めた製氷皿10全体としての変形しやすさに寄与しないため、電極61の厚みや材質を自由に設定すること、製氷皿10を変形させるためのモータ31のトルクを小さくすることができる。
さらに、上記第三の機構のような電極61を駆動する駆動源が不要となる。
以上説明した電極61の損傷防止機構は、電極61がどのような位置に取り付けられている場合でも適用することができる。特に、図3に示した製氷皿10の壁部12における対向する長手方向の二面に沿って電極61が取り付けられる場合、製氷皿10の弾性変形とともに電極61が大きく変形してしまうおそれがあるため、上記電極の損傷防止機構を適用する意義が大きい。
また、いわゆる「掻出式」の製氷装置1である場合には、製氷皿10は弾性変形させられることはないため、これらの電極61の損傷防止機構は不要である。つまり、任意の形状・厚みの電極61を、製氷皿10の任意の位置に直接固定すればよい。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。